説明

湿度センサ

【課題】 直流駆動が可能で、湿度変化に対する抵抗変化が線形的な湿度センサを提供すること。
【解決手段】 絶縁性基板2と、該絶縁性基板2上に成膜された一対の電極膜3と、一対の電極膜3間に成膜された感湿膜4と、を備え、該感湿膜4の電気抵抗を測定して湿度を検出する湿度センサであって、感湿膜4が、繊維表面を酸化処理して親水化した微細炭素繊維で形成されている。また、感湿膜4が、微細炭素繊維の分散液を電極膜3上に塗布して乾燥させた膜である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流駆動が可能で湿度変化に対する抵抗変化が線形的である湿度センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、直流駆動が可能な湿度センサとして、感湿膜を吸湿性高分子と導電性粒子とで構成した湿度センサが知られている。例えば、特許文献1には、絶縁性基板上に対向する電極を設け、この電極を含む絶縁性基板上に親水基を有するモノマーとフッ素を含有するモノマー及びグリシジル基を有するモノマーを共重合させた吸湿性樹脂と硬化剤の混合物に導電性粉末を分散した感湿膜を形成した湿度センサが提案されている。
【0003】
また、特許文献2には、一対の電極間に、吸湿性高分子と、この吸湿性高分子に分散された導電性粒子とを含有する感湿膜を有する感湿素子において、吸湿性高分子が、ポリエチレンイミン系高分子と反応性のある官能基をもつ反応性有機化合物で変性されたポリエチレンイミン系高分子、またはポリエチレンイミン系高分子と反応性のある官能基をもつ反応性有機化合物がグラフト化されたポリエチレンイミン系高分子を含み、かつこれらのポリエチレンイミン系高分子が架橋されている感湿素子が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−6809号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開2002−267627号公報(特許請求の範囲)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の技術には、以下の課題が残されている。
すなわち、一般的に直流駆動であれば、測定回路を安価で容易に構成できるという利点があるが、上記従来の湿度センサでは、湿度変化に対する抵抗変化が対数的であるため、測定に高精度なマルチメーターや高精度(ビット数の多い)なADコンバータ又はログアンプ等の高価な装置が必要になり、安価で高精度な測定回路を構成することができないという不都合があった。
【0006】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたもので、直流駆動が可能で、湿度変化に対する抵抗変化が線形的な湿度センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、微細炭素繊維に関する技術について研究を進めたところ、微細炭素繊維に特殊な処理を施すと、湿度変化に対応して抵抗値が変化する特性を有することを突き止めた。
したがって、本発明は、上記知見から得られたものであり、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。
【0008】
すなわち、本発明の湿度センサは、絶縁性基板と、該絶縁性基板上に成膜された一対の電極膜と、前記一対の電極膜間に成膜された感湿膜と、を備え、該感湿膜の電気抵抗を測定して湿度を検出する湿度センサであって、前記感湿膜が、繊維表面を酸化処理して親水化した微細炭素繊維で形成されていることを特徴とする。
【0009】
この湿度センサでは、感湿膜が、繊維表面を酸化処理して親水化した微細炭素繊維で形成されているので、親水化されて親水基を有する微細炭素繊維が湿度変化に対して線形的に抵抗変化し、安価で高精度な測定回路で直流駆動することが可能になる。また、感湿膜が微細炭素繊維で形成されているので、高い耐熱性及び耐久性を有している。
【0010】
また、本発明の湿度センサは、前記感湿膜が、前記微細炭素繊維の分散液を前記電極膜上に塗布して乾燥させた膜であることを特徴とする。
すなわち、この湿度センサでは、感湿膜が、微細炭素繊維の分散液を電極膜上に塗布して乾燥させた膜であるので、焼成や積層等の工程が不要で、作製が容易であり、製造コストを低く抑えることができる。
【0011】
また、本発明の湿度センサは、前記微細炭素繊維が、カーボンナノチューブであることを特徴とする。
すなわち、この湿度センサでは、微細炭素繊維が、カーボンナノチューブであるので、ナノオーダーの繊維が互いに絡み合って、より高い耐久性及び検出感度を有する感湿膜が得られる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、以下の効果を奏する。
すなわち、本発明に係る湿度センサによれば、感湿膜が、繊維表面を酸化処理して親水化した微細炭素繊維で形成されているので、感湿膜が湿度変化に対して線形的に抵抗変化し、安価な測定回路で直流駆動することができると共に優れた耐熱性を有している。また、感湿膜を、微細炭素繊維のスラリー又はペーストを電極膜上に塗布して乾燥させた膜とすることで、作製が容易であり、製造コストを低く抑えることができる。したがって、本発明は、安価な測定回路で使用できると共に高温環境でも使用することができる低コストな湿度センサとして好適である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る湿度センサの一実施形態を示す斜視図である。
【図2】本実施形態の湿度センサにおいて、湿度と電気抵抗との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る湿度センサの一実施形態を、図1及び図2を参照しながら説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能又は認識容易な大きさとするために縮尺を適宜変更している。
【0015】
本実施形態の湿度センサ1は、図1に示すように、絶縁性基板2と、該絶縁性基板2上に成膜された一対の金属の電極膜3と、一対の電極膜3間に成膜された感湿膜4と、を備え、該感湿膜4の電気抵抗を測定して湿度を検出する湿度センサであって、上記感湿膜4は、繊維表面を酸化処理して親水化した微細炭素繊維で形成されている。
【0016】
上記絶縁性基板2は、例えばアルミナ基板で形成されている。
上記電極膜3は、金属膜であって、例えばAgペースト等で形成したAg電極が採用される。これらの電極膜3は、例えば絶縁性基板2の両端部に直線的な帯状に形成される。なお、電極膜3の形状は、櫛歯状等の他の形状で形成しても構わない。
また、これらの電極膜3上にリード線5がそれぞれ半田付け等で接続される。
【0017】
上記感湿膜4は、微細炭素繊維の分散液を絶縁性基板2上であって両端が電極膜3上に形成されるように一対の電極膜3間に塗布して乾燥させた膜である。また、上記微細炭素繊維は、カーボンナノチューブである。
【0018】
この感湿膜4の成膜方法を説明すると、まず、カーボンナノチューブの繊維表面を酸化処理して親水性を付与する。この酸化処理は、例えばカーボンナノチューブに硫酸などの硫黄含有強酸を添加し、硝酸などの酸化剤を加え、このスラリーを加熱しながら攪拌した後、濾過し、残留する酸を洗浄して除去する方法が採用される。この酸化処理により、カルボニル基やカルボキシル基あるいはニトロ基などの極性官能基が形成されて親水化される。
【0019】
次に、この親水化させたカーボンナノチューブをエタノールの溶媒に例えば5wt%の濃度で入れて、カーボンナノチューブ分散液を作製する。なお、カーボンナノチューブは、表面を酸化処理して親水化させているので、分散剤を使用しなくても溶媒中で良好な分散状態を維持することができる。
【0020】
このカーボンナノチューブ分散液を絶縁性基板2の表面上に塗布し、乾燥機で例えば100℃10分の条件で乾燥させることで、実用強度のある感湿膜4が成膜できる。本実施形態では、約10μmの膜厚で感湿膜4が形成されている。
なお、カーボンナノチューブ分散液に結着剤を加えてスラリー又はペーストにして、上記塗布を行っても構わない。結着剤としては、例えばポリフッ化ビニリデン(PVdF)、カルボキシメチルセルロース(CMC)などが採用可能である。
【実施例1】
【0021】
次に、本発明に係る湿度センサ1を、上記実施形態に基づいて実際に作製し、恒温恒湿槽に入れて、リード線5をデジタルマルチメータに接続して湿度センサ1の湿度変化に対する抵抗変化を測定した。
【0022】
すなわち、恒温恒湿槽の温度を30℃一定とし、湿度を40%RHから80%RHまで変化させたときの湿度センサ1の直流抵抗を測定し、抵抗値と湿度との関係を調べた。その測定結果を図2に示す。
なお、この湿度センサ1の感湿膜4は、10mm×30mmの形状で形成した。
この結果からわかるように、本実施形態の湿度センサ1では、湿度の増加に伴って抵抗が直線的(線形的)に増加しており、湿度変化に対して線形的に抵抗が変化する抵抗特性を有していることが確認された。
【0023】
このように本実施形態の湿度センサ1では、感湿膜4が、繊維表面を酸化処理して親水化した微細炭素繊維で形成されているので、親水化されて親水基を有する微細炭素繊維が湿度変化に対して線形的に抵抗変化し、安価で高精度な測定回路で直流駆動することが可能になる。また、感湿膜4が微細炭素繊維で形成されているので、高い耐熱性及び耐久性を有している。
【0024】
また、感湿膜4が、微細炭素繊維の分散液を電極膜3上に塗布して乾燥させた膜であるので、焼成や積層等の工程が不要で、作製が容易であり、製造コストを低く抑えることができる。
さらに、微細炭素繊維が、カーボンナノチューブであるので、ナノオーダーの繊維が互いに絡み合って、より高い耐久性及び検出感度を有する感湿膜が得られる。
【0025】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態及び実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0026】
1…湿度センサ、2…絶縁性基板、3…電極膜、4…感湿膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性基板と、該絶縁性基板上に成膜された一対の電極膜と、前記一対の電極膜間に成膜された感湿膜と、を備え、該感湿膜の電気抵抗を測定して湿度を検出する湿度センサであって、
前記感湿膜が、繊維表面を酸化処理して親水化した微細炭素繊維で形成されていることを特徴とする湿度センサ。
【請求項2】
請求項1に記載の湿度センサにおいて、
前記感湿膜が、前記微細炭素繊維の分散液を前記電極膜上に塗布して乾燥させた膜であることを特徴とする湿度センサ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の湿度センサにおいて、
前記微細炭素繊維が、カーボンナノチューブであることを特徴とする湿度センサ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−27458(P2011−27458A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−171057(P2009−171057)
【出願日】平成21年7月22日(2009.7.22)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【Fターム(参考)】