説明

湿度検出装置及び湿度検出方法

【課題】低湿度及び高湿度の範囲においても正確な湿度を検出すること。
【解決手段】測定された湿度が予め定められた湿度範囲である場合、制御部11は、通常の周波数より高い周波数で信号CLK1及びCLK2を出力させるための指示信号を矩形波生成部12に出力する。この指示信号を受けて、矩形波生成部12は通常の周波数より高い周波数で信号CLK1及びCLK2を出力する。湿度検出部13は電圧Vhumを取り込み、異なるタイミングで複数の検出電圧Vを検出する。そして、それぞれの検出電圧Vに対応する湿度の平均値を求め、平均値を湿度データとして制御部11へ出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿度センサを用いて湿度を検出する湿度検出装置及び湿度検出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式により用紙に画像を形成するプリンタ、コピー機やファクシミリ、及びこれらの機能を備えた複合機においては、湿度の変化に伴って用紙上に付着するトナー量が変化し、ユーザが所望する画像が得られない場合がある。
【0003】
そこで、画像形成装置内に湿度センサを配置し、湿度センサによる湿度の測定結果に応じて画像形成条件等を変更させることによって、湿度が変化しても画質を一定に維持する機能を備えた画像形成装置が知られている。このような画像形成装置内には、湿度センサを用いた湿度検出装置が設置されており、特許文献1〜3には湿度センサを用いた湿度検出装置について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平01−055481号公報
【特許文献2】特開平04−064048号公報
【特許文献3】特開平05−240817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、湿度センサは、低湿度及び高湿度の範囲において出力変化が小さくなる。このため、測定誤差が発生し、正確な湿度を測定できなかった。
【0006】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたもので、低湿度及び高湿度の範囲においても正確な湿度を検出可能な湿度検出装置及び湿度検出方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明の湿度検出装置は、抵抗変化型の湿度センサと、第1矩形波と、当該第1矩形波と極性が反転した第2矩形波を生成して、前記湿度センサの一端に前記第1矩形波を供給すると共に、前記湿度センサの他端に抵抗を介して前記第2矩形波を供給する矩形波出力手段と、前記湿度センサの他端の電圧を測定して湿度を検出する検出手段と、を備え、前記検出された湿度が予め定められた範囲の湿度であるとき、前記検出手段は前記湿度センサの他端の電圧を異なるタイミングで複数回測定し、当該複数の測定結果から湿度を検出するものである。
【0008】
また、請求項3に記載の発明の湿度検出方法は、第1矩形波と、当該第1矩形波と極性が反転した第2矩形波を生成して、前記湿度センサの一端に前記第1矩形波を供給すると共に、前記湿度センサの他端に抵抗を介して前記第2矩形波を供給する矩形波出力ステップと、前記湿度センサの他端の電圧を測定して湿度を検出する第1検出ステップと、前記検出された湿度が予め定められた範囲の湿度であるとき、前記湿度センサの他端の電圧を異なるタイミングで複数回測定し、当該複数の測定結果から湿度を検出する第2検出ステップと、を含んだものである。
【0009】
抵抗変化型の湿度センサにおいて、低湿度及び高湿度以外の湿度においては、湿度変化に伴った湿度センサの抵抗変化が大きい(即ち、湿度センサの他端の電圧の変化が大きい)ため、信頼性のある湿度を検出することができる。しかし、低湿度及び高湿度の範囲になると、湿度センサの抵抗変化が小さく(即ち、湿度センサの他端の電圧の変化が小さく)なるため、湿度を求める際に測定誤差が発生し、正確な湿度を取得することが困難であった。
【0010】
そこで、検出された湿度が予め定められた湿度範囲(低湿度及び高湿度)である場合、湿度センサの他端の電圧を異なるタイミングで複数回測定し、複数の測定結果から湿度を検出することにより、求めた湿度に含まれる測定誤差が少なくなり、湿度検出装置の測定精度を向上させることができる。
【0011】
ここで、検出手段が湿度センサの他端の電圧を複数回測定して、その測定結果から湿度を検出する際、検出手段は複数回測定した電圧の平均値を求め、その電圧の平均値から湿度を求めてもよいし、測定した複数の電圧値それぞれに対応する湿度を求め、その複数の湿度から平均値を求めてその平均値を湿度としてもよい。この他、複数の測定電圧(サンプル値)を用いて湿度を求める方法であれば何れの方法であってもよい。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の湿度検出装置であって、前記検出された湿度が予め定められた範囲の湿度であるとき、前記検出手段が前記湿度センサの他端の電圧を異なるタイミングで複数回測定する間、前記矩形波出力手段は前記第1矩形波及び前記第2矩形波の周波数を通常の周波数より高い予め定められた周波数で出力するものである。
【0013】
また、請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の湿度検出方法であって、前記検出された湿度が予め定められた範囲の湿度であるとき、前記第2検出ステップの前に、前記第1矩形波及び前記第2矩形波の周波数を通常の周波数より高い予め定められた周波数で出力する第2矩形波出力ステップを含んだものである。
【0014】
これらの構成によれば、湿度センサの他端の電圧を異なるタイミングで複数回測定する際は、第1矩形波及び第2矩形波の周波数を通常の周波数より高くすることによって、湿度の検出にかかる時間の増加を抑えることができる。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、検出された湿度が予め定められた湿度範囲(低湿度及び高湿度)である場合、湿度センサの他端の電圧を異なるタイミングで複数回測定し、複数の測定結果から湿度を検出することにより、求めた湿度に含まれる測定誤差が少なくなり、湿度検出装置の測定精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】湿度検出装置の電気的構成を簡単に示した回路図。
【図2】湿度センサの構成の一例を示した図。
【図3】信号CLK1及びCLK2と分圧値である電圧Vhumの波形を示した図。
【図4】湿度センサの特性を示したグラフ。
【図5】信号CLK1及びCLK2と分圧値である電圧Vhumの波形を示した図。
【図6】湿度検出処理の流れを示したフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明における湿度検出装置及び湿度検出方法の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、本実施の形態における湿度検出装置1の電気的構成を簡単に示した回路図である。湿度検出装置1は、制御部11,矩形波生成部12、湿度検出部13、湿度センサRth、抵抗R1〜R6を用いて構成される。
【0018】
制御部11は、湿度検出装置1を構成する各機能部に対してデータ転送、指示信号の出力等を行って湿度検出装置1を統括的に制御する。
【0019】
矩形波生成部12は、CLK1信号と、このCLK1信号に対して極性が反転したCLK2信号を生成して出力する。矩形波生成部12のCLK1信号の出力端には抵抗R5、湿度センサRth、抵抗R2、抵抗R3の順で直列回路が接続されている。また、矩形波生成部12におけるCLK2信号の出力端には抵抗R4と抵抗R1が直列に接続され、抵抗R1の一端は湿度センサRthと抵抗R2の間に接続されている。更に、抵抗R2と抵抗R3の間には抵抗R6の一端が接続され、抵抗R6の他端は接地されている。
【0020】
抵抗R3は湿度検出部13の入力端に接続される。湿度検出部13は抵抗R2及びR3を介して湿度センサRthと抵抗R1の分圧(B点の電圧)を取り込んで、この分圧値に基づいて湿度を求め、湿度データを制御部11へ出力する。尚、抵抗R2〜R5は波形整形用の抵抗、抵抗R6は湿度検出部13の入力端がオープンになることを防ぐための抵抗であり、なくてもよい。
【0021】
図2は、湿度センサRthの構成の一例を示した図である。湿度センサRthは、高分子膜21が一対の電極板22a及び22bで挟持されて構成されている。電極板22a及び22bは、例えば銅等の金属が蒸着されて形成される。湿度センサRthは、高分子膜21が大気中の水分の吸収及び放出を行うことに伴い、その誘電率が変化して、湿度センサRthの抵抗(電極板22a−22b間の静電容量)が変化することを利用して、湿度センサRthに接続された湿度検出部13が湿度を測定するものである。
【0022】
図3は、信号CLK1及びCLK2と電圧Vhumの波形を示した図である。信号CLK1がHiレベル、信号CLK2がLowレベルのとき、図1における点AにはHiレベルの電圧(電圧V1)が印加され、点CはGNDレベルとなる。従って、点Bの電圧である電圧Vhumの値は抵抗R1による分圧値となり、図3における電圧V2で表される。
【0023】
一方、信号CLK1がLowレベル、信号CLK2がHiレベルの時、図1における点AはGNDレベル、点CにはHiレベルの電圧(電圧V1)が印加される。従って、点Bの電圧である電圧Vhumの値は、湿度センサRthによる分圧値となり、図3における電圧V3で表される。
【0024】
湿度が変化すると、湿度センサRthの抵抗値が変化するため、電圧V2及びV3は変化する。この電圧変化を利用して、湿度検出部13は湿度検出を行う。本実施の形態では、湿度検出部13は電圧V2を用いて湿度を求める。以下、電圧V2を検出電圧Vという。
【0025】
湿度検出部13は、内部メモリ(不図示)に検出電圧Vの値に応じた湿度を示したデータテーブルを予め記憶しており、検出電圧Vに応じてデータテーブルから湿度を求めて湿度データとして制御部11へ出力する。或いは、検出電圧Vを所定の計算式に代入して算出することによって湿度を求める。
【0026】
図4は、湿度センサRthの特性を示したグラフである。横軸は湿度、縦軸は電圧Vhumを示しており、温度5℃〜45℃の範囲で測定した結果を示している。図4において、湿度30%〜70%の間は、湿度変化に伴った電圧Vhumの変化が大きいため(例えばΔH1)、湿度検出部13は電圧Vhumから信頼性のある湿度データを求めることができた。
【0027】
しかし、湿度30%以下又は湿度70%以上の範囲になると、湿度変化に伴った電圧Vhumの変化が小さくなるため(例えばΔH2)、湿度検出部13が電圧Vhumから湿度データを求める際に誤差が発生し、正確な湿度データを取得することが困難であった。
【0028】
そこで、本発明では、測定された湿度が予め定められた湿度範囲内である場合、電圧Vhumを異なるタイミングで複数回測定して複数の湿度を求め、その複数の湿度の平均値を湿度データとして出力する方法について提案する。
【0029】
ここで、図1に戻る。湿度検出部13は求めた湿度データを制御部11へ出力する。制御部11は、測定された湿度が予め定められた湿度範囲(例えば、湿度30%以下又は湿度70%以上の範囲)であるとき、矩形波生成部12に対して信号CLK1及びCLK2の周波数を通常の周波数より高くして出力させるための指示信号を出力する。矩形波生成部12は、制御部11からの指示信号を受けて、信号CLK1及びCLK2の周波数を通常の周波数より高くして出力する。
【0030】
図5は、制御部11から信号CLK1及びCLK2の周波数を通常の周波数より高くする指示信号が出力されたときの信号CLK1及びCLK2と電圧Vhumの波形を示した図である。図3における信号CLK1及びCLK2は周期T1(周波数f1=1/T1)としたとき、制御部11から指示信号が出力された直後の信号CLK1及びCLK2は周期T1より短い周期T2(周波数f2=1/T2)とする。つまり、周波数f1<周波数f2の関係にある。
【0031】
そして、湿度検出部13は、異なるタイミングで電圧Vhumの電圧V2(信号CLK1がHiの時の電圧Vhum)を複数回測定して検出電圧Vを検出して、それぞれの検出電圧Vについて湿度を求める。つまり、図5に示すように、湿度検出部13は、異なるタイミングで5つの検出電圧Vを検出し、この5つの検出電圧Vに対応する湿度をそれぞれ求め、求めた湿度の平均値を湿度データとして制御部11へ出力する。このように複数のサンプル値から湿度データを求めることによって、湿度データに含まれる誤差が少なくなり、湿度検出装置1の測定精度を向上させることができる。
【0032】
また、異なるタイミングで複数の検出電圧Vを検出すると、制御部11の湿度データ取得に時間がかかってしまう。そこで、信号CLK1及びCLK2の周波数を通常の周波数より高くすることによって、湿度データの取得時間の増加を抑えることができる。
【0033】
尚、矩形波出力部12は、制御部11から指示信号が出力されてから、湿度検出部13が複数の検出電圧Vを検出するまでの予め定められた期間だけ、信号CLK1及びCLK2の周波数を通常の周波数より高くすればよい。
【0034】
図6は、本実施の形態における湿度検出処理の流れを示したフローチャートである。まず、制御部11は通常の周波数で信号CLK1及びCLK2を出力させるための指示信号を矩形波生成部12に出力する。この指示信号を受けて、矩形波生成部12は通常の周波数で信号CLK1及びCLK2を出力する(ステップS11)。湿度検出部13は電圧Vhumを取り込み、検出電圧Vを用いて湿度を求め、湿度データとして制御部11へ出力する(ステップS12)。
【0035】
制御部11は、湿度データの示す湿度が予め定められた湿度範囲内(例えば、湿度30%以下又は湿度70%以上の範囲)であるか否かを判別する。予め定められた湿度範囲内である場合(ステップS13;YES)、制御部11は、通常の周波数より高い周波数で信号CLK1及びCLK2を出力させるための指示信号を矩形波生成部12に出力する。この指示信号を受けて、矩形波生成部12は通常の周波数より高い周波数で信号CLK1及びCLK2を出力する(ステップS14)。湿度検出部13は電圧Vhumを取り込み、異なるタイミングで複数の検出電圧Vを検出する。そして、それぞれの検出電圧Vに対応する湿度の平均値を求め、平均値を湿度データとして制御部11へ出力する(ステップS15)。
【0036】
以上、説明したように、測定された湿度が低湿度又は高湿度の予め定められた湿度範囲内である場合、異なるタイミングで電圧Vhumの電圧V2及びV3を複数回測定して複数の湿度を求め、その複数の湿度の平均値を湿度データとして出力することにより、湿度誤差が少なくなり、湿度検出装置1の測定精度を向上させることができる。
【0037】
また、異なるタイミングで複数の検出電圧Vを検出する際は、信号CLK1及びCLK2の周波数を通常の周波数より高くすることによって、湿度データの取得時間の増加を抑えることができる。
【0038】
尚、通常の湿度測定においても、異なるタイミングで複数の検出電圧Vを検出し、それぞれの検出電圧Vに対応する湿度の平均値を湿度データとしている場合、湿度検出部13は、測定された湿度が予め定められた湿度範囲内の時は、通常の湿度測定時に検出する検出電圧Vの数の所定倍(2、3倍)の検出電圧Vを検出し、それぞれの検出電圧Vに対応する湿度の平均値を湿度データとする。つまり、測定された湿度が予め定められた湿度範囲内の時は、通常の湿度測定時よりもサンプル数を増やして湿度データを求めることによって、平均値の精度を向上させる。
【0039】
また、本実施の形態では、湿度検出部13が電圧Vhumを取り込んで異なるタイミングで複数の検出電圧Vを検出し、それぞれの検出電圧Vに対応する湿度の平均値を求め、平均値を湿度データとして出力することとしたが、検出電圧Vの平均値を求めて、その検出電圧Vの平均値から湿度を求めて湿度データとして出力してもよい。この他、複数の検出電圧V(サンプル値)を用いて湿度を求める方法であれば何れの方法であってもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 湿度測定装置
11 制御部
12 矩形波生成部(矩形波出力手段)
13 湿度検出部(検出手段)
Rth 湿度センサ
R1〜R6 抵抗

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抵抗変化型の湿度センサと、
第1矩形波と、当該第1矩形波と極性が反転した第2矩形波を生成して、前記湿度センサの一端に前記第1矩形波を供給すると共に、前記湿度センサの他端に抵抗を介して前記第2矩形波を供給する矩形波出力手段と、
前記湿度センサの他端の電圧を測定して湿度を検出する検出手段と、
を備え、前記検出された湿度が予め定められた範囲の湿度であるとき、前記検出手段は前記湿度センサの他端の電圧を異なるタイミングで複数回測定し、当該複数の測定結果から湿度を検出するものである湿度検出装置。
【請求項2】
前記検出された湿度が予め定められた範囲の湿度であるとき、前記検出手段が前記湿度センサの他端の電圧を異なるタイミングで複数回測定する間、前記矩形波出力手段は前記第1矩形波及び前記第2矩形波の周波数を通常の周波数より高い予め定められた周波数で出力するものである請求項1に記載の湿度検出装置。
【請求項3】
第1矩形波と、当該第1矩形波と極性が反転した第2矩形波を生成して、前記湿度センサの一端に前記第1矩形波を供給すると共に、前記湿度センサの他端に抵抗を介して前記第2矩形波を供給する矩形波出力ステップと、
前記湿度センサの他端の電圧を測定して湿度を検出する第1検出ステップと、
前記検出された湿度が予め定められた範囲の湿度であるとき、前記湿度センサの他端の電圧を異なるタイミングで複数回測定し、当該複数の測定結果から湿度を検出する第2検出ステップと、
を含んだ湿度検出方法。
【請求項4】
前記検出された湿度が予め定められた範囲の湿度であるとき、前記第2検出ステップの前に、前記第1矩形波及び前記第2矩形波の周波数を通常の周波数より高い予め定められた周波数で出力する第2矩形波出力ステップを含んだ請求項3に記載の湿度検出方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−69770(P2011−69770A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−222389(P2009−222389)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】