説明

湿式洗浄装置

【課題】安定動作を維持する揺動機構と、搬送機構とを有し、メンテナンスの容易な湿式洗浄装置を提供する。
【解決手段】洗浄槽19と、洗浄槽19の上部で昇降可能に設けられて中央部が開口して洗浄槽19が開口した中央部を通過するように洗浄槽19の周囲に枠状に延在した上下動板12と、上下動板12に着脱可能に設けて上下動する推力を伝達する昇降手段18と、上下動板12の上部両側に設けられて被洗浄物を搬送する搬送手段16と、搬送手段16を駆動させる駆動源18と、上下動板12の上部両側の搬送手段16に載置して搬送する両側の側部と上部とを一体成形した枠体22と、枠体22の上部から中央に吊設されて被洗浄物を吊した状態に設置する設置部24と、設置部24が洗浄槽19に浸漬されると設置部24を揺動させる揺動手段30とを有し、揺動手段30は、偏芯カム32とカムフォロア35とモーター37とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄を支援する洗浄支援手段に係り、詳しくは、洗浄効果を高めるため、被洗浄物を揺動する揺動手段を具備した湿式洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図3は、特許文献1の湿式処理装置の構成を示す装置構成図である。図3において、湿式処理装置は、被処理物を洗浄する洗浄槽19と、この洗浄槽19の上部で昇降可能に設けられて中央部が開口して洗浄槽19が開口した中央部を通過するように洗浄槽19の周囲に枠状に延在した上下動板12と、この上下動板12に着脱可能に設けて上下動する推力を伝達する昇降手段14と、上下動板12の上部両側に設けられて被処理物を搬送する搬送手段16と、この搬送手段16を駆動させる駆動源18とを有している。
【0003】
また湿式処理装置は、上下動板12の上部両側の搬送手段16に載置して搬送する両側の側部と上部とを一体成形した枠体22と、この枠体22の上部から中央に吊設されて被処理物を吊した状態に設置する設置部24とを有している。さらに湿式処理装置の洗浄槽19、上下動板12、昇降手段14、搬送手段16、及び駆動源18は、中空で周囲を囲む箱状のモジュール本体10内に内蔵され、常に清浄な状態を維持している。
【0004】
上下動板12は昇降可能に支持されており、この上下動板12に昇降手段14を取り付けることで、被処理物を昇降できるように形成されている。これにより、上下動板12が降下すると、設置部24に載置された被処理物は洗浄槽19内の中央部を通過し、処理液に浸漬させることができる。
【0005】
この昇降手段14は、上下動板12に上下動する推力を伝達可能なモータまたはシリンダなどからなる上下動機構により構成される。図3にはモータによる場合が示されており、モータの回転軸には螺旋状のネジ部が形成され、このネジ部に螺合して昇降する昇降板を有し、この昇降板は上下動板12に着脱可能に設けられている。
【0006】
一方シリンダによる場合も同様に、上下動するシリンダの軸の先端を上下動板12に着脱可能に設けられている。このように上下動板12に着脱することで、モータ又はシリンダの両方の付け替えを可能とし、被処理物の洗浄方法又は重量に応じて、適宜選択され取り替えられる。また、昇降手段14は、上下動板12の昇降時に、上下方向の可変範囲での揺動動作を併せ持つことができるため、より効果的な洗浄効果を得ることが可能となる。
【0007】
また、上下動板12には、上部に枠体22を載置して搬送する搬送手段16が上面両側にレール状に取り付けて設けられている。この搬送手段16は、枠体22を次の処理工程に水平搬送する回転式ローラ、チェーン、ベルトなどの無限軌道の搬送機構により形成されている。図3には、搬送ベルトによる場合が示されており、搬送手段16は、上下動板12上の両側に設けた搬送ベルトをお互いに連結して回転駆動させる回転軸16aを備え、この回転軸16aの一端に駆動源18を接続することで駆動するように形成している。
【0008】
この際、搬送手段16は、回転軸16aを駆動源18に磁力継手18aを介して接続されて駆動し、駆動源18が上下動板12の昇降動作と同時に昇降せず磁力継手18aを切り離せるように設けている。これにより搬送手段16は、上下動板12の昇降時に駆動源18がモジュール本体10内で同時に昇降するスペースを少なくできると共に、搬送時の駆動伝達における突然の過負荷による防止時にも切り離せる過負荷防止機構を併せ持つように形成できる。
【特許文献1】特開2007−91464号公報
【0009】
ところが図3における湿式処理装置の昇降手段14は、上下動板12の昇降時に、上下方向の可変範囲での揺動動作を併せ持ち、より効果的な洗浄を可能とするが、モータ又はシリンダで構成されているため、繰り返しの速い上下動作の応答が悪く、トラブルの原因となり、モータ又はシリンダの寿命が短くなる問題があった。
【0010】
また、図3に示されるように、枠体22が方向Aで示される搬入側に搬送手段16の駆動源18が配置され、方向Bで示される回転方向に搬送手段16の搬送ベルトを駆動しているため、枠体22を引き寄せるのではなく、送り出す搬送となっている。このため、搬送時にベルトの伸びなどによる撓みが生じ、搬送トラブルを生じる問題があった。さらに、搬送手段16には搬送ベルトのガイド機構が無いため、搬送時にベルトの撓みによる蛇行が生じる問題があった。モジュール本体10は、内部の状態を常に清浄に維持するため、最小限の扉が設けられているだけで(図示されず)メンテナンススペースが狭く、作業が難しい問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、その目的は、安定動作を維持する揺動機構と、搬送機構とを有し、メンテナンスの容易な湿式洗浄装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の湿式洗浄装置は、被洗浄物を洗浄槽の上部に自動的に搬送して、槽内に浸漬させて洗浄する湿式洗浄装置において、洗浄槽と、洗浄槽の上部で昇降可能に設けられて中央部が開口して洗浄槽が開口した中央部を通過するように洗浄槽の周囲に枠状に延在した上下動板と、上下動板に着脱可能に設けて上下動する推力を伝達する昇降手段と、上下動板の上部両側に設けられて被洗浄物を搬送する搬送手段と、搬送手段を駆動させる駆動源と、上下動板の上部両側の搬送手段に載置して搬送する両側の側部と上部とを一体成形した枠体と、枠体の上部から中央に吊設されて被洗浄物を吊した状態に設置する設置部と、設置部が洗浄槽に浸漬されると設置部を揺動させる揺動手段とを有し、揺動手段は、偏芯カムとカムフォロアとモーターとを具備することを特徴とする。
【0013】
本発明の湿式洗浄装置の搬送手段を駆動させる駆動源は、枠体が搬送手段に搬入されて搬出される搬送手段の搬出側に配備されることを特徴とする。
【0014】
本発明の湿式洗浄装置の搬送手段は、搬送ベルトをガイドするベルト受け板を具備し、ベルト受け板は、搬送ベルトが撓んだとき、搬送ベルトのベルト面が接触する底板と、搬送ベルトの両端が接触する底板の両側に設置された側板とを有し、底板は、ベルト面が接触する面積を減らすためのスリットを有することを特徴とする。
【0015】
本発明の湿式洗浄装置は、洗浄槽、上下動板、昇降手段、搬送手段、駆動源、及び揺動手段を中空で囲い込み内蔵する箱状のモジュール本体を有し、モジュール本体は、上部、下部の2つに分割されて上部が開放可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、揺動機構と搬送機構とは、安定した動作を維持することが可能となり、且つ、十分なメンテナンススペースが確保される。これにより、安定動作を維持する揺動機構と、搬送機構とを有し、メンテナンスの容易な湿式洗浄装置を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の実施の形態について、図を用いて説明する。図1は、本発明による湿式洗浄装置の構成を示す構成図である。図1において、上下動板12に着脱可能に設けて上下動する推力を伝達する昇降手段14は、枠体22が搬入される方向A側に配置され、搬送手段16の駆動源18は、枠体22が搬出される側に配置され、上下動板12の上部両側に設けられて被処理物を搬送する搬送手段16は、搬送ベルトをガイドするベルト受け板40(図示せず)を具備しているところが、図3と異なっている。また、昇降手段14の配置は、枠体22が搬入される方向A側に限定されず、駆動源18は、回転軸16aに直結されても良い。
【0018】
また、モジュール本体11は、上下2つに分割されて開放可能である(図示せず)ところが、図3と異なっている。さらに、本発明による湿式洗浄装置は、揺動手段30を有しており、揺動手段30は、偏芯カム30とカムフォロア35とモーター32とを具備している。図2は、本願発明の湿式洗浄装置のベルト受け板の構造を示す構造図である。図2において、ベルト受け板40は、搬送ベルトが伸びたとき、搬送ベルトのベルト面が接触する底板42と、搬送ベルトが伸びて撓んだとき、両端が接触する底板の両側に設置された側板44とを有し、底板42は、ベルト面が接触する面積を減らすためのスリット46を有している。
【0019】
再び図1において、枠体22が方向Aから搬送手段16の搬入側に搬入されると、駆動源18は枠体22が搬出される側に配置され、方向Bで示される回転方向に搬送ベルトを駆動しているため、枠体22は、駆動源18に引き寄せられる方向にドライブされて搬出される。このため、搬送時にベルトの伸びなどが生じても、枠体22を搬送している側のベルトに撓みは発生せず、撓みによる搬送トラブルを生じることはない。
【0020】
また、図2に示される搬送手段16のベルト受け板40は、搬送ベルトの伸びたベルト面を底板42に接触させることで撓みの発生を抑止することができる。さらに、撓みが発生しても、搬送ベルトの両端を側板44に接触させることで、撓みの増幅が防止される。底板42は、ベルト面が接触する面積を減らすためのスリット46を有している。このため、接触により生じる摩擦抵抗が軽減されることにより、駆動源18の駆動力を損なうことは無い。側板44は、方向Aで示される枠体22が搬入される側がテーパー形状を有している。このため、搬送されてきた枠体22が側板44に衝突し、搬送が停止するトラブルを軽減することができる。
【0021】
揺動手段30は、昇降手段14の近傍に配置されている。昇降手段14が上下動板12を降下させて設置部24を洗浄槽19の中央部に浸漬するまで降下させると、揺動手段30のカムフォロア35はこの上下動板12を受け止める。このとき、昇降手段14は所定の位置までさらに降下する。カムフォロア35が上下動板12を受け止めると、偏芯カム32はモーター37により回転駆動され、所定のストロークでカムフォロア35を上下させ設置部24を揺動する。
【0022】
偏芯カム32やモーター37を交換することにより、揺動ストローク、揺動速度、設置部24の負荷の変化等に合わせて対応することが可能であり、トラブルの原因が無くなり、モーターの寿命も延びる。モジュール本体11は、上下2つに分割されているため、動作条件に対応した部品交換時や搬送系及び洗浄槽のメンテナンスのとき上側が開放されるため、作業スペースを十分確保することが可能となる。
【0023】
以上説明したように本発明によれば、偏芯カムによる揺動機構及び駆動源の最適配置とベルト受け板を有する搬送機構により、安定した洗浄プロセスが可能となり、且つ、上下2つに分割されたモジュール本体により、十分なメンテナンススペースが確保される。これにより、安定した洗浄プロセスにより高い洗浄効率が得られ、且つ、メンテナンスの容易な湿式洗浄装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明による湿式洗浄装置の構成を示す構成図。
【図2】本発明による湿式洗浄装置のベルト受け板の構造を示す構造図。
【図3】従来の湿式処理装置の構成を示す装置構成図。
【符号の説明】
【0025】
11 モジュール本体
12 上下動板
14 昇降手段
16 搬送手段
16a 回転軸
18 駆動源
18a 磁力継手
19 洗浄槽
22 枠体
24 設置部
30 揺動手段
32 偏芯カム
35 カムフォロア
37 モーター
40 ベルト受け板
42 底板
44 側板
46 スリット
A 搬送方向
B 回転方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被洗浄物を洗浄槽の上部に自動的に搬送して、槽内に浸漬させて洗浄する湿式洗浄装置において、
前記洗浄槽と、
前記洗浄槽の上部で昇降可能に設けられて中央部が開口して前記洗浄槽が前記開口した中央部を通過するように前記洗浄槽の周囲に枠状に延在した上下動板と、
前記上下動板に着脱可能に設けて上下動する推力を伝達する昇降手段と、
前記上下動板の上部両側に設けられて前記被洗浄物を搬送する搬送手段と、
前記搬送手段を駆動させる駆動源と、
前記上下動板の上部両側の前記搬送手段に載置して搬送する両側の側部と上部とを一体成形した枠体と、
前記枠体の上部から中央に吊設されて前記被洗浄物を吊した状態に設置する設置部と、
前記設置部が前記洗浄槽に浸漬されると前記設置部を揺動させる揺動手段とを有し、前記揺動手段は、偏芯カムとカムフォロアとモーターとを具備することを特徴とする湿式洗浄装置。
【請求項2】
前記搬送手段を駆動させる駆動源は、前記枠体が前記搬送手段に搬入されて搬出される前記搬送手段の搬出側に配備されることを特徴とする請求項1に記載の湿式洗浄装置。
【請求項3】
前記搬送手段は搬送ベルトをガイドするベルト受け板を具備し、
前記ベルト受け板は、前記搬送ベルトが撓んだとき、前記搬送ベルトのベルト面が接触する底板と、前記搬送ベルトの両端が接触する前記底板の両側に設置された側板とを有し、
前記底板は、ベルト面が接触する面積を減らすためのスリットを有することを特徴とする請求項1又は2に記載の湿式洗浄装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の湿式洗浄装置において、
前記湿式洗浄装置は、前記洗浄槽、前記上下動板、前記昇降手段、前記搬送手段、前記駆動源、及び前記揺動手段を中空で囲い込み内蔵する箱状のモジュール本体を有し、前記モジュール本体は、上部、下部の2つに分割されて前記上部が開放可能であることを特徴とする湿式洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−178677(P2009−178677A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−21266(P2008−21266)
【出願日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(000219004)島田理化工業株式会社 (205)
【Fターム(参考)】