説明

湿潤シート包装体

【課題】 使用開始時に第1層の端部を第2層から円滑に分離して密封状包装材の封止開閉部を通じ引き出すことができる水分解性湿潤シート包装体。
【解決手段】 水分解性シートに洗浄液を含浸した湿潤シートSをプラスチックフィルム製包装袋B内に密封状態で収容する。水分解性シートはパルプと水溶性バインダーにより構成する。湿潤シートSは、帯状をなし長手方向の一定間隔おきに横切断可能線Lを有する。湿潤シートSを、長手方向の一定間隔おきに交互の向きに折り返されて重層された状態で封止開閉蓋Cにより開閉される開口部B1を有する包装袋B内に収容する。開口部B1を通じて湿潤シートSの長手方向の端部を包装袋Bの外部へ引き出すことができる。重層した湿潤シートSの開口部B1に臨む第1層10における長手方向の端部10eは、シートが四重に重ね合わされた折曲端部であり且つ第2層12における前記長手方向の中間部に位置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、清掃に使用した後で水洗トイレ等において流すことができ、長手方向の間隔おきに切断可能な水分解性の湿潤シートが、密封状包装材内に交互の向きに折り返されて重層された状態で収容されてなる包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
清掃用シートとして、洗浄剤を含浸した状態における湿潤強度を保持することにより清掃に使用し得、使用後には、配管内での詰まりを起こさないよう水中での分散が速やかに起きるようにして、水洗トイレに流せるようにしたものが市販されている。
【0003】
このような清掃用シートのうち、複合的な汚れに対する洗浄効果、使用時の強度、廃棄時の水分散性を改善しようとするものの例として、特開2001−161599号公報(特許文献1)に、パルプ紙を複数層積層した全層パルプシートに水分解性溶剤を70wt%以上含有する洗浄水溶液を含浸させたトイレ掃除用物品が開示されている。
【0004】
このような水分解性の清掃用湿潤シートaは、図3に示すように、帯状に連続し、長手方向等間隔に設けられたミシン目d等により簡単に分割できるように構成されているものが多い。この種の清掃用湿潤シートは、含浸する洗浄液の蒸発を防ぐために、交互の向きに折り返されて重層された状態で密封状の袋等の容器fに収容され、繰り返し接着可能な接着剤を介して開口部f1を封止し得る蓋部gを開いて、引き出しつつミシン目d等で分割して使用される。
【0005】
密封状の容器に収容された清掃用湿潤シートは、使用開始前にたとえわずかずつであっても生じ得る水分等の蒸発により、重層した第1層と第2層が密着して半ば一体化した状態となることがある。特に、袋状の容器に収容したも包装体の場合、袋詰の際に袋内の空気を抜くため圧縮されることや、多数の包装体が梱包されたり重積状態で販売店に陳列されることにより圧縮状態となることによって、重層した第1層と第2層が密着して半ば一体化した状態となることが多くなり易い。
【0006】
このように重層した第1層と第2層が密着して半ば一体化した状態となっている場合、使用開始時に第1層を第2層から分離しようとすると、水分散性の湿潤シートであるため、第1層が破れることになり易く、円滑な使用が妨げられた。
【特許文献1】特開2001−161599号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来技術に存した上記のような課題に鑑み行われたものであって、その目的とするところは、使用開始時に第1層の端部を第2層から円滑に分離して密封状包装材の封止開閉部を通じ引き出すことができる水分解性の湿潤シート包装体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する本発明の湿潤シート包装体は、
帯状をなし、長手方向の間隔おきに横切断可能線を有する水分解性の湿潤シートと、封止開閉部を有する密封状包装材を有してなり、前記密封状包装材内に、前記湿潤シートが長手方向の間隔おきに交互の向きに折り返されて重層された状態で収容され、前記封止開閉部を開くことにより湿潤シートの前記長手方向の端部を封止開閉部を通じて密封状包装材の外部へ引き出すことができる湿潤シート包装体であって、
前記重層された状態の湿潤シートのうち、封止開閉部に臨む第1層における前記長手方向の端部は、二重以上に重ね合わされた折曲部であり、且つ、第2層における前記長手方向の中間部に位置することを特徴とする。
【0009】
湿潤シート包装体の重積等による圧縮や、たとえわずかずつであっても生じ得る湿潤シートからの水分等の蒸発により、密封状包装材内に収容された重層状態の湿潤シートの第1層と第2層が半ば一体化した状態となることがあったとしても、封止開閉部に臨む第1層における前記長手方向の端部は、二重以上に重ね合わされた折曲部であり、且つ、第2層における前記長手方向の中間部に位置するので、第1層の端部を第2層から分離させることが容易であり、且つ、その分離作業において第1層の端部が破れることが、二重以上に重ね合わされた折曲部に形成されていることにより効果的に防がれる。
【0010】
上記湿潤シート包装体は、上記横切断可能線が湿潤シートの長手方向における一定間隔おきに設けられ、前記湿潤シートは、長手方向の等間隔おきに交互の向きに折り返されて重層されたものとすることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の湿潤シート包装体においては、湿潤シート包装体の重積等による圧縮や、たとえわずかずつであっても生じ得る水分等の蒸発により、第1層と第2層が半ば一体化した状態となっていても、封止開閉部に臨む第1層における前記長手方向の端部は、二重以上に重ね合わされた折曲端部であり、且つ、第2層における前記長手方向の中間部に位置するので、第1層の端部を第2層から分離させることが容易であり、且つ、その分離作業において第1層の端部が破れることが、二重以上に重ね合わされた折曲部に形成されていることにより効果的に防がれ、使用開始時に第1層の端部を第2層から円滑に分離して密封状包装材の封止開閉部を通じ引き出すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の実施の形態を、それぞれ湿潤シート包装体の模式的断面図を示す図1及び図2を参照しつつ説明する。
【0013】
水分解性の湿潤シート包装体Pは、水分解性のシートに洗浄液を含浸した湿潤シートSを、プラスチックフィルム製の包装袋B(包装体)内に密封状態で収容してなるものである。
【0014】
湿潤シートSを構成する水分解性のシートは、パルプと、水溶性または水により膨潤するバインダーにより構成されている。尤も、湿潤シートSを構成する水分解性のシートはこれに限るものではない。例えば、パルプ以外の天然若しくは合成又はその他の繊維を採用することもできる。また、水溶性または水により膨潤するバインダーとしては、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、その他の天延又は合成高分子物質を適宜採用し得る。
【0015】
水分解性の湿潤シートSに含浸する洗浄液としては、例えば、水、アルコール、界面活性剤等を主成分とするものとすることができる。これ以外に、消臭剤、香料、防腐剤等を適宜添加することができる。尤も、これら以外の成分からなるものであってもよい。
【0016】
湿潤シートSは、帯状をなし、長手方向の一定間隔おきに横切断可能線Lを有する。横切断可能線Lとしては、ミシン目状の線、半切断線(例えばシートの厚さが数分の一の線)を採用し得る。横切断可能線Lは、長手方向に直交する場合に限らず、長手方向に対し傾斜した方向、波線、ジグザグ線等であってもよい。
【0017】
この湿潤シートSは、長手方向の一定間隔おきに交互の向きに折り返されて重層された状態で、封止開閉蓋C(一端部が包装袋Bに固定されたフラップシール)により開閉される開口部B1(封止開閉部)を有する包装袋B内に収容され、封止開閉蓋Cを開くことにより開口した開口部B1を通じて、湿潤シートSの長手方向の端部を包装袋Bの外部へ引き出すことができる。封止開閉蓋Cは、繰り返し接着可能な接着剤を介して開口部B1を開閉可能に封止し得る。なお、密封状包装材は袋状に限らず箱状等であってもよい。
【0018】
重層された状態の湿潤シートSにおける横切断可能線Lは、一層おきの各層において、両端の折り返し部Tの中間に位置する。
【0019】
また、重層された状態の湿潤シートSのうち、開口部B1に臨む第1層10における長手方向(帯状の湿潤シートS全体の長手方向)の端部10eは、図1に示す例ではシートが三重に重ね合わされた折曲端部(図2に示す例ではシートが四重に重ね合わされた折曲端部)であり、且つ、第2層12における前記長手方向の中間部に位置する。図1の場合、第1層10の前記長手方向の端部10eは、シートが二重となる折曲部間に更にシートが挿入された状態の三重に重ね合わされた状態であり、図2の場合、第1層10の前記長手方向の端部10eは、シートが二重となる折曲部間に更に二重に折曲されたシートが挿入された状態の四重に重ね合わされた状態である。
【0020】
密封状の包装袋Bに収容された湿潤シートSは、使用開始前にたとえわずかずつであっても生じ得る水分等の蒸発、並びに、包装袋Bへの袋詰の際に包装袋B内の空気を抜くため圧縮されることや、多数の湿潤シート包装体Pが梱包されたり重積状態で販売店に陳列されることにより圧縮状態となることによって、重層した第1層10と第2層12が密着して半ば一体化した状態となることが多くなり易い。このような状態となっても、開口部B1に臨む第1層10における前記長手方向の端部は、三重又は四重に重ね合わされた折曲端部であり、且つ、第2層12における前記長手方向の中間部に位置するので、第1層10の端部10eを第2層12から分離させることが容易であり、且つ、その分離作業において第1層10の端部が破れることが、三重又は四重に重ね合わされた折曲端部に形成されていることにより効果的に防がれる。そのため、使用開始時に第1層10の端部を第2層12から円滑に分離して包装袋Bの、開口部B1を通じ引き出すことができる。
【0021】
なお、以上の実施の形態についての記述における上下位置関係は、単に図に基づいた説明の便宜のためのものであって、実際の使用状態等を限定するものではない。また、実施の形態についての記述における構成部品の寸法、個数、材質、形状、その相対配置などは、特にそれらに限定される旨の記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではなく、単なる説明例に過ぎない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】湿潤シート包装体の模式的断面図である。
【図2】別の湿潤シート包装体の模式的断面図である。
【図3】従来の湿潤シート包装体の模式的断面図である。
【符号の説明】
【0023】
10 第1層
10e 端部
12 第2層
B 包装袋
B1 開口部
C 封止開閉蓋
L 横切断可能線
P 湿潤シート包装体
S 湿潤シート
T 折り返し部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状をなし、長手方向の間隔おきに横切断可能線を有する水分解性の湿潤シートと、封止開閉部を有する密封状包装材を有してなり、前記密封状包装材内に、前記湿潤シートが長手方向の間隔おきに交互の向きに折り返されて重層された状態で収容され、前記封止開閉部を開くことにより湿潤シートの前記長手方向の端部を封止開閉部を通じて密封状包装材の外部へ引き出すことができる湿潤シート包装体であって、
前記重層された状態の湿潤シートのうち、封止開閉部に臨む第1層における前記長手方向の端部は、二重以上に重ね合わされた折曲部であり、且つ、第2層における前記長手方向の中間部に位置することを特徴とする湿潤シート包装体。
【請求項2】
上記横切断可能線が湿潤シートの長手方向における一定間隔おきに設けられ、前記湿潤シートは、長手方向の等間隔おきに交互の向きに折り返されて重層されたものである請求項1記載の湿潤シート包装体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−204123(P2007−204123A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−26029(P2006−26029)
【出願日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【出願人】(000178583)山崎産業株式会社 (77)
【Fターム(参考)】