説明

湿潤性が良好なポリカーボネート

本発明はポリカーボネート樹脂のアセトン抽出物において測定される式(I)


(式中、RおよびRは独立して水素またはC〜C12−アルキルであるかまたはRおよびRは全体としてC〜C12−アルキリドであり、RおよびRは独立して水素、C〜C12−アルキルまたはフェニルであるか、またはRおよびRはそれらが結合している炭素原子と共にシクロヘキシルまたはトリメチルシクロヘキシルを形成し、Rは水素、C〜C12−アルキル、C〜C12−シクロアルキル、フェニルまたはクミルである。)のカルバメート誘導体の割合が0.2〜300ppmであることを特徴とするポリカーボネートに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明な射出成形品の製造用、特に被覆される射出成形品の製造用の基材物質としてのポリカーボネート、および本発明によるポリカーボネートから得られる成形品を提供する。成形品は、例えば、透明なシート、レンズ、光学記憶媒体もしくは光学記憶媒体用キャリヤーまたは更に車のグレージングの分野からの物品、例えば、光散乱板であり得る。本発明は、特に良好な被覆能力および湿潤性を有し、かつ例えば、溶液から、特に非極性媒体からの色素の適用に好適である光学記憶媒体または光学記憶媒体用キャリヤー、例えば書き込み可能な光学データ記憶装置、を提供する。更に、本発明によるポリカーボネートの光学射出成形品は、比較的汚れる傾向が少ない。
【背景技術】
【0002】
透明な射出成形品は、グレージングおよび記憶媒体の分野においてとりわけ重要である。
【0003】
光学データ記憶媒体は、ますます様々な大量のデータ用記録および/または保管媒体として使用されている。このタイプの光学データ記憶装置の例は、CD、スーパーオーディオCD、CD−R、CD−RW、DVD、DVD−R、DVD+R、DVD−RW、DVD+RWおよびBDである。
【0004】
透明な熱可塑性樹脂、例えば、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレートおよびそれらの化学変性体が光学記憶媒体に典型的に使用されている。基材物質としてのポリカーボネートは、特に追記型(written to once and read several times)光ディスク、および更に書換型(written to several times)光ディスク、および車のグレージングの分野からの成形品、例えば光散乱板の製造に好適である。この熱可塑性樹脂は、優れた機械的安定性を有し、寸法変化を受けにくく、かつ高い透明度および衝撃強さが卓越している。
【0005】
相界面法により製造されるポリカーボネートは、上記フォーマットの光学データ記憶装置、例えばコンパクトディスク(CD)またはデジタル多用途ディスク(DVD)の製造に使用され得る。これらのディスクはしばしば射出成形法におけるその製造中に高い電場を形成する性質を有する。光学データ記憶装置の製造中、基材上のこの高い場の強度は、例えば環境からのダスト誘引の原因になったり射出成形物品(例えばディスク)が互いに他着する原因になったりし、このことは完成射出成形物品の質を低下させ、射出成形工程を困難にする。
【0006】
静電帯電、特に(光学データキャリヤー用)ディスクの静電帯電は、とりわけ非極性媒体(例えば非極性色素)の不十分な湿潤性や溶媒(例えばジブチルエーテル、エチルシクロヘキサン、テトラフルオロプロパノール、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンまたはオクタフルオロプロパノール)からの色素の不十分な被覆の原因になることが更に知られている。従って、書き込み可能なデータ記憶装置への色素の塗布中の基材表面における高い電場は、例えば色素の不規則な被覆の原因になり、それゆえに情報層における欠陥の原因になる。
【0007】
基材物質の静電帯電の程度は、例えば基材表面から特定の距離における電場の測定により測定し得る。
【0008】
例えば色素成分がスピンコート法で表面に塗布される光学データ記憶装置の場合、書き込み可能層の均一塗布を保証し、問題のない製造工程を確実するためには低い絶対電場強度が必要である。
【0009】
更に、高い静電場は上記の事のため、基材物質に関して収量の損失の原因になる。このことは、特定の製造工程停止の原因になり、コスト高に関連する。
【0010】
この高帯電の問題を解決するために、いくつかのセットアップが行われてきた。一般的に、基材物質に帯電防止剤を添加剤として添加する。帯電防止ポリカーボネート組成物は、例えばJP 62 207 358−Aに開示されている。ここでは、とりわけリン酸誘導体をポリカーボネートに帯電防止剤として添加している。EP 0922 728は、様々な帯電防止剤、例えばポリアルキレングリコール誘導体、エトキシ化ソルビタンモノラウレート、ポリシロキサン誘導体、ホスフィンオキサイドおよびジステアリルヒドロキシアミン(これらは単独で使用または混合物として使用される)を開示している。日本国出願JP 62 207 358は、亜リン酸のエステルを添加剤として開示している。米国特許第5,668,202号は、スルホン酸誘導体を開示している。WO 00/50488において、3,5−ジ−tert−ブチルフェノールが相界面法における連鎖停止剤として使用されている。この連鎖停止剤は、常套の連鎖停止剤と比較して対応する基材物質の低い帯電をもたらす。JP 62 207 358−Aはポリエチレン誘導体およびポリプロピレン誘導体をポリカーボネートの添加剤として開示している。
【0011】
しかしながら、上記添加剤は更に基材物質の性質に悪影響も有し得る。なぜなら、上記添加剤がこの物質から移行する、すなわち、表面へ(to... the ... the surface)、傾向があるからである。このことは実際帯電防止性に望ましい効果であるが、沈着物(deposit)や問題のある複写の形成の原因となり得る。更に、ポリカーボネートにおけるオリゴマーの含量が、更に機械的性質の低いレベルおよびガラス転移温度の低下の原因となり得る。更に、これらの添加剤は副反応を起こし得る。続くエステル交換法により得られたポリカーボネートの「エンドキャッピング」は不経済であり、かつ達成される結果は最適ではない。この物質への新しい末端基の導入は、コスト高に関連する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、基材表面における場の強さの要求(できるだけ低い)に合い、かつ上記不都合の発生を防止する組成物または基材物質を提供する事が本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
驚くべき事に、この目的は、光学データ記憶装置の製造に、低い分子量含量で特になるべく少しの不適当な構造、特になるべく少しの溶媒抽出物中に蓄積し得る特定構造のカルバメート化合物を含む物質を使用する事により達成された。
【0014】
基材物質中に一定量のカルバメート化合物が添加剤の添加、前駆体の汚染または製造工程それ自体により生じ得る。
【0015】
本発明は、基材物質として、式(1)
【化1】

(式中、
およびR は互いに独立して水素またはC〜C12−アルキル、好ましくはメチル、エチル、プロピル、イソプロピルまたはブチルであるか、または
およびR は全体でC〜C12−アルキリデン、好ましくはC〜C−アルキリデン、特に好ましくはC〜C−アルキリデンであり、
およびR は互いに独立して水素、C〜C12−アルキル、好ましくはC〜C−アルキル、またはフェニルであるか、またはRおよびRはそれらが結合している炭素原子と共にシクロヘキシルまたはトリメチルシクロヘキシルを形成し、かつ
は水素、C〜C12−アルキル、C〜C12−シクロアルキル、フェニルまたはクミル、好ましくは水素、tert−ブチルまたはクミルである。)
から選択される一以上の化合物がHPLCを用いるクロマトグラフィーによるアセトン抽出物において0.2〜300ppm、好ましくは0.2〜250ppm、特に好ましくは0.2〜200ppm測定されるポリカーボネートを提供する。
【0016】
本発明によるポリカーボネートは、射出成形物品、好ましくは光ディスクへの加工後、低い静電帯電を示す。このことは光学記憶媒体の製造に特に重要である。
【0017】
本発明によるポリカーボネート/基材物質は、好適な処理パラメータの選択により製造され得る。
【0018】
式1または4の化合物の含量はいくつかの要因により影響され得る。例えば、反応物および補助物質の純度が重要である。更に、処理パラメータ、例えば使用されるビスフェノールとホスゲンとのモル比、反応中の温度、反応および滞留時間が決め手となり得る。当業者にとって、目的は、基材物質におけるカルバメート含量の本発明による範囲を超えないように処理を制御することである。
【0019】
所望の基材物質を得るための処理パラメータの好適な選択を以下に示す。
【0020】
常套の連続ポリカーボネート合成において、使用される全ビスフェノールに基づく使用されるホスゲンの過剰量は3〜100mol%、好ましくは5〜50mol%であるが、本発明による基材物質は過剰量のホスゲン5〜20mol%、好ましくは8〜17mol%を用いて製造される。この手順において、ホスゲンの計量添加中および計量添加後、続く水酸化ナトリウム溶液の計量添加一回もしくは数回または続く対応するビスフェノレート溶液の計量添加によって水性相のpHをアルカリの範囲、好ましくは8.5〜12に保持するが、触媒の添加後、pHを10〜14に調節する。ホスゲン化中の温度は0℃〜40℃、好ましくは5℃〜36℃である。
【0021】
本発明によるポリカーボネートは、相界面法により製造される。このポリカーボネートの合成方法は、文献に多く開示されている(例えば一例としてH.Schnell著、Chemistry and Physics of Polycarbonates、Polymer Reviews、第9巻、Interscience Publishers、ニューヨーク、1964年、33頁以降、Polymer Reviews、第10巻、“Condensation Polymers by Interfacial and Solution Methods”、Paul W.Morgan、Interscience Publishers、ニューヨーク、1965年、第VIII章、325頁、Dr.U.Grigo、Dr.K.KircherおよびDr.P.R.Mueller著、Becker/Braun中の“Polycarbonate”、Kunststoff−Handbuch、第3/1巻、Polycarbonate,Polyacetale,Polyester,Cellulose−ester、Carl Hanser Verlag Munich、ウィーン、1992年、118〜145頁およびEP−A 0 517 044参照。)。
【0022】
この方法によると、最初に水性アルカリ溶液(または懸濁液)に投入したビスフェノール(または種々のビスフェノールの混合物)の二ナトリウム塩のホスゲン化を第二の相を形成する不活性有機溶媒または溶媒混合物の存在下で行う。形成されたオリゴカーボネート、これは主に有機相に存在する、を好適な触媒の酸を用いて縮合反応させて有機相に溶解される高分子量ポリカーボネートを生じる。最後に、有機相を分離し、ポリカーボネートを種々のワークアップ工程(working up step)によりそこから単離する。
【0023】
ポリカーボネートの製造に好適なジヒドロキシアリール化合物は、式(2)
HO−Z−OH (2)
(式中、
Z は一以上の芳香核を有してもよく、置換されていてもよく、かつ脂肪族もしくは脂環式基またはアルキルアリールまたはヘテロ原子を架橋員として含んでもよい、炭素原子を6〜30個有する芳香族基である。)
のジヒドロキシアリール化合物である。
【0024】
好ましくは、式(2)におけるZは、式(3)
【化2】

(式中、
およびR は互いに独立してH、C〜C18−アルキル、C〜C18−アルコキシ、ハロゲン(例えばClまたはBr)、または任意に置換されていてもよいアリールまたはアラルキル、好ましくはHまたはC〜C12−アルキル、特に好ましくはHまたはC〜C−アルキル、より特に好ましくはHまたはメチルであり、かつ
X は単結合、−SO−、−CO−、−O−、−S−、C〜C−アルキル、好ましくはメチルまたはエチルで置換されていてもよいC〜C−アルキレン、C〜C−アルキリデンまたはC〜C−シクロアルキリデン、および更に任意にヘテロ原子を含む別の芳香環が縮合していてもよいC〜C12−アリーレンである。)
の基である。
【0025】
好ましくは、Xは単結合、C〜C−アルキレン、C〜C−アルキリデン、C〜C−シクロアルキリデン、−O−、−SO−、−CO−、−S−、−SO
または式(3a)または(3b)
【化3】

(式中、
およびR は各Xに関して個々に選択されてもよく、互いに独立して水素またはC〜C−アルキル、好ましくは水素、メチルまたはエチルであり、
は炭素であり、かつ
n は4〜7の整数、好ましくは4または5、但し少なくとも一つの原子XにおいてRおよびRが同時にアルキルである。)
の基である。
【0026】
ジヒドロキシアリール化合物の例は、ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシジフェニル、ビス−(ヒドロキシフェニル)−アルカン、ビス−(ヒドロキシフェニル)−シクロアルカン、ビス−(ヒドロキシフェニル)−アリール、ビス−(ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス−(ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス−(ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス−(ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス−(ヒドロキシフェニル)スルホキシド、1,1’−ビス−(ヒドロキシフェニル)−ジイソプロピルベンゼンおよびそれらの核アルキル化化合物および核ハロゲン化化合物である。
【0027】
本発明による使用されるポリカーボネートの製造に好適なジフェノールは、例えば、ヒドロキノン、レソルシノール、ジヒドロキシジフェニル、ビス−(ヒドロキシフェニル)−アルカン、ビス−(ヒドロキシフェニル)−シクロアルカン、ビス−(ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス−(ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス−(ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス−(ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス−(ヒドロキシフェニル)スルホキシド、α,α’−ビス−(ヒドロキシフェニル)−ジイソプロピルベンゼンおよびそれらの核アルキル化化合物および核ハロゲン化化合物である。
【0028】
好ましいジフェノールは、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニル−プロパン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−フェニル−エタン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,4−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、1,3−ビス−[2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル]ベンゼン(ビスフェノールM)、2,2−ビス−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、ビス−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−メタン、2,2−ビス−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、ビス−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、2,4−ビス−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、1,3−ビス−[2−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル]−ベンゼンおよび1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(ビスフェノールTMC)である。
【0029】
特に好ましいジフェノールは、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−フェニル−エタン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、2,2−ビス−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−シクロヘキサンおよび1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(ビスフェノールTMC)である。
【0030】
これらおよび別の好適なジフェノールは、例えば、US−A 2 999 835、3 148 172、2 991 273、3 271 367、4 982 014および2 999 846、ドイツ国公開特許第1 570 703号、第2 063 050号、第2 036 052号、第2 211 956号および第3 832 396号、フランス国特許明細書第1 561 518号、モノグラフ“H.Schnell著、Chemistry and Physics of Polycarbonates、Interscience Publishers、ニューヨーク、1964年、28頁以下;102頁以下”、および“D.G.Legrand、J.T.Bendler著、Handbook of Polycarbonate Science and Technology、Marcel Dekker ニューヨーク、2000年、72頁以下”に開示されている。
【0031】
ホモポリカーボネートの場合、一種類のジフェノールのみが使用され、コポリカーボネートの場合、二種類以上のジフェノールが使用される。使用されるジフェノールは、合成に添加される他の化学物質および補助物質と同様に、それ自身の合成、取り扱いおよび保管由来の不純物が混合し得る。しかしながら、できるだけ純粋な原料を用いて処理することが望ましい。
【0032】
分子量の調整に必要とされる単官能性連鎖停止剤、例えば、フェノールまたはアルキルフェノール、特にフェノール、p−tert−ブチルフェノール、iso−オクチルフェノール、クミルフェノール、それらのクロロ炭酸エステルまたはモノカルボン酸の酸塩化物またはこれらの連鎖停止剤の混合物は、どれも反応にビスフェノレートと共に供給されるか、または合成の所望の時点で(ホスゲンまたはクロロ炭酸末端基が反応混合物中に存在する間、または連鎖停止剤として酸塩化物およびクロロ炭酸エステルの場合、充分ポリマー形成のフェノール性末端基が利用可能な間)添加される。しかしながら、好ましくは連鎖停止剤はホスゲン化後、ホスゲンが既になく触媒がまだ計量添加されていない時ある位置においてまたはある時点において添加されるか、または触媒の前、触媒と共にまたはそれに平行して計量添加される。
【0033】
通常連鎖停止剤の前に添加すること以外同様に、使用される分枝剤または分枝剤混合物を合成に添加する。トリスフェノール、四級フェノールまたはトリ−もしくはテトラカルボン酸の酸塩化物が通常使用されるか、または更にポリフェノールもしくは酸塩化物の混合物が使用される。
【0034】
使用され得る三以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物のいくつかは、例えば、
フロログルシノール、
4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプト−2−エン、
4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプタン、
1,3,5−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ベンゼン、
1,1,1−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−エタン、
トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−フェニルメタン、
2,2−ビス−[4,4−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−シクロヘキシル]−プロパン、
2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル−イソプロピル)−フェノールおよび
テトラ−(4−ヒドロキシフェニル)−メタン
である。
【0035】
他の三官能性化合物のいくつかは、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、トリメシン酸、塩化シアヌルおよび3,3−ビス−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−オキソ−2,3−ジヒドロインドールである。
【0036】
好ましい分枝剤は、3,3−ビス−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−オキソ−2,3−ジヒドロインドールおよび1,1,1−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−エタンである。
【0037】
相界面合成において使用される触媒は、三級アミン、特にトリエチルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン、N−エチルピペリジン、N−メチルピペリジンおよびN−i/n−プロピルピペリジン;四級アンモニウム塩、例えばテトラブチルアンモニウム/トリブチルベンジルアンモニウム/テトラエチルアンモニウム 水酸化物/塩化物/臭化物/硫酸水素塩/テトラフルオロボレート;およびアンモニウム化合物に対応するホスホニウム化合物である。これらの化合物は、文献に典型的な相界面触媒として開示されており、市販されており、かつ当業者によく知られている。この触媒は合成に単独で、混合物で、または更に並んでかつ連続して、要すれば更にホスゲン化前に添加され得るが、ホスゲンの導入後の計量添加が好ましい(但しオニウム化合物またはオニウム化合物の混合物が触媒と使用される場合を除く)。オニウム化合物またはオニウム化合物の混合物が使用される場合、ホスゲンの計量添加前の添加が好ましい。触媒の計量添加は、バルクにおいて、不活性溶媒、好ましくはポリカーボネート合成の溶媒において、または更に水性溶液として、かつ三級アミンの場合、その酸、好ましくは無機酸、特に塩化水素酸とのアンモニウム塩として行われ得る。いくつかの触媒が使用されるか、または触媒の総量の部分量が計量添加される場合、もちろん計量添加の異なる方法が更に異なる場所または異なる時間において行われてもよい。使用される触媒の総量は、使用されるビスフェノールのモルに基づいて0.001〜10mol%、好ましくは0.01〜8mol%、特に好ましくは0.05〜5mol%である。
【0038】
ポリカーボネートの常套の添加剤を、更に本発明によるポリカーボネートに常套の量で添加してもよい。添加剤の添加は、使用または色の継続時間を長くし(安定剤)、処理を単純にし(例えば、離型剤、流動助剤、帯電防止剤)、または特定のストレスに対するポリマーの特性を適合させる(耐衝撃性改良剤、例えばゴム;防炎加工剤、着色剤、ガラス繊維)のに役立つ。
【0039】
これらの添加剤は、ポリマー溶融物に単独でまたは所望の混合物でまたはいくつかの異なる混合物で、かつ特に直接ポリマーの単離においてまたはいわゆる配合工程におけるグラニュールの溶融後添加し得る。これに関連して、添加剤またはそれらの混合物をポリマー溶融物に固体として、すなわちパウダーとして、または溶融物として添加し得る。計量添加の他のタイプは、添加剤または添加剤混合物のマスターバッチまたはマスターバッチ混合物の使用である。
【0040】
好適な添加剤は、例えば、“Additives for Plastics Handbook、John Murphy、Elsevier、オックスフォード、1999年”および“Plastics Additives Handbook、Hans Zweifel、Hanser、ミュンヘン、2001年”に開示されている。
【0041】
好ましい熱安定剤は、例えば、有機ホスフィット、ホスホネートおよびホスファン、通常有機基が完全にまたは部分的に任意に置換されていてもよい芳香族基からなる。使用されるUV安定剤は、例えば、置換ベンゾトリアゾールである。これらおよび他の安定剤は、単独でまたは組み合わせて使用して上述の形態のポリマーに添加してもよい。
【0042】
更に、加工助剤、例えば、離型剤、通常長鎖脂肪酸の誘導体を添加してもよい。例えば、ペンタエリトリトールテトラステアレートおよびグリセロールモノステアレートが好ましい。それらは、それ自体または混合物で、好ましくは組成物の重量に基づいて0.02〜1wt.%の量で使用される。
【0043】
好適な難燃添加剤は、ホスフェートエステル、すなわちトリフェニルホスフェート、レソルシノール二リン酸エステル、臭素含有化合物、例えば臭化リン酸エステル、臭化オリゴカーボネートおよびポリカーボネート、および好ましくはフッ化有機スルホン酸の塩ある。
【0044】
好適な耐衝撃性改良剤は、例えば、少なくとも一種類のポリブタジエンゴム、アクリレートゴム(好ましくはエチルまたはブチルアクリレートゴム)、エチレン/プロピレンゴム、から選択される一種類以上のグラフトーベース、およびスチレン、アクリロニトリルまたはアルキルメタクリレート(好ましくはメチルメタクリレート)からなる群からの少なくとも一種類モノマーから選択されるグラフトモノマーを含有するグラフトポリマー、またはメチルメタクリレートまたはスチレン/アクリロニトリルにグラフトした相互貫入シロキサンおよびアクリレートネットワークである。
【0045】
更に、着色剤、例えば有機色素または顔料もしくは無機顔料またはIR吸収剤を単独で、混合物でまたは更に安定剤、ガラス繊維、ガラス(中空)ビーズまたは無機充填材との組み合わせで添加してもよい。
【0046】
本発明によるポリカーボネートは、更に式(4)
【化4】

(式中、
、R、RおよびR は、式(1)に関して定めたものと同じ意味を有する)
のカルバメート化合物を含有し得る。
【0047】
式(4)のカルバメート化合物の含量を、水酸化ナトリウム溶液を用いるアルカリ加水分解後にHPLCを用いてアセトン抽出物において測定し、概して0.2〜500ppm、好ましくは0.2〜400ppm、特に好ましくは0.2〜300ppmである(更に実施例も参照)。
【0048】
本出願は、更に本発明によるポリカーボネートから得られる押出品および成形品、特に透明な製品の分野での使用、より特に光学的使用の分野、への押出品および成形品、例えば、シート、多層シート、グレージング、拡散板、ランプカバーまたは光学データ記憶装置、例えば種々の読み取り専用または追記型および更に要すれば書換可能な態様でオーディオCD、CD−R(W)、DVD、DVD−R(W)およびミニディスク、を提供する。
【0049】
本発明は、更に押出品および成形品の製造への本発明によるポリカーボネートの使用を提供する。
【0050】
更なる用途は、例えば、以下のものであるが、これは本発明の対象を限定するものではない。
1.建物、乗り物および航空機の多くの領域で必要なもの、およびヘルメットのバイザーとして知られている、セイフティパネル、
2.フィルム、
3.吹込成形品(例えばUS−A 2 964 794参照)、例えば1〜5ガロンの採水器、
4.透明のシート、例えばソリッドシート(solid sheet)または特に中空室シート(hollow chamber sheet)、例えば建物(例えば、鉄道停車場、温室および照明装置)をカバーするもの、
5.光学データ記憶媒体、例えばオーディオCD、CD−R(W)、DCD、DVD−R(W)、ミニディスク、および次世代製品、
6.信号灯のハウジングまたは交通標識、
7.要すれば表面に印刷可能な、連続気泡または独立気泡フォーム、
8.糸およびワイヤ(更にDE−A 11 37 167参照)、
9.照明の適用(lighting use)、任意にガラス繊維を半透明の製品の領域において適用に使用してもよい、
10.透明光散乱性成形品の製造用の所定の量の硫酸バリウムおよび/または二酸化チタンおよび/または二酸化ジルコニウムまたは有機ポリマーアクリレートゴムを含む半透明の配合物(EP−A 0 630 445;EP−A 0 269 324)、
11.ガラス繊維を有し、かつ要すれば更に二硫化モリブデンを1〜10wt.%(全成形組成物に基づく)含むポリカーボネートが要すれば使用される精密射出成形品、例えば、ホルダー(例えばレンズホルダー)、
12.光学機器の部品、特に写真用カメラおよびフィルムカメラ用レンズ(DE−A 27 01 173)、
13.光透過性キャリヤー、特に光ケーブル(light conductor cable)(EP−A 0 089 801)および光ストリップ(illumination cover strip)、
14.導電体用およびプラグハウジングおよびプラグコネクター並びにコンデンサ用電気絶縁材料、
15.携帯電話のハウジング、
16.ネットワークインターフェース装置、
17.有機光伝導体用キャリヤー材料、
18.ランプ、ヘッドライト、光拡散体または内部レンズ、
19.医療的用途、例えば人工肺、透析装置、
20.食品用途、例えば、ボトル、台所用品およびチョコレートの型、
21.自動車分野における用途、例えばグレージングまたはABSとのブレンドの形態のバンパー、
22.スポーツ用品、例えばスラロームポール(slalom pole)、スキーブーツバックル、
23.家庭用品、例えば、キッチンシンク、洗面台、郵便受け、
24.ハウジング、例えば、配電盤、
25.電気装置(例えば、歯ブラシ、ヘアドライヤー、コーヒーマシーンおよび工具、例えば、ドリル、フライス盤、平削り盤およびのこぎり)のハウジング、
26.洗濯機覗き窓、
27.保護眼鏡、サングラス、矯正眼鏡およびそのレンズ、
28.ランプカバー、
29.包装フィルム、
30.チップ入れ、チップキャリア、シリコンウェーハーのボックス、
31.その他の用途、例えば肥育馬屋の戸または動物の檻。
【実施例】
【0051】
実施例
アセトン抽出物におけるカルバメート含量の測定方法を以下に示す。
【0052】
アセトン抽出物中における式(1)のカルバメートビスフェノールAオリゴマーの濃度を以下のように測定する。
【0053】
抽出物50mgをアセトニトリル50ml中に溶解する。この溶液10μlをHPLCに注入する。検出を所望の通りダイオードアレイ検出器(DAD)、蛍光検出器(FLD)または質量分析(MS)を用いて行う。較正を外部標準法(多点較正)により行う。
【0054】
対応する射出成形品(これは光ディスクである)の場の強度の測定方法は以下の通りである。
【0055】
電場強度の測定に関して、Eltec社製のフィールドメーター(field meter)(EMF 581230)を使用する。射出成形処理の終了直後に、成形品(ディスク)を取り除き、ロボットアームを介して置く。この手順の間、ディスクを金属と接触させてはならない。なぜなら、さもなければ測定が妨げられるからである。更に、存在する全てのイオナイザーのスイッチを切らなければならない。
【0056】
フィールドメーターを平行なディスク表面から100mm上の距離に配置する。フィールドメーターの中心を目下測定されるディスクにおけるその突起がディスク中央の39mm外側に存在するように配置する。このディスクをこの手順の間動かさない。射出成形処理の終了後に3〜10秒間このように場を測定する。
【0057】
この測定装置を特定の値がプリントアウトされるx/yレコーダーに接続する。従って、測定される各ディスクに電場の特定の全体値(integral value)を与える。データ量を制限するため、この処理の開始後、測定を100回行う(すなわち、最初の100ディスクの対応する電場を記録する)。60分経過毎に、更に100回測定を行う。4セット目の測定後、すなわち、約3時間後、測定を終える。
【0058】
測定を行う時、測定中の大気湿度を30〜60%、好ましくは35〜50%、かつ室温を25〜28℃にするべきである。
【0059】
この方法において、光ディスク表面における電場をプローブを用いて射出成形処理後直接測定する。従って、ディスクは電場が18kV/mを超える場合書き込みが困難であると考えられている。
【0060】
実施例1
1−(4−tert−ブチルフェニルオキシカルボニルオキシ)−1’−(ピペリジンカルボン酸)4,4’−イソプロピリデンジフェニルエステルの製造
最初に、イソプロピリデンジフェニルビスクロロカーボネート9.30g(0.025mol)をアルゴン下において塩化メチレン150ml中に導入し、この混合物を0℃に冷却する。N−エチルピペリジン48.49g(0.428mol)を塩化メチレン20ml中に溶解し、この溶液を0℃においてビスクロロカーボネート溶液に滴下する。次に塩化メチレン10ml中に溶解したtert−ブチルフェノール3.76g(0.025mol)を0℃においてこの溶液に滴下する。この混合物を室温にし、3時間撹拌する。その後、真空中で溶媒を除去する。残留物をトルエン500ml中で沸騰させ、熱濾過する。冷却するとすぐに結晶が母液中に沈殿する。母液を濾過し、濃縮する(95℃、25mbar)。高粘度赤色油13.2gを得る。この油をエチルアセテート100ml中に溶解し、シリカゲル10g(silica gel 60;0.04〜0.063μm、Merck 109385/Lt:948 785 203)の添加後、この混合物を濃縮し、シリカゲルカラム(カラムφ5cm、充填高約25cm)に導入する。n−ヘキサン/エチルアセテート:(9:1)の混合溶媒を用いるクロマトグラフィー後、ガラス質の固体2.3gを得る。
【0061】
H−NMR(400MHz,CDCl)δ=7.4−7.38(m,2H),7.28−7.23(m,2H),7.22−7.13(m,6H),7.03−6.98(m,2H),3.65−3.45(m,4H),1.70−1.55(m,6H),1.66(s,6H),1.32(s,9H).
【0062】
実施例2
1−(4−tert−ブチルフェニルオキシカルボニルオキシ)−1’−(4,4’−イソプロピリデンジフェニル)N,N−ジエチルカルバメートの製造
最初にイソプロピリデンジフェニルビスクロロカーボネート5.0g(0.013mol)を0℃、アルゴン下において塩化メチレン100ml中に導入する。塩化メチレン30ml中に溶解されたトリエチルアミン4.29g(0.042mol)を0℃においてこの溶液に滴下する。次に塩化メチレン30ml中に溶解されたtert−ブチルフェノール2.02g(0.013mol)を滴下する。この混合物を室温にし、3時間撹拌する。その後、この溶媒を真空中で除去する。残留物をトルエン500ml中において沸騰する温度まで温め、熱濾過する。
【0063】
溶媒を真空中で除去する。粗生成物をシリカゲル(高さ:16cm、φ5cm、移動相n−ヘキサン/EE 9:1)でクロマトグラフする。
【0064】
黄色高粘度樹脂2.1gを得る。
【0065】
H−NMR(400MHz,CDCl)δ=7.45−7.38(m,2H),7.28−7.15(m,8H),7.05−6.98(m,2H),3.50−3.30(m,4H),1.67(s,6H),1.32(s,9H),1.28−1.15(m,6H).
【0066】
実施例3
ピペリジンカルボン酸4−[1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]−フェニルエステルの製造
1−(4−tert−ブチルフェニルオキシカルボニルオキシ)−1’−(ピペリジンカルボン酸)4,4’−イソプロピリデンジフェニルエステル0.5gをTHF20gに溶解し、32%強度の水酸化ナトリウム溶液0.5gおよび水5gを添加し、振とうしながら加水分解を一晩(少なくとも15時間)行う。
【0067】
ワークアップ(working up):
THF溶液の水性相を分離し、有機相を濃縮する。残留物をジエチルエーテルにテークアップし、混合物を水で数回洗う。この有機相を硫酸マグネシウム上で乾燥し、乾燥剤を濾別し、溶媒を真空中で除去する。粗生成物1.46gを得、この生成物をシリカゲル(silica gel 60;0.04〜0.063μm;Merck 109385/Lt:948 785 203)でヘキサン/エチルアセテート(9:1)の混合溶媒を用いてクロマトグラフする(カラムφ5cm、充填高約25cm)。次の過程において、ヘキサン/エチルアセテート(5:1)を溶媒混合物として使用する。白色固体1.0gを得る。
【0068】
H−NMR(400MHz,CDCl)δ=7.20−7.15(m,2H),7.10−7.05(m,2H),7.02−6.95(m,2H),6.75−6.68(m,2H),3.65−3.45(m,4H),1.63(s,6H).
【0069】
実施例4
ジエチルカルバミン酸4−[1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]−フェニルエステルの製造
1−(4−tert−ブチルフェニルオキシカルボニルオキシ)−1’−(4,4’−イソプロピリデンジフェニル)N,N−ジエチルカルバメート0.5gをTHF20g中に溶解し、32%強度の水酸化ナトリウム溶液0.5gおよび水5gを添加し、この混合物を一晩(少なくとも15時間)振とうしながら加水分解する。
【0070】
ワークアップ:
THF溶液の水性相を分離し、有機相を濃縮する。残留物をジエチルエーテルにテークアップし、混合物を水で数回洗う。有機相を硫酸マグネシウム上で乾燥し、乾燥剤を濾別し、溶媒を真空中で除去する。粗生成物をシリカゲル(silica gel 60;0.04〜0.063μm;Merck 109385/Lt:948 785 203)上でヘキサン/エチルアセテート(9:1)混合溶媒を用いてクロマトグラフする(カラムφ3cm、充填高約25cm)。次の過程において、ヘキサン/エチルアセテート(1:1)を溶媒混合物として使用する。白色固体0.29gを得る。
【0071】
H−NMR(400MHz CDCl)δ=7.26−7.22(m,2H),7.12−7.08(m,2H),7.04−6.98(m,2H),6.72−6.68(m,2H),3.55−3.35(m,4H),1.67(s,6H),1.35−1.15(m,6H).
【0072】
実施例5
ポリカーボネートの製造を既知の相界面法により行う。これを連続法により行う。
【0073】
ビスフェノーレート溶液(ビスフェノールA;アルカリ含量2.12mol NaOH/mol BPA)を750kg/h(14.93wt.%)、溶媒(塩化メチレン/クロロベンゼン1:1)を646kg/hおよびホスゲンを56.4kg/hで反応器に供給し、反応する。反応器中の温度は35℃である。水酸化ナトリウム溶液(32wt.%)を9.97kg/hで更に計量添加する。縮合反応の過程において、第二の量の水酸化ナトリウム溶液(32wt.%)を29.27kg/hおよび連鎖停止剤の溶液(塩化メチレン/クロロベンゼン1:1中tert−ブチルフェノール11.7wt.%)を34.18kg/hで計量添加する。その後、塩化メチレン/クロロベンゼン(1:1)に溶解されたN−エチルピペリジン(2.95wt.%)を33.0kg/hで触媒として供給する。相を分離し、有機相を希塩化水素酸で一回、水で五回洗浄する。次にポリカーボネート溶液を濃縮し、更に蒸発器において濃縮し、ポリマー溶融物を脱蔵押出機を通して分離し、粗砕する。
【0074】
このように製造されるポリカーボネート(表1参照)300gをアセトン500ml(Fluka,UV分光用ACS)を用いてソックスレー抽出する。抽出量は約5gである。抽出物50mgをアセトニトリル50mlに溶解し、この溶液10μlをHPLCに注入する。MSにより検出を行う。実施例1の基準物質を使用して較正を外部標準法(多点較正)により行う。
【0075】
このポリカーボネート試料における実施例1のカルバメート化合物の含量は160mg/kg(160ppm)である。
【0076】
実施例6
比較例
ポリカーボネートの製造を実施例5に記載されているように行う。しかしながら、ビスフェノレート溶液(ビスフェノールA)を750kg/h(14.93wt.%)、溶媒(塩化メチレン/クロロベンゼン1:1)を646kg/hおよびホスゲンを58.25kg/hで反応器に供給する。水酸化ナトリウム溶液(32wt.%)を12.34kg/hで更に計量添加する。第二の量の水酸化ナトリウム溶液は36.20kg/hであり、実施例5において述べた濃度において連鎖停止剤の量は34.18kg/hである。触媒の量は33kg/hである。ワークアップを実施例5に記述されているように行う。
【0077】
このポリカーボネート(表1参照)300gをアセトン(Fluka UV分光用ACS)500mlを用いてソックスレー抽出する。抽出量は約5gである。抽出物50mgをアセトニトリル50ml中に溶解し、この溶液10μlをHPLCに注入する。MSにより検出を行う。実施例1の基準物質を使用して較正を外部標準法(多点較正)により行う。
【0078】
このポリカーボネート試料中の実施例1のカルバメート化合物の含量は、600mg/kg(600ppm)である。
【0079】
実施例7
ポリカーボネートの製造を既知の相界面法により行う。これは連続法により行う。
【0080】
ビスフェノレート溶液(ビスフェノールA;アルカリ含量2.12mol NaOH/mol BPA)を750kg/h(14.93wt.%)、溶媒(塩化メチレン/クロロベンゼン1:1)を646kg/hおよびホスゲンを56.4kg/hで反応器に供給し、反応させる。反応器中の温度は35℃である。水酸化ナトリウム溶液(32wt.%)を9.97kg/hで更に計量添加する。縮合反応の過程において、第二の量の水酸化ナトリウム溶液(32wt.%)を29.27kg/hおよび連鎖停止剤の溶液(塩化メチレン/クロロベンゼン1:1中tert−ブチルフェノール11.7wt.%)を34.18kg/hで計量添加する。その後、塩化メチレン/クロロベンゼン(1:1)中に溶解したN−エチルピペリジン(2.95wt.%)を33.0kg/hで触媒として供給する。この相を分離し、有機相を希塩化水素酸で一回、水で五回洗浄する。次にポリカーボネート溶液を濃縮し、更に蒸発器において濃縮し、ポリマー溶融物を脱蔵押出機を通して分離し、粗砕する。
【0081】
この方法により製造されたポリカーボネート(表1参照)300gをアセトン(Fluka UV分光用ACS)500mlを用いてソックスレー抽出する。抽出物約5gを得る。抽出物50mgをTHF2gに溶解し、32%強度水酸化ナトリウム溶液0.19mgおよび水0.5gを添加し、振とうしながら加水分解を一晩(少なくとも15時間)行う。加水分解後、溶液を塩化水素酸を用いて酸性化し、THFを用いて5mlにする。この溶液15μlをHPLCに注入する。検出をFLDにより行う。
【0082】
実施例3の基準物質を使用して較正を外部標準法(多点較正)により行う。
【0083】
このポリカーボネート試料中の実施例3のカルバメート化合物の含量は、220mg/kg(220ppm)である。
【0084】
実施例8
比較例
ポリカーボネートの製造を実施例7に記載しているように行う。しかしながら、ビスフェノレート溶液(ビスフェノールA)を750kg/h(14.93wt.%)、溶媒(塩化メチレン/クロロベンゼン1:1)を646kg/hおよびホスゲンを58.25kg/hで反応器に供給する。水酸化ナトリウム溶液(32wt.%)を12.34kg/hで更に計量添加する。第二の量の水酸化ナトリウム溶液は36.20kg/hであり、連鎖停止剤の量は実施例5において述べた濃度において34.18kg/hである。触媒の量は33kg/hである。ワークアップは実施例7において記述されているように行う。
【0085】
このポリカーボネート(表1参照)300gをアセトン(ドイツ国のFluka,UV分光用ACS)500mlを用いてソックスレー抽出する。この抽出物含量は約5gである。この抽出物50mgをTHF2g中に溶解し、32%強度水酸化ナトリウム溶液0.19gおよび水0.5gを添加し、振とうしながら加水分解を一晩(少なくとも15時間)行う。加水分解後、溶液を塩化水素酸を用いて酸性化し、THFを用いて5mlにする。15μlをHPLCに注入する。検出をFLDにより行う。
【0086】
実施例3の基準物質を使用して較正を外部標準法(多点較正)により行う。
【0087】
このポリカーボネート試料における実施例3のカルバメート化合物の含量は、1,200mg/kg(1,200ppm)である。
【0088】
表1

【0089】
表からわかるように、本発明によるポリカーボネートは記述された範囲内にカルバメート濃度を示し、良好な静電特性に関連する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネート樹脂のアセトン抽出物において測定される式(1)
【化1】

(式中、
およびR は互いに独立して水素またはC〜C12−アルキルであるか、またはRおよびRが全体としてC〜C12−アルキリデンであり、
およびR は互いに独立して水素、C〜C12−アルキルまたはフェニルであるか、またはRおよびRがそれらが結合している炭素原子と共にシクロヘキシルまたはトリメチルシクロヘキシルを形成し、かつ
は水素、C〜C12−アルキル、C〜C12−シクロアルキル、フェニルまたはクミルである。)
のカルバメート誘導体含量が0.2〜300ppmであることを特徴とする、ポリカーボネート。
【請求項2】
式(1)の化合物を0.2〜250ppmの量で含有する、請求項1記載のポリカーボネート。
【請求項3】
アセトン抽出物中の式(1)の化合物の含量が0.2〜200ppmである、請求項1記載のポリカーボネート。
【請求項4】
式(1)中、
およびR が互いに独立して水素、メチル、エチル、プロピルまたはブチルであるか、またはRおよびRが全体でC〜C−アルキリデンであり、
およびR が互いに独立して水素、C〜C−アルキルまたはフェニルであるか、またはRおよびRがそれらが結合している炭素原子と共にシクロヘキシルまたはトリメチルシクロヘキシルを形成し、かつ
が水素、tert−ブチルまたはクミルである
ことを特徴とする、請求項1記載のポリカーボネート。
【請求項5】
基材物質としての請求項1記載のポリカーボネート。
【請求項6】
100mmの距離において測定される、製造される射出成形品の静電場が18kV/m以下である、請求項1記載のポリカーボネート。
【請求項7】
射出成形品の製造への請求項1記載のポリカーボネートの使用。
【請求項8】
100mmの距離において測定される静電場が18kV/m以下である、請求項1記載のポリカーボネートを含有する射出成形品。
【請求項9】
請求項1記載のポリカーボネートを含有する、光ディスク用キャリヤー。
【請求項10】
請求項1記載のポリカーボネートを含有する光学データ記憶媒体。
【請求項11】
HPLCを用いて水酸化ナトリウム溶液でのアルカリ加水分解後にアセトン抽出物において測定される式(4)

(式中、
およびR は互いに独立して水素またはC〜C12−アルキルであるか、またはRおよびRが全体でC〜C12−アルキリデンであり、かつ
およびR は互いに独立して水素、C〜C12−アルキルまたはフェニルであるか、またはRおよびRがそれらが結合している炭素原子と共にシクロヘキシルまたはトリメチルシクロヘキシルを形成する。)
のカルバメート化合物の含量が0.2〜500ppmであることを特徴とする、ポリカーボネート。

【公表番号】特表2008−524409(P2008−524409A)
【公表日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−547247(P2007−547247)
【出願日】平成17年12月9日(2005.12.9)
【国際出願番号】PCT/EP2005/013216
【国際公開番号】WO2006/072346
【国際公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】