説明

溶剤回収装置

【課題】冷凍機の熱負荷を可能な限り低減してランニングコストを抑制する溶剤回収装置を提供することを課題とする。
【解決手段】溶剤蒸気を含む気体から溶剤を回収する溶剤回収装置1であって、冷凍設備において冷却された冷却媒体が管内を流れるコイルに前記気体を接触させて、該気体に含まれる前記溶剤蒸気を凝縮させる第一の冷却器6と、冷却塔から供給される冷却水が管内を流れるコイルに、前記第一の冷却器6を通過した前記気体を接触させて加熱する加熱器7と、前記冷却塔から供給されて前記加熱器7のコイルの管内を通過した冷却水が管内を流れるコイルに、前記第一の冷却器6へ流す前の前記気体を接触させて冷却する第二の冷却器5と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶剤回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
化学的な処理を伴う生産設備等においては、排気される気体に溶剤蒸気が含まれている。このような溶剤蒸気を回収する技術として、例えば、溶剤蒸気を凝縮させた後に吸着材に吸着させるものが提案されている(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−69435号公報
【特許文献2】特開平5−15725号公報
【特許文献3】特開2008−180459号公報
【特許文献4】特開2009−66578号公報
【特許文献5】特開2005−103378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
気体に含まれる溶剤蒸気を凝縮させるには、気体が流れる流路に配置したコイルの管内に冷却水あるいは冷媒を流す必要がある。この場合の冷熱源としては、冷凍機や冷却塔を挙げることができる。ここで、冷凍機の場合には膨張圧縮サイクルを行うために圧縮機で多大な動力を要するのに対し、冷却塔の場合には大気との熱交換及び気化熱の作用で冷却するため、ファンやポンプといった補機類の動力を要するだけである。このため、溶剤蒸気を含む気体の冷却に際しては可能な限り冷却塔を冷熱源として用いることがランニングコストの低減につながる。
【0005】
しかしながら、冷却塔から供給される冷却水の温度は、原理的に外気温程度にまでしか下げることができないため、ガスの冷却に際し、単に冷却塔からの冷却水で始めに冷却を行い、次に冷凍機からの冷却媒体で冷却を行なうこととしただけでは、ランニングコストの更なる低減は見込めない。
【0006】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、冷凍機の熱負荷を可能な限り低減してランニングコストを抑制する溶剤回収装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、冷凍機からの冷却媒体が管内を流れるコイルを有する第一の冷却器の下流側と上流側に、冷却塔からの冷却水が管内を流れるコイルをカスケード的に配置した。そして、冷却塔からの冷却水が流れる経路は、第一の冷却器の下流側に設置されたコイルを最初に通過し、次に、第一の冷却器の上流側に設置されたコイルを通過する構成を採る。
【0008】
詳細には、溶剤蒸気を含む気体から溶剤を回収する溶剤回収装置であって、冷凍設備において冷却された冷却媒体が管内を流れるコイルに前記気体を接触させて、該気体に含まれる前記溶剤蒸気を凝縮させる第一の冷却器と、冷却塔から供給される冷却水が管内を流れるコイルに、前記第一の冷却器を通過した前記気体を接触させて加熱する加熱器と、前記冷却塔から供給されて前記加熱器のコイルの管内を通過した冷却水が管内を流れるコイルに、前記第一の冷却器へ流す前の前記気体を接触させて冷却する第二の冷却器と、を備
える。
【0009】
上記の冷却媒体とは、冷凍設備によって製造された冷熱を輸送する液体あるいは気体であり、例えば、水やブライン、冷媒ガス等を例示できる。溶剤蒸気を含む気体から溶剤を回収する場合、気体の調温は不要なため、溶剤蒸気を凝縮させる目的で冷やした気体を、一定の温度で排出させる必要は無い。
【0010】
ここで、第一の冷却器のコイルを流れる冷却媒体の温度が、少なくとも冷却塔から供給される冷却水よりも低ければ、第一の冷却器を通過した後の気体は、少なくとも冷却塔から供給される冷却水よりは低い温度になるため、この気体と熱交換を行うコイルの管内に冷却塔からの冷却水を流せば、冷却塔からの冷却水が更に冷熱を付与されて冷却される(通過気体から見ると、このコイルの下流では昇温するため、このコイルは加熱コイルとして作用する)ことになる。冷却塔を出た直後の冷却水よりも更に温度が低下した冷却水を、第一の冷却器の上流側に配置した第二の冷却器のコイルの管内に流してやることにより、第一の冷却器に流入する気体の温度が、冷却塔が配置される屋外の温度よりも更に低い温度にまで下がる。
【0011】
この結果、第一の冷却器の上流側に配置したコイルに単に冷却塔からの冷却水を流す場合に比べて、第一の冷却器へ冷却媒体を供給する冷凍設備の熱負荷を大幅に削減することが可能となる。これにより、冷凍機の熱負荷を可能な限り低減してランニングコストを抑制することが可能となる。
【0012】
また、前記加熱器および前記第二の冷却器のコイルの管内を流れる冷却水は、前記冷却塔を通過する水循環経路であって、該冷却塔から該加熱器を経た後、該第二の冷却器を経て再び該冷却塔へ戻る水循環経路を循環するものであってもよい。上記溶剤回収装置がこのように構成されていることにより、溶剤回収装置よりも上位の装置から送られる気体の温度が高くても、第二の冷却器や加熱器が適当な温度範囲を逸脱することなく、溶剤回収装置の運転状態を保つことができる。
【0013】
また、上記溶剤回収装置は、前記加熱器を通過した前記気体中の溶剤蒸気を吸着材で吸着する吸着回収部を更に備えるものであってもよい。溶剤回収装置がこのように構成されていることにより、第一の冷却器や第二の冷却器によってもなお凝縮しない溶剤蒸気が残留していても、溶剤回収装置から排気される気体を確実に浄化することが可能である。
【発明の効果】
【0014】
上記溶剤回収装置であれば、冷凍機の熱負荷を可能な限り低減してランニングコストを抑制することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】溶剤回収装置の構成図である。
【図2】NMP飽和濃度を示したグラフである。
【図3】一般的な溶剤回収装置の構成図である。
【図4】変形例に係る溶剤回収装置の凝縮回収部を拡大した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態に係る溶剤回収装置の構成を図1に示す。溶剤回収装置1は、図1に示すように、溶剤蒸気を含む所定の気体(以下、単にガスと呼ぶ)をコイルで冷却して溶剤を凝縮回収する凝縮回収部2と、凝縮回収部2を通過したガス中に残る溶剤をゼオライトあるいは活性炭等の吸着材で吸着回収する吸着回収部3とを備える。また、溶剤回収装置1は、ガスを送気する各種のファンや熱交換を行うコイルを備える。
【0017】
溶剤回収装置1は、有機溶剤によって各種の化学処理を行う生産設備類から排気される排気中の溶剤蒸気を回収する装置である。本実施形態では、リチウムイオン電池工場で使用されるN−メチルピロリドン(以下、NMPという)の溶剤蒸気を含む生産排気からNMPを回収することを前提に説明するが、その他の溶剤類であってもよい。リチウムイオン電池工場では電極製造時にNMPを使用する。電極に塗布されたNMPは、ドライヤ(ここでは乾燥処理炉を指す)で蒸発して排気される。溶剤回収装置1は、このドライヤが設置された建物に付帯して設置される装置であり、ドライヤの排気中の溶剤蒸気を回収する。本実施形態では、ドライヤから排気される溶剤蒸気の想定濃度を2000ppmとしている。ドライヤの排気は、風量が200〜1000Nm3/minで温度が80〜10
0℃を想定しているが、以下の説明においては、風量が480Nm3/minで温度が9
7℃とする。溶剤回収装置1で用いる冷却水は、生産設備が設置された建物で生産装置の発熱部を冷却する冷却塔で生成された空調設備のものを用いている。以下、本実施形態では2種類の温度帯域の冷却水が空調用冷却水として循環している建屋に溶剤回収装置1が設置されることを前提に、溶剤回収装置1の構成や動作を説明する。
【0018】
ここで、2種類の温度帯域の冷却水とは、屋外に設置された冷却塔で冷却された冷却水と、冷凍機によって冷却された冷却水(冷水と呼んでもよい)である。前者は、外気温度にもよるが、設計温度を32℃としているため、冷却塔で冷却された冷却水の事を、以下、32℃冷却水と呼ぶことにする。一方、後者は、冷凍機によって7℃に冷却された冷却水であるため、冷凍機で冷却された冷却水の事を、以下、7℃冷却水と呼ぶことにする。32℃冷却水の製造に要する動力は、ヒートポンプを使った7℃冷却水の製造に要する動力に比べて遥かに小さいため、熱負荷をなるべく32℃冷却水で処理することが、溶剤回収装置1全体が消費する動力の削減に効果的である。
【0019】
凝縮回収部2は、図1に示すように、直列に並んだ4基の熱交換コイル(符号4〜7)を有している。以下、上流側から順に、予冷却器4、前置冷却器5(本発明でいう第二の冷却器に相当する)、主冷却器6(本発明でいう第一の冷却器に相当する)、後置加熱器7(本発明でいう加熱器に相当する)と呼ぶことにする。
【0020】
予冷却器4は、ドライヤに外気を給気するためのファン15Aの下流側に設けられた予加熱器8と水循環系9を介して接続されている。このほか、溶剤回収装置1は、後述する吸着ロータ13に冷却凝縮された残りの溶剤蒸気混じりのガスを送気するファン15B、吸着ロータ13の吸着機能の再生のためのファン15Cを備える。各ファンの設計風量は、ファン15Aが450Nm3/min、ファン15Bが534Nm3/min、ファン15Cが54Nm3/minである。予冷却器4は、ドライヤから送られたガスを冷却する
。予冷却器4で除去されたガスの熱は、循環ポンプ19によって水循環系9を循環する水によって予加熱器8へ移送され、吸着回収部3で浄化されて再びドライヤへ送られるガスを加熱する。予冷却器4に流入した97℃のガスは、63℃になって前置冷却器5へ送られる。なお、図1に示す囲み数字は、各部位のガスの温度を示している。
【0021】
水循環系9は、循環系内の圧力を大気圧よりも高く(例えば、ゲージ圧で0.2MPaならば飽和蒸気温度は133.7℃なので、この温度以下であれば沸騰しない)なっており、ドライヤから送られるガスの温度が高温になっても系内の水が沸騰しない。水循環系9内の圧力は、アキュームレータによって一定に保たれる。
【0022】
前置冷却器5は、予冷却器4によって冷却されたガスを更に冷却する。予冷却器4は、経路中に冷却塔を擁する32℃冷却水循環系11の冷却水でガスを冷却する。前置冷却器5に流入した63℃のガスは、27℃になって主冷却器6へ送られる。
【0023】
主冷却器6は、前置冷却器5によって冷却されたガスを更に冷却する。主冷却器6は、経路中に冷凍機を擁する7℃冷却水循環系12の冷却水でガスを冷却する。主冷却器6は、前置冷却器5から送られた27℃のガスを12℃まで冷やす。主冷却器6を通過する冷却水の流量は、主冷却器6の下流側のガスの温度が12℃になるように温度制御を行う流量調整弁10によって調整される。ドライヤから送られるガスが主冷却器6で12℃まで冷やされることにより、主冷却器6の冷却コイルの表面でNMP蒸気が凝縮する。
【0024】
図2は、NMP飽和濃度を示したグラフである。凝縮回収部2では、溶剤蒸気を含むガスが予冷却器4を通過して63℃になると溶剤蒸気の濃度が約2000ppm程度になり、前置冷却器5を通過して27℃になると溶剤蒸気の濃度が約800ppm程度になり、主冷却器6を通過して12℃になると溶剤蒸気の濃度が約270ppmになる。
【0025】
後置加熱器7は、主冷却器6によって冷却されたガスを加熱する。後置加熱器7は、経路中に冷却塔を要する32℃冷却水循環系11の冷却水でガスを加熱する。後置加熱器7は、主冷却器6から送られた12℃のガスを27℃まで加熱する。
【0026】
ここで、32℃冷却水循環系11の冷却水は、次のような経路を辿る。すなわち、冷却塔で冷却された冷却水は、冷却塔を出たのちに後置加熱器7を通り、その次に前置冷却器5を通って再び冷却塔へ戻る。後置加熱器7に流入するガスの温度が12℃なので、後置加熱器7に流入する32℃の冷却水は、後置加熱器7の通過後に17℃となり、前置冷却器5へ流入する。前置冷却器5に流入するガスの温度が63℃なので、前置冷却器5に流入する冷却水は、前置冷却器5の通過後に53℃となり、冷却塔へ再び送られる。なお、32℃冷却水循環系11に設けられる冷却塔は、他の生産設備の冷却塔と統合して運用されているため、冷却塔へ再び送られる53℃の冷却水は他の生産設備の冷却水と混合されることにより、冷却塔に戻る冷却水の返り温度は53℃よりも低い温度になる。
【0027】
以上のように構成されている凝縮回収部2であれば、熱の多くが32℃冷却水循環系11によって処理される。すなわち、32℃冷却水循環系11の冷却水を、後置加熱器7を介さないで前置冷却器5へ流した場合、前置冷却器5を通過したガスは27℃にまでは低下しないため、7℃冷却水循環系12の冷凍機の負荷が増大してしまう。しかし、本実施形態に係る凝縮回収部2であれば、32℃冷却水循環系11の冷却水を、後置加熱器7を介して前置冷却器5へ流すことにより、後置加熱器7を通過することで17℃に冷却された冷却水が前置冷却器5を通過するので、主冷却器6に流入させるガスを予め27℃にまで冷却することができる。
【0028】
本実施形態に係る溶剤回収装置1であれば、凝縮回収部2で熱をカスケード的に有効利用しているため、例えば、図3に示す溶剤回収装置1xのように、32℃冷却水循環系11xの冷却水が流れる前置冷却器5xと7℃冷却水循環系12xの冷却水が流れる主冷却器6xが順に並び、前置冷却器5xの上流側に設けた予冷却器4xと主冷却器6xの下流側に設けた後置加熱器7xを水循環系9の水が流れるような一般的な溶剤回収装置に比べて、7℃冷却水循環系12の熱負荷を大幅に低減することができる(試算ではランニングコストを40%程度削減できる)。すなわち、凝縮回収部2で処理される熱の多くが7℃冷却水循環系12よりも遥かに動力の小さい32℃冷却水循環系11によって処理されることになるので、溶剤回収装置1全体が消費する動力の削減に効果的である。また、32℃冷却水循環系11の冷却水が大温度差で運用されるので、冷却水を循環させるための搬送動力を小さくすることができる。
【0029】
凝縮回収部2によってある程度の溶剤が回収され、その最下流で昇温されたガスは、吸着回収部3へ送られて更に浄化される。吸着回収部3は、図1に示すように、吸着ロータ13や蒸気加熱コイル14を有しており、次のように構成されている。
【0030】
吸着ロータ13は、円筒状の部材の内部にゼオライト等の吸着材を担持したものである。吸着ロータ13の両端面には、図示しないセクション分割カセットが配置されており、このカセットによって吸着ロータ13のガス通過域が3つのセクションに区画される。吸着ロータ13は、このセクション分割カセットと相対的に回転可能なようになっており、このカセットによって吸着ロータ13に処理領域R1、再生領域R2、パージ領域R3が形成される。
【0031】
処理領域R1には、ファン15Bによって送られる凝縮回収部2を出た27℃のガスが通過する。処理領域R1は、通気するガス中のNMPを吸着し、浄化したガスを排出する。処理領域R1を出たガスの多くは、溶剤回収装置1を出て外気と合流し、ドライヤへ送られる。また、処理領域R1を出たガスの一部は、パージ領域R3へ送られる。なお、処理領域R1を出たガスは、一部あるいは全量を屋外へ排気してもよい。
【0032】
パージ領域R3は、吸着ロータ13がセクション分割カセットと相対的に回転することにより、吸着ロータ13のある一点が再生領域R2から処理領域R1へ遷移する途中で形成される領域である。パージ領域R3は、再生直後でインサービス前の高温状態にある吸着材を冷却するための領域であり、処理領域R1を出たガスの一部が通過することにより冷却される。吸着ロータ13が、図1の矢印が示す方向に回転することで、吸着ロータ13のある一点が処理領域R1、再生領域R2、パージ領域R3の順に繰り返し遷移する。
【0033】
パージ領域R3を出たガスは、蒸気加熱コイル14で加熱された後、再生領域R2へ送られる。蒸気加熱コイル14は、溶剤回収装置1が設置された建屋のユーティリティ配管から供給されるボイラーの蒸気でガスを加熱する。蒸気加熱コイル14内の復水は、ドレントラップを介して再びボイラーの給水タンクへ戻される。パージ領域R3から排出された68℃のガスは、蒸気加熱コイル14による加熱で130℃になり、再生領域R2へ送られる。これにより、再生領域R2は高温になり、吸着した溶剤を離脱する。再生領域R2を出たガスは、凝縮回収部2へ再び送られる。これにより、再生加熱によって吸着ロータ13から離脱した溶剤の多くが、凝縮回収部2の主冷却器6で凝縮して回収されることになる。なお、前述のように32℃冷却水循環系11の冷却塔を出た冷却水がそのままの温度で主冷却器6を出たガスと熱交換することは、蒸気加熱コイル14に高熱を供給するボイラーの負荷低減に寄与する。
【0034】
また、凝縮回収部2やファン15A,B,Cの下側には、予冷却器4や前置冷却器5、主冷却器6、後置加熱器7、ファン15A,B,Cを収容するケーシングに、凝縮したNMPを回収するドレン配管16やドレンタンク17が接続されている。ドレンタンク17に回収されたNMPは、ドレンタンク17内に設置された電極式のレベルセンサ18によって発停する排水ポンプ20によって系外へ排水される。
【0035】
なお、上記溶剤回収装置1は、次のように変形してもよい。本変形例に係る溶剤回収装置の凝縮回収部を拡大した図を図4に示す。本変形例に係る溶剤回収装置の凝縮回収部2’は、32℃冷却水が流れる前置冷却器および後置加熱器がそれぞれ2基ずつ設けられている。その他の構成については上記溶剤回収装置1と同様である。本変形例に係る溶剤回収装置の凝縮回収部2’は、図4に示すように、予冷却器4、前置冷却器5F,5R、主冷却器6、後置加熱器7F,7Rを有しており、凝縮回収部2’に流入したドライヤのガスがこれらの熱交換コイルを順に通過する。
【0036】
本変形例に係る溶剤回収装置では、32℃冷却水循環系11’の冷却水は、次のような経路を辿る。すなわち、冷却塔で冷却された冷却水は、冷却塔を出たのちに後置加熱器7Rを通り、その次に前置冷却器5Fへ送られる。前置冷却器5Fを通過した冷却水は、後
置加熱器7Fへ送られ、その後に前置冷却器5Rを通過した後、冷却塔へ再び送られる。
【0037】
以上のように構成されている凝縮回収部2’であれば、熱の多くが32℃冷却水循環系11’によって処理される。よって、凝縮回収部2で処理される熱の多くが、7℃冷却水循環系12’よりも遥かに動力の小さい32℃冷却水循環系11’によって処理されることになるので、溶剤回収装置1全体が消費する動力の削減に効果的である。なお、本変形例では、前置冷却器と後置加熱器がそれぞれ2基ずつ設けられているが、3基以上であってもよい。
【0038】
また、上記溶剤回収装置1は、主冷却器6の冷却コイル内を7℃冷却水循環系12の冷却水が流れる構成になっていたが、冷凍設備のヒートポンプによって減圧された冷媒ガスが直接流れる構成であってもよい。
【0039】
また、上記溶剤回収装置1は、主冷却器6の冷却コイル内を7℃の冷却水が流れ、前置冷却器5と後置加熱器7には冷却塔から供給される32℃の冷却水が流れることを前提としていたが、本発明はこのような態様に限定されるものでなく、主冷却器6の冷却コイル内を流れる冷却水は、少なくとも冷却塔から供給される冷却水よりも低い温度であればよい。
【0040】
また、上記溶剤回収装置1は、7℃冷却水循環系12にのみ流量調整弁10が設けられていたが、32℃冷却水循環系11にも流量調整弁が設けられていてもよい。この場合、32℃冷却水循環系11に設けられる流量調整弁は、例えば、前記冷却器5あるいは後置加熱器7を通過したガスの温度が所定の制御目標値になるように制御する。32℃冷却水循環系11の循環流量をこのようにして制御すれば、冷却水の搬送動力を更に削減できる。
【符号の説明】
【0041】
1・・溶剤回収装置
2,2’・・凝縮回収部
3・・吸着回収部
4・・予冷却器
5,5F,5R・・前置冷却器
6・・主冷却器
7,7F,7R・・後置加熱器
8・・予加熱器
9・・水循環系
11,11’・・32℃冷却水循環系
12,12’・・7℃冷却水循環系
13・・吸着ロータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶剤蒸気を含む気体から溶剤を回収する溶剤回収装置であって、
冷凍設備において冷却された冷却媒体が管内を流れるコイルに前記気体を接触させて、該気体に含まれる前記溶剤蒸気を凝縮させる第一の冷却器と、
冷却塔から供給される冷却水が管内を流れるコイルに、前記第一の冷却器を通過した前記気体を接触させて加熱する加熱器と、
前記冷却塔から供給されて前記加熱器のコイルの管内を通過した冷却水が管内を流れるコイルに、前記第一の冷却器へ流す前の前記気体を接触させて冷却する第二の冷却器と、を備える、
溶剤回収装置。
【請求項2】
前記加熱器および前記第二の冷却器のコイルの管内を流れる冷却水は、前記冷却塔を通過する水循環経路であって、該冷却塔から該加熱器を経た後、該第二の冷却器を経て再び該冷却塔へ戻る水循環経路を循環する、
請求項1に記載の溶剤回収装置。
【請求項3】
前記加熱器を通過した前記気体中の溶剤蒸気を吸着材で吸着する吸着回収部を更に備える、
請求項1または2に記載の溶剤回収装置。
【請求項4】
前記第一の冷却器のコイルを流れる前記冷却媒体の温度は、少なくとも前記冷却塔から供給される冷却水よりも低い、
請求項1から3の何れか一項に記載の溶剤回収装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−101187(P2012−101187A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−252574(P2010−252574)
【出願日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(000169499)高砂熱学工業株式会社 (287)
【Fターム(参考)】