説明

溶剤系美爪料

【課題】経時安定性に優れるため、製造直後と長期保存後の使用性や爪への効果が変化することなく使用できるもので、長期保存後もなめらかに塗布することができ、爪に対する閉塞感が極めて少なく、化粧膜のツヤ及び化粧持ちに優れる溶剤系美爪料溶剤系美爪料の提供。
【解決手段】以下の成分(A)〜(D);(A)特定構造をもつシロキシ基含有(メタ)アクリル酸系共重合体、(B)トリデカフルオロオクチルトリエトキシシランで表面処理した粉体、(C)成分(A)以外の皮膜形成剤、(D)非芳香族系溶剤を配合することを特徴とする溶剤系美爪料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は溶剤系美爪料に関し、さらに詳しくは、経時安定性に優れるため、製造直後と、長期保存後の使用性や爪への効果が変化することなく使用できるもので、すなわち、長期保存後もなめらかに塗布することができ、爪に対する閉塞感が極めて少なく、化粧膜のツヤ及び化粧持ちに優れる溶剤系美爪料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
美爪料は基礎化粧料とは違い、1本を使い切るというより、洋服や外出する場所の雰囲気に合わせた色を使い分けるため、多くの色を保持し、使い切るまでに1年を超えて長期間保有している場合が多い。長期間保有しているといくつかの悪い点が生じる。経時的に徐々に粘度が変化し、粘度が上昇すると伸び広がりが悪く塗布しづらくなったり、塗布時に塗布具のはけ目がついてしまい、塗膜の平滑性や均一性が失われツヤが消失することがあった。粘度が低下すると、色材の沈降や分離が著しく生じ、塗布具への含みが悪くなり、たれ落ちてしまい、塗膜は薄くなることがあった。
美爪料の経時安定性については、色材の沈降や分離が問題となり、ゲル化剤の研究や色材の表面処理について検討されてきている。例えば、高い増粘性を付与し、経時での沈澱や分離を防止する技術(例えば特許文献1、2参照)や、粉体の分散性を上げて沈降を防ぐ技術として、界面活性剤やシリコーン化合物で処理したり、フッ素化合物で処理する技術がある(例えば特許文献3、4参照)。一方、美爪料は長期間爪につけているため、爪に対する閉塞感を低減して負担感を軽減したり、化粧持ちや塗膜の平滑性を向上させた技術がある(例えば特許文献5参照)。
【0003】
【特許文献1】国際公開第02/005756号パンフレット
【特許文献2】特開2003−267839号公報
【特許文献3】特許第3030515号公報
【特許文献4】特表2003−516948号公報
【特許文献5】特開2006−306867号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1や特許文献2ではゲル化剤の研究がなされているものの、経時により粘度が低下することや色材の沈降、分離することを防ぐ技術であり、逆に粘度が上がることの防止や、閉塞感の低減については何ら言及されていない。また、特許文献3や特許文献4では、粉体の分散性をあげて沈降を防止する技術であるが、長期間保存した場合の粘度を低減できることの記載や示唆は一切されていない。また、特許文献5では製造後日数の少ないものでは平滑性があって閉塞感も低減されるが、長期保存品は粘度が上昇して、これら効果が低下してしまう場合があった。
従って、長期保存した際にも、なめらかで使用しやすく、爪に対する閉塞感が極めて少なく、化粧膜のツヤ及び化粧持ちに優れる溶剤系美爪料が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる事情に鑑み、本発明者らは鋭意検討した結果、溶剤系美爪料に特定構造をもつシロキシ基含有(メタ)アクリル酸系共重合体及びトリデカフルオロオクチルトリエトキシシランで表面処理した粉体、特定構造をもつシロキシ基含有(メタ)アクリル酸系共重合体以外の皮膜形成剤、非芳香族系溶剤を配合することで、経時安定性に優れるため、製造直後と、長期保存後の使用性や爪への効果が変化することなく使用でき、長期保存した際にも、なめらかで使用しやすく、爪に対する閉塞感が極めて少なく、化粧膜のツヤ及び化粧持ちにも優れることを見出し、本発明を完成させた。
【0006】
すなわち本発明は、次の成分(A)〜(D)を含有することを特徴とする溶剤系美爪料である。
(A)下記一般式(1)で示されるモノマー(a)55〜65質量%と
【化3】

【0007】
(式中、RはH又はCH、pは2〜6の整数である。)
下記一般式(2)で示されるモノマー(b)20〜30質量%と
【化4】

【0008】
(式中、RはH又はCH、Rは炭素数1〜5のアルキル基又はフェニル基である。)
モノマー(c)として、アクリル酸及び/又はメタクリル酸
15〜20質量%
を重合してなる、シロキシ基含有(メタ)アクリル酸系共重合体
(B)トリデカフルオロオクチルトリエトキシシランで表面処理した粉体
(C)成分(A)以外の皮膜形成剤
(D)非芳香族系溶剤
【発明の効果】
【0009】
本発明の溶剤系美爪料は、経時安定性に優れるため、製造直後と、長期保存後の使用性や爪への効果が変化することなく使用できるもので、長期保存後もなめらかに塗布することができ、爪に対する閉塞感が極めて少なく、化粧膜のツヤ及び化粧持ちに優れる溶剤系美爪料に関するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下本発明を詳細に説明する。
本発明の溶剤系美爪料に用いられる、成分(A)のシロキシ基含有(メタ)アクリル酸系共重合体を構成するモノマー(a)は、共重合体に気体透過性を付与する成分であり、その構造は、下記一般式(1)で示される。
【0011】
【化5】

【0012】
(式中、RはH又はCH、pは2〜6の整数である。)
【0013】
上記モノマー(a)は特に制限無いが、トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルメタクリレート、トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルアクリレート、トリス(トリメチルシロキシ)シリルヘキシルメタクリレート等が好ましく、特にトリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルメタクリレートが好ましい。このモノマー(a)としては各種市販品を使用することができる。
【0014】
モノマー(b)は、共重合体に適度な硬さと柔軟性、他の化粧料成分との相溶性を付与する成分であり、その構造は、下記一般式(2)で示される。
【0015】
【化6】

【0016】
(式中、RはH又はCH、Rは炭素数1〜5のアルキル基又はフェニル基である。)
【0017】
上記モノマー(b)は特に制限無いが、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、フェニルアクリレート等が好ましく、成分(A)の共重合体においては、美爪料に用いる溶剤への溶解性を考慮すると、特にメチルメタクリレートが好ましい。このモノマー(b)としては各種市販品を使用することができる。
【0018】
モノマー(c)は、アクリル酸及び/又はメタクリル酸であり、共重合体の皮膜形成性を向上させ、親水性を付与するための成分であり、成分(A)の共重合体においては、美爪料に用いる溶剤への溶解性を考慮すると、メタクリル酸であることが好ましい。
【0019】
成分(A)のシロキシ基含有(メタ)アクリル酸系共重合体は、これらのモノマーを仕込み量で、(a)55〜65質量%(以下、単に「%」と略す。)、(b)20〜30%、(c)15〜20%の割合で添加し、共重合することにより得られるが、気体透過性や皮膜形成性等を損なわない範囲で、上記(a)〜(c)のモノマー以外に、(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能なモノマーを任意に添加し、共重合することができる。
【0020】
成分(A)の重合方法としては、例えば、各モノマーを溶媒中に溶解し、重合開始剤を添加し、窒素雰囲気中で加熱攪拌する、溶液重合法等が挙げられる。前記重合方法において使用する溶媒は、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコールやアセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等のケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒が挙げられ、これらを適宜混合して用いる。その重合反応は、通常50〜180℃、好ましくは60〜120℃の温度範囲内において行うことができ、この条件下に5〜15時間程度で完結させることができる。
【0021】
本発明において、シロキシ基含有(メタ)アクリル酸系共重合体を製造する方法の好ましい一態様としては、まず、トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルメタクリレート、メタクリル酸およびメチルメタクリレートと、酢酸ブチル、酢酸エチル及びイソプロパノール等の溶媒および2,2’−アゾビスイソブチロニトリル等の重合開始剤をフラスコ等の反応容器に入れ、窒素ガスバブリング等で反応容器中の溶存酸素を除き、密封する。次に、反応容器を恒温槽中に移し、60℃程度で攪拌しながら15時間程度かけて重合を行う方法が挙げられる。
【0022】
このようにして製造されるシロキシ基含有(メタ)アクリル酸系共重合体は、GPCにおけるポリスチレン換算の重量平均分子量において、約3,000〜約200,000、特に約5,000〜約100,000の範囲にあることが好ましく、また−30〜+60℃の範囲のガラス転移温度を持つことが好ましい。
【0023】
このような成分(A)のシロキシ基含有(メタ)アクリル酸系共重合体としては、例えば、下記一般式(3)で示される構造を有するものが挙げられる。
【0024】
【化7】

【0025】
(但し、式中のxは35〜50の整数、yは20〜30の整数、zは30〜40の整数であり、R4は下記一般式(4)で表される基である。)
【0026】
【化8】

【0027】
本発明の溶剤系美爪料における、成分(A)のシロキシ基含有(メタ)アクリル酸系共重合体の配合量は、特に制限されないが、好ましくは0.2〜10%、更に好ましくは1〜8%である。この範囲であれば、長期保存した際にも爪に対する閉塞感を低減でき、化粧膜のツヤを発現することができる。
【0028】
本発明の溶剤系美爪料に使用される成分(B)は、粉体に下記一般式(5)で示されるトリデカフルオロオクチルトリエトキシシランを表面処理して得られるものである。
C−(CF−(CH−Si−(OCHCH ・・・(5)
また、INCI名(International Nomenclature Cosmetic Ingredient labeling names)で表すと、パーフルオロオクチルトリエトキシシランが挙げられる。
【0029】
粉体をトリデカフルオロオクチルトリエトキシシランで表面処理することにより、溶剤系美爪料中に配合した場合に、表面の傷つきやすさを軽減させたり、はがれを防いで化粧持続性を向上させることが出来る。さらに、シリコーン処理や従来このような撥水撥油処理に用いられてきたパーフルオロアルキルリン酸塩処理と比較して、溶剤系美爪料中に配合した場合に、特に長期保存後の粘度が上昇することを抑え、使用時のなめらかさや爪に対する閉塞感のなさや化粧膜のツヤの面で優れている。
【0030】
成分(B)の表面処理に用いられる粉体としては通常化粧料に用いられるものであればいずれのものでもよく、板状、紡錘状、針状等の形状、煙霧状、微粒子、顔料級などの粒子径、多孔質、無孔質等の粒子構造等により特に限定されず、無機粉体類、光輝性粉体類、有機粉体類、色素粉体類、複合粉体類、等が挙げられる。具体的には、コンジョウ、群青、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化セリウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化クロム、水酸化クロム、カーボンブラック、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、雲母、合成雲母、合成セリサイト、セリサイト、タルク、カオリン、シリカ、炭化珪素、硫酸バリウム、窒化硼素等の無機粉体類、オキシ塩化ビスマス、雲母チタン、酸化鉄処理雲母、酸化鉄処理雲母チタン、有機顔料処理雲母チタン、酸化チタン処理ガラス末、酸化鉄酸化チタン処理ガラス末、アルミニウムパウダー、微粒子酸化チタン被覆雲母チタン、微粒子酸化亜鉛被覆雲母チタン、硫酸バリウム被覆雲母チタン、酸化チタン含有二酸化珪素、酸化亜鉛含有二酸化珪素等の複合粉体、ポリエチレンテレフタレート・アルミニウム・エポキシ積層末、ポリエチレンテレフタレート・ポリオレフィン積層フィルム末、ポリエチレンテレフタレート・ポリメチルメタクリレート積層フィルム末等の光輝性粉体類、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、N−アシルリジン、ナイロン等の有機粉体類、有機タール系顔料、有機色素のレーキ顔料等の色素粉体類等が挙げられ、これらを1種又は2種以上を用いることができる。また、これら粉体は1種又は2種以上の複合化したものを用いても良い。
なかでも、無機粉体や有機粉体、光輝性粉体をトリデカフルオロオクチルトリエトキシシランで表面処理することにより、色分かれや沈降等の経時安定性に優れる溶剤系美爪料が得られる。
【0031】
トリデカフルオロオクチルトリエトキシシランの粉体への表面処理方法は特に限定されないが、例えば特開2007−238690に記載の方法に従って処理することが出来る。
例えば、トリデカフルオロオクチルトリエトキシシランをミキサー内で添加あるいは滴加することにより粉体と混合した後、熱処理を行い必要に応じて開砕することにより目的とする表面処理粉体を得ることができる。あるいは、トリデカフルオロオクチルトリエトキシシランをアセトン、トルエン等の有機溶媒に加熱溶解もしくは分散し、その中に粉体を加えて混合した後に有機溶媒を除去し、乾燥後解砕することにより目的とする表面処理粉体を得ることができる。
【0032】
成分(B)のトリデカフルオロオクチルトリエトキシシランの粉体への処理量は粉体重量に対して0.05〜20%が好ましく、0.1〜15%の範囲がより好ましい。この範囲であれば処理剤同士の縮合や未反応の処理剤の残存による感触や流動性への悪影響などが起きることなく、溶剤系美爪料中の分散性を十分に付与することができる。尚、前記粉体は本発明の効果を損なわない範囲でトリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン以外のフッ素化合物やシリコーン系油剤、炭化水素、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル、ワックス、金属石ケン、界面活性剤などの他のコーティング剤で前処理または同時に処理したものを使用することが出来る。
【0033】
本発明の溶剤系美爪料における、成分(B)の配合量は、特に限定されないが、好ましくは0.1%〜30%、さらに好ましくは0.3%〜20%がより好ましい。この範囲であれば、発色性が高く、粉体の沈降抑制に優れ、経時における粘度上昇を抑え経時での塗布時のなめらかさや粉体の再分散性にも優れる溶剤系美爪料が得られる。粉体は全てトリデカフルオロオクチルトリエトキシシランで処理したものを使用する必要はなく、本発明の効果を妨げない範囲で未処理の粉体や一般油剤、シリコーン系油剤、界面活性剤等で処理したものを組み合わせて使用することもできる。
【0034】
本発明で使用される成分(C)である皮膜形成剤は、成分(A)以外の通常の溶剤系美爪料に用いられているものであれば特に限定されず、例えば、ニトロセルロース、フタル酸系アルキッド樹脂、トルエンスルホンアミド樹脂、(メタ)アクリル酸・アルキル共重合体、安息香酸ショ糖エステル、(メタ)アクリル酸アルキル・スチレン共重合体、アクリル−シリコーングラフト共重合体、トルエンスルホンアミドエポキシ樹脂などが挙げられる。これらのうち、特にニトロセルロースが好ましく、その市販品としては、例えば、硝化綿H1/2、H1/4、L1/2、L1/4(すべて旭化成工業社製)等が挙げられる。
【0035】
本発明の溶剤系美爪料における、成分(C)の配合量は特に限定されないが、好ましくは、0.1〜50%、更に好ましくは、2〜35%の範囲である。この範囲であれば化粧膜のツヤ、化粧持ちで良好なものが得られる。
【0036】
本発明で使用される成分(D)の非芳香族系溶剤としてはトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素以外の有機溶剤を広く指称するものであり、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、アセトン、n−ブタノール、イソプロピルアルコール、エチルアルコール等が例として挙げられる。
【0037】
本発明の溶剤系美爪料における、成分(D)の配合量は特に限定されないが、好ましくは、溶剤系美爪料中に対し、30〜80%、さらに好ましくは、45〜70%の範囲である。配合量がこの範囲であれば、長期保存後の使用時のなめらかさに優れたものが得られる。
【0038】
また、上記必須成分に加えて、成分(E)のゲル化剤を本発明の溶剤系美爪料に配合すると、粘度を付与して粉体の沈降や分離を抑えたり、なめらかな使用性を得ることができる。このような成分(E)のゲル化剤、有機変性粘土鉱物や無水ケイ酸等があり、有機変性粘土鉱物としては、例えば、市販品としてベントン27、ベントン38(NLインダストリ−社製)等が挙げられ、また、無水ケイ酸としては、例えば、市販品としてアエロジル200、300、380、380S、R972、R974、R976S(日本アエロジル社製)、ニップシールE−220(日本シリカ工業社製)、サイリシア250、310(富士シリシア社製)等が挙げられる。成分(E)の配合量は特に限定されないが、好ましくは0.1〜10%、更に好ましくは、0.5〜5%の範囲である。
【0039】
さらに、上記必須成分に加えて、成分(F)の可塑剤を本発明の溶剤系美爪料に配合すると、成分(A)と(C)から形成される化粧膜に柔軟性を付与し、爪に対する閉塞感の無さ、化粧持ちで良好なものが得られる。このような成分(F)の可塑剤は、通常の溶剤系美爪料に用いられているものであれば特に限定されず、例えば、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等のフタル酸エステル系化合物、クエン酸トリブチル、クエン酸アセチルトリブチル等のクエン酸エステル系化合物、カンフル等が挙げられる。成分(F)の配合量は特に限定されないが、好ましくは0.1〜20%、更に好ましくは、1〜15%の範囲である。
【0040】
また、本発明の溶剤系美爪料には、本発明の目的を損なわない範囲で、前記記必須成分の他に、通常の溶剤系美爪料に使用される希釈剤、粘度調整剤、油剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、褪色防止剤、酸化防止剤、消泡剤、保湿剤、薬剤、香料、水、無機酸、有機酸等も適量配合することができる。
【0041】
本発明の溶剤系美爪料の用途としては、マニキュア、トップコート、ベースコートが挙げられ、性状としては、液状が好ましい。
【0042】
本発明の溶剤系美爪料の製造方法は、特に限定されないが、成分(A)及び成分(C)を成分(D)に溶解し、成分(B)を添加して、必要に応じて成分(E)や成分(F)を添加し、ディスパーやホモミキサー等の機器を用いて均一に混合する方法等が挙げられる。
【0043】
次に合成例および実施例を挙げ、本発明をより詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例等により何ら制約されるものではない。
合成例1:シロキシ基含有メタクリル酸共重合体のジメチルポリシロキサン溶液1
500mLフラスコに、モノマー成分としてのトリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルメタクリレート60質量部(以下、単に「部」と略す)、メタクリル酸15部およびメチルメタクリレート25部と、溶媒としての酢酸ブチル110部、酢酸エチル70部およびイソプロパノール30部と、反応開始剤である2,2′−アゾビスイソブチロニトリル0.5部とを仕込んだ。溶存酸素を除くため、このフラスコを窒素ガスでバブリングを行い、密封した。反応容器を恒温槽中に移し、60℃で攪拌しながら15時間かけて重合を行った。重合終了後、ジメチルポリシロキサン(SH200C−6cs:東レ・ダウシリコーン社製)へ溶媒置換を行い、シロキシ基含有メタクリル酸共重合体のジメチルポリシロキサン樹脂溶液(固形分濃度20%)を得た。このシロキシ基含有(メタ)アクリル酸系共重合体は前記一般式(3)において、x=45、y=25,z=30で示される構造を有するものであった。また、この重合体のGPCにおけるポリスチレン換算の数平均分子量は約20,000であった。
【0044】
合成例2:シロキシ基含有メタクリル酸共重合体のジメチルポリシロキサン溶液2
合成例1において、モノマー成分としてのトリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルメタクリレート55部、メタクリル酸15部、メチルメタクリレート30部、に替える以外は、合成例1と同様に製造してシロキシ基含有メタクリル酸共重合体のジメチルポリシロキサン樹脂溶液(固形分濃度20%)を得た。
【0045】
本発明の実施例及び比較例に用いた成分(d)のトリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン処理粉体は、イソプロピルアルコールに粉体を添加分散し、トリデカフルオロオクチルトリエトキシシランを添加する。そして、加熱混合することで表面処理し、次に、乾燥して溶剤を揮発させ、最後に粉砕処理を行って得たものである。
【0046】
実施例1〜10及び比較例1〜5:ネイルエナメル
表1及び表2に示す処方のネイルエナメルを調製し、爪に塗布し、(イ)使用時のなめらかさ、(ロ)爪に対する閉塞感のなさ、(ハ)化粧持ち、(ニ)化粧膜のツヤの各項目について製造直後と長期保存したものを以下に示す評価方法および判定基準により評価判定し、長期保存後の結果を表1及び表2に示した。なお長期保存とは50℃で2ヶ月保存したものである。
【0047】
【表1】

【0048】
【表2】

【0049】
(注1)NAGELLITE 3050(TELECHEMISCHE社製)
(注2)トリデカフルオロオクチルトリエトキシシランを3%処理した粉体
(注3)トリデカフルオロオクチルトリエトキシシランを5%処理した粉体
(注4)パーフルオロアルキルリン酸エタノールアミン塩を5%処理した粉体
(注5)ベントン27(NLインダストリー社製)
(注6)アエロジル300(日本アエロジル社製)
(製造方法)
成分(3)〜(6)を成分(10)〜(12)に添加しディスパーにて溶解し、さらにこれら以外の全成分を添加しディスパーにて均一に混合分散したものを容器に充填し、ネイルエナメルを得た。
【0050】
(評価項目)
イ.長期保存後の使用時のなめらかさ
ロ.長期保存後の爪に対する閉塞感のなさ
ハ.長期保存後の化粧持ち、
ニ.長期保存後の化粧膜のツヤ
【0051】
(評価方法)
20名の化粧品評価専門パネルに、上記の実施例及び比較例のネイルエナメルを使用してもらい、各々に対して、前記評価項目の(イ)使用時のなめらかさ、(ロ)爪に対する閉塞感のなさ、(ハ)化粧持ち、(ニ)化粧膜のツヤ、について、下記の(1)評価基準に基づき7段階評価し、各パネルの評点の平均点より、下記(2)判定基準に従って判定した。尚、「化粧持ち」については各試料を爪に塗布し、通常の生活を行い6時間後の塗布状態について評価した。
(1)評価基準:
(評価):(評点)
非常に良好:6
良好 :5
やや良好 :4
普通 :3
やや不良 :2
不良 :1
非常に不良:0
(2)判定基準:
(評点の平均点) :(判定)
5点以上 :◎
3.5点以上5点未満 :○
1.5点以上3.5点未満:△
1.5点未満 :×
【0052】
表1及び表2に示す評価結果より、本発明の実施例は、製造直後と長期保存したもののどちらも、使用性や爪への効果が殆ど変化することなく使用できるもので、長期保存品に関しても、製造直後と同様になめらかに塗布することができ、爪に対する閉塞感が極めて少なく、化粧膜のツヤ及び化粧持ちに優れる美爪料であった。
実施例1は、可塑剤を配合しない実施例10に比べ、製造直後も長期保存後も変わらずに化粧膜に柔軟性が付与され、閉塞感のなさや化粧持ちに優れていた。
また、成分(B)のトリデカフルオロオクチルトリエトキシシランで表面処理した粉体の配合量については、もともと粉体の配合量を多くすると長期保存に限らず製造直後も粘度が上昇し、使用時のなめらかさに影響を及ぼすが、多く入れた実施例6においても、製造直後及び長期保存ともに粘度の上昇が殆どなく使用時のなめらかさが良好なものであった。また、配合量の少ない実施例5は、製造直後の粘度は低いものであり、長期保存したものとの差は、実施例1に比べると、わずかにあったが、使用時のなめらかさは良好なものであった。
また、製造直後と長期保存後に測定した粘度値においては、実施例1は比較例5に比べ、変化が少ないものであり、長期保存したものでもなめらかなで優れた使用性を得ることができた。
一方、成分(A)の特定構造をもつシロキシ基含有(メタ)アクリル酸系共重合体を含まない比較例1の場合には、製造直後と同様に長期保存後の化粧膜の閉塞感のなさやツヤ、化粧もちの点で劣り、樹脂の配合量を減少させているので粘度は低いものであったが長期保存することによって、多少粘度の上昇もみられ、使用時のなめらかさに少し影響した。
成分(A)のかわりに成分(C)の皮膜形成剤の一つであるニトロセルロースの配合量を増やした比較例2の場合には、製造直後も長期保存後も、化粧持ちやツヤは向上したが、実施例1と同等の効果は得られなかった。また閉塞感はより感じることになった。
成分(C)を含まない比較例3の場合には、製造直後も長期保存後も、弱い膜となり、化粧持ちや化粧膜のツヤに劣るものであった。
成分(B)のトリデカフルオロオクチルトリエトキシシランで表面処理した粉体のかわりに未処理の粉体を用いた比較例4の場合には、製造直後は使用性や爪への効果ともに良好な結果が得られたが、長期保存後に粉体の凝集や沈降が起こり、粘度も上昇し、手で振っても均一に再分散せず、しかも粘度も下がらず、その結果、なめらかに塗布することができず、均一な化粧膜とならず、閉塞感のなさや化粧膜のツヤが劣るものであった。
また、成分(B)のかわりに別のフッ素化合物であるパーフルオロアルキルリン酸ジエタノールアミン塩処理した粉体を用いた比較例5の場合には、製造直後は使用性や爪への効果ともに優れた結果が得られたが、長期保存後に粉体の凝集や沈降が起こり、粘度も上昇した。手で振るとある程度再分散するが、粘度はあまり下がらず、その結果、使用時のなめらかさに影響し、閉塞感のなさや化粧膜のツヤは製造直後に比べると少し劣るものとなった。
尚、実施例1及び比較例5の製造直後と室温で1年保存したものの粘度を測定したところ、実施例1はほとんど粘度変化がなかったのに対し、比較例5は粘度が上昇した。
【0053】
実施例11:エナメルトップコート
(成分) (%)
1.シロキサン基含有(メタ)アクリル酸系共重合体溶液1 0.5
2.酢酸エチル 20
3.酢酸ブチル 23.25
4.ヘプタン 20
5.ニトロセルロース 20
6.アクリル酸アルキル・スチレン共重合体 5
7.イソプロピルアルコール 5
8.クエン酸アセチルトリブチル 5
9.オキシベンゾン 0.2
10.トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン処理
酸化チタン被覆ガラスフレーク(注7) 1
11.赤色226号 0.05
(注7)トリデカフルオロオクチルトリエトキシシランを2%処理した粉体
(製造方法)
成分5、6を成分2、3に添加しディスパーにて溶解し、さらにこれら以外の全成分を添加しディスパーにて均一に混合分散したものを容器に充填し、エナメルトップコートを得た。
本発明のエナメルトップコートについて、実施例1〜10で使用した評価方法と同様に評価を行った結果、製造直後と長期保存したもののどちらも、なめらかに塗布することができ、爪に対する閉塞感が極めて少なく、化粧膜のツヤ及び化粧持ちに優れたものであった。
【0054】
実施例12:エナメルベースコート
(成分) (%)
1.シロキサン基含有(メタ)アクリル酸系共重合体溶液2 7
2.酢酸エチル 20
3.酢酸ブチル 19.7
4.ヘプタン 15
5.ニトロセルロース 15
6.アクリル酸アルキル・スチレン共重合体 10
7.イソプロピルアルコール 5
8.クエン酸アセチルトリブチル 5
9.オキシベンゾン 0.2
10.トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン処理
ガラスフレーク(注7) 1
11.トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン処理
球状無水ケイ酸(注3) 2
12.トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン処理
赤色酸化鉄(注2) 0.1
(製造方法)
成分5、6を成分2、3に添加しディスパーにて溶解し、さらにこれら以外の全成分を添加しディスパーにて均一に混合分散したものを容器に充填し、エナメルベースコートを得た。
本発明のエナメルベースコートについて、実施例1〜10で使用した評価方法と同様に評価を行った結果、製造直後と長期保存したもののどちらも、なめらかに塗布することができ、爪に対する閉塞感が極めて少なく、化粧膜のツヤ及び化粧持ちに優れたものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)〜(D)を含有することを特徴とする溶剤系美爪料。
(A)下記一般式(1)で示されるモノマー(a)55〜65質量%と
【化1】

(式中、RはH又はCH、pは2〜6の整数である。)
下記一般式(2)で示されるモノマー(b)20〜30質量%と
【化2】

(式中、RはH又はCH、Rは炭素数1〜5のアルキル基又はフェニル基である。)
モノマー(c)として、アクリル酸及び/又はメタクリル酸
15〜20質量%
とを重合してなる、シロキシ基含有(メタ)アクリル酸系共重合体
(B)トリデカフルオロオクチルトリエトキシシランで表面処理した粉体
(C)成分(A)以外の皮膜形成剤
(D)非芳香族系溶剤
【請求項2】
さらに、成分(E)としてゲル化剤を含有することを特徴とする請求項1記載の溶剤系美爪料。
【請求項3】
さらに、成分(F)として可塑剤を含有することを特徴とする請求項1または2記載の溶剤系美爪料。

【公開番号】特開2009−242358(P2009−242358A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−94259(P2008−94259)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000145862)株式会社コーセー (734)
【Fターム(参考)】