説明

溶媒を用いずにペプチドを合成する方法

本発明は、nが1以上の整数であり;Rbおよび各Rnが独立に水素原子、C−Cアリールアルキル基またはC−Cアルキル基(アリール基、−COOH、C−C−COO−(アルキル)、−CONH、−SH、ヘテロアリール、−NH、−NHC(NH)(NH)、C−C−S−(アルキル)、−OHまたはフェノールで置換されている、または置換されてない)であり;RaがN−保護基であり;RcがORd基であり、ここで、RdはC−Cアルキル基または−NReRf基であり、ここで、ReおよびRfは独立にN−保護基である、式(I)の化合物の合成方法に関する。


【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、いずれの溶媒も用いずにペプチドを合成する方法に関する。
【0002】
ペプチドは、それらの高い治療指数と低い毒性のため、これまで薬学上有効な成分と考えられてきた。それらのバイオアベイラビリティを高める新規な投与系の進展のために、治療用ペプチドの市場はこの先何年かで急速に発展すると思われる。
【0003】
しかし、これらの化合物を合成するための有効な方法の必要性は常にある。十分確立されている生産手順(溶液中、固相、組換えによる)にもかかわらず、合成、特に固相支持体上での合成、に必要な大量の溶媒に伴う多くの開発上の問題がなお存在する(大きなペプチドでは2,000〜5,000kg)。
【0004】
現在の環境問題が深刻なため、「グリーン化学」の分野がますます広がっている。代替原料および無毒な試薬の使用、天然プロセスの使用、代替溶媒の使用、より安全な化学製品の設計、他の反応条件の開発、エネルギー消費の最小化など、この課題のいくつかの分野が出現している。
【0005】
特に有効な分野は、揮発性有機溶媒または塩素系溶媒に取って代わるよう、また、溶媒廃棄物を処理または再循環する問題を解決するために、水性、イオン性、フッ素系または超臨界液などの代替溶媒にある。
【0006】
別のアプローチは、溶媒の不在下で化学反応を起こすことからなる。固体の混合または粉砕などの技術が有効であることが分かっている。しかしながらやはり、これらの生体分子の重要性にもかかわらず、ペプチドまたはアミノ酸合成などの分野へこれらの技術は適用されてない。
【0007】
本発明者らは、驚くべきことに、いずれの溶媒も用いない条件下でペプチドを合成するための新規な経路を見出した。
【0008】
驚くべきことに、本発明者らは、ウレタンにより保護されたアミノ酸のカルボキシ無水物(ウレタン保護N−カルボキシ無水物(UNCA))とアミノ酸またはアミノエステルとのカップリングを達成し、しかもこれらの化合物は全て、室温のボールミル(ball milling)条件下で固体の形態のままである。
【0009】
より具体的には、本発明は、下式(I):
【化1】

[式中、
nは、1以上の整数であり、有利には1〜100を含み、より有利には1〜50を含み、さらにより有利には1または2に等しく;
Rbおよび各Rnは、互いに独立に水素原子、アリール(C−Cアルキル)基またはC−Cアルキル基(アリール基、−COOH、−COO−(C−Cアルキル)、−CONH、−SH、ヘテロアリール、−NH、−NHC(NH)(NH)、−S−(C−Cアルキル)、−OHまたはフェノール基で置換されている、または置換されていない)を表し、−COOH、NH、OH、SHおよびNHの基は所望により1以上の同一または異なるN−保護基またはO−保護基で保護され、かつ、Raとは異なり;有利にはこれらのN−保護基またはO−保護基はRa基を除去するための条件下で安定であり;
RaはN−保護基を表し;
Rcは−ORd基を表し、ここで、RdはC−Cアルキル基または−NReRf基を表し、ここで、ReおよびRfは互いに独立にN−保護基を表す]
の化合物を合成する方法であって、
(a)塩基の存在下で、溶媒を用いずに、下式(II):
【化2】

(式中、RaおよびRbは先に定義した通りである)
の化合物と下式(III):
【化3】

(式中、n、RnおよびRcは先に定義した通りである)
の化合物ならびにその薬学上許容される塩、好ましくは、塩化物、酢酸塩およびトリフルオロ酢酸塩とを反応させることからなる工程、を含むことを特徴とする方法に関する。
【0010】
本発明の意味において、「溶媒を用いない」とは、反応が溶媒の不在下で起こることを意味する。本発明による溶媒は、試薬を可溶化するが、反応には直接関与しない製品である。よって、本発明の範囲内で、塩基は溶媒ではない。
【0011】
さらに、本発明による方法では、使用される試薬は全て固体状態である。これは特に式IIおよび式IIIの化合物ならびに塩基の場合である。よって、この反応は固体状態で起こり、溶液中で起こるのではない。有利には、これらの試薬は、ボールミルにより得られるような微粉砕された固体状である。
【0012】
この種の反応の利点は、溶媒の使用を抑制すること(グリーン化学)だけでなく、反応、処理の適用を促進し、極めて純粋な生成物を取得可能とすることでもある。
【0013】
本発明の意味において「C−Cアルキル基」とは、1〜6個の炭素原子を有する任意の直鎖または分枝アルキル基、特に、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、sec−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル基を意味する。有利には、これはメチルまたはt−ブチル基である。
【0014】
本発明の意味において「アリール基」とは、5〜8個の炭素原子を有する1以上の芳香環(並んで配置されても縮合していてもよい)を意味する。特に、アリール基は単環式または二環式基、好ましくは、フェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチルまたはインダニル基である。有利には、これはフェニル基である。
【0015】
本発明の意味において「ヘテロアリール基」とは、例えば硫黄、窒素または酸素原子などの1または2個のヘテロ原子を含む3〜9原子を有する任意の炭化水素芳香族基を意味する。本発明によるヘテロアリール基は、1または2個の縮合環または並んで配置された環を伴って形成していてもよい。ヘテロアリール基の例はフリル、イソキサジル、ピリジル、ピリミジル、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンゾチアゾール基である。
【0016】
本発明の意味において「N−保護基」とは、Greene, "Protective Groups In Organic Synthesis", (John Wiley & Sons, New York (1981))およびHarrisonら "Compendium of Synthetic Organic Methods", Vols. 1-8 (J. Wiley & Sons, 1971-1996)に記載されているN−保護基など、NH基を望まない反応から保護する任意の置換基を意味する。N−保護基には、カルバメート、アミド、N−アルキル化誘導体、アミノアセタール誘導体、N−ベンジル化誘導体、イミン誘導体、エナミン誘導体およびN−ヘテロ原子誘導体が含まれる。特に、N−保護基には、ホルミル、アセチル、ベンゾイル、ピバロイル、フェニルスルホニル、ベンジル(Bn)、t−ブチルオキシカルボニル(boc)、ベンジルオキシカルボニル(cbz)、p−メトキシベンジルオキシカルボニル、p−ニトロベンジル−オキシカルボニル、トリクロロエトキシカルボニル(troc)、アリルオキシカルボニル(alloc)、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル(fmoc)、トリフルオロアセチル基、ベンジルカルバメート(置換型または非置換型)などが含まれる。N−保護基としては、bocまたはcbzのいずれかが、比較的除去が容易なために使用に有利である(例えば、bocの場合には例えばトリフルオロ酢酸または酢酸エチル中の塩酸などの中程度の酸を用い、あるいはcbzの場合には触媒的水素化による)。有利には、これはboc基である。
【0017】
本発明の意味において「O−保護基」とは、Greene, "Protective Groups In Organic Synthesis", (John Wiley & Sons, New York (1981))およびHarrisonら "Compendium of Synthetic Organic Methods", Vols. 1-8 (J. Wiley & Sons, 1971-1996)に記載されているO−保護基など、ヒドロキシル基またはカルボキシル基、すなわち反応性酸素原子を望まない反応から保護する任意の置換基を意味する。O−保護基には、メチルまたはアルキルエーテル(置換型または非置換型)、例えば、メトキシメチル、ベンジルオキシメチル、2−メトキシエトキシメチル、2−(トリメチルシリル)エトキシメチル、t−ブチル、ベンジルおよびトリフェニルメチル、ベンジルエーテル(置換型または非置換型)、テトラヒドロピラニルエーテル、アリルエーテル、置換エチル(例えば2,2,2−トリクロロエチル)、エーテル、シリルエーテルまたはアルキルシリルエーテル(例えばトリメチルシリル、t−ブチルジメチルシリルおよびt−ブチルジフェニルシリル)、複素環式エーテル、ならびにヒドロキシル基と、例えばtert−ブチル、ベンジルまたはメチルなどのカルボン酸、炭酸塩、特に、炭酸ベンジルまたは炭酸ハロアルキル、酢酸塩、プロピオン酸塩、安息香酸塩などとの反応により生成されるエステルが含まれる。有利には、これはベンジル基である。
【0018】
次に、式Iの化合物を、その−OH、−NH、−SH、−NHおよび−COOH官能基が保護されてないペプチドを得るために、脱保護することができる。
【0019】
本発明の有利な実施形態では、nは1に等しく、工程(a)は、塩基の存在下で溶媒を用いずに式(II)の化合物を下式(III−1):
【化4】

(式中、R1およびRcは先に定義した通りである)
の化合物と反応させて、下式(I−1):
【化5】

(式中、Ra、Rb、RcおよびRnは先に定義した通りである)
の化合物を得ることからなる。
【0020】
工程(a)は有利にはボールミルの手段により行う。
【0021】
式(II)および(III)の新しく調製された出発生成物から工程(a)を行うのが特に有利である。
【0022】
塩基は固体塩基であり、有利には、炭酸塩、特に、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムおよび炭酸水素セシウム、ならびに炭酸ナトリウム、炭酸カリウムおよび炭酸セシウムからなる群から選択される。有利には、これは炭酸水素ナトリウムである。
【0023】
Rb置換基および各Rn置換基は、水素、−CH、ベンジル基、−CHCONH、−CHCH、−(CHNHC(NH)(NH)、−CH(OH)CH、−CHCOOH、−CHSH、−CHCHCOOH、−CHCHCONH、イミダゾリルメチル、プロピル、−CHCH(CH、−(CHNH、−(CHSCH、−CHOH、インドール−2−イルメチル、p−メチルフェノール、イソプロピル基からなる群から独立に選択される。先に示したように、これらの基のNH、NH、COOH、SHおよびOH官能基は有利には1以上の同一または異なるO保護基および/またはN−保護基で保護され、かつ、Raとは異なる。
【0024】
有利には、これらのN−保護基および/またはO−保護基は、Ra基を除去するための条件下で安定である。
【0025】
本発明の有利な実施形態では、
Ra、ReおよびRfは、互いに独立に、tert−ブチルオキシカルボニル、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル、ニトロ−ベラトリルオキシカルボニルからなる群から選択され、かつ/または
Rbは、イソプロピル、ベンジルおよび−CHCOOt−Buからなる群から選択され、かつ/または
各Rnは、互いに独立に、メチル、ベンジルおよび−CHCH(CHからなる群から選択され、かつ/または
Rdは、メチルおよびテルチオブチルからなる群から選択される。
【0026】
本発明の有利な実施形態では、化合物(II)は、下式(II−a)、(II−b)および(II−c):
【化6】

の化合物からなる群から選択され、
化合物(III)は、下式(III−a)、(III−b)、(III−c)、(III−d)および(III−e):
【化7】

の化合物からなる群から選択される。
【0027】
本発明の別の有利な実施形態では、
式(II)の化合物は下式(II−2):
【化8】

(式中、Raは先に定義した通りである)
を有し、
式(III)の化合物は下式(III−2):
【化9】

を有し、かつ、
式(I)の化合物は下式(I−2):
【化10】

(式中、Raは先に定義した通りである)
を有する。
【0028】
式(II−2)の化合物は、以下の一連の工程:
1)下式(IV):
【化11】

の化合物のアミン基をN−保護基Raで保護して下式(V):
【化12】

の化合物を形成させること;
2)式(V)の化合物を、塩基、有利には炭酸セシウムの存在下でハロゲン化ベンジルと反応させて、下式(VI):
【化13】

(式中、Raは先に定義した通りである)
の化合物を得ること;
3)式(VI)の化合物のアミン基をN−保護基Rgで保護して、下式(VII):
【化14】

(式中、RaおよびRgは先に定義した通りである)
の化合物を形成させること;
4)式(VII)の化合物を下式(VIII):
【化15】

(式中、RaおよびRgは先に定義した通りである)
の化合物へと還元すること;
5)式(VIII)の化合物を、DMFおよび塩化オキサリルとの反応により式(II−2)の化合物へと環化すること
を含んでなる方法により製造することができる。
【0029】
置換基RaおよびRgは有利にはtert−ブチルオキシカルボニルを表す。
【0030】
有利な実施形態では、本方法は、更に一連の下記工程:
(b)工程(a)で得られた式(I−2)の化合物を酸、有利には塩酸ガス、と反応させて、下式(I−3):
【化16】

の化合物を形成させること;
(c)式(I−3)の化合物を塩基、有利には炭酸水素ナトリウム、と反応させて、下式(I−4):
【化17】

の化合物を形成させること
を含んでなる。
【0031】
以下、限定されるものではないが、下記の実施例により本発明を説明する。
【実施例】
【0032】
実施例1:ジペプチドの合成
本発明者らは、以下の式:
【化18】

に従い、いずれの溶媒も用いずに、UNCAとアミノ酸誘導体との反応を行ってジペプチドを形成させた。
【0033】
この反応を、スチールボールの入った焼入れスチールタンク内、NaHCO(1.5当量)の存在下、種々のアミノ酸(1当量)とのBoc−Val−NCA、Fmoc−Val−NCAおよびBoc−Phe−NCA(1当量)カップリングで試験した。タンクは30Hzの頻度で1時間攪拌した。反応媒体を分析したところ、唯一ジペプチドの存在が検出された。これらの結果を種々のUNCAおよびアミノ酸誘導体とともに表1に示す。
【表1】

【0034】
種々のUNCA誘導体は同じ反応特性を示さない。全ての場合で、Boc−Val−NCAは、ジペプチドの形成に関して定量的に変換され、一方、両場合においてFmoc−Val−NCAはやや低い収率であった。
【0035】
最良の結果は新しく調製された出発物質(UNCAまたはアミノエステルのいずれか)で得られたことを特に述べておくべきであろう。そうでない場合には、反応は不完全となし、UNCAの加水分解が見られた。
【0036】
実施例2:アスパルテームの合成
アスパルテーム、またはα−L−アスパルチル−L−フェニルアラニン−メチルエステルは、サッカロースよりもおよそ150倍甘い栄養甘味料である。これは商業上魅力的なジペプチドであるが、溶媒の存在下でも不在下でもUNCAからは未だ製造されていない。
【0037】
本発明者らは、いずれの溶媒も用いないボールミルにより、H−Phe−OMe.HCl(III−e)から、およびBoc−Asp(O−t−Bu)−NCA(II−a)からの工程において、保護されたアスパルテームを得た。
【0038】
酸性条件下で同じ時間で切断可能であることから、保護基Bocおよびt−Buを選択した。さらにいずれの溶媒の使用を避けるため、保護基の除去にはHClガスを用いた。
【0039】
2.1.Boc−Asp(O−tBu)−NCA(II−a)の製造
この方法は、アミン官能基を保護するBocを1つ含む主鎖を有する遊離カルボン酸の環化からなり、従って、まず、(Boc)−Asp(O−t−Bu)−OH(VII−a)の製造を必要とする。これは、Boc−Asp(O−t−Bu)−OH(V−a)のα−カルボン酸をベンジルエステル(VI(a))へとエステル化した後、DMAPの存在下でBocOと反応させて、2つのBoc基で保護されたアミノ化合物(VII−a)を得、その後、水素化によりこのベンジルエステル基を脱保護して(VIII−a)を得ることにより達成した。
【化19】

【0040】
以下の工程は、Vilsmeier塩で保護したアミノ酸(VIII−a)の環化からなった。最良の結果は、アセトニトリル中でDMFおよび塩化オキサリルの塩を形成することにより得られた。化合物(II−a)が90%の収率で得られた。
【0041】
2.2.アスパルテームの製造
ジペプチドを製造するための上記の手順をアスパルテームの製造に適用した。
【化20】

【0042】
Boc−Asp(O−t−Bu)−NCA(II−a)およびH−Phe−OMe.HCl(III−e)で出発し、ボールミル1時間後にジペプチド(I−a)が得られた。
【0043】
次に、これをそのまま、溶媒の不在下で2時間、HClガスと反応させて、保護基Bocおよびt−Buを除去し、塩酸型のアスパルテームを得た。これらの保護基Bocおよびt−Buの除去にだけは揮発性二次生成物が生じることを述べておく。両工程の収率は定量的であったことも述べておかなければならない。
【0044】
この塩酸塩を水に溶かし、NaCO水溶液でpHを5.2に調整した。得られたアスパルテームが沈殿した。これを濾過し、真空乾燥させて、40%収率で固体を得た。
【0045】
よって、いずれの有機溶媒も用いずに、いずれの有機二次生成物もなく、アスパルテームが純粋な形態で得られた。精製工程は、水から沈殿させて固体アスパルテームを得ることだけであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下式(I):
【化1】

[式中、
nは、1以上の整数であり、好ましくは1〜100を含み、より好ましくは1〜50を含み、さらにより好ましくは1または2であり;
Rbおよび各Rnは、互いに独立に水素原子、アリール(C−Cアルキル)基またはC−Cアルキル基(アリール基、−COOH、−COO−(C−Cアルキル)、−CONH、−SH、ヘテロアリール、−NH、−NHC(NH)(NH)、−S−(C−Cアルキル)、−OHまたはフェノールで置換されている、または置換されてない)を表し、ここでNH、NH、COOH、OH、SHの官能基は、有利には1以上の同一または異なるN−保護基またはO−保護基で保護され、かつ、Raとは異なり;
Raは、N−保護基を表し;
Rcは、−ORd基を表し、ここで、RdはC−Cアルキル基または−NReRf基を表し、ここで、ReおよびRfは互いに独立にN−保護基を表す]
の化合物を合成する方法であって、下記工程:
(a)塩基の存在下で、いずれの溶媒も用いずに、下式(II):
【化2】

(式中、RaおよびRbは先に定義した通りである)
の化合物と、下式(III):
【化3】

(式中、n、RnおよびRcは先に定義した通りである)
の化合物ならびにその薬学上許容される塩、好ましくは、塩化物、酢酸塩およびトリフルオロ酢酸塩とを反応させること
を含んでなる、方法。
【請求項2】
nが1であり、
工程(a)が、塩基の存在下で、いずれの溶媒も用いずに、式(II)の化合物と下式(III−1):
【化4】

(式中、R1およびRcは先に定義した通りである)
の化合物とを反応させて、下式(I−1):
【化5】

(式中、Ra、Rb、RcおよびRnは先に定義した通りである)
の化合物を得ることからなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(a)が、ボールミルの手段により行われる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
塩基が、炭酸塩、特に、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムおよび炭酸水素セシウム、ならびに炭酸ナトリウム、炭酸カリウムおよび炭酸セシウムからなる群から選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
Rbおよび各Rnが、水素、−CH、ベンジル基、−CHCONH、−CHCH、−(CHNHC(NH)(NH)、−CH(OH)CH、−CHCOOH、−CHSH、−CHCHCOOH、−CHCHCONH、イミダゾリルメチル、プロピル、−CHCH(CH、−(CHNH、−(CHSCH、−CHOH、インドール−2−イルメチル、p−メチルフェノール、イソプロピル基からなる群から独立に選択され、これらの基のNH、NH、COOH、SHおよびOH官能基が、有利には1以上の同一または異なるO−保護基および/またはN−保護基で保護され、かつ、Raとは異なる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
Ra、ReおよびRfが、互いに独立に、tert−ブチルオキシカルボニル、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル、ニトロ−ベラトリルオキシカルボニルからなる群から選択され;
Rbが、イソプロピル、ベンジルおよび−CHCOOt−Buからなる群から選択され;
各Rnが、互いに独立に、メチル、ベンジルおよび−CHCH(CHからなる群から選択され;
Rdが、メチルおよびテルチオブチルからなる群から選択される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
化合物(II)が、下式(II−a)、(II−b)および(II−c)の化合物:
【化6】

からなる群から選択され;
化合物(III)が、下式(III−a)、(III−b)、(III−c)、(III−d)および(III−e)の化合物:
【化7】

からなる群から選択される、請求項2〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
式(II)の化合物が、下式(II−2):
【化8】

(式中、Raは請求項1に定義した通りである)
を有し、
式(III)の化合物が、下式(III−2):
【化9】

を有し、かつ、
式(I)の化合物が、下式(I−2):
【化10】

(式中、Raは請求項1に定義した通りである)
を有する、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
式(II−2)の化合物が、下記の一連の工程:
1)下式(IV):
【化11】

の化合物のアミン基をN−保護基Raで保護して、下式(V):
【化12】

の化合物を形成させること:
2)式(V)の化合物を、塩基の存在下でハロゲン化ベンジルと反応させて、下式(VI):
【化13】

(式中、Raは先に定義した通りである)
の化合物を得ること;
3)式(VI)の化合物のアミン基をN−保護基Rgで保護して、下式(VII):
【化14】

(式中、RaおよびRgは先に定義した通りである)
の化合物を形成させること;
4)式(VII)の化合物を、下式(VIII):
【化15】

(式中、RaおよびRgは先に定義した通りである)
の化合物へと還元すること;
5)式(VIII)の化合物を、DMFおよび塩化オキサリルとの反応により、式(II−2)の化合物へと環化すること
を含んでなる方法により製造される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
RaおよびRgが、tert−ブチルオキシカルボニルである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
更に以下の一連の工程:
(b)工程(a)で得られた式(I−2)の化合物と酸とを反応させて、下式(I−3):
【化16】

の化合物を形成させること;
(c)式(I−3)の化合物と塩基とを反応させて、下式(I−4):
【化17】

の化合物を形成させること
を含んでなる、請求項8〜10のいずれか一項に記載の方法。

【公表番号】特表2010−522144(P2010−522144A)
【公表日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−554044(P2009−554044)
【出願日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際出願番号】PCT/EP2008/053444
【国際公開番号】WO2008/125418
【国際公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【出願人】(594016872)サントル、ナショナール、ド、ラ、ルシェルシュ、シアンティフィク、(セーエヌエルエス) (83)
【出願人】(504462319)ユニヴェルシテ ドゥ モンぺリエ アン (9)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE DE MONTPELLIER 1
【Fターム(参考)】