説明

溶接ワイヤ包装用箱の隅部折り込み方法

【課題】溶接ワイヤ包装用段ボール箱の隅部に、容易に且つ迅速に凹部を形成することができ、これら凹部形成を、機構が簡単で装置的にも小型化が可能な押圧装置を用いて可能とできる溶接ワイヤ包装用箱の隅部折り込み方法を提供することを目的とする。
【解決手段】溶接ワイヤ包装用段ボール箱1の選択された隅部にハンドリング用の凹部2を形成する折り込み方法であって、凹部2を形成する段ボールの隅部相当箇所に、凹部2の稜線となるべき折線を予め形成しておき、この折線を設けた段ボールを箱形に形成した上で、押圧装置20、21、22、23によって外部からこの段ボール箱1の隅部を内側に押し込んで凹部2を形成するに際し、前記押圧装置を、凹部2の外縁形状に対応した形状の押し込み先端部25を設けた流体シリンダー20とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラックス入り (フラックスコアード) 溶接ワイヤなどの溶接ワイヤを包装する包装用箱の隅部を押し込んで凹部を形成し、運搬しやすくする、包装用箱の隅部折り込み方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
炭酸ガスシールドアーク溶接、MIG溶接等の、全自動若しくは半自動溶接用のアーク溶接施工用のワイヤには、管状の外皮帯鋼内にフラックスを充填したフラックス入り溶接ワイヤ(フラックスコアードワイヤ、FCWとも言う)が汎用されている。このFCWには、フープに合わせ目(以下シームとも言う)を有するタイプと、この合わせ目のないシームレスタイプのものがある。後者のシームレスタイプのものは製造コストが高くなるため、シームを有するFCWの方が汎用されている。このシームを有するFCWは、合わせ目を溶接等で接合せずに閉じている状態の溶接ワイヤを言う。
【0003】
このようなフラックス入り溶接ワイヤは、0.8〜1.6mmφの細径の伸線ワイヤが汎用され、一般的には、コイル芯(スプール)の周りに円筒状に巻回されて、製造、運搬、使用される。このコイル状の溶接ワイヤを、製造工場から製品倉庫に保管し、出荷し、運搬し、ユーザーに納品する迄の期間において、溶接ワイヤは直方体状をなす段ボール箱内に納められている。即ち、コイル状の溶接ワイヤは、この直方体状の段ボール箱内に収納された状態で持ち運びされる。
【0004】
しかしながら、この溶接ワイヤは、1巻きが例えば20kgであり、かなり重いものである。この重量物が例えば28cm角で11cm高さの段ボール箱内に納められている。
【0005】
この溶接ワイヤを運搬する際には、作業員は先ず溶接ワイヤが梱包された段ボール箱を傾け、その一方の縁部下面と床との間に先ず片手を挿入し、次いで、他方の縁部下面と床との間に他方の手を挿入し、両手の挿入が終了した後、段ボール箱を持ち上げて所定の位置に移載する。しかしながら、このような重いものを、持ちにくい不安定な姿勢で持ち上げることは容易ではなく、またその運搬も重作業である。このため、作業員が製品を持ち上げる際に、腰を痛めたり、運搬時に、製品が手から滑り、足先に落下してしまうような事故も発生しやすい。特に、作業員は通常手袋をしているため、本来紙からなる段ボール箱が滑りやすく、多少不注意に扱うと、製品が足元に落下してしまい、足が傷害を受ける危険性がある。
【0006】
なお、箱の1個の稜線に平行の1対の折線をこの稜線の中央部に設け、各折線の端部を相互に接続する切断線を設けることにより、前記稜線の中央部に凹みを設けた包装箱が提案されている(特許文献1)。この凹みに手をかけて包装箱を持ち運びすることができる。しかし、この凹みは、箱の一部を切断することにより形成されているため、強度が弱いという難点がある。また、凹みを設けた状態で箱には孔が開くため、包装が不完全となる。
【0007】
そこで、従来から、これら溶接ワイヤの包装用箱の欠点を解消する包装用段ボール箱が、特許文献1などで提案されている。提案された包装用箱は、実質的に6面により構成される包装用段ボール箱において、3個の稜線が集まる隅部に設けられた少なくとも2個の凹部を有し、各凹部は前記稜線を相互に結ぶ3本の折線により内側に折曲げて形成されている。
【0008】
具体的に添付の図を参照してこの包装用段ボール箱について説明する。図4は前述の隅部に凹部を有する包装用箱を組み立てた状態を上方から見たときの斜視図、図5は同じくその下方から見たときの斜視図、図6は正面図、図7は底面図、図8は展開図である。この箱1は例えば段ボール製であり、直方体状をなす。そして、その下面の4隅部が内側に折曲げられて、凹部2が成形されている。
【0009】
図8の素材段ボールの展開図に示すように、この包装用箱を展開した素材段ボールは、段ボール底面部3、段ボール上面部4、段ボール正面部10、段ボール裏面部11、段ボール側面部5、6とを有し、更に糊代として7、8、9、12、13、14、15を備えている。そして、素材段ボールには、更にこれらの部分をほぼ直角に折り込むための折線16が設けられている。
【0010】
これらの折線16で、図8の段ボールを折り込むことにより、直方体状の包装用段ボール箱1が組み立てられ、溶接ワイヤを収納し、段ボール部分7〜9、12〜15で接着固定することにより、包装用段ボール箱1による溶接ワイヤの包装が完了する。
【0011】
図8の素材段ボールの展開図においては、更に段ボール底面3の4隅部に折線17が設けられている。この折線17は、前記した包装用段ボール箱1隅部の凹部2の稜線となる。
【0012】
このように構成された包装用段ボール箱1においては、先ず、図8に示すように展開した輪郭形状のものを、折線16でほぼ直角に曲げて直方体状に成形すると共に、この折線16による曲げ加工の過程で、折線17に沿って曲げ加工を行う。これにより、図5乃至8に示すように、凹部2を持つ包装用段ボール箱1が組み立てられる。
【0013】
このようにして組み立てられ、溶接ワイヤを梱包した包装用段ボール箱1は、その4隅部に凹部2があるため、工場又は倉庫の床に載置された状態で、この凹部2部分に床との間で隙間が生じる。そこで、作業員はこの凹部2に手を入れ、指の先を凹部2内に挿入した状態で、箱1を持ち上げる。
【0014】
このように箱1の隅部に凹部2が設けられているので、箱2を傾斜させて手をその隙間に入れる等の作業が不要であり、そのまま手を凹部2に挿入すれば良いため、箱2を持ち上げやすい。また、この凹部2に指を係止させて箱1を持ち運びすることができるので、手が箱から滑って箱1を落下させたりすることがない。従って、運搬時の安全性を著しく向上させることができると共に、持ち運びの作業性を向上させることができる。また、この凹部2は隅部を切断して形成したものではなく、隅部を箱内側に凹ませて設けたものであるので、この凹部2部分の強度は高い。
【0015】
このように隅部に凹部2を備えた包装用段ボール箱1は、運搬の容易性において極めて優れた効果を奏する。しかしながら、包装用箱用シートを6面体の直方体状に組みたて、この組立の途中で手作業により折線17で折り込むことによって凹部2を形成するのではなく、直方体状に組み立てた後、この隅部を機械的に即ち自動工程で箱内側に押し込む作業は、この隅部が三角錘状に凸になっているため、困難である。
【0016】
即ち、図8に示すように、例えば、折り線17bと2本の稜線により囲まれた三角形OABにおいて、線分OAと線分OBの長さの和は、当然に線分ABの長さよりも大きい。他の3個の三角形においても同様である。このため、これらの折線17a、17b、17c、17d及び稜線OA、OB、OCにより構成される三角錘の部分を、箱内側に押し込むためには大きな力が必要である。従って、単に棒状の押圧部材をこの隅部に当てて押し込むだけでは、隅部の部分から受ける反力が大きく、三角錘の頂角部分がつぶれたり、穴が開く等の不都合が発生する。
【0017】
このため、前記押圧部材を改善し、包装用段ボール箱1の隅部に凹部を容易に形成することができ、この凹部を備えた包装用箱を自動工程で且つ大量に製造することができる包装用箱の隅部折り込み方法が特許文献2で提案されている。この方法では、実質的に6面により構成される包装用段ボール箱1の3本の稜線が集まる8個の隅部のうち1又は2以上の隅部に、予め、前記各3本の稜線を相互に結ぶ折線を形成しておき、前記折線を設けた隅部を円弧状軌跡で移動する押圧部材により箱内側に押し込んで凹部を形成する。
【0018】
特許文献2の実施例における、この押圧部材(押圧装置)を、図9に側面図、図10に、その動作を示す模式図で示す。この押圧装置は、例えば包装用箱の4隅部に対応して4組配置されている。各押圧装置において、台120は固定されており、この台120の上面に、シリンダ123を支持する支持部材121が固定されている。この支持部材121には、揺動軸122がその軸方向を水平にして設けられており、シリンダ123はその前端部にて揺動軸22により水平軸を中心として揺動可能に支持されている。このシリンダ123のピストン124は、油圧などの手段により駆動されて前方に進出し、又はシリンダ内に退入することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開平5−262346号公報
【特許文献2】特公平7−115431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
しかしながら、前記特許文献2のような、揺動軸122を用いた揺動方式の押圧部材(押圧装置)では、機構が複雑で、装置的にも大型化しやすい。このため、包装用箱の隅部折り込み方法(工程)実施のための必要設置スペースとしても、比較的大きなスペースを必要とする。
【0021】
本発明は、この様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、包装用箱の隅部に凹部を容易に形成することができることは勿論、これら凹部形成を、機構が簡単で装置的にも小型化が可能な押圧装置を用いて可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
この目的を達成するために、本発明溶接ワイヤ包装用箱の隅部折り込み方法の要旨は、溶接ワイヤ包装用段ボール箱の選択された隅部にハンドリング用の凹部を形成する折り込み方法であって、前記凹部を形成する段ボールの隅部相当箇所に前記凹部の稜線となるべき折線を予め形成しておき、この折線を設けた段ボールを箱形に形成した上で、押圧装置によって外部からこの段ボール箱の隅部を内側に押し込んで前記凹部を形成するに際し、前記押圧装置を、前記凹部の外縁形状に対応した形状の押し込み先端部を設けた流体シリンダーとしたことである。
【0023】
ここで、前記箱形に形成した段ボール箱内に溶接ワイヤを収納した後で、前記押圧装置により前記段ボール箱の隅部を押し込んで前記凹部を形成することが好ましい。また、前記箱形に形成した段ボール箱を台上に載置、固定した上で、この段ボール箱の隅部に向かって配置した前記流体シリンダーを動作させ、前記凹部を形成することが好ましい。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、包装用段ボール箱の隅部に凹部を容易に形成することができることは勿論、これら凹部形成を、機構が簡単で装置的にも小型化が可能な押圧装置を用いて可能とできる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施例に係る包装用箱の隅部折込方法にて使用する押圧装置を示す図で、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【図2】図1の押圧装置先端部のみを拡大して示す斜視図である。
【図3】包装用段ボール箱1の隅部を示し、(a)は隅部折込前の斜視図、(b)は隅部折込後の斜視図、(c)は隅部折込後の断面図である。
【図4】隅部に凹部を有する包装用段ボール箱1を上から見た斜視図である。
【図5】図4の包装用段ボール箱1を下から見た斜視図である。
【図6】図4の正面図である。
【図7】図4の底面図である。
【図8】図4の包装用段ボール箱1の展開図である。
【図9】従来の押圧装置の側面図である。
【図10】図9の押圧装置の動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(前提条件)
本発明の折り込み方法は、前提として、隅部折込の対象とする、溶接ワイヤの包装用段ボール箱の組み立て構造や、この箱型に組み立て前の素材段ボールの展開構造、そして折線の入れ方などは、前記した特許文献1や特許文献2に開示されている内容と同じである。即ち、包装用段ボール箱1は、図3から図7に示す通り、3個の稜線17が集まる隅部に設けられた少なくとも2個の凹部2を有し、各凹部2は前記稜線17を相互に結ぶ3本の折線により内側に折曲げて、直方体状に形成されている。より具体的には、包装用段ボール箱1の下面の4隅部が内側に折曲げられて、凹部2が成形されている。この凹部2は、直方体状の箱1の角部を平面で斜めに切り、直角三角錘を削りとったものに、更に、前記斜めの平面を底面とする三角錘状に内部に窪みを入れたような形状をなす。
【0027】
また、図8の箱型に組み立て前の素材段ボールの展開図に示すように、素材段ボールは、箱の底面となる段ボール底面部3、上面となる段ボール上面部4、正面となる段ボール正面部10、裏面となる段ボール裏面部11、側面となる段ボール側面部5、6とを各々有する。そして、更に、糊代として、接着固定するために必要な段ボール部分7、8、9、12、13、14、15を備えている。そして、素材段ボールには、更にこれらの部分をほぼ直角に折り込むための折線16が設けられている。
【0028】
この折線16で、図8の段ボールを折り込むことにより、直方体状の包装用段ボール箱1が組み立てられ、溶接ワイヤを収納し、段ボール部分7〜9、12〜15で接着固定することにより、包装用段ボール箱1による溶接ワイヤの包装が完了する。したがって、これらの折線16は、包装用段ボール箱1の稜線になる線である。
【0029】
図8の素材段ボールの展開図においては、更に段ボール底面3の4隅部に折線17が設けられている。この折線17は段ボールの正面部10又は裏面部11に設けられた部分17aと、段ボールの底面部3に設けられた部分17bと、段ボールの側面部5、6に設けられた部分17cと、段ボールの糊代部12〜15に設けられた部分17dとからなる。
【0030】
これら包装用段ボール箱1の実際の大きさは、包装用段ボール箱1の上面及び底面の1辺の長さを250〜300mmとすると、この折線17a〜17dと折線16により形成される各三角形部分の辺OA及びOBの長さは例えば60〜70mm、辺OCの長さは例えば30〜40mm、辺ODの長さは例えば60〜70mm,辺OEの長さは30〜40mmである。この折線17は、包装用段ボール箱1の稜線となる3個の折線16が集まる位置にて、これらの折線16を相互に結ぶように設けられている。
【0031】
なお、この折線16、17は従来と同様にプレス等の方法により形成することができる。また、ミシン目を折線としても良いし、厚さ方向の半分の深さにわたって切り込みを設けるトムソンによって折線を設けてもよい。
【0032】
このように構成された包装用段ボール箱1においては、先ず、図8に示すように展開した輪郭形状のものを、折線16でほぼ直角に曲げて直方体状に成形すると共に、この折線16による曲げ加工の過程で、折線17に沿って、点Oが直方体の内部にくるように点Oの部分を箱の内側に押し込みながら、曲げ加工を行う。これにより、図5乃至8に示すように、凹部2を持つ包装用箱1が組み立てられる。この凹部2の折線は、3個の稜線を結ぶように設けられている。
【0033】
そこで、上面部4を開け、コイル芯に巻回された溶接ワイヤ(図示せず)を包装用段ボール箱1の中に入れる。このコイル状の溶接ワイヤは、その軸心を包装用段ボール箱1の上面及び底面に垂直にして収納される。この場合に、箱の底面の4隅部の凹部2は箱の内部に突出しているが、溶接ワイヤはコイル状に巻回されているため、この凹部2が邪魔になることはない。
【0034】
次いで、糊代部分7〜9、12〜15を他の部分に重ねて接着固定することにより、溶接ワイヤを収納した包装用段ボール箱1の組立が完了する。なお、包装用段ボール箱1の組立に際しては、前記段ボール上面部4の接着固定を除き、他の段ボール部分を接着して一部組み立てておき、溶接ワイヤを装入した後、段ボール上面部4を接着固定して、この溶接ワイヤを封入することとしても良い。
【0035】
このようにして、溶接ワイヤを梱包した包装用段ボール箱1は、その4隅部に凹部2があるため、前記した通り、運搬の容易性や確実性において極めて優れた効果を奏する。また、この凹部2は、隅部を切断して形成したものではなく、隅部を箱内側に凹ませて設けたものであるので、この凹部2部分の強度は高い。
【0036】
しかしながら、前記した通り、この4隅部の凹部2の形成は、素材ダンボール(シート)を6面体の直方体状包装用ダンボール箱1に組み立てた後、この4隅部を、押圧装置にて機械的に、好ましくは自動工程にて、箱内側に押し込んで作成する必要がある。
【0037】
(押圧装置)
このような本発明折り込み方法に用いる押圧装置と、これを用いた溶接ワイヤ包装用箱の隅部折り込み方法を、図1、2を用いて以下に説明する。
【0038】
折り込み作業台:
図1において、折り込み対象となる、組み立て後の溶接ワイヤ包装用箱1が、四隅を支柱33によって支持された、折り込み作業台32上に載置された状態を示している。即ち、この作業台32上に載置された溶接ワイヤ包装用箱1は、予め前記図8の素材段ボールから組み立てられており、連続製造工程にて製造された溶接ワイヤが前工程にて予め収納されている状態を示している。この作業台32にて隅部が折り込まれた溶接ワイヤ包装用箱1は、製造工場から製品倉庫に保管されるか出荷されるために、作業台32から適宜の搬送手段にて搬出されていく。
【0039】
作業台32上に載置された溶接ワイヤ包装用箱1の上部は、箱の左右の作業台上に各々配置された水平ローラ群34、34(図では各々3個の水平ローラ)によって、また、溶接ワイヤ包装用箱1の側部は、箱の左右に各々配置された垂直ローラ群35、35(図では各々3個の垂直ローラ)によって、それぞれ位置決めと固定されている。ここで、溶接ワイヤ包装用箱1の側面に存在する36は、作業台32上に突出して設けられた位置決めストッパである。
【0040】
本実施態様では、図1に示す通り、包装用ダンボール箱1の4隅部の凹部2の形成のために、各々この4隅部に対向する位置に、各々4つの押圧装置20〜23を配置している。これら4つの押圧装置20〜23は、作業台32の下方側であって、包装用ダンボール箱1の4隅部にその先端部25が各々向かうように、上方に向けて斜めに設置されている。24は押圧装置20〜23のシリンダ31を上方に向けて斜めに各々支持する支持部材である。
【0041】
押圧装置:
押圧装置20〜23は、包装用ダンボール箱1の4隅部の凹部2の外縁形状に対応した形状の押し込み先端部25を設けた流体シリンダーである。即ち、作動油が充填された金属製の底付きシリンダ31と、このシリンダ31内をスライド(進退)自在に貫通するピストン(ロッド)30とを有している。このピストン30は、油圧や空気圧などの手段により駆動されて、包装用ダンボール箱1の4隅部に向けて前方に進出し、またシリンダ31内に退入することができる。
【0042】
これら流体シリンダー自体は、油などの液体や空気などの気体の流体エネルギーをロッド30の直線運動に変換する、汎用されている公知の油圧シリンダや空気圧シリンダが使用できる。したがって、押圧装置20〜23は、図示はしないが、シリンダ31の上部開口を密封するシール部材や、シリンダ31の内部に設けられてシリンダ31とピストン30を収縮させる方向の押し込み力を緩衝する油圧ダンパなどを有している。
【0043】
図2に押圧装置20〜23の押し込み先端部25を拡大して示す。押し込み先端部25の形状は、包装用ダンボール箱1の4隅部の凹部2の外縁形状に対応した形状として、3枚のフランジ(羽根)26が120度の等角度間隔で軸27の周囲に外方に向かって放射状に配置された、矢羽根形状を有している。また、軸27の後端の軸受け部28は、その中心に設けられた孔29においてピストン30を嵌合しており、ピストン30の進退と一体に押し込み先端部25が直線的に進退する。
【0044】
ここで、前記3枚のフランジ(羽根)26の先端部26aの稜線は、前記した図8の包装用段ボールの折線17の形状や、包装用段ボール箱1隅部の凹部2の稜線の形状に対応するように、ピストン30の後方(図の右側)に向かって傾斜したテーパ形状をしている。
【0045】
折り込み作業:
以上のような構成とした上で、溶接ワイヤ包装用箱1隅部2の折り込み作業では、図1(b)に示すように、包装用ダンボール箱1の4隅部に向けて、押圧装置20〜23の押し込み先端部25を前方に直線的に進出させる。そして、押圧装置20〜23の押し込み羽根26の先端部26aの稜線によって、前記段ボール箱の折線17を斜め下方から直線的に押し込む(押圧する)。これによって、折線17の曲げ加工を行って、包装用段ボール箱隅部の凹部2(凹部2の稜線形状)を作成する。
【0046】
前記図8に示したように、前記段ボール箱の折線17は、隅部Oに集まる3本の稜線AO、BO、COを相互に結ぶ3本の折線AB、BC、CAから予め形成されている。したがって、図2で示す押圧装置20〜23の押し込み先端部25の形状は、これら3本の折線AB、BC、CAを各々押圧できる、それぞれの折線AB、BC、CAに対応する3枚のフランジ(羽根)26と、その先端部26aのテーパ状の稜線とからなっている。したがって、包装用ダンボール箱1の4隅部に向けて押し込み先端部25を前方に進出させた際に、各押し込み羽根26の先端部26aの稜線によって、これら3本の折線AB、BC、CAを各々押し込むことができ、曲げ加工を円滑に行って包装用段ボール箱隅部の凹部2を作成できる。
【0047】
前記した通り、包装用段ボール箱隅部の凹部2となる、図8に示す、折線17a、17b、17c、17d及び稜線OA、OB、OCにより構成される三角錘の部分を、箱内側に押し込むためには大きな力が必要である。これも前記した通り、人手によって単に棒状の押圧部材をこの隅部に当てて押し込むだけでは、隅部の部分から受ける反力が大きく、三角錘の頂角部分がつぶれたり、穴が開く等の不都合が発生する。
【0048】
しかし、押し込み先端部25の形状を、このように、包装用ダンボール箱1の4隅部の凹部2の外縁形状に対応した形状とすることで、流体シリンダーによるこの隅部の直線的な押し込みだけでも、包装用段ボール箱1の隅部に凹部を容易に形成することができ、この凹部を備えた包装用箱を自動工程で且つ大量に製造することができる。即ち、特許文献2のような円弧状軌跡で移動する押圧部材によらずとも、凹部2を容易に形成できる。
【0049】
なお、この押し込み先端部25の形状は、必ずしも前記した3枚の矢羽根26形状でなくても、前記3本の折線AB、BC、CA(段ボール箱の折線17あるいは凹部2の稜線形状)に対応できる形状であれば、他にも適宜の形状が選択できる。例えば、前記3枚の羽根26の先端部26aの稜線に対応するようなテーパ状の凸部を有する、円錐状あるいは角錐状の凹凸形状としても良い。
【0050】
このように、本発明の折り込み方法は、押し込み先端部を設けた流体シリンダーである押圧装置20〜23によって、包装用段ボール箱1の4隅部の凹部2(凹部2の稜線形状)を、容易にかつ円滑に作成できる。したがって、押圧装置の機構が単純でで、装置的に小型化が可能である。このため、包装用段ボール箱の隅部折り込み方法(作業)実施のための必要設置スペースも小さくすることができる。
【0051】
なお、本発明は上記実施態様に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、凹部の形成は底面の4隅部に限らず、少なくとも1個の隅部に凹部を形成すればよい。また、上記実施例は、箱の底面の4隅部に整合する位置に4個の押圧装置を設置したが、2又は4個等の複数の隅部に凹部を形成する場合でも、図1に示す押圧装置は、その凹部を形成すべき隅部の数に対応した数だけ設置する必要はなく、包装箱を回転させるなどの対策をとれば、押圧装置は1個でも足りる。また、包装箱の上面の隅部に凹部を形成する場合には、押圧装置を移動させればよい。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明によれば、溶接ワイヤ包装用段ボール箱の隅部に、容易に且つ迅速に凹部を形成することができ、持ち運び性が優れた包装箱を大量生産することができる。また、これら凹部形成を、機構が簡単で装置的にも小型化が可能な押圧装置を用いて可能とできる。このため、高い生産効率と品質保証とが求められる、フラックス入り溶接ワイヤの連続製造工程などに適用されて好適である。
【符号の説明】
【0053】
1:包装用ダンボール箱、2:凹部、3:底面部、4:上面部、5、6:側面部、10:正面部、11:裏面部、16、17:折線、20、21、22、23:押圧装置、24、支持部材、25:押し込み先端部、26:フランジ、27軸、28:軸受け、29:孔、30:ピストン、31:シリンダ、32:作業台、33:支柱、34:水平ローラ群、35:垂直ローラ群、36:位置決めストッパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接ワイヤ包装用段ボール箱の選択された隅部にハンドリング用の凹部を形成する折り込み方法であって、前記凹部を形成する段ボールの隅部相当箇所に前記凹部の稜線となるべき折線を予め形成しておき、この折線を設けた段ボールを箱形に形成した上で、押圧装置によって外部からこの段ボール箱の隅部を内側に押し込んで前記凹部を形成するに際し、前記押圧装置を、前記凹部の外縁形状に対応した形状の押し込み先端部を設けた流体シリンダーとしたことを特徴とする溶接ワイヤ包装用箱の隅部折り込み方法。
【請求項2】
前記箱形に形成した段ボール箱内に溶接ワイヤを収納した後で、前記押圧装置により前記段ボール箱の隅部を押し込んで前記凹部を形成する請求項1に記載の溶接ワイヤ包装用箱の隅部折り込み方法。
【請求項3】
前記箱形に形成した段ボール箱を台上に載置、固定した上で、この段ボール箱の隅部に向かって配置した前記流体シリンダーを動作させ、前記凹部を形成する請求項1または2に記載の溶接ワイヤ包装用箱の隅部折り込み方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−188606(P2010−188606A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−35092(P2009−35092)
【出願日】平成21年2月18日(2009.2.18)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】