説明

溶接接合体およびタービンロータ

【課題】溶接による溶落ちおよび垂下が内部に落下する事態を防ぎ、かつ溶接後の亀裂の発生を防止すること。
【解決手段】第一部材11の接合面11aと第二部材12の接合面12aとを突き合わせて溶接によって接合した状態で内部が中空となる溶接接合体において、第一部材11の中空となる内壁面11bから突出して設けられ、各接合面11a,12aを突き合わせた状態で各接合面11a,12aの内側縁から離隔しつつ、各接合面11a,12aが溶融される溶融部13の内側を覆って先端15aが延在して形成されているとともに、内壁面11bから突出する基端15bが内壁面11bに対して湾曲面15cを介して連続し、各接合面11a,12aの内側の全周に渡って連続して形成された突片15を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接によって接合された状態で内部が中空となる溶接接合体およびタービンロータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特許文献1に記載の溶接プレップジョイントは、一対の軸方向に位置合わせした第一ロータ鍛造品および第二ロータ鍛造品を溶接してタービンロータをなすためのものである。この溶接プレップジョイントは、第一ロータ鍛造品の端部において、第一半径方向溶接面および第一軸方向ラベット面を備えた第一溶接ジョイント構成部と、第二ロータ鍛造品の端部において、第一半径方向溶接面に係合する第二半径方向溶接面、第一軸方向ラベット面に係合する第二軸方向ラベット面、および第二ラベット面の半径方向内側で延びかつ第二半径方向溶接面から軸方向にオフセットした第三半径方向非溶接面を備えた第二溶接ジョイント構成部とを含む。この溶接プレップジョイントは、溶接することになる各半径方向溶接面が、各軸方向ラベット面からオフセットしており、各軸方向ラベット面が支持面として作用することから、溶接による溶落ちや垂下がタービンロータ内部に落下することを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−289500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、各軸方向ラベット面は、溶接されない部分であり、溶接後には互いに面合わせされて存在することになる。このため、各軸方向ラベット面が接合当初から亀裂のごとく存在することから、タービンロータの回転による遠心力などによって各軸方向ラベット面を起点として新たな亀裂が発生するおそれがある。
【0005】
本発明は上述した課題を解決するものであり、溶接によって接合された後に内部が中空となる構成において、溶接による溶落ちおよび垂下が内部に落下する事態を防ぎ、かつ溶接後の亀裂の発生を防止することのできる溶接接合体およびタービンロータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的を達成するために、本発明の溶接接合体は、第一部材の接合面と第二部材の接合面とを突き合わせて溶接によって接合した状態で内部が中空となる溶接接合体において、前記第一部材または前記第二部材の中空となる内壁面から突出して設けられ、各前記接合面を突き合わせた状態で各前記接合面の内側縁から離隔しつつ、各前記接合面が溶融される溶融部の内側を覆って先端が延在して形成されているとともに、前記内壁面から突出する基端が当該内壁面に対して湾曲面を介して連続し、各前記接合面の内側の全周に渡って連続して形成された突片を備えることを特徴とする。
【0007】
この溶接接合体によれば、各内壁面の位置において溶融部に生じる溶落ちおよび垂下を、溶融部を覆う突片によって受け止めるため、溶融部に生じる溶落ちおよび垂下が中空内部に落下する事態を防ぐことができる。しかも、突片は、各接合面の内側縁から離隔して設けられているとともに、第一部材または第二部材の内壁面から突出する基端が、内壁面に対して湾曲面を介して連続して形成されているため、溶接後において、突片の基端(付け根部分)に局所的に大きな応力がかからず、突片を起点とした亀裂の発生を防ぐことができる。
【0008】
また、本発明の溶接接合体は、前記溶融部の範囲内であって、前記第一部材の接合面と前記第二部材の接合面とに、相互に嵌め合う凹凸部を備えることを特徴とする。
【0009】
この溶接接合体によれば、第一部材の接合面と、第二部材の接合面との突き合わせ位置を、凹凸部の嵌め合いによって位置合わせできる。このため、溶接接合体を溶接する際、第一部材と第二部材を相互に位置合わせして、溶接作業を容易に行うことができ、精度良く接合を行うことができる。
【0010】
また、本発明の溶接接合体は、前記第一部材の接合面および前記第二部材の接合面がともに円環状に形成されており、前記凹凸部は、一方の前記接合面に対して凸状に形成されているとともに他方の前記接合面に対して凹状に形成され、かつ各前記接合面の周方向に沿う円の軌跡で連続して形成されていることを特徴とする。
【0011】
この溶接接合体によれば、第一部材の接合面と、第二部材の接合面とを、凹凸部の嵌め合いによって円環状の中心に位置合わせすることができる。しかも、凹凸部は、凸状および凹状が、各接合面の周方向に沿う円の軌跡で連続して形成されていることから、第一部材と第二部材との接合に際して相互の周方向の位置を微調整することができる。
【0012】
また、本発明の溶接接合体は、前記第一部材の接合面および前記第二部材の接合面がともに円環状に形成されており、前記凹凸部は、一方の前記接合面に対して凸状に形成されているとともに他方の前記接合面に対して凹状に形成され、かつ各前記接合面の周方向に沿う円の軌跡の一部に形成されていることを特徴とする。
【0013】
この溶接接合体によれば、第一部材の接合面と、第二部材の接合面とを、凹凸部の嵌め合いによって円環状の中心に位置合わせすることができる。しかも、凹凸部は、凸状および凹状が、各接合面の周方向に沿う円の軌跡の一部に形成されていることから、第一部材と第二部材との接合に際して相互の周方向の位置を位置決めすることができる。
【0014】
また、本発明の溶接接合体は、前記第一部材の接合面および前記第二部材の接合面がともに円環状に形成されており、前記凹凸部は、各前記接合面に対し、各前記接合面の周方向に沿う円の軌跡で連続する鋸歯状に形成されていることを特徴とする。
【0015】
この溶接接合体によれば、第一部材の接合面と、第二部材の接合面とを、凹凸部の嵌め合いによって円環状の中心に位置合わせすることができる。しかも、凹凸部は、鋸歯状であることから、第一部材と第二部材との接合に際して相互の周方向の位置を位置決めすることができる。
【0016】
また、本発明の溶接接合体は、前記第一部材の接合面および前記第二部材の接合面がともに円環状に形成されており、前記凹凸部は、各前記接合面に対し、各前記接合面の周方向に沿う円の軌跡の一部で鋸歯状に形成されていることを特徴とする。
【0017】
この溶接接合体によれば、第一部材の接合面と、第二部材の接合面とを、凹凸部の嵌め合いによって円環状の中心に位置合わせすることができる。しかも、凹凸部は、鋸歯状であることから、第一部材と第二部材との接合に際して相互の周方向の位置を位置決めすることができる。しかも、凹凸部は、鋸歯状が、各接合面の周方向に沿う円の軌跡の一部で鋸歯状に形成されていることから、その成形を各接合面の周方向の一部にできるため、製造コストを低減することができる。
【0018】
また、本発明の溶接接合体は、前記凹凸部は、各前記接合面において最外側縁に設けられていることを特徴とする。
【0019】
溶接接合体は、溶接機によって外側から溶接されることになり、内壁面を溶融した溶融部が、外側が最も幅が広く、内壁面の位置において最も幅が小さくなる。この溶接接合体によれば、溶融部の最も幅が広い最外側縁に凹凸部を設けることで、凹凸部を十分に溶融させることができ、溶接部分の健全性に影響を与えることがない。しかも、この溶接接合体によれば、凹凸部の嵌め合いを外側から目視やカメラで確認できるため、突き合わせ時の作業性を向上することができる。
【0020】
上述の目的を達成するために、本発明のタービンロータは、軸方向で第一部材と第二部材とに分割形成され、前記第一部材の接合面と前記第二部材の接合面とを突き合わせて溶接によって接合した状態で軸方向に連続する円筒状をなすタービンロータにおいて、上述したいずれか1つの溶接接合体として構成されることを特徴とする。
【0021】
このタービンロータによれば、溶接による溶落ちおよび垂下がタービンロータ内部に落下する事態を防ぎ、かつ溶接後の亀裂の発生を防止することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、溶接による溶落ちおよび垂下が内部に落下する事態を防ぎ、かつ溶接後の亀裂の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、本発明の実施の形態に係る溶接接合体(タービンロータ)が適用されるガスタービンの概略構成図である。
【図2】図2は、本発明の実施の形態1に係る溶接接合体(タービンロータ)の一部の断面図である。
【図3】図3は、本発明の実施の形態1に係る溶接接合体(タービンロータ)の溶接を示す一部の断面図である。
【図4】図4は、本発明の実施の形態2に係る溶接接合体(タービンロータ)の一部の断面図である。
【図5】図5は、本発明の実施の形態2に係る溶接接合体(タービンロータ)の第一部材の端面図である。
【図6】図6は、本発明の実施の形態2に係る溶接接合体(タービンロータ)の他の第一部材の端面図である。
【図7】図7は、本発明の実施の形態3に係る溶接接合体(タービンロータ)の一部の側面図である。
【図8】図8は、本発明の実施の形態3に係る溶接接合体(タービンロータ)の第一部材の端面図である。
【図9】図9は、本発明の実施の形態3に係る溶接接合体(タービンロータ)の他の第一部材の端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明に係る実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施の形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0025】
図1は、本実施の形態に係るガスタービンの概略構成図である。ガスタービンは、図1に示すように、圧縮機111と燃焼器112とタービン113と排気室114により構成され、タービン113に図示しない発電機が連結されている。圧縮機111は、空気を取り込む空気取入口115を有し、圧縮機車室116内に複数の静翼117と動翼118が交互に配設されている。燃焼器112は、圧縮機111で圧縮された圧縮空気に対して燃料を供給し、バーナで点火することで燃焼可能となっている。タービン113は、タービン車室120内に複数の静翼121と動翼122が交互に配設されている。排気室114は、タービン113に連続する排気ディフューザ123を有している。また、圧縮機111、燃焼器112、タービン113、排気室114の中心部を貫通するようにロータ(タービンロータ)124が位置しており、圧縮機111側の端部が軸受部125により回転自在に支持される一方、排気室114側の端部が軸受部126により回転自在に支持されている。そして、このタービンロータ124に複数のディスクプレートが固定され、各動翼118,122が連結されると共に、排気室114側の端部に図示しない発電機の駆動軸が連結されている。なお、図1において一点鎖線で示す符号Sは、タービンロータ124の中心軸である。
【0026】
従って、圧縮機111の空気取入口115から取り込まれた空気が、複数の静翼121と動翼122を通過して圧縮されることで高温・高圧の圧縮空気となり、燃焼器112にて、この圧縮空気に対して所定の燃料が供給されることで燃焼する。そして、この燃焼器112で生成された作動流体である高温・高圧の燃焼ガスが、タービン113を構成する複数の静翼121と動翼122を通過することでタービンロータ124を駆動回転し、このタービンロータ124に連結された発電機を駆動する一方、排気ガスは排気室114の排気ディフューザ123で静圧に変換されてから大気に放出される。
【0027】
[実施の形態1]
図2は、実施の形態1に係る溶接接合体(タービンロータ)の一部の断面図であり、図3は、溶接接合体(タービンロータ)の溶接を示す一部の断面図である。
【0028】
上述したガスタービンのタービンロータ124としての溶接接合体は、図2および図3に示すように、第一部材11と第二部材12とに分割して形成されており、第一部材11の接合面11aと第二部材12の接合面12aとを突き合わせ、当該各接合面11a,12aを溶接によって溶融することによって接合される。この溶融された部分を溶融部13という。そして、溶接接合体は、第一部材11の接合面11aと第二部材12の接合面12aとを接合した状態で、内部に中空部14が形成される。各接合面11a,12aは、溶接接合体がタービンロータ124である場合、タービンロータ124が円筒状に形成されていることから、相互が同じ円環状に形成されている。
【0029】
この溶接接合体は、第一部材11または第二部材12に、突片15が設けられている。本実施の形態においては、図2および図3に示すように、突片15が第一部材11に設けられている例を示す。突片15は、第一部材11の中空部14側となる内壁面11bから突出して設けられている。突片15は、各接合面11a,12aを突き合わせた状態で、各接合面11a,12aの内側縁(内壁面11b,12b)から距離Aをおいて離隔しつつ、溶融部13の内側を覆って先端15aが中心軸Sに沿う軸方向に延在して形成されている。突片15の先端15aは、溶融部13を覆うにあたり、突き合わせた各接合面11a,12aの位置から軸方向に距離Bの位置まで延在されている。また、突片15は、第一部材11の内壁面11bから突出する基端15bが、第一部材11の内壁面11bに対して湾曲面15cを介して連続して形成されている。この湾曲面15cが内壁面11bに連続する位置は、突き合わせた各接合面11a,12aの位置から軸方向に距離Cの位置とされている。また、突片15は、中心軸Sに直交する径方向での厚さをDとして形成されている。そして、突片15は、突き合わせた各接合面11a,12aの内側の全周に渡って連続して形成されている。
【0030】
このような溶接接合体は、図3に示すように、各接合面11a,12aを突き合わせた状態で、かつ突片15を有した第一部材11を下側として突片15の先端15aを上向きとし、外側から電子ビーム溶接機やレーザ溶接機などの溶接機10によって溶接される。溶接の際は、溶接機10と溶接接合体とを中心軸S周りに相対的に回転させる。このように、溶接機10によって外側から溶接される溶接接合体は、内壁面11b,12bを溶融した溶融部13が、図2に示すように、外側が最も幅が広く、内壁面11b,12bの位置において最も幅が小さくなる。そして、溶融部13が内壁面11b,12bに到達した場合、そこから生じる溶落ちおよび垂下が、溶融部13を覆う突片15によって受け止められる。また、突片15の先端を上向きとしていることで、内壁面11b,12bの位置において溶融部13に生じる溶落ちおよび垂下が、内壁面11bから突出する突片15の基端15bで受け止められる。このため、溶融部13に生じる溶落ちおよび垂下が中空部14の内部に落下する事態を防ぐ。しかも、突片15は、各接合面11a,12aの内側縁から離隔して設けられているとともに、第一部材11の内壁面11bから突出する基端15bが、第一部材11の内壁面11bに対して湾曲面15cを介して連続して形成されている。このため、溶接後において、タービンロータ124の回転による遠心力などによって突片15の基端(付け根部分)15cに局所的に大きな応力がかからないため、突片15を起点とした亀裂の発生を防ぐ。
【0031】
ここで、突片15に係る各寸法の一例について説明する。溶接接合体をタービンロータ124とした場合に、図2に示すように、外半径Eが600[mm]〜3000[mm]とされ、第一部材11および第二部材12(接合面11a,12a)の径方向の厚みFが100[mm]〜200[mm]とされている。この場合、十分な接合強度を得るため、各接合面11a,12aを溶融した溶融部13の幅Gは、最も幅が小さくなる内壁面11b,12bの位置において6[mm]〜10[mm]とすることが好ましい。このような、タービンロータ124において、突片15の各接合面11a,12aの内側縁(内壁面11b,12b)からの距離Aは、溶融部13から生じる溶落ちおよび垂下を適宜受け止めるとともに、湾曲面15cの加工性を損なわないようにするため、10[mm]〜20[mm]とすることが好ましい。また、突き合わせた各接合面11a,12aの位置から突片15の先端15aまでの距離Bは、溶融部13を覆って溶融部13から生じる溶落ちおよび垂下を適宜受け止めるため、10[mm]以上とすることが好ましい。また、突き合わせた各接合面11a,12aの位置から湾曲面15cが内壁面11bに連続する位置までの距離Cは、溶融部13から距離をおいて突片15に大きな応力がかからないようにするため、20[mm]以上とすることが好ましい。また、突片15の厚さDは、突片15の強度を維持する一方で中空部14の領域を阻害しないため、10[mm]〜30[mm]とすることが好ましい。なお、溶接機10として電子ビーム溶接機を用いた場合、その溶接条件の例は、溶接接合体の材質(例えば、低合金鋼)と板厚(厚みF)から、電流値300[mA]、電圧150[kV]、溶接速度(溶接機10と溶接接合体との相対回転速度)150[mm/min]のように決定できる。
【0032】
このように、本実施の形態の溶接接合体は、第一部材11の接合面11aと第二部材12の接合面12aとを突き合わせて溶接によって接合した状態で内部が中空となる溶接接合体であり、第一部材11(第二部材12)の中空となる内壁面11b(12b)から突出して設けられ、各接合面11a,12aを突き合わせた状態で各接合面11a,12aの内側縁から離隔しつつ、各接合面11a,12aが溶融される溶融部13の内側を覆って先端15aが延在して形成されているとともに、内壁面11b(12b)から突出する基端15bが内壁面11b(12b)に対して湾曲面15cを介して連続し、各接合面11a,12aの内側の全周に渡って連続して形成された突片15を備える。
【0033】
この溶接接合体によれば、内壁面11b,12bの位置において溶融部13に生じる溶落ちおよび垂下を、溶融部13を覆う突片15によって受け止めるため、溶融部13に生じる溶落ちおよび垂下が中空部14の内部に落下する事態を防ぐことが可能である。しかも、突片15は、各接合面11a,12aの内側縁から離隔して設けられているとともに、第一部材11(第二部材12)の内壁面11b(12b)から突出する基端15bが、内壁面11b(12b)に対して湾曲面15cを介して連続して形成されているため、溶接後において、突片15の基端(付け根部分)15cに局所的に大きな応力がかからず、突片15を起点とした亀裂の発生を防ぐことが可能になる。
【0034】
[実施の形態2]
図4は、実施の形態2に係る溶接接合体(タービンロータ)の一部の断面図であり、図5は、溶接接合体(タービンロータ)の第一部材の端面図である。
【0035】
本実施の形態の溶接接合体は、実施の形態1の溶接接合体において、溶融部13の範囲内であって、第一部材11の接合面11aと第二部材12の接合面12aとに、相互に嵌め合う凹凸部16を備える。
【0036】
この溶接接合体によれば、第一部材11の接合面11aと、第二部材12の接合面12aとの突き合わせ位置を、凹凸部16の嵌め合いによって位置合わせすることが可能である。このため、溶接接合体を溶接する際、第一部材11と第二部材12を相互に位置合わせして、溶接作業を容易に行うことが可能であり、精度良く接合を行うことが可能である。
【0037】
また、本実施の形態における凹凸部16は、第一部材11の接合面11aおよび第二部材12の接合面12aがともに円環状に形成されている。そして、凹凸部16は、一方の接合面(図4では接合面11a)に対して凸状16aにて形成されているとともに、他方の接合面(図4では接合面12a)に対して凹状16bにて形成されている。さらに、凹凸部16は、図5に示すように、各接合面11a,12aの周方向に沿う円の軌跡で連続して形成されている。
【0038】
この溶接接合体によれば、第一部材11の接合面11aと、第二部材12の接合面12aとを、凹凸部16の嵌め合いによって円環状の中心(中心軸S)に位置合わせすることが可能である。しかも、凹凸部16は、凸状16aおよび凹状16bが、各接合面11a,12aの周方向に沿う円の軌跡で連続して形成されていることから、第一部材11と第二部材12との接合に際して相互の周方向の位置を微調整することが可能である。
【0039】
また、凹凸部16は、各接合面11a,12aにおいて最外側縁に設けられていることが好ましい。
【0040】
上述したように、溶接機10によって外側から溶接される溶接接合体は、内壁面11b,12bを溶融した溶融部13が、外側が最も幅が広く、内壁面11b,12bの位置において最も幅が小さくなる。この溶接接合体によれば、溶融部13の最も幅が広い最外側縁に凹凸部16を設けることで、凹凸部16を十分に溶融させることが可能であり、溶接部分の健全性に影響を与えることがない。しかも、この溶接接合体によれば、凹凸部16の嵌め合いを外側から目視やカメラで確認できるため、突き合わせ時の作業性を向上することが可能である。
【0041】
ここで、凹凸部16の凸状16aおよび凹状16bの軸方向寸法Hおよび径方向寸法Iの一例について説明する。この寸法は、溶融部13の最小幅Gが6[mm]〜10[mm]とされていることから、凹凸部16を十分に溶融させるため、軸方向寸法Hを1[mm]〜4[mm]とし、径方向寸法Iを2[mm]〜10[mm]としている。
【0042】
図6は、実施の形態2に係る溶接接合体(タービンロータ)の他の第一部材の端面図である。図6に示す溶接接合体は、凹凸部16(凸状16aおよび凹状16b)が、各接合面11a,12aの周方向に沿う円の軌跡の一部で断続して形成されている。
【0043】
この溶接接合体によれば、第一部材11の接合面11aと、第二部材12の接合面12aとを、凹凸部16の嵌め合いによって円環状の中心(中心軸S)に位置合わせすることが可能である。しかも、凹凸部16は、凸状16aおよび凹状16bが、各接合面11a,12aの周方向に沿う円の軌跡の一部で断続して形成されていることから、第一部材11と第二部材12との接合に際して相互の周方向の位置を位置決めすることが可能である。
【0044】
[実施の形態3]
図7は、実施の形態3に係る溶接接合体(タービンロータ)の一部の側面図であり、図8は、溶接接合体(タービンロータ)の第一部材の端面図である。
【0045】
本実施の形態の溶接接合体は、実施の形態1の溶接接合体において、溶融部13の範囲内であって、第一部材11の接合面11aと第二部材12の接合面12aとに、相互に嵌め合う凹凸部16を備える。
【0046】
この溶接接合体によれば、第一部材11の接合面11aと、第二部材12の接合面12aとの突き合わせ位置を、凹凸部16の嵌め合いによって位置合わせすることが可能である。このため、溶接接合体を溶接する際、第一部材11と第二部材12を相互に位置合わせして、溶接作業を容易に行うことが可能であり、精度良く接合を行うことが可能である。
【0047】
また、本実施の形態における凹凸部16は、第一部材11の接合面11aおよび第二部材12の接合面12aがともに円環状に形成されている。そして、凹凸部16は、各接合面11a,12aに対し、各接合面11a,12aの周方向に沿う円の軌跡で連続する鋸歯状16cにて形成されている。
【0048】
この溶接接合体によれば、第一部材11の接合面11aと、第二部材12の接合面12aとを、凹凸部16の嵌め合いによって円環状の中心(中心軸S)に位置合わせすることが可能である。しかも、凹凸部16は、鋸歯状16cであることから、第一部材11と第二部材12との接合に際して相互の周方向の位置を位置決めすることが可能である。
【0049】
また、凹凸部16は、各接合面11a,12aにおいて最外側縁に設けられていることが好ましい。
【0050】
上述したように、溶接機10によって外側から溶接される溶接接合体は、内壁面11b,12bを溶融した溶融部13が、外側が最も幅が広く、内壁面11b,12bの位置において最も幅が小さくなる。この溶接接合体によれば、溶融部13の最も幅が広い最外側縁に凹凸部16を設けることで、凹凸部16を十分に溶融させることが可能であり、溶接部分の健全性に影響を与えることがない。しかも、この溶接接合体によれば、凹凸部16の嵌め合いを外側から目視やカメラで確認できるため、突き合わせ時の作業性を向上することが可能である。
【0051】
ここで、凹凸部16の凸状16aおよび凹状16bの軸方向寸法Hおよび径方向寸法Iの一例について説明する。この寸法は、溶融部13の最小幅Gが6[mm]〜10[mm]とされていることから、凹凸部16を十分に溶融させるため、図3に示したように、軸方向寸法Hを1[mm]〜4[mm]とし、径方向寸法Iを2[mm]〜10[mm]としている。
【0052】
図9は、実施の形態3に係る溶接接合体(タービンロータ)の他の第一部材の端面図である。図9に示す溶接接合体は、凹凸部16が、各接合面11a,12aに対し、各接合面11a,12aの周方向に沿う円の軌跡の一部で鋸歯状に形成されている。
【0053】
この溶接接合体によれば、第一部材11の接合面11aと、第二部材12の接合面12aとを、凹凸部16の嵌め合いによって円環状の中心(中心軸S)に位置合わせすることが可能である。しかも、凹凸部16は、鋸歯状16cであることから、第一部材11と第二部材12との接合に際して相互の周方向の位置を位置決めすることが可能である。しかも、凹凸部16は、鋸歯状16cが、各接合面11a,12aの周方向に沿う円の軌跡の一部で鋸歯状に形成されていることから、その成形を各接合面11a,12aの周方向の一部にできるため、製造コストを低減することが可能になる。
【0054】
また、上述した各実施の形態のいずれか1つの溶接接合体として構成されたタービンロータ124によれば、溶接による溶落ちおよび垂下がタービンロータ内部に落下する事態を防ぎ、かつ溶接後の亀裂の発生を防止することが可能になる。
【0055】
なお、上述した各実施の形態では、タービンとしてガスタービンを例に説明したが、蒸気タービンのタービンロータにおいても、溶接接合体として同様の構成を適用し、同様の効果を得ることが可能である。
【符号の説明】
【0056】
11 第一部材
11a 接合面
11b 内壁面
12 第二部材
12a 接合面
12b 内壁面
13 溶融部
14 中空部
15 突片
15a 先端
15b 基端
15c 湾曲面
16 凹凸部
16a 凸状
16b 凹状
16c 鋸歯状
124 タービンロータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一部材の接合面と第二部材の接合面とを突き合わせて溶接によって接合した状態で内部が中空となる溶接接合体において、
前記第一部材または前記第二部材の中空となる内壁面から突出して設けられ、各前記接合面を突き合わせた状態で各前記接合面の内側縁から離隔しつつ、各前記接合面が溶融される溶融部の内側を覆って先端が延在して形成されているとともに、前記内壁面から突出する基端が当該内壁面に対して湾曲面を介して連続し、各前記接合面の内側の全周に渡って連続して形成された突片を備えることを特徴とする溶接接合体。
【請求項2】
前記溶融部の範囲内であって、前記第一部材の接合面と前記第二部材の接合面とに、相互に嵌め合う凹凸部を備えることを特徴とする請求項1に記載の溶接接合体。
【請求項3】
前記第一部材の接合面および前記第二部材の接合面がともに円環状に形成されており、前記凹凸部は、一方の前記接合面に対して凸状に形成されているとともに他方の前記接合面に対して凹状に形成され、かつ各前記接合面の周方向に沿う円の軌跡で連続して形成されていることを特徴とする請求項2に記載の溶接接合体。
【請求項4】
前記第一部材の接合面および前記第二部材の接合面がともに円環状に形成されており、前記凹凸部は、一方の前記接合面に対して凸状に形成されているとともに他方の前記接合面に対して凹状に形成され、かつ各前記接合面の周方向に沿う円の軌跡の一部に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の溶接接合体。
【請求項5】
前記第一部材の接合面および前記第二部材の接合面がともに円環状に形成されており、前記凹凸部は、各前記接合面に対し、各前記接合面の周方向に沿う円の軌跡で連続する鋸歯状に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の溶接接合体。
【請求項6】
前記第一部材の接合面および前記第二部材の接合面がともに円環状に形成されており、前記凹凸部は、各前記接合面に対し、各前記接合面の周方向に沿う円の軌跡の一部で鋸歯状に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の溶接接合体。
【請求項7】
前記凹凸部は、各前記接合面において最外側縁に設けられていることを特徴とする請求項2〜6のいずれか1つに記載の溶接接合体。
【請求項8】
軸方向で第一部材と第二部材とに分割形成され、前記第一部材の接合面と前記第二部材の接合面とを突き合わせて溶接によって接合した状態で軸方向に連続する円筒状をなすタービンロータにおいて、
請求項1〜7のいずれか1つに記載の溶接接合体として構成されることを特徴とするタービンロータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−200773(P2012−200773A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−68842(P2011−68842)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】