溶接用アフターシールド冶具
【課題】チタン材等の溶接における溶接部のガスシールド（空気絶縁）を図るアフターシールド冶具に屈曲，変形性（可撓性）を具備させて、冶具の使用範囲の拡大，ガスシールドの作業性並びに確実性を向上させる。
【解決手段】トレーラー２を薄肉金属片にて底面開放の半割筒体形状に形成して変形可能となし、トレーラー２内に，薄肉金属片にて筒体形状に形成して変形可能となした不活性ガス放射パイプを可動可能に配設するとともに不活性ガス拡散用の金属製繊維屑５を配置し、トレーラー２の底面開放部に金網４を取り付ける。
【解決手段】トレーラー２を薄肉金属片にて底面開放の半割筒体形状に形成して変形可能となし、トレーラー２内に，薄肉金属片にて筒体形状に形成して変形可能となした不活性ガス放射パイプを可動可能に配設するとともに不活性ガス拡散用の金属製繊維屑５を配置し、トレーラー２の底面開放部に金網４を取り付ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、主としてチタン材等の酸素との親和性が大きい反応性金属の溶接において、トーチによる溶接に追従してその溶接部にアルゴン，ヘリウム等の不活性ガスを連続放射し，その溶接部の酸化による溶接不良の防止を図るガスシールド（空気絶縁）を行うトレーラー等を含むアフターシールド冶具に関し、とりわけトレーラー等を含む冶具が被溶接材（溶接母材）の形状の相違に対する変形性（可撓性）に優れ，使用範囲の拡大を図るとともにガスシールドの作業性を向上させることができる溶接用アフターシールド冶具に係るものである。
【背景技術】
【０００２】
チタン材等の酸素との親和性が大きい反応性金属の溶接においては、溶接部の酸化による溶接不良を防止するために、トーチよりの電極に沿ったアルゴン，ヘリウム等の不活性ガスの連続流にてアーク部分を包み込むとともに、トーチによる溶接に追従させて溶接直後の溶接部に冶具本体より同じく不活性ガスを連続的に放射してその溶接部のガスシールド（空気絶縁）を図っている。
【０００３】
従来において、斯かるトーチによる溶接に追従させて溶接直後の溶接部に不活性ガスを連続的に放射する場合には、特許文献１に示されているように、トーチ装着部を付設し内部に多数のシールドガス噴出孔を有する仕切り板１２を配設したコ字形断面の箱型形状に形成した冶具本体（トレーラー）内にシールドガス（不活性ガス）を供給し、そのシールドガスを仕切り板１２の多数のシールドガス噴出孔より溶接直後の溶接部に連続的に放射するという手段が採られていた。
しかしこの場合には、冶具本体が金属製箱型形状で，内部に配設される仕切り板とともに，構造的にも材質的にも屈曲性，変形性に乏しく、鋼板等平板状のものの溶接にしか使用することができず、使用範囲が限られていた。 また，相当な重量となる関係で，可動操作にも力を必要とし、作業性も良好でなかった。
【０００４】
そのため従来においては、特許文献2に示されているように、円筒面等の湾曲面の溶接を行う場合には、湾曲面に部分的に呼応した多数の湾曲状の流通部材６ａを用意し，これを環状に組み合わせてシールド冶具を形成しガスシールドを図るようになしていた（段落００１９〜００２１）。
しかしこの場合には、溶接母材の形状の変化に合わせてシールド冶具を別々に製造しなければならず製造の手間が煩瑣であるばかりでなく、湾曲面に部分的に対応しているとはいえ構造上やはり屈曲性，変形性に乏しいので，冶具と溶接母材との間の間隙に均一性がなくムラが生じ作業性が良好でないという難点があった。
【特許文献１】特開２００３−３１１４１９号公報
【特許文献２】特開平７−２１４３８０号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００５】
本発明は、斯かる事情に鑑みなされたもので、前記従来技術の有する諸難点を解消し、屈曲，変形自在で溶接母材の形状の相違に対する変形追従性（可撓性）に優れ，同一冶具で平板，パイプの内外面，湾曲面の溶接に使用することができ冶具の使用範囲を拡大することができるとともに、冶具の製作の手間を大幅に軽減させることができ、更に軽量で，冶具と溶接母材との間隙を常に均一に保持することができガスシールドの確実性並びに作業性も良好となる溶接用アフターシールド冶具の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【０００６】
本発明は、前記の課題を解決するために、次の手段を採っている。
即ち，主としてチタン材等の酸素等の親和性が大きい反応性金属の溶接に際し，トーチによる溶接に追従して溶接部に不活性ガスを放射してガスシールド（空気絶縁）を図るトレーラーを含むアフターシールド冶具において、先端部にトーチ保持金具を付設したトレーラーを，薄肉金属片にてその周壁面を屈曲，変形自在となした底面開放の半割筒体形状に形成し、このトレーラー内に、不活性ガス導入パイプに接続し導入された不活性ガスを溶接部に放射する薄肉金属片にて屈曲，変形自在な筒体状に形成された不活性ガス放射パイプを，その一端部は固定し多端部をガイド板に設けた嵌合孔に遊嵌して可動可能となして配設せしめ、トレーラー底面の開放部に金網を取り付けるとともにトレーラー内に不活性ガス拡散用の多数の金属製繊維屑を配置せしめて溶接用アフターシールド冶具を形成したことを特徴とするものである。
【０００７】
薄肉金属片にてその周壁面を屈曲，変形自在となし底面開放の半割筒体形状に形成したトレーラーとしては、底面開放で半割筒体形状のトレーラーの周壁面を，薄肉金属片にて波形状に連続湾曲せしめて屈曲，変形自在に形成したものを用いたことを特徴とする。
【０００８】
トレーラー内に配設される不活性ガス放射パイプとしては、薄肉金属片にて波形に連続湾曲せしめて筒体状となすことにより，屈曲性及び変形性を具備せしめたものを用いたことを特徴とする。
【発明の効果】
【０００９】
本発明は、上記の構成となしたので、上述の従来技術の有する諸難点を解消し、次の特有の効果を奏する。
【００１０】
薄肉金属片にて半割筒体形状に形成したトレーラー及びその内部に配置する不活性ガス放射放射パイプそしてトレーラー底面に配置する金網等シールド冶具全体構造が、屈曲，変形性（可撓性）に富んでいるので、接合する溶接母材ならびに溶接部位の形状の相違に応じてシールド冶具を変形追従させることができ、同一種類の冶具にて，平板相互の直線状平面，湾曲する平板相互の湾曲面，円筒相互の内面側及び外面側の円形湾曲面，更には円板の外周にドーナツ板を接合する場合の円形湾曲面等，接合する溶接母材の溶接部位における種々の形態の相違に応じて冶具の形態を変形追従させてその溶接作業を容易，確実に行うことができる。
従って，従来のように屈曲，変形性に乏しいため接合する溶接母材の溶接部位における種々の形態の相違に応じてシールド冶具を個別に製作するという煩瑣な手間を省くことができ、同一種類の冶具による溶接作業の使用範囲を拡大することができ、製作並びに使用上効率がよく経済的である。
【００１１】
シールド冶具全体が屈曲，変形性に富んでいることに伴い，溶接母材とシールド冶具との間隔を従来に比し常に必要最小限の最適なものに保持することができるので、従来に比しガスシールドの効率を向上させることができ、溶接の作業精度を高めることができる。
【００１２】
シールド冶具の素材並びに構造上，シールド冶具全体の重量を従来に比し遥かに軽量となすことができるので、トーチを含めたシールド冶具の可動を従来のように腕に力を必要とすることなく軽快に行うことができ、溶接作業を長時間に亙って安定して行うことができ、作業性がとても良好である。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１３】
シールド冶具が溶接部位の形態の相違に対する変形追従性に優れ，溶接母材とシールド冶具との間隔を常に必要最小限の間隔に保持することができ，ガスシールドの効率を良好になすことができるため、特にチタン材等の酸素との親和性が大きい反応性金属の溶接に実施して好適である。
【００１４】
シールド冶具が屈曲，変形性に富み接合する溶接母材の溶接部位における種々の形態の相違に対する変形追従性に優れているため、その形態に応じた冶具を別々に製作する必要が無く同一種類の冶具にて，平板相互の直線状平面，湾曲する平板相互の湾曲面，円筒相互の内面側及び外面側の円形湾曲面，更には円板の外周にドーナツ板を接合する場合の円形湾曲面等，接合する溶接母材の溶接部位における種々の形態の相違に応じて冶具の形態を変形追従させてその溶接作業を容易，確実に行うことができる。
【００１５】
シールド冶具に屈曲，変形性を具備させる手段としては、例えばトレーラーを、底面開放の半割筒体形状となし、その周壁面を薄肉金属片にて波形状に連続湾曲せしめて形成することにより行う。
また，トレーラー内部に配置する不活性ガス放射パイプを、同じくその筒体周壁面を薄肉金属片にて波形状に連続湾曲せしめて形成するとともに、そのパイプの一端部は固定し他端部はガイド板に遊嵌して可動可能に支持せしめることにより行う。
更に，不活性ガスを放出するトレーラー底面の開放部には，屈曲，変形自在な金網を配置せしめることにより行う。また，トレーラー内には，溶接部に不活性ガスが均等に放射されるように不活性ガス拡散用の多数の金属製繊維屑を配置せしめる。
【実施例１】
【００１６】
別紙図面の図１〜図５を参照して、本発明の実施の１例について説明する。
【００１７】
図１は本発明の実施の１例に係るアフターシールド冶具の縦断正面図であり、図２はその縦断側面図、図３は同平面図、図４及び図５はその使用の１例を示す使用説明図である。
【００１８】
Ａはアフターシールド冶具であり、先端部にトーチ保持金具１を付設したトレーラー２と、このトレーラー内に配設された不活性ガス放射パイプ３と、トレーラーの底面開放部に取り付けられた金網４と、トレーラー内に収容配設された多数の金属製繊維屑５とを備えている。 不活性ガス放射パイプ３には、溶接機に配管接続された不活性ガス導入パイプ６が接続固定されているとともに、下面に多数のガス噴射孔が設けられている。 金属製繊維屑５は、放射された不活性ガスを溶接部に拡散させるためのものである。
【００１９】
トレーラー２は、屈曲，変形性（可撓性）を具備させるために，底面開放の半割筒体形状に形成されているとともに、その周壁面が薄肉金属片にて波形形状に連続して湾曲形成されており、これによって，上下，前後，左右のいずれの方向にもフレキシブル自在なものとなっている。
【００２０】
不活性ガス放射パイプ３は、同じく屈曲，変形性を具備させるために，薄肉金属片にて波形形状に連続湾曲せしめて筒体状となしたものを用いるとともに、その一端部はトレーラー２内に固定され他端部はトレーラー内に固定のガイド板７に設けた嵌合孔８に遊嵌して可動可能となすことにより屈曲，変形自在に配設されている。
【００２１】
トーチによる溶接に追従して，アフターシールド冶具Ａから溶接直後の溶接部に不活性ガスが連続的に放射されて，溶接部のガスシールド（空気絶縁）がなされる。 即ち，溶接機より不活性ガス導入パイプ６を介して不活性ガス放射パイプ３内に導入されたアルゴン，ヘリウム等の不活性ガスは、放射パイプ下面の多数の放射孔よりトレーラー２内に放出され、金属製繊維屑５によりあらゆる方向に拡散されて金網４より溶接部に連続的に均一に放射されて該部のガスシールドがなされる。
【００２２】
図４及び図５は、本アフターシールド冶具Ａを用いて溶接部のガスシールドを行う使用の一例を示す説明図である。 図４は、円筒形溶接母材Ｍ相互を接合する場合の外面側湾曲面に沿ってその溶接部のガスシールドを図る例を示したものであり、この場合にはアフターシールド冶具Ａ全体を外方に凸に湾曲変形し前記円筒形外面側の湾曲面の形状に追従させて用いる。 図５は、円筒形溶接母材Ｍ相互の内面側湾曲面にそって溶接部のガスシールドを行う場合であり、この場合には逆にその湾曲形状に合わせてアフターガスシールド冶具Ａを外方に凹に湾曲変形させて用いる。
【００２３】
アフターシールド冶具Ａは、特に半割筒体形状のトレーラー２とその内部に配設する不活性ガス放射パイプ３と底面に配置する金網４が接合する溶接母材の溶接部における形態の相違に応じて屈曲，変形性に富んでいるので、冶具と溶接母材との間の間隙を常に必要最小限の均一な間隔に保持することができ、ガスシールドにムラが無くその確実性を期することができる。 また冶具全体を軽量となすことができるので、その可動操作に力を必要とせず長時間安定して作業を行うことができ作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【００２４】
【図１】本発明実施の１例に係るアフターシールド冶具の縦断正面図である。
【図２】同上の縦断側面図である。
【図３】同上の平面図である。
【図４】アフターシールド冶具の使用の１例を示す説明図である。
【図５】同じく他の使用例を示す説明図である。
【符号の説明】
【００２５】
Ａ アフターシールド冶具
Ｍ 円筒形溶接母材
１ トーチ保持金具
２ トレーラー
３ 不活性ガス放射パイプ
４ 金網
５ 金属製繊維屑
６ 不活性ガス導入パイプ
７ ガイド板
８ 嵌合孔
【技術分野】
【０００１】
本発明は、主としてチタン材等の酸素との親和性が大きい反応性金属の溶接において、トーチによる溶接に追従してその溶接部にアルゴン，ヘリウム等の不活性ガスを連続放射し，その溶接部の酸化による溶接不良の防止を図るガスシールド（空気絶縁）を行うトレーラー等を含むアフターシールド冶具に関し、とりわけトレーラー等を含む冶具が被溶接材（溶接母材）の形状の相違に対する変形性（可撓性）に優れ，使用範囲の拡大を図るとともにガスシールドの作業性を向上させることができる溶接用アフターシールド冶具に係るものである。
【背景技術】
【０００２】
チタン材等の酸素との親和性が大きい反応性金属の溶接においては、溶接部の酸化による溶接不良を防止するために、トーチよりの電極に沿ったアルゴン，ヘリウム等の不活性ガスの連続流にてアーク部分を包み込むとともに、トーチによる溶接に追従させて溶接直後の溶接部に冶具本体より同じく不活性ガスを連続的に放射してその溶接部のガスシールド（空気絶縁）を図っている。
【０００３】
従来において、斯かるトーチによる溶接に追従させて溶接直後の溶接部に不活性ガスを連続的に放射する場合には、特許文献１に示されているように、トーチ装着部を付設し内部に多数のシールドガス噴出孔を有する仕切り板１２を配設したコ字形断面の箱型形状に形成した冶具本体（トレーラー）内にシールドガス（不活性ガス）を供給し、そのシールドガスを仕切り板１２の多数のシールドガス噴出孔より溶接直後の溶接部に連続的に放射するという手段が採られていた。
しかしこの場合には、冶具本体が金属製箱型形状で，内部に配設される仕切り板とともに，構造的にも材質的にも屈曲性，変形性に乏しく、鋼板等平板状のものの溶接にしか使用することができず、使用範囲が限られていた。 また，相当な重量となる関係で，可動操作にも力を必要とし、作業性も良好でなかった。
【０００４】
そのため従来においては、特許文献2に示されているように、円筒面等の湾曲面の溶接を行う場合には、湾曲面に部分的に呼応した多数の湾曲状の流通部材６ａを用意し，これを環状に組み合わせてシールド冶具を形成しガスシールドを図るようになしていた（段落００１９〜００２１）。
しかしこの場合には、溶接母材の形状の変化に合わせてシールド冶具を別々に製造しなければならず製造の手間が煩瑣であるばかりでなく、湾曲面に部分的に対応しているとはいえ構造上やはり屈曲性，変形性に乏しいので，冶具と溶接母材との間の間隙に均一性がなくムラが生じ作業性が良好でないという難点があった。
【特許文献１】特開２００３−３１１４１９号公報
【特許文献２】特開平７−２１４３８０号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００５】
本発明は、斯かる事情に鑑みなされたもので、前記従来技術の有する諸難点を解消し、屈曲，変形自在で溶接母材の形状の相違に対する変形追従性（可撓性）に優れ，同一冶具で平板，パイプの内外面，湾曲面の溶接に使用することができ冶具の使用範囲を拡大することができるとともに、冶具の製作の手間を大幅に軽減させることができ、更に軽量で，冶具と溶接母材との間隙を常に均一に保持することができガスシールドの確実性並びに作業性も良好となる溶接用アフターシールド冶具の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【０００６】
本発明は、前記の課題を解決するために、次の手段を採っている。
即ち，主としてチタン材等の酸素等の親和性が大きい反応性金属の溶接に際し，トーチによる溶接に追従して溶接部に不活性ガスを放射してガスシールド（空気絶縁）を図るトレーラーを含むアフターシールド冶具において、先端部にトーチ保持金具を付設したトレーラーを，薄肉金属片にてその周壁面を屈曲，変形自在となした底面開放の半割筒体形状に形成し、このトレーラー内に、不活性ガス導入パイプに接続し導入された不活性ガスを溶接部に放射する薄肉金属片にて屈曲，変形自在な筒体状に形成された不活性ガス放射パイプを，その一端部は固定し多端部をガイド板に設けた嵌合孔に遊嵌して可動可能となして配設せしめ、トレーラー底面の開放部に金網を取り付けるとともにトレーラー内に不活性ガス拡散用の多数の金属製繊維屑を配置せしめて溶接用アフターシールド冶具を形成したことを特徴とするものである。
【０００７】
薄肉金属片にてその周壁面を屈曲，変形自在となし底面開放の半割筒体形状に形成したトレーラーとしては、底面開放で半割筒体形状のトレーラーの周壁面を，薄肉金属片にて波形状に連続湾曲せしめて屈曲，変形自在に形成したものを用いたことを特徴とする。
【０００８】
トレーラー内に配設される不活性ガス放射パイプとしては、薄肉金属片にて波形に連続湾曲せしめて筒体状となすことにより，屈曲性及び変形性を具備せしめたものを用いたことを特徴とする。
【発明の効果】
【０００９】
本発明は、上記の構成となしたので、上述の従来技術の有する諸難点を解消し、次の特有の効果を奏する。
【００１０】
薄肉金属片にて半割筒体形状に形成したトレーラー及びその内部に配置する不活性ガス放射放射パイプそしてトレーラー底面に配置する金網等シールド冶具全体構造が、屈曲，変形性（可撓性）に富んでいるので、接合する溶接母材ならびに溶接部位の形状の相違に応じてシールド冶具を変形追従させることができ、同一種類の冶具にて，平板相互の直線状平面，湾曲する平板相互の湾曲面，円筒相互の内面側及び外面側の円形湾曲面，更には円板の外周にドーナツ板を接合する場合の円形湾曲面等，接合する溶接母材の溶接部位における種々の形態の相違に応じて冶具の形態を変形追従させてその溶接作業を容易，確実に行うことができる。
従って，従来のように屈曲，変形性に乏しいため接合する溶接母材の溶接部位における種々の形態の相違に応じてシールド冶具を個別に製作するという煩瑣な手間を省くことができ、同一種類の冶具による溶接作業の使用範囲を拡大することができ、製作並びに使用上効率がよく経済的である。
【００１１】
シールド冶具全体が屈曲，変形性に富んでいることに伴い，溶接母材とシールド冶具との間隔を従来に比し常に必要最小限の最適なものに保持することができるので、従来に比しガスシールドの効率を向上させることができ、溶接の作業精度を高めることができる。
【００１２】
シールド冶具の素材並びに構造上，シールド冶具全体の重量を従来に比し遥かに軽量となすことができるので、トーチを含めたシールド冶具の可動を従来のように腕に力を必要とすることなく軽快に行うことができ、溶接作業を長時間に亙って安定して行うことができ、作業性がとても良好である。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１３】
シールド冶具が溶接部位の形態の相違に対する変形追従性に優れ，溶接母材とシールド冶具との間隔を常に必要最小限の間隔に保持することができ，ガスシールドの効率を良好になすことができるため、特にチタン材等の酸素との親和性が大きい反応性金属の溶接に実施して好適である。
【００１４】
シールド冶具が屈曲，変形性に富み接合する溶接母材の溶接部位における種々の形態の相違に対する変形追従性に優れているため、その形態に応じた冶具を別々に製作する必要が無く同一種類の冶具にて，平板相互の直線状平面，湾曲する平板相互の湾曲面，円筒相互の内面側及び外面側の円形湾曲面，更には円板の外周にドーナツ板を接合する場合の円形湾曲面等，接合する溶接母材の溶接部位における種々の形態の相違に応じて冶具の形態を変形追従させてその溶接作業を容易，確実に行うことができる。
【００１５】
シールド冶具に屈曲，変形性を具備させる手段としては、例えばトレーラーを、底面開放の半割筒体形状となし、その周壁面を薄肉金属片にて波形状に連続湾曲せしめて形成することにより行う。
また，トレーラー内部に配置する不活性ガス放射パイプを、同じくその筒体周壁面を薄肉金属片にて波形状に連続湾曲せしめて形成するとともに、そのパイプの一端部は固定し他端部はガイド板に遊嵌して可動可能に支持せしめることにより行う。
更に，不活性ガスを放出するトレーラー底面の開放部には，屈曲，変形自在な金網を配置せしめることにより行う。また，トレーラー内には，溶接部に不活性ガスが均等に放射されるように不活性ガス拡散用の多数の金属製繊維屑を配置せしめる。
【実施例１】
【００１６】
別紙図面の図１〜図５を参照して、本発明の実施の１例について説明する。
【００１７】
図１は本発明の実施の１例に係るアフターシールド冶具の縦断正面図であり、図２はその縦断側面図、図３は同平面図、図４及び図５はその使用の１例を示す使用説明図である。
【００１８】
Ａはアフターシールド冶具であり、先端部にトーチ保持金具１を付設したトレーラー２と、このトレーラー内に配設された不活性ガス放射パイプ３と、トレーラーの底面開放部に取り付けられた金網４と、トレーラー内に収容配設された多数の金属製繊維屑５とを備えている。 不活性ガス放射パイプ３には、溶接機に配管接続された不活性ガス導入パイプ６が接続固定されているとともに、下面に多数のガス噴射孔が設けられている。 金属製繊維屑５は、放射された不活性ガスを溶接部に拡散させるためのものである。
【００１９】
トレーラー２は、屈曲，変形性（可撓性）を具備させるために，底面開放の半割筒体形状に形成されているとともに、その周壁面が薄肉金属片にて波形形状に連続して湾曲形成されており、これによって，上下，前後，左右のいずれの方向にもフレキシブル自在なものとなっている。
【００２０】
不活性ガス放射パイプ３は、同じく屈曲，変形性を具備させるために，薄肉金属片にて波形形状に連続湾曲せしめて筒体状となしたものを用いるとともに、その一端部はトレーラー２内に固定され他端部はトレーラー内に固定のガイド板７に設けた嵌合孔８に遊嵌して可動可能となすことにより屈曲，変形自在に配設されている。
【００２１】
トーチによる溶接に追従して，アフターシールド冶具Ａから溶接直後の溶接部に不活性ガスが連続的に放射されて，溶接部のガスシールド（空気絶縁）がなされる。 即ち，溶接機より不活性ガス導入パイプ６を介して不活性ガス放射パイプ３内に導入されたアルゴン，ヘリウム等の不活性ガスは、放射パイプ下面の多数の放射孔よりトレーラー２内に放出され、金属製繊維屑５によりあらゆる方向に拡散されて金網４より溶接部に連続的に均一に放射されて該部のガスシールドがなされる。
【００２２】
図４及び図５は、本アフターシールド冶具Ａを用いて溶接部のガスシールドを行う使用の一例を示す説明図である。 図４は、円筒形溶接母材Ｍ相互を接合する場合の外面側湾曲面に沿ってその溶接部のガスシールドを図る例を示したものであり、この場合にはアフターシールド冶具Ａ全体を外方に凸に湾曲変形し前記円筒形外面側の湾曲面の形状に追従させて用いる。 図５は、円筒形溶接母材Ｍ相互の内面側湾曲面にそって溶接部のガスシールドを行う場合であり、この場合には逆にその湾曲形状に合わせてアフターガスシールド冶具Ａを外方に凹に湾曲変形させて用いる。
【００２３】
アフターシールド冶具Ａは、特に半割筒体形状のトレーラー２とその内部に配設する不活性ガス放射パイプ３と底面に配置する金網４が接合する溶接母材の溶接部における形態の相違に応じて屈曲，変形性に富んでいるので、冶具と溶接母材との間の間隙を常に必要最小限の均一な間隔に保持することができ、ガスシールドにムラが無くその確実性を期することができる。 また冶具全体を軽量となすことができるので、その可動操作に力を必要とせず長時間安定して作業を行うことができ作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【００２４】
【図１】本発明実施の１例に係るアフターシールド冶具の縦断正面図である。
【図２】同上の縦断側面図である。
【図３】同上の平面図である。
【図４】アフターシールド冶具の使用の１例を示す説明図である。
【図５】同じく他の使用例を示す説明図である。
【符号の説明】
【００２５】
Ａ アフターシールド冶具
Ｍ 円筒形溶接母材
１ トーチ保持金具
２ トレーラー
３ 不活性ガス放射パイプ
４ 金網
５ 金属製繊維屑
６ 不活性ガス導入パイプ
７ ガイド板
８ 嵌合孔
【特許請求の範囲】
【請求項１】
主としてチタン材等の酸素等の親和性が大きい反応性金属の溶接に際し，トーチによる溶接に追従して溶接部に不活性ガスを放射してガスシールド（空気絶縁）を図るトレーラーを含むアフターシールド冶具において、先端部にトーチ保持金具を付設したトレーラーを，薄肉金属片にてその周壁面を屈曲，変形自在となした底面開放の半割筒体形状に形成し、このトレーラー内に、不活性ガス導入パイプに接続し導入された不活性ガスを溶接部に放射する薄肉金属片にて屈曲，変形自在な筒体状に形成された不活性ガス放射パイプを，その一端部は固定し多端部をガイド板に設けた嵌合孔に遊嵌して可動可能となして配設せしめ、トレーラー底面の開放部に金網を取り付けるとともにトレーラー内に不活性ガス拡散用の多数の金属製繊維屑を配置せしめたことを特徴とする溶接用アフターシールド冶具。
【請求項２】
薄肉金属片にてその周壁面を屈曲，変形自在となし底面開放の半割筒体形状に形成したトレーラーとして、底面開放で半割筒体形状のトレーラーの周壁面を，薄肉金属片にて波形状に連続湾曲せしめて屈曲，変形自在に形成したものを用いたことを特徴とする請求項１記載の溶接用アフターシールド冶具。
【請求項３】
トレーラー内に配設される不活性ガス放射パイプとして、薄肉金属片にて波形状に連続湾曲せしめて筒体状となすことにより，屈曲性及び変形性を具備せしめたものを用いたことを特徴とする請求項１又は２記載の溶接用アフターシールド冶具。
【請求項１】
主としてチタン材等の酸素等の親和性が大きい反応性金属の溶接に際し，トーチによる溶接に追従して溶接部に不活性ガスを放射してガスシールド（空気絶縁）を図るトレーラーを含むアフターシールド冶具において、先端部にトーチ保持金具を付設したトレーラーを，薄肉金属片にてその周壁面を屈曲，変形自在となした底面開放の半割筒体形状に形成し、このトレーラー内に、不活性ガス導入パイプに接続し導入された不活性ガスを溶接部に放射する薄肉金属片にて屈曲，変形自在な筒体状に形成された不活性ガス放射パイプを，その一端部は固定し多端部をガイド板に設けた嵌合孔に遊嵌して可動可能となして配設せしめ、トレーラー底面の開放部に金網を取り付けるとともにトレーラー内に不活性ガス拡散用の多数の金属製繊維屑を配置せしめたことを特徴とする溶接用アフターシールド冶具。
【請求項２】
薄肉金属片にてその周壁面を屈曲，変形自在となし底面開放の半割筒体形状に形成したトレーラーとして、底面開放で半割筒体形状のトレーラーの周壁面を，薄肉金属片にて波形状に連続湾曲せしめて屈曲，変形自在に形成したものを用いたことを特徴とする請求項１記載の溶接用アフターシールド冶具。
【請求項３】
トレーラー内に配設される不活性ガス放射パイプとして、薄肉金属片にて波形状に連続湾曲せしめて筒体状となすことにより，屈曲性及び変形性を具備せしめたものを用いたことを特徴とする請求項１又は２記載の溶接用アフターシールド冶具。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【公開番号】特開２００６−１７５４７５（Ｐ２００６−１７５４７５Ａ）
【公開日】平成１８年７月６日（２００６．７．６）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００４−３７１０９６（Ｐ２００４−３７１０９６）
【出願日】平成１６年１２月２２日（２００４．１２．２２）
【出願人】（５９４１５２６１９）
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成１８年７月６日（２００６．７．６）
【国際特許分類】
【出願日】平成１６年１２月２２日（２００４．１２．２２）
【出願人】（５９４１５２６１９）
【Ｆターム（参考）】
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