説明

溶浸用粉末

【課題】鉄基基材に対して高い溶浸率を得られる銅基溶浸材用粉末を提供する。
【解決手段】鉄および鉄基合金粉末または鉄基混合粉末の成形体に溶浸するための銅粉末であって、鉄2〜7質量%、マンガン1〜7質量%、亜鉛0.5〜5質量%、アルミニウム0.03〜0.1質量%、残部が銅からなる組成の原料粉末に、アルミニウム、シリコン、ジルコニウム、チタニウム、マグネシウムの少なくともいずれか1つの酸化物が0.1〜1質量%混合されている溶浸用粉末。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄および鉄基合金粉末または鉄基混合粉末の成形体に溶浸する溶浸用粉末(銅基合金粉末または銅基混合粉末)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄系焼結部品の製造において機械部品を高密度化、高強度化、高靭性化するために銅合金の溶浸法の技術が確立されている。一般的に溶浸法では、気孔を有する鉄系圧粉体もしくは焼結体の基材に、それよりも融点の低い銅合金の圧粉体(これを溶浸材と呼ぶ。)を接触させ加熱させる。溶融した溶浸材は毛細管現象によって基材に溶浸し、溶浸体は気孔が減少することによって密度の上昇および封孔効果により機密性が向上する。さらには基材と溶浸用粉末が合金化反応することによって、焼結溶浸部品は機械的強度、硬さ、電気伝導性、耐食性、耐摩耗性が改善される。
【0003】
一般的に溶浸用粉末に要求される特性としては、高い溶浸率(基材にのせた溶浸材の重量に対する基材に浸透した溶浸材重量の比)であること、溶浸材の残留物(残滓)が基材に付着しない、あるいは付着しても容易に除去できること等の特性が要求される。このような要求を満足させるべく、銅−鉄−マンガン系粉末に亜鉛0.5〜5質量%、アルミニウム0.03〜0.1質量%、シリコン0.1〜2%を添加した溶浸用粉末が提案されている(例えば、下記の特許文献1)。
【特許文献1】特開昭55−141501号公報
【0004】
亜鉛は溶浸率を高めるために添加され、アルミニウムおよびシリコンは残滓を剥離し易くするために添加されている。しかしながら、溶浸率に関してはそれでもなお十分に高い値が得られているとは言えない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記特許文献1に記載の技術を改良することで、より溶浸性に優れた溶浸用粉末(溶浸材)を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、このような従来の問題点を解決することを目的としてなされたもので、種々溶浸材組成を検討した結果、本発明の溶浸用粉末を見出した。すなわち本発明の溶浸用粉末は、質量%で鉄2〜7%、マンガン1〜7%、亜鉛0.5〜5%、アルミニウム0.03〜0.1%、残部は銅からなる組成の原料粉末に、アルミニウム、シリコン、ジルコニウム、チタニウム、マグネシウムの少なくともいずれか1つの酸化物が0.1〜1%混合されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の溶浸用粉末を使用した焼結溶浸機械部品は高い溶浸率が得られるため、高密度化および高強度化が実現される。また良好な残滓の剥離性が得られることから、生産性向上につながる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の溶浸用粉末の組成範囲を詳細に説明する。本発明の溶浸用粉末において、鉄は、従来から知られているように溶浸体表面の侵食を防止するために添加され、鉄の含有量は2〜7質量%である。2質量%未満ではその効果が少なく、7質量%より多いと、溶浸用粉末の融点を高くするため好ましくない。
マンガンの添加は、鉄の添加と同様に従来から知られており、その効果は基材と残滓の剥離性を改善および基材の侵食を防止することである。マンガンの含有量は1〜7質量%であり、1質量%未満ではそれらの効果が少なく、7質量%より多いと、残滓の量が増し溶浸率が低くなるため好ましくない。
【0009】
亜鉛の添加は溶浸用粉末の融点を下げるため、基材の侵食防止および溶浸率の改善に効果がある。さらには溶浸材と基材の濡れ性を改善する効果がある。亜鉛の含有量は0.5〜5質量%である。添加量0.5質量%未満では上記効果が少なく、5質量%より多いと、溶浸過程において亜鉛の蒸発量が多くなり溶浸材の歩留まりが低下する。また蒸発した亜鉛は焼結炉を汚損する可能性があるため好ましくない。
【0010】
アルミニウムの含有量は0.03〜0.1質量%の範囲で溶浸性を向上する効果がある。0.03質量%未満ではその効果が少なく、0.1質量%より多いと、残滓の量が多くなるため溶浸率が低くなり好ましくない。
従来の溶浸用粉末においてシリコンは、基材と残滓の付着を防止する目的で添加されてきたが、溶浸率を低下させる欠点を有しているため、本発明ではシリコンを除外することで溶浸率の向上を図っている。
【0011】
アルミニウム、シリコン、ジルコニウム、チタニウム、マグネシウムの酸化物は、溶浸後に残滓となり基材との剥離性を改善する。本発明では、溶浸材にシリコンを添加せず、上記酸化物の少なくともいずれか1つを添加することで従来の溶浸材よりもさらに高い溶浸率が得られ、従来と同様に良好な残滓の剥離性が得られる。
本発明の溶浸用粉末に使用される金属酸化物としては、アルミニウム、シリコン、ジルコニウム、チタニウム、マグネシウムの酸化物が使用される。さらに好ましくは、アルミニウム、シリコン、チタニウムが挙げられる。
本発明では、溶浸用粉末中に、上記の酸化物が所定量配合されていることによって、溶浸用粉末中に上記酸化物を含まない従来の溶浸用粉末(例えば前記特許文献1に記載されるもの)に比べて溶浸率が高く、残滓の剥離性が優れたものとなる。
【0012】
上記酸化物の添加量は、0.1〜1質量%の範囲で良好な残滓の剥離性が得られる。0.1質量%未満ではその効果が得られず、1質量%より多いと、溶浸率が低下するため好ましくない。本発明の溶浸用粉末は、通常の方法(例えばアトマイズ粉末、還元粉末)により粉末とされた各金属粉もしくは合金粉の混合粉末であっても、なんらその特性に影響を及ぼすものではない。上記溶浸材の原料粉末の平均粒子径は1〜300μmが好ましい。300μmを超える平均粒子径のものを混合した場合に成分偏析の原因となる。またアトマイズ粉を使用した場合は成形性が悪化する可能性がある。1μm未満となるとハンドリングの問題や経済的にも高価となるため好ましくない。
【0013】
上記溶浸材に添加される酸化物の粉末は市販されているもので良く、高い溶浸率を得るには平均粒子径としては0.001〜5μmの粉末を使用することが好ましい。5μmを超える平均粒子径のものを混合した場合に成分偏析の原因となる。0.001μm未満となるとハンドリングの問題や経済的にも高価となるため好ましくない。
溶浸材の成形の際には潤滑剤を0.3〜1.0質量%添加されるが、本発明の溶浸材にはなんらその特性に影響を及ぼすものでは無い。
【0014】
一般的に用いられる溶浸法は、基材(鉄基圧粉体)と溶浸材(銅基圧粉体)を接触させ、還元雰囲気内で同時に両者を加熱し、基材の焼結と溶浸を同時に行う一段溶浸法と、基材をまず一次加熱し予備焼結をした後、この焼結体に溶浸材を接触させ二次加熱することで溶浸を行う二段溶浸法がある。一段溶浸法では、加熱時のガス放出などのために溶浸の進行を妨げる可能性があり、作業の安定化のためには二段溶浸法が好まれる。また二段溶浸法では予備加熱の段階で粉末粒子間が強固に結合するため、強固な骨格構造を得られる。経済的な点では一段溶浸法が好ましいが、溶浸特性の点では二段溶浸法が好ましい。
【0015】
本発明の溶浸用粉末は、二段溶浸はもちろん一段溶浸法においても良好な溶浸特性が得られる。以下、本発明の溶浸用粉末の実施例をより具体的に説明する。
本発明の溶浸材用粉末組成を第1表に示す。
【実施例】
【0016】
〔実施例1〕
基材としては、鉄−1.5%銅−1%カーボンにステアリン酸亜鉛を0.8%添加した混合粉末13.7gを30×12mmの角柱状に、密度が6.3g/cmになるように成形した圧粉体を用いる。溶浸材としては、アトマイズ法により作成した銅−4%鉄−2.5%マンガン−2%亜鉛−0.07%アルミニウムの粉末に平均粒子径0.5μmのTiO2粉末を1.0%添加した混合粉末3.15g(基材の気孔に対し80vol%となる溶浸材の量)を30×12mmの角柱状に圧力500MPaで成形した圧粉体を用いた。
基材圧粉体の上に溶浸材圧粉体をのせ一段溶浸する。550℃で30分間加熱し脱ロウした後、1110℃で30分間加熱する。焼結炉内の雰囲気は、水素対窒素が3対1の混合ガス雰囲気とした。得られた溶浸体の特性を併せて第1表に示す。
【0017】
〔実施例2〕
基材としては、実施例1と同様の方法で作成したものを使用する。溶浸材としては、アトマイズ法により作成した銅−4%鉄−2.5%マンガン−2%亜鉛−0.07%アルミニウムの粉末に平均粒子径0.5μmのTiO2粉末を0.6%添加した混合粉末3.15g(基材の気孔に対し80vol%となる溶浸材の量)を30×12mmの角柱状に圧力500MPaで成形した圧粉体を用いた。上記圧粉体を実施例1と同様の方法で溶浸した。得られた溶浸体の特性を併せて第1表に示す。
【0018】
〔実施例3〕
基材としては、実施例1と同様の方法で作成したものを使用する。溶浸材としては、アトマイズ法により作成した銅−4%鉄−2.5%マンガン−2%亜鉛−0.07%アルミニウムの粉末に平均粒子径0.5μmのTiO2粉末を0.3%添加した混合粉末3.15g(基材の気孔に対し80vol%となる溶浸材の量)を30×12mmの角柱状に圧力500MPaで成形した圧粉体を用いた。上記圧粉体を実施例1と同様の方法で溶浸した。得られた溶浸体の特性を併せて第1表に示す。
【0019】
〔実施例4〕
基材としては、実施例1と同様の方法で作成したものを使用する。溶浸材としては、アトマイズ法により作成した銅−4%鉄−2.5%マンガン−2%亜鉛−0.07%アルミニウムの粉末に平均粒子径0.5μmのTiO2粉末を0.1%添加した混合粉末3.15g(基材の気孔に対し80vol%となる溶浸材の量)を30×12mmの角柱状に圧力500MPaで成形した圧粉体を用いた。上記圧粉体を実施例1と同様の方法で溶浸した。得られた溶浸体の特性を併せて第1表に示す。
【0020】
〔実施例5〕
基材としては、実施例1と同様の方法で作成したものを使用する。溶浸材としては、銅粉、鉄粉、銅−30%マンガン粉、銅−20%亜鉛粉、銅−7%アルミニウム粉、これらの粉末を実施例3と同組成となるように混合し、平均粒子径0.5μmのTiO2粉末を0.3%添加した混合粉末3.15g(基材の気孔に対し80vol%となる溶浸材の量)を30×12mmの角柱状に圧力500MPaで成形した圧粉体を用いた。上記圧粉体を実施例1と同様の方法で溶浸した。得られた溶浸体の特性を併せて第1表に示す。
【0021】
〔実施例6〕
基材としては、実施例1と同様の方法で作成したものを使用する。溶浸材としては、アトマイズ法により作成した銅−4%鉄−2.5%マンガン−2%亜鉛−0.07%アルミニウムの粉末に平均粒子径0.5μmのAl2O3粉末を0.1%添加した混合粉末3.15g(基材の気孔に対し80vol%となる溶浸材の量)を30×12mmの角柱状に圧力500MPaで成形した圧粉体を用いた。上記圧粉体を実施例1と同様の方法で溶浸した。得られた溶浸体の特性を併せて第1表に示す。
【0022】
〔実施例7〕
基材としては、実施例1と同様の方法で作成したものを使用する。溶浸材としては、アトマイズ法により作成した銅−4%鉄−2.5%マンガン−2%亜鉛−0.07%アルミニウムの粉末に平均粒子径0.5μmのSiO2粉末を0.1%添加した混合粉末3.15g(基材の気孔に対し80vol%となる溶浸材の量)を30×12mmの角柱状に圧力500MPaで成形した圧粉体を用いた。上記圧粉体を実施例1と同様の方法で溶浸した。得られた溶浸体の特性を併せて第1表に示す。
【0023】
〔実施例8〕
基材としては、実施例1と同様の方法で作成したものを使用する。溶浸材としては、アトマイズ法により作成した銅−4%鉄−2.5%マンガン−2%亜鉛−0.07%アルミニウムの粉末に平均粒子径0.5μmのAl2O3粉末を0.1%とSiO2粉末を0.1%添加した混合粉末3.15g(基材の気孔に対し80vol%となる溶浸材の量)を30×12mmの角柱状に圧力500MPaで成形した圧粉体を用いた。上記圧粉体を実施例1と同様の方法で溶浸した。得られた溶浸体の特性を併せて第1表に示す。
【0024】
〔実施例9〕
基材としては、実施例1と同様の方法で作成したものを使用する。溶浸材としては、アトマイズ法により作成した銅−4%鉄−2.5%マンガン−2%亜鉛−0.07%アルミニウムの粉末に平均粒子径0.5μmのZrO2粉末を0.1%添加した混合粉末3.15g(基材の気孔に対し80vol%となる溶浸材の量)を30×12mmの角柱状に圧力500MPaで成形した圧粉体を用いた。上記圧粉体を実施例1と同様の方法で溶浸した。得られた溶浸体の特性を併せて第1表に示す。
【0025】
〔実施例10〕
基材としては、実施例1と同様の方法で作成したものを使用する。溶浸材としては、アトマイズ法により作成した銅−4%鉄−2.5%マンガン−2%亜鉛−0.07%アルミニウムの粉末に平均粒子径0.5μmのMgO粉末を0.1%添加した混合粉末3.15g(基材の気孔に対し80vol%となる溶浸材の量)を30×12mmの角柱状に圧力500MPaで成形した圧粉体を用いた。上記圧粉体を実施例1と同様の方法で溶浸した。得られた溶浸体の特性を併せて第1表に示す。
【0026】
〔実施例11〕
基材としては、実施例1と同様の方法で作成したものを使用する。溶浸材としては、アトマイズ法により作成した銅−2%鉄−2.5%マンガン−2%亜鉛−0.07%アルミニウムの粉末に平均粒子径0.5μmのTiO2粉末を0.1%添加した混合粉末3.15g(基材の気孔に対し80vol%となる溶浸材の量)を30×12mmの角柱状に圧力500MPaで成形した圧粉体を用いた。上記圧粉体を実施例1と同様の方法で溶浸した。得られた溶浸体の特性を併せて第1表に示す。
【0027】
〔実施例12〕
基材としては、実施例1と同様の方法で作成したものを使用する。溶浸材としては、アトマイズ法により作成した銅−7%鉄−2.5%マンガン−2%亜鉛−0.07%アルミニウムの粉末に平均粒子径0.5μmのTiO2粉末を0.1%添加した混合粉末3.15g(基材の気孔に対し80vol%となる溶浸材の量)を30×12mmの角柱状に圧力500MPaで成形した圧粉体を用いた。上記圧粉体を実施例1と同様の方法で溶浸した。得られた溶浸体の特性を併せて第1表に示す。
【0028】
〔実施例13〕
基材としては、実施例1と同様の方法で作成したものを使用する。溶浸材としては、アトマイズ法により作成した銅−4%鉄−1%マンガン−2%亜鉛−0.07%アルミニウムの粉末に平均粒子径0.5μmのTiO2粉末を0.1%添加した混合粉末3.15g(基材の気孔に対し80vol%となる溶浸材の量)を30×12mmの角柱状に圧力500MPaで成形した圧粉体を用いた。上記圧粉体を実施例1と同様の方法で溶浸した。得られた溶浸体の特性を併せて第1表に示す。
【0029】
〔実施例14〕
基材としては、実施例1と同様の方法で作成したものを使用する。溶浸材としては、アトマイズ法により作成した銅−4%鉄−7%マンガン−2%亜鉛−0.07%アルミニウムの粉末に平均粒子径0.5μmのTiO2粉末を0.1%添加した混合粉末3.15g(基材の気孔に対し80vol%となる溶浸材の量)を30×12mmの角柱状に圧力500MPaで成形した圧粉体を用いた。上記圧粉体を実施例1と同様の方法で溶浸した。得られた溶浸体の特性を併せて第1表に示す。
【0030】
〔実施例15〕
基材としては、実施例1と同様の方法で作成したものを使用する。溶浸材としては、アトマイズ法により作成した銅−4%鉄−2.5%マンガン−0.5%亜鉛−0.07%アルミニウムの粉末に平均粒子径0.5μmのTiO2粉末を0.1%添加した混合粉末3.15g(基材の気孔に対し80vol%となる溶浸材の量)を30×12mmの角柱状に圧力500MPaで成形した圧粉体を用いた。上記圧粉体を実施例1と同様の方法で溶浸した。得られた溶浸体の特性を併せて第1表に示す。
【0031】
〔実施例16〕
基材としては、実施例1と同様の方法で作成したものを使用する。溶浸材としては、アトマイズ法により作成した銅−4%鉄−2.5%マンガン−5%亜鉛−0.07%アルミニウムの粉末に平均粒子径0.5μmのTiO2粉末を0.1%添加した混合粉末3.15g(基材の気孔に対し80vol%となる溶浸材の量)を30×12mmの角柱状に圧力500MPaで成形した圧粉体を用いた。上記圧粉体を実施例1と同様の方法で溶浸した。得られた溶浸体の特性を併せて第1表に示す。
【0032】
〔実施例17〕
基材としては、実施例1と同様の方法で作成したものを使用する。溶浸材としては、アトマイズ法により作成した銅−4%鉄−2.5%マンガン−2%亜鉛−0.03%アルミニウムの粉末に平均粒子径0.5μmのTiO2粉末を0.1%添加した混合粉末3.15g(基材の気孔に対し80vol%となる溶浸材の量)を30×12mmの角柱状に圧力500MPaで成形した圧粉体を用いた。上記圧粉体を実施例1と同様の方法で溶浸した。得られた溶浸体の特性を併せて第1表に示す。
【0033】
〔実施例18〕
基材としては、実施例1と同様の方法で作成したものを使用する。溶浸材としては、アトマイズ法により作成した銅−4%鉄−2.5%マンガン−2%亜鉛−0.1%アルミニウムの粉末に平均粒子径0.5μmのTiO2粉末を0.1%添加した混合粉末3.15g(基材の気孔に対し80vol%となる溶浸材の量)を30×12mmの角柱状に圧力500MPaで成形した圧粉体を用いた。上記圧粉体を実施例1と同様の方法で溶浸した。得られた溶浸体の特性を併せて第1表に示す。
【0034】
〔比較例1〕
基材としては、実施例1と同様の方法で作成したものを使用する。溶浸材としては、アトマイズ法により作成した銅−4%鉄−2.5%マンガン−2%亜鉛−0.07%アルミニウム−0.1%シリコン粉末3.15g(基材の気孔に対し80vol%となる溶浸材の量)を30×12mmの角柱状に圧力500MPaで成形した圧粉体を用いた。上記圧粉体を実施例1と同様の方法で溶浸した。得られた溶浸体の特性を併せて第1表に示す。
【0035】
〔比較例2〕
基材としては、実施例1と同様の方法で作成したものを使用する。溶浸材としては、アトマイズ法により作成した銅−4%鉄−2.5%マンガン−2%亜鉛−0.07%アルミニウム−0.6%シリコン粉末3.15g(基材の気孔に対し80vol%となる溶浸材の量)を30×12mmの角柱状に成形圧力500MPaで成形した圧粉体を用いた。上記圧粉体を実施例1と同様の方法で溶浸した。得られた溶浸体の特性を併せて第1表に示す。
【0036】
〔比較例3〕
基材としては、実施例1と同様の方法で作成したものを使用する。溶浸材としては、アトマイズ法により作成した銅−4%鉄−2.5%マンガン−2%亜鉛−0.07%アルミニウム−1%シリコン粉末3.15g(基材の気孔に対し80vol%となる溶浸材の量)を30×12mmの角柱状に圧力500MPaで成形した圧粉体を用いた。上記圧粉体を実施例1と同様の方法で溶浸した。得られた溶浸体の特性を併せて第1表に示す。
【0037】
〔比較例4〕
基材としては、実施例1と同様の方法で作成したものを使用する。溶浸材としては、アトマイズ法により作成した銅−4%鉄−2.5%マンガン−2%亜鉛−0.07%アルミニウム−0.6%シリコン粉末に平均粒子径0.5μmのTiO2粉末を0.1%添加した混合粉末3.15g(基材の気孔に対し80vol%となる溶浸材の量)を30×12mmの角柱状に圧力500MPaで成形した圧粉体を用いた。上記圧粉体を実施例1と同様の方法で溶浸した。得られた溶浸体の特性を併せて第1表に示す。
【0038】
〔比較例5〕
基材としては、実施例1と同様の方法で作成したものを使用する。溶浸材としては、アトマイズ法により作成した銅−4%鉄−2.5%マンガン−2%亜鉛−0.07%アルミニウム粉末3.15g(基材の気孔に対し80vol%となる溶浸材の量)を30×12mmの角柱状に圧力500MPaで成形した圧粉体を用いた。上記圧粉体を実施例1と同様の方法で溶浸した。得られた溶浸体の特性を併せて第1表に示す。
【0039】
【表1】

【0040】
実施例1〜18に示すように本発明の溶浸材用粉末組成の範囲においては、どの溶浸材も溶浸率93%以上と比較例1〜4に比べて5〜10%ほど高い溶浸率が得られた。また実施例1〜18の溶浸材の残滓は比較例1〜4と同様に溶浸後すでに溶浸体から剥離した状態であり、良好な剥離性が得られた。比較例5に示すようにシリコンを含まない溶浸材は高い溶浸率を得られるが、溶浸体に残滓が若干付着した。本発明の溶浸用粉末はシリコンを含まずとも、良好な残滓の剥離性が得られた。実施例1〜18の溶浸体の硬さ(ロックウェルB)は比較例1〜4に比べて高く、90以上の値が得られた。
以上詳細に記した通り、本発明の溶浸用粉末は溶浸率が高く、溶浸材の残滓の剥離性に優れる。従来の溶浸材よりも溶浸率が向上したことにより、溶浸材の使用量を低減することができるため経済的に優位となる。また本発明の溶浸材は、良好な残滓の剥離性を有しつつ従来使用されている溶浸材よりも高い溶浸率が得られることから、これまでに得られなかった溶浸体の特性を有することを可能にした。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の溶浸材用粉末は、鉄基基材への溶浸性に優れるため、溶浸体の密度を高くし、機械的強度、硬さ等を改善する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄2〜7質量%、マンガン1〜7質量%、亜鉛0.5〜5質量%、アルミニウム0.03〜0.1質量%、残部が銅からなる組成の原料粉末に、アルミニウム、シリコン、ジルコニウム、チタニウム、マグネシウムの少なくともいずれか1つの酸化物が0.1〜1質量%混合されていることを特徴とする溶浸用粉末。

【公開番号】特開2009−7648(P2009−7648A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−171476(P2007−171476)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【出願人】(000239426)福田金属箔粉工業株式会社 (83)
【Fターム(参考)】