説明

溶液の超音波分離方法

【課題】種々の溶液を効率よくミストに霧化して高能率に分離する。
【解決手段】溶液の超音波分離方法は、溶液を超音波振動させてミストに霧化する霧化工程と、この霧化工程で霧化されたミストを搬送気体と共に回収部3に移送して、回収部3でミストを回収する回収工程とからなる。さらに、超音波分離方法は、霧化工程の前工程として、溶液を蒸留する蒸留工程を設けており、この蒸留工程で得られた溶液を霧化工程において超音波振動してミストとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶液を超音波振動してミストとし、このミストを回収することで溶液に含まれる特定の成分を濃縮し、あるいは分離する方法に関し、とくに、バイオマスアルコール、酒、酒原料等のアルコール溶液から、さらに高濃度のアルコールを分離し、あるいは蒸留と同じように、石油から特定の揮発性石油留分を分離するのに最適な溶液の超音波分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ガソリンにアルコールを添加する燃料が使用されることから、バイオマスアルコールの濃度を経済的に高くする技術が切望されている。アルコールは、コーン、小麦、木材、サトウキビ等の有機物を発酵させて安価に製造できる。ただ、この方法で製造さるバイオマスアルコールは、濃度が約30%以下と低いので、水を分離して高濃度なアルコールとする必要がある。アルコールから水を分離して高濃度なアルコールを分離するために、蒸留による方法が使用される。ただ、この方法は、エネルギー消費が大きくなる欠点がある。アルコールを高濃度に処理するために多量のエネルギーを消費すると、これをガソリンに添加して燃焼させても、トータルではガソリン消費を節約できなくなる。
【0003】
本発明者は、少ないエネルギー消費で、アルコール濃度を高くする方法を開発した。(特許文献1参照)
【特許文献1】特開2001−314724号公報
【0004】
この方法は、低濃度のアルコールを閉鎖構造の霧化室で超音波振動して搬送気体中にミストに霧化し、霧化されたミストを回収して高濃度のアルコールにできる。この方法でアルコールを高濃度に濃縮できるのは、超音波振動で気体中に霧化されてミストになった成分が、原液のアルコール濃度よりも高くなるからである。この方法は、溶液を加熱しないでアルコールの濃縮を高くできるので、飲用のアルコールを変質することなく高濃度に濃縮できる特徴もある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、超音波振動で溶液をミストに霧化する方法は、溶液の状態によって霧化できる効率が低下する。たとえば、小麦や木材を発酵して得られるエタノールは粘度が高く、超音波振動でミストに霧化する効率が悪くなる。
【0006】
本発明は、さらにこの欠点を解決することを目的に開発されたものである。本発明の重要な目的は、種々の溶液を効率よくミストに霧化して高能率に分離できる溶液の超音波分離方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の溶液の超音波分離方法は、前述の目的を達成するために以下の構成を備える。
溶液の超音波分離方法は、溶液を超音波振動させてミストに霧化する霧化工程と、この霧化工程で霧化されたミストを搬送気体と共に回収部3に移送して、回収部3でミストを回収する回収工程とからなる。さらに、超音波分離方法は、霧化工程の前工程として、溶液を蒸留する蒸留工程を設けており、この蒸留工程で得られた溶液を霧化工程において超音波振動してミストとする。
【0008】
本発明の請求項2の溶液の超音波分離方法は、蒸留工程において発生する、ガスの凝縮熱でもって、ミストに供給する搬送気体を加熱する。
【0009】
本発明の請求項3の溶液の超音波分離方法は、蒸留工程において発生する、ガスの凝縮熱でもって、霧化工程に供給される溶液を加熱する。
【0010】
本発明の請求項4の溶液の超音波分離方法は、溶液にアルコール水溶液を使用する。
【0011】
本発明の請求項5の溶液の超音波分離方法は、回収工程において、ミストに含まれる吸着成分を分子ふるい吸着剤4に吸着させる吸着工程を含み、蒸留工程において発生するガスの凝縮熱でもって、分子ふるい吸着剤4を加熱する。
【0012】
本発明の請求項6の溶液の超音波分離方法は、溶液がアルコール水溶液で、吸着工程において、分子ふるい吸着剤4がミストに含まれる水を吸着成分として吸着して除去する。
【0013】
本発明の請求項7の溶接の超音波分離方法は、吸着工程で吸着成分の分離されたミストに含まれる非吸着成分を、分離工程において第2の吸着剤7に吸着させて分離する。
【0014】
本発明の請求項8の溶液の超音波分離方法は、搬送気体を冷却部15で冷却した後、分子ふるい吸着剤4に接触させて、吸着成分を分子ふるい吸着剤4に吸着させる。
【0015】
本発明の請求項9の溶液の超音波分離方法は、搬送気体を、水素、ヘリウムのいずれかとしている。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、種々の溶液を効率よくミストに霧化して高能率に分離できる。それは、本発明の超音波分離方法が、溶液を蒸留し、蒸留された溶液を超音波振動してミストに霧化するからである。蒸留された溶液は、粘度が低下し、さらに、表面張力や比重が低下するので超音波振動で効率よくミストに霧化できる。蒸留で溶液の加熱に使用される熱エネルギーは、蒸留で気化されたガスの凝縮熱を回収し、これを有効利用して熱効率を高くできる。
【0017】
たとえば、請求項2に記載する方法は、この蒸留の凝縮熱で搬送気体を加熱する。溶液をミストに霧化する搬送気体は、温度が高くなると霧化効率が高くなるので、凝縮熱で搬送気体を加熱して、より効率よく溶液をミストに霧化できる。
【0018】
また、請求項3に記載する方法は、この蒸留の凝縮熱で、霧化工程に供給される溶液を加熱する。超音波振動でミストに霧化される溶液は、温度が高くなると霧化効率が高くなるので、凝縮熱で溶液を加熱して、より効率よく溶液をミストに霧化できる。
【0019】
さらに、本発明の請求項5の方法は、蒸留の凝縮熱で分子ふるい吸着剤を加熱する。この方法は、ミストの一部を分子ふるい吸着剤に吸着させる。たとえば、ミストに含まれるアルコール成分を分子ふるい吸着剤に吸着させる。分子ふるい吸着剤から吸着物のアルコールを分離して高濃度に濃縮できる。このとき、蒸留工程において発生する凝縮熱でもって、分子ふるい吸着剤を加熱することで、分子ふるい吸着剤から吸着物のアルコールを効率よく分離できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するための溶液の超音波分離方法を例示するものであって、本発明は超音波分離方法を以下の実施例には特定しない。
【0021】
さらに、この明細書は、特許請求の範囲を理解しやすいように、実施例に示される部材に対応する番号を、「特許請求の範囲」および「課題を解決するための手段の欄」に示される部材に付記している。ただ、特許請求の範囲に示される部材を、実施例の部材に特定するものでは決してない。
【0022】
本発明の溶液の超音波分離方法は、目的物質を含む溶液をミストに霧化した後、ミストを回収して目的物質の濃度の高い溶液を分離する。本発明は、母液に目的物質を溶解している溶液から、目的物質の濃度の高い溶液を得る、すなわち目的物質が濃縮された溶液を得るものであるが、溶液に含まれる目的物質と母液を特定するものではない。母液は、主として水やアルコール等の溶媒である。たとえば、溶液であるアルコール水溶液は、母液を水、目的物質をアルコールとする。また、アルコールに香料などを溶解した溶液にあっては、母液をアルコール、目的物質を香料とする。さらに、種々の沸点の揮発性石油留分を含むガソリンにあっては、低沸点の揮発性石油留分を目的物質とし、この揮発性石油留分よりも高沸点の揮発性石油留分を母液とする。すなわち、本明細書において目的物質とは、溶液をミストに霧化し、これを回収して濃度が高くなる物質を意味するものとする。さらに、本明細書において、「ミスト」とは、霧化された微細粒子のみでなく、霧化された微細粒子が気化された状態のものも含む意味に使用する。
【0023】
目的物質を含む溶液は、例えば以下のものである。以下の溶液において、母液は主として水又は溶媒である。目的物質は溶液をミストに霧化し、これを回収して濃縮が高くなる物質である。
(1) バイオマスアルコール
(2) 清酒、ビール、ワイン、食酢、みりん、スピリッツ、焼酎、ブランデー、ウイスキー、リキュール
(3) ピネン、リナロール、リモネン、ポリフェノール類などの香料、芳香成分ないし香気成分を含む溶液
(4) 飽和炭化水素であるアルカン、シクロアルカン、不飽和炭化水素であるアルケン、シクロアルケン、アルキン、もしくはエーテル、チオエーテルあるいは芳香族炭化水素のうちいずれかに属する有機化合物、もしくはそれらの結合した物質を含む溶液
(5) 飽和炭化水素であるアルカン、シクロアルカン、不飽和炭化水素であるアルケン、シクロアルケン、アルキン、もしくはエーテル、チオエーテルあるいは芳香族炭化水素のうちいずれかに属する有機化合物、もしくはそれらの結合体の少なくとも一つの水素原子もしくは官能基をハロゲンによって置き換えた物質を含む溶液
(6) 飽和炭化水素であるアルカン、シクロアルカン、不飽和炭化水素であるアルケン、シクロアルケン、アルキン、もしくはエーテル、チオエーテルあるいは芳香族炭化水素のうちいずれかに属する有機化合物、もしくはそれらの結合体の少なくとも一つの水素原子もしくは官能基を水酸基によって置き換えた物質を含む溶液
(7) 飽和炭化水素であるアルカン、シクロアルカン、不飽和炭化水素であるアルケン、シクロアルケン、アルキン、もしくはエーテル、チオエーテルあるいは芳香族炭化水素のうちいずれかに属する有機化合物、もしくはそれらの結合体の少なくとも一つの水素原子もしくは官能基をアミノ基によって置き換えた物質を含む溶液
(8) 飽和炭化水素であるアルカン、シクロアルカン、不飽和炭化水素であるアルケン、シクロアルケン、アルキン、もしくはエーテル、チオエーテルあるいは芳香族炭化水素のうちいずれかに属する有機化合物、もしくはそれらの結合体の少なくとも一つの水素原子もしくは官能基をカルボニル基によって置き換えた物質を含む溶液
(9) 飽和炭化水素であるアルカン、シクロアルカン、不飽和炭化水素であるアルケン、シクロアルケン、アルキン、もしくはエーテル、チオエーテルあるいは芳香族炭化水素のうちいずれかに属する有機化合物、もしくはそれらの結合体の少なくとも一つの水素原子もしくは官能基をカルボキシル基によって置き換えた物質を含む溶液
(10) 飽和炭化水素であるアルカン、シクロアルカン、不飽和炭化水素であるアルケン、シクロアルケン、アルキン、もしくはエーテル、チオエーテルあるいは芳香族炭化水素のうちいずれかに属する有機化合物、もしくはそれらの結合体の少なくとも一つの水素原子もしくは官能基をニトロ基によって置き換えた物質を含む溶液
(11) 飽和炭化水素であるアルカン、シクロアルカン、不飽和炭化水素であるアルケン、シクロアルケン、アルキン、もしくはエーテル、チオエーテルあるいは芳香族炭化水素のうちいずれかに属する有機化合物、もしくはそれらの結合体の少なくとも一つの水素原子もしくは官能基をシアノ基によって置き換えた物質を含む溶液
(12) 飽和炭化水素であるアルカン、シクロアルカン、不飽和炭化水素であるアルケン、シクロアルケン、アルキン、もしくはエーテル、チオエーテルあるいは芳香族炭化水素のうちいずれかに属する有機化合物、もしくはそれらの結合体の少なくとも一つの水素原子もしくは官能基をメルカプト基によって置き換えた物質を含む溶液
(13) 前述の(4)〜(12)の溶液に含まれるいずれか一つ以上の原子を金属イオンによって置換した物質を含む溶液
(14) 先述の(4)〜(12)の溶液に含まれる分子のうち任意の水素原子、炭素原子もしくは官能基を(4)〜(12)の分子のうち任意の分子で置き換えた物質を含む溶液
【0024】
本発明の分離方法は、蒸留工程で溶液を蒸留する。蒸留工程は、低沸点、高揮発性の溶液を分離する。蒸留工程で分離された低沸点、高揮発性の溶液は、霧化工程において、超音波振動によってミストに霧化される。霧化されたミストは搬送気体で回収部に移送され、回収工程において目的物質が回収される。回収工程は、冷却して搬送気体中のミストを凝集させて目的物質を回収し、あるいは、吸着工程において分子ふるい吸着剤の吸着作用を利用して目的物質を回収する。吸着工程は、特定の吸着成分を、分子ふるい吸着剤に吸着させて搬送気体から分離する。分子ふるい吸着剤は、ミストに含まれる吸着成分を吸着する、分子ふるい作用のある吸着剤である。分子ふるい吸着剤で吸着成分の分離されたミストは、さらに第2の吸着剤で搬送気体から非吸着成分を分離する。
【0025】
本発明は、たとえば、バイオマスアルコール水溶液から高濃度のアルコールを分離する。バイオマスアルコール水溶液は、使用する原料によって、たとえば木材を発酵して得られるバイオマスアルコール水溶液は粘度が高くなる。木材が20%〜30%のリグニンを含有し、これから粘度を高くするからである。蒸留工程は、粘度の高いバイオマスアルコール水溶液を加熱して気化し、気化されたガスを液化して回収することで、リグニン等の粘度を高くする成分を除いて低粘度の溶液とする。木材から得られるバイオマスアルコールに限らず、小麦から得られるバイオマスアルコール水溶液も粘度が高く、蒸留して低粘度の溶液に加工できる。蒸留は、溶液に含まれる成分の沸点の差や揮発性の差を利用して分離するので、低沸点、高揮発性の溶液が分離される。蒸留によって分離される低沸点、高揮発性の溶液は、粘度が低く、表面張力が小さく、また比重も小さくなる。それは、低沸点、高揮発性の溶液の分子量が小さいからである。
【0026】
蒸留工程は、溶液を所定の温度に加熱して気化させる。この工程で溶液を加熱する温度は、蒸留して分離する溶液の沸点により変化する。たとえばエチルアルコールの沸点は78.32℃であるから、溶液をこの温度よりも高く加熱してエチルアルコールを分離する。蒸留工程は、溶液を分離する沸点よりも高温に加熱して気化し、気化されたガスを冷却して回収する。蒸留工程で得られた溶液が霧化室に供給される。
【0027】
本発明は、蒸留工程と霧化工程と回収工程とで、高濃度の目的物質を分離するが、蒸留工程においては、溶液を目的物質の沸点よりも高温に加熱して、低沸点、高揮発性の溶液を分離する。蒸留工程で分離された低沸点、高揮発性の溶液、すなわち粘度、表面張力、比重等の低下した溶液は、次の霧化工程と回収工程で高濃度の溶液とする。
【0028】
回収工程においては、ミストを凝集して回収できる。また、分子ふるい吸着剤に吸着して回収することもできる。分子ふるい吸着剤を使用する方法は、分子ふるい吸着剤に吸着させる吸着成分をミストに含まれる水、吸着されない非吸着成分をミストに含まれるアルコールとして能率よく高濃度のアルコールを分離できる。この方法は、アルコール水溶液を、搬送気体中に、ミストに霧化する。霧化されたミストは、含有される吸着成分である水を分子ふるい吸着剤に吸着させる。吸着成分の水を吸着して分離したミストは、非吸着成分であるアルコール濃度が高くなる。この状態で、非吸着成分の高濃度なアルコールは、搬送気体から分離される。さらに、アルコール濃度が高くなったミストから、アルコールを分子ふるい吸着剤に吸着して回収することもできる。
【0029】
たとえば、アルコール水溶液をミストに霧化してこれを回収すると、霧化されたミストが回収された溶液のアルコール濃度が、ミストにならないで残存する溶液のアルコール濃度よりも高くなる。溶液をミストに霧化して回収すると、回収された溶液は、低沸点、高揮発性の溶質、あるいは表面過剰の性質がある溶質の濃度が高くなる。低沸点、高揮発性の溶質は、ミストに霧化されやすく、またミストの状態で気化されてガスになりやすく、ミストを回収して濃度が高くなる。また、表面過剰となる物性を示す溶液は表面濃度が高くなるので、これを超音波振動させて表面の溶液をミストにして霧化させると、ミストは表面過剰となりやすい物質の濃度が高くなる。したがって、このミストから、表面過剰の物性が強い物質を回収すると、その濃度が高くなる。すなわち、溶液から高濃度の物質を含むものを分離できる。本明細書において、ミストに霧化して濃度が高くなる物質を目的物質とする。したがって、目的物質は溶液に含まれる低沸点、高揮発性の溶質、あるいは表面過剰の性質を示す溶質である。
【0030】
以下、溶液をアルコール水溶液として、アルコール水溶液から高濃度なアルコールを分離する装置と方法を示す。ただし、本発明は溶液をアルコールには特定しない。
【0031】
図1に示す分離装置は、溶液を蒸留する蒸留装置40と、この蒸留装置40で得られる溶液を搬送気体中に霧化する霧化室1と、この霧化室1の搬送気体中に溶液をミストに霧化する霧化機構2と、霧化機構2で溶液からミストに霧化されたミストを回収する回収部3と、霧化室1で霧化されたミストを搬送気体と共に回収部3へ移送するブロア8とを備える。
【0032】
蒸留装置40は、溶液を所定の温度に加熱する蒸留釜41と、この蒸留釜41で加熱されて気化されたガスを冷却して液化させる凝縮器42とを備える。蒸留釜41は、溶液を目的物質の沸点よりも高い温度に加熱して、目的物質を気化させる。したがって、蒸留釜41の温度は、溶液を沸騰できる温度に設定される。たとえば、木材等のバイオアルコール水溶液の蒸留釜にあっては、80℃ないし100℃に設定される。凝縮器42は、ガスを通過させる冷却パイプ43と、この冷却パイプ43を外側から冷却する冷却熱交換器44とを備える。冷却熱交換器44は、気化されたガスを沸点よりも低い温度に冷却する。すなわち、冷却熱交換器44は、ガスの凝縮熱を吸収してガスを液化させる。冷却熱交換器44で吸収したガスの凝縮熱は、搬送気体の加熱に利用され、あるいは、霧化室1に供給される溶液の加熱に利用され、あるいはまた、吸着剤の加熱に有効に利用される。
【0033】
超音波振動で溶液をミストに霧化する方式は、搬送気体の温度を高くして霧化効率を高くできる。搬送気体の温度が高くなると、空気中に含むことができるガス量が増加するからである。すなわち、超音波振動のエネルギーに対して、霧化できるミスト量を多くできる。図の分離装置は、冷却熱交換器44を、搬送気体を加温する加温熱交換器45に連結している。冷却熱交換器44と加温熱交換器45は冷媒を循環させている。冷媒は、冷却熱交換器44で凝縮熱を吸収して温度が上昇し、加温熱交換器45で吸収した熱を放出して搬送気体を加温する。たとえば、冷媒には水やオイルが使用される。この冷媒は、ガスの凝縮熱を吸収して冷却熱交換器44から加温して排出される。たとえば、冷媒は冷却熱交換器44から60℃で排出される。冷却熱交換器44で加温されて排出される冷媒は、加温熱交換器45でミストを発生させる搬送気体を加温する。搬送気体は加温熱交換器45で加温されて、霧化室1に供給される。搬送気体を加温した冷媒は温度が低下する。温度が低下した冷媒は、加温熱交換器45から冷却熱交換器44に循環されて、冷却熱交換器を冷却し、再びガスを冷却して液化させる。すなわち、冷媒は、ガスの凝縮熱を吸収し、吸収した凝縮熱で搬送気体を加温する。加温熱交換器45は、搬送気体を25〜30℃に加温する。ただし、加温熱交換器45は、搬送気体を15〜40℃に加温して霧化室1に供給することもできる。霧化室1に供給される搬送気体の温度が高くなるとミストの発生量は多くなるが、温度が高すぎると、アルコール等の目的物質を変質させる。反対に温度が低いと目的物質をミストにする効率が低下する傾向がある。
【0034】
さらに、冷却熱交換器44は、霧化室1に供給される溶液の加温にも利用できる。超音波振動で溶液をミストに霧化する方式は、溶液の温度を高くして霧化効率を高くできる。溶液の温度が高くなると、少ないエネルギーでミストに霧化できるからである。この分離装置は、図に示すように、冷却熱交換器44を、霧化室1に供給される溶液を加温する加温熱交換器67に連結して、冷却熱交換器44と加温熱交換器67に冷媒を循環させる。図の分離装置は、加温熱交換器67の流入側に、冷媒の循環を制御する流入弁68を設けている。この分離装置は、流入弁68を開弁して、冷媒を加温熱交換器67に循環し、霧化室1に供給される溶液を加温する。加温熱交換器67は、霧化室1に供給される溶液を25〜30℃に加温する。ただし、加温熱交換器67は、溶液を15〜40℃に加温することもできる。霧化室1に供給される溶液の温度が高くなるとミストの発生効率は高くなるが、温度が高すぎると、アルコール等の目的物質を変質させるおそれがある。したがって、加温熱交換器67が溶液を加温する温度は、これらのことを考慮して最適な温度に設定する。
【0035】
さらに、冷却熱交換器44は、図2に示すように、吸着剤の加温にも利用できる。この冷却熱交換器44は、吸着剤を加温する加温熱交換器27、37に連結されて、内部に冷媒を循環させる。図の加温熱交換器27は、分子ふるい吸着剤4を加温して吸着した吸着成分を効率よく排出させる。また、図の加温熱交換器37は、第2の吸着剤7を加温して、吸着した非吸着成分を効率よく排出させる。
【0036】
冷媒は、それ自体の気化熱で冷却熱交換器を冷却して、凝縮熱で加温熱交換器を加温することもできる。冷媒の気化熱と凝縮熱で熱交換器を冷却又は加温する冷却機構は、図3に示すように、冷媒をコンプレッサ46で加圧する。コンプレッサ46で加圧された冷媒は、加温熱交換器45に供給される。加温熱交換器45は冷媒を冷却して、すなわち冷媒の熱を放熱して液化させる。したがって、加温熱交換器45は、冷媒の凝縮熱で加温される。液化された冷媒は、膨張弁47を介して冷却熱交換器44に供給される。膨張弁47は、冷媒を断熱膨張させて、冷却熱交換器44の内部で気化される。したがって、冷却熱交換器44は、冷媒の気化熱で冷却される。気化された冷媒はコンプレッサ46に吸入されて、加温熱交換器45に循環される。この冷却機構は、冷却熱交換器44を低温に冷却しながら、加温熱交換器45の温度を高くできる。したがって、蒸留工程において速やかにガスを液化しながら、搬送気体をより温度を高く加温できる。また、図示しないが、吸着剤を加温する加温熱交換器に冷却熱交換器を連結して、冷媒の気化熱と凝縮熱で熱交換器を冷却又は加温する冷却機構は、分子ふるい吸着剤を高い温度に加温して、吸着成分を速やかに排出でき、あるいは、第2の吸着剤を高い温度に加温して、非吸着成分を速やかに排出できる。
【0037】
蒸留釜41で加熱されて気化されたガスは、凝縮器42で冷却して液化されて、蒸留された溶液として貯溜槽14に回収される。蒸留装置40で蒸留された溶液は、貯溜槽14に回収された後、霧化室1に供給されて霧化機構2でミストに霧化される。
【0038】
霧化機構2は、溶液を超音波振動させてミストに霧化する。超音波振動で溶液をミストに霧化する霧化機構2は、霧化室1の溶液を超音波振動させてミストに霧化する超音波霧化機10である。この超音波霧化機10は、霧化室1の溶液を超音波振動させてミストに霧化する1個または複数の超音波振動子11と、この超音波振動子11に接続されて超音波振動子11に高周波電力を供給して超音波振動させる超音波電源12を備える。図1に示す分離装置は、霧化室1で溶液からミストになって霧化されたミストを、ブロア8でもって搬送気体と共に回収部3に移送している。ただ、分離装置は、図示しないが、静電場や超音波を利用してミストを移送する構造とすることもできる。
【0039】
霧化室1は、図1に示すように、蒸留された溶液を蓄えている貯溜槽14を、ポンプ13を介して連結し、貯溜槽14から連続的に溶液を供給することができる。この分離装置は、霧化室1の溶液を排出しながら、貯溜槽14から溶液を供給して、霧化室1の溶液のアルコール等の目的物質濃度が低下するのを防止する。また、図1の矢印Aで示すように、霧化室1の溶液を貯溜槽14に循環することなく外部に排出して、貯溜槽14に含まれる目的物質の濃度が低下するのを防止することもできる。ただ、霧化室は、目的物質の濃度が低下した後、溶液を新しいものに入れ換えることもできる。この方法は、一定の時間経過すると溶液を新しいものに入れ換える方法、すなわちバッチ式に溶液を交換する。
【0040】
霧化室1の溶液は、超音波霧化機10でミストに霧化される。超音波霧化機10で霧化されたミストは、溶液よりも目的物質の濃度が高い。したがって、超音波霧化機10で溶液をミストに霧化し、ミストから目的物質を分離して回収することで、高濃度な溶液を効率よく分離できる。
【0041】
霧化室1の溶液は、超音波霧化機10で超音波振動されて、霧化室1の溶液よりも高濃度なミストとなって溶液面Wから飛散する。溶液を超音波振動させると、溶液面Wに液柱Pができ、この液柱Pの表面からミストが発生する。超音波霧化機10は、溶液を充填している霧化室1の底に、超音波霧化機10の超音波振動子11を上向きに配設している。超音波振動子11は、底から溶液面Wに向かって上向きに超音波を放射して、溶液面Wを超音波振動させて、液柱Pを発生させる。超音波振動子11は、垂直方向に超音波を放射する。図示しないが、複数の超音波振動子で溶液を超音波振動させる超音波霧化機は、より効率よく溶液をミストに霧化できる。
【0042】
超音波振動子11や超音波電源12が霧化室1の溶液を加熱すると品質が低下するものがある。熱による弊害は、超音波振動子11を強制的に冷却して解消できる。さらに、好ましくは超音波電源12も冷却する。超音波電源12は直接には溶液を加熱することはないが、周囲を加熱して間接的に溶液を加熱する。超音波振動子11や超音波電源12は、たとえば、これ等に冷却パイプを熱結合する状態で配設、すなわち、冷却パイプを接触させる状態で配設して冷却できる。冷却パイプは、冷却機で冷却した液体や冷媒、あるいは地下水や水道水等の冷却水を流して超音波振動子と超音波電源を冷却することができる。
【0043】
霧化室1で霧化された溶液のミストは、搬送気体を介して回収部3に流入される。ミストを回収部3に流入させるために、回収部3を移送ダクト9で霧化室1に連結している。図1に示す分離装置は、搬送気体をブロア8で回収部3と霧化室1とに循環させる構造としている。これらの分離装置は、霧化室1から回収部3に移送されて、ミストが分離された搬送気体を霧化室1に環流している。これらの分離装置は、好ましくは搬送気体として、水素又はヘリウムを霧化室1と回収部3に充填する。ただ、搬送気体は、水素とヘリウムを混合したガス、水素と空気の混合ガス、ヘリウムと空気の混合ガス、あるいはまた、水素とヘリウムと空気の混合ガスとすることもできる。さらに、搬送気体として、不活性ガスを霧化室1と回収部3に充填することもできる。
【0044】
回収部3は、霧化機1で霧化されたミストを搬送気体から分離して回収する。図1と図2に示す回収部3は、搬送気体からミストに含まれる吸着成分を回収する吸着回収部5と、吸着回収部5で吸着されないミストに含まれる非吸着成分をミストから分離する分離回収部6とを備える。さらに、図に示す回収部3は、吸着回収部5に供給される搬送気体を冷却する冷却部15を備えている。
【0045】
冷却部15は、ミストを含む搬送気体を冷却して、吸着剤の吸着効率を向上させる。また、この冷却部15は、搬送気体に含まれるミストを凝集して、溶液よりも高濃度のアルコール溶液を回収する。冷却部15で回収されるアルコール溶液は、溶液よりも高濃度であるが、分離回収部6で回収されるアルコール溶液よりも低濃度となる。たとえば、溶液のアルコール濃度を40〜80重量%とするとき、冷却部15で回収されるアルコール溶液の濃度は約55重量%〜約85重量%となる。以下に詳述する分離回収部6で回収されるアルコール溶液の濃度は、溶液のアルコール濃度を40〜80重量%として、97重量%以上と極めて高濃度になる。
【0046】
図に示す冷却部15は、閉鎖構造のチャンバーに、搬送気体とミストを冷却する冷却器16を内蔵している。図の冷却器16は、熱交換パイプにフィン(図示せず)を固定している熱交換器である。この冷却器16は、熱交換パイプに冷却用の冷媒や冷却水を循環させて冷却する。ただ、冷却器は、ペルチェ素子等を備える電子冷却器とすることもできる。霧化室1で霧化されたミストの一部は、冷却器16に結露、凝集して回収される。冷却部15で冷却されたミストを含む搬送気体は、吸着回収部5に移送される。ミストは気体ではないので、必ずしも冷却しないで凝集させて回収できる。ただ、ミストを冷却して速やかに回収できる。
【0047】
吸着回収部5は、図2に示すように、冷却部15で冷却された搬送気体とミストに含まれる吸着成分の水を、分子ふるい吸着剤4に吸着させて分離する。吸着回収部5は、ミストに含まれる吸着成分の水を、分子ふるい吸着剤4に接触させて吸着させる吸着工程と、吸着工程で分子ふるい吸着剤4に吸着された吸着成分の水を分子ふるい吸着剤4から放出させる放出工程とで、搬送気体のミストから吸着成分の水を分離する。
【0048】
吸着回収部5は、放出工程における圧力を吸着工程における圧力よりも低くして、吸着成分の水をミストから分離する。すなわち、吸着回収部5は、吸着成分を吸着させるときの圧力よりも、吸着した吸着成分を放出するときの圧力を低くして、ミストから吸着成分の水を分離する。
【0049】
放出工程における圧力を吸着工程における圧力よりも低くするのは、分子ふるい吸着剤4の吸着量が圧力によって変化するからである。分子ふるい吸着剤4が吸着成分の水を吸着する特性は、分子ふるい吸着剤4の種類と、吸着成分の種類によって異なるが、一般には、同じ温度の下では、圧力が高くなると吸着量が増加し、圧力が低くなると吸着量が減少する傾向がある。また、分子ふるい吸着剤4の吸着量は、同じ圧力の下では、温度が高くなると減少し、温度が低くなると増加する傾向がある。
【0050】
吸着回収部5は、この特性を利用して、ミストに含まれる吸着成分を分離して、より高濃度なアルコール等の目的物質を回収する。すなわち、放出工程における圧力を吸着工程における圧力よりも低くすることによって、吸着工程では多量の吸着成分を分子ふるい吸着剤4に吸着させ、放出工程では分子ふるい吸着剤4に吸着できる吸着成分の量を少なくして、分子ふるい吸着剤4から吸着成分を放出させる。
【0051】
図2に示す吸着回収部5は、分子ふるい吸着剤4が充填される密閉室20と、この密閉室20に流入され、あるいは密閉室20から排出される搬送気体の通過を制御する開閉弁21、22と、密閉室20に連結されて、密閉室20から排気する真空ポンプ25とを備える。
【0052】
密閉室20は、閉塞されたチャンバーで、内部に分子ふるい吸着剤4を充填している。分子ふるい吸着剤4は、合成ゼオライトのモレキュラーシーブである。モレキュラーシーブは、吸着成分の水を吸着する有効細孔径のもの、たとえば有効細孔径を3オングストロームとするものを使用する。分子ふるい吸着剤4は、吸着成分によって有効細孔径が異なる。たとえば、有効細孔径を5オングストロームとするモレキュラーシーブは、炭素数を3以上とするノルマルパラフィンを吸着して、イソパラフィン、ベンゼン、トルエン等を吸着しない。このため、この有効細孔径のモレキュラーシーブを使用して、イソパラフィン、ベンゼン、トルエン等から、炭素数が3以上であるノルマルパラフィンを吸着して分離できる。
【0053】
密閉室20は、移送ダクト9を介して冷却部15の排出側に連結される。冷却部15から流入されるミストを含む搬送気体は、密閉室20を通過するときに、分子ふるい吸着剤4に吸着成分を吸着させる。密閉室20は、排出側を分離回収部6に連結して、吸着成分の水を吸着した搬送気体を分離回収部6に供給する。
【0054】
さらに、図2に示す密閉室20は、排出側を移送ダクト9を介して分離回収部6に連結している。密閉室20の流入側に連結される移送ダクト9には開閉弁21を、排出側に連結される移送ダクト9には開閉弁22を設けている。吸着回収部5は、開閉弁21を開く状態でミストを含む搬送気体が密閉室20に供給されて、搬送気体に含まれるミストが分子ふるい吸着剤4に吸着される。
【0055】
さらに、密閉室20は、吸引ダクト23を介して真空ポンプ25の吸入側に連結される。吸引ダクト23には、吸引弁24を設けている。真空ポンプ25は、密閉室20から強制的に排気して密閉室20を減圧する。分子ふるい吸着剤4は、減圧されると、吸着した吸着成分を放出する。真空ポンプ25は、分子ふるい吸着剤4から放出された吸着成分を強制的に排出する。図2の装置は、真空ポンプ25の排出側に、冷却器26を連結している。冷却器26は、分子ふるい吸着剤4から放出された吸着成分を冷却して、結露させ、あるいは凝集して液体の水として回収する。したがって、冷却器26は、分子ふるい吸着剤4に吸着された吸着成分である水を排出する。ただ、この冷却器は必ずしも必要でない。吸着成分を水とする装置は、分子ふるい吸着剤から放出される吸着成分の水を廃棄できるからである。
【0056】
図に示す分離装置は、ブロア8を冷却部15と吸着回収部5の間に配設している。この分離装置は、ブロア8で循環される搬送気体を、加圧状態で吸着回収部5と分離回収部6に供給する。ブロア8は、たとえば、大気圧よりも高圧に加圧された搬送気体を吸着回収部5と分離回収部6に供給することができる。吸着回収部5と分離回収部6に供給する搬送気体を加圧状態とする分離装置は、吸着工程における吸着量を増加できる特長がある。このため、効率よく搬送気体から吸着成分と非吸着成分を分離できる。ただ、吸着回収部5は、密閉室20の流入側に連結される開閉弁21と、密閉室20の排出側に連結される開閉弁22とを別々に制御して、密閉室20に供給される搬送気体の圧力を調整することもできる。さらに、分離装置は、必ずしも供給される搬送気体を大気圧よりも高圧とする必要はなく、大気圧とすることもできる。
【0057】
さらに、図2に示す吸着回収部5は、第1密閉室20Aと第2密閉室20Bとからなる一対の密閉室20を備える。この構造の吸着回収部5は、一対の密閉室20を吸着工程と放出工程とに切り換えながら一対の密閉室20で効率よく吸着成分の水を分離できる特長がある。この構造の吸着回収部5は、以下のようにして、搬送気体から吸着成分を分離する。
【0058】
(1) 第1密閉室20Aの開閉弁21、22を開いて、第2密閉室20Bの開閉弁21、22と第1密閉室20Aの吸引弁24を閉じる。この状態で冷却部15から供給される搬送気体は、第1密閉室20A内に流入されて、第1密閉室20Aに充填された分子ふるい吸着剤4に吸着成分の水を吸着させる。
(2) 所定の時間経過後、第1密閉室20Aの開閉弁21、22と第2密閉室20Bの吸引弁24を閉じて、第2密閉室20Bの開閉弁21、22を開く。この状態で冷却部15から供給される搬送気体は、第1密閉室20Aに流入されることなく、第2密閉室20B内に流入されて、第2密閉室20Bに充填された分子ふるい吸着剤4に吸着成分の水を吸着させる。
(3) 第1密閉室20Aの吸引弁24を開いて、真空ポンプ25で第1密閉室20Aから排気する。第1密閉室20Aは減圧されて、分子ふるい吸着剤4から吸着成分の水が分離される。
(4) 第1密閉室20Aの分子ふるい吸着剤4から分離された吸着成分の水は、第1密閉室20Aから排出されて冷却器26に流入され、冷却器26で冷却されて凝結し、凝集されて回収される。吸着成分は、冷却器で冷却することなく、真空ポンプから外部に排気することもできる。
(5) さらに、所定の時間経過後、第1密閉室20Aの開閉弁21、22を開いて、第2密閉室20Bの開閉弁21、22と第1密閉室20Aの吸引弁24を閉じる。この状態で冷却部15から供給される搬送気体は、第2密閉室20B内に流入されることなく、第1密閉室20A内に流入されて、第1密閉室20Aに充填された分子ふるい吸着剤4に吸着成分の水を吸着させる。
(6) 第2密閉室20Bの吸引弁24を開いて、真空ポンプ25で第2密閉室20Bから排気する。第2密閉室20Bは減圧されて、分子ふるい吸着剤4から吸着成分の水が分離される。
(7) 第2密閉室20Bの分子ふるい吸着剤4から分離された吸着成分の水は、第2密閉室20Bから排出されて冷却器26に流入され、冷却器26で冷却されて凝結し、凝集されて回収される。この吸着成分も、冷却器で冷却することなく、真空ポンプから外部に排気することができる。
(8) (2)〜(7)の工程を繰り返して、すなわち、開閉弁21、22を交互に開閉して、一対の密閉室20でミストから吸着成分を分離する。
【0059】
さらに、吸着回収部5は、吸着工程における分子ふるい吸着剤4の温度を、放出工程における分子ふるい吸着剤4の温度よりも低くして、より効率よく搬送気体の吸着成分を回収できる。それは、前述のように、分子ふるい吸着剤4の吸着量が温度によっても変化するからである。吸着回収部5は、たとえば、吸着工程において、分子ふるい吸着剤4を冷却して吸着量を増加できる。図に示す回収部3は、冷却部15で搬送気体とミストを冷却して、吸着回収部5に供給する。この分離装置は、吸着工程における吸着成分の吸着量が増加して、ミストに含まれる吸着成分を多量に吸着する。ただ、回収部は、必ずしも冷却部を設ける必要はなく、ミストを含む搬送気体を冷却部で冷却することなく、吸着回収部に供給することもできる。
【0060】
さらに、吸着回収部5は、放出工程において、分子ふるい吸着剤4を加温して、吸着した吸着成分を効率よく分離できる。加温される分子ふるい吸着剤4は、吸着できる吸着成分の量が減少するからである。図の吸着回収部5は、各密閉室20の内部に、分子ふるい吸着剤4を加温する加温熱交換器27を備えている。この加温熱交換器27は、蒸留装置40の凝縮器42の冷却熱交換器44に連結している。加温熱交換器27と冷却熱交換器44は冷媒を循環できる構造としている。冷媒は、冷却熱交換器44で凝縮熱を吸収して温度が上昇し、加温熱交換器27で吸収した熱を放出して分子ふるい吸着剤4を加温する。この冷媒には、たとえば、水やオイルが使用される。この冷媒は、ガスの凝縮熱を吸収して冷却熱交換器44から加温して排出される。冷却熱交換器44で加温されて排出される冷媒は、加温熱交換器27で分子ふるい吸着剤4を加温する。分子ふるい吸着剤4を加温した冷媒は温度が低下する。温度が低下した冷媒は、加温熱交換器27から冷却熱交換器44に循環されて、冷却熱交換器44を冷却し、再びガスを冷却して液化させる。すなわち、冷媒は、ガスの凝縮熱を吸収し、吸収した凝縮熱で分子ふるい吸着剤4を加温する。
【0061】
図2の吸着回収部5は、第1密閉室20Aと第2密閉室20Bとからなる一対の密閉室20を、吸着工程と放出工程とに切り換えながら吸着成分の水を分離する。したがって、各密閉室20に配設される加温熱交換器27は、放出工程のタイミングで冷媒が循環されて、分子ふるい吸着剤4を加温して、吸着成分を速やかに排出する。図の吸着回収部5は、第1密閉室20Aと第2密閉室20Bに配設される加温熱交換器27の流入側に、それぞれ冷媒の循環を制御する流入弁28を設けている。この流入弁28は、各密閉室20における放出工程のタイミングで開弁されて、冷媒を加温熱交換器27に循環し、分子ふるい吸着剤4を加温する。
【0062】
分離回収部6は、吸着回収部5で吸着成分の水を分離して、非吸着成分のアルコール濃度を高くしたミストを回収する。この分離回収部6は、非吸着成分のアルコールを第2の吸着剤7に吸着させて分離する。分離回収部6は、ミストに含まれる非吸着成分のアルコールを、第2の吸着剤7に接触させて吸着させる吸着工程と、吸着工程で第2の吸着剤7に吸着された非吸着成分のアルコールを第2の吸着剤7から放出させる放出工程とで、搬送気体のミストから非吸着成分のアルコールを分離する。
【0063】
分離回収部6は、吸着回収部5と同じように、放出工程における圧力を吸着工程における圧力よりも低くして、非吸着成分のアルコールをミストから分離する。
【0064】
放出工程における圧力を吸着工程における圧力よりも低くするのは、第2の吸着剤7の吸着量が、分子ふるい吸着剤4と同じように、圧力によって変化するからである。また、第2の吸着剤7の吸着量は、同じ圧力の下では、温度が高くなると減少し、温度が低くなると増加する傾向がある。
【0065】
分離回収部6の第2の吸着剤7は、ミストに含まれる非吸着成分を吸着して、より高濃度なアルコール等の目的物質を回収する。すなわち、放出工程における圧力を吸着工程における圧力よりも低くすることによって、吸着工程では多量の非吸着成分を第2の吸着剤7に吸着させ、放出工程では第2の吸着剤7に吸着できる非吸着成分の量を少なくして、第2の吸着剤7から非吸着成分を放出させる。
【0066】
分離回収部6は、吸着回収部5と同じように、第2の吸着剤7を充填する密閉室30と、この密閉室30に流入され、あるいは密閉室30から排出される搬送気体の通過を制御する開閉弁31、32と、密閉室30に連結されて、密閉室30から排気する真空ポンプ35とを備える。
【0067】
密閉室30は、閉塞されたチャンバーで、内部に第2の吸着剤7を充填している。第2の吸着剤7は、分子ふるい吸着剤4に吸着されない非吸着成分のアルコールを吸着する合成ゼオライトのモレキュラーシーブである。モレキュラーシーブは、非吸着成分のアルコールを吸着する有効細孔径のもの、たとえば有効細孔径を5オングストロームとするものを使用する。第2の吸着剤7は、分子ふるい吸着剤4で吸着成分の分離されたミストを吸着できる全てのもの、たとえば、ゼオライト、活性炭、酸化リチウム、シリカゲルのいずれか、もしくはこれらの混合物も使用できる。
【0068】
密閉室30は、移送ダクト9を介して吸着回収部5の排出側に連結される。さらに、図の分離装置は、冷却部17を介して分離回収部6の密閉室30を吸着回収部5に連結している。この分離回収部6は、冷却部17で冷却された搬送気体から非吸着成分のアルコールを第2の吸着剤7に吸着させて分離する。図に示す冷却部17は、閉鎖構造のチャンバーに、搬送気体とミストを冷却する冷却器16を内蔵している。
【0069】
さらに、図2に示す密閉室30は、排出側を移送ダクト9を介して霧化室1に連結している。密閉室30の流入側に連結される移送ダクト9には開閉弁31を、排出側に連結される移送ダクト9には開閉弁32を設けている。分離回収部6は、開閉弁31を開く状態でミストを含む搬送気体を密閉室30に供給し、搬送気体に含まれるミストの非吸着成分を第2の吸着剤7に吸着させる。
【0070】
さらに、密閉室30は、吸引ダクト33を介して真空ポンプ35の吸入側に連結される。吸引ダクト33には、吸引弁34を設けている。真空ポンプ35は、密閉室30から強制的に排気して密閉室30を減圧する。第2の吸着剤7は、減圧されると、吸着した非吸着成分を放出する。真空ポンプ35は、第2の吸着剤7から放出された非吸着成分を強制的に排出する。図の装置は、真空ポンプ35の排出側に冷却器36を連結している。
【0071】
冷却器36は、第2の吸着剤7から放出された非吸着成分を冷却して、結露させ、あるいは凝集して高濃度のアルコールを回収する。したがって、冷却器36からは、第2の吸着剤7に吸着された非吸着成分である高濃度のアルコールが排出される。
【0072】
分離装置は、図2の鎖線で示すように、吸着回収部5と分離回収部6との間にブロア18を連結することができる。このブロア18は、吸着回収部5から排出される搬送気体を、加圧状態で分離回収部6に供給する。このブロア18は、たとえば、高圧に加圧された搬送気体を分離回収部6に供給して、吸着工程における非吸着成分の吸着量を増加できる。ただ、分離装置は、吸着回収部と分離回収部との間に、必ずしもブロアを連結する必要はない。
【0073】
さらに、図2に示す分離回収部6は、吸着回収部5と同じように、第1密閉室30Aと第2密閉室30Bとからなる一対の密閉室30を備える。この構造の分離回収部6は、一対の密閉室30を吸着工程と放出工程とに切り換えながら一対の密閉室30で効率よく非吸着成分のアルコールを分離できる特長がある。この構造の分離回収部6は、以下のようにして、搬送気体から非吸着成分を分離する。
【0074】
(1) 第1密閉室30Aの開閉弁31、32を開いて、第2密閉室30Bの開閉弁31、32と第1密閉室30Aの吸引弁34を閉じる。この状態で吸着回収部5から供給される搬送気体は、第1密閉室30A内に流入されて、第1密閉室30Aに充填された第2の吸着剤7に非吸着成分のアルコールを吸着させる。
(2) 所定の時間経過後、第1密閉室30Aの開閉弁31、32と第2密閉室30Bの吸引弁34を閉じて、第2密閉室30Bの開閉弁31、32を開く。この状態で吸着回収部5から供給される搬送気体は、第1密閉室30Aに流入されることなく、第2密閉室30B内に流入されて、第2密閉室30Bに充填された第2の吸着剤7に非吸着成分のアルコールを吸着させる。
(3) 第1密閉室30Aの吸引弁34を開いて、真空ポンプ35で第1密閉室30Aから排気する。第1密閉室30Aは減圧されて、第2の吸着剤7から非吸着成分のアルコールが分離される。
(4) 第1密閉室30Aの第2の吸着剤7から分離された非吸着成分のアルコールは、第1密閉室30Aから排出されて冷却器36に流入され、冷却器36で冷却されて凝結し、凝集されて高濃度のアルコールとして回収される。
(5) さらに、所定の時間経過後、第1密閉室30Aの開閉弁31、32を開いて、第2密閉室30Bの開閉弁31、32と第1密閉室30Aの吸引弁34を閉じる。この状態で吸着回収部5から供給される搬送気体は、第2密閉室30B内に流入されることなく、第1密閉室30A内に流入されて、第1密閉室30Aに充填された第2の吸着剤7に非吸着成分のアルコールを吸着させる。
(6) 第2密閉室30Bの吸引弁34を開いて、真空ポンプ35で第2密閉室30Bから排気する。第2密閉室30Bは減圧されて、第2の吸着剤7から非吸着成分のアルコールが高濃度な状態で分離される。
(7) 第2密閉室30Bの第2の吸着剤7から分離された非吸着成分は、第2密閉室30Bから排出されて冷却器36に流入され、冷却器36で冷却されて凝結し、凝集されて回収される。
(8) (2)〜(7)の工程を繰り返して、すなわち、開閉弁31、32を交互に開閉して、一対の密閉室30でミストから非吸着成分である高濃度なアルコールを分離する。
【0075】
さらに、分離回収部6は、吸着回収部5と同じように、吸着工程における第2の吸着剤7の温度を、放出工程における第2の吸着剤7の温度よりも低くして、より効率よく搬送気体の非吸着成分を回収できる。図1と図2に示す回収部3は、冷却部17で搬送気体とミストを冷却して、分離回収部6に供給する。この装置は、分離工程における非吸着成分の吸着量が増加して、ミストに含まれる非吸着成分を多量に吸着する。ただ、回収部は、必ずしもこの冷却部を設ける必要はなく、ミストを含む搬送気体を冷却することなく、分離回収部に供給することもできる。
【0076】
さらに、分離回収部6は、吸着回収部5と同じように、放出工程において第2の吸着剤7を加温して、吸着された非吸着成分を効率よく分離できる。加温される第2の吸着剤7は、吸着できる非吸着成分の量が減少するからである。図の分離回収部6は、各密閉室30の内部に、第2の吸着剤7を加温する加温熱交換器37を備えている。この加温熱交換器37も、蒸留装置40の凝縮器42の冷却熱交換器44に連結している。加温熱交換器37と冷却熱交換器44は冷媒を循環できる構造としている。冷媒は、冷却熱交換器44で凝縮熱を吸収して温度が上昇し、加温熱交換器37で吸収した熱を放出して第2の吸着剤7を加温する。この冷媒には、たとえば、水やオイルが使用される。この冷媒は、ガスの凝縮熱を吸収して冷却熱交換器44から加温して排出される。冷却熱交換器44で加温されて排出される冷媒は、加温熱交換器37で第2の吸着剤7を加温する。第2の吸着剤7を加温した冷媒は温度が低下する。温度が低下した冷媒は、加温熱交換器37から冷却熱交換器44に循環されて、冷却熱交換器44を冷却し、再びガスを冷却して液化させる。すなわち、冷媒は、ガスの凝縮熱を吸収し、吸収した凝縮熱で第2の吸着剤7を加温する。
【0077】
図2の分離回収部6は、第1密閉室30Aと第2密閉室30Bとからなる一対の密閉室30を、吸着工程と放出工程とに切り換えながら非吸着成分のアルコールを分離する。したがって、各密閉室30に配設される加温熱交換器37は、放出工程のタイミングで冷媒が循環されて、第2の吸着剤7を加温して、非吸着成分を速やかに排出する。図の分離回収部6は、第1密閉室30Aと第2密閉室30Bに配設される加温熱交換器37の流入側に、それぞれ冷媒の循環を制御する流入弁38を設けている。この流入弁38は、各密閉室30における放出工程のタイミングで開弁されて、冷媒を加温熱交換器37に循環し、第2の吸着剤7を加温する。
【0078】
さらに、第2の吸着剤7を加温する分離回収部6は、分離回収部6から霧化室1に循環させる搬送気体を加温して、霧化室1で能率よくミストを発生できる特長がある。
【0079】
以上の回収部3は、霧化室1から吸着回収部5に移送される搬送気体を冷却部15で冷却し、吸着回収部5においては、蒸留装置40の冷却熱交換器44に連結される加温熱交換器27に循環される冷媒で分子ふるい吸着剤4を加温している。この吸着回収部5は、冷却部15で冷却された搬送気体を分子ふるい吸着剤4に吸着させることで、吸着工程においては、分子ふるい吸着剤4を冷却して、多量の吸着成分を分子ふるい吸着剤4に吸着させ、放出工程においては、加温熱交換器27に循環される冷媒で分子ふるい吸着剤4を加温して、分子ふるい吸着剤4に吸着できる吸着成分の量を少なくして、分子ふるい吸着剤4から吸着成分を放出させている。
【0080】
また、同様に、吸着回収部5から分離回収部6に移送される搬送気体を冷却部17で冷却し、分離回収部6においては、蒸留装置40の冷却熱交換器44に連結される加温熱交換器37に循環される冷媒で第2の吸着剤7を加温している。この分離回収部6は、冷却部17で冷却された搬送気体を第2の吸着剤7に吸着させることで、吸着工程において、第2の吸着剤7を冷却して、多量の非吸着成分を第2の吸着剤7に吸着させ、放出工程においては、加温熱交換器37に循環される冷媒で第2の吸着剤7を加温して、第2の吸着剤7に吸着できる非吸着成分の量を少なくして、第2の吸着剤7から吸着成分を放出させている。
【0081】
すなわち、以上の回収部3は、吸着回収部5や分離回収部6に移送される搬送気体を冷却部15、17で冷却して、吸着工程における分子ふるい吸着剤4や第2の吸着剤7を冷却し、また、分子ふるい吸着剤4や第2の吸着剤7を加温熱交換器27、37で加温して、放出工程における分子ふるい吸着剤4や第2の吸着剤7を加温している。この構造は、蒸留工程で気化されたガスの凝縮熱を有効利用して吸着剤を効率よく加温できる。ただ、本発明の分離装置は、必ずしも、蒸留工程で気化されたガスの凝縮熱を吸着剤の加温に利用する必要はない。本発明の分離装置は、吸着剤を加温することなく目的物質を回収することもできる。ただ、分子ふるい吸着剤で吸着成分を分離し、また、第2の吸着剤で非吸着成分を分離する分離装置は、吸着工程で吸着剤を冷却し、放出工程で吸着剤を加温して、効率よく分離できる。この分離装置は、たとえば、図4に示す温度制御部50で吸着剤の温度を制御することができる。
【0082】
図4に示す吸着回収部5は、密閉室20に充填された分子ふるい吸着剤4の温度を制御するために、温度制御部50を備える。さらに、同様にして、分離回収部6も、密閉室30に充填された第2の吸着剤7の温度を、温度制御部50で制御することができる。
【0083】
この温度制御部50は、密閉室20に充填された分子ふるい吸着剤4を冷却及び加温できる構造としている。この図に示す温度制御部50は、各密閉室20に配設される熱交換器51と、一方の密閉室20の熱交換器51に温水を循環させる加温機構52と、他方の密閉室20に冷水を循環させる冷却機構53と、各密閉室20に循環させる温水と冷水とを切り換える制御弁54と、加温機構52の温水タンク55を加熱すると共に、冷却機構53の冷水タンク56を冷却する冷却サイクル57とを備える。
【0084】
熱交換器51は、密閉室20の内部に配設されている。熱交換器51は、内部に温水が循環される状態では分子ふるい吸着剤4を加温し、内部に冷水が循環される状態では分子ふるい吸着剤4を冷却する。加温機構52は、温水タンク55の内部に冷却サイクル57の放熱器58を配設しており、放熱器58で加温された温水を循環路に循環させて密閉室20を加温する。冷却機構53は、冷水タンク56の内部に冷却サイクル57の吸熱器59を配設しており、吸熱器59で冷却された冷水を循環路に循環させて密閉室20を冷却する。ただ、加温機構と冷却機構は、水以外の冷媒を循環させることもできる。
【0085】
冷却サイクル57は、気化された冷媒を加圧するコンプレッサー60と、このコンプレッサー60で加圧された冷媒を液化させる放熱器58と、液化された冷媒の気化熱で強制的に冷却する吸熱器59と、放熱器58と吸熱器59との間に接続している膨張弁61とを備える。膨張弁61は、加圧・冷却して液化された冷媒を吸熱器59の内部で断熱膨張させて、吸熱器59を冷媒の気化熱で強制的に冷却する。この冷却サイクル57は、放熱器58と吸熱器59の温度を設定温度とするように、膨張弁61の開度とコンプレッサー60の出力を調整する。
【0086】
以上の構造の温度制御部50は、制御弁54を切り換えて、一方の密閉室20の熱交換器51に温水を循環させて加温し、他方の密閉室20の熱交換器51に冷水を循環させて冷却する。この構造の温度制御部50は、ひとつの冷却サイクル57で、一対の密閉室20を加温及び冷却できるので、一対の密閉室20に充填される分子ふるい吸着剤4を効率よく温度制御できる。一対の密閉室20を備える吸着回収部5は、一方の密閉室20が吸着工程にある状態では、他方の密閉室20が放出工程にある。したがって、この温度制御部50は、吸着工程にある密閉室20を冷却して分子ふるい吸着剤4に効率よく吸着成分を吸着できると共に、放出工程にある密閉室20を加温して、分子ふるい吸着剤4に吸着された吸着成分を効率よく分離できる。
【0087】
さらに、図示しないが、温度制御部は、加温機構の温水タンクの内部に配設される放熱器を蒸留装置の凝縮器の冷却熱交換器に連結して、蒸留工程で気化されたガスの凝縮熱を有効利用して温水タンク内の温水を加温することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明の一実施例にかかる溶液の超音波分離方法に使用する分離装置を示す概略構成図である。
【図2】図1に示す分離装置の回収部の一例を示す概略構成図である。
【図3】冷却熱交換器と加温熱交換器の一例を示す概略構成図である。
【図4】温度制御部の一例を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0089】
1…霧化室
2…霧化機構
3…回収部
4…分子ふるい吸着剤
5…吸着回収部
6…分離回収部
7…第2の吸着剤
8…ブロア
9…移送ダクト
10…超音波霧化機
11…超音波振動子
12…超音波電源
13…ポンプ
14…貯溜槽
15…冷却部
16…冷却器
17…冷却部
18…ブロア
20…密閉室 20A…第1密閉室
20B…第2密閉室
21…開閉弁
22…開閉弁
23…吸引ダクト
24…吸引弁
25…真空ポンプ
26…冷却器
27…加温熱交換器
28…流入弁
30…密閉室 30A…第1密閉室
30B…第2密閉室
31…開閉弁
32…開閉弁
33…吸引ダクト
34…吸引弁
35…真空ポンプ
36…冷却器
37…加温熱交換器
38…流入弁
40…蒸留装置
41…蒸留釜
42…凝縮器
43…冷却パイプ
44…冷却熱交換器
45…加温熱交換器
46…コンプレッサ
47…膨張弁
50…温度制御部
51…熱交換器
52…加温機構
53…冷却機構
54…制御弁
55…温水タンク
56…冷水タンク
57…冷却サイクル
58…放熱器
59…吸熱器
60…コンプレッサー
61…膨張弁
67…加温熱交換器
68…流入弁
W…溶液面
P…液柱

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶液を超音波振動させてミストに霧化する霧化工程と、この霧化工程で霧化されたミストを搬送気体と共に回収部(3)に移送して、回収部(3)でミストを回収する回収工程とからなる溶液の超音波分離方法において、
霧化工程の前工程として、溶液を蒸留する蒸留工程を設けており、この蒸留工程で得られた溶液を霧化工程において超音波振動してミストとすることを特徴とする溶液の超音波分離方法。
【請求項2】
前記蒸留工程において発生する、ガスの凝縮熱でもって、ミストに供給する搬送気体を加熱する請求項1に記載される溶液の超音波分離方法。
【請求項3】
前記蒸留工程において発生する、ガスの凝縮熱でもって、霧化工程に供給される溶液を加熱する請求項1に記載される溶液の超音波分離方法。
【請求項4】
溶液にアルコール水溶液を使用する請求項1に記載される超音波分離方法。
【請求項5】
前記回収工程において、ミストに含まれる吸着成分を分子ふるい吸着剤(4)に吸着させる吸着工程を含み、蒸留工程において発生するガスの凝縮熱でもって、分子ふるい吸着剤(4)を加熱する請求項1に記載される溶液の超音波分離方法。
【請求項6】
溶液がアルコール水溶液で、吸着工程において、分子ふるい吸着剤(4)がミストに含まれる水を吸着成分として吸着して除去する請求項5に記載される溶接の超音波分離方法。
【請求項7】
前記吸着工程で吸着成分の分離されたミストに含まれる非吸着成分を、分離工程において第2の吸着剤(7)に吸着させて分離する請求項5に記載される溶液の超音波分離方法。
【請求項8】
搬送気体を冷却部(15)で冷却した後、分子ふるい吸着剤(4)に接触させて、吸着成分を分子ふるい吸着剤(4)に吸着させる請求項5に記載される溶液の超音波分離方法。
【請求項9】
搬送気体が、水素、ヘリウムのいずれかである請求項1に記載される溶液の超音波分離方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−142727(P2009−142727A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−321205(P2007−321205)
【出願日】平成19年12月12日(2007.12.12)
【出願人】(503268143)超音波醸造所有限会社 (20)
【Fターム(参考)】