説明

溶液・廃液の固形化装置及び溶液・廃液の固形化方法

【課題】前段濃縮装置としてエネルギー効率のよい蒸気圧縮型蒸発濃縮装置と、後段晶析装置として冷却式晶析装置とを組み合わせることにより、蒸気を殆ど使用せず、大幅な省エネルギー化を可能にした溶液・廃液の固形化装置及び固形化方法を提供する。
【手段】固形化装置1は、供給された溶液・廃液を飽和近くまで濃縮する蒸気圧縮型蒸発濃縮装置2と、蒸気圧縮型蒸発濃縮装置2で生成された濃縮液を冷却して溶解度を下げ蒸発濃縮液中の溶質を結晶させて析出する冷却式晶析装置3と、冷却式晶析装置3により析出した結晶を液から分離する固液分離装置4とを有する。固液分離装置4には、固形物が分離・除去された後のろ液を蒸気圧縮型蒸発濃縮装置2側に返送するリターン管路5が接続されている。リターン管路5を介して返送されたろ液は処理液(原液)と混合され、混合液は予熱器6を介して蒸気圧縮型蒸発濃縮装置2からの凝縮水と熱交換される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶液・廃液より高濃度溶液を生成し、その高濃度溶液から結晶を固形分離する装置及びその方法に関し、特にエネルギー効率を高め、省エネルギー化を達成するようにした溶液・廃液の固形化装置及び溶液・廃液の固形化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
塩化アンモニウムを含む廃液等の固形化装置としては、前段濃縮で濃縮装置を使用し、濃縮液を加熱蒸気式晶析装置で結晶化を行う構成のものが知られている。この加熱蒸気式晶析装置を使用するプロセスでは、前段濃縮として多重効用蒸発器を使用したり、生蒸気を外部から注入したりする構成等が用いられている。さらに、エネルギー効率を上げるために、蒸気圧縮型蒸発濃縮装置を使用する例も知られている(例えば、下記特許文献1参照)。しかしながら、この加熱蒸気式晶析装置を使用するプロセスでは、前段濃縮を上記いずれの方式を用いても、晶析工程において多量の蒸気を必要とすることから、系全体のエネルギー効率は悪かった。
【0003】
一方、塩化アンモニウムのような温度差により溶解度差の大きい物質を含有した溶液・廃液を処理とする場合には、冷却式晶析装置を使用する構成のものが知られている。溶解度差の利用により結晶化を図るため、上記の加熱蒸気式晶析装置を使用するプロセスに比べて、省エネルギー化が図られる。しかし、この冷却式晶析装置を使用するプロセスでは、前段濃縮としては多重効用蒸発器を使用したり、生蒸気を注入したりしているのが現状であり、いずれの方式であっても、蒸気を使用しており、省エネルギー化の観点からはまだまだ充分ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭62−136204号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、省エネルギー化を達成できるようにした溶液・廃液の固形化装置及び溶液・廃液の固形化方法が要望されていた。
【0006】
本願発明は、上記課題に鑑みて考え出されたものであり、その目的は、前段濃縮装置としてエネルギー効率のよい蒸気圧縮型蒸発濃縮装置と、後段晶析装置として冷却式晶析装置とを組み合わせることにより、蒸気を殆ど使用せず、大幅な省エネルギー化を可能にした溶液・廃液の固形化装置及び溶液・廃液の固形化方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る溶液・廃液の固形化装置は、供給された処理液を蒸発させる蒸発缶と、発生蒸気を断熱圧縮する圧縮機とを備え、圧縮機により温度と圧力が上昇した蒸気を蒸発缶に戻して処理液を蒸発するための熱源とするようにして供給された処理液を蒸発濃縮する蒸気圧縮型蒸発濃縮装置と、前記蒸気圧縮型蒸発濃縮装置により得られた蒸発濃縮液を冷却して溶解度を下げ、蒸発濃縮液中の溶質を結晶させて析出する冷却式晶析装置と、を有することを特徴とする。
【0008】
上記の如く、前段の濃縮を蒸気圧縮型蒸発濃縮装置で行い、後段の結晶化を冷却式晶析装置で行うことにより、蒸気を殆ど使用せず、大幅な省エネルギー化を可能にした。即ち、冷却式晶析を使用するためには、前段で生成される濃縮液を高温に持ち上げる必要がある。この場合、従来のような蒸気加熱の場合はエネルギー消費が大きい。一方、本発明のように蒸気圧縮による場合は、エネルギー的に効率がよく、省エネルギー化が図られる。
【0009】
本発明は、前記冷却式晶析装置により析出した結晶を液から分離する固液分離装置を備える場合がある。結晶化した固形物を取り出すことができ、その固形物を例えば肥料等に利用することが可能となる。
【0010】
本発明は、前記固液分離装置により分離・除去された後のろ液を前記蒸気圧縮型蒸発濃縮装置側に返送して処理液と混合させるリターン管路を備えるのが好ましい。このような構成により、廃液の排出量を低減することができる。
【0011】
本発明は、前記リターン管路により返送されたろ液と処理液との混合液と、前記蒸気圧縮型蒸発濃縮装置により得られた凝縮水とを熱交換して、混合液を凝縮水により加熱する予熱器を備える場合もある。凝縮水との熱交換により、処理液の温度を上昇させるので、熱回収の効率が良く、システム全体としては蒸気の使用量を抑えた省エネルギー化が達成される。
【0012】
また、本発明に係る溶液・廃液の固形化方法は、蒸気圧縮型蒸発濃縮装置を用いて、供給された処理液を蒸発濃縮する工程と、冷却式晶析装置を用いて、前記蒸発濃縮工程で得られた蒸発濃縮液を冷却して溶解度を下げ、蒸発濃縮液中の溶質を結晶させて析出する工程と、を含むことを特徴とする。上記構成により、蒸気を殆ど使用せず、大幅な省エネルギー化を可能にした溶液・廃液の固形化方法を実現できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、冷却式晶析装置と、前段濃縮装置としてエネルギー効率のよい蒸気圧縮型蒸発濃縮装置とを組み合わせることにより、蒸気を殆ど使用せず、大幅な省エネルギー化が可能な溶液・廃液の固形化装置及び溶液・廃液の固形化方法を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施の形態に係る溶液・廃液の固形化装置の全体構成図。
【図2】実施例に係る溶液・廃液の固形化装置の全体構成図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施の形態に基づいて詳述する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。
図1は実施の形態に係る溶液・廃液の固形化装置の全体構成図である。溶液・廃液の固形化装置1は、例えば塩化アンモニウムを含有する溶液・廃液を濃縮して固形分を取り出す装置である。この固形化装置1は、供給された溶液・廃液を飽和近くまで濃縮する蒸気圧縮型蒸発濃縮装置2と、蒸気圧縮型蒸発濃縮装置2で生成された濃縮液を冷却して溶解度を下げ蒸発濃縮液中の溶質を結晶させて析出する冷却式晶析装置3と、冷却式晶析装置3により析出した結晶を液から分離する固液分離装置4とを有する。固液分離装置4には、固形物が分離・除去された後のろ液を蒸気圧縮型蒸発濃縮装置2側に返送するリターン管路5が接続されている。リターン管路5を介して返送されたろ液は処理液(原液)と混合され、混合液は予熱器6を介して蒸気圧縮型蒸発濃縮装置2からの凝縮水と熱交換されるようになっている。
【0016】
蒸気圧縮型蒸発濃縮装置2は、供給された処理液を蒸発させる蒸発缶と、発生蒸気を断熱圧縮する圧縮機とを備え、圧縮機により温度と圧力が上昇した蒸気を蒸発缶に戻して処理液を蒸発するための熱源とするように構成されている。圧縮機は1台であってもよく、また、一段圧縮で必要な圧縮温度差が得られない場合、2台直列に設けるように構成されている。さらに、3台直列に設けるような場合もある。
【0017】
冷却式晶析装置3としては、ジャケットや内部コイルによる冷却方式の晶析装置、外部循環冷却式晶析装置などが知られており、特に制限はない。ジャケット式晶析装置は、晶析を行う容器の周囲にジャケットを有し、当該ジャケット内に冷水(又は冷媒)を通し、当該容器の壁面を介して冷却するタイプである。内部コイル式晶析装置は、晶析を行う容器内に冷却コイルを配置し、チラーからの冷水(又は冷媒)を冷却コイル内に通し、容器内の溶液を冷却するタイプである。外部循環冷却式晶析装置は、晶析槽とその外部に配置された冷却器とを配管、バルブ等から成る循環路で形成されており、冷却器としては、多管式冷却器が好適に使用される。容器内に撹拌翼やバッフルを具備し、内液が良好に撹拌できるものが好ましい。また、何れのタイプも、混合性の向上のため、内部にドラフトチューブを具備するのが好ましい。なお、後述する実施例では、内部コイル式晶析装置を例示する。
【0018】
固液分離装置4としては、例えば、遠心分離機、ロータリーバキュームフィルターなどが挙げられる。なお、後述する実施例では、遠心分離機を例示する。
【0019】
上記構成の固形化装置1の処理の概要は、以下の通りである。本実施の形態では、濃度13重量%程度の塩化アンモニウムを含む処理液(原液)が、1日当たり約5t、固形化装置1に供給される。そして、蒸気圧縮型蒸発濃縮装置2で飽和近くまで濃縮され、70℃程度の濃縮液(濃度37重量%程度)が生成される。この前段濃縮において、蒸気圧縮型蒸発濃縮装置2の使用により、蒸発缶で発生した蒸気を圧縮機により断熱圧縮して高温に持ち上げるので、蒸気加熱の場合に比べてエネルギー効率がよく、省エネルギー化が図られる。
【0020】
次いで、濃縮液は70℃程度の高温を維持したまま冷却式晶析装置3に供給される。冷却式晶析装置3は、蒸気圧縮型蒸発濃縮装置2で生成された濃縮液を20℃程度まで冷却して溶解度を下げ、濃縮液中の溶質を結晶させて析出する。
【0021】
次いで、固液分離装置4において、液と分離されて塩化アンモニウムの結晶固形物(含水率5〜10%)が取り出される。この塩化アンモニウムの結晶固形物は例えば肥料として使用される。なお、固形物が分離・除去された後のろ液は、リターン管路5を介して蒸気圧縮型蒸発濃縮装置2側に返送される。これにより、廃液の排出量が低減される。さらに、リターン管路5を介して返送されたろ液は処理液(原液)と混合され、混合液は予熱器6を介して蒸気圧縮型蒸発濃縮装置2からの凝縮水と熱交換されるようになっている。従って、蒸気圧縮型蒸発濃縮装置2に供給される処理液の温度を上昇させることができ、熱回収の良好なシステムを構築することができる。
【0022】
このようにして、本実施の形態における固形化装置1は、前段濃縮としてエネルギー効率のよい蒸気圧縮型蒸発濃縮装置2と、冷却式晶析装置3を組み合わせることにより、蒸気を殆ど使用せず、大幅な省エネルギー化を実現できる。加えて、リターン管路5を介して返送されるろ液と処理液(原液)と混合し、混合液は予熱器6を介して蒸気圧縮型蒸発濃縮装置2からの凝縮水と熱交換されるように構成されていることから、さらなる省エネルギー化を実現できることになる。
【0023】
前記処理液には、温度上昇と共に溶解度が増加する特性を有し、且つ温度差に対する溶解度差が大きな物質が含有されているのが好ましいしい。ここで、「溶解度」とは、飽和溶液100kg中に溶解している無水化合物の質量kg(=wt%)を意味する。また、「温度差に対する溶解度差が大きな」とは、例えば、70℃と20℃との間の温度差(つまり50℃の温度差)に対して溶解度差が10以上であることを意味する。溶解度差が大きな物質としては、塩化アンモニウムの他に、硫酸ナトリウム(NaSO)、硫酸銅(CuSO)、硫酸ニッケル(NiSO)等が例示される。なお、NaSOは溶解度が34℃付近にピーク値が存在するが、本発明における晶析装置において20℃程度まで冷却するので、効率よく結晶化が可能である。
【実施例】
【0024】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0025】
以下の実施例では、溶液・廃液の固形化装置1として、塩化アンモニウムを含有する溶液・廃液を濃縮して固形分を取り出す装置について説明する。また、蒸気圧縮型蒸発濃縮装置2の一例として、真空蒸気圧縮型蒸発濃縮装置2Aを挙げて説明する。この溶液・廃液の固形化装置1における真空蒸気圧縮型蒸発濃縮装置2Aは水平管型蒸発器10を含む。水平管型蒸発器10は蒸発缶11を含み、この蒸発缶11は筒形に形成されており、内部に処理液を貯留することができるようになっている。蒸発缶11には、廃液等の処理液を供給するための管12が接続されており、この管12には処理液を供給するための原液ポンプ13が配置されている。蒸発缶11の上部には、左右一対のヘッダー14a,14bと、この両ヘッダー14a,14bの間を繋ぐ多数本の水平伝熱管14cとから成る加熱器14が設けられている。ヘッダー14aは、蒸気が進入する側に配置され、ヘッダー14bは蒸気が排出する側に配置されている。ヘッダー14bには加熱蒸気の凝縮水を排出するための管15が接続されており、この管15には凝縮水を排出するための凝縮水ポンプ16が配置されている。管15には、凝縮水の熱により管12を通る処理液を予熱する予熱器6が配置されている。予熱器6は熱交換器である。
【0026】
処理液(原液)は原液タンク20に供給され、リターン管路6を介して返送されるろ液と混合され、原液ポンプ13により水平管型蒸発器10に供給されるようになっている。
【0027】
本実施の形態における水平管型蒸発器10は、処理液の循環流路を含む。循環流路には、循環ポンプ22及び散布器23が配置されている。循環ポンプ22は、蒸発缶11の底部に接続されている。循環ポンプ22は、管24を通して、蒸発缶11に貯留する処理液25を散布器23に移送することができるように形成されている。また、循環ポンプ22は、管26を通して、処理液25の一部を濃縮液タンク30に移送することができるように形成されている。散布器23は、処理液25を水平伝熱管14cの上方から水平伝熱管14cに向けて散布するように形成されている。
【0028】
水平管型蒸発器10は、処理液の蒸気を外部に排出するための排出管としての管31を備えている。管31は、蒸発缶11の上部に接続されている。水平管型蒸発器10は、蒸気圧縮機としてのヒートポンプ32を含む。ヒートポンプ32は、管31に接続されている。ヒートポンプ32は、出口側が加熱器14のヘッダー14aに接続されており、蒸発缶11の上部の蒸気をヘッダー14aに移送することができるように形成されている。ヒートポンプ32は、蒸発缶11の内部の蒸気を吸い込んで圧縮昇温するように形成されている。加熱器14のヘッダー14bには、真空ポンプ33が接続されている。この真空ポンプ33によって蒸発缶11の内部が真空に保持されている。なお、ヒートポンプ32の出口側とヘッダー14aとを連結する管34には、生蒸気を供給する管35が接続されており、起動時における場合及び運転温度を維持するための補助熱源が必要な場合に外部熱を供給できるようになっている。
【0029】
冷却式晶析装置3は、結晶缶40を含む。結晶缶40内には、内部コイル60が配置されている。この内部コイル60はチラー61に接続されており、チラー61からの冷水が内部コイル60内を通るようになっている。結晶缶40には、結晶缶40内の溶液用の循環流路41が接続されている。循環流路41には、結晶缶循環ポンプ42が配置されている。循環流路41には、晶析装置供給ポンプ43により濃縮液タンク30に貯留された濃縮液が供給されるようになっている。そして、濃縮液は、結晶缶循環ポンプ42により結晶缶40の底部に供給され、結晶缶40の側壁の上部側から排出されて循環するようになっている。
【0030】
また、結晶缶40には結晶化された溶質を含むスラリーを排出するための管44が接続されており、この管44には、スラリーを遠心分離機4A(固液分離装置4に相当)に供給するスラリーポンプ45が配置されている。また、結晶缶40の上部には、結晶缶40内の蒸気を凝縮器46に導く管47が接続されている。凝縮器46には冷水が供給され、凝縮器46の液貯の底部から晶析装置凝縮水ポンプ48により凝縮水が系外に排出されるようになっている。また、凝縮器46には真空ポンプ49が接続されており、凝縮器46及び結晶缶40が減圧状態に保持されている。
【0031】
遠心分離機4Aにはスラリーポンプ45により結晶缶40からスラリーが供給される。遠心分離機4Aで液から分離された結晶固形物は管50から排出される。また、遠心分離機4Aには、固形物が分離・除去された後のろ液を真空蒸気圧縮型蒸発濃縮装置2A側に返送するリターン管路5が接続されている。リターン管路5には、ろ液タンク51、ろ液ポンプ52が配置されている。ろ液タンク51に貯留されたろ液は、ろ液ポンプ52によりリターン管路5を介して原液タンク20に返送されるようになっている。なお、ろ液ポンプ52によりブロー液が排出されるようになっている。
【0032】
次いで、上記構成の固形化装置1の処理動作について説明する。1日当たり約5tの濃度13重量%程度の塩化アンモニウムを含む処理液(原液)が、原液タンク20に供給される。一方、原液タンク20には、リターン管路5を介してろ液が返送される。原液タンク20で撹拌混合された後の処理液は、管12を通って真空に保持された蒸発缶11内に供給される。なお、処理液は、管12を通る途中で予熱器6で凝縮水と熱交換され、温度が上昇する。
【0033】
次いで、循環ポンプ22の駆動により、蒸発缶11に貯留する処理液25は管24を通って散布器23に供給され、散布器23から水平伝熱管14cに向かって散布される。散布器23にて散布された処理液は、水平伝熱管14cの表面で薄膜蒸発する。水平伝熱管14cの表面で蒸発した蒸気は、管31を通ってヒートポンプ32で吸引され、ヒートポンプ32にて断熱圧縮されて温度及び圧力が上昇した後にヘッダー14aに送られる。ヘッダー14aに進入した蒸気は、水平伝熱管14cの内側に導かれ、水平伝熱管14cの外側に散布された循環液を蒸発させると同時に凝縮し、凝縮水となりヘッダー14bに流入する。そして、凝縮水は、凝縮水ポンプ16により、予熱器6に導かれ、予熱器6にて冷却されて排出される。このようなプロセスを繰り返すことにより、循環液は、飽和近くまで濃縮され(70℃、濃度37重量%程度)、循環ポンプ22の出口から濃縮液として濃縮液タンク30に移送される。
【0034】
濃縮液タンク30内の濃縮液は、晶析装置供給ポンプ43にて循環流路41に供給され、
結晶缶循環ポンプ42により結晶缶40の底部に導かれる。結晶缶40内の循環液(濃縮液)は、結晶缶循環ポンプ42により結晶缶40の底部に供給され、結晶缶40の側壁上部側から排出されて循環する。そして、結晶缶40内の循環液(濃縮液)は、内部コイル60を通る冷水(7〜11℃)により20℃まで冷却されて溶解度が下がり、濃縮液中の溶質が結晶化して析出する。
【0035】
なお、結晶缶40内の蒸気は凝縮器46に導かれて凝縮し、凝縮水は凝縮水ポンプ48にて系外に排出される。
【0036】
結晶缶40内の結晶化された溶質を含むスラリーは、スラリーポンプ45にて遠心分離機4Aに供給される。そして、遠心分離機4Aで液と分離された結晶固形物は系外に排出される。一方、遠心分離機4Aにて固形物が分離・除去された後のろ液は、リターン管路5を介して原液タンク20に返送される。
【0037】
上記の処理が連続して行われることにより、塩化アンモニウムを含む廃液より高濃度溶液を生成し、その高濃度溶液から結晶を固形分離して結晶固形物を取り出すことができる。しかも、蒸気を殆ど使用せず、大幅な省エネルギー化が可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、溶液・廃液より高濃度溶液を生成し、その高濃度溶液から結晶を固形分離する装置及びその方法に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0039】
1:溶液・廃液の固形化装置 2:蒸気圧縮型蒸発濃縮装置
2A:真空蒸気圧縮型蒸発濃縮装置 3:冷却式晶析装置
4:固液分離装置 5:リターン管路
6:予熱器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給された処理液を蒸発させる蒸発缶と、発生蒸気を断熱圧縮する圧縮機とを備え、圧縮機により温度と圧力が上昇した蒸気を蒸発缶に戻して処理液を蒸発するための熱源とするようにして供給された処理液を蒸発濃縮する蒸気圧縮型蒸発濃縮装置と、
前記蒸気圧縮型蒸発濃縮装置により得られた蒸発濃縮液を冷却して溶解度を下げ、蒸発濃縮液中の溶質を結晶させて析出する冷却式晶析装置と、
を有することを特徴とする溶液・廃液の固形化装置。
【請求項2】
前記冷却式晶析装置により析出した結晶を液から分離する固液分離装置を備えた請求項1記載の溶液・廃液の固形化装置。
【請求項3】
前記固液分離装置により分離・除去された後のろ液を前記蒸気圧縮型蒸発濃縮装置側に返送して処理液と混合させるリターン管路を備えた請求項2記載の溶液・廃液の固形化装置。
【請求項4】
前記リターン管路により返送されたろ液と処理液との混合液と、前記蒸気圧縮型蒸発濃縮装置により得られた凝縮水とを熱交換して、混合液を凝縮水により加熱する予熱器を備えた請求項3記載の溶液・廃液の固形化装置。
【請求項5】
蒸気圧縮型蒸発濃縮装置を用いて、供給された処理液を蒸発濃縮する工程と、
冷却式晶析装置を用いて、前記蒸発濃縮工程で得られた蒸発濃縮液を冷却して溶解度を下げ、蒸発濃縮液中の溶質を結晶させて析出する工程と、
を含むことを特徴とする溶液・廃液の固形化方法。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−20074(P2011−20074A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−168421(P2009−168421)
【出願日】平成21年7月17日(2009.7.17)
【出願人】(000143972)株式会社ササクラ (138)
【Fターム(参考)】