説明

溶液分析装置

【課題】セメントを含有する溶液を精度よく分析できる溶液分析装置を提供する。
【解決手段】セメントを含有する溶液を分析する溶液分析装置10であって、溶液が流動する管路であり、該管路における所定容積の一部を上流側及び下流側から独立して荷重を支持できるように構成したスパイラル計量管32を有する循環管路20と、スパイラル計量管32の重量を測定するロードセル38と、循環管路20に介装されたX線測定ブロック40と、X線測定ブロック40を流れる溶液のカルシウム含有率を測定する蛍光X線測定装置50と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメントを含有する溶液を分析する溶液分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
管路を流れる溶液の単位体積重量を測定する装置(例えば、特許文献1〜3参照)が知られている。特許文献3に記載の装置では、排泥管を流れるスラリーの単位体積重量が測定され、その測定値等に基づいて、スラリーの含泥率が演算される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−265396号公報
【特許文献2】特開2000−171586号公報
【特許文献3】特開昭63−188738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、超高圧噴流工法では、水とセメントとを主成分とする地盤改良材に土砂が含有された余剰縣濁液が発生する。ここで、余剰縣濁液はセメントの含有量を調整して再利用することが望ましいが、そのためには、余剰縣濁液におけるセメントと土砂との含有率を測定する等、余剰縣濁液を分析することが必要となる。
【0005】
しかしながら、従来のセメントを含有する溶液の分析は、少量のサンプルをカップ等に採集して行うというものであった。このため、従来のセメントを含有する溶液の分析方法では、サンプル数が少ないことから十分な精度の分析結果を得ることができなかった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、セメントを含有する溶液を精度よく分析できる溶液分析装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る溶液分析装置は、セメントを含有する溶液を分析する溶液分析装置であって、前記溶液が流動する管路であり、該管路における所定容積の一部を上流側及び下流側から独立して荷重を支持できるように構成した重量測定部を有する溶液管路と、前記重量測定部の重量を測定する重量測定装置と、前記溶液管路に介装された成分測定部と、前記成分測定部を流れる前記溶液のカルシウム含有率を測定する成分測定装置と、を備える。
【0008】
上記溶液分析装置において、前記成分測定装置は、前記成分測定部の上側に配され、下方の前記成分測定部に向けてX線を投射するX線成分測定装置であってもよく、この場合、前記成分測定部は、前記X線成分測定装置のX線投射口と上下に対向してX線透過膜が配され、前記成分測定部内の縦径は、X線の照射点においてその上流側及び下流側よりも小さくなるように設定されていてもよい。
【0009】
上記溶液分析装置において、前記溶液管路は、前記溶液が循環する溶液循環管路であってもよい。
【0010】
上記溶液分析装置において、前記重量測定部は、上流端と下流端とがそれぞれ可撓性の管材により前記溶液管路の上流側と下流側とに接続され、前記重量測定装置により荷重を受け止められていると共に、螺旋状の管路として形成されていてもよい。
【0011】
上記溶液分析装置は、前記溶液が空の状態での前記重量測定部の重量と、前記重量測定部の容積と、セメントのカルシウムの含有率とを記憶する記憶部と、前記重量測定装置により測定された前記重量測定部の重量と、前記記憶部により記憶された前記溶液が空の状態での前記重量測定部の重量、及び前記重量測定部の容積とに基づいて、前記溶液の単位体積重量を演算し、演算した前記溶液の単位体積重量と、前記成分測定装置により測定された前記溶液のカルシウムの含有率と、前記記憶部により記憶されたセメントのカルシウムの含有率とに基づいて、前記溶液のセメントの含有率を演算する演算部と、を備えてもよい。
【0012】
上記溶液分析装置において、前記演算部は、演算した前記溶液の単位体積重量及び前記溶液のセメントの含有率に基づいて、前記溶液のセメント以外の成分の単位体積重量又は比重を演算してもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る溶液分析装置によれば、セメントを含有する溶液を精度よく分析できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】一実施形態に係る溶液分析装置の概略構成を示す図である。
【図2】X線測定ブロックを示す斜視図である。
【図3】X線測定ブロックを示す側断面図である。
【図4】(A)は、図3のA−A矢視図であり、(B)は、図3のB−B矢視図であり、(C)は、図3のC−C矢視図である。
【図5】X線測定ブロックを分解して示す側断面図である。
【図6】(A)は、図5のA−A矢視図であり、(B)は、図5のB−B矢視図である。
【図7】演算装置の概略構成を示すブロック図である。
【図8】(A)、(B)は、溶液分析装置を用いた溶液の分析方法を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る溶液分析装置10の概略構成を示す図である。この溶液分析装置10は、超高圧噴流工法で発生した余剰縣濁液を管路で循環させながら分析する装置である。ここで、余剰縣濁液は、セメントと土砂と水とが混合した溶液である。
【0016】
溶液分析装置10は、分析対象の溶液である余剰縣濁液(以下、単に溶液という)を循環させる管路である循環管路20と、循環管路20に配された溶液貯蔵タンク22、スパイラル計量管32、X線測定ブロック40、ポンプ24、及び電磁コック26とを備えている。また、溶液分析装置10は、スパイラル計量管32の重量を測定する重量測定装置30と、X線測定ブロック40内を流れる溶液のカルシウム(Ca)の含有率(重量%)を測定する蛍光X線測定装置50と、重量測定装置30及び蛍光X線測定装置50の測定結果に基づいて、溶液のセメントの含有率(重量%)を演算する演算装置60とを備えている。
【0017】
溶液貯蔵タンク22は、上部が大気に開放されたタンクであり、その上部には、循環管路20の下流端が接続され、下部には、循環管路20の上流端が接続されている。また、溶液貯蔵タンク22が最高位に配され、X線測定ブロック40及びポンプ24が最低位に配され、これらの間にスパイラル計量管32が配されている。さらに、ポンプ24は吸引ポンプであり、溶液を吸引する。このため、循環管路20において、溶液は、水頭差とポンプ24の吸引力とにより、溶液貯蔵タンク22、スパイラル計量管32、X線測定ブロック40、ポンプ24の順序で循環する。なお、ポンプ24はチュービングポンプ等の溶液を圧送する方式のポンプに替えてもよい。
【0018】
ここで、循環管路20の下流端には、電磁コック26が配されており、この電磁コック26は、配管を介して溶液の回収部に接続されている。このため、電磁コック26を開くと、溶液が、回収部から溶液貯蔵タンク22へ供給される。
【0019】
スパイラル計量管32は、溶液貯蔵タンク22の下流側に配された螺旋(スパイラル)状の管路であり、その上流端は、溶液貯蔵タンク22の下部と同じ高さに配され、その下流端は、溶液貯蔵タンク22より低い高さに配されている。このため、スパイラル計量管32は、高所の上流端から低所の下流端へ溶液を流下させる。
【0020】
溶液貯蔵タンク22の下部には配管20Aが接続されており、スパイラル計量管32の上流端は、フレキシブル管34Uを介して配管20Aに接続されている。また、スパイラル計量管32の下流端には、フレキシブル管34Lを介して配管20Bが接続されている。この配管20Bは、スパイラル計量管32の下端から鉛直下方へ延びて略直角に湾曲している。
【0021】
重量測定装置30は、スパイラル計量管32を収容する収容部35と、収容部35を本体フレーム12に吊り下げて支持する吊架部36とを備えている。この吊架部36にはロードセル38が配されており、吊架部36に作用する鉛直方向の重量がロードセル38により測定される。ここで、スパイラル計量管32はフレキシブル配管34U、34Lを介して配管20A、20Bに接続されており、スパイラル計量管32の荷重は、配管20A、20Bによっては負担されていない。このため、スパイラル計量管32の全重量がロードセル38によって測定される。
【0022】
X線測定ブロック40には配管20Bの下流端と配管20Cの上流端とが接続されている。また、配管20Cの下流端はポンプ24が接続され、ポンプ24と電磁コック26とは、鉛直方向に延びる配管20Dにより接続されている。
【0023】
X線測定ブロック40の上面には蛍光X線を透過させるX線透過窓42が設けられ、蛍光X線測定装置50は、X線透過窓42の真上に配されている。蛍光X線測定装置50は、X線透過窓42からX線測定ブロック40内を流れる溶液に蛍光X線を投射し、溶液のカルシウムCaの含有率(重量%)を測定する。
【0024】
図2は、X線測定ブロック40を示す斜視図である。また、図3は、X線測定ブロック40を示す側断面図であり、図4(A)は、図3のA−A矢視図であり、図4(B)は、図3のB−B矢視図であり、図4(C)は、図3のC−C矢視図である。さらに、図5は、X線測定ブロック40を分解して示す側断面図であり、図6(A)は、図5のA−A矢視図であり、図6(B)は、図5のB−B矢視図である。
【0025】
これらの図に示すように、X線測定ブロック40は、外形が円盤形状又は円柱形状(即ち、平面形状が円形状)のブロック体である。このX線測定ブロック40の内部には、X線測定ブロック40を径方向に貫通する流路41が形成されている。また、X線測定ブロック40の上面には、流路41に面してX線透過窓42が設けられている。
【0026】
X線測定ブロック40は、ブロック体の外周部を構成する外周部43と、ブロック体の内周部を構成する内周部44と、ブロック体の上部に設けられX線透過窓42が形成された窓部45と、窓部45と内周部44との間に配されたX線透過膜46と、窓部45を外周部43の上面に固定する固定部48とを備える。外周部43は、内周部に円状の貫通孔43Aが形成された円環状のブロック体である。
【0027】
また、外周部43における流路41の上流端と下流端とにはそれぞれ、管継手部43Bと管継手B43Cとが形成されている。管継手部43Bは、円状の貫通孔、且つネジ孔であり、配管20Bの下流端に形成されたネジ部が螺合する。これにより、配管20BとX線ブロック40とが継手される。また、管継手部43Cは、貫通孔、且つネジ孔であり、配管20Cの上流端に形成されたネジ部が螺合する。これにより、配管20CとX線ブロック40とが継手される。
【0028】
また、外周部43の上面中央には、平面形状が円状の凸部43Dが形成されている。この凸部43Dの内周部には、円錐台形状の貫通孔43Eが形成されている。また、凸部43Dの外周面には、ネジ部が形成されている。
【0029】
内周部44は、円盤状の底部44Aと底部44Aの上面中央から上方へ突出した凸部44Bとを備えるブロック体である。凸部44Bの基端側は円柱状に形成されており、その全周が外周部43の貫通孔43Aと嵌合している。ここで、外周部43の貫通孔43Aの底部には、凸部44Bの基端部に沿って1周する溝が形成されており、この溝にシール部材47が嵌め込まれている。これにより、外周部43の貫通孔43Aの底部と凸部44Bの基端部との間が密封されている。
【0030】
また、凸部44Bには、その中心線より上流側にテーパ部44Cが形成され、その中心線より下流側にテーパ部44Dが形成され、これらの間には平坦な頂面44Eが形成されている。これにより、溶液流動方向と直交する水平方向から見た凸部44Bの形状は、等脚台形状となっている。ここで、凸部44Bの頂面44Eは、凸部43Dの貫通孔43Eに、X線透過窓42に対向して配されている。
【0031】
窓部45は、中央に円状のX線透過窓42が形成された円盤である。また、固定部48は、円環状の部材であり、その内周面には、凸部43Dのネジ部と螺合するネジ部が形成されている。ここで、窓部45の外周部と固定部48の内周部とには互いに嵌り合う段差部45A、48Aが形成されており、窓部45の段差部45Aが、固定部48の段差部48Aと凸部43Dとにより締め付けられるようになっている。
【0032】
また、凸部43Dの上面には、窓部45の外周部に沿って1周する溝が形成されており、この溝にシール部材49が嵌め込まれている。これにより、凸部43Dと窓部45との間が密閉されている。また、X線透過膜46は、凸部43Dと窓部45との間に挟み込まれており、X線透過窓42を塞いだ状態で、窓部45及び固定部48により凸部43D上に固定されている。
【0033】
図4(A)〜図4(C)に示すように、流路41の横径は、配管20Bから頂面44Eに至るまで、最小値から一旦拡大して最後に僅かに縮小し、また、頂面44Eから配管20Cに至るまで、一旦僅かに拡大して最後に最小になる。また、流路41の縦径は、配管20Bから頂面44Eに至るまで、一旦拡大して最後に最小になり、また、頂面44Eから配管20Cに至るまで、最小値から一旦拡大して最後に縮小する。
【0034】
ここで、図3に示すように、蛍光X線測定装置50の蛍光X線の照射位置は、凸部44Bの頂面44Eに合わされており、蛍光X線測定装置50は、流路41の縦径が最小となる位置を通過している溶液のカルシウムCaの含有率を測定する。
【0035】
図7は、演算装置60の概略構成を示すブロック図である。この図に示すように、演算装置60は、演算プログラムや各種パラメータ等を記憶した記憶部62と、ロードセル38及び蛍光X線測定装置50から出力される計測値を入力する入力部64と、記憶部62から演算プログラムや各種パラメータを読み出し、入力部64が入力した計測値に基づいて、溶液のセメントの含有率等を演算する演算部66と、演算部66の演算結果を表示する表示部68とを備えている。
【0036】
記憶部62には、上記各種パラメータとして、測定対象のセメントのカルシウムの含有率Ccaと、セメントの比重(≒単位体積重量)SGcと、溶液が空の状態でのスパイラル計量管32の重量W1と、スパイラル計量管32の容積Voとを記憶している。
【0037】
図8(A)、(B)は、溶液分析装置10を用いた溶液の分析方法を説明するためのフローチャートである。溶液分析装置10では、定量の溶液を循環管路20で等速度で所定時間Tの間、循環させ、その所定時間Tの間、重量測定装置30による重量W2の測定と、蛍光X線測定装置50によるカルシウム含有率Pcaの測定とを連続して行う。
【0038】
演算部66は、下記(1)式により溶液の単位体積重量UW0を演算する(ステップ1)。ここで、W2は、スパイラル計量管32とその内部の溶液との総重量であり、上記所定時間Tの間に得られた重量W2の多数の測定値を平均化した値である。また、W1は上述のとおり溶液が空の状態でのスパイラル計量管32の重量であり、Voは上述のとおりスパイラル計量管32の容積である。
UW0=(W2−W1)/Vo ・・・(1)
【0039】
また、演算部66は、下記(2)式により溶液のセメントの含有率Pcを演算し、下記(3)式により体積V0の溶液中のセメントの重量Wcを演算する(ステップ2、3)。ここで、Pcaは、上記所定時間Tの間に得られた溶液のカルシウム含有率Pcaの多数の測定値を平均化した値である。また、Ccaは、上述のとおり、セメントのカルシウム含有率である。
Pc=Pca/Cca ・・・(2)
Wc=UW0×Pc ・・・(3)
【0040】
また、演算部66は、下記(4)式により体積V0の溶液中のセメントの体積Vcを演算する(ステップ4)。ここで、SGcは上述のとおり、セメントの比重であり、セメントの単位体積重量の近似値である。
Vc=Wc/SGc ・・・(4)
【0041】
また、演算部66は、下記(5)式及び下記(6)式により体積V0の溶液中のセメント以外(土砂を含む水)の体積Vws、重量Wwsを演算する(ステップ5、6)。ここで、Voは上述のとおり、スパイラル計量管32内の容積であり、即ち、スパイラル計量管32内の溶液の体積である。
Vws=Vo−Vc ・・・(5)
Wws=UW0−Wc ・・・(6)
【0042】
また、演算部66は、下記(7)式により、溶液中の土砂を含む水の単位体積重量(≒比重)UWwsを演算する(ステップ7)。
UWws=Wws/Vws ・・・(7)
【0043】
以上により、溶液のセメントの含有率Pcと、溶液中の土砂を含む水の単位体積重量(≒比重)UWwsとを求めることができる。
【0044】
次に、作業者による処理及び演算方法について説明する。図8(B)のフローチャートに示すように、まず、単位体積量の溶液を循環管路20から取り出して不図示の乾燥装置に入れて乾燥させ、乾燥後のセメントと土砂との重量Wcsを不図示の重量測定装置で測定する(ステップ11)。次に、下記(8)式及び下記(9)式により土砂の重量Wsと水の重量Wwとを演算する(ステップ12)。ここで、Wcは、上記(3)式により演算したセメントの重量であり、Wwsは、上記(6)式により演算した溶液中の土砂を含む水の重量である。
Ws=Wcs−Wc ・・・(8)
Ww=Wws−Ws ・・・(9)
以上により、溶液中のセメントと土砂と水との重量比(Wc:Ws:Ww)を求めることができる。
【0045】
ここで、本実施形態に係る溶液分析装置10では、循環管路20で溶液を流動させながら、ロードセル38でスパイラル計量管32の重量を測定し、また、蛍光X線測定装置50で管内の溶液のカルシウム含有率を測定する。これにより、溶液分析装置10では、循環管路20で溶液を流動させている間、スパイラル計量管32の重量と溶液のカルシウム含有率とを繰り返し測定することができる。これにより、溶液の単位体積重量UW0やセメントの含有率Pcを得るための多数の測定データを採集することができ、溶液の分析の精度を向上させることができる。
【0046】
また、本実施形態に係る溶液分析装置10では、蛍光X線測定装置50が、X線測定ブロック40の上側に配され、X線透過膜46が、蛍光X線測定装置50のX線投射口と上下に対向して設けられており、蛍光X線測定装置50が、X線透過膜46を通して、X線測定ブロック40内の溶液のカルシウム含有率を測定する。これにより、X線測定ブロック40において溶液が漏洩した場合に、溶液が蛍光X線測定装置50にかかることを防止でき、このような場合に蛍光X線測定装置が故障することを防止できる。
【0047】
ここで、セメントの比重は水より大きいため、溶液中でセメントは沈殿する。このため、X線測定ブロック40内のX線照射領域における縦径が大きくなるほど、X線照射領域における底側のセメントの濃度が高くなる反面、X線照射領域における上側のセメントの濃度が低くなる。従って、X線照射領域におけるセメントの濃度が不均一になり、溶液のカルシウム含有率を精度よく測定することができなくなる。
【0048】
これに対して、本実施形態に係る溶液分析装置10では、X線測定ブロック40における流路41の縦径は、X線の照射点においてその上流側及び下流側よりも小さくなるように設定されている(図3及び図4(A)〜(C)参照)。これにより、X線照射領域におけるセメントの濃度の均一性を向上させることができ、溶液のカルシウム含有率の測定精度を向上させることができる。
【0049】
また、X線の照射領域における流路41の横径が、循環路20の配管20A〜Dの内径より広く設定されていることにより、X線の照射領域における流路断面積の減少を抑制できる。従って、X線の照射領域における溶液の流速の増加を抑制でき、X線透過膜46に作用する流圧の上昇を抑制できる。
【0050】
また、蛍光X線測定装置50のX線投射口と溶液の液面との距離が一定でない場合、溶液のカルシウム含有率の測定精度が低下する。これに対して、本実施形態に係る溶液分析装置10では、X線照射領域での溶液の液面を、X線透過膜46の高さに維持することができるため、溶液のカルシウム含有率の測定精度を向上させることができる。
【0051】
また、本実施形態に係る溶液分析装置10では、循環路20で溶液を循環させる。これにより、溶液の単位体積重量やセメントの含有率を得るための測定データをより一層多く採集することができ、溶液の分析の精度をより一層向上させることができる。また、循環路20で溶液の循環流を形成して溶液を撹拌することにより、溶液中でのセメントの沈殿を抑制することができ、溶液のカルシウム含有率の測定精度を向上させることができる。
【0052】
また、本実施形態に係る溶液分析装置10では、スパイラル計量管32の上流端及び下流端をそれぞれ、フレキシブル配管34Uにより配管20Aに、フレキシブル配管34Lにより配管20Bに接続している。これにより、スパイラル計量管32を、配管20A及び配管20Bから独立して吊架可能に構成し、所定容積のスパイラル計量管32の吊架重の測定を可能にしている。
【0053】
また、スパイラル計量管32を螺旋状の管路としたことにより、溶液の重量測定区間を、配管の設置スペースの拡張を抑えたうえで延長することができる。従って、溶液分析装置10の大型化を抑えたうえで、溶液の単位体積重量の測定精度を向上させることができる。
【0054】
また、本実施形態に係る溶液分析装置10では、記憶部62が、溶液が空の状態でのスパイラル計量管32の重量W1と、スパイラル計量管32の容積V0とを記憶しており、演算部66は、記憶部62に記憶された重量W1及び容積V0と、ロードセル38により測定されたスパイラル計量管32の重量W2とに基づいて、溶液の単位体積重量UW0を演算する。
【0055】
また、記憶部62は、測定対象の溶液に含有されているセメントのカルシウム含有率Ccaを記憶しており、演算部66は、演算した溶液の単位体積重量UW0と、蛍光X線測定装置50により測定された溶液のカルシウム含有率Pcaとに基づいて、溶液のセメントの含有率Pcを演算する。これにより、体積V0の溶液中のセメントの重量Wc及び体積Vcや、体積V0の溶液中のセメント以外の成分、即ち土砂を含む水の重量Wws及び体積Vws等を求めることができる。
【0056】
また、演算部66は、演算した溶液の単位体積重量UW0及び溶液のセメントの含有率Pcに基づいて、溶液のセメント以外の成分、即ち土砂を含む水の単位体積重量(≒比重)UWwsを演算する。ここで、余剰縣濁液の再利用にあたっては、縣濁液の成分が問題になる。これまで説明した分析により、セメントの含有率Pcが低下していれば、セメントを追加して、その含有率が設計配合値となるように調整する。
【0057】
また、土砂を含む水の単位体積重量UWwsは、水の単位体積重量1.0に土砂の単位体積重量を加えたものになるが、再利用上問題となる量を予め求めておき、その値を超えた場合、フィルター処理等を施して、土砂の低減を図る。そして、実際に問題となる土砂の重量を正確に把握したい場合には、図8(B)のフローを実施すればよい。
【0058】
なお、本実施形態では、循環管路20で溶液を循環させたが必須ではなく、スパイラル計量管32とX線測定ブロック40とに溶液を一回通過させるだけでもよい。例えば、溶液が一方向に流れる主管路から分流して主管路に戻る分流管路に、スパイラル計量管32とX線測定ブロック40とを設けてもよい。
【0059】
また、本実施形態では、演算装置60による処理は、溶液中の土砂を含む水の単位体積重量UWwsの演算で終了するが、溶液の土砂及び水のそれぞれの含有率の演算まで継続してもよい。この場合、土砂の比重を記憶部62に記憶させておき、この土砂の比重や、溶液中の土砂を含む水の単位体積重量(≒比重)UWwsや、溶液の単位体積重量UW0等に基づいて、体積V0の溶液の土砂及び水それぞれの重量を演算することにより、溶液の土砂及び水のそれぞれの含有率を求めることができる。
【0060】
また、本実施形態では、超高圧噴流工法で発生した余剰縣濁液を分析対象の溶液としたが、セメントを含有する溶液であれば、本発明の溶液分析装置の分析対象の溶液となり得る。また、溶液のカルシウム含有率を測定する装置として、蛍光X線測定装置50を用いたが、カルシウム含有率を測定できる他の成分測定装置を用いてもよい。
【符号の説明】
【0061】
10 溶液分析装置、12 本体フレーム、20 循環管路(溶液管路)、20A〜D 配管、22 溶液貯蔵タンク、24 ポンプ、26 電磁コック、30 重量測定装置、32 スパイラル計量管(重量測定部)、34U、34L フレキシブル配管(可撓性の管材)、35 収容部、36 吊架部、38 ロードセル(重量測定装置)、40 X線測定ブロック(成分測定部)、41 管路、42 X線透過窓、43 外周部、43A 貫通孔、43B、43C 管継手部、43D 凸部、43E 貫通孔、44 内周部、44A 底部、44B 凸部、44C、44D テーパ部、44E 平坦部、45 窓部、45A 段差部、46 X線透過膜、47 シール部材、48 固定部、48A 段差部、49 シール部材、50 蛍光X線測定装置、60 演算装置、62 記憶部、64 入力部、66 演算部、68 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメントを含有する溶液を分析する溶液分析装置であって、
前記溶液が流動する管路であり、該管路における所定容積の一部を上流側及び下流側から独立して荷重を支持できるように構成した重量測定部を有する溶液管路と、
前記重量測定部の重量を測定する重量測定装置と、
前記溶液管路に介装された成分測定部と、
前記成分測定部を流れる前記溶液のカルシウム含有率を測定する成分測定装置と、
を備える溶液分析装置。
【請求項2】
前記成分測定装置は、前記成分測定部の上側に配され、下方の前記成分測定部に向けてX線を投射するX線成分測定装置であり、
前記成分測定部は、前記X線成分測定装置のX線投射口と上下に対向してX線透過膜が配されており、
前記成分測定部内の縦径は、X線の照射点においてその上流側及び下流側よりも小さくなるように設定されている請求項1に記載の溶液分析装置。
【請求項3】
前記溶液管路は、前記溶液が循環する溶液循環管路である請求項1又は請求項2に記載の溶液分析装置。
【請求項4】
前記重量測定部は、上流端と下流端とがそれぞれ可撓性の管材により前記溶液管路の上流側と下流側とに接続され、前記重量測定装置により荷重を受け止められていると共に、螺旋状の管路として形成されている請求項1から請求項3までの何れか1項に記載の溶液分析装置。
【請求項5】
前記溶液が空の状態での前記重量測定部の重量と、前記重量測定部の容積と、セメントのカルシウムの含有率とを記憶する記憶部と、
前記重量測定装置により測定された前記重量測定部の重量と、前記記憶部により記憶された前記溶液が空の状態での前記重量測定部の重量、及び前記重量測定部の容積とに基づいて、前記溶液の単位体積重量を演算し、演算した前記溶液の単位体積重量と、前記成分測定装置により測定された前記溶液のカルシウムの含有率と、前記記憶部により記憶されたセメントのカルシウムの含有率とに基づいて、前記溶液のセメントの含有率を演算する演算部と、
を備える請求項1から請求項4までの何れか1項に記載の溶液分析装置。
【請求項6】
前記演算部は、演算した前記溶液の単位体積重量及び前記溶液のセメントの含有率に基づいて、前記溶液のセメント以外の成分の単位体積重量又は比重を演算する請求項5に記載の溶液分析装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−122890(P2012−122890A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−274805(P2010−274805)
【出願日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【出願人】(510225971)株式会社イズミエンジニアリング (2)
【出願人】(591247798)原工業株式会社 (20)
【Fターム(参考)】