説明

溶湯処理容器

【課題】長期に亘り連続使用できる溶湯処理容器を提供すること。
【解決手段】本発明の溶湯処理容器3は、溶湯を入れる取鍋2と、取鍋の上に載せて取鍋の開口部を塞ぐ取鍋蓋1からなり、取鍋蓋1の下端部に取鍋蓋の外縁から内側に伸びる蓋リング15を取り付け、取鍋2の上面には取鍋の外縁から内側に伸びる取鍋リング23を取り付けている。
これにより、耐火物に付着した地金が、耐火物から剥がれるときに耐火物を引き剥がそうとしても、取鍋蓋内の耐火物11を蓋リング15が下から支持し、取鍋内の耐火物21を取鍋リング23が上から押さえるので、地金だけが剥がれて耐火物は引き剥がされない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶湯を処理する際に使用する溶湯処理容器に関し、特に溶湯の黒鉛球状化処理や脱硫処理の際に用いられる溶湯処理容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、溶融鋳鉄を黒鉛球状化処理する場合や溶銑の脱硫処理を行う場合、それら溶融鋳鉄や溶銑(以下、溶湯という)の処理容器として、取鍋と取鍋蓋がよく用いられてきた。取鍋と取鍋蓋は、ともに鉄皮の内側に耐火物を張り付けた耐熱構造となっており、溶湯を入れた取鍋の上に取鍋蓋を載せて、取鍋の開口部を塞ぎ、溶湯を処理する際の保持容器として使われる。
取鍋蓋で取鍋の開口部を塞ぐのは、黒鉛球状化剤や脱硫剤を取鍋内の溶湯に添加すると、溶湯がそれら添加剤と反応して激しく波打ち、取鍋の開口部から外へ飛び出す恐れがあるからである。
【0003】
図7は、ダクタイル鋳鉄を溶製するための黒鉛球状化処理の一例として、ワイヤーインジェクション法による処理を示したものである。この方法では、黒鉛球状化剤として、Mgを含有するワイヤー(以下、Mgワイヤーという)が用いられる。
この図に示される黒鉛球状化処理設備は、Mgワイヤー設備と呼ばれ、主に、溶湯処理容器3とワイヤーコイル5、ワイヤー供給装置4から構成されている。また、溶湯処理容器3は、取鍋2と取鍋蓋1から構成されている。
【0004】
溶湯の黒鉛球状化処理は、溶湯22を入れた取鍋2の上に取鍋蓋1を載せてから、ワイヤー供給装置4を起動させ、ワイヤーフィーダ41内部の送りローラー42を回して行う。
送りローラー42の回転により、ワイヤーコイル5からMgワイヤー51が引き出されると共に、Mgワイヤー51の先端が、ガイドパイプ43と取鍋蓋1の貫通孔10を通って、取鍋内の溶湯22の表面、すなわち湯面へ、連続的に射し込まれる。
【0005】
Mgワイヤー51が溶湯22に投入されると、すぐに、ワイヤーに含有されるMgが溶湯に添加されて反応し、溶湯中に含まれる黒鉛の球状化が促進される。
このMgの添加反応により、湯面は激しく波打ち、溶湯の飛散が起こって、溶湯の一部が取鍋や取鍋蓋の耐火物21,11に付着する。
【0006】
黒鉛の球状化が完了すると、送りローラー42の回転を止めてMgワイヤー51の投入を終え、続いて、チェーン13を巻いて取鍋蓋1を取鍋2の上に吊り上げる。
【0007】
ここで、取鍋2と取鍋蓋1は、鉄皮24,17の内側に耐火物21,11を張り付けた二層構造となっているが、黒鉛球状化処理の際に耐火物21,11に付着した溶湯が、そのまま冷えて地金61となって、耐火物21,11の一部を引き剥がしながら落下することがある。
【0008】
特に耐火物の損傷が激しいのは、取鍋蓋を取鍋に載せたときに取鍋と取鍋蓋が接触する部分である。すなわち、取鍋蓋の下端と取鍋の上端の損傷が激しい。
これは、この部分に地金が付着した状態で、取鍋蓋を吊り上げて取鍋から引き離したときは、取鍋側にも付着している地金61が取鍋蓋の耐火物を引き剥がすためと考えられる。
一部の耐火物が剥がれて欠損部62ができ、それが広がって損傷が進むと、ほかの部分が健全であっても、損傷部分を補修するために、取鍋蓋や取鍋を取り替えなければならない。
【0009】
このような溶湯処理容器の損傷を防ぐために、取鍋蓋を鋳鉄製又は水冷構造の金属製にする技術が開示されている。(特許文献1)
これは、取鍋蓋を鋳鉄製又は水冷構造の金属製にすることで、取鍋蓋の内面を滑らかにして溶湯の付着が起こりにくくし、その上、溶湯が付着して出来る地金を急冷し、地金が成長する前に自然に剥がれ落ちる様にしたものである。
また、取鍋蓋が金属のみから成り、耐火物をライニングしていないので、耐火物が部分的に剥がれ落ちることも無い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004−238675号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、鋳鉄製の取鍋蓋は、耐火物をライニングしていないので、溶湯からの放射熱を直接受けて、赤熱される。そのまま使い続けると、割れや亀裂が発生して強度が低下するため、長期間の連続使用には耐えられない。このような割れや亀裂が発生すると、部分的な補修では済まず、取鍋蓋全体の更新が必要となる。
また、取鍋蓋を水冷構造にすると、蓋自体の構造が複雑となる上、水冷用の配管も必要となり、設備全体が複雑化する。
本発明は、耐火物の損傷が少なく長期間続けて使用することができ、その上、損傷部分が発生しても、全体の更新は必要なく、部分的な補修で済む溶湯処理容器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の溶湯処理容器は、黒鉛球状化や脱硫の処理を施す溶湯を入れる取鍋と、取鍋の上に載せて取鍋の開口部を塞ぐ取鍋蓋からなる溶湯処理容器であって、取鍋と取鍋蓋は、鉄皮の内側に耐火物を取り付けて形成されており、取鍋蓋の下端部には、取鍋蓋の外周から内側に伸びて取鍋蓋の耐火物を下から支持する受け部材が設けられ、取鍋蓋を取鍋の上に載せたときに、受け部材の下面が取鍋の上面に接触するようにしたのである。
【0013】
この溶湯処理容器によれば、取鍋蓋の下部のうち、特に地金が出来やすく耐火物の損傷が起こりやすい下端部に、溶湯が付着して地金ができた場合でも、受け部材が耐火物を下から支持しているので、耐火物の剥がれが発生しない。
【0014】
また、前記受け部材を、取鍋の耐火物の内面よりも内側に突出しないようにすることもできる。
耐火物よりも内側に突出しなければ、受け部材が溶湯の熱に直接さらされることが無いので、取鍋蓋が熱の影響を受けにくい。
【0015】
前記受け部材を、取鍋蓋の下端部を一周するリング形状とすることもできる。
受け部材の形状を、取鍋蓋の下端部を一周するリング形状とすれば、取鍋蓋下部の全周の耐火物を受け部材が下から支持するので、全周に亘り、耐火物剥がれを防止できる。
【0016】
また、取鍋の外周から内側に伸びて取鍋の耐火物を上から押さえる被せ部材を取鍋の上面に取り付け、取鍋蓋を取鍋の上に載せたときに、受け部材の下面が被せ部材の上面に接触するようにすることもできる。
被せ部材が取鍋上部の耐火物を上から押さえるので、取鍋上部の耐火物剥がれを防止できる。
【0017】
さらに、被せ部材の形状を、取鍋の上面に沿って一周するリング形状とすることができる。
被せ部材の形状を、取鍋の上面に沿って一周するリング形状とすれば、取鍋上部の全周の耐火物を上から押さえるので、全周に亘り、耐火物剥がれを防止できる。
【発明の効果】
【0018】
この発明は、以上のように、取鍋蓋の下面に受け部材を設けて耐火物の剥がれを少なくしたので、溶湯処理容器を長期間続けて使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施形態におけるMgワイヤー設備の説明図である。
【図2】本発明の第1の実施形態における溶湯処理容器の縦断面図である。
【図3】同、A−A矢視図である。
【図4】本発明の他の実施形態における取鍋蓋の縦断面図であり、(a)は第2の実施形態に対応し、(b)は第3の実施形態に対応する。
【図5】本発明の第4の実施形態における溶湯処理容器の縦断面図である。
【図6】同、B−B矢視図である。
【図7】従来のMgワイヤー設備の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の各実施形態を、図面に基づいて説明する。なお、前述したMgワイヤー設備と共通する部材については同じ符号を付し、説明を省略する。
まず、第1の実施形態について、図1〜図3を使って説明する。
【0021】
図1は、本発明の第1の実施形態におけるMgワイヤー設備を示し、このMgワイヤー設備は、溶湯処理容器3とワイヤー供給装置4、ワイヤーコイル5から構成される。
溶湯処理容器3は、円筒形の取鍋2の上に円筒形の取鍋蓋1を被せた密閉容器である。
ワイヤーコイル5は、Mgを主に含有する一本のワイヤー(金属線材:Mgワイヤー)をコイル状に巻いた物で、ワイヤーの一端を引っ張ると順次巻きが解けてワイヤーが引き出される構造となっている。
ワイヤー供給装置4は、ワイヤーフィーダ41と送りローラー42、ガイドパイプ43から成っている。
【0022】
ワイヤーコイル5から引き出されるMgワイヤー51は、このワイヤーフィーダ41内の4基の送りローラー42の間に挟まれるとともに、ガイドパイプ43内を通って、溶湯処理容器3へと伸びている。送りローラー42を回転させると、Mgワイヤー51が溶湯処理容器3の方へ連続的に送り出される仕組みとなっている。
【0023】
図2と図3は、本発明の第1の実施形態における溶湯処理容器を示し、溶湯処理容器3は取鍋蓋1と取鍋2からなり、取鍋1と取鍋蓋2は、何れも、鉄皮17,24の内側に耐火物11,21をライニングした断熱構造となっている。
耐火物11,21は、共にアルミナ系材のものを使用している。
【0024】
取鍋蓋1は、円筒形の側壁部19と、円盤状の天井部19’とからなり、何れの部分も、鉄皮17の内側に厚み100mmの耐火物11を張り付けた二層構造になっている。
鉄皮17は、厚さ25mmの鋼板で出来ており、外径寸法を取鍋に合わせた円形鋼板の下に、同じく鋼板を曲げてつくった管状体を同心で溶接して、形作られている。
天井部19’の中央付近には、Mgワイヤー51とガイドパイプ43を通す貫通孔10が設けられている。
また、天井部19’の上面には、チェーンを掛ける吊り手12が二カ所に取り付けられており、チェーン13を巻き上げると、取鍋蓋1が吊り上げられる仕組みとなっている。
【0025】
側壁部19の鉄皮の下端には、円形の蓋リング15が取鍋蓋と同心で溶接されている。
蓋リング15は、既述の受け部材の一実施形態である。
この蓋リング15は、厚みが25mmで、幅W1が160mm程度の鋼材で、リングの内径を耐火物11,21の内径と合わせ、リングの外径は側壁部19の外径よりも少し大きくなっている。そのため、蓋リング15の外側が、側壁部19の外面より外に突出している。
このリングの突出部16の上面と側壁部19外面との間に、補強用の縦リブ14を取り付け、蓋リング15と側壁部19外面との接続をより強固にし、蓋リング15の変形も抑えている。縦リブ14は、取鍋蓋1の周方向に一定間隔で取り付けられている。
【0026】
取鍋2は、円筒形の側壁部25と、円盤状のボトム部26とから成り、上に開口している。
側壁部25とボトム部26の何れの部分も、取鍋蓋1と同様に、鉄皮24の内側に厚み100mmの耐火物21を張り付けた二層構造になっている。
側壁部25外面とボトム部26下面の鉄皮24は、厚さ12〜16mm程度の鋼板で出来ており、溶接などで強固に一体化されている。
側壁部25の上端には、円形の取鍋リング23が設けられている。
【0027】
取鍋リング23は、既述の被せ部材の一実施形態である。
この取鍋リング23は、側壁部25の鉄皮の上端に、取鍋2と同心で溶接されている。
取鍋リング23の内径は、耐火物21の内径よりは大きく、側壁部25の外径よりは小さく設定されている。
このため、側壁部25の上端面、すなわち取鍋の上面は、取鍋リング23の内側に耐火物21の内側部分が露出した状態となっている。
取鍋リング23の外径は、側壁部25の外径よりも若干大きく設定されている。そのため、取鍋リング23の外側が、側壁部25の外面より少し外側に突出した状態となっている。
【0028】
蓋リング15の幅W1が、取鍋リング23の幅W2よりも広くなっており、取鍋蓋1を取鍋2に載せたときに、蓋リング15の下面が、取鍋リング23の上面に重なるだけでなく、取鍋リング23内側の耐火物21の上端にも重なる。
【0029】
続いて、図1に示すMgワイヤー設備の動作を説明する。
吊り上げた取鍋蓋1の下に、溶湯22の入った取鍋2を搬入する。このとき、取鍋蓋1と取鍋2の軸心が合うように、出来るだけ、取鍋蓋1の真下に取鍋2を搬入する。搬入は、図示しない搬送装置を使って行う。
取鍋2の搬入が終わると、チェーン13を降ろして取鍋蓋1を取鍋2の上に被せる。
被せ終えると、蓋リング15は、耐火物21の内面から内側には突出しないので、蓋リング15の下面が溶湯22の放射熱に直接曝されることがない。
【0030】
ワイヤー供給装置4を起動させ、ワイヤーフィーダ41内の送りローラー42を回して、ワイヤーコイル5からMgワイヤー51を引き出し、Mgワイヤー51を、ガイドパイプ43の先から取鍋蓋1の貫通孔10を通して取鍋2の溶湯22内へ、軸線方向に連続的に投入していく。
【0031】
溶湯22に投入されたMgワイヤー51は、すぐに溶湯中の黒鉛の球状化反応に使われる。この反応により、湯面は激しく波打ち、溶湯22の飛散が起こり、溶湯22の一部が取鍋2や取鍋蓋1の耐火物に付着する。
【0032】
黒鉛の球状化反応が完了すると、送りローラー42を停止させ、続いて、チェーン13を巻き上げて、取鍋蓋1を上昇させて取鍋から引き離す。
このとき、取鍋蓋1と取鍋2の合わせ面付近に付着した溶湯が、合わせ面を跨いで取鍋蓋1と取鍋2の両方に付着する地金になっていると、取鍋蓋1の上昇に伴い、その地金は、取鍋蓋1か取鍋2のどちらか一方と分離する。
地金の付着力が大きい場合、分離するときに耐火物11,21の一部を引き剥がす大きな力が働くが、取鍋リング23や蓋リング15が、耐火物11,21を下から支持したり、上から押さえているため、耐火物11,21は引き剥がされない。
【0033】
すなわち、耐火物に付着した地金が、耐火物から剥がれるときに耐火物を引き剥がそうとしても、取鍋蓋内の耐火物11を蓋リング15が下から支持し、取鍋内の耐火物21を取鍋リング23が上から押さえるので、地金だけが剥がれて耐火物は引き剥がされない。
【0034】
取鍋蓋1が上限まで上昇したら、溶湯入りの取鍋2を次の工程に搬送する。
【0035】
図4(a)に、本発明の第2の実施形態における取鍋蓋を示す。この取鍋蓋は、側壁部19の外形を、せっ頭錐形状としている点が前述の取鍋蓋と異なる。
【0036】
図4(b)に、本発明の第3の実施形態における取鍋蓋を示す。この取鍋蓋は、側壁部19を無くし、取鍋リング23が天井部19’の耐火物下面と合うように側面の鉄皮17に取り付けられている。
【0037】
図5と図6に、本発明の第4の実施形態における溶湯処理容器3(取鍋蓋1と取鍋2)の要部を示す。
取鍋2には、溶湯の出湯口27が形成されている。この出湯口27は、取鍋2の側壁部25上部の鉄皮一カ所を外側に折り曲げると共に、耐火物21の厚みを減少させて形成されている。
取鍋リング23は、取鍋2の上端を一周しており、出湯口27に臨む部分だけは幅を狭くしている。取鍋リング23は、その外縁が取鍋2上面の外周より外側に若干はみ出た状態で、取鍋2の鉄皮24上端に溶接されている。
【0038】
取鍋蓋1は、主に、円筒形の側壁部19と、円盤状の天井部19’とからなり、何れの部分も、鉄皮17の内側に厚み100mmの耐火物11を張り付けた二層構造になっている。
鉄皮17は、厚さ25mmの鋼板で出来ており、取鍋2の開口部と外径寸法を合わせた円形鋼板の下に、同じく鋼板を曲げてつくった管状体を同心で溶接して形成されている。
側壁部19の下部のうち、取鍋2の出湯口27に臨む部分は、出湯口27の形に合わせて、外側に膨らみ、鍔部18を形成している。
鍔部18は、図5に示すように縦の厚みが天井部19’と同じで、また、図6に示すように、平面視の外形が取鍋2上面の出湯口27と相似形状となっている。
【0039】
側壁部19外面の下端には、蓋リング15が溶接されている。
蓋リング15は、その中心を側壁部19外面の軸心に合わせて(同心で)溶接されている。
この蓋リング15は、厚みが25mmで、リングの内周面を耐火物11,21の内面と合わせ、リングの外周面は全周に亘り、側壁部19と鍔部18の外周で構成される取鍋蓋1下部の外周より外側に一定寸法だけ突出した状態となっている。よって、図6に示すように、蓋リング15は、出湯口27に臨む部分のみ、その幅Wが広くなっている。
このリング外周側の突出部16の上面と、側壁部19外面及び鍔部18外面との間に、補強用の縦リブ14を取り付け、側壁部19や鍔部18と蓋リング15との接続をより強固にし、蓋リング15の変形も抑えている。
縦リブ14は、蓋リング15の周方向に一定間隔で取り付けられている。
【0040】
以上、溶湯処理の一例として、溶融鋳鉄の黒鉛球状化処理を取り上げて実施形態を説明したが、本発明の溶湯処理容器は、他に溶銑の脱硫処理においても用いられる。
例えば、取鍋蓋1の貫通孔10にランスを挿入して、ランスの一端を取鍋2内の溶銑に浸けた状態とし、そのランスを通して、Mg系の脱硫剤(粉末)を溶銑中に吹き込んで脱硫処理を行う場合も、黒鉛球状化処理と同様に、Mgの突沸現象により、溶湯処理容器3内で溶銑が飛散し、耐火物11,21の表面に地金をつくる。
このような脱硫処理においても、上記の各実施形態の溶湯処理容器を使用すれば、黒鉛球状化処理の場合と同様に、耐火物剥がれを防止することができる。
【符号の説明】
【0041】
1 取鍋蓋
2 取鍋
3 溶湯処理容器
4 ワイヤー供給装置
5 ワイヤーコイル
10 貫通孔
11、21 耐火物
12 吊り手
13 チェーン
14 縦リブ
15 蓋リング(受け部材)
16 突出部
17、24 鉄皮
18 鍔部
19、25 側壁部
19’ 天井部
22 溶湯
23 取鍋リング(被せ部材)
26 ボトム部
27 出湯口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
黒鉛球状化や脱硫の処理を施す溶湯を入れる取鍋と、取鍋の上に載せて取鍋の開口部を塞ぐ取鍋蓋からなる溶湯処理容器であって、
取鍋と取鍋蓋は、鉄皮の内側に耐火物を取り付けて形成されており、取鍋蓋の下端部には、取鍋蓋の外周から内側に伸びて取鍋蓋の耐火物を下から支持する受け部材が設けられ、取鍋蓋を取鍋の上に載せたときに、受け部材の下面が取鍋の上面に接触するようにしたことを特徴とする溶湯処理容器。
【請求項2】
前記受け部材が取鍋の耐火物の内面よりも内側に突出しないことを特徴とする請求項1に記載の溶湯処理容器。
【請求項3】
前記受け部材が取鍋蓋の下端部を一周するリング形状であることを特徴とする請求項1または2に記載の溶湯処理容器。
【請求項4】
取鍋の上面に、取鍋の外周から内側に伸びて取鍋の耐火物を上から押さえる被せ部材が取り付けられており、取鍋蓋を取鍋の上に載せたときに、受け部材の下面が被せ部材の上面に接触するようにしたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の溶湯処理容器。
【請求項5】
前記被せ部材が、取鍋の上面に沿って一周するリング形状であることを特徴とする請求項4に記載の溶湯処理容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−156561(P2011−156561A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−20005(P2010−20005)
【出願日】平成22年2月1日(2010.2.1)
【出願人】(000142595)株式会社栗本鐵工所 (566)
【Fターム(参考)】