説明

溶着装置

【課題】容器などの被着物に、蓋材などの溶着物を溶着させるのに、受型や受台を使用せず、また、被着物が変形しやすいものであっても、溶着不良が起こらずきれいに溶着することの出来る溶着装置を提供する。
【解決手段】被着物に溶着物を溶着する溶着装置であって、被着物に接した溶着物を高周波誘導で加熱する加熱手段と、該加熱手段を前記溶着物へ押圧する押圧手段と、前記被着物が押圧によって変形したときに、それに対応して、加熱手段の向きを変える傾き調節手段を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶着装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
溶着装置は、容器の開口部を塞ぐフィルム蓋をそのシール層を溶融させて接着して密封する用途や、容器の開口部にキャップと筒状の注出路とその根元に連続するフランジからなるスパウトからなる口栓のスパウトのフランジをそのシール層を溶融させて接着して口栓を取り付けることに用いられている。
【0003】
容器の開口部を塞ぐフィルム蓋をそのシール層を溶融させて接着して密封する用途には、一般的には、熱板を用いた熱板シールが多く用いられている。例えば、容器の開口部にフランジがある場合は、このフランジ部を受型で受けて、フィルム蓋などの蓋部材をのせ上から熱板を押し当てて、シール層を溶融させて接着し密封することができる。
【0004】
しかし、口栓のスパウトのフランジのように肉厚の場合は、ほとんどが熱溶融性樹脂単体で成形されているので、容器に触れる面より熱板に触れる面が先に溶けてしまうので、きちんと溶着することが出来ない。
【0005】
このような口栓を取り付けるには、超音波溶着の技術がある。これは、アンビルと呼ばれる受け台と、ホーンと呼ばれる超音波振動部材の間に、容器の開口部の口栓取り付け部分と口栓を重ねて挟み、圧着しつつ超音波の振動を与え溶着する装置がある。この装置は、ゲーベルトップ型の液体紙容器に口栓を溶着するのによく用いられている。
【0006】
また、高周波誘導加熱により、口栓やフィルム蓋などの蓋部材を取り付ける方法もある。この方法の場合、金属が高周波誘導加熱するため、口栓のスパウトのフランジ部やフィルム蓋の層構成にアルミニウム箔などの金属を含む多層構成としておき、高周波誘導加熱装置のシールヘッドをフランジやフィルム蓋に接触、または、近接させて、シールヘッドに高周波を通し、金属に渦電流を発生させ、ジュール熱によって金属を発熱させ、シール層を溶融させて接着し密封するものである。
【0007】
このような高周波誘導加熱を利用した溶着装置としては、ガラス瓶のような容器の口縁部に対し蓋の周縁部を押圧する押圧手段と、蓋の周縁部を加熱する加熱手段とを備え、加熱手段が、高周波誘導加熱装置であるヒートシール装置がある。(特許文献1)
公知文献を以下に示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平1−254506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前述の溶着装置では、押圧した時に圧力を受ける受型や受け台が必要であったり、また、容器自体が圧力を受けても容易に変形しないものであったりするものであって、受型や受け台を当てることが出来ず、容器が変形しやすいものである場合には、使用できないものである。
【0010】
例えば、液体紙容器で、成形後に開口部に蓋部材を取り付ける場合など、例として筒状の胴部の両端に底部材と天部材が取り付けられた液体紙容器で天部材の一隅寄りに開口部からなる飲み口が設けられ、内容物を充填後、フィルム蓋や口栓などの蓋材を取り付ける場合は、加熱手段を押し当てると、容器の飲み口の周辺が押し下げられ、特に飲み口が天部材の中央にない場合には、飲み口の周辺が傾いてしまい、加熱手段と密着しないため、均等な加熱が出来ず、また、容器と蓋部材の密着も悪くなり、溶着不良や、溶着してもしわなどが出来てきれいに仕上がらない。
【0011】
本発明は、容器などの被着物に、蓋材などの溶着物を溶着させるのに、受型や受台を使用せず、また、被着物が変形しやすいものであっても、溶着不良が起こらずきれいに溶着することの出来る溶着装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は係る課題に鑑みなされたものであり、請求項1の発明は、被着物に溶着物を溶着する溶着装置であって、
前記被着物に接した前記溶着物を高周波誘導で加熱する加熱手段と、
該加熱手段を前記溶着物へ押圧する押圧手段と、
前記被着物が押圧によって変形したときに、それに対応して、前記加熱手段の向きを変える傾き調節手段を有することを特徴とする溶着装置である。
【0013】
本発明の溶着装置は、以上のような構成であって、押圧手段によって押圧された被着物が変形しても、傾き調整手段によって、加熱手段を被着物に密着させた溶着物に均一に押圧出来るので、被着物を溶着物に溶着するときに、溶着不良が起きない。また、加熱手段が高周波誘導であるので、加熱手段を強く被着物に押圧する必要がなく、変形自体も少なくて済む。
【0014】
本発明の請求項2の発明は、上方に開口部が設けられた紙容器の前記開口部を塞ぐ蓋材を溶着する溶着装置であって、
前記紙容器の前記開口部を塞ぐ前記蓋材を高周波誘導で加熱する加熱手段と、
該加熱手段を前記蓋材へ押圧する押圧手段と、
前記紙容器の前記開口部の周辺が前記押圧によって変形したときに、それに対応して、前記加熱手段の向きを変える傾き調節手段を有することを特徴とする溶着装置である。
【0015】
本発明は、被着物と溶着物がそれぞれ、上方に開口部が設けられた紙容器と前記開口部を塞ぐ蓋材であって、押圧によって変形しやすい紙容器に用いても、傾き調整手段によって、加熱手段を紙容器に密着させた蓋材に均一に押圧出来るので、蓋材を紙容器に溶着するときに、溶着不良が起きない。また、加熱手段が高周波誘導であるので、加熱手段を強く蓋材に押圧する必要がなく、変形自体も少なくて済む。
【0016】
本発明の請求項3の発明は、筒状の胴部の両端に底部材と天部材が取り付けられ、該天部材の一隅寄りに開口部が設けられた紙容器の前記開口部を塞ぐ蓋材を溶着する溶着装置であって、
前記紙容器の前記開口部を塞ぐ前記蓋材を高周波誘導で加熱する加熱手段と、
該加熱手段を前記蓋材へ押圧する押圧手段と、
前記紙容器の前記開口部の周辺が前記押圧によって変形したときに、それに対応して、前記加熱手段の向きを変える傾き調節手段を有することを特徴とする溶着装置である。
【0017】
本発明は、被着物と溶着物がそれぞれ、筒状の胴部の両端に底部材と天部材が取り付けられ、該天部材の一隅寄りに開口部が設けられた紙容器と前記開口部を塞ぐ蓋材であって、天部材の一隅寄りに開口部が設けられた紙容器の開口部周辺を押圧すると、天部材の中心側が、天部材の一隅側より大きくへこみ、変形するが、傾き調整手段によって、加熱手段を紙容器に密着させた蓋材に均一に押圧出来るので、蓋材を紙容器に溶着するときに、溶着不良が起きない。また、加熱手段が高周波誘導であるので、加熱手段を強く蓋材に押圧する必要がなく、変形自体も少なくて済む。
【0018】
本発明の請求項4の発明は、前記加熱手段の先端にシリコンゴムを備えたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の溶着装置である。
【0019】
本発明においては、更に加熱手段の先端部にシリコンゴムが備えられていて、押圧するときに、シリコンゴムで蓋材を押圧することになり、蓋材表面の凹凸をシリコンゴムが吸収し、均一に押圧出来るので溶着不良が起こらない。
【0020】
本発明の請求項5の発明は、前記傾き調節手段が、前記押圧手段に連続する支持体と該支持体の先端に設けられた球体部と、該球体部を埋設し、前記加熱手段に固定された台座部を有し、埋設された前記球体部が回動自由に前記台座に保持されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の溶着装置である。
【0021】
本発明においては、傾き調整手段が上記の構成からなり、球体部と台座が回動自由になっているので、わずかな力で容易に支持体と加熱手段の角度が変わり、加熱手段を紙容器などの被着物の変形に対応し、その傾きを変えることが出来る。
【0022】
本発明の請求項6の発明は、前記傾き調節手段が、前記加熱手段に接続した受圧板と、該受圧板上に保持された球体を有し、受圧板には前記球体を囲むように3本以上の挿入柱が垂直に設けられ、前記押圧手段より延設された押圧板に設けられた挿入孔に前記挿入柱が挿入され、前記挿入柱の先端部が挿入孔より抜けないように、ストッパーが設けられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の溶着装置である。
【0023】
本発明においては、傾き調整手段が上記の構成からなり、球体が自由に回転できるようになっていて、受圧板と押圧板の角度がわずかな力で容易に変化するので、加熱手段を紙容器などの被着物の変形に対応し、その傾きを変えることが出来る。尚、球体は、受圧板と、押圧板と3本以上の挿入柱に囲まれているので、外れてしまうことはない。
【発明の効果】
【0024】
本発明の溶着装置は、以上のように、被着物が押圧によって変形したときに、それに対応して、加熱手段の向きを変える傾き調節手段を有しているので、容器などの被着物に、蓋部材などの溶着物を溶着させるのに、受型や受台を使用せず、また、被着物が変形しやすいものであっても、溶着不良が起こらずきれいに溶着することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】(a)本発明の溶着装置の一例を模式的に示した説明図である。 (b)本発明の溶着装置の一例で溶着する様子を模式的に示した説明図である。
【図2】本発明の溶着装置の一例の傾き調節手段部の説明図である。
【図3】(a)本発明の溶着装置の他の例を模式的に示した説明図である。 (b)本発明の溶着装置の他の例で溶着する様子を模式的に示した説明図である。
【図4】本発明の溶着装置の他の例の傾き調節手段部の説明図である。
【図5】(a)本発明の溶着装置に用いられる紙容器の一例の斜視図である。 (b)本発明の溶着装置に用いられる紙容器の一例の断面図である。
【図6】(a)本発明の溶着装置に用いられる紙容器の他の例の斜視図である。 (b)本発明の溶着装置に用いられる紙容器の他の例の断面図である。
【図7】本発明の溶着装置に用いられる蓋材の一例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下本発明を実施するための形態につき説明する。
【0027】
図1(a)は、本発明の溶着装置の一例を模式的に示した説明図、図1(b)は、本発明の溶着装置の一例で溶着する様子を模式的に示した説明図、図2は、本発明の溶着装置の一例の傾き調節手段部の説明図である。
【0028】
まず、高周波誘導で加熱する加熱手段について説明する。高周波誘導とは、必ずしも、3MHz以上の周波数に限らず、交流電流で近傍にある導体に渦電流を発生させる現象を指す。加熱手段は、その近傍の被着物あるいは溶着物にある導体に渦電流を発生させ、これによりジュール熱が発生し加熱するものである。
【0029】
図1(a)は、本発明の溶着装置1の一例を模式的に示した説明図であり、胴部10が円筒状で、筒状の胴部10の両端に天部材11と底部材12が取り付けられ、被着物である該天部材11の一隅寄りに開口部13が設けられた液体紙容器の開口部13に、溶着物であるスパウト14とキャップ17からなる口栓のスパウト14のフランジ部16を溶着しようとしている状態を示している。
【0030】
本例の溶着装置1は、加熱手段2の上部に、台座3が取り付けられていて、台座3には球体部4がその埋設され、球体部4には、棒状体5が接続して設けられている。そして、棒状体5は押圧手段6により上下に移動可能となっていて、この上下の移動によって、棒状体5に繋がっている球体部4が上下し、台座3を上下させて、加熱手段2がスパウト14のフランジ部16を押圧したり、上方に戻したりできるようになっている。また、加熱手段2の先端には、溶着物であるスパウト14のフランジ部16に接する面に、シリコンゴム7が取り付けられ、溶着物の表面に凹凸があっても均一に圧力がかかるようになっている。
【0031】
押圧手段6として、エアーシリンダーが設けられており、エアーによって、エアーシリンダーのロッドが上下に動き下に移動させたときに押圧するようになっている。本図では、エアーシリンダーのロッドが前記棒状体5と一体として描かれているが、別体で、設けて固定されていても良い。
【0032】
加熱手段2は、配線によって高周波電源に接続されていて(図示せず)、高周波を加熱手段2に流すことによって、近傍にある金属などの導体を発熱させる。スパウト14は筒状部15とフランジ部16からなっていて、フランジ部16は、樹脂フィルムとアルミニウム箔が積層されたフィルムを、リング状に打ち抜き、インジェクションの型のフランジ部の位置に装着して、スパウト14の成形と同時に一体化するインモールド成形によって作られている。このようにすることによって、フランジ部16にアルミニウム箔層を有するスパウト14が得られる。尚、キャップ17がスパウト14の筒状部15を覆うように螺合している。(図7を参照)
本例では、アルミニウムを導体としてあげたが、他の導体を層として設けていてもかまわない。例えば、ニクロム、鉄、銅、銀、金、白金などの金属が使用可能であり、また、金属以外の導体も使用可能である。
【0033】
このアルミニウム箔が高周波によって発熱して、開口部13にスパウト14が溶着される。本願で高周波誘導を加熱手段2に用いるのは、強い押圧を必要としないためである。熱板シールなどでは、例えば、1Kg/mあるいはそれ以上の押圧が必要であり、超音波では更にそれ以上の圧力では挟む必要があるが、高周波誘導加熱では、被着体と溶着物は密着していれば、融着が可能である。
【0034】
また、層間に積層されたアルミニウム箔が加熱されるため、シール面と加熱されるアルミニウム箔との距離を近くすることで、加熱部分とシール面との距離を近くすることが出来る。熱板シールでは、スパウトの外面から加熱することになり、シール面が溶融する前に、スパウトの外面が融けて形状が維持できなくなってしまうが、高周波誘導加熱ならスパウト14のフランジ部16の厚みが厚くとも容易に溶着できる。
【0035】
図1(b)は、本例の溶着装置を用いて、溶着する様子を模式的に示した説明図である。押圧手段6のエアーシリンダーによって、棒状体5と球体部4が下に押し下げられ、加熱手段2が容器の開口部13を塞ぐようにセットされたスパウト14のフランジ部16に接する。このとき、開口部13は、天部材11の一隅寄りにあるため、開口部13の天部材11の一隅側より、天部材11の中心寄りの方が、押し下げ圧力に弱く、開口部13の周縁部で図のように傾きが生ずる。
【0036】
そのとき、球体部4は、図2のように、その半分以上が台座3に設けられた球体部4と略同形の窪みに埋設され、抜けることが無く、且つ、棒状体5に台座3がぶつからない範囲で回動が自由になっているので、台座3は球体部4を中心にして回転し、開口部13の傾きに応じて台座3も傾き、台座3が取り付けられている加熱手段2も開口部13の傾きに応じて傾き、開口部13の周縁部にスパウト14のフランジ部16を密着させた状態を保つ。
【0037】
この状態で加熱手段2に高周波電流を流すと、高周波誘導によって、フランジ部16のアルミニウム箔が発熱して、樹脂を溶かして、フランジ部16を開口部13の周縁部に溶着させる。以上のようにして、紙容器の開口部13に蓋材である口栓のスパウト14を溶着することが出来る。
【0038】
次に、本発明を実施するための他の形態につき説明する。
【0039】
図3(a)は、本発明の溶着装置の他の例を模式的に示した説明図、図3(b)は、本発明の溶着装置の他の例で溶着する様子を模式的に示した説明図、図4は、本発明の溶着装置の他の例の傾き調節手段部の説明図である。
【0040】
図3(a)は、本発明の溶着装置の他の例を模式的に示した説明図であり、胴部10が円筒状で、筒状の胴部10の両端に天部材11と底部材(図示していない)が取り付けられ、被着物である該天部材11の一隅寄りに開口部13が設けられた紙容器の開口部13に、溶着物であるスパウト14とキャップ17からなる口栓のスパウト14のフランジ部16を溶着しようとしている状態を示している。
【0041】
本例の溶着装置21は、加熱手段2の上端から支持棒22を介して受圧板23と、該受圧板23から上に向けて垂直な4本の挿入柱24が継合されていて、前記加熱手段2よりロッド28を介して延設された押圧板26に設けられた挿入孔27に前記挿入柱24が挿
入され、先端部が挿入孔27より抜けないように、ストッパー29が設けられている。そして、前記4本の挿入柱24の間に囲まれて、受圧板23と押圧板26に挟まれて球体25が設置されている。
【0042】
押圧手段6として、エアーシリンダーが設けられており、エアーによって、エアーシリンダーのロッドが上下に動き下に移動させたときに押圧するようになっている。本図では、エアーシリンダーのロッド自体を押圧板6に延設されたロッド28としているが、別体で設けて継合させても良い。
【0043】
加熱手段2は、前例と同様に、配線によって高周波電源に接続されていて(図示せず)、高周波電流を加熱手段2に流すことによって、近傍にある金属などの導体を発熱させる。スパウト14は筒状部15とフランジ部16からなっていて、フランジ部16は、樹脂フィルムの間にアルミニウム箔が積層されたフィルムを、リング状に打ち抜き、インジェクションの型に装着して、スパウト14の成形と同時に筒状部15と一体に成形するインモールド成形によって作られている。このようにすることによって、フランジ部16にアルミニウム箔層を有するスパウト14が得られる。
【0044】
本例では、アルミニウムを導体としてあげたが、アルミニウムの代わりに他の導体を層として設けてもかまわない。例えば、ニクロム、鉄、銅、銀、金、白金などの金属が使用可能であり、また、金属以外の導体も使用可能である。
【0045】
このアルミニウム箔が高周波によって発熱して、開口部13にスパウト14のフランジ部16が溶着される。本願で高周波誘導を加熱手段2に用いるのは、強い押圧を必要としないためである。熱板シールなどでは、例えば、1Kg/mあるいはそれ以上の押圧が必要であり、超音波では更にそれ以上の圧力では挟む必要があるが、高周波誘導加熱では、被着体と溶着物は密着していれば、融着が可能である。
【0046】
また、層間に積層されたアルミニウム箔が加熱されるため、シール面と加熱されたアルミニウム箔との距離を近くすることで、加熱部分とシール面との距離を近くすることが出来る。熱板シールでは、スパウトの外面から加熱することになり、シール面が溶融する前に、スパウトの外面が融けて形状が維持できなくなってしまうが、高周波誘導加熱ならスパウト14のフランジ部16の厚みが厚くとも容易に溶着できる。
【0047】
図3(b)は、溶着する様子を模式的に示した説明図である。押圧手段6のエアーシリンダーによって、ロッド28と押圧板26が下に押し下げられ、押圧板26が球体25を押し下げる。更に球体25は、受圧板23とそれに継合する支持棒22を押し下げ、加熱手段2が容器の開口部13にセットされたスパウト14のフランジ部16に接する。
【0048】
このとき、開口部13は、天部材11の一隅にあるため、開口部13の天部材11の一隅側より、天部材11の中心側の方が、押し下げ圧力に弱く、開口部13の周縁部で図のように傾きが生ずる。
【0049】
押圧板26と受圧板23は、球体25を介して、押圧され、押圧板26と受圧板23の角度は自由に変化できるので、結果として、受圧板23に支持棒22を介して継合する加熱手段2は、開口部13の周縁部の傾きに合わせて、その傾きを変えることが出来、開口部13の周縁部にスパウト14のフランジ部16を密着させた状態を保つ。
【0050】
この状態で加熱手段2に高周波電流を流すと、高周波誘導によって、フランジ部16のアルミニウム箔が発熱して、樹脂を溶かして、フランジ部16を開口部13の周縁部に溶着させる。尚、球体25は、押圧を受けても容易に変形しない金属、ガラス、硬質プラス
チックなどの剛性のある材料で作られていることが望ましい。
【0051】
本例の溶着装置21について、詳しく説明する。図4(a)は、溶着装置21を分解した状態を示す。また、図4(b)は、押圧板26を上から見た形状を示す。押圧手段6は、ロッド28を下に押し下げ、また、上に戻せるようになっている。そして、ロッド28の下端には押圧板26が継合していて、ロッド28との上下移動に伴って動くようになっている。押圧板26は、上から見ると、図4(b)のように、中心にロッド28が継合され、ロッド28を中心に、挿入孔27が3個以上(図では4個)設けられている。
【0052】
受圧板23は、下方に支持棒22を介して加熱手段2に接続していて、加熱手段の下端には、シリコンゴム7が設けられている。そして、受圧板23の上面には、挿入柱24が3本以上(この場合は4本)垂設されており、溶着装置21を組み立てる場合は、受圧板23の上で、4本の挿入柱24の間に、球体25を入れて、挿入柱24を押圧板26の挿入孔27にそれぞれ挿入し、ストッパー29で挿入柱24が挿入孔27より抜けないように止める。挿入柱24は、球体25の直径より長く挿入柱24の上端が押圧板26の上に出るようにしてある。これにより、押圧板26と受圧板23の傾きは自由に変わる事が出来る。
【0053】
次に、被着物である紙容器と溶着物である蓋材について説明する。図5(a)は紙容器の一例の斜視図であり、図5(b)は紙容器の一例の断面図である。本例の紙容器は筒状の胴部10と、その上下両端に天部材11と底部材12が設けられている。底部材12の周縁部を垂直に下方に折り、胴部10の下端寄りに差込み、胴部10の下端を内方から上方に折り曲げ、底部材12の周縁部を包むよう接着する。
【0054】
同様に、天部材11の周縁部を垂直に折って立ち上げ、胴部10の上端寄りに差込み、胴部10の上端を内方から下方に折り曲げ、天部材11の垂直に立ち上げた周縁部を包むようにして接着して本例の紙容器を形成する。尚、天部材11には開口部13が開けられている。
【0055】
図6(a)は紙容器の他の例の斜視図であり、図6(b)は紙容器の他の例の断面図である。本例の紙容器は筒状の胴部10と、その下端に底部材12を設け、上端は、トップカールを設けて、トップカール部30の上端に紙蓋(天部材11)が接着されている。
【0056】
本例の紙容器の底部分は前例と同様である。底部材12の周縁部を垂直に下方に折り、胴部10の下端寄りに差込み、胴部10の下端を内方から上方に折り曲げ、底部材12の周縁部を包むよう接着する。胴部10の上端は、外側に曲げてトップカール部30を形成して、そのトップカール部30に紙を主体とする紙蓋(天部材12)を接着させて紙容器を形成する。尚、紙蓋(天部材12)には開口部13が開けられている。
【0057】
図7は、キャップ17とスパウト14からなる蓋材の一例の口栓である。本例では、キャップ17とスパウト14は螺合している。スパウト14は紙容器の開口部周縁部に溶着するフランジ部16と、内容物の取り出し口となる筒状部15とを有す。本例では更に、筒状部15の下方に取り出し口を封止する封鎖板18と、封鎖板18を開封するためのプルリング19を有している。また、フランジ部16の層間には、導体20であるアルミニウム箔が埋設されている。
【0058】
本例では、蓋材として口栓の一例を説明したが、本発明においては他の形状の口栓であっても、フランジ部があり、その層間に導体を有していれば、どのような形状の口栓でもかまわない。また、口栓に限ることはなく、蓋材として、フィルム状やシート状の積層体の蓋材も包含される。積層体の蓋材に、アルミニウム箔などの導体が積層されていれば、本発明の溶着装置で使用可能である。
【0059】
また、紙容器として2例を説明したが、これに限るものではない。紙容器上部に蓋材で塞ぐ開口部が設けられた紙容器であればよい。また、紙容器などの被着物としては、容易に押圧によって変形しやすい被着物であって、溶着物を高周波誘導によって、加熱して溶着するものであればかまわない。
【0060】
傾き調整手段についても、前述の2例以外のものでもかまわない。例えば、市販されているユニバーサルジョイントを用いても良い。本発明の溶着装置1の一例で説明した傾き調整手段に類似しているツェッパジョイントを用いても良いし、十字形のクロススパイダを用いたカルダンジョイントを用いても良い。また、押圧によって変形して傾く向きが、一方向である紙容器などの被着物であれば、十字形のクロススパイダを用いずに、ひとつの回転軸で回動可能に連結されているものも傾き調整手段として使用できる。
【0061】
なお、本発明において、紙容器は紙を主体し、溶着のための樹脂層が溶着部の外層にあればよい。紙容器の内容物としては液体に限らず、蓋材を開けて取り出し可能なものなら限定されない。本発明の溶着装置で用いられる紙容器に充填されるものとしては、液体なら醤油、だしの素、酢類、そば・うどんつゆなどの調味料や、ドレッシング、薬品などがあげられる。また、顆粒ならば和風、中華、洋風の顆粒状の調味料や、ふりかけ、スープの素、薬品などがあり、また、粉体であれば、小麦粉や粉末薬品などに使用できる。
【符号の説明】
【0062】
1・・・溶着装置
2・・・加熱手段
3・・・台座
4・・・球体部
5・・・棒状体
6・・・押圧手段
7・・・シリコンゴム
10・・・胴部
11・・・天部材
12・・・底部材
13・・・開口部
14・・・スパウト
15・・・筒状部
16・・・フランジ部
17・・・キャップ
18・・・封鎖板
19・・・プルリング
20・・・導体
21・・・溶着装置
22・・・支持棒
23・・・受圧板
24・・・挿入柱
25・・・球体
26・・・押圧板
27・・・挿入孔
28・・・ロッド
29・・・ストッパー
30・・・トップカール部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被着物に溶着物を溶着する溶着装置であって、
前記被着物に接した前記溶着物を高周波誘導で加熱する加熱手段と、
該加熱手段を前記溶着物へ押圧する押圧手段と、
前記被着物が押圧によって変形したときに、それに対応して、前記加熱手段の向きを変える傾き調節手段を有することを特徴とする溶着装置。
【請求項2】
上方に開口部が設けられた紙容器の前記開口部を塞ぐ蓋材を溶着する溶着装置であって、
前記紙容器の前記開口部を塞ぐ前記蓋材を高周波誘導で加熱する加熱手段と、
該加熱手段を前記蓋材へ押圧する押圧手段と、
前記紙容器の前記開口部の周辺が前記押圧によって変形したときに、それに対応して、前記加熱手段の向きを変える傾き調節手段を有することを特徴とする溶着装置。
【請求項3】
筒状の胴部の両端に底部材と天部材が取り付けられ、該天部材の一隅寄りに開口部が設けられた紙容器の前記開口部を塞ぐ蓋材を溶着する溶着装置であって、
前記紙容器の前記開口部を塞ぐ前記蓋材を高周波誘導で加熱する加熱手段と、
該加熱手段を前記蓋材へ押圧する押圧手段と、
前記紙容器の前記開口部の周辺が前記押圧によって変形したときに、それに対応して、前記加熱手段の向きを変える傾き調節手段を有することを特徴とする溶着装置。
【請求項4】
前記加熱手段の先端にシリコンゴムを備えたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の溶着装置。
【請求項5】
前記傾き調節手段が、前記押圧手段に連続する支持体と該支持体の先端に設けられた球体部と、該球体部を埋設し、前記加熱手段に固定された台座部を有し、埋設された前記球体部が回動自由に前記台座に保持されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の溶着装置。
【請求項6】
前記傾き調節手段が、前記加熱手段に接続した受圧板と、該受圧板上に保持された球体を有し、受圧板には前記球体を囲むように3本以上の挿入柱が垂直に設けられ、前記押圧手段より延設された押圧板に設けられた挿入孔に前記挿入柱が挿入され、前記挿入柱の先端部が挿入孔より抜けないように、ストッパーが設けられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の溶着装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−189976(P2011−189976A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−58978(P2010−58978)
【出願日】平成22年3月16日(2010.3.16)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】