説明

溶融イオン性液体に基づく溶媒系、その生成及び再生炭水化物を生成するためのその使用

適切であれば添加剤が溶液系に存在する、溶融イオン性液体に基づいた炭水化物の形態のバイオポリマーのための溶媒系が記載される。この溶媒系は、プロトン性溶媒、又は複数のプロトン性溶媒の混合物を含み、プロトン性溶媒が水単独である場合、これは、約5質量%を超える量で溶媒系に存在する。炭水化物を、特にデンプン、セルロース及びその誘導体の形態で溶媒系に組み込むことができ、次に溶媒系を、溶解されている炭水化物の再生のために用いることができる。加えて、炭水化物を含有する溶媒を製造するため及び特に再生セルロース繊維の形態の再生炭水化物を製造するための特に有益な方法が記載されている。したがって、本発明は、非フィブリル化しているような紡糸繊維も提供する。本発明は、特に、従来技術の系に優る経済的利点を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融イオン性液体に基づく炭水化物の形態のバイオポリマーのための溶液系、この溶液系に場合により含有されている添加剤、炭水化物の含有量を有するこの溶液系、その製造、並びに再生炭水化物の製造のための及び再生炭水化物の造形品、特に紡糸繊維の使用に関する。
【0002】
地球上の1.5×1012トンの推定バイオマス埋蔵量における約700×109トンの含有量を有するセルロースは、有機バイオポリマーの群における最も重要な代表である。木材及び綿から得られ、かつセルロースの非常に高い含有量を有するパルプは、現在、紙、厚紙、並びに再生セルロース繊維及びフィルムの製造の基である最も重要な原材料である。
【0003】
セルロースを処理するためにこれまでに幾つかの溶媒系が開発されてきた。長い間公知であるビスコース方法が、依然として産業上最も重要である。ここでは、セルロースを最初に誘導体化してキサントゲン酸塩とし、次に希水酸化ナトリウム溶液に溶解する。特殊な凝固浴での再生によって、誘導体化が反転され、この方法によりセルロースが利用可能になる。ところが、大量の塩及び硫黄含有廃ガスがこの方法により形成され、後処理技術の助けを借りて処理しなければならない。
【0004】
最近の10年間で環境についての意識がますます増えているなかで、開発は、廃棄物及び望ましくない排出の回避不能な生成がより少ない、セルロースの直接溶解を余儀なくされてきた。溶媒のN−メチルモルホリンN−オキシド一水和物(NMMO)を用いる方法は、現在ここで最も重要な産業上の有意性を得ている。この方法の欠点は、NMMO、水及びセルロースの三成分系における狭い溶液範囲、酸化作用を有する溶媒の使用、並びに生成される生成物の系関連フィブリル化である。
【0005】
イオン性液体は、従来の有機溶媒の代用品の役割を果たすことができる。これらは、低温(<100℃)で溶融する有機塩であり、これは非分子のイオン性の性質を有する新規の部類の溶媒である。実質的に不純物のないイオン性液体は、測定可能な蒸気圧を有さない。これらの極性、したがって溶媒としての特性は、カチオン及びアニオンの選択によって調整することができる。
【0006】
US−A−1943176は、N−アルキル−及びN−アリール−置換ピリジニウムクロリドの部類の物質の有機塩を、窒素含有塩基(例えば、ピリジン)と混合して、非誘導体化セルロースを溶解するために使用することを教示する。ところがこの発明は産業上の重要性を得ることはなかった。US−A−2339012は、同様の置換水酸化ピリジニウムを水又はアルコールと混合して用いてセルロースを溶解することを記載する。ここでも、セルロースを直接溶解するための多数の好ましくない産業上の必要条件(例えば、高圧)によって、産業上の実現性に失敗したと思われる。
【0007】
新規な部類のイオン性液体を使用することによって、上記の欠点を克服することが可能であった。新たな展開において、WO2003/029329は、特にイミダゾール系イオン性液体の使用を記載している。これらは、柔軟な溶媒として、水及び他の窒素含有有機塩基の不在下でセルロースを直接溶解するのに特に適している。欠点は、溶液の製造の際に水の使用を省かなければならないことである。5質量%を超える水の混合は、明確に除外される。イオン性液体は経済的及び環境上の理由から実質的に完全に回収されなければならず、そして生成物の圧密は主に水媒体で生じるので、このことは著しい制限であり、今までのところ産業的な転換を妨げてきた。まさに、蒸留による5質量%未満の含水量の分離は、産業的に困難であり、極めてエネルギー集約的であり、したがって経済的に非効率的である。
【0008】
したがって本発明は、経済的で環境に優しい方法で、特にデンプン、セルロール及びデンプンとセルロースの誘導体の形態でバイオポリマーを有利に再生することを可能にするように、上述の溶液系及び記述された方法を更に展開する目的に基づいていた。
【0009】
この目的は、以下で説明される本発明により達成され、とりわけ、溶液系はプロトン性溶媒又は幾つかのプロトン性溶媒の混合物を含有し、プロトン性溶媒が水単独である場合、これは、溶液系において約5質量%を超える量で存在する。
【0010】
したがって必須の特徴は、プロトン性溶媒を、炭水化物の形態のバイオポリマーのための溶液系に組み込むことであり、添加剤も場合により溶液系に含有されている。WO2003/029329に記載されているような従来技術は、プロトン性溶媒を組み込むことに反対する、特に5質量%を超える量で水を組み込むことに反対する教示をしている。したがって従来技術によると、水の量を1質量%未満に制限することが特に好ましいと言われている。本発明の文脈において、現在、水又は他のプロトン性溶媒の組み込みは、炭水化物、特にセルロースの再生におけるプロセス全体にとって総合的に有益であることが見出されている。水が本発明の教示の文脈で組み込まれると、結果は、例えば水の凝固媒質(沈殿媒質)での再生の際に、貴重なイオン性液体を、水から又はプロトン性溶媒から完全に遊離する必要がなく、むしろ回収された溶液系は依然として5質量%を超える量で水を含有することができ、これにより水の完全な除去を省くことができる。このことは、低いエネルギー消費及び顕著な利点を意味する。
【0011】
したがって、本発明の概念の核心は、従来技術における厳格な指示と対照的に、まさに、プロトン性溶媒を本発明に従って調整した量で溶液系に添加し、プロトン性溶媒が水単独である場合は、これは5質量%を超える量で溶液系に存在することである。水は、非常に環境に優しく、溶液の粘度及び生成物圧密の際の構造形成に対して好ましい影響を有するので、他のプロトン性溶媒よりも利点を有する。更に、水は同等に適切なプロトン性溶媒と比べて非常に安価である。
【0012】
従来技術において記載されている、セルロースをイオン性液体で再生する基本的な概念は、したがって本発明によって保持されている。しかし、イオン性液体には、まさに炭水化物、特にセルロースのための液体非溶媒が混合され、これはイオン性液体自体には混和性であるが、炭水化物を含有する溶媒中のプロトン性溶媒/イオン性液体の混合率を上昇させると、炭水化物の望ましい凝固をもたらす。
【0013】
水が単独のプロトン性溶媒として使用される場合、溶液系中のその量は、6質量%超、特に約6〜15質量%の間であることが好ましい。約7〜12質量%の範囲の水がとりわけ好ましい。当業者は、個別の場合に有益でありうる更なるプロトン性溶媒の選択についていかなる実質的な制限も受けない。
【0014】
用語「プロトン性溶媒」は、当業者には明かである。C. Reichardt, "Solvents and Solvent Effects in Organic Chemistry", 3rd edition, p. 82−84, 2003, Wiley−VCH, Weinheimによると、プロトン性溶媒は、陰性元素に結合している水素原子を含有する。これらの典型的な例は、水に加えて、アルコール、アミン(アミンは、脂肪族及び脂環式アミンを意味すると理解されるべきである)、酸アミド及びカルボン酸である。これらは特に、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール及び/又は2−メチル−2−プロパノール、好ましくはメタノール、エタノール、プロパノール及び/又はブタノールのような低級アルコールであることができる。特に有益なプロトン性溶媒には、更に、グリコール、アミン、酸アミド及びカルボン酸か含まれ、好ましくはモノエチレングリコール、ジエチレングリコール、モノ−1,2−プロピレングリコール、ジ−1,2−プロピレングリコール、1,2−ブチレングリコール、2,3−ブチレングリコール及び/又はグリセロールのようなグリコール、並びにメチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、i−プロピルアミン、n−ブチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジ−n−ブチルアミン、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、N−メチル−ピペラジン、N−エチルピペラジン、モルホリン、エチレンジアミン、1,2−プロピレンジアミン、1,3−プロピレンジアミン、ジ−(2−シアノエチル)アミン、ジ−(2−アミノエチル)アミン、トリ−(2−アミノエチル)アミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、プロパノールアミン、ジプロパノールアミン及び/又はトリプロパノールアミンのようなアミンが含まれる。指定されたアルコールが好ましいものとして見なされるべきである。したがって、プロトン性溶媒、特にアルコールは、また、少なくとも0.1質量%、特に少なくとも約1質量%の量で溶液系に存在することが好ましい。プロトン性溶媒、特にアルコールは、約1〜10質量%の量、特に約2〜5質量%の量で溶液系に含有されることが、とりわけ好ましい。プロトン性溶媒は、混合物として用いることができ、これは個々の場合において有益でありうる。このことは、アルコールの場合に水を混合するときに特に当てはまる。
【0015】
当業者は、本発明を実現するために、イオン性液体の選択に関していかなる実質的な制限も受けない。したがって、本発明の方法に特に適しているイオン性液体は、以下のように記載される。
【0016】
本発明の文脈におけるイオン性液体は、好ましくは、
(A)一般式(I):
〔A〕+n〔Y〕n− (I)
[式中、nは、1、2、3又は4を表し、〔A〕+は、第四級アンモニウムカチオン、オキソニウムカチオン、スルホニウムカチオン又はホスホニウムカチオンを表し、そして〔Y〕n−は、一価、二価、三価又は四価アニオンを表す]で示される塩;
(B)一般式(II):
〔A1+〔A2+〔Y〕n− (IIa)、ここでn=2;
〔A1+〔A2+〔A3+〔Y〕n− (IIb)、ここでn=3;又は
〔A1+〔A2+〔A3+〔A4+〔Y〕n− (IIb)、ここでn=4;
[式中、〔A1+〔A2+〔A3+及び〔A4+は、互いに独立して、〔A〕+で記述された群から選択され、そして〔Y〕n−は、(A)で記述された意味を有する]で示される混合塩
である。
【0017】
イオン性液体のカチオン〔A〕+を形成するのに適している化合物は、例えばDE10202838A1により既知である。したがってそのような化合物は、酸素、リン、硫黄、又は特に窒素原子、例えば少なくとも1個の窒素原子、好ましくは1〜10個の窒素原子、特に好ましくは1〜5個、とりわけ好ましくは1〜3個、特に1〜2個の窒素原子を含有することができる。これらは、場合により、酸素、硫黄又はリン原子のような更なるヘテロ原子を含有することもできる。窒素原子は、イオン性液体のカチオンの陽電荷の適切な担体であり、これから、電気的に中性の分子を生じるために、プロトン又はアルキル基を平衡状態にあるアニオンへ移動することができる。
【0018】
窒素原子がイオン性液体のカチオンの陽電荷の担体である場合、イオン性液体の合成において、カチオンを、最初に、例えばアミン又は窒素含有複素環式化合物の窒素原子の四級化により生じることができる。四級化は、窒素原子のアルキル化により実施することができる。使用されるアルキル化試薬に応じて、異なるアニオンとの塩が得られる。四級化の際に所望のアニオンが既に形成されていることが可能ではない場合、これは、更なる合成工程で実施することができる。例えば、ハロゲン化アンモニウムから出発して、ハロゲン化物をルイス酸と反応させることができ、錯体アニオンがハロゲン化物とルイス酸から形成される。これの代替案として、ハロゲン化物イオンを所望のアニオンと交換することが可能である。これは、イオン交換体を介した、形成された金属ハロゲン化物の凝固を有する金属塩の添加、又は強酸によるハロゲン化物イオンの置き換えによって実施することができる(ハロゲン化水素酸が遊離される)。適切な方法は、例えばAngew. Chem. 2000, 112, p. 3926−3945及びそれに引用されている文献に記載されている。
【0019】
アミン又は窒素含有複素環式化合物における窒素原子を四級化することができる適切なアルキル基は、例えば、C1〜C18アルキル、好ましくはC1〜C10アルキル、特に好ましくはC1〜C6アルキル、とりわけ好ましくはメチルである。アルキル基は、非置換であることができるか、又は1つ以上の同一又は異なる置換基を含有することができる。
【0020】
好ましい化合物は、少なくとも1つの窒素原子と、場合により酸素又は硫黄原子を含有する、少なくとも1つの5員〜6員複素環式基、特に、5員複素環式基を含有するものである。同様に特に好ましい化合物は、1、2又は3個の窒素原及び硫黄又は酸素原子、とりわけ好ましくは2個の窒素原子を含有する、少なくとも1つの5員〜6員複素環式基を含有するものである。芳香族複素環式化合物が更に好ましい。
【0021】
特に好ましい化合物は、1000g/mol未満、とりわけ好ましくは500g/mol未満、特に300g/mol未満の分子量を有するものである。
【0022】
更に、好ましいカチオンは、式(IIIa)〜(IIIw):
【化1】

【0023】
【化2】

【0024】
【化3】

【0025】
【化4】

で示される化合物、及びこれらの構造を含有するオリゴマーから選択されるものである。
【0026】
更に適切なカチオンは、一般式(IIIx)及び(IIIy):
【化5】

で示される化合物、並びにこれらの構造を含有するオリゴマーである。
【0027】
上記の式(IIIa)〜(IIIy)において、
・ 基Rは、水素か、非置換であるか又は中断されているか又は1〜5個のヘテロ原子若しくは官能基により置換されている、1〜20個の炭素原子を有する炭素含有、有機、飽和又は不飽和、非環状又は環状、脂肪族、芳香族又は芳香性脂肪族基を表し;そして
・ 基R1〜R9は、互いに独立して、水素、スルホ基、又は非置換であるか若しくは中断されているか若しくは1〜5個のヘテロ原子か官能基により置換されている、1〜20個の炭素原子を有する炭素含有、有機、飽和若しくは不飽和、非環状若しくは環状、脂肪族、芳香族若しくは芳香性脂肪族基を表し、ここで上記の式(III)において炭素原子に結合している(ヘテロ原子には結合していない)基R1〜R9は、追加的にハロゲン又は官能基を表すこともできる;或いは
1〜R9からなるシリーズにおいて2つの隣接する基は、共に、非置換であるか又は中断されているか又は1〜5個のヘテロ原子若しくは官能基により置換されている、1〜30個の炭素原子を有する、二価、炭素含有、有機、飽和若しくは不飽和、非環状若しくは環状、脂肪族、芳香族若しくは芳香性脂肪族基も表す。
【0028】
基R及びR1〜R9の定義において可能性のあるヘテロ原子は、原則として、形式的には−CH2−、−CH=、−C≡又は=C=基を交換することができる全てのヘテロ原子である。炭素含有基がヘテロ原子を含有する場合、酸素、窒素、硫黄、リン及びケイ素が好ましい。記述できる好ましい基は、特に、−O−、−S−、−SO−、−SO2−、−NR′−、−N=、−PR′−、−PR′2−及び−SiR′2−であり、ここで基R′は、炭素含有基の残りの部分である。ここで、上記の式(III)において炭素原子に結合している(ヘテロ原子には結合していない)場合の基R1〜R9は、ヘテロ原子を介して直接結合することもできる。
【0029】
可能性のある官能基は、原則として、炭素原子又はヘテロ原子に結合することができる全ての官能基である。記述できる適切な例は、−OH(ヒドロキシル)、=O(特にカルボニル基として)、−NH2(アミノ)、−NHR、−NR2、=NH(イミノ)、−COOH(カルボキシル)、−CONH2(カルボキサミド)、−SO3H(スルホ)及び−CN(シアノ)、特に−OH(ヒドロキシル)、=O(特にカルボニル基として)、−NH2(アミノ)、=NH(イミノ)、−COOH(カルボキシル)、−CONH2(カルボキサミド)、−SO3H(スルホ)及び−CN(シアノ)である。官能基及びヘテロ原子も直接隣接することができ、これにより、例えば−O−(エーテル)、−S−(チオエーテル)、−COO−(エステル)、−CONH−(第二級アミド)又は−CONR′−(第三級アミド)のような幾つかの隣接原子の組み合わせも含まれ、例えばジ−(C1〜C4アルキル)アミノ、C1〜C4アルコキシカルボニル又はC1〜C4アルコキシである。
【0030】
記述できるハロゲンは、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素である。
【0031】
好ましくは、基Rは、下記:
・ 例えば、メチル、エチル、1−プロピル、2−プロピル、1−ブチル、2−ブチル、2−メチル−1−プロピル、2−メチル−2−プロピル、1−ペンチル、2−ペンチル、3−ペンチル、2−メチル−1−ブチル、3−メチル−1−ブチル、2−メチル−2−ブチル、3−メチル−2−ブチル、2,2−ジメチル−1−プロピル、1−ヘキシル、2−ヘキシル、3−ヘキシル、2−メチル−1−ペンチル、3−メチル−1−ペンチル、4−メチル−1−ペンチル、2−メチル−2−ペンチル、3−メチル−2−ペンチル、4−メチル−2−ペンチル、2−メチル−3−ペンチル、3−メチル−3−ペンチル、2,2−ジメチル−1−ブチル、2,3−ジメチル−1−ブチル、3,3−ジメチル−1−ブチル、2−エチル−1−ブチル、2,3−ジメチル−2−ブチル、3,3−ジメチル−2−ブチル、1−ヘプチル、1−オクチル、1−ノニル、1−デシル、1−ウンデシル、1−ドデシル、1−テトラデシル、1−ヘキサデシル、1−オクタデシル、2−ヒドロキシエチル、ベンジル、3−フェニルプロピル、2−シアノエチル、2−(メトキシカルボニル)エチル、2−(エトキシカルボニル)エチル、2−(n−ブトキシカルボニル)エチル、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、フルオロメチル、ペンタフルオロエチル、ヘプタフルオロプロピル、ヘプタフルオロイソプロピル、ノナフルオロブチル、ノナフルオロイソブチル、ウンデシルフルオロペンチル、ウンデシルフルオロイソペンチル、6−ヒドロキシヘキシル及びプロピルスルホン酸のような、非置換であるか又はヒドロキシル、ハロゲン、フェニル、シアノ、C1〜C6アルコキシカルボニル及び/又はSO3Hで1回から数回置換されている、合計で1〜20個の炭素原子を有する非分岐鎖又は分岐鎖C1〜C18アルキル;
・ 例えば、RO−(CHR−CH2−O)−CHR−CH2−又はRO−(CH2CH2CH2CH2O)−CH2CH2CH2CH2O−(ここで、R及びRは、好ましくは水素、メチル又はエチルであり、そしてmは、好ましくは0〜3である)、特に3−オキサブチル、3−オキサペンチル、3,6−ジオキサヘプチル、3,6−ジオキサオクチル、3,6,9−トリオキサデシル、3,6,9−トリオキサウンデシル、3,6,9,12−テトラオキサトリデシル及び3,6,9,12−テトラオキサテトラデシルのような、1〜100単位及び水素又は末端基としてC1〜C8アルキルを有するグリコール、ブチレングリコール及びそのオリゴマー;
・ ビニル;
・ アリル;
・ 例えばN,N−ジメチルアミノ及びN,N−ジエチルアミノのようなN,N−ジ−C1〜C6アルキルアミノ
を表す。
【0032】
好ましくは、基R1〜R9は、互いに独立して、下記:
・ 水素;
・ ハロゲン;
・ 官能基:
・ 場合により、官能基、アリール、アルキル、アリールオキシ、アルコキシ、ハロゲン、ヘテロ原子及び/若しくは複素環式基で置換されている、並びに/又は1個以上の酸素及び/若しくは硫黄原子、及び/若しくは1つ以上の置換若しくは非置換イミノ基で中断されている、C1〜C18アルキル;
・ 場合により、官能基、アリール、アルキル、アリールオキシ、アルコキシ、ハロゲン、ヘテロ原子及び/若しくは複素環式基で置換されている、並びに/又は1個以上の酸素及び/若しくは硫黄原子、及び/若しくは1つ以上の置換若しくは非置換イミノ基で中断されている、C2〜C18アルケニル;
・ 場合により、官能基、アリール、アルキル、アリールオキシ、アルコキシ、ハロゲン、ヘテロ原子及び/又は複素環式基で置換されている、C6〜C12アリール;
・ 場合により、官能基、アリール、アルキル、アリールオキシ、アルコキシ、ハロゲン、ヘテロ原子及び/又は複素環式基で置換されている、C5〜C12シクロアルキル;
・ 場合により、官能基、アリール、アルキル、アリールオキシ、アルコキシ、ハロゲン、ヘテロ原子及び/又は複素環式基で置換されている、C5〜C12シクロアルケニル;
・ 酸素、窒素及び/又は硫黄原子を含有し、場合により、官能基、アリール、アルキル、アリールオキシ、アルコキシ、ハロゲン、ヘテロ原子及び/又は複素環式基で置換されている、5員〜6員複素環式基
を表すか、或いは
2つの隣接する基は、共に、下記:
・ 場合により、官能基、アリール、アルキル、アリールオキシ、アルコキシ、ハロゲン、ヘテロ原子及び/又は複素環式基で置換されており、場合により、1個以上の酸素及び/若しくは硫黄原子、及び/又は1つ以上の置換若しくは非置換イミノ基で中断されている、不飽和、飽和又は芳香族環
を表す。
【0033】
場合により、官能基、アリール、アルキル、アリールオキシ、アルコキシ、ハロゲン、ヘテロ原子及び/又は複素環式基で置換されているC1〜C18アルキルは、好ましくは、メチル、エチル、1−プロピル、2−プロピル、1−ブチル、2−ブチル、2−メチル−1−プロピル(イソブチル)、2−メチル−2−プロピル(tert−ブチル)、1−ペンチル、2−ペンチル、3−ペンチル、2−メチル−1−ブチル、3−メチル−1−ブチル、2−メチル−2−ブチル、3−メチル−2−ブチル、2,2−ジメチル−1−プロピル、1−ヘキシル、2−ヘキシル、3−ヘキシル、2−メチル−1−ペンチル、3−メチル−1−ペンチル、4−メチル−1−ペンチル、2−メチル−2−ペンチル、3−メチル−2−ペンチル、4−メチル−2−ペンチル、2−メチル−3−ペンチル、3−メチル−3−ペンチル、2,2−ジメチル−1−ブチル、2,3−ジメチル−1−ブチル、3,3−ジメチル−1−ブチル、2−エチル−1−ブチル、2,3−ジメチル−2−ブチル、3,3−ジメチル−2−ブチル、ヘプチル、オクチル、2−エチルヘキシル、2,4,4−トリメチルペンチル、1,1,3,3−テトラメチルブチル、1−ノニル、1−デシル、1−ウンデシル、1−ドデシル、1−トリデシル、1−テトラデシル、1−ペンタデシル、1−ヘキサデシル、1−ヘプタデシル、1−オクタデシル、シクロペンチルメチル、2−シクロペンチルエチル、3−シクロペンチルプロピル、シクロヘキシルメチル、2−シクロヘキシルエチル、3−シクロヘキシルプロピル、ベンジル(フェニルメチル)、ジフェニルメチル(ベンズヒドリル)、トリフェニルメチル、1−フェニルエチル、2−フェニルエチル、3−フェニルプロピル、α,α−ジメチルベンジル、p−トリルメチル、1−(p−ブチルフェニル)エチル、p−クロロベンジル、2,4−ジクロロベンジル、p−メトキシベンジル、m−エトキシベンジル、2−シアノエチル、2−シアノプロピル、2−メトキシカルボニルエチル、2−エトキシカルボニルエチル、2−ブトキシカルボニルプロピル、1,2−ジ−(メトキシカルボニル)−エチル、メトキシ、エトキシ、ホルミル、1,3−ジオキソラン−2−イル、1,3−ジオキソラン−2−イル、2−メチル−1,3−ジオキソラン−2−イル、4−メチル−1,3−ジオキソラン−2−イル、2−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシプロピル、3−ヒドロキシプロピル、4−ヒドロキシブチル、6−ヒドロキシヘキシル、2−アミノエチル、2−アミノプロピル、3−アミノプロピル、4−アミノブチル、6−アミノヘキシル、2−メチルアミノエチル、2−メチルアミノプロピル、3−メチルアミノプロピル、4−メチルアミノブチル、6−メチルアミノヘキシル、2−ジメチルアミノエチル、2−ジメチルアミノプロピル、3−ジメチルアミノプロピル、4−ジメチルアミノブチル、6−ジメチルアミノヘキシル、2−ヒドロキシ−2,2−ジメチルエチル、2−フェノキシエチル、2−フェノキシプロピル、3−フェノキシプロピル、4−フェノキシブチル、6−フェノキシヘキシル、2−メトキシエチル、2−メトキシプロピル、3−メトキシプロピル、4−メトキシブチル、6−メトキシヘキシル、2−エトキシエチル、2−エトキシプロピル、3−エトキシプロピル、4−エトキシブチル、6−エトキシヘキシル、アセチル、mが1〜30であり、0≦a≦mであり、そしてb=0又は1である、C2(m-a)+(1-b)2a+b(例えば、CF3、C2、CH2CH2−C(m-2)2(m-2)+1、C613、C817、C1021、C1225)、クロロメチル、2−クロロエチル、トリクロロメチル、1,1−ジメチル−2−クロロエチル、メトキシメチル、2−ブトキシエチル、ジエトキシメチル、ジエトキシエチル、2−イソプロポキシエチル、2−ブトキシプロピル、2−オクチルオキシエチル、2−メトキシイソプロピル、2−(メトキシカルボニル)−エチル、2−(エトキシカルボニル)−エチル、2−(n−ブトキシカルボニル)−エチル、ブチルチオメチル、2−ドデシルチオエチル、2−フェニルチオエチル、5−ヒドロキシ−3−オキサ−ペンチル、8−ヒドロキシ−3,6−ジオキサ−オクチル、11−ヒドロキシ−3,6,9−トオリオキサ−ウンデシル、7−ヒドロキシ−4−オキサ−ヘプチル、11−ヒドロキシ−4,8−ジオキサ−ウンデシル、15−ヒドロキシ−4,8,12−トリオキサ−ペンタデシル、9−ヒドロキシ−5−オキサ−ノニル、14−ヒドロキシ−5,10−ジオキサ−テトラデシル、5−メトキシ−3−オキサ−ペンチル、8−メトキシ−3,6−ジオキサ−オクチル、11−メトキシ−3,6,9−トリオキサ−ウンデシル、7−メトキシ−4−オキサ−ヘプチル、11−メトキシ−4,8−ジオキサ−ウンデシル、15−メトキシ−4,8,12−トリオキサ−ペンタデシル、9−メトキシ−5−オキサ−ノニル、14−メトキシ−5,10−ジオキサ−テトラデシル、5−エトキシ−3−オキサ−ペンチル、8−エトキシ−3,6−ジオキサ−オクチル、11−エトキシ−3,6,9−トリオキサ−ウンデシル、7−エトキシ−4−オキサ−ヘプチル、11−エトキシ−4,8−ジオキサ−ウンデシル、15−エトキシ−4,8,12−トリオキサ−ペンタデシル、9−エトキシ−5−オキサ−ノニル又は14−エトキシ−5,10−オキサ−テトラデシルである。
【0034】
場合により、官能基、アリール、アルキル、アリールオキシ、アルコキシ、ハロゲン、ヘテロ原子及び/若しくは複素環式基で置換されている、並びに/又は1個以上の酸素及び/若しくは硫黄原子、及び/若しくは1つ以上の置換若しくは非置換イミノ基で中断されている、C2〜C18アルケニルは、好ましくは、ビニル、2−プロペニル、3−ブテニル、シス−2−ブテニル、トランス−2−ブテニル又は、C2(m-a)-(1-b)2a-bであり、ここでm≦30であり、0≦a≦mであり、そしてb=0又は1である。
【0035】
場合により、官能基、アリール、アルキル、アリールオキシ、アルコキシ、ハロゲン、ヘテロ原子及び/又は複素環式基で置換されているC6〜C12アリールは、好ましくは、フェニル、トリル、キシリル、α−ナフチル、β−ナフチル、4−ジフェニリル、クロロフェニル、ジクロロフェニル、トリクロロフェニル、ジフルオロフェニル、メチルフェニル、ジメチルフェニル、トリメチルフェニル、エチルフェニル、ジエチルフェニル、イソプロピルフェニル、tert−ブチルフェニル、ドデシルフェニル、メトキシフェニル、ジメトキシフェニル、エトキシフェニル、ヘキシルオキシフェニル、メチルナフチル、イソプロピルナフチル、クロロナフチル、エトキシナフチル、2,6−ジメチルフェニル、2,4,6−トリメチルフェニル、2,6−ジメトキシフェニル、2,6−ジクロロフェニル、4−ブロモフェニル、2−ニトロフェニル、4−ニトロフェニル、2,4−ジニトロフェニル、2,6−ジニトロフェニル、4−ジメチルアミノフェニル、4−アセチルフェニル、メトキシエチルフェニル、エトキシメチルフェニル、メチルチオフェニル、イソプロピルチオフェニル若しくはtert−ブチルチオフェニル又はC6(5-a)であり、ここで0≦a≦5である。
【0036】
場合により、官能基、アリール、アルキル、アリールオキシ、アルコキシ、ハロゲン、ヘテロ原子及び/又は複素環式基で置換されているC5〜C12シクロアルキルは、好ましくは、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチル、シクロドデシル、メチルシクロペンチル、ジメチルシクロペンチル、メチルシクロヘキシル、ジメチルシクロヘキシル、ジエチルシクロヘキシル、ブチルシクロヘキシル、メトキシシクロヘキシル、ジメトキシシクロヘキシル、ジエトキシシクロヘキシル、ブチルチオシクロヘキシル、クロロシクロヘキシル、ジクロロシクロヘキシル、ジクロロシクロペンチル、m≦30であり、0≦a≦mであり、そしてb=0又は1である、C2(m-a)-(1-b)2a-b及び例えばノルボニル又はノルボルネニルのような飽和又は不飽和二環式系である。
【0037】
場合により、官能基、アリール、アルキル、アリールオキシ、アルコキシ、ハロゲン、ヘテロ原子及び/又は複素環式基で置換されているC5〜C12シクロアルケニルは、好ましくは、3−シクロペンテニル、2−シクロヘキセニル、3−シクロヘキセニル、2,5−シクロヘサンジエニル又はm≦30であり、0≦a≦mであり、そしてb=0又は1であるC2(m-a)-3(1-b)2a-3bである。
【0038】
酸素、窒素及び/又は硫黄原子を含有し、場合により、官能基、アリール、アルキル、アリールオキシ、アルコキシ、ハロゲン、ヘテロ原子及び/又は複素環式基で置換されている5員〜6員複素環式基は、好ましくは、フリル、チオフェニル、ピリル、ピリジル、インドリル、ベンズオキサゾリル、ジオキソリル、ジオキシル、ベンズイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、ジメチルピリジル、メチルキノリル、ジメチルピリル、メトキシフリル、ジメトキシピリジル又はジフルオロピリジルである。
【0039】
2つの隣接する基が、共に、場合により、官能基、アリール、アルキル、アリールオキシ、アルコキシ、ハロゲン、ヘテロ原子及び/又は複素環式基で置換されており、場合により、1個以上の酸素及び/若しくは硫黄原子、及び/又は1つ以上の置換若しくは非置換イミノ基で中断されている、不飽和、飽和又は芳香族環を形成する場合、これは、好ましくは、1,3−プロピレン、1,4−ブチレン、1,5−ペンチレン、2−オキサ−1,3−プロピレン、1−オキサ−1,3−プロピレン、2−オキサ−1,3−プロピレン、1−オキサ−1,3−プロペニレン、3−オキサ−1,5−ペンチレン、1−アザ−1,3−プロペニレン、1−C1〜C4アルキル−1−アザ−1,3−プロペニレン、1,4−ブタ−1,3−ジエニレン、1−アザ−1,4−ブタ−1,3−ジエニレン又は2−アザ−1,4−ブタ−1,3−ジエニレンである。
【0040】
上記の基が、酸素及び/若しくは硫黄原子、並びに/又は置換若しくは非置換イミノ基を含有する場合、酸素及び/若しくは硫黄原子、並びに/又はイミノ基の数は、制限されない。一般に、基において5個以下であり、好ましくは4個以下であり、とりわけ好ましくは3個以下である。
【0041】
上記の基がヘテロ原子を含有する場合、一般に、少なくとも1個の炭素原子、好ましくは少なくとも2個の炭素原子が2個のヘテロ原子の間に存在する。
【0042】
特に好ましくは、基R1〜R9は、互いに独立して、下記:
・ 水素:
・ 例えば、メチル、エチル、1−プロピル、2−プロピル、1−ブチル、2−ブチル、2−メチル−1−プロピル、2−メチル−2−プロピル、1−ペンチル、2−ペンチル、3−ペンチル、2−メチル−1−ブチル、3−メチル−1−ブチル、2−メチル−2−ブチル、3−メチル−2−ブチル、2,2−ジメチル−1−プロピル、1−ヘキシル、2−ヘキシル、3−ヘキシル、2−メチル−1−ペンチル、3−メチル−1−ペンチル、4−メチル−1−ペンチル、2−メチル−2−ペンチル、3−メチル−2−ペンチル、4−メチル−2−ペンチル、2−メチル−3−ペンチル、3−メチル−3−ペンチル、2,2−ジメチル−1−ブチル、2,3−ジメチル−1−ブチル、3,3−ジメチル−1−ブチル、2−エチル−1−ブチル、2,3−ジメチル−2−ブチル、3,3−ジメチル−2−ブチル、1−ヘプチル、1−オクチル、1−ノニル、1−デシル、1−ウンデシル、1−ドデシル、1−テトラデシル、1−ヘキサデシル、1−オクタデシル、2−ヒドロキシエチル、ベンジル、3−フェニルプロピル、2−シアノエチル、2−(メトキシカルボニル)−エチル、2−(エトキシカルボニル)−エチル、2−(n−ブトキシカルボニル)−エチル、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、フルオロメチル、ペンタフルオロエチル、ヘプタフルオロプロピル、ヘプタフルオロイソプロピル、ノナフルオロブチル、ノナフルオロイソブチル、ウンデシルフルオロペンチル、ウンデシルフルオロイソペンチル、6−ヒドロキシヘキシル及びプロピルスルホン酸のような、非置換であるか又はヒドロキシル、ハロゲン、フェニル、シアノ、C1〜C6アルコキシカルボニル及び/若しくはSO3Hで1回から数回置換されている、合計で1〜20個の炭素原子を有する非分岐鎖又は分岐鎖C1〜C18アルキル;
・ 例えば、RO−(CHR−CH2−O)−CHR−CH2−又はRO−(CH2CH2CH2CH2O)−CH2CH2CH2CH2O−(ここで、R及びRは、好ましくは水素、メチル又はエチルであり、そしてmは、好ましくは0〜3である)、特に3−オキサブチル、3−オキサペンチル、3,6−ジオキサヘプチル、3,6−ジオキサオクチル、3,6,9−トリオキサデシル、3,6,9−トリオキサウンデシル、3,6,9,12−テトラオキサトリデシル及び3,6,9,12−テトラオキサテトラデシルのような、1〜100単位及び水素又は末端基としてC1〜C8アルキルを有するグリコール、ブチレングリコール及びそのオリゴマー;
・ ビニル;
・ アリル;
・ 例えばN,N−ジメチルアミノ及びN,N−ジエチルアミノのようなN,N−ジ−C1〜C6アルキルアミノ
を表す。
【0043】
とりわけ好ましくは、基R1〜R9は、互いに独立して、水素か、又は例えばメチル、エチル、1−ブチル、1−ペンチル、1−ヘキシル、1−ヘプチル若しくは1−オクチル、フェニル、2−ヒドロキシエチル、2−シアノエチル、2−(メトキシカルボニル)エチル、2−(エトキシカルボニル)エチル、2−(n−ブトキシカルボニル)エチル、N,N−ジメチルアミノ、N,N−ジエチルアミノ、塩素、並びにCHO−(CH2CH2O)−CH2CH2−及びCHCH2O−(CH2CH2O)−CH2CH2−(ここでmは、0〜3である)のようなC1〜C18アルキルを表す。
【0044】
とりわけ好ましく用いられるピリジニウムイオン(IIIa)は、
・ 基R1〜R5のうちの1つが、メチル、エチル又は塩素であり、残りの基R1〜R5が水素であるもの;
・ R3がジメチルアミノであり、残りの基R1、R2、R4及びR5が水素であるもの;
・ 基R1〜R5が全て水素であるもの;
・ R2が、カルボキシル又はカルボキサミドであり、残りの基R1、R2、R4及びR5が水素であるもの;或いは
・ R1とR2、又はR2とR3が、1,4−ブタ−1,3−ジエニレンであり、残りの基R1、R2、R4及びR5が水素であるもの
であり、特に、
・ 基R1〜R5が水素であるもの;又は
・ 基R1〜R5のうちの1つが、メチル又はエチルであり、残りの基R1〜R5が水素であるもの
である。
【0045】
記述できるとりわけ好ましいピリジニウムイオン(IIIb)は、1−メチルピリジニウム、1−エチルピリジニウム、1−(1−ブチル)ピリジニウム、1−(1−ヘキシル)ピリジニウム、1−(1−オクチル)ピリジニウム、1−(1−ドデシル)−ピリジニウム、1−(1−テトラデシル)−ピリジニウム、1−(1−ヘキサデシル)ピリジニウム、1,2−ジメチルピリジニウム、1−エチル−2−メチルピリジニウム、1−(1−ブチル)−2−メチルピリジニウム、1−(1−ヘキシル)−2−メチルピリジニウム、1−(1−オクチル)−2−メチルピリジニウム、1−(1−ドデシル)−2−メチルピリジニウム、1−(1−テトラデシル)−2−メチルピリジニウム、1−(1−ヘキサデシル)−2−メチルピリジニウム、1−メチル−2−エチルピリジニウム、1,2−ジエチルピリジニウム、1−(1−ブチル)−2−エチルピリジニウム、1−(1−ヘキシル)−2−エチルピリジニウム、1−(1−オクチル)−2−エチルピリジニウム、1−(1−ドデシル)−2−エチルピリジニウム、1−(1−テトラデシル)−2−エチルピリジニウム、1−(1−ヘキサデシル)−2−エチルピリジニウム、1,2−ジメチル−5−エチルピリジニウム、1,5−ジエチル−2−メチルピリジニウム、1−(1−ブチル)−2−メチル−3−エチルピリジニウム、1−(1−ヘキシル)−2−メチル−3−エチルピリジニウム及び1−(1−オクチル)−2−メチル−3−エチルピリジニウム、1−(1−ドデシル)−2−メチル−3−エチルピリジニウム、1−(1−テトラデシル)−2−メチル−3−エチルピリジニウム、並びに1−(1−ヘキサデシル)−2−メチル−3−エチルピリジニウムである。
【0046】
とりわけ好ましく用いられるピリダジニウムイオン(IIIb)は、
・ R1〜R4が水素であるもの;又は
・ 基R1〜R4のうちの1つが、メチル又はエチルであり、残りの基R1〜R4が水素であるもの
である。
【0047】
とりわけ好ましく用いられるピリミジニウムイオン(IIIc)は、
・ R1が、水素、メチル又はエチルであり、R2〜R4が、互いに独立して、水素又はメチルであるもの;又は
・ R1が、水素、メチル又はエチルであり、R2及びR4がメチルであり、R3が水素であるもの
である。
【0048】
とりわけ好ましく用いられるピラジニウムイオン(IIId)は、
・ R1が、水素、メチル又はエチルであり、R2〜R4が、互いに独立して、水素又はメチルであるもの;
・ R1が、水素、メチル又はエチルであり、R2及びR4がメチルであり、R3が水素であるもの;
・ R1〜R4がメチルであるもの;又は
・ R1〜R4がメチル又は水素であるもの
である。
【0049】
とりわけ好ましく用いられるイミダゾリウムイオン(IIIe)は、
・ R1が、水素、メチル、エチル、1−プロピル、1−ブチル、1−ペンチル、1−ヘキシル、1−オクチル、アリル、2−ヒドロキシエチル又は2−シアノエチルであり、R2〜R4が、互いに独立して、水素、メチル又はエチルであるもの
である。
【0050】
記述できるとりわけ好ましいイミダゾリウムイオン(IIIe)は、1−メチルイミダゾリウム、1−エチルイミダゾリウム、1−(1−ブチル)イミダゾリウム、1−(1−オクチル)イミダゾリウム、1−(1−ドデシル)イミダゾリウム、1−(1−テトラデシル)イミダゾリウム、1−(1−ヘキサデシル)イミダゾリウム、1,3−ジメチルイミダゾリウム、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、1−(1−ブチル)−3−メチルイミダゾリウム、1−(1−ブチル)−3−エチルイミダゾリウム、1−(1−ヘキシル)−3−メチルイミダゾリウム、1−(1−ヘキシル)−3−エチルイミダゾリウム、1−(1−ヘキシル)−3−ブチルイミダゾリウム、1−(1−オクチル)−3−メチルイミダゾリウム、1−(1−オクチル)−3−エチルイミダゾリウム、1−(1−オクチル)−3−ブチルイミダゾリウム、1−(1−ドデシル)−3−メチルイミダゾリウム、1−(1−ドデシル)−3−エチルイミダゾリウム、1−(1−ドデシル)−3−ブチルイミダゾリウム、1−(1−ドデシル)−3−オクチルイミダゾリウム、1−(1−テトラデシル)−3−メチルイミダゾリウム、1−(1−テトラデシル)−3−エチルイミダゾリウム、1−(1−テトラデシル)−3−ブチルイミダゾリウム、1−(1−テトラデシル)−3−オクチルイミダゾリウム、1−(1−ヘキサデシル)−3−メチルイミダゾリウム、1−(1−ヘキサデシル)−3−エチルイミダゾリウム、1−(1−ヘキサデシル)−3−ブチルイミダゾリウム、1−(1−ヘキサデシル)−3−オクチルイミダゾリウム、1,2−ジメチルイミダゾリウム、1,2,3−トリメチルイミダゾリウム、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1−(1−ブチル)−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1−(1−ヘキシル)−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1−(1−オクチル)−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1,4−ジメチルイミダゾリウム、1,3,4−トリメチルイミダゾリウム、1,4−ジメチル−3−エチルイミダゾリウム、3−ブチルイミダゾリウム、1,4−ジメチル−3−オクチルイミダゾリウム、1,4,5−トリメチルイミダゾリウム、1,3,4,5−テトラメチルイミダゾリウム、1,4,5−トリメチル−3−エチルイミダゾリウム、1,4,5−トリメチル−3−ブチルイミダゾリウム及び1,4,5−トリメチル−3−オクチルイミダゾリウムである。
【0051】
とりわけ好ましく用いられるピラゾリウムイオン(IIIf)、(IIIg)又は(IIIg′)は、
・ R1が、水素、メチル又はエチルであり、R2〜R4が、互いに独立して、水素又はメチルである
ものである。
【0052】
とりわけ好ましく用いられるピラゾリウムイオン(IIIh)は、
・ R1〜R4が、互いに独立して、水素又はメチルであるもの
である。
【0053】
とりわけ好ましく用いられる1−ピラゾリウムイオン(IIIi)は、
・ R1〜R6が、互いに独立して、水素又はメチルであるもの
である。
【0054】
とりわけ好ましく用いられる2−ピラゾリウムイオン(IIIj)又は(IIIj′)は、
・ R1が、水素、メチル又はフェニルであり、R2〜R6が、互いに独立して、水素又はメチルであるもの
である。
【0055】
とりわけ好ましく用いられる3−ピラゾリウムイオン(IIIk)又は(IIIk′)は、
・ R1及びR2が、互いに独立して、水素、メチル、エチル又はフェニルであり、R3〜R6が、互いに独立して、水素又はメチルであるもの
である。
【0056】
とりわけ好ましく用いられるイミダゾリニウムイオン(IIIl)は、
・ R1及びR2が、互いに独立して、水素、メチル、エチル、1−ブチル又はフェニルであり、R3及びR4が、互いに独立して、水素、メチル又はエチルであり、R5及びR6が、互いに独立して、水素又はメチルであるもの
である。
【0057】
とりわけ好ましく用いられるイミダゾリニウムイオン(IIIm)又は(IIIm′)は、
・ R1及びR2が、互いに独立して、水素、メチル又はエチルであり、R3〜R6が、互いに独立して、水素又はメチルであるもの
である。
【0058】
とりわけ好ましく用いられるイミダゾリニウムイオン(IIIn)又は(IIIn′)は、
・ R1〜R3が、互いに独立して、水素、メチル又はエチルであり、R4〜R6が、互いに独立して、水素又はメチルであるもの
である。
【0059】
とりわけ好ましく用いられるチアゾリウムイオン(IIIo)又は(IIIo′)及びオキサゾリウムイオン(IIIp)は、
・ R1が、水素、メチル、エチル又はフェニルであり、R2及びR3が、互いに独立して、水素又はメチルであるもの
である。
【0060】
とりわけ好ましく用いられる1,2,4−トリアゾリウムイオン(IIIq)、(IIIq′)又は(IIIq″)は、
・ R1及びR2が、互いに独立して、水素、メチル、エチル又はフェニルであり、R3が、水素、メチル又はフェニルであるもの
である。
【0061】
とりわけ好ましく用いられる1,2,3−トリアゾリウムイオン(IIIr)、(IIIr′)又は(IIIr″)は、
・ R1が、水素、メチル又はエチルであり、R2及びR3が、互いに独立して、水素又はメチルであるか、又はR2及びR3が共に、1,4−ブタ−1,3−ジエニレンであるもの
である。
【0062】
とりわけ好ましく用いられるピロリジニウムイオン(IIIs)は、
・ R1が、水素、メチル、エチル又はフェニルであり、R2〜R9が、互いに独立して、水素又はメチルであるもの
である。
【0063】
とりわけ好ましく用いられるイミダゾリジニウムイオン(IIIt)は、
・ R1〜R4が、互いに独立して、水素、メチル、エチル又はフェニルであり、R2及びR3並びにR5〜Rが、互いに独立して、水素又はメチルであるもの
である。
【0064】
とりわけ好ましく用いられるアンモニウムイオン(IIIu)は、
・ R1〜R3が、互いに独立して、C1〜C18アルキルであるもの;又は
・ R1及びR2が、共に、1,5−ペンチレン又は3−オキサ−1,5−ペンチレンであり、R3が、C1〜C18アルキル、2−ヒドロキシエチル又は2−シアノエチルであるもの
である
とりわけ好ましくは、記述できるアンモニウムイオン(IIIu)は、メチル−トリ−(1−ブチル)アンモニウム、N,N−ジメチルピペリジニウム及びN,N−ジメチルモルホリニウムである。
【0065】
記述されている基Rによる四級化によって一般式(IIIu)の第四級アンモニウムイオンが誘導される第三級アミンの例は、ジエチル−n−ブチルアミン、ジエチル−tert−ブチルアミン、ジエチル−n−ペンチルアミン、ジエチルヘキシルアミン、ジエチルオクチルアミン、ジエチル−(2−エチルヘキシル)アミン、ジ−n−プロピルブチルアミン、ジ−n−プロピル−n−ペンチルアミン、ジ−n−プロピルヘキシルアミン、ジ−n−プロピルオクチルアミン、ジ−n−プロピル−(2−エチルヘキシル)アミン、ジイソプロピルエチルアミン、ジイソプロピル−n−プロピルアミン、ジイソプロピルブチルアミン、ジイソプロピルペンチルアミン、ジイソプロピルヘキシルアミン、ジイソプロピルオクチルアミン、ジイソプロピル−(2−エチルヘキシル)−アミン、ジ−n−ブチルエチルアミン、ジ−n−ブチル−n−プロピルアミン、ジ−n−ブチル−n−ペンチルアミン、ジ−n−ブチルヘキシルアミン、ジ−n−ブチルオクチルアミン、ジ−n−ブチル−(2−エチルヘキシル)−アミン、N−n−ブチルピロリジン、N−sec−ブチルピロリジン、N−tert−ブチルピロリジン、N−n−ペンチルピロリジン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N−ジエチルシクロヘキシルアミン、N,N−ジ−n−ブチルシクロヘキシルアミン、N−n−プロピルピペリジン、N−イソプロピルピペリジン、N−n−ブチルピペリジン、N−sec−ブチルピペリジン、N−tert−ブチルピペリジン、N−n−ペンチルピペリジン、N−n−ブチルモルホリン、N−sec−ブチルモルホリン、N−tert−ブチルモルホリン、N−n−ペンチルモルホリン、N−ベンジル−N−エチルアニリン、N−ベンジル−N−n−プロピルアニリン、N−ベンジル−N−イソプロピルアニリン、N−ベンジル−N−n−ブチルアニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジエチル−p−トルイジン、N,N−ジ−n−ブチル−p−トルイジン、ジエチルベンジルアミン、ジ−n−プロピルベンジルアミン、ジ−n−ブチルベンジルアミン、ジエチルフェニルアミン、ジ−n−プロピルフェニルアミン及びジ−n−ブチルフェニルアミンである。
【0066】
好ましい第三級アミンは、ジイソプロピルエチルアミン、ジエチル−tert−ブチルアミン、ジイソプロピルブチルアミン、ジ−n−ブチル−n−ペンチルアミン、N,N−ジ−n−ブチルシクロヘキシルアミン、及びペンチル異性体の第三級アミンである。
【0067】
特に好ましい第三級アミンは、ジ−n−ブチル−n−ペンチルアミン、及びペンチル異性体の第三級アミンである。3つの同一の基を有する更に好ましい第三級アミンは、トリアリルアミンである。
【0068】
とりわけ好ましく用いられるグアニジニウムイオン(IIIv)は、
・ R1〜R5がメチルであるもの
である。
【0069】
記述できるとりわけ好ましいグアニジニウムイオン(IIIv)は、N,N,N′,N′,N″,N″−ヘキサメチルグアニジニウムである。
【0070】
とりわけ好ましく用いられるコリニウムイオン(IIIw)は、
・ R1及びR2が、互いに独立して、メチル、エチル、1−ブチル又は1−オクチルであり、R3が、水素、メチル、エチル、アセチル、−SO2OH又は−PO(OH)2であるもの;又は
・ R1が、メチル、エチル、1−ブチル又は1−オクチルであり、R2が、−CH2−CH2−OR4基であり、R3及びR4が、互いに独立して、水素、メチル、エチル、アセチル、−SO2OH又は−PO(OH)2であるもの;或いは
・ R1が、−CH2−CH2OR4基であり、R2が、−CH2−CH2−OR5基であり、R3〜R5が、互いに独立して、水素、メチル、エチル、アセチル、−SO2OH又は−PO(OH)2であるもの
である。
【0071】
特に好ましいコリニウムイオン(IIIw)は、R3が、水素、メチル、エチル、アセチル、5−メトキシ−3−オキサ−ペンチル、8−メトキシ−3,6−ジオキサ−オクチル、11−メトキシ−3,6,9−トリオキサ−ウンデシル、7−メトキシ−4−オキサ−ヘプチル、11−メトキシ−4,8−ジオキサ−ウンデシル、15−メトキシ−4,8,12−トリオキサ−ペンタデシル、9−メトキシ−5−オキサ−ノニル、14−メトキシ−5,10−オキサ−テトラデシル、5−エトキシ−3−オキサ−ペンチル、8−エトキシ−3,6−ジオキサ−オクチル、11−エトキシ−3,6,9−トリオキサ−ウンデシル、7−エトキシ−4−オキサ−ヘプチル、11−エトキシ−4,8−ジオキサ−ウンデシル、15−エトキシ−4,8,12−トリオキサ−ペンタデシル、9−エトキシ−5−オキサ−ノニル又は14−エトキシ−5,10−オキサ−テトラデシルから選択されるものである。
【0072】
記述できるとりわけ好ましいコリニウムイオン(IIIw)は、トリメチル−2−ヒドロキシエチルアンモニウム、ジメチル−ビス−2−ヒドロキシエチルアンモニウム又はメチル−トリス−2−ヒドロキシエチルアンモニウムである。
【0073】
とりわけ好ましく用いられるホスホニウムイオン(IIIx)は、
・ R1〜R3が、互いに独立して、C1〜C18アルキル、特にブチル、イソブチル、1−ヘキシル又は1−オクチルであるもの
である。
【0074】
上記の複素環式カチオンのうち、ピリジニウムイオン、ピラゾリニウム及びピラゾリウムイオン、並びにイミダゾリニウム及びイミダゾリウムイオンが好ましい。アンモニウム及びコリニウムイオンが更に好ましい。
【0075】
特に好ましいイオンは、1−メチルピリジニウム、1−エチルピリジニウム、1−(1−ブチル)ピリジニウム、1−(1−ヘキシル)ピリジニウム、1−(1−オクチル)ピリジニウム、1−(1−ドデシル)ピリジニウム、1−(1−テトラデシル)ピリジニウム、1−(1−ヘキサデシル)ピリジニウム、1,2−ジメチルピリジニウム、1−エチル−2−メチルピリジニウム、1−(1−ブチル)−2−メチルピリジニウム、1−(1−ヘキシル)−2−メチルピリジニウム、1−(1−オクチル)−2−メチルピリジニウム、1−(1−ドデシル)−2−メチルピリジニウム、1−(1−テトラデシル)−2−メチルピリジニウム、1−(1−ヘキサデシル)−2−メチルピリジニウム、1−メチル−2−エチルピリジニウム、1,2−ジエチルピリジニウム、1−(1−ブチル)−2−エチルピリジニウム、1−(1−ヘキシル)−2−エチルピリジニウム、1−(1−オクチル)−2−エチルピリジニウム、1−(1−ドデシル)−2−エチルピリジニウム、1−(1−テトラデシル)−2−エチルピリジニウム、1−(1−ヘキサデシル)−2−エチルピリジニウム、1,2−ジメチル−5−エチルピリジニウム、1,5−ジエチル−2−メチルピリジニウム、1−(1−ブチル)−2−メチル−3−エチルピリジニウム、1−(1−ヘキシル)−2−メチル−3−エチルピリジニウム、1−(1−オクチル)−2−メチル−3−エチルピリジニウム、1−(1−ドデシル)−2−メチル−3−エチルピリジニウム、1−(1−テトラデシル)−2−メチル−3−エチルピリジニウム、1−(1−ヘキサデシル)−2−メチル−3−エチルピリジニウム、1−メチルイミダゾリウム、1−エチルイミダゾリウム、1−(1−ブチル)イミダゾリウム、1−(1−オクチル)イミダゾリウム、1−(1−ドデシル)イミダゾリウム、1−(1−テトラデシル)イミダゾリウム、1−(1−ヘキサデシル)イミダゾリウム、1,3−ジメチルイミダゾリウム、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、1−(1−ブチル)−3−メチルイミダゾリウム、1−(1−ヘキシル)−3−メチルイミダゾリウム、1−(1−オクチル)−3−メチルイミダゾリウム、1−(1−ドデシル)−3−メチルイミダゾリウム、1−(1−テトラデシル)−3−メチルイミダゾリウム、1−(1−ヘキサデシル)−3−メチルイミダゾリウム、1,2−ジメチルイミダゾリウム、1,2,3−トリメチルイミダゾリウム、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1−(1−ブチル)−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1−(1−ヘキシル)−2,3−ジメチルイミダゾリウム及び1−(1−オクチル)−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1,4−ジメチルイミダゾリウム、1,3,4−トリメチルイミダゾリウム、1,4−ジメチル−3−エチルイミダゾリウム、3−ブチルイミダゾリウム、1,4−ジメチル−3−オクチルイミダゾリウム、1,4,5−トリメチルイミダゾリウム、1,3,4,5−テトラメチルイミダゾリウム、1,4,5−トリメチル−3−エチルイミダゾリウム、1,4,5−トリメチル−3−ブチルイミダゾリウム、1,4,5−トリメチル−3−オクチルイミダゾリウム、トリメチル−2−ヒドロキシエチルアンモニウム、ジメチル−ビス−2−ヒドロキシエチルアンモニウム、並びにメチル−トリス−2−ヒドロキシエチルアンモニウムである。
【0076】
原則として、全てのアニオンをアニオンとして用いることができる。
【0077】
イオン性液体のアニオン〔Y〕n−は、例えば、下記:
・ 式:F、Cl、Br、I、BF4、PF6、CF3SO3、(CF3SO32、CF3CO2、CCl3CO2、CN、SCN、OCN
で示されるハロゲン化物及びハロゲン含有化合物からなる群、
・ 一般式:SO42−、HSO4、SO32−、HSO3、RaOSO3、RaSO3
で示される硫酸塩、亜硫酸塩及びスルホン酸塩からなる群、
・ 一般式:PO43−、HPO42−、H2PO4、RaPO42−、HRaPO4、RabPO4
で示されるリン酸塩からなる群、
・ 一般式:RaHPO3、RabPO2、RabPO3
で示されるホスホン酸塩及びホスフィン酸塩からなる群、
・ 一般式:PO33−、HPO32−、H2PO3、RaPO32−、RaHPO3、RabPO3
で示される亜リン酸塩からなる群、
・ 一般式:RabPO2、RaHPO2、RabPO、RaHPO
で示される亜ホスホン酸塩及び亜ホスフィン酸塩からなる群、
・ 一般式:RaCOO
で示されるカルボン酸からなる群、
・ 一般式:BO33−、HBO32−、H2BO3、RabBO3、RaHBO3、RaBO32−、B(ORa)(ORb)(OR)(OR、B(HSO4、B(RaSO4
で示されるホウ酸塩からなる群、
・ 一般式:RaBO2−、RabBO
で示されるボロン酸塩からなる群、
・ 一般式:SiO44−、HSiO43−、H2SiO42−、HSiO4、RaSiO43−、RabSiO42−、RabSiO4、HRaSiO42−、H2aSiO4、HRabSiO4
で示されるケイ酸塩及びケイ酸エステルからなる群、
・ 一般式:RaSiO33−、RabSiO2−、RabSiO、RabSiO3、RabSiO2、RabSiO32−
で示されるアルキル−又はアリールシラン塩からなる群、
・ 一般式:
【化6】

で示されるカルボン酸イミド、ビス(スルホニル)イミド及びスルホニルイミドからなる群、
・ 一般式:
【化7】

で示されるメチドからなる群
より選択される。
【0078】
これらの式において、Ra、Rb、R及びRは、互いに独立して、水素、C1〜C30アルキル、場合により1個以上の非隣接酸素及び/若しくは硫黄原子、及び/又は1つ以上の置換若しくは非置換イミノ基で中断されているC2〜C18アルキル、C6〜C14アリール、C5〜C12シクロアルキル、又は酸素、窒素及び/若しくは硫黄原子を含有する5員〜6員複素環式基を示し、ここで、これらのうちの2つが共に、場合により1個以上の酸素及び/若しくは硫黄原子、及び/又は1つ以上の非置換若しくは置換イミノ基で中断されている、不飽和、飽和、又は芳香族環を形成することができ、記述された基は、それぞれ、官能基、アリール、アルキル、アリールオキシ、アルコキシ、ハロゲン、ヘテロ原子及び/又は複素環式基により追加的に置換されていることができる。
【0079】
これらの式において、場合により官能基、アリール、アルキル、アリールオキシ、アルコキシ、ハロゲン、ヘテロ原子及び/又は複素環式基で置換されているC1〜C18アルキルは、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、2−エチルヘキシル、2,4,4−トリメチルペンチル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、1,1−ジメチルプロピル、1,1−ジメチルブチル、1,1,3,3−テトラメチルブチル、ベンジル、1−フェニルエチル、α,α−ジメチルベンジル、ベンズヒドリル、p−トリルメチル、1−(p−ブチルフェニル)エチル、p−クロロベンジル、2,4−ジクロロベンジル、p−メトキシベンジル、m−エトキシベンジル、2−シアノエチル、2−シアノプロピル、2−メトキシカルボニルエチル、2−エトキシカルボニルエチル、2−ブトキシカルボニルプロピル、1,2−ジ−(メトキシカルボニル)エチル、2−メトキシエチル、2−エトキシエチル、2−ブトキシエチル、ジエトキシメチル、ジエトキシエチル、1,3−ジオキソラン−2−イル、1,3−ジオキサン−2−イル、2−メチル−1,3−ジオキソラン−2−イル、4−メチル−1,3−ジオキソラン−2−イル、2−イソプロポキシエチル、2−ブトキシプロピル、2−オクチルオキシエチル、クロロメチル、トリクロロメチル、トリフルオロメチル、1,1−ジメチルブチル−2−クロロエチル、2−メトキシイソプロピル、2−エトキシエチル、ブチルチオメチル、2−ドデシルチオエチル、2−フェニルチオエチル、2,2,2−トリフルオロエチル、2−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシプロピル、3−ヒドロキシプロピル、4−ヒドロキシブチル、6−ヒドロキシヘキシル、2−アミノエチル、2−アミノプロピル、4−アミノブチル、6−アミノヘキシル、2−メチルアミノエチル、2−メチルアミノプロピル、3−メチルアミノプロピル、4−メチルアミノブチル、6−メチルアミノヘキシル、2−ジメチルアミノエチル、2−ジメチルアミノプロピル、3−ジメチルアミノプロピル、4−ジメチルアミノブチル、6−ジメチルアミノヘキシル、2−ヒドロキシ−2,2−ジメチルエチル、2−フェノキシエチル、2−フェノキシプロピル、3−フェノキシプロピル、4−フェノキシブチル、6−フェノキシヘキシル、2−メトキシエチル、2−メトキシプロピル、3−メトキシプロピル、4−メトキシブチル、6−メトキシヘキシル、2−エトキシエチル、2−エトキシプロピル、3−エトキシプロピル、4−エトキシブチル又は6−エトキシヘキシルである。
【0080】
場合により、1個以上の非隣接酸素及び/若しくは硫黄原子、及び/又は1つ以上の置換若しくは非置換イミノ基で中断されているC2〜C18アルキルは、例えば、5−ヒドロキシ−3−オキサペンチル、8−ヒドロキシ−3,6−ジオキサオクチル、11−ヒドロキシ−3,6,9−トリオキサウンデシル、7−ヒドロキシ−4−オキサヘプチル、11−ヒドロキシ−4,8−ジオキサウンデシル、15−ヒドロキシ−4,8,12−トリオキサペンタデシル、9−ヒドロキシ−5−オキサノニル、14−ヒドロキシ−5,10−オキサテトラデシル、5−メトキシ−3−オキサペンチル、8−メトキシ−3,6−ジオキサオクチル、11−メトキシ−3,6,9−トリオキサウンデシル、7−メトキシ−4−オキサヘプチル、11−メトキシ−4,8−ジオキサウンデシル、15−メトキシ−4,8,12−トリオキサペンタデシル、9−メトキシ−5−オキサノニル、14−メトキシ−5,10−オキサテトラデシル、5−エトキシ−3−オキサペンチル、8−エトキシ−3,6−ジオキサオクチル、11−エトキシ−3,6,9−トリオキサウンデシル、7−エトキシ−4−オキサヘプチル、11−エトキシ−4,8−ジオキサウンデシル、15−エトキシ−4,8,12−トリオキサペンタデシル、9−エトキシ−5−オキサノニル又は14−エトキシ−5,10−オキサテトラデシルである。
【0081】
2つの基が環を形成する場合、これらの基は、共に、例えば縮合単位として、1,3−プロピレン、1,4−ブチレン、2−オキサ−1,3−プロピレン、1−オキサ−1,3−プロピレン、2−オキサ−1,3−プロペニレン、1−アザ−1,3−プロペニレン、1−C1〜C4アルキル−1−アザ−1,3−プロペニレン、1,4−ブタ−1,3−ジエニレン、1−アザ−1,4−ブタ−1,3−ジエニレン又は2−アザ−1,4−ブタ−1,3−ジエニレンを示す。
【0082】
非隣接酸素及び/若しくは硫黄原子、及び/又はイミノ基の数は、原則として制限されないか、又は基若しくは環単位の大きさにより自動的に制限される。一般に、特定の基において5個以下、好ましくは4個以下、又はとりわけ好ましくは3個以下である。更に、一般に少なくとも1個、好ましくは少なくとも2個の炭素原子が2個のヘテロ原子の間に存在する。
【0083】
置換及び非置換イミノ基は、例えば、イミノ、メチルイミノ、イソプロピルイミノ、n−ブチルイミノ又はtert−ブチルイミノであることができる。
【0084】
用語「官能基」は、例えば、以下:カルボキシル、カルボキサミド、ヒドロキシル、ジ−(C1〜C4アルキル)アミノ、C1〜C4アルコキシカルボニル、シアノ又はC1〜C4アルコキシを意味するものとして理解される。この文脈において、C1〜C4アルキルは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル又はtert−ブチルである。
【0085】
場合により、官能基、アリール、アルキル、アリールオキシ、アルコキシ、ハロゲン、ヘテロ原子及び/又は複素環式基で置換されているC6〜C14アリールは、例えば、フェニル、トリル、キシリル、α−ナフチル、β−ナフチル、4−ジフェニリル、クロロフェニル、ジクロロフェニル、トリクロロフェニル、ジフルオロフェニル、メチルフェニル、ジメチルフェニル、トリメチルフェニル、エチルフェニル、ジエチルフェニル、イソプロピルフェニル、tert−ブチルフェニル、ドデシルフェニル、メトキシフェニル、ジメトキシフェニル、エトキシフェニル、ヘキシルオキシフェニル、メチルナフチル、イソプロピルナフチル、クロロナフチル、エトキシナフチル、2,6−ジメチルフェニル、2,4,6−トリメチルフェニル、2,6−ジメトキシフェニル、2,6−ジクロロフェニル、4−ブロモフェニル、2−若しくは4−ニトロフェニル、2,4−若しくは2,6−ジニトロフェニル、4−ジメチルアミノフェニル、4−アセチルフェニル、メトキシエチルフェニル又はエトキシメチルフェニルである。
【0086】
場合により、官能基、アリール、アルキル、アリールオキシ、ハロゲン、ヘテロ原子及び/又は複素環式基で置換されているC5〜C12シクロアルキルは、例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチル、シクロドデシル、メチルシクロペンチル、ジメチルシクロペンチル、メチルシクロヘキシル、ジメチルシクロヘキシル、ジエチルシクロヘキシル、ブチルシクロヘキシル、メトキシシクロヘキシル、ジメトキシシクロヘキシル、ジエトキシシクロヘキシル、ブチルチオシクロヘキシル、クロロシクロヘキシル、ジクロロシクロヘキシル、ジクロロシクロペンチル、及びノルボルニル又はノルボルネニルのような飽和又は不飽和二環式系である。
【0087】
酸素、窒素及び/又は硫黄原子を含有する5員〜6員複素環式基は、例えば、フリル、チオフェニル、ピリル、ピリジル、インドリル、ベンズオキサゾリル、ジオキソリル、ジオキシル、ベンズイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、ジメチルピリジル、メチルキノリル、ジメチルピリル、メトキシフリル、ジメトキシピリジル、ジフルオロピリジル、メチルチオフェニル、イソプロピルチオフェニル又はtert−ブチルチオフェニルである。
【0088】
上述の多様なイオン性液体の、標的を定めて調整した混合物の使用も、個々の場合において有利に行うことができることは言うまでもない。本発明の文脈において、該当の塩にイミダゾリウムカチオンを有するイオン性液体が特に有益であることが見出された。イミダゾリウム環の1及び3位又は1−、2−及び3位が、(C1〜C6)アルキル基で置換されていることが、本明細書においてとりわけ好ましい。イミダゾリウムカチオンが1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、1,3−ジメチルイミダゾリウム又は1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムカチオンである場合、特に有益であることが証明されている。
【0089】
イオン性液体のための上述のカチオンも、対応するアニオンの選択に関しては実質的に制限されない。特定のカチオンに対するアニオンが、ハロゲン化物、過塩素酸、擬ハロゲン化物、硫酸、特に硫酸水素、亜硫酸、スルホン酸、リン酸、アルキルリン酸、特にモノ−及び/若しくはジアルキルリン酸アニオン(好ましいアルキル基は、メチル、エチル又はプロピル基である)、並びに/又はカルボン酸アニオン、特にC1〜C6カルボン酸アニオン(好ましくは、酢酸又はプロピオン酸アニオン)であることが、特に好ましい。ハロゲン化物イオンが、塩化物、臭化物及び/又はヨウ化物イオンとして存在すること、擬ハロゲン化物イオンが、シアン化物、チオシアン酸及び/又はシアン酸イオンとして存在すること、並びにC1〜C6カルボン酸イオンが、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ヘキサン酸、マレイン酸、フマル酸、シュウ酸、乳酸、ピルビン酸、メタンスルホン酸、トシラート及び/又はアルカン硫酸イオンとして存在することが、特に好ましい。
【0090】
序列のため、以下の有益なアニオン:Ra−COO、Ra−SO3、RabPO4(ここで、Ra及びRbは、上述の意味を有する)も指定され、これには、特に、式:(CHO)2PO2及び(C25O)2PO2のアニオン、並びに安息香酸アニオン、好ましくは(C25O)2PO2及び安息香酸のアニオンが含まれる。
【0091】
本発明が使用される特定の場合に特に適しているイオン性液体を用いることは、当業者にとって容易に可能なことである。特に好ましいイオン性液体は、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムアセテート、1,3−ジメチルイミダゾリウムアセテート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムアセテート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロライド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムジエチル−ホスフェート、1−メチル−3−メチルイミダゾリウムジメチル−ホスフェート、1−メチル−3−メチルイミダゾリウムホルメート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムオクタノエート、1,3−ジエチルイミダゾリウムアセテート及び1−エチル−3−メチルイミダゾリウムプロピオネートである。これらのうち、以下のものがとりわけ好ましい:1−エチル−3−メチルイミダゾリウムアセテート、1,3−ジメチルイミダゾリウムアセテート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムアセテート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムジエチル−ホスフェート、1−メチル−3−メチルイミダゾリウムジメチル−ホスフェート、1,3−ジエチルイミダゾリウムアセテート及び1−エチル−3−メチルイミダゾリウムプロピオネート。
【0092】
特定の意図される使用のため、また特に特定のアニオン性及びカチオン性の部分に関して、特に適しているイオン性液体を選択する多様な可能性が存在することを、容易に理解することができる。上述の多数の可能性のうち、多様なアニオン、カチオン及びアニオン/カチオン対が、以下において好ましいものとして強調される:
アニオン:RaCOO(ここでRaは、好ましくはアルキル、特にC1〜C8アルキル、とりわけ好ましくはC1〜C3アルキル又はフェニルを示す);リン酸塩(好ましくはジアルキル−ホスフェート、特にジ−(C1〜C3アルキル)ホスフェート、ジメチル−ホスフェート、ジエチル−ホスフェート及びジ−n−プロピルホスフェートが特に好ましい);ホスホン酸塩(特に、O−アルキルアルキル−ホスホネート、O−メチルメチル−ホスホネート、O−メチル−エチル−ホスホネート、O−エチル−メチル−ホスホネート及びO−エチルエチル−ホスホネートが特に好ましい)。
【0093】
カチオン:上述の式IIIeの化合物、特に1−エチル−3−メチルイミダゾリウム(EMIM)、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム(BMIM)、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム(EMMIM)及び1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム(BMMIM);上述の式IIIaの化合物、特にN−アルキル−ピリジニウム、特に好ましくはN−メチルピリジニウム、N−エチルピリジニウム、N−メチル−2−メチルピリジニウム、N−メチル−3−メチルピリジニウム、N−エチル−2−メチルピリジニウム及びN−エチル−3−メチルピリジニウム;上述の式IIIfの化合物、特に1,2,4−トリメチルピラゾリウム。
【0094】
上記に提示された可能性のうちでアニオン+カチオンの特に好ましい組み合わせについて以下を記述できる:RaCOO+上述の式IIIeの化合物及びリン酸塩+上述の式IIIeの化合物。
【0095】
更に、以下の記載は、本発明の有益な実施態様、上記に特に詳細に記載されている化合物に関することが指摘される。個々の場合において特定のイオン性液体が参照される場合、これらの記述は、記載の更なるイオン性液体にも同等に適用されることを、当業者は容易に理解することができる。
【0096】
上述のアニオンが特別に有益である一つの可能な理由は、これらが特に強力な水素結合受容体であり、これが良好な溶解結果の理由である可能性である。これらのアニオンは、全て水素結合受容体として既知であり、広範囲な水素結合網状構造において作用する。ここで、どのアニオンが、溶解及び再生される特に選択された炭水化物の個々の場合に特に適しているかを決定することは、簡単な試験の助けにより、当業者に任せられる。
【0097】
本発明の目的において、溶融イオン性液体が−100〜+150℃、特に−30〜+100℃の融点を有する場合に有益であり、−30〜+80℃の範囲が特に好ましい。特に溶解される炭水化物の熱分解を排除することができる場合は、100℃を超える融点を有するイオン性液体を用いることができる。しかし大部分の場合では、この最大値を超えないことが有益である。
【0098】
したがって、上述の溶液系は、あらゆる所望の炭水化物を溶解し、それらを例えば凝固媒質での再生に付すために利用可能である。
【0099】
炭水化物は、好ましくはデンプン、セルロース及び/又はデンプンとセルロースの誘導体の形態である。誘導体はエステル又はエーテルとして存在することが好ましい。エステルは、例えば、酢酸セルロース及び酪酸セルロースであることができ、エーテルは、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース及びヒドロキシプロピルセルロースであることができる。
【0100】
炭水化物、特にセルロースを、プロトン性溶媒、特に水が既に存在する溶液系に溶解することが有益である。すなわち、プロトン性溶媒、特に水の、定義され、予め規定及び調整された含有量を有する均質溶液が存在する。炭水化物を含有するこの溶液系を、凝固により繊維又は同様の構造物に加工するために、更なるプロトン性溶媒、例えばアルコール及び/又は水をこの系に加えると、局所的な沈殿をもたらす。凝固の際に、プロトン性溶媒、特に水の勾配が、凝固側から残りの溶液の中心まで存在する。最後に、炭水化物、特にセルロースの全体が拡散律速によって沈殿する。この方法で所望の沈殿物質が得られる。このことは下記でより詳細に考察される。
【0101】
本発明は、溶解される炭水化物の定量化についていかなる実質的な制限も受けない。好ましくは、デンプン、セルロース及び/又はその誘導体は、1〜35質量%の量、特に約5〜20質量%の量で溶液系に用いられる。値が約1質量%よりも下がると、望ましい採算性が確立されない。
【0102】
再生炭水化物に求められる品質に関して、デンプン、セルロース及び/又はその誘導体を溶解することが、実質的に適切である。このことは有利な品質にとって好ましい。したがって、溶液系における溶解を約20〜150℃、特に約30〜120℃で実施することが適切である。
【0103】
溶液系、例えば凝固媒質に溶解される炭水化物に求められる再生において、炭水化物を含有する溶液系の粘度を制御された方法で調整することが適切である。この溶液系のゼロ粘度(回転粘度計で測定)は、適切には、約5〜150000Pa.s、特に約10〜100000Pa.sにおいてである。約5〜10000Pa.s、特に約10〜2500Pa.sでゼロ粘度であることが更に好ましく、例えば押出機による溶液系の加工は、これらのゼロ粘度の限界内であることが特に有益である。
【0104】
約200〜3500、特に約300〜1500の平均重合度を有する場合、セルロース又はその誘導体を本発明の溶液系の助けを借りて再生することは、特に価値がある。例えば強度、弾性率及び剛性のような有益な生成物特性は、高分子量のセルロース(800を超えるDP)を加工することによって達成される。
【0105】
得られる溶液系を炭水化物の溶解後、脱ガスすることは、本明細書において及び参照される他の炭水化物に関連しても有益である。これは、撹拌又は真空の適用によって実施することができる。
【0106】
本発明は、炭水化物を含有する溶液系の有利な製造方法を提案する目的も有する。これは、炭水化物、特にセルロース、デンプン及び/又はその誘導体を、上記で定義された溶融イオン性液体と、十分な量のプロトン性溶媒又は幾つかのプロトン性溶媒の混合物と、溶解が必要とされる程度まで実施されるまで、特に完了するまで、混合することを含み、プロトン性溶媒として水が単独で使用される場合、これは、5質量%を超える量で溶液系に存在する。この定量化データの特定の実施態様に関して、上記が参照される。
【0107】
「完全な溶解」の有益な実施態様が上記で参照されるとき、溶解混合物を、25メッシュ未満のメッシュ幅を有するフィルター繊維で濾過することができ、濾過溶液が明澄であり、その流動性が構造的に粘性であり、更に溶液がゲル粒子を含有せず、したがって、産業的に特に有益な方法で更に加工することができる場合、完全な溶解が得られることを意味すると理解される。
【0108】
炭水化物を含有する溶液系の出発構成成分の混合は、好ましくは、特に押出機の助けを借りて高剪断力の作用下で実施される。二軸スクリュー押出機が本明細書において特に有益であることが証明されている。溶解は、更に、混合の際にマイクロ波で同時に照射することによって更に促進され、超音波が特に作用を有する。炭水化物の溶解は、溶液系の温度を上昇させることによって促進される。高温は、適切には、約20〜150℃、特に約30〜120℃である。
【0109】
本発明の文脈において、あらゆる所望の炭水化物を有利に処理又は更に加工及び再生できることが、上記に既に示されている。本発明の方法は、セルロース出発材料の再生処理のために特に有益である。セルロース出発材料は、好ましくは繊維状セルロース、特に木材パルプ、リンター若しくは紙として、及び/又は他の天然セルロース繊維の形態で存在する。天然のセルロース繊維のうち、大麻、ココナッツ、ジュート、竹及び/又はサイザル麻繊維が有益であることを強調することができる。再生炭水化物に求められる最適な品質に関して、上記に参照された1つ以上の好ましい手段を取る、例えば脱ガスをするばかりでなく、あらゆる未溶解粒子の存在、また形成されるあらゆるミクロゲルを排除するために、炭水化物を含有する溶媒系を、更に加工する前に、特に圧力を適用して又は真空下でフィルターにより濾過することも、本明細書において適切であることが証明されている。この文脈において、ミクロゲルの量が2質量%未満であると、有益であることが見出されている。得られる生成物の品質を改善するために、上記で既に参照されているように、溶液系を、含有されている炭水化物の再生のために更に加工する前に、脱ガスすることが適切であり、これは、適切には撹拌しながら真空下で実施される。これに関して特定の構成条件はない。
【0110】
上記に挙げられた炭水化物を含有する本発明の溶液系の特定の価値は、特に炭水化物がデンプン、セルロース及びデンプンとセルロースの誘導体の形態で存在する場合には、より広範囲な再生加工に置かれている。したがってこの溶液系を凝固媒質に、特に炭水化物を溶解せず、かつ溶融イオン性液体と混和性である溶媒を含有する凝固媒質に移すことができる。あらゆる所望の造形品をこの方法により形成することができる。溶液系が、特にまた押出機が使用される湿式紡糸法に付される場合において、特に有益である。この目的に特に適している非溶媒は、水、並びに/又はアルコール、特にメタノール、エタノール、プロパノール及びブタノールであり、水が特に好ましい。この文脈において、凝固媒質中の特定の非溶媒又は凝固媒質が、凝固媒質又は凝固浴に導入される溶液系のプロトン性非溶媒とほぼ同一であると、有益である。言い換えると、水が炭水化物の溶液と凝固媒質の両方に含有されていると、特に有益である。炭水化物を含有する溶液系を、非フィブリル化繊維の製造用の紡糸溶液として使用することも有益である。このことは、WO2003/029329の従来技術が、例えば、水が1質量%を超える量で溶液系に含有されている場合、これはセルロースの溶解性を著しく妨げるばかりか、その繊維構造に悪影響を与えることを示しているので、特に驚くべきことである。本発明は、このWO2003/029329の傾向を決める情報に対して特に有益な技術的教示を作り出した。再生溶液の必須構成成分として水を使用することは、環境保護の条件において特に価値があり、費用に関して有益である。イオン性液体を水媒体から、問題なく、水を完全に除去する必要がなく回収することができる。例えば以下の手段を水又は他のプロトン性溶媒の除去の際に取ることができる:組み込まれている水及び/又は他のプロトン性溶媒のパーベーパレーション、逆浸透、蒸発。
【0111】
上記の記述に基づいて、炭水化物を含有する溶液系を、非フィブリル化繊維の製造用の紡糸溶液として特に有利に使用できることが見出された。高結晶化度指数の、例えば0.5を超える結晶化度指数CIの短繊維及び長繊維を得るために、エアギャップ紡糸装置を用いることが好ましい。
【0112】
炭水化物、特にセルロースの再生についての本発明の概念を最適化するために、溶液系の粘度に注目することも適切である。したがって、セルロースを含有する溶液系が高粘度を有することが有益である。本発明の文脈において、約5〜150000Pa.s、特に約10〜10000Pa.sのゼロ粘度(回転粘度計で測定)を確立することが適切であり、100〜60000の範囲が特に好ましい。ゼロ粘度が約5〜10000Pa.s、特に約10〜2500Pa.sであることが、更に好ましい。溶液系中のセルロースの含有量は、好ましくは約5〜25質量%であり、一方、平均重合度は、特に3500までであり、とりわけ好ましくは、約300〜1500の間にあるべきである。個々の場合において、最低値が約350、最大値が約1500に調整されることが、特に有益である。
【0113】
本発明を成功裏に完全に実現するために特定の添加剤を組み込むことは、全く必要ではない。しかし、添加剤を添加して、特にセルロースのフィラメント又は短繊維の形態で得られた沈殿物質の特定の特性を調整することができる。考慮される場合、添加剤を、方法の様々な時点で用いることができる。したがって、これらを、凝固媒質、炭水化物を含有する溶液系、及び/又は後に続く工程において、例えば改質媒質に添加することができる。添加剤は、例えば、マイクロカプセル、孔形成剤、可塑剤、艶消剤、防炎加工剤、殺菌剤、架橋剤、疎水化剤、帯電防止剤、及び/又は着色剤であることができる。水単独を沈殿又は凝固剤として使用し、添加剤を加えないことが有益である。アルコール、アルコールの混合物、又はアルコールと水の混合物を沈殿又は凝固媒質として使用すると、個々の場合において更に有益である。したがって添加剤を加えないことが有益である。
【0114】
再生手段を実施するに際し、炭水化物を含有する溶液系を、加工する前に、特に約80〜120℃に加熱すること、又は凝固媒質を特に約40〜90℃の温度に調整することが特に適切である。この手段は、溶液の好ましい粘度が確立され、溶媒が有利に洗い流されるという利点をもたらす。
【0115】
本発明による提案の特定の利点は、凝固浴又は媒質、特に水に沈殿した炭水化物、特にデンプン、セルロース及び/又はデンプンとセルロースの誘導体を、問題なく分離し、残った水相を、場合により部分的な蒸発の後で回収し、再生される新たな炭水化物が組み込まれる元の溶液系の製造のために用いることができることである。分離は、例えば濾過、遠心分離又は他の適切な手段により実施することができる。
【0116】
したがって本発明は多様な実施態様を有し、これらの実施態様に関して上記に包括的に記載されてきた。言うまでもないことであるが、特に再生セルロース繊維の形態の、炭水化物の再生後に得られるプロセス生成物も、本明細書で保護される。
【0117】
したがって本発明は、非フィブリル化しているセルロースに基づく紡糸繊維も提供し、1mg/g未満、特に0.75mg/g未満の硫黄含有量、20μg/g未満、特に15μg/g未満の銅含有量により際立っている。硫黄含有量が0.5mg/g未満、特に0.25mg/g未満であり、銅含有量が10μg/g未満、特に5μg/g未満であることが、本明細書において好ましい。硫黄及び銅含有量に関する本発明の紡糸繊維のデータは、凝固浴から現れる非洗浄紡糸繊維に特に関連する。
【0118】
本発明の紡糸繊維は、有益な保水能力により際立っている。これは、好ましくは約50〜300%、特に約65〜200%である(DIN53184に準じて、(湿潤質量−乾燥質量)/乾燥質量×100%)。これらは、更に、有益な最大引張力伸びを示す。DIN EN ISO 2062に準じた最大引張力は、少なくとも6cN/tex、特に少なくとも10cN/texである。DIN EN ISO 2062に準じた最大引張力伸びは、好ましくは少なくとも4%、特に少なくとも6%である。
【0119】
本発明の紡糸繊維、特に湿式紡糸法で得られるものは、これらが「非フィブリル化」していることによっても際立っている。これは更なる説明を必要とする:NMMO方法により製造されるリヨセル繊維は、円形から楕円形の繊維の断面を有し、ビスコース及びモーダル繊維と対照的に、著しいフィブリル構造を有し、繊維の断面にわたってほぼ均一である。0.5〜1.0μmの範囲の直径を有するマクロフィブリルが存在し、これは、通常産業界において問題である著しい湿式フィブリル化及びピリングに関連する。フィブリル化は、下記に記載されるフィブリル化試験の助けを借りて分類することができる。
【0120】
8個のフィラメントを試料材料から分離する。繊維を顕微鏡のスライドの上に真っすぐに置き、両面接着テープで端を固定する。繊維を、顕微鏡のスライドの上でメスにより2cmの長さに切断する。8個の繊維を、4mlの脱イオン水を有する円筒形の20mlガラス容器(高さ50mm、直径30mm)の中に導入する。試料ガラスを適切な振とうサーモスタット(例えば、B.Braun製)に固定し、160rpmで9時間振とうする。次に繊維を顕微鏡スライドに移し、脱イオン水で完全に包埋し、カバーガラスを備える。評価を、透過光線型顕微鏡(例えば、Zeiss Axioplan製)で実施する。スライドを中間で拡大することなく20倍に拡大する。写真を位相差で取り、これにより投影しているフィブリルを明確に目に見えるように表すことができる。繊維の中心に沿って580μmの距離を測定する。ここで、この測定距離内にある個々の繊維だけを数える。この倍率で明確に目に見えるこれらの繊維を数える。測定操作は、試料1つあたり4つの画像で実施し、それぞれ異なる繊維から始まる。
【0121】
フィブリル化の評価:数えられたフィブリル0〜5個=評価1;数えられたフィブリル6〜10=評価2;数えられたフィブリル11〜15個=評価3;数えられたフィブリル16〜20個=評価4;数えられたフィブリル21〜25個=評価5。
【0122】
Rev. Prog. Color. 35 (2005), 59におけるK. Bredereck及びF. Hermanutsによる湿式フィブリル化評価によると、NMMO方法により製造されたセルロース繊維は、4又は5の評価を有するが、一般的なビスコース及びモーダルは1の評価を有し、したがって、非フィブリル化していると分類される。NMMOにより得られる繊維の高湿式フィブリル化は、例えば染色のような織物仕上げ方法において重大な欠点であり、処理方法の変更及び加工の際に追加的な機械的手段を必要とする。NMMO方法により得られるフィブリル化のないセルロース繊維の製造は、紡糸工程(エアギャップを介した紡糸)の特性のために可能ではなく、繊維の特別な後処理によってのみ達成することができる。NMMO溶液からのいわゆるリヨセル繊維紡糸がフィブリル化する傾向を避けるために、従来技術による繊維後処理では、セルロース鎖を架橋する反応性物質が添加される。したがってフィブリル化の低減は、繊維の後処理の際の化学架橋によって達成することができ、これは乾燥することがなく、変更リヨセル繊維型のLenzing Lyocell LF(C. Rohrere, P. Retzel and H. Firgo in Man−made Fiber Yearbook (Chem. Fibers Intern.) 2001, 8 (2001) 26 and Tencel A100 (P. Alwin and J. Taylor in Melliand Textilber., 82 (2001) 196)をもたらす。架橋ブリッジを導入することによって、標準的なリヨセル繊維のように、角質化の著しい非可逆的な低下が最初の乾燥の際に起こる。一方、架橋に用いた物質が続く方法において一般的な状態の幾つかに限定された程度でしか耐えられないという事実は、直接紡糸されるセルロース繊維の低フィブリル化にとって問題となる。したがって、例えば、架橋剤として用いられるジクロロクロロモノヒドロキシトリアジンの場合、架橋剤のほぼ半分が、産業界において一般的である過酸化水素による漂白の間に分離し、これにより繊維のフィブリル化の増大が再び得られることが知られている。したがって、直接紡糸される非フィブリル化セルロース繊維を産業界に提供できるとすれば、極めて有益である。
【0123】
本発明を用いると、パルプ、綿リンターなどの形態で存在するセルロースを、このことに適している溶媒中で、適切な溶解の日常的作業によって、予め誘導体化することなく溶解して、紡糸可能な溶液を得ることが現在可能であり、これは、本発明の多孔質紡糸繊維をもたらし、これは、上述の試験方法及び評価スケールによると2以下の湿式フィブリル化評価を有する。本発明の多孔質紡糸繊維は、上記で既に考察されている有益な更なる特性、特に、DIN 53184による保水能力の50〜300%、保水能力の有益な値の65〜200%、DIN EN ISO 2062による最大引張力の少なくとも6cN/tex及び最大引張力伸びの少なくとも4%を有することが見出された。
【0124】
更に、これらは望ましくは平滑面を有する。本発明の文脈において、ビスコース方法の又は銅若しくはリチウム若しくはこれらの塩のような金属の硫黄含有化学物質の添加を、紡糸繊維の製造の際に回避できることが有利である。
【0125】
記載された目的を達成する本発明の複雑な提案に関連する利点は多様である。
【0126】
驚くべきことに、少なくとも5質量%の量のプロトン性溶媒、特に水の添加により特に35質量%までの含有量のバイオポリマー、特にセルロースを溶解する、特定のイオン性液体に基づいた溶液系を見出すことが可能となった。更に、同じように驚くべきことに、産業上重要な系の改善が、プロトン性溶媒、特に水を制御混合することにより達成される。これらには、溶液の製造の簡素化を可能にする溶液系の粘度の低下、加工組成物の安定化、及び溶液構造の変化による加工性の改善が含まれる。更に、凝固媒質が加工組成物に既に含有されているので、加工方法はより柔軟及び経済的になる。このことは、溶融イオン性液体を洗い流す拡散方法が、生成物の圧密の際に著しく加速されることを意味する。
【0127】
したがって、例として提示されている本発明の一つの実施態様において、挙げられている溶融イオン性液体を、最初に混合容器に導入し、プロトン性溶媒、好ましくは水を特に約6〜15質量%の量で加え、次に成分を激しく混合する。次にこの溶液系を、適した溶解温度に調整し、サーモスタットで制御する。次に、選択されたバイオポリマー、特にデンプン若しくはセルロース又はこれらの誘導体を、実施するのに適した量、例えば5〜35質量%の量で、撹拌しながら溶液系に加える。バイオポリマーの溶解がほとんど実質的に終了するまで、適した溶解温度でのサーモスタットによる制御をその後に続ける。好ましい更なる加工において、次にこの溶液を、濾過し、真空下で脱ガスし、紡糸口金を通して紡糸装置で押出して、凝固浴に入れる。これは、溶液系に含有されているプロトン性溶媒を特に、そして主に含む。生成物の圧密では、イオン性液体をプロトン性溶媒で完全に洗い流し、生成物、例えばセルロース繊維を乾燥する。再生使用のための回収では、プロトン性溶媒を、選択される場合は水を、好ましい含有量の約6〜15質量%までに、例えば蒸留によってイオン性液体から除去する。その後、溶液系を、バイオポリマーの溶解のために再び用いる。例として提示されたこの実施態様は、生成物特性の柔軟な調整及び特に経済的なプロセス手順のような改善された加工を可能にすることを既に示している。
【0128】
本発明により得られる紡糸繊維に関して、本発明の特定の手順によりもたらされる以下の利点も指摘される:セルロースのために優れた溶媒を、特に1−エチル−3−メチルイミダゾリウムアセテート(EMIM OAc)の形態で用いることができる。EMIM OAcは、以下の利点をもたらす:室温で液体である。安定した紡糸溶液をもたらす。セルロースを、EMIM OAcを用いることによる問題がなく、25質量%までの量で溶解することができる。産業界における紡糸溶液の製造、濾過及び脱ガスが簡素である。ゲル粒子が極めて実質的に排除される。空気に対する顕著な感受性が検出されない。紡糸溶液が、優れた熱安定性を有する。安定剤の添加が必要ではない。紡糸溶液の粘度を、広い範囲(10〜10000Pas)で調整することができ、これは、紡糸工程における高い柔軟性を意味する。したがって、本発明は、非常に興味深い、「人工」セルロース材料の環境に優しい製造方法を提供する。これに関連することは、広範囲の機械的特性を有する高い生産柔軟性である。糸を紡ぐこと、編むこと又は織ること、染色することのような後に続く方法において、並びに使用時及び製造時の堅牢性、特に色堅牢度における改善をもたらす手段の際に全く問題を生じない。
【0129】
本発明を、多様な実施例の助けを借りて以下においてさらにより詳細に説明する。実施例において「質量%」が参照されるとき、これは、最終溶液の総質量に関することが意図される。
【0130】
実施例1(1−エチル−3−メチルイミダゾリウムアセテート(EMIM OAc)中の水含有セルロース溶液の製造)
100gの水を800gの1−エチル−3−メチルイミダゾリウムアセテート(EMIM OAc)に50℃で、撹拌しながら5分間かけて加える。溶媒混合物を、最初に実験室用混合機に導入し、空気循環炉においてサーモスタットで70℃(溶解温度)に制御する。100gのセルロース(DP750の綿リンター)をこれに加える。混合をレベル2で40秒間実施し、混合物を空気循環炉において90℃で45分間保持する。その後、混合を再びレベル2で40秒間実施し、混合物を90℃で更に45分間温度制御する。セルロース溶液を圧力吸引フィルター(フィルター繊維15μm)で濾過する。溶液を室温で保存する。
【0131】
実施例2(EMIMアセテート中の水含有セルロース溶液の製造)
1600gの1−エチル−3−メチルイミダゾリウムアセテート(EMIM OAc)を、ブレード撹拌機、撹拌モーター及び還流冷却器を有する二重壁サーモスタット制御反応容器で80℃に加熱する。200gの水を撹拌しながら5分間かけて加える。200gのセルロース(DP750の綿リンター)を溶媒混合物に15分間かけて加える。その後、混合物を80℃で2時間撹拌する。セルロース溶液を圧力吸引フィルター(フィルター繊維15μm)で濾過する。溶液を室温で保存する。
【0132】
実施例3(EMIMアセテート中の水含有セルロース溶液の製造)
800gの1−エチル−3−メチルイミダゾリウムアセテート(EMIM OAc)及び100gの水を、最初にサーモスタット制御可能オートクレーブ(ブレード撹拌機及び撹拌モーター、並びにフィルターユニットを備える)に導入し、混合物を撹拌しながら70℃に加熱する。100gのセルロース(DP750の綿リンター)を溶媒混合物に加える。オートクレーブを閉める。その後、撹拌を、3.5バールの圧力下、80℃で2時間実施する。セルロース溶液を圧力下、ニードル弁を介し、金属スクリーンフィルター(多層15μm)を通して、貯蔵容器の中に排出させる。溶液を室温で保存する。
【0133】
実施例4(EMIMアセテート中の水含有セルロース溶液の製造)
1600gの1−エチル−3−メチルイミダゾリウムアセテート(EMIM OAc)及び200gの水を室温で混合する。200gのセルロース(DP750の綿リンター)を溶媒混合物に加える。混合物を、計量ユニットにより25g/mで取り込んで押出機の中に計量供給する。押出機は、動的混合ヘッドを有するスクリューを備えている。混合物を100℃で15分間の滞留時間により均質化し、金属スクリーンフィルター(多層15μm)を有するフィルターヘッドを介して、貯蔵容器の中に押し出す。溶液を室温で保存する。
【0134】
実施例5(1,3−ジメチルイミダゾリウムアセテート(MMIM OAc)中の水含有セルロース溶液の製造)
手順は、80℃の溶解温度で、実施例1と同様にする。
【0135】
実施例6(1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムアセテート(BMIM OAc)中の水含有セルロース溶液の製造)
手順は、75℃の溶解温度で、実施例1と同様にする。
【0136】
実施例7(1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロライド(EMIM Cl)中の水含有セルロース溶液の製造)
手順は、100℃の溶解温度で、実施例1と同様にする。
【0137】
実施例8(1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムアセテート(BMIM OAc)中の水含有セルロース溶液の製造)
手順は、90℃の溶解温度で、実施例1と同様にする。
【0138】
実施例9〜13(種々のセルロースによる水含有セルロース溶液の製造)
手順は実施例1と同様である。用いるセルロールは、DP1250、DP455及びDP1950のリンター及びDP690のユーカリパルプである。95℃で測定した濾過溶液のゼロ粘度を第1表に示す。
【0139】
第1表
【表1】

【0140】
実施例14(異なる含水量)
手順は実施例1と同様である。セルロース溶液の含水量を、それぞれ、1質量%(水10gの添加)、3質量%(水40gの添加)、5質量%(水50gの添加)、15質量%(水150gの添加)に調整する。95℃で測定した濾過溶液のゼロ粘度を第2表に示す。
【0141】
第2表
【表2】

【0142】
実施例15(更なるプロトン性溶媒の混合)
手順は実施例1と同様である。水に加えて、10gのエタノールを更に加える。
【0143】
実施例16(高濃縮セルロース溶液の製造)
手順は実施例4と同様である。セルロース濃度を、400gのセルロース(DP750のリンター)の添加により溶液中で20質量%に増加する。
【0144】
実施例17(繊維の製造)
実施例1〜4の溶液を、100穴ダイ(穴径80μm)を通す湿式紡糸装置により繊維に加工する。水を凝固浴として用いる。その後、溶媒を洗い流し、繊維を乾燥する。
【0145】
実施例18(再利用)
実施例17の凝固浴を、熱により含水量10質量%に調整する(再循環液)。900gの再循環液を、最初に実験室用混合機に導入し、空気循環炉においてサーモスタットで70℃(溶解温度)に制御し、100gのセルロース(DP750の綿リンター)を加える。混合をレベル2で40秒間実施し、混合物を空気循環炉において90℃で45分間保持する。その後、混合を再びレベル2で40秒間実施し、混合物を90℃で更に45分間温度制御する。セルロース溶液を圧力吸引フィルター(フィルター繊維15μm)で濾過する。溶液を室温で保存する。
【0146】
実施例19(エアギャップによる繊維製造)
実施例1の溶液を従来の湿式紡糸装置(1型)により、そして紡糸口金(2型)の後のエアギャップにより加工する。装置及び加工の記載を、以下の第3表で見ることができる。
【0147】
第3表
【表3】

【0148】
上述の方法の助けを借りて、以下の第4表に示される繊維特性がもたらされる。
【0149】
第4表
【表4】

*保水能力
**最大引張力伸び
***最大引張力
実施例20(EMIM Clによる繊維製造)
実施例7の溶液を実施例19の紡糸装置で加工した。
【0150】
装置及び加工の記載を、以下の第5表で見ることができる。
【0151】
第5表
【表5】

【0152】
上述の方法の助けを借りて、以下の第6表に示される繊維特性がもたらされる。
【0153】
第6表
【表6】

【0154】
実施例21(BMIM OAcによる繊維製造)
実施例6の溶液を実施例19の紡糸装置で加工した。
【0155】
装置及び加工の記載を、以下の第7表で見ることができる。
【0156】
第7表
【表7】

【0157】
上述の方法の助けを借りて、以下の第8表に示される繊維特性がもたらされる。
【0158】
第8表
【表8】

【0159】
実施例22(BMIM Clによる繊維製造)
実施例8の溶液を実施例19の紡糸装置で加工した。
【0160】
装置及び加工の記載を、以下の第9表で見ることができる。
【0161】
第9表
【表9】

【0162】
上述の方法の助けを借りて、以下の第10表に示される繊維特性がもたらされる。
【0163】
第10表
【表10】

【0164】
実施例23(押出機で溶液を製造した後の繊維製造)
実施例4の溶液を実施例19の紡糸装置で加工した。ここでは加工パラメーターに変更はなかった。
【0165】
上述の方法の助けを借りて、以下の第11表に示される繊維特性がもたらされる。
【0166】
第11表
【表11】

【0167】
実施例24(DP1250のリンターによる繊維製造)
実施例9の溶液を実施例19の紡糸装置で加工した。
【0168】
装置及び加工の記載を、以下の第12表で見ることができる。
【0169】
第12表
【表12】

【0170】
上述の方法の助けを借りて、以下の第13表に示される繊維特性がもたらされる。
【0171】
第13表
【表13】

【0172】
実施例25(DP1950のリンターによる繊維製造)
実施例11の溶液を実施例19の2型紡糸装置で加工した。
【0173】
装置及び加工の記載を、以下の第14表で見ることができる。
【0174】
第14表
【表14】

【0175】
上述の方法の助けを借りて、以下の第15表に示される繊維特性がもたらされる。
【0176】
第15表
【表15】

【0177】
実施例26(DP455のリンターによる繊維製造)
実施例10の溶液を実施例19の紡糸装置で加工した。
【0178】
装置及び加工の記載を、以下の第16表で見ることができる。
【0179】
第16表
【表16】

【0180】
上述の方法の助けを借りて、以下の第17表に示される繊維特性がもたらされる。
【0181】
第17表
【表17】

【0182】
実施例27(含水量10質量%の溶液による繊維製造)
含水量10質量%を有する実施例15の溶液を、実施例19の紡糸装置で加工した。ここでは加工パラメーターに変更はなかった。
【0183】
上述の方法の助けを借りて、以下の第18表に示される繊維特性がもたらされる。
【0184】
第18表
【表18】

【0185】
実施例28(EMIM OAcの再利用)
実施例1の溶液を従来の紡糸工程(実施例19の1型)で加工する。凝固浴及び洗浄浴を合わせる。この混合物から水を留去して、残留物含有量を5質量%にする。残渣(EMIM OAc+水5質量%)を用い実施例1に従って、再び紡糸溶液を製造し、実施例19の1型紡糸工程により再び加工した。多重加工サイクルの後、溶解特性は、変化しないままであり、更に、濾過、紡糸性及び繊維の特性も変化しないままであった。
【0186】
実施例29(銅及び硫黄の定量)
実施例19の繊維の1gを、酸で蒸解した後、ICP−OES分析により銅及び硫黄含有量に関して調査した。分析の結果を第19表にまとめる。
【0187】
第19表
【表19】

【0188】
実施例30(1−エチル−3−メチルイミダゾリウムジエチル−ホスフェート(EMIM DEP)中の水含有セルロース溶液の製造)
手順は実施例1と同様である。60gの水を加える。
【0189】
実施例31(1−メチル−3−メチルイミダゾリウムジメチル−ホスフェート(MMIM DMP)中の水含有セルロース溶液の製造)
手順は実施例1と同様である。60gの水を加える。
【0190】
実施例32(更なるプロトン性溶媒の混合)
手順は実施例1と同様である。水の添加の際に、10gのメタノールを更に加える。
【0191】
実施例33(更なるプロトン性溶媒の混合)
手順は実施例1と同様である。水の添加の際に、10gのイソプロパノールを更に加える。
【0192】
実施例34(実験室用混合機による1−エチル−3−メチルイミダゾリウムアセテート(EMIM OAc)中の水含有セルロース/キトサン溶液の製造)
100gの水を800gの1−エチル−3−メチルイミダゾリウムアセテート(EMIM OAc)に50℃で、撹拌しながら5分間かけて加える。溶媒混合物を最初に実験室用混合機に導入し、空気循環炉においてサーモスタットで70℃(溶解温度)に制御し、80gのセルロース(DP750の綿リンター)及び20gのキトサンを加える。混合をレベル2で40秒間実施し、混合物を空気循環炉において90℃で45分間保持する。その後、混合を再びレベル2で40秒間実施し、混合物を90℃で更に45分間温度制御する。セルロース/キトサン溶液を圧力吸引フィルター(フィルター繊維15μm)で濾過する。溶液を室温で保存する。
【0193】
実施例35(実験室用混合機による1−エチル−3−メチルイミダゾリウムアセテート(EMIM OAc)中の水含有セルロース/デンプン溶液の製造)
60gの水を800gの1−エチル−3−メチルイミダゾリウムアセテート(EMIM OAc)に50℃で、撹拌しながら5分間かけて加える。溶媒混合物を最初に実験室用混合機に導入し、空気循環炉においてサーモスタットで60℃(溶解温度)に制御し、80gのセルロース(DP750の綿リンター)及び20gの食用デンプンを加える。混合をレベル2で60秒間実施し、混合物を空気循環炉において80℃で45分間保持する。その後、混合を再びレベル2で60秒間実施し、混合物を80℃で更に45分間温度制御する。セルロース/デンプン溶液を圧力吸引フィルター(フィルター繊維15μm)で濾過する。溶液を室温で保存する。
【0194】
実施例36(繊維製造)
この実施例は実施例17の適用例である。しかし、凝固浴としてエタノールを用いる。得られた繊維をエタノールで洗浄する。
【0195】
実施例37(繊維製造)
この実施例は実施例17の適用例である。しかし、凝固浴としてイソプロパノールを用いる。得られた繊維をイソプロパノールで洗浄する。
【0196】
実施例38(1−エチル−3−メチルイミダゾリウムホルメート(EMIMホルメート)中の水含有セルロース溶液の製造)
0.3gの水を4.45gの1−エチル−3−メチルイミダゾリウムホルメート(EMIMホルメート)に50℃で、撹拌しながら5分間かけて加える。溶媒混合物を最初に実験室用混合機に導入し、空気循環炉においてサーモスタットで70℃(溶解温度)に制御する。0.25gのセルロース(DP300のAvicel)をこれに加える。混合物(セルロース5質量%、水6質量%、EMIMホルメート89質量%)をレベル2で40秒間混合し、空気循環炉において90℃で45分間保持する。その後、混合を再びレベル2で40秒間実施し、混合物を90℃で更に45分間温度制御する。セルロース溶液を圧力吸引フィルター(フィルター繊維15μm)で濾過する。溶液を室温で保存する。
【0197】
実施例39(1−エチル−3−メチルイミダゾリウムプロピオネート(EMIMプロピオネート)中の水含有セルロース溶液の製造)
手順は実施例38に記載されたとおりである。ここではEMIMホルメートの代わりにEMIMプロピオネートを使用する。
【0198】
実施例40(1−エチル−3−メチルイミダゾリウムオクタノエート(EMIMオクタノエート)中の水含有セルロース溶液の製造)
手順は実施例38に記載されたとおりである。ここではEMIMホルメートの代わりにEMIMオクタノエートを使用する。
【0199】
実施例41(1,3−ジエチルイミダゾリウムアセテート(EEIMアセテート)中の水含有セルロース溶液の製造)
1gの水を9gの1,3−ジエチルイミダゾリウムアセテート(EEIMアセテート)に50℃で、撹拌しながら5分間かけて加える。溶媒混合物を最初に実験室用混合機に導入し、空気循環炉においてサーモスタットで70℃(溶解温度)に制御する。1gのセルロース(DP300のAvicel)をこれに加える。混合物(セルロース91質量%、水9.1質量%、EEIMアセテート81.8質量%)をレベル2で40秒間混合し、混合物を空気循環炉において90℃で45分間保持する。その後、混合を再びレベル2で40秒間実施し、混合物を90℃で更に45分間温度制御する。セルロース溶液を圧力吸引フィルター(フィルター繊維15μm)で濾過する。溶液を室温で保存する。
【0200】
実施例42(1−エチル−3−メチルイミダゾリウムアセテート(EMIMアセテート)中の水含有デンプン溶液(トウモロコシのアミロペクチン)の製造)
5gの水を50gの1−エチル−3−メチルイミダゾリウムアセテート(EMIMアセテート)に室温で、撹拌しながら5分間かけて加える。溶媒混合物を最初に実験室用混合機に導入し、空気循環炉においてサーモスタットで100℃(溶解温度)に制御する。5gのデンプン(由来:トウモロコシのアミロペクチン)をこれに加える。混合物(アミロペクチン8.3質量%、水8.3質量%、EMIMアセテート83.3質量%)をレベル2で40秒間混合し、混合物を空気循環炉において100℃で45分間保持する。その後、混合を再びレベル2で40秒間実施し、混合物を100℃で更に45分間温度制御する。デンプン溶液を圧力吸引フィルター(フィルター繊維15μm)で濾過する。溶液を室温で保存する。
【0201】
セルロースが湿式紡糸法に付される実施例に関する注意:この方法により得られる紡糸繊維は、全て2未満の湿式フィブリル化の評価を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
添加剤が溶液系に含まれていてよい、溶融イオン性液体に基づいた炭水化物の形態のバイオポリマーのための溶液系であって、溶液系がプロトン性溶媒又は複数のプロトン性溶媒の混合物を含有し、プロトン性溶媒が水単独である場合、これが溶液系において約5質量%を超える量で存在することを特徴とする溶液系。
【請求項2】
イオン性液体が、カチオンとして置換又は非置換イミダゾリウムカチオンを含有することを特徴とする、請求項1に記載の溶液系。
【請求項3】
実質的に水をプロトン性溶媒として6質量%を超える量で含有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の溶液系。
【請求項4】
約6〜15質量%、特に約7〜12質量%の水をプロトン性溶媒として含有することを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の溶液系。
【請求項5】
水を除いて、プロトン性溶媒を少なくとも0.1質量%の量で、特に少なくとも約1質量%の量で含有することを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の溶液系。
【請求項6】
プロトン性溶媒を約1〜10質量%、特に約2〜5質量%の量で含有することを特徴とする、請求項5に記載の溶液系。
【請求項7】
プロトン性溶媒として、アルコール、特にメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール及び/又は1−ブタノールを、場合により水と混合して含有することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載の溶液系。
【請求項8】
イオン性液体のイミダゾリウムカチオンが、1及び3位、又は1−、2−及び3位で(C1〜C6)アルキル基により置換されていることを特徴とする、請求項2から7までのいずれか1項に記載の溶液系。
【請求項9】
イミダゾリウムカチオンが、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、1,3−ジメチルイミダゾリウム又は1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムカチオンであることを特徴とする、請求項8に記載の溶液系。
【請求項10】
イオン性液体のアニオンが、ハロゲン化物、過塩素酸、擬ハロゲン化物、硫酸、リン酸、アルキルリン酸又は、特に、C1〜C6カルボン酸イオンであることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項に記載の溶液系。
【請求項11】
ハロゲン化物イオンが、塩化物、臭化物及び/又はヨウ化物イオンとして存在し、擬ハロゲン化物イオンが、シアン化物、チオシアン酸及び/又はシアン酸イオンとして存在し、C1〜C6カルボン酸イオンが、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ヘキサン酸、マレイン酸、フマル酸、シュウ酸、乳酸及び/又はピルビン酸イオンとして存在することを特徴とする、請求項10に記載の溶液系。
【請求項12】
溶融イオン性液体が、−100〜+150℃、特に−30〜+80℃の融点を有することを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項に記載の溶液系。
【請求項13】
イオン性液体が、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムアセテート、1,3−ジメチルイミダゾリウムアセテート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロライド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムアセテート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムジエチル−ホスフェート、1−メチル−3−メチルイミダゾリウムジメチル−ホスフェート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムホルメート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムオクタノエート、1,3−ジエチルイミダゾリウムアセテート及び1−エチル−3−メチルイミダゾリウムプロピオネートとして存在することを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項に記載の溶液系。
【請求項14】
炭水化物を、特にデンプン、セルロース及び/又はデンプンとセルロースの誘導体の形態で含有することを特徴とする、請求項1から13までのいずれか1項に記載の溶液系。
【請求項15】
デンプンとセルロースの誘導体が、エステル又はエーテルであることを特徴とする、請求項14に記載の溶液系。
【請求項16】
デンプン、セルロース及び/又はその誘導体が、約1〜35質量%の量で、特に約5〜20質量%の量で溶液系に存在することを特徴とする、請求項14又は15に記載の溶液系。
【請求項17】
炭水化物、特にデンプン、セルロース及び/又はその誘導体のミクロゲルを2質量%未満含有することを特徴とする、請求項1から16までのいずれか1項に記載の溶液系。
【請求項18】
炭水化物、特にデンプン、セルロース及び/又はその誘導体が溶解しており、そのミクロゲルが溶液系に存在しないことを特徴とする、請求項17に記載の溶液系。
【請求項19】
約5〜150000Pa.s、特に約10〜100000Pa.sでゼロ粘度(回転粘度計で測定)を有することを特徴とする、請求項14から18までのいずれか1項に記載の溶液系。
【請求項20】
溶解したセルロース又はその誘導体が、約200〜3500、特に約300〜1500の平均重合度を有することを特徴とする、請求項14から19までのいずれか1項に記載の溶液系。
【請求項21】
脱ガスされていることを特徴とする、請求項14から20までのいずれか1項に記載の溶液系。
【請求項22】
炭水化物がセルロースの形態で存在することを特徴とする、請求項14から21までのいずれか1項に記載の溶液系。
【請求項23】
請求項14から22までのいずれか1項に記載の溶液系の製造方法において、炭水化物、特にセルロース、デンプン及び/又はセルロースとデンプンの誘導体を、請求項1から13までのいずれか1項で定義された溶融イオン性液体と、十分な量のプロトン性溶媒又は幾つかのプロトン性溶媒の混合物と、炭水化物が溶解するまで混合することを含み、プロトン性溶媒として水が単独で使用される場合、これが5質量%を超える量で溶液系に存在することを特徴とする方法。
【請求項24】
混合を、押出機により、特に二軸スクリュー押出機により実施することを特徴とする、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
溶解を、マイクロ波の照射下で、特に超音波の作用下で実施することを特徴とする、請求項23又は24に記載の方法。
【請求項26】
溶解を、高温で、特に約20〜150℃で実施することを特徴とする、請求項23から25までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
溶解を、30〜120℃の温度で実施することを特徴とする、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
セルロースを、繊維状セルロースとして、特に繊維状天然セルロース繊維の形態で用いることを特徴とする、請求項23から27までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
繊維状セルロースが、木材パルプ、リンター及び/又は紙の形態で存在することを特徴とする、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
天然セルロース繊維を、大麻、ココナッツ、ジュート、竹及び/又はサイザル麻繊維の形態で用いることを特徴とする、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
炭水化物、特にセルロースを溶解するための、請求項1から13までのいずれか1項に記載の溶液系の使用。
【請求項32】
溶液系を、更なる加工の前に、特に圧力下又は真空下で濾過することを特徴とする、請求項23から30までのいずれか1項に記載の方法又は請求項31に記載の使用。
【請求項33】
溶液系を、炭水化物の再生のために更に加工する前に、脱ガスすることを特徴とする、請求項23から30若しくは32までのいずれか1項に記載の方法又は請求項30に記載の使用。
【請求項34】
脱ガスを、撹拌しながら、そして真空下で実施することを特徴とする、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
請求項14から22までのいずれか1項に記載の溶液系を使用する、再生炭水化物、特にデンプン、セルロース及びデンプンとセルロースの誘導体の製造方法において、溶液系を凝固媒質に沈殿させること、特に湿式紡糸法に付すことを含み、溶液媒質中に、炭水化物を溶解しないで溶融イオン性液体と混和性である溶媒が存在することを特徴とする方法。
【請求項36】
炭水化物のための非溶媒が、水、及び/又はアルコール、特にメタノール、エタノール、プロパノール及び/又はブタノールの形態のプロトン性溶媒であることを特徴とする、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
溶液系を湿式紡糸法に付すことを特徴とする、請求項35又は36に記載の方法。
【請求項38】
炭水化物を含有する溶液系を、非フィブリル化繊維の製造のために紡糸溶液として使用することを特徴とする、請求項35から37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
エアギャップ紡糸装置を、高結晶化度(CI>0.5)の短繊維を得るために使用することを特徴とする、請求項35から38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
紡糸工程を、連続フィラメント又は短繊維のいずれかが形成されるように構成することを特徴とする、請求項35から39までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
溶液系が、セルロースを含有し、高粘度、特に約5〜150000Pa.sのゼロ粘度を有し、セルロースの含有量が、特に5〜25質量%であり、その平均重合度が、3500まで、特に300〜1500であることを特徴とする、請求項35から40までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
得られた沈殿材料、特に繊維材料の特定の特性を調整するために、添加剤を添加し、添加剤が凝固媒質、溶液系及び/又は続く改質浴に添加されることを特徴とする、請求項35から41までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
マイクロカプセル、孔形成剤、可塑剤、艶消剤、防炎加工剤、殺菌剤、架橋剤、疎水化剤、帯電防止剤、及び/又は着色剤の形態の添加剤を使用することを特徴とする、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
水単独を沈殿又は凝固媒質として使用し、添加剤を添加しないことを特徴とする、請求項35から43までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
アルコール、アルコールの混合物又はアルコールと水の混合物を、沈殿又は凝固媒質として使用し、添加剤を添加しないことを特徴とする、請求項35から43の少なくともいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール及び/又は1−ブタノールをアルコールとして使用することを特徴とする、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
炭水化物を含有する溶液系を、加工する前に、特に約80〜120℃に加熱する、及び/又は凝固媒質を特に約40〜90℃の温度に調整することを特徴とする、請求項35から46までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
凝固媒質、特に水に沈殿した炭水化物、特にデンプン、セルロース及び/又はデンプンとセルロースの誘導体を分離し、残った水相を、場合により部分的な蒸発の後、請求項1から11までのいずれか1項に記載の当初の溶液系の製造のために回収し、炭水化物を含有する溶液系の製造のために再び使用することを特徴とする、請求項34から47までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
特に再生セルロース繊維の形態の、請求項35から48までのいずれか1項に記載の方法により得られる再生炭水化物。
【請求項50】
2以下の湿式フィブリル化評価を有する再生セルロースに基づいた紡糸繊維。
【請求項51】
1mg/g未満、特に0.75mg/g未満の硫黄含有量、及び20μg/g未満、特に15μg/g未満の銅含有量を有することを特徴とする、請求項50に記載の紡糸繊維。
【請求項52】
非フィブリル化しており、かつ1mg/g未満、特に0.75mg/g未満の硫黄含有量、及び20μg/g未満、特に15μg/g未満の銅含有量を有する、再生セルロースに基づいた紡糸繊維。
【請求項53】
硫黄含有量が0.5mg/g未満、特に0.25mg/g未満であり、銅含有量が10μg/g未満、特に5μg/g未満であることを特徴とする、請求項51又は52に記載の紡糸繊維。
【請求項54】
硫黄及び銅含有量のデータが、凝固浴から現れる非洗浄紡糸繊維に関連することを特徴とする、請求項51から53のいずれか1項に記載の紡糸繊維。
【請求項55】
その保水能力が、約50〜300%、特に約65〜200%である(DIN53184に準拠)ことを特徴とする、請求項50から54までのいずれか1項に記載の紡糸繊維。
【請求項56】
最大引張力が、少なくとも6cN/tex、特に少なくとも10cN/texである、及び/又は最大引張力伸びが、少なくとも4%、特に少なくとも6%である(DIN EN ISO 2062に準拠)ことを特徴とする、請求項50から55までのいずれか1項に記載の紡糸繊維。

【公表番号】特表2009−520846(P2009−520846A)
【公表日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−546284(P2008−546284)
【出願日】平成18年12月22日(2006.12.22)
【国際出願番号】PCT/EP2006/012478
【国際公開番号】WO2007/076979
【国際公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】