説明

溶融エステル交換法によるポリカーボネート中の触媒活性不純物の抑制

【課題】 ポリカーボネート中で触媒活性な不純物をクエンチする抑制剤であって、腐食性がなく、揮発度が低いものの発見とポリカーボネートの製法におけるその利用。
【解決手段】 中粘性リアクターおよび高粘性リアクターを包含するポリカーボネート調製のための溶融エステル交換法において、改良が上記リアクターの間のプロセスに少なくとも1つの有機硫黄含有酸の架橋エステルを添加することを含む、溶融エステル交換法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリカーボネートの調製のための方法、および特に溶融エステル交換法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネートのための調製方法は、文献に知られており、かつ多くの特許出願に開示されている:
【0003】
界面または溶融エステル交換法によるポリカーボネートの調製について、例えば非特許文献1(Schnell著、「Chemistry and Physics of Polycarbonates」Polymer Reviews、第9巻、Interscience Publishers、ニューヨーク、ロンドン、シドニー1964年、33 頁以下)および非特許文献2(Polymer Reviews第10巻、「Condensation Polymers by Interfacial and Solution Methods」、Paul W. Morgan著、Interscience Publishers、ニューヨーク、1965年、VIII章、325頁)および特許文献1(EP-A 971790)を参照する。
【0004】
それらの調製の後、溶融エステル交換法は触媒活性、塩基性不純物(basic impurities)を含み得る。これらは一方で、出発材料における分離されなかったわずかな量の不純物が熱分解性触媒の分離されなかった塩基性残留物、または安定な塩基性触媒塩類に起因し得る。熱分解性触媒は、例えばいわゆるオニウム塩として理解される。熱安定性触媒は、例えばアルカリまたはアルカリ土類塩類であると理解される。ポリカーボネート中のそのような塩基性物質は、それらが材料の触媒活性を支持するので極めて望ましくない。
【0005】
したがって、添加剤がポリカーボネート溶融物に添加される際、塩基性物質は添加剤の化学反応(例えばポリマー鎖への導入および添加剤の分解)を支持し、それが添加剤の効果に悪影響を与える。光学溶融ポリカーボネートタイプの場合に常套である残存モノマーの一定分子量下での熱的減少(reduction)はまた触媒活性の塩基性不純物の存在下では成功しない(非特許文献3 LeA 36 697参照)。ポリカーボネート中の触媒活性化合物はさらなる加工の一般的段階(例えば射出成形)中におけるポリカーボネートの分解反応をもたらす。
【0006】
この理由のために、抑制剤が常套的にポリカーボネートに添加される。抑制剤は、化学反応の動力学(kinetics)を抑制する全ての化合物であると理解されており、その結果ポリマー中の品質を低下させる変化を回避する。
【0007】
酸化合物およびそれらのエステルの助けをかりて溶融ポリカーボネート中の触媒活性、塩基性不純物の非活性化は、文献で知られている。この場合、使用される抑制剤は、過剰の遊離酸を形成しないことが、極めて重要である。なぜならばそれらは同様にポリマーの化学的反応を(例えば添加剤と共に)支持するからである。
【0008】
特許文献2(DE-A 1031512)には、Schnellらは、酸性成分の添加による塩基性触媒の中和について開示している。そこにはまた、中和後に真空を適用して、使用された過剰酸の除去が可能であることも言及している。
【0009】
特許文献3(EP-A 435124)には、硫黄原子を含有する酸または単純な酸エステルの添加による溶融ポリカーボネート中のアルカリ性触媒の不活性化について開示している。この場合、過剰の酸は、エポキシドの添加によって再び中和され、その後残存モノマーが真空下で削減される。開示されている酸性成分の例は、リン酸、トルエンスルホン酸、メチルトシレートおよびエチルトシレートを含む。
【0010】
特許文献4(DE-A 4438545)には、真空下における残存モノマーの減少の前に塩基性エステル交換触媒を中和するために、溶融ポリカーボネートpKa値<5を有する酸性成分またはそれらのエステルとを溶融ポリカーボネートと混合することが記載されている。リン酸、トルエンスルホン酸および対応するエステルが酸性成分として記載されている。
【0011】
特許文献5(WO 0007799)では、真空下における溶融ポリカーボネートの残存モノマーの減少の前にアルカリ性触媒がオニウム塩類、例えばドデシルベンゼンスルホン酸のテトラアルキルホスホニウムおよびテトラアルキルアンモニウム塩を添加することによって抑制される。
【0012】
特許文献6(WO 0246272)によると、溶融ポリカーボネートのためのS−含有クエンチャー(quenchers)とリン酸および水およびグリセロールモノステアレート(GMS)の組合せを使用することが知られている。このように、正確に適合して添加することで、残存モノマーが除去され、かつGMSは好ましくない副反応のない離型剤として添加されてもよい。記載されている効果的なクエンチャーは、単純なアルキルベンゼン−およびトルエン−スルホン酸エステル、並びにp−置換ベンゼンスルホン酸のリン酸およびアンモニウム塩を含む。ブチルトシレートが好ましく使用される。
【0013】
記載された非活性剤の多く(特に遊離酸および易分解性エステル)は、例えば抑制剤の産業的秤量添加の際において起こり得る高温および高濃度で腐食特性の欠点を有する。粒子、金属カチオンおよび安全性に関する欠陥を防ぐために、装置の材料に影響を与えないように抑制剤を使用することは非常に有利である。さらに、記載されているクエンチャーのほとんどは、溶融ポリカーボネートの場合および溶融ポリカーボネートの溶融流れ(melt stream)への秤量添加の場合、残存モノマーの除去のためにユニット中で常套に使用される条件下で揮発性である。残存モノマーが高温および真空下で、比較的長い滞留時間で除去されるならば、クエンチャーの大部分は失われ、かつクエンチャーの効能は大幅に減少され得る。連続的混合と共に、溶融流れへのクエンチャーの不可欠な定常的かつクリーンな秤量添加は、同様に、高い揮発性によってさらに困難になる。添加成分、例えばリン酸はさらに、次に続く脱気段階で他の揮発成分と共にポリカーボネートから分離され、かつ装置中で濃縮され、それが腐食の結果として装置のダメージをもたらす。触媒の活性を抑制する成分を含んで、分離されて成分が装置回路にフィードバックされ、反応の実施上の欠点の影響がさらに予期され得る。例えば、触媒クエンチャーはポリカーボネート調製プロセスへフィードバックされ、その結果反応の進行をを阻止してもよい。腐食ダメージはまた、分離された成分がワークアップされるエバポレートシステムで起こり得る。
【0014】
特許文献7(WO 0007799)に開示されている、p−置換ベンゼンスルホン酸の第4級オニウム塩は揮発性が低いが、それらは好ましく使用される溶媒における低い溶解性のために、顕著な欠点を示す。特許文献7によると、それらはしたがって、秤量添加の目的のための複雑な操作で水中で分散させなければならない。極めて少ない量において懸濁液の連続的定常秤量添加は、産業的な見解から困難であると考えられている。好ましく使用される溶媒は、水およびプロセス中で本質的である溶媒、例えばフェノールであると理解される。
【0015】
多くの酸エステルクエンチャーのさらなる欠点は、それらがあまりにも急速に大量の遊離酸を発生させるということである。過剰の遊離酸は、例えばポリカーボネートと添加剤との反応に触媒作用を及ぼし、またポリカーボネートとフェノールとの逆反応をジフェニルカーボネートの遊離と共に促進さえする。一方で、クエンチされたポリカーボネートのさらなる処理の間に、熱にさらされた時に非常にゆっくり遊離酸を放出する、過剰のエステル結合酸の少量は、全体的に望ましい。それらは、ポリカーボネートの熱的荷重容量(thermal load capacity)を増加させる。
【0016】
【特許文献1】EP-A 971790
【特許文献2】DE-A 1031512
【特許文献3】EP-A 435124
【特許文献4】DE-A 4438545
【特許文献5】WO 0007799
【特許文献6】WO 0246272
【特許文献7】WO 0007799
【非特許文献1】Schnell著、「Chemistry and Physics of Polycarbonates」Polymer Reviews、第9巻、Interscience Publishers、ニューヨーク、ロンドン、シドニー1964年、33 頁以下
【非特許文献2】Polymer Reviews第10巻、「Condensation Polymers by Interfacial and Solution Methods」、Paul W. Morgan著、Interscience Publishers、ニューヨーク、1965年、VIII章、325頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
したがって、本発明の目的は、先行技術から始まって、ポリカーボネート中で触媒活性な不純物をクエンチするための抑制剤を発見することであり、その抑制剤は腐食性がなく揮発度が低く、および同時にプロセス中で固有の溶媒中にすぐに溶解し、かつ秤量添加され得る。同様に、カーボネートの形成と共にポリカーボネートの分解反応を避けるため、または添加剤との抑制反応が起こるのを回避するために、抑制剤はポリカーボネート中に比較的大過剰の遊離酸を決して生成してはならない。その代わりに、ゆっくりした遊離酸の発生は望ましい。抑制剤がポリカーボネートへの導入の間および次に続く段階で、全ての可能な遊離酸を全く形成しないことが特に好ましい。このように、それはクエンチされたポリカーボネートの粒状化後の工程、例えば射出成形の中に、再び活性を示し得る。
【課題を解決するための手段】
【0018】
ポリカーボネートの調製のための溶融エステル交換法の改良が公開されている。改良は少なくとも1つの有機硫黄含有酸の架橋エステルを溶媒粘度リアクターおよび高粘度リアクターの間のプロセスに添加することを伴う。
【発明の効果】
【0019】
驚くべきことに、それは安定した方法で、有機硫黄含有酸のエステルがバランスを持った方法で所望の特性を組合せ、かつポリカーボネート中の触媒活性な不純物を抑制するために極めて好適であることが解った。したがって驚くべきことに、そのような安定剤は、ゆっくりおよび段階的にのみ、対応する遊離酸を放出する。さらに、それらは、比較的長い滞留時間でさえポリカーボネート溶融物からほとんど蒸発しないような低揮発性を有する。驚くべきことに、その安定剤は常套に使用される高温および高濃度でさえ金属を腐食しない(例えば1.4571または1.4541(Stahlschluessel 2001、Verlag:Stahlschluessel Wegst GmbH、Th-Heuss-Strasse 36、D-71672 Marbach)およびタイプC Ni-ベースアロイ、例えば2.4605または2.4610(Stahlschluessel 2001、Verlag:Stahlschluessel Wegst GmbH、Th-Heuss-Strasse 36、D-71672 Marbach)。
【0020】
このことは特に驚くべきものである。なぜならば、ポリカーボネート中の触媒活性の不純物を抑制する場合、抑制剤が所望の特性(例えば低揮発性、このプロセスに特有である溶媒への溶解性、腐食からの開放および酸のゆっくりした放出)を正しい処置で組み合わせるかどうかを予測することは、通常可能ではないからである。
【0021】
したがって本発明は、有機硫黄含有酸のエステルを中−および高粘性リアクター間に添加することを特徴とするポリカーボネートの調製方法を提供する。
【0022】
本発明はさらに、溶融ポリカーボネート法によるポリカーボネートの調製の場合に、触媒活性な不純物を防ぐための有機硫黄含有酸のエステルの使用を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明によって好適な好ましい抑制剤は式(I):
【0024】
【化1】

(I)
[式中、置換基Rは互いに独立して水素またはC−C20−アルキル、好ましくはC−C−アルキル、特に好ましくは非置換C−C−アルキル、最も特に好ましくはC−C−アルキルを示し、アルキルは要すればハロゲン、特に水素またはメチルによって置換されており、
およびRは互いに独立して水素、C−C−アルキル、C−C30−アルキルカルボキシル、好ましくはC−C−アルキル、C−C25−アルキルカルボキシル、特に好ましくはC−C20−アルキルカルボキシル、特に水素、C17−アルキルカルボキシルまたはC15−アルキルカルボキシルまたは
およびRは基
【0025】
【化2】

(式中、Rは上記と同意義であり、
mは互いに独立して0または1を示し、
nは0〜8、好ましくは0〜6、特に0、1または2の整数値を示し、
m=0または1を示す。)を示す。]
b)式(II):
【0026】
【化3】

[式中、Rは上記と同意義であり、
置換基Aは互いに独立して水素またはC−C12−アルキル、好ましくはC−C−アルキル、特に好ましくはエチル、プロピルまたはブチルを示し、
Iは2または3を示す。]
式(III):
【0027】
【化4】

[式中、Rは上記と同意義。]
および式(IV):
【0028】
【化5】

[式中、Rおよびnは上記と同意義であり、かつ
はC−C30−アルキルカルボキシル、好ましくはC−C25−アルキルカルボキシル、特に好ましくはC−C20−アルキルカルボキシル特にC17−アルキルカルボキシルまたはC15−アルキルカルボキシル、または
【0029】
【化6】

(式中、Rは上記と同意義。)を示す。]
e)および式(V)、(VI)、(VIIa)、(VIIb)、(Ib)、(IVa):
【0030】
【化7】

【0031】
【化8】

【0032】
【化9】

【0033】
【化10】

【0034】
【化11】

[式中、Rおよびnは上記と同意義であり、および
qは0〜10、好ましくは1〜8、特に1〜5の整数値を示し、および
およびRは互いに独立して水素またはC−C20−アルキルを示し、好ましくはC−C−アルキル、特に好ましくはC−C−アルキル、最も特に好ましくはC−C−アルキルであり、アルキルはハロゲン、特に水素またはメチルで置換されることが可能であり、かつ
置換基R11は互いに独立して水素またはジ−(C−C)−アルキルアミノ、好ましくは水素またはジメチルアミノを示す。]
および
f)式(VIII):
【0035】
【化12】

[式中、RおよびAは上記と同意義。]および
g)式(IX):
【0036】
【化13】

[式中、Rおよびmは上記と同意義。]および
h)式(X):
【0037】
【化14】

[式中、Rおよびmは上記と同意義。]および
i)式(XI):
【0038】
【化15】

[式中、Rおよびmは上記と同意義。]
に適合する化合物からなる群から選択される1以上の有機硫黄含有酸のエステルである。
最も特に好ましくは以下式(Ia)〜(If)、(IIIa)、(IVb)、(Va)、(Vb)および(IXa):
【0039】
【化16】

【0040】
【化17】

【0041】
【化18】

【0042】
【化19】

【0043】
【化20】

【0044】
【化21】

【0045】
【化22】

【0046】
【化23】

【0047】
【化24】

【0048】
【化25】

【0049】
【化26】

[式中、Rおよびmは上記と同意義のものを有す。]
の抑制剤である。
【0050】
本発明による抑制剤は、独立してまたは所望の混合物または多数の異なる混合物においてポリマー溶融に添加され得る。本発明による抑制剤はまた、遊離酸(例えばp−トルエンスルホン酸またはo−リン酸)との混合物の形態で添加され得る。本発明による架橋有機硫黄含有酸のエステルの調製は、常套の方法、例えば適切な多官能性アルコールを用いて、ベンゼンスルホン酸クロリドまたはトルエンスルホン酸クロリドからのアルコーリシスによって行われる(Organikum、Wiley-VCH Verlag、第20版、Weinheim、606頁/1999年参照)。
【0051】
ポリカーボネートは例えば、溶融エステル交換法によって調製され得る。溶融エステル交換法による芳香族オリゴ−またはポリ−カーボネートの調製は文献で知られている(先行文献、例えば「Encyclopedia of Polymer Science」第10巻(1969年)、「Chemistry and Physics of Polycarbonates」、Polymer Reviews、H. Schnell、第9巻、John Wiley and Sons, Inc.(1964年)およびDE-C 1031512、US-A 3022272、US-A 5,340,905およびUS-A 5,399,659)
【0052】
このプロセスにより、芳香族ジヒドロキシ化合物はカルボン酸ジエステルと、好適な触媒、および要すればさらなる添加剤を用いて溶融下でエステル交換される。
【0053】
プロセスを行うために、例えば、WO 02/077 067(米国特許出願2004526839;2002177684および2004143088に対応、全てここに導入する)に開示されているタイプの装置を用いることが可能である。
【0054】
ポリカーボネートの調製のための好適なジヒドロキシアリール化合物は、式(XII):
【0055】
【化27】

[式中、Zは、炭素数6〜30を有する芳香族残基であって、1種以上の芳香核を含有していてよく、また置換されていてよく、かつ脂肪族または脂環式残基またはアルキルアリールまたはヘテロ原子を架橋メンバーとして含有していてもよい。]
で表されるものである。
【0056】
ジヒドロキシアリール化合物の例は:ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシジフェニル、ビス−(ヒドロキシフェニル)−アルカン、ビス−(ヒドロキシフェニル)−シクロアルカン、ビス−(ヒドロキシフェニル)−アリール、ビス−(ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス−(ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス−(ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス−(ヒドロキシフェニル)−スルホン、ビス−(ヒドロキシフェニル)−スルホキシド、1,1’−ビス−(ヒドロキシフェニル)−ジイソプロピルベンゼンおよびそれらの環状のアルキル化およびハロゲン化の化合物が挙げられる。
【0057】
これらのおよびさらに好適な他のジヒドロキシアリール化合物は、例えば米国特許明細書2970131、2991273、2999835、2999846、3028365、3062781、3148172、3271367、3275601、4982014、ドイツ特許出願公開1570703、2063050、2036052、2211956、3832396、フランス特許明細書1561518およびH. Schnell著、「Chemistry and Physics of Polycarbonates」、interscience Publishers、ニューヨーク1964年、28頁以下;102頁以降」、およびD. G. Legand、J. T. Bendler著、「Handbook of Polycarbonate Science and Technology」、Marcel Dekker ニューヨーク2000年、72頁以下に記載されている。
【0058】
好ましいジヒドロキシアリール化合物は、例えば:レゾルシノール、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−メタン、ビス−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−メタン、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−ジフェニル−メタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニル−エタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−1−(1−ナフチル)−エタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−1−(2−ナフチル)−エタン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、2,2−ビス−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、2,2−ビス−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニル−プロパン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘキサフルオロ−プロパン、2,4−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチル−ブタン、2,4−ビス−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−メチル−ブタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−シクロヘキサン、1,1−ビス−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−シクロヘキサン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチル−シクロヘキサン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサン、1,3−ビス−[2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル]−ベンゼン、1,1’−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−3−ジイソプロピル−ベンゼン、1,1’−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−4−ジイソプロピル−ベンゼン、1,3−ビス−[2−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル]−ベンゼン、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−スルホン、ビス−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−スルホンおよび2,2’、3,3’−テトラヒドロ−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビ−[1H−インデン]−5,5’−ジオールが挙げられる。
【0059】
特に好ましいジヒドロキシアリール化合物は:レゾルシノール、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−ジフェニル−メタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニル−エタン、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−1−(1−ナフチル)−エタン、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−1−(2−ナフチル)−エタン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−シクロヘキサン、1,1−ビス−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−シクロヘキサン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサン、1,1’−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−3−ジイソプロピル−ベンゼンおよび1,1’−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−4−ジイソプロピル−ベンゼンが挙げられる。
【0060】
最も特に好ましくは:4,4’−ジヒドロキシジフェニル、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパンおよびビス−(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサンが与えられる。
【0061】
ホモポリカーボネートの形成には1つのジヒドロキシアリール化合物かコポリカーボネートの形成には異なるジヒドロキシアリール化合物のどちらかを使用することが可能である。
【0062】
単価ジヒドロキシアリール化合物の代わりに、低分子量、主にOH−末端−基−停止オリゴカーボネートを開始材料として使用することもまた可能である。
【0063】
ジヒドロキシアリール化合物はまた、それらが調製されたモノヒドロキシアリール化合物の残存量を用いて使用されてもよく、または低分子量オリゴカーボネートは、オリゴマーの調製の間に分離されたモノヒドロキシアリール化合物の残存量を用いて使用されてもよい。モノヒドロキシアリール化合物の残存量は20%以下、好ましくは10%以下、特に好ましくは5%以下および最も特に好ましくは2%以下である(EP-A 1240232)。
【0064】
できるだけクリーンな原材料、化学薬品および助剤物質を使用目的とすることが望ましいが、ジヒドロキシアリール化合物を使用して、同様に合成に添加される全ての他の化学薬品および補助材料は、それらの合成、処理および保存に起因する不純物で明らかに汚染されるかもしれない。
【0065】
ジヒドロキシアリール化合物を用いる反応に好適なジアリールカーボネートは式(XIII):
【0066】
【化28】

[式中、R、R’およびR”は互いに独立して、同一または異なっていてよく、および水素、要すれば分岐状C−C34−アルキル、C−C34−アルキルアリールまたはC−C34−アリールを示し、Rはされに−COOR’’’であってよく、R’’’は水素、要すれば分岐状C−C34−アルキル、C−C34−アルキルアリールまたはC−C34−アリールを示す。]
で表されるものである。
【0067】
そのようなジアリールカーボネートの例は:ジフェニルカーボネート、メチルフェニル−フェニルカーボネートおよびジ−(メチルフェニル)カーボネート、4−エチルlフェニル−フェニルカーボネート、ジ−(4−エチルフェニル)カーボネート、4−n−プロピルフェニル−フェニルカーボネート、ジ−(4−n−プロピル−フェニル)カーボネート、4−イソプロピルフェニル−フェニルカーボネート、ジ−(4−イソプロピルフェニル)カーボネート、4−n−ブチルフェニル−フェニルカーボネート、ジ−(4−n−ブチルフェニル)カーボネート、4−イソブチルフェニル−フェニルカーボネート、ジ−(4−イソブチルフェニル)カーボネート、4−t−ブチル−フェニル−フェニルカーボネート、ジ−(4−t−ブチルフェニル)カーボネート、4−n−ペンチルフェニル−フェニルカーボネート、ジ−(4−n−ペンチルフェニル)カーボネート、4−n−ヘキシルフェニル−フェニルカーボネート、ジ−(4−n−ヘキシルフェニル)カーボネート、4−イソオクチルフェニル−フェニルカーボネート、ジ−(4−イソオクチルフェニル)カーボネート、4−n−ノニルフェニル−フェニルカーボネート、ジ−(4−n−ノニル−フェニル)カーボネート、4−シクロヘキシルフェニル−フェニルカーボネート、ジ−(4−シクロヘキシルフェニル)カーボネート、4−(1−メチルl−1−フェニルエチル)−フェニル−フェニルカーボネート、ジ−[4−(1−メチルl−1−フェニルエチル)−フェニル]カーボネート、ビフェニル4−イル−フェニルカーボネート、ジ−(ビフェニル4−イル)カーボネート、4−(1−ナフチル)−フェニル−フェニル カーボネート、4−(2−ナフチル)−フェニル−フェニルカーボネート、ジ−[4−(1−ナフチル)フェニル]カーボネート、ジ−[4−(2−ナフチル)フェニル]カーボネート、4−フェノキシフェニル−フェニルカーボネート、ジ−(4−フェノキシフェニル)カーボネート、3ペンタデシルフェニル−フェニルカーボネート、ジ−(3−ペンタデシルフェニル)カーボネート、4トリチルフェニル−フェニルカーボネート、ジ−(4−トリチルフェニル)カーボネート、メチルサリチレートフェニルカーボネート、ジ−(メチルサリチレート)カーボネート、エチルサリチレートフェニルカーボネート、ジ−(エチルサリチレート)カーボネート、n−プロピルサリチレートフェニルカーボネート、ジ−(n−プロピル−サリチレート)カーボネート、イソプロピルサリチレートフェニルカーボネート、ジ−(イソプロピルサリチレート)カーボネート、n−ブチルサリチレートフェニルカーボネート、ジ−(n−ブチルサリチレート)カーボネート、イソブチルサリチレートフェニルカーボネート、ジ−(イソブチルサリチレート)カーボネート、t−ブチル−サリチレートフェニルカーボネート、ジ−(t−ブチルサリチレート)カーボネート、ジ−(フェニルサリチレート)カーボネートおよびジ−(ベンジルサリチレート)カーボネートが挙げられる。
【0068】
好ましいジアリール化合物は:ジフェニルカーボネート、4−t−ブチルフェニル−フェニカーボネート、ジ−(4−t−ブチルフェニル)カーボネート、ビフェニル4−イル−フェニルカーボネート、ジ−(ビフェニル4−イル)カーボネート、4−(1−メチルl−1−フェニルエチルl)−フェニル−フェニルカーボネートおよびジ−[4−(1−メチルl−1−フェニルエチルl)−フェニル]カーボネートである。
【0069】
特に好ましく与えられるものは:ジフェニル カーボネートである。
【0070】
ジアリールカーボネートはまた、それらの調製されたモノヒドロキシアリール化合物の残存量を用いて使用される。モノヒドロキシアリール化合物の残存量は20%以下、好ましくは10%以下、特に好ましくは5%以下および最も特に好ましくは2%以下であってよい。
【0071】
ジヒドロキシアリール化合物に基づいて、ジアリールカーボネートは通常、ジヒドロキシアリール1モルにつき1.02〜1.30モル好ましくは1.04〜1.25モル、特に好ましくは1.06〜1.22モル、最も特に好ましくは1.06〜1.20モルの量で使用される。上記記載のジアリールカーボネートの混合物を使用することもまた可能である。
【0072】
末端基の制御または変化のために、使用されるジアリールカーボネートの調製に用いられなかったモノヒドロキシアリール化合物を使用することがさらに可能である。それは一般式(XIV):
【0073】
【化29】

[式中、R、R’およびR”は式(XIII)と同意義であり、但しこの場合R’およびR”は水素であり得るが、Rは水素ではない。]
で表される化合物である。
【0074】
そのようなモノヒドロキシアリール化合物は、例えば:1−、2−または3−メチルフェノール、2,4−ジメチルフェノール4−エチルフェノール、4−n−プロピルフェノール、4−イソプロピルフェノール、4−n−ブチルフェノール、4−イソブチルフェノール、4−t−ブチルフェノール、4−n−ペンチルフェノール、4−n−ヘキシルフェノール、4−イソオクチルフェノール、4−n−ノニルフェノール、3−ペンタデシルフェノール、4−シクロヘキシルフェノール、4−(1−メチルl−1−フェニルエチル)−フェノール、4−フェニルフェノール、4−フェノキシフェノール、4−(1−ナフチル)−フェノール、4−(2−ナフチル)−フェノール、4−トリチルフェノール、メチルサリチレート、エチルサリチレート、n−プロピルサリチレート、イソプロピルサリチレート、n−ブチルサリチレート、イソブチルサリチレート、t−ブチルサリチレート、フェニルサリチレートおよびベンジルサリチレートが挙げられる。
【0075】
好ましくは:4−t−ブチルフェノール、4−イソオクチルフェノールおよび3−ペンタデシルフェノールが挙げられる。
【0076】
好適なモノヒドロキシアリール化合物は、沸点が使用されるジアリールカーボネートの調製に用いられたモノヒドロキシアリール化合物よりも高いものである。モノヒドロキシアリール化合物は、反応の進行中いつでも添加され得る。反応の始め、またはその代わりプロセスの間の所望の点で添加されることが好ましい。遊離モノヒドロキシアリール化合物の調製は、ジヒドロキシアリール化合物に基づいて0.2〜20モル%、好ましくは0.4〜10モル%である。
【0077】
末端基はまた、主に使用されるジアリールカーボネートのベースモノヒドロキシアリール化合物よりも沸点が高いベースモノヒドロキシアリール化合物のジアリールカーボネートの付随的使用によって変化する。ここでまた、ジアリールカーボネートは反応の進行中いつでも添加され得る。反応の始め、またはその代わりプロセスの間の所望の点で添加されることが好ましい。使用されるジアリールカーボネートの総量におけるベースモノヒドロキシアリール化合物よりも沸点が高いジアリールカーボネートの割合は、1〜40モル%、好ましくは1〜20モル%および特に好ましくは1〜10モル%である。
【0078】
ポリカーボネートの調製のための溶融エステル交換法で使用される触媒は、文献既知の塩基性触媒であり、例えばアルカリおよびアルカリ土類ヒドロキシドおよびオキシド、並びにアンモニウムまたはホスホニウム塩、(以下のオニウム塩と呼ぶ)が挙げられる。オニウム塩、特に好ましくはホスホニウム塩は合成中に好ましく使用される。本発明の範囲内のホスホニウム塩は一般式(XV):
【0079】
【化30】

[式中、R7−10は同一または異なってC−C10−アルキル、C−C14−アリール、C−C15−アリールアルキルまたはC−C−シクロアルキル、好ましくはメチルまたはC−C14−アリール、特に好ましくはメチルまたはフェニルであってよく、X はアニオン、例えばヒドロキシド、サルフェート、炭化水素、カーボネートまたはハライド、好ましくはクロリドまたは式−OR(式中RはC−C14−アリール、C−C15−アリールアルキルまたはC−C−シクロシクロアルキル、好ましくはフェニルである)のアルキレートまたはアリーレートであってよい。]
で表されるものである。
【0080】
好ましい触媒はテトラフェニルホスホニウムクロリド、テトラフェニルホスホニウムヒドロキシドおよびテトラフェニルホスホニウムフェノラートであり;テトラフェニルホスホニウムフェノラートが特に好ましい。
【0081】
それらはジヒドロキシアリール化合物1モルに基づいて、10−8〜10−3モル、特に好ましくは10−7〜10−4モルの量で好ましく使用される。
【0082】
触媒はさらに、重縮合の反応速度の増進のために単独または共触媒としてオニウム塩に添加して使用され得る。
【0083】
それらはアルカリ金属およびアルカリ土類金属のアルカリ性反応塩、例えばリチウム、ナトリウムおよびカリウムのヒドロキシド、アルコキシドおよびアリールオキシド、好ましくはナトリウムのヒドロキシド、アルコキシドまたはアリールオキシドを包含する。ナトリウムヒドロキシドおよびナトリウムフェノラート、並びに2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパンのジナトリウム塩は最も好ましい。
【0084】
アルカリ金属およびアルカリ土類金属のアルカリ性反応塩の量は、単独または共触媒として、いずれの場合もナトリウムとしておよび形成され得るポリカーボネートに基づいて測定されて、1〜500ppb、好ましくは5〜300ppbおよび最も好ましくは5〜200ppbの範囲であってよい。
【0085】
好ましくない副反応の抑制のために、オリゴカーボネートの調製の間、すなわち合成の始め、または重縮合の直前の添加にアルカリ金属およびアルカリ土類金属のアルカリ反応塩を使用することは可能である。
【0086】
重縮合の前に、同じタイプまたは異なるタイプのオニウム触媒の量の補助的な添加も可能である。
【0087】
秤量添加の間、有害な過剰濃縮を回避するために、触媒の添加は溶液中で行われる。溶液は系およびプロセスにおいて固有の化合物、例えばジヒドロキシアリール化合物、ジアリールカーボネートまたはモノヒドロキシアリール化合物である。ジヒドロキシアリール化合物およびジアリールカーボネートはすぐに変化し、かつ特に触媒の活性下、わずかに高温でさえ分解することが当業者でよく知られているので、モノヒドロキシアリール化合物が特に好ましい。ポリカーボネートの品質は結果としてダメージを受ける。産業的に重要なポリカーボネートの調製のためのエステル交換反応の場合、好ましい化合物はフェノールである。好ましく使用される触媒であるテトラフェノールホスホニウムフェノラートは好ましくはフェノールを用いて混合した結晶として調製中に単離されるので、フェノールはまた適切である。
【0088】
熱可塑性ポリカーボネートは式(XVI):
【0089】
【化31】

[式中、R、R’およびR”およびZは式(IX)または(VIII)と同意義であり、
xは繰り返し構造ユニットであり、かつポリカーボネートの分子量によって特徴づけられる。]
で表される式(XVI)中の基:
【0090】
【化32】

式(XVI)はまた、全体の基とし、水素および両サイドで異なっていてよい。
で表されるものが望ましい。
【0091】
結果は、一般的にポリカーボネートの得られる重量平均分子量は15,000〜40,000、好ましくは17,000〜36,000、特に好ましくは17,000〜34,000であり、重量平均分子量はMark-Houwing相互関係による相対粘度によって決定される(J. M. G. Cowie、Chemie und Physik der synthetischen Polymeren、Vieweg Lehrbuch、Braunschweig/Wiesbaden、1997年、235頁) 。
【0092】
ポリカーボネートはいずれの場合も60ppb以下、好ましくは<40ppbおよび特に好ましくは<20ppb(Naカチオンで計算した)のカチオンおよびアニオンの非常に低い含量を有し、存在するカチオンはアルカリおよびアルカリ土類金属のそれであり、それらは、例えば使用された原料およびホスホニウムおよびアンモニウム塩からの不純物に由来する。さらなるイオン、例えばFe、Ni、Cr、Zn、Sn、Mo、Alイオンおよびそれらの類似体は、原料に存在するか、または磨耗または腐食にて使用される装置の機械材料に由来し得る。そのようなイオンの総量は2ppm以下、好ましくは1ppm以下および特に好ましくは0.5ppm以下である。
【0093】
存在するアニオンは、当量の無機酸と有機酸のアニオン(例えば、クロリド、サルフェート、カーボネート、ホスホネート、オキサレート等)である。
【0094】
したがって最小量が望まれ、それは非常に純粋な原料の使用によって達成されるだけかもしれない。そのような純粋な原料は、例えば精製プロセス(例えば再結晶、蒸留、洗浄による再沈殿等)の後に、得られるのみである。
【0095】
ポリカーボネートは目的の方法で分岐され得る。好適な分岐剤はポリカーボネート調製で知られている3以上の官能基、好ましくは3以上のヒドロキシル基を有する化合物である。
【0096】
使用され得る3以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物のいくつかは、例えば:フロログルシノール、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプテン−2、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプタン、1,3,5−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ベンゼン、1,1,1−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−エタン、トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−フェニルメタン、2,2−ビス−(4,4−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−シクロヘキシル]−プロパン、2,4−ビス−(4−ヒドロキシフェニル−イソプロピル)−フェノールおよびテトラ−(4−ヒドロキシフェニル)−メタンである。
【0097】
その他の多官能性化合物のいくつかは:2,4−ジヒドロキシ安息香酸、トリメシン酸、塩化シアヌルおよび3,3−ビス−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−オキソ−2,3−ジヒドロインドールである。
【0098】
好ましい分岐剤は:3,3−ビス−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−オキソ−2,3−ジヒドロインドールおよび1,1,1−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−エタンである。
【0099】
分岐剤はジヒドロキシアリール化合物に基づいて、一般的に0.02〜3.6モル%の量で使用される。
【0100】
エステル交換法によるポリカーボネートの調製方法は、非連続性または連続性であり得る。一旦ジヒドロキシアリール化合物およびジアリールカーボネート、要すればさらなる化合物が溶融の形態で存在するならば、反応は好適な触媒存在下で開始する。所望の最終的な状態が達成されるまで、分離したモノヒドロキシアリール化合物を輸送することによって、転換または分子量は、好適な器具および装置中で、昇温および減圧と共に増加される。末端基の性質および濃度は、ジヒドロキシアリール化合物とジアリールカーボネートとの比率の選択、蒸気を経たジアリールカーボネートの損失率および要すれば添加化合物(例えば、より高沸モノヒドロキシアリール化合物)によって形成され、その損失率はポリカーボネートの調製のために手順または装置の選択によって与えられる。
【0101】
プロセスが実行される方法、装置および手順に関しては制限または規制はない。さらにジヒドロキシアリール化合物とジアリールカーボネート、要すれば他の反応物質との間の溶融エステル交換反応を行うのに使用する温度、圧力および触媒に関しても特に制限または規制はない。選択された温度、圧力および触媒が、分離するモノヒドロキシアリール化合物を適切に迅速な除去で溶融エステル交換反応することが可能であれば、どんな条件でも可能である。
【0102】
全てのプロセスを通じた温度は、一般的に180〜330℃、および圧力は15バール(絶対)および0.01ミリバール(絶対)である。ほとんどの場合、連続方法が、製品品質のために有利であるので選択される。
【0103】
ポリカーボネートの調製のための連続的な方法は、好ましくはジアリールカーボネート、要すればその他の反応物質を有する1以上のジヒドロキシアリール化合物を、触媒を用いて、形成するモノヒドロキシアリール化合物の分離なしで予備縮合をした後、次に続く複数の反応噴霧段階(reaction vaporizer stages)で、段階的に増加する温度および段階的に落ちる圧力で、分子量が望ましいレベルまで増やされることを特徴としている。
【0104】
各々の反応噴霧段階(vaporizer stages)に好適な反応装置、器具およびリアクターは、手順によって選択された温度と圧力で必要な滞留時間を提供する熱交換器、圧力緩和装置(pressure relieving apparatus)、セパレーター、コラム、気化器、撹拌コンテナおよびリアクターまたは他の市販の装置である。選択された装置は熱の必要な導入を許容し、かつそれらが連続的に増加する溶融粘度に応ずるように構成されなければならない。
【0105】
全ての装置は、ポンプ、パイプとバルブでお互いに接続されている。全ての装置の間のパイプは自然に、できるだけ短くなければならず、かつラインのカーブは必要以上に長い滞留時間を避けるために、できるだけ小さくしておかれなければならない。外部の(すなわち技術的な)フレームワーク(framework)条件と化学施設の集合体の関係は、考慮に入れられなければならない。
【0106】
好ましい持続的な処置によってプロセスを実行するために、反応体が一緒に溶融され、または固体ジアリール化合物はジアリールカーボネート溶融物中に溶解され、または固体ジアリールカーボネートはジヒドロキシアリール化合物の溶融物中で溶解され、若しくは、2つの原料は溶融の形態で、好ましくは調製から直接的に共に導入してもよい。原料の分離溶融(separate melts)の滞留時間、特にジヒドロキシアリール化合物の溶融の滞留時間は、できるだけ短く調節される。溶融物の混合は、一方では各々の原料と比較して、原料の混合物の低い融点のために、品質の損失なしに、より長い期間放置され得る。
【0107】
触媒(好ましくはフェノール中で溶解されたもの)を次いで添加され、かつ溶融物は反応温度まで加熱される。2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−プロパンおよびジフェニルカーボネートからのポリカーボネートの調製のための産業的に重要な過程の最初に、温度は180〜220℃、好ましくは190〜210℃、最も特に好ましくは190℃である。滞留時間15〜90分、好ましくは30〜60分で、反応平衡が、形成するヒドロキシアリール化合物の除去なしで確立される。反応は大気圧で行われるが、また技術的な理由で、過剰圧力でも行われ得る。産業的な施設における好ましい圧力は、2〜15バール(絶対)である。
【0108】
溶融混合物は第1真空チャンバーに導入され、その圧力は100〜400ミリバール、好ましくは150〜300ミリバールで調節され、その後すぐに同じ圧力、好適な装置中で反応温度またはインプット温度まで再び加熱される。解放操作(relief operation)の間、形成するヒドロキシアリール化合物は、まだ存在するモノマーと共に、留去される。排水受(sump receiver)中で、要すれば同じ圧力および同じ温度で再循環と共に滞留時間5〜30分後、反応混合物を第2真空チャンバーに導入し、その圧力が50〜200ミリバール、好ましくは80〜150ミリバールであり、かつその後すぐに同じ圧力で好適な装置中で、190〜250℃、好ましくは210〜240℃、特に好ましくは210〜230℃まで加熱される。ここでまた、形成するヒドロキシアリール化合物は、まだ存在するモノマーと共に留去される。排水受中で要すれば同じ圧力および同じ温度で、ポンピング(pumping)によって再循環しつつ、滞留時間5〜30分後、反応混合物を第3真空チャンバーに導入し、その圧力が30〜150ミリバール、好ましくは50〜120ミリバールであり、その後すぐに同じ圧力で好適な装置中で、220〜280℃、好ましくは240〜270℃、特に好ましくは240〜260℃まで加熱される。ここでまた、形成するヒドロキシアリール化合物は、まだ存在するモノマーと共に留去される。排水受中で、要すれば同じ圧力および同じ温度で、ポンピングによって再循環しつつ、滞留時間5〜20分後反応混合物をさらなる真空チャンバーに導入し、その圧力が5〜100ミリバール、好ましくは15〜100ミリバールであり、特に好ましくは20〜80ミリバールでその後すぐに同じ圧力で好適な装置中で、250〜300℃、好ましくは260〜290℃、特に好ましくは260〜280℃まで加熱される。ここでまた、形成するヒドロキシアリール化合物は、まだ存在するモノマーと共に留去される。
【0109】
これらの段階数、この場合例えば4は2〜6の間で変化し得る。段階の数が変化するならば、温度および圧力は比較結果を得るために採用されるべきである。これらの段階において達成されるオリゴマーカーボネートの相対粘度は、1.04〜1.20、好ましくは1.05〜1.15、特に好ましくは1.06〜1.10である。排水受中要すれば最後のフラッシュ/蒸発器段階の場合において、同じ圧力および同じ温度で、ポンピングによって再循環しつつ、5〜20分の滞留時間の後、そうして生じたオリゴカーボネートをディスクまたはバケットリアクターに供給しかつ好ましくは250〜310℃、好ましくは250〜290℃、特に好ましくは250〜280℃で、圧力は1〜15ミリバール、好ましくは2〜10ミリバールで、滞留時間は30〜90分、好ましくは30〜60分でさらに凝縮する。製生物は、相対粘度1.12〜1.28、好ましくは1.13〜1.26、特に好ましくは1.13〜1.24に達する。このリアクターを離れる溶融性は、さらなるディスクまたはバスケットリアクターで所望の最終粘度または最終分子量にする。温度は270〜330℃、好ましくは280℃〜320℃、特に好ましくは280〜310℃で、圧力は0.01〜3ミリバール、好ましくは0.2〜2ミリバール、滞留時間60〜180分、好ましくは75〜150分である。相対粘度は所望の用途に必要なレベルに調節され、1.18〜1.40、好ましくは1.18〜1.36、特に好ましくは1.18〜1.34である。
【0110】
2つのバスケットリアクターの機能はまた、1つのバスケットリアクター中で組合わされ得る。全てのプロセス段階からの蒸気は、すぐに引きあげられ、集められ、かつワークアップされる。このワークアップは、回収された物質の高い純度を達成するために、蒸留によって一般的に行われる。これは、例えば、ドイツ特許出願第10100404(=米国特許出願6,703,473、参考によってここで導入する)によってもたらされ得る。経済的およびエコロジー的な見解から、非常に高純度な形態に分離されるモノヒドロキシアリール化合物の回収は、容易である。モノヒドロキシアリール化合物は、ジヒドロキシアリール化合物またはジアリールカーボネートの調製において直接的に用いられ得る。
【0111】
ディスクまたはバスケットリアクターは、長い滞留時間で、それらが真空で絶えず回復(renewed)される非常に大きい表面積を提供するという事実によって区別される。幾何学に関して、ディスクまたはバスケットリアクターは、製品の溶融粘度によって形成される。例えば好適には、DE 4447422C2およびEP A 1253163に開示されているリアクター、またはWO A 99/28 370に開示されている二軸リアクター(各々と対応する、米国特許出願5,779,986、6,630,563および6,329,495は参考によってここに導入する)が挙げられる。
【0112】
非常に低分子量のオリゴカーボネート、および完成したポリカーボネートを包含するオリゴカーボネートは、一般的にギアポンプ、異なるタイプのスクリューまたは特別なタイプの置換ポンプを用いて運搬される。
【0113】
装置、リアクター、パイプ、ポンプおよび器具の製造のための特に好適な材料は、Cr Ni(Mo)18/10タイプのステンレス鋼、例えば、1.4571または1.4541(Stahlschluessel 2001(Verlag):Stahlschluessel Wegst GmbH、Th-Heuss-Strasse 36、D-71672 Marbach)およびタイプCのNiベースのアロイ、例えば2.4605または2.4610(Stahlschluessel 2001(Verlag):Stahlschluessel Wegst GmbH、Th-Heuss-Strasse 36、D-71672 Marbach)が挙げられる。ステンレス鋼が約290℃以下のプロセス温度で使用され、かつ、Niベースのアロイは約290℃以下のプロセス温度で使用される。
【0114】
不純物
溶融エステル交換によって調製されるポリカーボネートは、それらの調製の後、触媒活性の塩基性不純物(basic impurities)を含有し得る。これらの不純物は、一方で、分離されなかった開始物質中のわずかな不純物、分離されなかった熱分解可能な触媒の塩基性残渣(basic residues)、または分離されなかった安定な塩基性触媒塩類に起因する。熱的に分解可能な触媒は、例えば上記のオニウム塩類であると理解される。熱的に安定な触媒は、例えばアルカリまたはアルカリ土属金属のアルカリ反応塩類である。
【0115】
触媒活性、塩基性不純物を抑制するために、本発明による上記の抑制剤は、各プロセスの間、様々な時間でポリカーボネートに添加されてもよい。添加の時間に関する制限はない。抑制剤は一般的に、決定的な方法で化学反応の動力学を抑制し、その結果ポリマーにおける品質低下の変化を抑制する全ての化合物であると理解される。
【0116】
抑制剤
一旦ポリカーボネートの所望の分子量が達されれば、本発明による式(I)〜(XI)の抑制剤は好ましくは添加される。抑制剤の効果的な導入のために、均質混合になる静的ミキサーまたは他のミキサー(例えば押出機)が好適である。後者の場合、要すれば他の物質(例えば離型剤)と共に、熱安定剤は、ポリマー溶融の側面押出機(lateral extruder)を経由して、主なポリマーストリームに添加される。
【0117】
本発明による抑制剤は、ポリマー溶融に個別に、または互いに異なる所望の混合物、または複数の異なる混合物で添加されてもよい。さらに、フリーのスルホン酸誘導体(例えばベンゼンまたはトルエンスルホン酸)と共に本発明による抑制剤の混合物を加えることも可能である。
【0118】
抑制剤は好ましくは融点30℃以上、好ましくは40℃以上および特に好ましくは50℃以上であり、かつ沸点は1ミリバールで150℃以上、好ましくは200℃以上および特に好ましくは230℃以上である。
【0119】
本発明による抑制剤は、ポリカーボネートに基づいて10ppm以下、好ましくはポリカーボネートに基づいて50ppm以下、特に好ましくは30ppm以下および最も特に好ましくは15ppm以下の量で使用され得る。
【0120】
好ましくは抑制剤またはそれらの混合物の少なくとも0.5ppm、特に好ましくは1ppm、最も特に好ましくは1.5ppmが使用される。特に、抑制剤はポリカーボネートに基づいて2〜10ppmの量で使用される。必要に応じてそれらはまた、遊離酸、例えばo−リン酸または、安定剤として好適な添加剤(例えばベンゼンまたはトルエンスルホン酸)との混合物の形態で添加され得る。遊離酸または他の抑制剤の量は(ポリカーボネートに基づいて)20ppm以下、好ましくは10ppm以下、特に0〜5ppmである。
【0121】
本発明による抑制剤の添加の形態に関して制限はない。本発明による有機硫黄含有酸のエステルまたはそれらの混合物は、ポリマー溶融に固体の形態で、すなわち粉末状で、溶液中または溶融形態中で添加され得る。別のタイプの秤量添加はマスターバッチ(好ましくはポリカーボネートと共に)の使用であり、それはまた、さらなる添加剤(例えば他の安定剤または離型剤)を含有してもよい。
【0122】
本発明による有機硫黄含有酸のエステルは、好ましくは液体状態で添加される。秤量添加される量が非常に少ないため、本発明による架橋エステルの溶液が好ましくは使用される。好適な溶媒は、プロセスを妨げず、化学的に不活発で、速く蒸発するものである。
【0123】
好適な溶媒は、常圧で沸点30〜300℃、好ましくは30〜250および特に好ましくは30〜200℃を有する全ての有機溶媒、並びに水(結晶化の水を含有する)である。問題の特定のプロセスで起こるそれらの化合物は、好ましくは選択される。残っている残渣は、調製される製品の要求プロファイルに応じて製品の品質を減少させない。水に加えて、溶媒はアルカン、シクロアルカンおよび芳香族化合物であり、それらはまた、置換されてもよい。置換基は、異なる組合せにおいて、脂肪族、脂環式または芳香族基、並びにハロゲンまたは水酸基である。ヘテロ原子(例えば酸素)はまた、脂肪族、脂環式または芳香族基の間で架橋構成要素(members)であってよく、両方の基は同一または異なってもよい。さらなる溶媒はまた、有機酸のケトンとエステル、並びに環状カーボネートであり得る。抑制剤はまた、グリセロールモノステアレート中で溶解、かつ秤量添加されてもよい。
【0124】
水に加えて、例えばn−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタンおよびそれらの異性体、クロロベンゼン、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールおよびそれらの異性体、o−、m−およびp−クレゾール、アセトン、ジアリールエーテル、ジメチルケトン、ポリエチレングリコール、エチルアセテート、エチレンカーボネートおよびプロピレンカーボネートが挙げられる。
【0125】
ポリカーボネートプロセスのために好ましく好適には、水、フェノール、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネートおよびトルエンが挙げられる。
【0126】
特に好ましく好適には、水、フェノールおよびプロピレンカーボネートである。遊離スルホン酸および部分的にエステル化されたスルホン酸、さらにアルコールは、本発明による式(I)〜(VII)抑制剤の劣化製品(degradation products)として形成される。
【0127】
本発明による抑制剤の添加後、得られるポリカーボネートはさらに、性質を変える目的で常套の添加剤および添加物質(例えば、助剤物質および強化物質)が提供され得る。添加剤と添加物質の添加は有益な寿命(例えば、加水分解または劣化安定剤)を延長し、色彩安定性(例えば、熱およびUV安定剤)を改良し、処理(例えば離型剤、流動性改良剤(flow improvers))を単純化し、使用時の性質(静電防止剤)を改良し、難燃性を向上させ、外観(例えば、有機着色剤、顔料)に影響を与え、または、ポリマーの性質を特定のストレス(衝撃耐性、細かく分割した鉱物、繊維上材料、石英粉末、グラスファイバーおよびカーボンファイバー)に適応させる。これらは、所望の特性を確立および達成させるために要求通りに全て組合わされ得る。そのような添加物質および添加剤は、例えば、「Plastics Additives」、R. Gaechter and H. Mueller、Hanser Publishers 1983年に記載されている。
【0128】
これらの添加剤および添加物質は、個別にまたは所望の混合物または複数の異なる混合物中においてポリマーの単離の間に直接的かコンパウンド段階(compounding step)と呼ばれる顆粒の溶融の後にポリマー溶融へ添加され得る。
【0129】
添加剤および添加物質、またはそれらの混合物は、固体の形態で、すなわち粉末状で、または溶融の形態でポリマー溶融に添加され得る。別のタイプの秤量添加は、マスターバッチの使用または添加剤または添加混合物のマスターバッチの混合物の使用である。
【0130】
これらの物質の添加は、好ましくは常套の装置で完成したポリカーボネートに行われるが、必要に応じて、また、ポリカーボネート調製プロセスの異なる段階で行われてもよい。
【0131】
好適な添加剤は、例えば「Additives for Plastics Handbook」、John Murphy、Elsevier、オックスフォード 1999年または「Plastics Additives Handbook Hans Zweifel」、Hanser、Munich 2001年に記載されているものである。
【0132】
以下の実施例は、限定することなく本発明を例示することを目的とする:
【実施例】
【0133】
相対溶液粘度を25℃で濃度5g/lのジクロロメタン中で決定した。
【0134】
フェノール性OHの含量をIR測定により得た。この目的のために、純粋なジクロロメタンと比較してジクロロメタン50ml中ポリマー2gの溶液の示差測定(differential measurement)を行い、かつ吸光度3582cm−1での違いを決定した。
【0135】
GMSはグリセロールモノパルミテートおよびグリセロールモノステアレートであると理解される。
【0136】
GMS全体の含有物は、遊離GMS(free GMS)(GMS遊離)、GMSカーボネート(GMS−CO)および導入GMS(incorporated GMS)からなる。後者を異なる形態で計算した。サンプルの一部を80℃でアルカリ加水分解を受けさせ、次いで塩酸を用いて約pH1に調節した。この溶液はt−ブチルメチルエーテルで抽出し、抽出物を乾燥させた。誘導化の後、フレームイオン化検出器と接続したキャピラリーカラム上でガスクロマトグラフィーにより分析を行った。量的評価は内部基準によって行われ、かつGMSの総含量を得る。
【0137】
もう一方のサンプルの一部を、ジクロロメタン中で溶解し、誘導化した。キャピラリーカラム上でのガスクロマトグラフィーによって分離し、かつフレームイオン化検出器(FID)を用いて検出した後、定量化が、内部基準(internal standard)によって行われた。遊離GMSおよびGMSカーボネートの含量が得られた。GC−FIDによってポリカーボネート中でのグリセロールモノステアレート(GMS)およびグリセロールモノステアレートカーボネート(GMSカーボネート)の定量化:
サンプル約0.5gをCHCl5ml中で溶解し、かつ内部基準(例えばn−アルカン)を添加した。t−ブチルメチルエーテル(MTBE)約5mlを、ポリマーの沈殿のためにこの溶液に添加した。次に懸濁物を振とうし、次いで遠心分離器で分離した。得られた上澄み溶液3mlを、ピペットで除去し、窒素雰囲気下で乾燥濃縮した。残渣をMSTFA溶液(N−メチル−N−(トリメチルシリル)−トリフルオロアセトアミド)を用いてシリレート化した。ろ過した溶液を、ガスクロマトグラフィー(GC)(例えばHP6890)によって色層分析した。検出をフレームイオン化検出器(FID)によって行った。
【0138】
残存モノマーを決定するための分析手順:
サンプルをジクロロメタン中で溶解し、アセトン/メタノールから再沈殿した。沈殿ポリマーを分離し、かつろ液を濃縮した。残存モノマーの定量化を逆相(reverse phase)で行った。移動相勾配(gradient)リン酸アセトニトリル0.04%におけるクロマトグラフィー。検出はUVによって行う。このように、ビスフェノール(BPA)、フェノール、t−ブチルフェノール(BUP)、ジフェニルカーボネート(DPC)およびジ−BUPカーボネートを決定した。
使用した材料:
ポリカーボネートA: 相対溶液粘度 1.204
フェノール性OH含量 500ppm
DPC 500ppm
BPA 20ppm
フェノール 100ppm
【0139】
抑制剤A:
【0140】
【化33】

【0141】
抑制剤B:
【0142】
【化34】

【0143】
抑制剤C:
【0144】
【化35】

【0145】
ポリカーボネートの熱安定性における改良に関する本発明による抑制剤の効果は、ポリカーボネートの長期にわたる熱負荷容量(load capacity)によって検討される。
【0146】
実施例A
抑制剤の合成A:
【0147】
【化36】

【0148】
KMFからのグリセロール552.6g(6.0モル)およびAldrichからのピリジン4746g(60モル)を窒素下に置き、均一に溶解した。ベンゼンスルホン酸クロリド3196.8g(18.1モル)を非常にゆっくり滴下し、その間温度30−35℃を超えない。次いで撹拌40℃で1時間を行う。
【0149】
ワークアップ:
バッチを蒸留水3リットル、氷約4kgおよびジクロロメタン3リットルとの混合物に激しく撹拌して非常にゆっくり添加し、その間温度35℃を超えない。次いで有機相をメタノール約10リットル中で沈殿させ、吸引ろ過し、薄層クロマトグラフィーが、生成物がクリーンになることを示すまでメタノールで洗浄した。次いで乾燥を60℃で真空のドライキャビネット中で恒量まで行う。
収率:白色粉末970g(理論値31.54%)
分析
融点(m.p.)81−83℃
H−NMR(400 MHz、TMS、CDCl) δ=7.8ppm(m、6H)、7.7(m、3H)、7.55(m、6H)、4.75(m、1H)、4.1(d、4H)。
【0150】
実施例1:
使用したポリカーボネートの量に基づいて、抑制剤A2.5ppmを出発ポリカーボネートAに添加して、混合物を窒素と真空下で不活性にする。サンプルを300℃までプレヒートしたバスの中に浸し、撹拌することなく高真空下で20分間溶融した。サンプルが溶融するとすぐに、撹拌機のスイッチを入れ、少量のサンプルを取り出す。撹拌をさらに2時間行い、小さなサンプルは30、60および120分後に採る。
これらのサンプルの相対粘度および残存モノマー含量を決定する(表1)。
【0151】
実施例2:
抑制剤B2.5ppm以外実施例1と同様。
【0152】
実施例3:
抑制剤C2.5ppm以外実施例1と同様。
【0153】
比較例1:
抑制剤なし以外実施例1と同様。
【0154】
比較例2:
エチルトシレート(抑制剤として)2.5ppm以外実施例1と同様。
【0155】
比較例3:
o−リン酸(抑制剤として)2.5ppm以外実施例1と同様。
【0156】
表1:
【0157】
【表1】

【0158】
これらの実施例は、抑制剤のない試験、非架橋性抑制剤を用いた試験およびポリカーボネートの縮合活性の抑制(真空中で相対粘度のわずかな増大)に関して比較的すぐに揮発性する酸を用いる試験と比較して本発明による抑制剤のポジティブな性質(同時にジフェニルカーボネート(DPC)の例にみられる残存モノマーの効果的な減少)を示す。
【0159】
抑制剤C0.41重量%が添加された、ポリカーボネート中の材料1.4571および2.4605の腐食の検討は、300℃で600時間の暴露(磨耗比<0.01mm/a)後、腐食がないことを示す。
【0160】
ポリカーボネートの触媒活性を抑えることにおける本発明による抑制剤の作用はまた、グリセロールモノステアレートの秤量添加を用いて検討した。
【0161】
実施例4:
相対粘度1200を有するポリカーボネート溶融物の流量4600kg/hを離型特性を改良するためにGMSを備えた。この目的のために、ポリカーボネート顆粒/h400kgを直径70mmの軸を有する二軸押出機で290℃で溶融した。フェノール/水混合物(90:10)中で溶解した抑制剤C46g/h(ポリカーボネートストリーム(stream)に基づいて1ppm)を、ポリカーボネート溶融物が既に供給された押出機のオープンハウジング(open housing)を経て秤量添加した。その後すぐに、溶融温度90℃で液体GMS/h1560gを、同じ押出機へさらにパイプを経てオープンハウジングへのパイプへ秤量添加する。混合物を不活性にするために両方のハウジングに窒素を通す。押出機を出る溶融物をギアポンプで取り除き、温度288℃で主な溶融流れへ汲み上げた。溶融流れが共にもたらされる(brought)点の後すぐに流れの方向に、静置ミキサーが続き、それが全体として溶融流れの中に均一に添加剤を分配する。溶融物は、次いで放出されて、顆粒にする。表2で示される値は、生成物において測定した。
【0162】
比較例4:
抑制剤の添加のない以外は実施例4と同様。
【0163】
表2
【0164】
【表2】

【0165】
ポリマー溶融への導入に関するフリーの離型剤の安定性の上で、本発明による抑制剤の添加のポジティブな効果は明らかに見られ得る。
【0166】
本発明を例示目的のために前述のように詳細に記載したが、そのような詳細は単にその目的のためであって、請求の範囲によって限定されうることを除いて、発明の精神および範囲から逸脱することなく、当業者によって変更を行うことができると理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中粘性リアクターおよび高粘性リアクターを包含するポリカーボネート調製のための溶融エステル交換法において、改良が上記リアクターの間のプロセスに少なくとも1つの有機硫黄含有酸の架橋エステルを添加することを含む、溶融エステル交換法。
【請求項2】
架橋エステルが式(I):
【化1】

[式中、置換基Rは互いに独立して水素または非置換またはハロ置換C−C20−アルキルを示し、
およびRは互いに独立して水素、C−C−アルキルまたはC−C30−アルキルカルボキシルまたはRおよびRは基
【化2】

(式中、Rは上記と同意義であり、
mは互いに独立して0または1を示し、
nは0〜8の整数値を示す。)を示す。]
式(II):
【化3】

[式中、Rは上記と同意義であり、
互いに独立して水素またはC−C12−アルキルを示し、
Iは2または3を示す。]
式(III):
【化4】

[式中、Rは上記と同意義。]
および式(IV):
【化5】

[式中、Rおよびnは上記と同意義であり、
はC−C30−アルキルカルボキシル
または式
【化6】

(式中、Rは上記と同意義。)を示す。]
式(V):
【化7】

式(VI):
【化8】

式(VIIa):
【化9】

式(VIIb):
【化10】

式(Ib)および(IVa):
【化11】

[式中、Rおよびnは上記と同意義であり、および
qは0〜10の整数値を示し
およびRは互いに独立して水素またはC−C20−アルキルを示し、かつ
11は互いに独立して水素またはジ−(C−C)−アルキルアミノを示す。]
式(VIII):
【化12】

[式中、RおよびAは上記と同意義。]
式(IX):
【化13】

[式中、Rおよびmは上記と同意義。]
式(X):
【化14】

[式中、Rおよびmは上記と同意義。]
式(XI):
【化15】

[式中、Rおよびmは上記と同意義。]
から成る群から選択される式に対応する少なくとも1つの化合物である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
エステルの量がポリカーボネートの質量に対して100ppm以下の積極量である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
ポリカーボネートの調製のための溶融エステル交換法における、触媒活性不純物の抑制に有機硫黄含有酸の架橋エステルを使用する方法。

【公開番号】特開2006−16616(P2006−16616A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−192287(P2005−192287)
【出願日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】