説明

溶融スラグの冷却処理方法

【課題】冷却ドラム方式の冷却処理装置を用いて、比較的少ない量の冷媒でも溶融スラグを効率的に冷却処理することができるとともに、冷媒を介してスラグ顕熱を効率的に熱回収することができる冷却処理方法を提供する。
【解決手段】内部に冷却水が通される回転可能な冷却ドラムを備え、その外周のドラム面に溶融スラグが接触することにより冷却され、冷却されたスラグがドラム面から剥離して排出されるようにした冷却処理装置を用いて、溶融スラグを冷却する方法において、前記冷却ドラムを通過した高温冷却水から蒸気を分離し、該蒸気を回収することにより、溶融スラグの顕熱を蒸気として熱回収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却ドラム方式の冷却処理装置を用いた溶融スラグの冷却処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄鋼製造プロセスで発生する溶融スラグ(例えば、製鋼スラグ)の多くは、冷却ヤードにおいて放冷した後、散水して冷却される。また、一部では、パン冷却方式と呼ばれる鉄製の容器に流し込んで散水冷却する方法も採られることがある。
一方、高炉スラグやごみ焼却灰溶融スラグなどの溶融スラグを冷却処理するための装置として、双ドラム方式のスラグ冷却処理装置が知られている(例えば、特許文献1など)。このスラグ冷却処理装置は、水平方向で並列し、対向する外周部分が上向きに回転する回転方向を有する1対の冷却ドラムを備えており、この1対の冷却ドラムの上部外周面間に上方から溶融スラグが供給され、スラグ液溜まりが形成される。このスラグ液溜まりから、回転する冷却ドラムの表面に付着することで溶融スラグが持ち出され、この溶融スラグは冷却ドラム面に付着した状態で適度な凝固状態まで冷却された後、所定のドラム回転位置において自重により冷却ドラム面から剥離し、回収手段に回収される。冷却ドラム内には冷却水が通され、これを冷媒としてスラグの冷却がなされる。
【0003】
このような冷却処理装置で溶融スラグを冷却処理することにより、(i)従来のような広大な冷却ヤードが必要ない、(ii)厚みの小さいスラグ凝固体が得られるため、所望の粒度の土木材料や粗骨材などへの加工が容易であるとともに、破砕処理して粒状スラグを製造する際の粉や細粒品の発生量が少ないため、製品歩留まりが向上する、(iii)冷却のための散水が不要であるか若しくは散水量が少なくて済むため、水分を含まない若しくは水分量が少ないスラグが得られ、セメント原料などに供する場合に乾燥処理を必要としない、などの利点がある。
【特許文献1】特許第3613106号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような冷却処理装置では、冷却ドラムに冷媒として冷却水が通されるが、循環使用する冷却水の圧力上昇を抑えるために、冷却ドラムでの冷却水の温度上昇が5〜10℃程度に抑えられる。このため、冷却水からスラグ顕熱を効率的に回収することは難しい。また、上記のように冷却水の温度上昇が抑えられるために、溶融スラグを大量処理する場合(例えば、スラグ処理量:1t/min以上)には多量の冷却水が必要となり、この冷却水を循環使用するために多大なエネルギー(例えば、循環ポンプやクーラーなどの運転のためのエネルギー)が必要になる。このため、仮にスラグ顕熱回収ができたとしても、冷却水用に必要となる上記エネルギーのために、十分な省エネルギー効果は得られない。
【0005】
したがって本発明の目的は、このような従来技術の課題を解決し、冷却ドラム方式の冷却処理装置を用いて、比較的少ない量の冷媒でも溶融スラグを効率的に冷却処理することができるとともに、冷媒を介してスラグ顕熱を効率的に熱回収することができる冷却処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明の要旨は以下のとおりである。
[1]内部に冷却水が通される回転可能な冷却ドラムを備え、その外周のドラム面に溶融スラグが接触することにより該スラグが冷却され、該スラグがドラム面から剥離して排出されるようにした冷却処理装置を用いて、溶融スラグを冷却する方法において、
前記冷却ドラムを通過した高温冷却水から蒸気を分離し、該蒸気を回収することにより、溶融スラグの顕熱を蒸気として熱回収することを特徴とする溶融スラグの冷却処理方法。
【0007】
[2]上記[1]の冷却処理方法において、冷却ドラムがドラム周方向に沿ったスパイラル状の冷媒流路を有することを特徴とする溶融スラグの冷却処理方法。
[3]上記[1]または[2]の冷却処理方法において、冷却処理装置が、冷却ドラムのドラム面に付着した溶融スラグを圧延してドラム幅方向に展伸させるための展伸ロールを有し、冷却水は該展伸ロールと冷却ドラムを通過することを特徴とする溶融スラグの冷却処理方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明法によれば、冷却ドラム方式の冷却処理装置を用いて溶融スラグを冷却処理する際に、水の蒸発潜熱を利用してスラグを冷却するため、少ない量の冷却水でも溶融スラグを効率的に冷却処理することができ、しかも、冷却ドラムを通過後の高温冷却水から蒸気を分離・回収するので、冷媒を介してスラグ顕熱を効率的に熱回収することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の溶融スラグの冷却処理方法は、内部に冷却水が通される回転可能な冷却ドラムを備え、その外周のドラム面に溶融スラグが接触することにより該スラグが冷却され、該スラグがドラム面から剥離して排出されるようにした冷却処理装置を用いて、溶融スラグを冷却する方法において、前記冷却ドラムを通過した高温冷却水から蒸気を分離し、この蒸気を回収することにより、溶融スラグの顕熱を蒸気として熱回収するものである。
溶融スラグの種類に制限はなく、例えば、高炉スラグ、製鋼スラグ(例えば、転炉脱炭スラグ、脱燐スラグ、脱珪スラグ、脱硫スラグ、電気炉スラグ、鋳造スラグなど)、溶融還元スラグ(例えば、鉄鉱石、Cr鉱石、Ni鉱石、Mn鉱石などの溶融還元により生じるスラグ)、その他の製錬炉や精錬炉から発生するスラグ、ごみ焼却灰溶融スラグ、廃棄物ガス化溶融スラグなど、種々のスラグを対象とすることができる。
【0010】
本発明で使用する溶融スラグの冷却処理装置は、上記のような冷却ドラムを備えるものであればその種類を問わないが、代表的な装置としては、例えば、以下のような方式のものがある。
(イ)溶融スラグを回転する冷却ドラムに接触させて冷却し、板状、柱状、細片状または粒状の高温スラグとして排出するスラグ冷却処理装置
(ロ)溶融スラグを回転する1対の冷却ドラムで圧延しつつ冷却し、板状、柱状、細片状または粒状の高温スラグとして排出するスラグ冷却処理装置
【0011】
上記(イ)のスラグ冷却処理装置としては、例えば、(a)単一の横型冷却ドラムと、この横型冷却ドラムに溶融スラグを供給する樋を備える冷却処理装置(単ドラム型冷却処理装置)、(b)対向する外周部分が上向きに回転する回転方向を有する、並列した1対の横型冷却ドラムを備え、この1対の横型冷却ドラムの上部外周面間に上方から溶融スラグが供給される冷却処理装置(双ドラム型冷却処理装置)、などがある。
また、上記(ロ)のスラグ冷却処理装置としては、例えば、間隙を有して並列し、対向する外周部分が下向きに回転する回転方向を有する1対の横型冷却ドラムを備え、この1対の冷却ドラムの上部外周面間に上方から溶融スラグが供給される冷却処理装置などがある。
ここで、横型冷却ドラムの「横型」とは、ドラムの回転軸が概略水平方向となっていることを言う。
【0012】
まず、上記(イ)、(ハ)の各タイプのスラグ冷却処理装置の概略を、図1〜図3の実施形態に基づいて説明する。
図1は、上記(イ)のタイプのうちの単ドラム型冷却処理装置の一実施形態を示す説明図である。この冷却処理装置は、外周のドラム面100に溶融スラグを付着させて冷却する、回転可能な単一の横型冷却ドラム1e(以下、単に「冷却ドラム」という。他の実施形態についても同様)と、この冷却ドラム1eに溶融スラグを供給する樋2を備えている。
【0013】
前記樋2は、冷却ドラム径方向の一方の側に配置され、その先端部が冷却ドラム1eのドラム面100に接するか若しくは近接するように設けられるとともに、樋2の先端部分とドラム面100とによりスラグ液溜まり部Aを形成し、冷却ドラム1eの回転に伴い、スラグ液溜まり部A内の溶融スラグSがドラム面100に付着して持ち出されるようにしてある。
樋2の先端部は、ドラム面100に接してもよいし、小さい間隙を形成してドラム面100に近接させてもよい。後者の場合には、熱膨張を考慮して溶融スラグSが漏れない程度の隙間をもって近接させることが好ましいが、溶融スラグSの漏れを確実に防止するため、その間隙部分に対して樋2の下方に設けられたガス噴射手段8からパージガスを噴射することが好ましい。
【0014】
この樋先端部とドラム面100との隙間に関しては、溶融スラグの粘性にもよるが、高温でのスラグ処理実施時において広くても5mm以下、望ましくは3mm以下、さらに望ましくは1mm以下とすることが好ましい。隙間を狭くできればできるほど、パージガスの量を低減でき、1mmないしそれ以下のほとんど接触しているような状態にできれば、パージガスなしでも溶融スラグの漏れを抑制できる。
通常、ロール設置時は常温であるので、ロールの熱膨張を考慮する必要がある。一例を示すと、鋼製の直径1.6mφの冷却ロールで、鋼の熱膨張率が15×10−6であるので、ロール材料平均温度が200℃として、熱膨張で径方向に伸びる長さは、
半径800mm×200℃×15×10−6=2.4mm
である。
隙間を狭めるほど、樋先端部の接触によるドラム面100の摩耗や損耗が進むことになるので、ドラム面100と接触する可能性の高い樋先端部に関しては、すべり性の良い炭素質やボロンナイトライドその他の材料で構成することが望ましい。
前記冷却ドラム1eは、駆動装置(図示せず)により、その上部ドラム面が反樋方向に回転するように回転駆動する。
【0015】
また、本実施形態では、冷却ドラム1eのドラム面100に付着した溶融スラグを圧延してドラム幅方向に展伸させるための展伸ロール3を有している。このような展伸ロール3を備えた冷却処理装置は、特に粘度が高いスラグ塩基度[質量比:%CaO/%SiO](以下、単に「塩基度」という)が2以上の溶融スラグの冷却処理に好適なものである。すなわち、転炉脱炭精錬スラグなどのように塩基度が比較的高い溶融スラグは粘性が高く、このような粘性の高い溶融スラグを冷却ドラム式のスラグ冷却処理装置で冷却処理する場合、高粘性のために溶融スラグが冷却ドラム面に均一に付着しにくく、ドラム面全体を有効に使用した冷却処理を行うことができない。このため溶融スラグの冷却効率が低く、高い生産性が得られない。また、塩基度が高いスラグ(特に、塩基度≧3)は粉化しやすく、このようなスラグは溶融状態から急冷することにより、粉化しにくくすることができるが、従来のスラグ冷却処理装置で冷却処理した場合、高粘性のために厚みを薄くすることができず、十分な冷却速度が得られないため、冷却後の粉化を適切に抑制できない。このような課題に対して、本実施形態では、冷却ドラム1eのドラム面100に付着した溶融スラグを圧延してドラム幅方向に展伸させるための展伸ロール3を設けたものである。
前記展伸ロール3は、冷却ドラム1eの上部に冷却ドラム1eと平行に且つ冷却ドラム1eのドラム面100との間で所定の間隔を形成するようにして配置され、回転可能に支持されている。
【0016】
以上のような冷却処理装置を用いた溶融スラグの冷却処理では、樋2に供給された溶融スラグSはスラグ液溜まり部Aに流入し、ここで適当な時間滞留することで冷却された後、冷却ドラム1eのドラム面100に付着して持ち出され、ドラム面100に付着した状態で適度な凝固状態(例えば、半凝固状態または片面若しくは両面の表層のみが凝固した状態)まで冷却される。その際、ドラム面100に付着した溶融スラグSは、展伸ロール3で圧延されることでドラム幅方向に展伸される。冷却されたスラグは、所定のドラム回転位置において自重により冷却ドラム面から自然に剥離する。
【0017】
図2は、上記(イ)のタイプのうちの双ドラム型冷却処理装置の一実施形態を示す説明図である。
この冷却処理装置は、対向する外周部分が上向きに回転する回転方向を有する、並列した1対の冷却ドラム1a,1bを備え、この1対の冷却ドラム1a,1bの上部外周面間に上方から溶融スラグSが供給される。
前記冷却ドラム1a,1bは、駆動装置(図示せず)により上記の回転方向に回転駆動する。また、冷却ドラム1a,1bの上部には、図1の実施形態と同様の展伸ロール3a,3bが冷却ドラムと平行に設けられている。
【0018】
本実施形態の冷却処理装置では、対向する外周部分が上向きに回転する冷却ドラム1a,1bの上部外周面間(断面V溝状の凹部)に、スラグ樋4から溶融スラグSが供給され、スラグ液溜まりSaが形成される。溶融スラグSは、スラグ液溜まりSaで適当な時間滞留することで冷却された後、回転する冷却ドラム1a,1bの表面に付着することでスラグ液溜まりSaから持ち出される。この溶融スラグSは展伸ロール3a,3bで圧延されつつ、冷却ドラム面に付着した状態で適度な凝固状態(例えば、半凝固状態または表層のみ凝固した状態)まで冷却された後、所定のドラム回転位置において自重により冷却ドラム面から自然に剥離する。
【0019】
図3は、上記(ロ)のタイプの冷却処理装置の一実施形態を示す説明図である。
この冷却処理装置は、間隙を有して並列し、対向する外周部分が下向きに回転する回転方向を有する1対の冷却ドラム1x,1yを備え、この1対の冷却ドラム1x,1yの上部外周面間に上方から溶融スラグSが供給される。前記冷却ドラム1x,1yは、駆動装置(図示せず)により上記の回転方向に回転駆動する。
本実施形態の冷却処理装置では、対向する外周部分が下向きに回転する冷却ドラム1x,1yの上部外周面間(断面V溝状の凹部)に、スラグ樋4から溶融スラグSが供給され、スラグ液溜まりSaが形成される。溶融スラグSは、スラグ液溜まりSaで適当な時間滞留することで冷却された後、間隙g内に流入して1対の冷却ドラム1x,1yで冷却されつつ圧延された後、冷却ドラム面から剥離して下方に排出される。なお、本タイプの冷却処理方法において、1対の冷却ドラム1x,1yでスラグを圧延するとは、冷却ドラム1x,1yの間隙gから少なくとも表面が凝固した状態でスラグを下方に抜き出すことを指す。
【0020】
以下、上記のような冷却処理装置を用いる本発明の実施形態について、説明する。
図4は、本発明の一実施形態を示すものである。この実施形態では、循環系6(管路)および循環ポンプPにより冷却ドラム1(例えば、図1の装置では冷却ドラム1e、図2の装置では冷却ドラム1a,1b、図3の装置では冷却ドラム1x,1y。以下に述べる他の実施形態も同様)に対して冷却水を循環させるが、冷却ドラム1で冷却水をスラグと十分に熱交換させて熱水化し、蒸気を生じさせる。そして、冷却ドラム1から排出された高温冷却水を気液分離器7に通して冷却水から蒸気を分離し、この蒸気を回収する。一方、蒸気が分離された冷却水は循環使用され、その循環系6には外部から冷却水が適宜補給される。
【0021】
冷却ドラム1における冷媒流路の入口および出口側には、冷媒の温度計(いずれも図示せず)を設け、同入口または出口側の少なくとも一方には、冷媒の流量計および流量調整弁(いずれも図示せず)を設け、冷媒の出口側には冷媒圧力監視用の圧力計(図示せず)を設けることにより、スラグからの抜熱量が大きくなった場合には、冷媒温度が一定となるように冷媒流量を調整し、スラグ側の冷却条件を一定に保つことができる。
回収蒸気の出口には、圧力調整弁または蒸気流量調整弁(図示せず)を設け、冷却媒体としての温水ないし熱水の温度・圧力条件を一定となるように保つことにより、冷却ドラムの温度、つまり熱膨張による伸びを一定に制御できるので、回転体である冷却ドラムを安定稼働できる。
冷却ドラムの内圧が過度に大きくならないように、熱水の温度や圧力は100〜150℃、1〜8気圧程度となるように運転される。
本発明法では、水の蒸発潜熱を利用してスラグを冷却するため、少ない量の冷却水でも溶融スラグを効率的に冷却処理することができ、しかも、冷却ドラムを通過後の高温冷却水から蒸気を分離・回収するので、冷媒を介してスラグ顕熱を効率的に熱回収することができる。
【0022】
図5は、本発明の他の実施形態を示すものである。この実施形態は、展伸ロール3を有する冷却処理装置において、冷却水の循環系6に展伸ロール3の冷却機構を組み込み、冷却水を展伸ロール3の冷媒流路→冷却ドラム1の冷媒流路の順に通過させて、循環系6内で循環させるものであり、その他の構成は図4の実施形態と同様である。
この図5の実施形態では、冷却水が展伸ロール3でもスラグと熱交換するため、冷却水がより高温化するので、スラグ顕熱の回収効率をより高めることができる。
なお、図4および図5の実施形態において、冷却ドラム1の冷媒流路、さらには展伸ロール3の冷媒流路を通過する冷却水は一部が蒸気化して体積が増加する。このため、図4の実施形態における循環系6の管路は、冷却ドラム1の出側管径が入側管径よりも1.2倍以上大きいことが好ましく、また、図5の実施形態における循環系6の管路は、冷却ドラム1の出側管径が展伸ロール3の入側管径よりも1.2倍以上大きいことが好ましい。
【0023】
冷却ドラム1での溶融スラグの冷却効率を高め、冷却水の温度を十分に高くするため、冷却ドラム1は、その内部にドラム周方向に沿ったスパイラル状の冷媒流路5を有するものが好ましい。
この冷媒流路5は、一般にドラム面(外周面)の内側にスパイラル状に設けられる流路仕切板によりジャケット状に形成される。図6(図6(イ)はドラム縦断面図、図6(ロ)はドラム横断面図)は、そのような冷媒流路5の断面構造を示すもので、冷却ドラム1の胴部は外筒101と内筒102からなる二重筒構造を有し、この外筒101と内筒102間に流路仕切板103をドラム周方向でスパイラル状に設けることにより、スパイラル状の冷媒流路5が形成される。
【0024】
また、他の構造としては、例えば、図7(図7(イ)はドラム縦断面図、図7(ロ)はドラム横断面図)に示すように、図6のようなジャケット式の冷媒流路5(但し、図7(イ)では流路仕切板103の図示を省略)を形成するとともに、ドラム面100にスパイラル状の冷媒流路5aを突設した構造としてもよい。また、図8(図8(イ)はドラム縦断面図、図8(ロ)はドラム横断面図)に示すように、ドラム面100に銅管などの管体20をスパイラル状に密に巻き付け、この管体20内部を冷媒流路5とする構造としてもよい。これらの構造とすることにより、冷媒流路5と溶融スラグとの接触面積が増大するため、より高い冷却効率が得られる。
【0025】
また、冷却ドラム1に、ドラム周方向に沿ったスパイラル状の冷媒流路5を設ける場合、冷却水の注排水を一方のドラム端側のみから行うようにするため、図9に示すような構成とすることが好ましい。すなわち、スパイラル状の冷媒流路5とは別に、冷却ドラム1の中心軸に沿って冷媒流路10を設け、冷却ドラム1の一端側において、冷媒流路10をスパイラル状の冷媒流路5に接続し、冷却ドラム1の他端側における冷媒流路10の端部を冷媒入口11、同じく冷媒流路5の端部を冷媒出口12とする。したがって、冷媒入口11から冷却ドラム1内に導入された冷媒は、まず、冷媒流路10内をドラム長手方向に流れ、冷却ドラム1の一端側において反転してスパイラル状の冷媒流路5を流れ、冷媒出口12から排出される。
【0026】
図11は展伸ロール3の内部冷却機構の一実施形態に示している。展伸ロール3は、その内部に冷媒流路30を有するとともに、ロール軸32a,32bの軸方向に沿って冷媒通路31a,31bを有している。
前記冷媒流路30は、冷却ドラム1のようなスパイラル状にしてもよいが、本実施形態では、展伸ロール3の内部を単に中空にしてこの中空部を冷媒流路30とし、この冷媒流路30の両端に前記冷媒流路31a,31bが連通した構造としてある。このような構造としたのは、次のような理由による。スラグ冷却処理装置において、冷媒を通じてスラグ顕熱の回収を行う場合のスラグ冷却・熱回収の形態の一つとして、冷媒流路を流れる冷却水の蒸発潜熱によりスラグを冷却し、その蒸気を冷媒流路から回収することが考えられる。ここで展伸ロール3は、その下部のみが溶融スラグと接触して常に熱されるので、本実施形態のようにロール内部を中空にして冷媒流路30を構成した場合、その内部の冷却水は熱されて沸騰し、熱水の対流が生じる。このため、冷媒通路31aから冷媒流路30内に導入された冷却水は、すぐに冷媒通路31bから流出するのではなく、上記のような熱水の対流によって冷媒通路30内に適当に留まって冷媒として機能するとともに、その蒸発潜熱により少ない冷却水量で高い冷却効果が得られる。一方、冷媒流路30内で発生した蒸気は、冷媒流路30を出てから冷媒循環路の途中で容易に分離・回収することができる。
【0027】
本発明において得られた蒸気は種々の用途に利用できるが、図10は、スラグ処理に利用する場合の一実施形態を示したものである。
この実施形態では、図2に示すタイプの冷却処理装置Xを備えているが、例えば、図1や図3に示すタイプのものを用いてもよい。
本実施形態では、前記冷却処理装置Xで冷却されたスラグSxを、さらに冷媒(蒸気)と熱交換させて顕熱回収(さらにはエージング処理)を行うための筒状処理容器13が設けられている。この筒状処理容器13は、一端側にスラグ装入部14、他端側にスラグ取出部15と蒸気取出部16を備えるとともに、一端側から他端側に向かって下向きに傾斜し、筒軸を中心に回転可能である。この筒状処理容器13の基本構造は、所謂ローターキルンなどの構造と同様であり、筒状処理容器13内に装入された材料(スラグ)は、長手方向で傾斜した筒状処理容器が回転することにより、容器長手方向で順次移送される。筒状処理容器13内には、冷媒供給機構17が設置されている。この冷媒供給機構17には、気液分離器7で分離された蒸気が管路18を通じて供給される。
【0028】
本実施形態において、冷却処理装置Xで冷却処理されたスラグSxはそのまま搬送コンベア19で搬送され、筒状処理容器13内に装入される。筒状処理容器13内には、冷媒供給機構17から蒸気が供給されてスラグSxが冷却される。この蒸気と容器内を移動するスラグが熱交換することで、スラグSxがさらに冷却されるとともに、スラグSx中に未だ遊離CaOが残存している場合には蒸気により水和反応を生じるエージング処理がなされる。この際、筒状処理容器13の回転によりスラグが撹拌されるので、蒸気との接触が促進され、遊離CaOの水和反応が効率的に生じることになる。また、水和反応する際の体積膨張(密度の低下による体積膨張)によりスラグが砕け(崩壊する)、新しい遊離CaOがスラグ表面に露出して水蒸気と接触し、さらに水和反応が進み、スラグは徐々に砕けて細粒化が進む。このようにスラグSxはエージング処理により徐々に細粒化するため、スラグの処理容器内での滞留時間(エージング処理時間)を適宜調整することにより、スラグを十分に細粒化し、エージング処理後の破砕工程を省略することができる。
【0029】
筒状処理容器13内において、冷媒供給機構17から蒸気を供給する位置(領域)は任意であり、筒状処理容器13の内部をスラグ移送方向で上流側領域Rと下流側領域Rとに分けた場合、いずれかの領域若しくは両領域で供給することができるが、例えば、供給される蒸気の温度が比較的高い場合には、主にエージングに寄与させることを狙いとして下流側領域Rにのみ供給してもよい。この場合には、上流側領域Rには、同じ冷媒供給機構17または他の供給手段により、水や他の供給源からの蒸気が供給される。一方、供給される蒸気の温度が比較的低い場合には、スラグと熱交換させて昇温させることを狙いとして上流側領域Rにのみ供給してもよい。
【0030】
筒状処理容器13内での処理を終えたスラグSxは、スラグ取出部15から取り出されるとともに、高温化した蒸気が蒸気取出部16から取り出され、高品位の熱源用流体として種々の用途に利用される。
なお、処理容器13としては、本実施形態のような方式のものに限らず、例えば、充填層式、移動床式、流動層式など、適宜な方式のものを用いることができる。
以上のように本実施形態によれば、スラグ顕熱を最も有効に回収・利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明で用いる冷却処理装置の一実施形態を示す説明図
【図2】本発明で用いる冷却処理装置の他の実施形態を示す説明図
【図3】本発明で用いる冷却処理装置の他の実施形態を示す説明図
【図4】本発明の一実施形態を示す説明図
【図5】本発明の他の実施形態を示す説明図
【図6】本発明で用いる冷却処理装置の冷却ドラムの一構造例を示す説明図
【図7】本発明で用いる冷却処理装置の冷却ドラムの他の構造例を示す説明図
【図8】本発明で用いる冷却処理装置の冷却ドラムの他の構造例を示す説明図
【図9】本発明で用いる冷却処理装置の冷却ドラムの冷媒流路の構成例を示す説明図
【図10】本発明の他の実施形態を示す説明図
【図11】展伸ロールの一実施形態を示す横式断面図
【符号の説明】
【0032】
1,1e,1a,1b,1x,1y 横型冷却ドラム
2 樋
3,3a,3b 展伸ロール
4 スラグ樋
5,5a 冷媒流路
6 循環系
7 気液分離器
8 ガス噴射手段
10 冷媒流路
11 冷媒入口
12 冷媒出口
13 筒状処理容器
14 スラグ装入部
15 スラグ取出部
16 蒸気取出部
17 冷媒供給機構
18 管路
19 搬送コンベア
20 管体
30 冷媒流路
31a,31b 冷媒通路
32a,32b ロール軸
100 ドラム面
101 外筒
102 内筒
103 流路仕切板
A スラグ液溜まり部
X 冷却処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に冷却水が通される回転可能な冷却ドラムを備え、その外周のドラム面に溶融スラグが接触することにより該スラグが冷却され、該スラグがドラム面から剥離して排出されるようにした冷却処理装置を用いて、溶融スラグを冷却する方法において、
前記冷却ドラムを通過した高温冷却水から蒸気を分離し、該蒸気を回収することにより、溶融スラグの顕熱を蒸気として熱回収することを特徴とする溶融スラグの冷却処理方法。
【請求項2】
冷却ドラムがドラム周方向に沿ったスパイラル状の冷媒流路を有することを特徴とする請求項1に記載の溶融スラグの冷却処理方法。
【請求項3】
冷却処理装置が、冷却ドラムのドラム面に付着した溶融スラグを圧延してドラム幅方向に展伸させるための展伸ロールを有し、冷却水は該展伸ロールと冷却ドラムを通過することを特徴とする請求項1または2に記載の溶融スラグの冷却処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−227496(P2009−227496A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−72690(P2008−72690)
【出願日】平成20年3月20日(2008.3.20)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】