説明

溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法

【課題】許容できる製造コストの範囲内で、溶融亜鉛めっき鋼板のめっきやけを効果的に抑制する溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法を提供する。
【解決手段】2枚の鋼板を合わせて接合圧延を行う合わせ板繰り返し圧延により、相当ひずみが4.8まで加工することで結晶組織を微細化し、圧延方向に垂直な面において測定される平均結晶粒厚さが、0.6μm以下にされた被めっき鋼板を、450℃から500℃の亜鉛溶湯に所定時間浸漬して引き上げる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼板を溶融亜鉛めっきする際に生じる、いわゆるめっきやけの発生を防止するために、被めっき鋼板の結晶組織を微細化した溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
溶融亜鉛めっき鋼板は、亜鉛の鉄に対するカソード防食効果により耐食性が優れるため、建築用や自動車用等の幅広い用途に用いられている。溶融亜鉛めっき鋼板は、被めっき鋼板を通常450℃以上の亜鉛溶湯中に被めっき鋼板を浸漬させた後引き上げて、被めっき鋼板の表面を通常20〜100μmの厚さの亜鉛めっき層で覆うものである。
【0003】
図3は、溶融亜鉛めっきされた軟鋼板の断面の倍率350の断面SEM写真である。図3からわかるように、溶融亜鉛めっき層11は、被めっき鋼板10の表面に形成される鉄と亜鉛の合金層12と前記合金層12上に形成される亜鉛層13よりなる。EDXによる定量分析の結果によれば、合金層12は亜鉛94%と鉄6%よりなり、亜鉛層13は亜鉛100%よりなる。
【0004】
図3の断面SEM写真で観察される合金層12は、それ自体被めっき鋼板10に対するカソード防食効果を有する。しかし、それだけではなく合金層12は、最表面の亜鉛層13と被めっき鋼板10の接着を担っている層である。合金層12が、前記した接着の効果を発揮するには、合金層12の厚さを厚く(たとえば、溶融亜鉛めっき層11の半分以上の厚さ)する必要はない。
【0005】
しかし、粒界に存在する析出物の影響で、合金層12の形成が促進され、その結果合金層12が厚くなることがある。合金層12が極めて厚くなり、その厚さが溶融亜鉛めっき層11の表面近くまで達することがある。このように合金層12が厚くなって溶融亜鉛めっき層11の表面近くまで達する部分は、正常な溶融亜鉛めっき層11と異なった外観となり、いわゆる「めっきやけ」と称呼される。
【0006】
前記しためっきやけが発生した部分は、外観上問題となるだけでなく、後工程の塗装を阻害する。そのため、めっきやけが発生した溶融亜鉛めっき鋼板は外観不良品として扱われる。
【0007】
溶融亜鉛めっき工程のめっきやけの発生を防止するために、次の2つの方法が従来実施されている。
【0008】
めっきやけの発生を防止する一つの方法は、被めっき鋼板の表面を溶融亜鉛めっき前に研磨をする方法である。しかし、被めっき鋼板が十分に細かく研磨されなければ、効果的にめっきやけを防止できない。そのため、この方法では信頼性のある効果は、通常期待できない。
【0009】
もう一つの方法は、被めっき鋼板表面に予めNi等の電気めっき層を形成させた後に、溶融亜鉛めっきをする方法である。この方法によれば、Ni等の電気めっき層がバリア層となって、溶融亜鉛と母材の鋼板中の鉄が直接反応することが妨げられる。そのため、前記合金層12の厚さが抑制される。この方法は、確かにめっきやけを防止する効果がある。しかし、電気めっきを溶融亜鉛めっき工程に付加することは、製品コストの上昇が大きいため望ましくない。
【0010】
したがって、従来、許容できる製造コストの範囲内で溶融亜鉛めっき鋼板のめっきやけを効果的に抑制できる方法はなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前記した従来の課題に鑑み、本発明はコスト上昇が許容できる範囲で、溶融亜鉛めっき鋼板の溶融亜鉛めっき工程時に生じるめっきやけを効果的に抑制できる溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法および溶融亜鉛めっき鋼板を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、合わせ板繰り返し圧延により加工して結晶粒を微細化し、圧延方向に垂直な断面の平均結晶粒厚さを0.6μm以下にした被めっき鋼板を、450℃以上で500℃以下の亜鉛溶湯中に所定時間浸漬して引き上げることを特徴とする溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法である。
【0013】
前記課題を解決するため、請求項2に記載の発明は、合わせ板繰り返し圧延により相当ひずみが4.8以上となるように加工して、結晶粒を微細化し、圧延方向に垂直な断面の平均結晶粒厚さを0.6μm以下にした被めっき鋼板を、450℃以上で500℃以下の亜鉛溶湯中に所定時間浸漬して引き上げることを特徴とする溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法である。
【0014】
請求項1および2の発明によれば、合わせ板繰り返し圧延により結晶粒が微細化され、結晶粒界が均一化された被めっき鋼板が、溶融亜鉛めっきされる。その結果、図3に示す合金層12が厚くなることが抑制される。
【0015】
前記課題を解決するため、請求項3に記載の発明は、圧延方向に垂直な断面の平均結晶粒厚さが0.6μm以下の被めっき鋼板と、前記被めっき鋼板を450℃以上で500℃以下の亜鉛溶湯中に所定時間浸漬して引き上げることにより、前記被めっき鋼板上に形成された亜鉛めっき層と、からなることを特徴とする溶融亜鉛めっき鋼板である。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、結晶粒が微細化され、結晶粒界が均一化された被めっき鋼板が溶融亜鉛めっきされることにより、図3に示す合金層12が厚くなることが抑制される。
【特許文献1】特許第2961263号公報
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、合わせ板繰り返し圧延工程を被めっき鋼板が受けることによって、被めっき鋼板の結晶組織が微細化されるとともに、その結晶粒界が均一化される。この結晶組織が微細化されて結晶粒界が均一化される作用によって、前記した合金層12を厚くする結晶粒界の析出物が分散されるとともに、それらの偏析等がなくなる。その結果、溶融亜鉛めっき鋼板のめっきやけが効果的に抑制される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図1および図2を参照して、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0019】
図1は、本実施形態の溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法を示す概略図である。図1(a)は、合わせ板繰り返し圧延工程を示す概略図である。図1(b)は溶融亜鉛めっき工程を示す概略図である。
【0020】
まず、図1(a)を参照して、合わせ板繰り返し圧延工程について説明する。本実施形態の溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法を構成する合わせ板繰り返し圧延工程は、積層工程A、合わせ板圧延工程B、切断工程Cおよび表面処理工程Dの4つからなる合わせ板圧延を繰り返して行うものである。
【0021】
図1(a)に示す積層工程Aでは、表面が清浄化された2枚の同一形状の被合わせ板圧延鋼板1a、1aが積層され、厚さtの積層鋼板3が作製される。この際、積層鋼板3の一端がスポット溶接機4により溶接され、被合わせ板圧延鋼板1a、1aが互いに接合される。この溶接により、次工程の合わせ板圧延工程Bにおいて、積層ずれが生じないようにする。ただし、合わせ板繰り返し圧延の初回の合わせ板圧延では、積層されていない厚さtの単一の積層鋼板3を用いるので積層工程Aは行わない。
【0022】
次の合わせ板圧延工程Bにおいて、圧延ロール5、5は、圧下率が50%になるように隙間が調整されている。積層鋼板3は、積層工程Aで溶接された一端を先頭にして、圧延ロール5,5の隙間を通されて圧延される。その結果、積層鋼板3を構成しているもとの被合わせ板圧延鋼板1a、1aが完全に接合された単一の合わせ板圧延鋼板2ができる。単一の合わせ板圧延鋼板2には、被合わせ板圧延鋼板1a、1aの界面は存在しない。合わせ板圧延鋼板2の厚さは、合わせ板圧延工程Bでの圧下率が50%なので、積層鋼板3の厚さtの半分のtになる。合わせ板繰り返し圧延の各繰り返しの合わせ板圧延工程Bにおいて、同一の被合わせ板圧延鋼板1a、1aの圧延方向は常に同一である。
【0023】
合わせ板圧延鋼板2は、次の切断工程Cにおいて、一対のせん断刃6、6により、長手方向の中心で切断されて2等分される。その結果、2枚の略同一形状の切断済鋼板1b、1bが作製される。合わせ板圧延鋼板2の両端は、必要に応じて切断前にトリミングされる。
【0024】
切断済鋼板1b、1bは、次の表面処理工程Dにおいて、清浄化される。表面処理工程Dでは、合わせ板圧延工程Bで圧延ロール5の焼きつき防止のため、潤滑剤として圧延ロール5に塗布されているグリース等が脱脂により除去される。さらに切断済鋼板1b、1bは、スチールワイヤーブラシ8により、ブラッシングされ、その表面が清浄化される。この処理は、次回の合わせ板圧延工程Bにおいて、圧延後の切断済鋼板1b、1bの接合強度を高め、接合不良をなくすために必要である。清浄化された切断済鋼板1b、1bは、前記した被合わせ板圧延鋼板1a、1aとなって、前記した積層工程A、圧延工程B、切断工程Cおよび表面処理工程Dよりなる合わせ板圧延を繰り返し受ける。
【0025】
本実施形態の溶融亜鉛めっきの製造方法を構成する合わせ板繰り返し圧延工程では、前記した4つの工程からなる合わせ板圧延が6回繰り返される。その結果、圧延の場合の相当ひずみ、ε=(2√3)×ln(t/t≒4.8(図1(a)参照)の圧延加工を受けた鋼板が作製される。この鋼板が、図1(b)に示す次工程の溶融亜鉛めっき工程に用いられる被めっき鋼板2aとなる。
【0026】
被めっき鋼板2aの特徴は、その結晶組織が極めて微細化されているということである。合わせ板繰り返し圧延の各回の合わせ板圧延における合わせ板圧延工程Bにおいて、被合わせ板圧延鋼板1a、1aの各結晶粒は薄く引き延ばされ扁平になるが、その際各結晶粒は、圧延加工によって新たに生じる微細な転位が絡み合った構造のセルに分割される。合わせ板圧延工程Bが繰り返されると、隣り合ったセル間の方位差が増大して、前記したセルは大傾角粒界に囲まれた超微細結晶粒となる。その結果、被めっき鋼板2aの結晶組織は極めて微細化している。
【0027】
軟鋼板(SS400 JIS G3101、以下「軟鋼板」という)につき、前記した合わせ板繰り返し圧延を行い、その結晶粒の微細化について調べたところ、次の結果を得た。試験した軟鋼板の結晶粒のサイズを、圧延方向に垂直な断面における圧延面垂直方向の結晶粒の厚さの平均である平均結晶粒厚さ(以下「結晶粒厚さ」という)を測定して評価した。結晶粒厚さの測定は、試験した軟鋼板の圧延方向に垂直な断面について、リニアインタセプト法により行った。前記した合わせ板繰り返し圧延の前後で、試験した軟鋼板の結晶粒厚さは次のように変化した。試験した軟鋼板の結晶粒厚さは、合わせ板繰り返し圧延の前は約25μmであった。しかし、合わせ板繰り返し圧延の後は前記した理由により結晶粒の微細化が進み、試験した軟鋼板の結晶粒厚さは0.11μmとなった。このとき、試験した軟鋼板の圧延方向に垂直な断面における圧延面平行方向の結晶粒の平均長さは、0.4から0.5μmであった。
【0028】
次に図1(b)を参照して、溶融亜鉛めっき工程について説明する。溶融亜鉛めっき工程では、450℃以上で500℃以下に保持された亜鉛溶湯7中に、前記した合わせ板繰り返し圧延受けた被めっき鋼板2aが、所定時間浸漬された後に引き上げられる。この処理により、被めっき鋼板2aの表面に20μmから100μmの厚さの溶融亜鉛めっき層が形成された溶融亜鉛めっき鋼板2bが作製される。
【0029】
溶融亜鉛めっき工程においては、溶融亜鉛めっき層の厚さは、亜鉛溶湯7の温度および引き上げ速度に依存する。すなわち、亜鉛溶湯7の温度が低い方が、溶融亜鉛めっき層は厚くなり、また、引き上げ速度が遅い方が薄くなる。
【0030】
以下、本発明の溶融亜鉛めっき鋼板2bの製造方法により製造された溶融亜鉛めっき鋼板の構成および効果について説明する。
【0031】
図2は、本実施形態の製造方法で製造された溶融亜鉛めっき鋼板の断面の模式図である。前記した合わせ板繰り返し圧延された被めっき鋼板2aを、溶融亜鉛めっきした溶融亜鉛めっき鋼板2bの基本的な構成は、図3に示す従来の鋼板を溶融亜鉛めっきした溶融亜鉛めっき鋼板と同様であり。表面が溶融亜鉛めっき層11で覆われ、最表面の亜鉛層13と被めっき鋼板2aの間には合金層12が形成されている。合金層12の厚さは、断面にわたって一様ではない。
【0032】
次に本実施形態の製造方法で製造された溶融亜鉛めっき鋼板の効果について説明する。
【0033】
本実施形態の溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法の一部を構成する、前記した合わせ板繰り返し圧延により製造された溶融亜鉛めっき鋼板と合わせ板圧延されていない鋼板の違いは、前記した結晶粒サイズの違いである。そこで、両鋼板のめっきやけの発生しやすさを次のようにして比較した。
【0034】
めっきやけは、図2に示す溶融亜鉛めっき層の厚さtDZに対して、合金層12の平均厚さtが厚いときに発生しやすくなる。図3の溶融亜鉛めっき層の断面SEM写真からもわかるように、合金層12の厚さは均一ではなく、局部的に厚くなったり薄くなったりしている。そのため、溶融亜鉛めっき層の厚さtDZに対して、合金層12の平均厚さtの比率が高い場合に、合金層12が表面に達する部分が生じるめっきやけがよりおこりやすくなる。そこで、tとtDZの比を合金層比率(図2参照)として、この合金層比率の大小により、めっきやけの発生しやすさを判定する。
【0035】
めっきやけの発生しやすさを判定するために以下の試験を行った。前記した合わせ板繰り返し圧延された軟鋼板および合わせ板圧延を受けていない軟鋼板のそれぞれに溶融亜鉛めっきをして、それぞれの溶融亜鉛めっき鋼板につき、結晶粒厚さ、溶融亜鉛めっき層の厚さ11のtDZおよび合金層12の厚さtを測定した。合金層12の厚さtは、図2に示す合金層12の任意の山の高さhと任意の谷の高さhをそれぞれ各5点ずつ測定し、これらの10点の高さの平均値とした。tおよびtDZから合金層比率を算出した(図2参照)。
【0036】
表1は、前記した合わせ板繰り返し圧延された軟鋼板と合わせ板圧延されていない軟鋼板につき、450℃から500℃の亜鉛溶湯温度で溶融亜鉛めっきをして、その合金層比率を比較した表である。表1において、試料1、3、5、7および8は本実施形態に対応する実施例である。試料2、4、6、9および10は比較例である。
【0037】
【表1】

【0038】
表1において、試料2、4および6は、合わせ板圧延を受けていない軟鋼板である。他の試料はすべて前記した合わせ板繰り返し圧延の加工を受けたものであり、それらの相当ひずみは4.8である。また、試料7乃至10は、前記した合わせ板繰り返し圧延後、熱処理されたものである。試料7乃至10の結晶粒厚さは、この熱処理中におきた再結晶により、熱処理されていない試料1、3および5よりも大きくなっている。試料7乃至10の結晶粒厚さは、熱処理温度および時間で調整された。
【0039】
表1に示す試験結果から、次のことがわかる。亜鉛溶湯温度が450℃の場合、前記した合わせ板繰り返し圧延の加工をされ、結晶粒厚さが0.11μmである試料1の合金層比率は、合わせ板圧延されていない試料2の合金層比率よりも低い。同様に、亜鉛溶湯温度が480℃の場合、前記した合わせ板繰り返し圧延の加工をされた試料3の合金層比率は、合わせ板圧延されていない試料4の合金層比率よりも低い。
【0040】
亜鉛溶湯温度が500℃の場合、前記した合わせ板繰り返し圧延の加工をされた試料5および試料7乃至10のうち、結晶粒厚さが0.6μm以下の試料5、7および8の合金層比率は、合わせ板圧延されていない試料6に比べて低い。一方、結晶粒厚さが2.0μm以上の試料9および10の合金層比率は、試料6に比べて同等あるいは高い。
【0041】
したがって、表1の結果から、合金層比率は、被めっき鋼板の結晶粒厚さに依存することがわかる。すなわち、結晶粒厚さが0.6μm以下の鋼板では、合金層比率は0.5より低い。一方、結晶粒厚さが2.0μm以上の鋼板では、合金層比率は0.5より高い。
【0042】
前記したように合金層比率は、めっきやけの発生しやすさに対応するものとみなせるから、めっきやけの発生しやすさは被めっき鋼板の結晶粒厚さに依存するものである。したがって、合わせ板繰り返し圧延され、結晶粒厚さが0.6μm以下の軟鋼板の場合、合わせ板繰り返し圧延されていない軟鋼板に比べて、めっきやけは発生しにくくなっている。
【0043】
一方、合わせ板繰り返し圧延された軟鋼板でも、結晶粒厚さが2μm以上の場合には、合金層比率は合わせ板繰り返し圧延されていない軟鋼板と比べて、同等以上であり、めっきやけが発生しにくくなっているとはいえない。
【0044】
以上から、次のことがいえる。合わせ板繰り返し圧延により、結晶粒厚さを0.6μm以下にされた、被めっき鋼板2a(図1(a)、(b)参照)を本実施形態の所定条件で溶融亜鉛めっきする溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法によれば、めっきやけを効果的に抑制することができる。この効果は、被めっき鋼板2aの結晶組織が微細化されたことに起因するものである。したがって、結晶粒厚さを0.6μm以下にされた被めっき鋼板2aが本実施形態の所定条件で溶融亜鉛めっきされることにより、作製された溶融亜鉛めっき鋼板は、めっきやけが効果的に抑制された溶融亜鉛めっき鋼板である。
【0045】
また、本実施形態で用いた合わせ板繰り返し圧延は、通常の圧延装置および切断装置により実施可能なものであり、効率的な装置レイアウトおよび工程フローを組むことにより、コスト上昇を許容範囲に抑えることができる。
【0046】
本発明の実施形態は前記した、実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨から逸脱しない範囲でその構成要素の態様の変更が可能である。たとえば、合わせ板繰り返し圧延の工程では、1回の合わせ板圧延工程Bでの合わせ板の枚数を増やし、3枚にすることも可能である。
【0047】
また、合わせ板圧延の回数を増やす等により、相当ひずみを4.8よりも大きくし、被めっき鋼板の結晶粒をさらに微細化することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本実施形態の溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法を示す概略図であり、(a)は、合わせ板繰り返し圧延工程を示す概略図、(b)は溶融亜鉛めっき工程を示す概略図 である。
【図2】本実施形態の製造方法で製造された溶融亜鉛めっき鋼板の断面の模式図である。
【図3】溶融亜鉛めっきされた軟鋼板の断面の倍率350の断面SEM写真である。
【符号の説明】
【0049】
1a 被合わせ板圧延鋼板
1b 切断済鋼板
2 合わせ板圧延鋼板
2a 被めっき鋼板(合わせ板繰り返し圧延済)
2b 溶融亜鉛めっき鋼板
3 積層鋼板
4 スポット溶接機
5 圧延ロール
6 せん断刃
7 亜鉛溶湯
8 スチールワイヤブラシ
10 被めっき鋼板
11 溶融亜鉛めっき層
12 合金層
13 亜鉛層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合わせ板繰り返し圧延により加工して結晶粒を微細化し、圧延方向に垂直な断面について測定される平均結晶粒厚さを0.6μm以下にした被めっき鋼板を、450℃以上かつ500℃以下の亜鉛溶湯中に所定時間浸漬して引き上げること、
を特徴とする溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
【請求項2】
合わせ板繰り返し圧延による相当ひずみが4.8以上であること、
を特徴とする請求項1に記載の溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
【請求項3】
圧延方向に垂直な断面について測定される平均結晶粒厚さが0.6μm以下の被めっき鋼板と、
前記被めっき鋼板を450℃以上かつ500℃以下の亜鉛溶湯中に所定時間浸漬して引き上げることにより、前記被めっき鋼板上に形成された亜鉛めっき層と、
からなることを特徴とする溶融亜鉛めっき鋼板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−254772(P2007−254772A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−77597(P2006−77597)
【出願日】平成18年3月20日(2006.3.20)
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【出願人】(504237050)独立行政法人国立高等専門学校機構 (656)
【Fターム(参考)】