溶融金属めっきの余剰めっき液の除去装置及び溶融金属めっき板の製造方法
【課題】溶融金属めっき後の金属板に表面欠陥等の不具合を発生させることなく、接触ローラを冷却することができる溶融金属めっきの余剰めっき液の除去装置を提供する。
【解決手段】溶融金属めっきが施された金属板の幅方向端面に対向して離間設置されるエッジプレートと、前記金属板の幅方向端面と前記エッジプレートとの間隔を規制するために前記金属板の幅方向端面に接触させる接触ローラ４とを備えた溶融金属めっきの余剰めっき液の除去装置に関する。前記接触ローラ４の内部に冷媒を供給するための冷却手段を備える。冷却手段により接触ローラ４を内部から冷却することができ、接触ローラ４に外部からエアを吹き付ける場合に比べて、溶融金属めっきが施された金属板に対する接触ローラ４の冷却の影響がほとんど無くなる。
【解決手段】溶融金属めっきが施された金属板の幅方向端面に対向して離間設置されるエッジプレートと、前記金属板の幅方向端面と前記エッジプレートとの間隔を規制するために前記金属板の幅方向端面に接触させる接触ローラ４とを備えた溶融金属めっきの余剰めっき液の除去装置に関する。前記接触ローラ４の内部に冷媒を供給するための冷却手段を備える。冷却手段により接触ローラ４を内部から冷却することができ、接触ローラ４に外部からエアを吹き付ける場合に比べて、溶融金属めっきが施された金属板に対する接触ローラ４の冷却の影響がほとんど無くなる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、溶融亜鉛めっき鋼板などの溶融金属めっき板のめっき工程で使用される余剰めっき液の除去装置、及びこれを用いた溶融金属めっき板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【０００２】
従来より、鋼板等の長尺帯状の金属板に溶融亜鉛めっきなどの金属めっきを施すことによって、溶融亜鉛めっき鋼板などの溶融金属めっき板を製造することが行われている。この場合、金属板をめっき浴から引き上げた後、対向する一対のワイピングノズルの間に通すことによって、ワイピングノズルから吹き出されるガスで金属板の表面に付着した溶融金属めっきの目付量（付着量）が調整されるようになっている。また、めっき浴から引き上げた後の金属板の端部には余剰のめっき液（溶融金属）が付着する、所謂エッジビルドアップ（付着量過多）が発生するため、余剰めっき液をエッジプレート（「バッフルプレート」や「ビーバーテール」とも言う）と称される板材で除去してエッジビルドアップを抑制することが行われている（例えば、特許文献１参照）。
【０００３】
上記のエッジプレートは、めっき浴から引き上げた直後の金属板の幅方向端面（金属板の搬送方向と直交する方向の端面）に３〜５ｍｍ程度の間隔を介して近接設置されるものであり、金属板の幅方向端部に付着した余剰めっき液が存在する場合にこれを掻き取って除去するものである。また、エッジプレートの上記間隔を規制するために接触ローラが配設されている。この接触ローラはエッジプレートと連結されており、金属板の幅方向端面に回転しながら接触するものであり、エッジプレートが金属板の幅方向端部に近づきすぎないようにして、金属板とエッジプレートとの衝突などを防止するものである。
【０００４】
しかし、上記の接触ローラはめっき浴から引き上げられた直後の高温の金属板に常に接触しているために消耗が激しく、この消耗により破損して回転不良などが生じて金属板の端部が損傷するおそれがあった。そこで、接触ローラに外部からエアを吹き付けて冷却することが考えられるが、エアが金属板に直接当たると黒ずみ等の表面欠陥が生じるため、エアの吹き付け位置の調整が厳格となって、事実上、接触ローラを外部から冷却するのは困難であった。尚、接触ローラを使用せずに、電気的なセンサー等でエッジプレートの位置調整をすることも考えられるが、周辺温度が２００℃と高くて光電等の電子機器の動作も不安定であり、応答も遅いという欠点がある。
【特許文献１】特開平１０−３６９５３号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００５】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、溶融金属めっき後の金属板に表面欠陥等の不具合を発生させることなく、接触ローラを冷却することができる溶融金属めっきの余剰めっき液の除去装置及びこれを用いた溶融金属めっき板の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【０００６】
本発明の請求項１に係る溶融金属めっきの余剰めっき液の除去装置Ａは、溶融金属めっきが施された金属板１の幅方向端面２に対向して離間設置されるエッジプレート３と、前記金属板１の幅方向端面２と前記エッジプレート３との間隔を規制するために前記金属板１の幅方向端面２に接触させる接触ローラ４とを備えた溶融金属めっきの余剰めっき液の除去装置Ａであって、前記接触ローラ４の内部に冷媒を供給するための冷却手段を備えて成ることを特徴とするものである。
【０００７】
本発明の請求項１に係る溶融金属めっきの余剰めっき液の除去装置Ａは、請求項１において、前記冷却手段が、接触ローラ４の軸部材６の内部に形成された冷媒流通路７と、軸部材６の周面に開口した吹き出し口８と、冷媒流通路７に冷媒を供給するための冷媒供給管９とを備えて成ることを特徴とするものである。
【０００８】
本発明の請求項３に係る溶融金属めっき板の製造方法は、請求項１又は２に記載の溶融金属めっきの余剰めっき液の除去装置Ａを用いた溶融金属めっき板の製造方法であって、冷却手段により接触ローラ４を内部から冷却しながら溶融金属めっきが施された金属板１の幅方向端面２に接触ローラ４を接触することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【０００９】
請求項１の発明では、冷却手段により接触ローラ４を内部から冷却することができ、接触ローラ４に外部からエアを吹き付ける場合に比べて、溶融金属めっきが施された金属板に対する接触ローラ４の冷却の影響がほとんど無くなるものであり、溶融金属めっき後の金属板１に表面欠陥等の不具合を発生させることなく、接触ローラ４を冷却することができるものである。
【００１０】
請求項２の発明では、冷媒供給管９を通じて冷媒を冷媒流通路７に供給した後、この冷媒を吹き出し口８から吹き出して接触ローラ４の内周面に供給することができ、接触ローラ４を内部から確実に冷却することができるものである。
【００１１】
請求項３の発明では、冷却手段により接触ローラ４を内部から冷却することができ、接触ローラ４に外部からエアを吹き付ける場合に比べて、溶融金属めっきが施された金属板１に対する接触ローラ４の冷却の影響がほとんど無くなるものであり、接触ローラ４を冷却することができるにもかかわらず、溶融金属めっき後の金属板１に表面欠陥等の不具合を発生させないようにすることができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１２】
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【００１３】
図２に本発明の溶融金属めっきの余剰めっき液の除去装置Ａの一例を示す。この除去装置Ａは二機を一組として使用されるものであって、溶融亜鉛などの金属のめっき浴２０の上方において、二機の除去装置Ａ、Ａが水平方向において対向配置されている。
【００１４】
上記の除去装置Ａは、枠状の基体２１にエッジプレート３と接触ローラ４を設けて形成されている。エッジプレート３は鋼板などの金属板で形成されるものであって、基体２１の下端に取り付けられており、その一側端には帯材２２が設けられている。帯材２２の下部はエッジプレート３の上記一側端と反対側の側端部に向かって湾曲している。
【００１５】
接触ローラ４は鋼材などの金属材料で略円筒状に形成されるものであって、図３に示すように、その両側端部の外周には凸部２３が全周にわたって突設されている。また、接触ローラ４には水平方向に長い軸孔２４が形成されている。軸孔２４は中央部の小径部２４ａと両側端部の大径部２４ｂとで構成されており、大径部２４ｂは小径部２４ａよりも孔径が大きく形成されている。また、軸孔２４は大径部２４ｂにより接触ローラ４の側端面で開口している。また、接触ローラ４の側端面には複数個の排気孔３０、３０…が開口して形成されている。この排気孔３０は大径部２４ｂの周方向に沿って並べて配置されており、また、排気孔３０は接触ローラ４の側端部を軸方向に貫通して小径部２４ａと連通している。小径部２４ａにおける接触ローラ４の内面には軸方向に長い溝部３３が形成されており、溝部３３の端部は排気孔３０の小径部２４ａ側の開口と連通している。
【００１６】
上記の接触ローラ４は軸部材６及び一対のベアリング２５を介して基体２１に取り付けられている。軸部材６は鋼材などの金属材料で管状に形成されており、その一端は閉塞されている。また、軸部材６の内側空間は軸方向に長い冷媒流通路７として形成されており、また、軸部材６の外周面には複数の吹き出し口８が開口されている。この吹き出し口８は上記冷媒流通路７と連通している。ベアリング２５は外輪２６と内輪２７の間に複数の転動体（玉）２８、２８…を保持したボールベアリングなどを用いることができる。そして、二つのベアリング２５、２５を接触ローラ４の大径部２４ｂに嵌め込んで装着し、このベアリング２５、２５の内輪２７の内側に軸部材６を挿通することによって、図１に示すように、接触ローラ４と軸部材６とベアリング２５とを一体的に組み立てることができる。また、接触ローラ４の両側に突出する軸部材６の両端部を基体２１に設けた支持部２１ａに支持して取り付けることによって、エッジプレート３の上方において接触ローラ４を基体２１に配設することができる。
【００１７】
図４に示すように、基体２１に取り付けた軸部材６には冷媒供給管９が接続される。冷媒供給管９は耐熱性のあるホースなどを用いることができ、冷媒供給管９の一端は軸部材６の閉塞されていない方の側端部に接続されている。また、冷媒供給管９の他端は冷媒を圧送するためのポンプやボンベなどの冷媒供給装置（図示省略）に接続されている。冷媒としては常温の空気を用いることができるが、その他の公知の冷媒を用いることもできる。そして、本発明においては、上記の冷媒流通路７、吹き出し口８、冷媒供給管９、排気孔３０、冷媒供給装置及び冷媒などにより冷却手段が形成されている。
【００１８】
上記の余剰めっき液の除去装置Ａを用いて溶融金属めっき板を製造するにあたっては、次のようにして行う。まず、鋼板などの長尺帯状の金属板１をその長尺方向に搬送しながらめっき浴２０に上側から進入させた後、めっき浴２０中のシンクロール３１の下面に沿わせながら、その進行方向を上向きとなるように変更することによって、めっき浴２０に進入させた金属板１をめっき浴２０から引き上げる。この後、めっき浴２０から引き上げられた金属板１は、めっき浴２０の上方に設けた一対のワイピングノズル３２、３２の間を通過し、且つ上記一対の除去装置Ａ、Ａの間を通過するようにして進行する。そして、溶融金属めっきが施された上記金属板１がワイピングノズル３２、３２の間を通過する際に、金属板１の両面にワイピングノズル３２、３２からガスを吹き付けることによって、金属板１の表面に付着した溶融金属めっきの目付量（付着量）を調整する。また、溶融金属めっきが施された上記金属板１が一対の除去装置Ａ、Ａの間を通過する際に、金属板１の幅方向端部（金属板１の長尺方向と直交する方向の側端部）にエッジプレート３が近接することによって、金属板１の幅方向端部に付着した余剰のめっき液が除去される。この後、金属板１を冷却することによって、金属板１の表面に溶融金属めっき層が形成された溶融金属めっき板を形成することができる。
【００１９】
そして、溶融金属めっきが施された上記金属板１が一対の除去装置Ａ、Ａの間を通過する際に、除去装置Ａの接触ローラ４は回転しながら金属板１の幅方向端面（側端面）２に常に接触しており、この接触により除去装置Ａが金属板１の幅方向端面２に対して水平方向に近接離間移動することになって、エッジプレート３の帯材２２を溶融金属めっきが施された金属板１の幅方向端面２に対向して所定の間隔で離間設置することができる。つまり、接触ローラ４は金属板１の幅方向端面２とエッジプレート３との間隔を常に３〜５ｍｍに保持して規制するために設けられている。そして、接触ローラ４は常に金属板１の幅方向端面２と接触しているため、溶融金属めっきを施した直後の高温の金属板１で加熱されることになる。
【００２０】
そこで、本発明では冷却手段により接触ローラ４を内部から冷却しながら金属板１に接触させるものである。すなわち、冷媒供給装置から冷媒供給管９を通して空気等の冷媒を軸部材６の冷媒流通路７に供給し、冷媒供給路７に供給された冷媒を吹き出し口８から小径部２４ａに吹き出して接触ローラ４の内面に吹き付ける。これにより、接触ローラ４を内部から冷媒により冷却することができる。また、小径部２４ａ内に供給された冷媒は排気孔３０を通して接触ローラ４の外部に排気されるが、排気孔３０を通過する冷媒によりベアリング２５を冷却することもできる。ここで、接触ローラ４の内面には溝部３３が形成されているので、溝部３３を通じて排気孔３０にまで冷媒を流れやすくすることができる。このようにして接触ローラ４及びベアリング２５を約２００℃程度にまで冷却することができる。尚、接触ローラ４及びベアリング２５を冷却しない場合は約６００℃程度にまで加熱される。
【００２１】
このように本発明では、接触ローラ４を内部から冷却することができ、接触ローラ４に外部からエア等を吹き付けて冷却する場合に比べて、溶融金属めっきが施された金属板１に対するエア等の吹き付けが少なくなり、溶融金属めっき後の金属板１に表面欠陥等の不具合を発生させることなくなるものである。そして、冷却により接触ローラ４の熱による消耗が少なくなり、接触ローラ４の消耗による破損や回転不良などが無くなって金属板１の端部の損傷も無くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【００２２】
【図１】本発明の実施の形態の一例を示し、接触ローラの一部が破断した斜視図である。
【図２】同上の概略図である。
【図３】同上の分解斜視図である。
【図４】同上の一部の斜視図である。
【符号の説明】
【００２３】
１ 金属板
２ 幅方向端面
３ エッジプレート
４ 接触ローラ
６ 軸部材
７ 冷媒流通路
８ 吹き出し口
９ 冷媒供給管
【技術分野】
【０００１】
本発明は、溶融亜鉛めっき鋼板などの溶融金属めっき板のめっき工程で使用される余剰めっき液の除去装置、及びこれを用いた溶融金属めっき板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【０００２】
従来より、鋼板等の長尺帯状の金属板に溶融亜鉛めっきなどの金属めっきを施すことによって、溶融亜鉛めっき鋼板などの溶融金属めっき板を製造することが行われている。この場合、金属板をめっき浴から引き上げた後、対向する一対のワイピングノズルの間に通すことによって、ワイピングノズルから吹き出されるガスで金属板の表面に付着した溶融金属めっきの目付量（付着量）が調整されるようになっている。また、めっき浴から引き上げた後の金属板の端部には余剰のめっき液（溶融金属）が付着する、所謂エッジビルドアップ（付着量過多）が発生するため、余剰めっき液をエッジプレート（「バッフルプレート」や「ビーバーテール」とも言う）と称される板材で除去してエッジビルドアップを抑制することが行われている（例えば、特許文献１参照）。
【０００３】
上記のエッジプレートは、めっき浴から引き上げた直後の金属板の幅方向端面（金属板の搬送方向と直交する方向の端面）に３〜５ｍｍ程度の間隔を介して近接設置されるものであり、金属板の幅方向端部に付着した余剰めっき液が存在する場合にこれを掻き取って除去するものである。また、エッジプレートの上記間隔を規制するために接触ローラが配設されている。この接触ローラはエッジプレートと連結されており、金属板の幅方向端面に回転しながら接触するものであり、エッジプレートが金属板の幅方向端部に近づきすぎないようにして、金属板とエッジプレートとの衝突などを防止するものである。
【０００４】
しかし、上記の接触ローラはめっき浴から引き上げられた直後の高温の金属板に常に接触しているために消耗が激しく、この消耗により破損して回転不良などが生じて金属板の端部が損傷するおそれがあった。そこで、接触ローラに外部からエアを吹き付けて冷却することが考えられるが、エアが金属板に直接当たると黒ずみ等の表面欠陥が生じるため、エアの吹き付け位置の調整が厳格となって、事実上、接触ローラを外部から冷却するのは困難であった。尚、接触ローラを使用せずに、電気的なセンサー等でエッジプレートの位置調整をすることも考えられるが、周辺温度が２００℃と高くて光電等の電子機器の動作も不安定であり、応答も遅いという欠点がある。
【特許文献１】特開平１０−３６９５３号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００５】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、溶融金属めっき後の金属板に表面欠陥等の不具合を発生させることなく、接触ローラを冷却することができる溶融金属めっきの余剰めっき液の除去装置及びこれを用いた溶融金属めっき板の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【０００６】
本発明の請求項１に係る溶融金属めっきの余剰めっき液の除去装置Ａは、溶融金属めっきが施された金属板１の幅方向端面２に対向して離間設置されるエッジプレート３と、前記金属板１の幅方向端面２と前記エッジプレート３との間隔を規制するために前記金属板１の幅方向端面２に接触させる接触ローラ４とを備えた溶融金属めっきの余剰めっき液の除去装置Ａであって、前記接触ローラ４の内部に冷媒を供給するための冷却手段を備えて成ることを特徴とするものである。
【０００７】
本発明の請求項１に係る溶融金属めっきの余剰めっき液の除去装置Ａは、請求項１において、前記冷却手段が、接触ローラ４の軸部材６の内部に形成された冷媒流通路７と、軸部材６の周面に開口した吹き出し口８と、冷媒流通路７に冷媒を供給するための冷媒供給管９とを備えて成ることを特徴とするものである。
【０００８】
本発明の請求項３に係る溶融金属めっき板の製造方法は、請求項１又は２に記載の溶融金属めっきの余剰めっき液の除去装置Ａを用いた溶融金属めっき板の製造方法であって、冷却手段により接触ローラ４を内部から冷却しながら溶融金属めっきが施された金属板１の幅方向端面２に接触ローラ４を接触することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【０００９】
請求項１の発明では、冷却手段により接触ローラ４を内部から冷却することができ、接触ローラ４に外部からエアを吹き付ける場合に比べて、溶融金属めっきが施された金属板に対する接触ローラ４の冷却の影響がほとんど無くなるものであり、溶融金属めっき後の金属板１に表面欠陥等の不具合を発生させることなく、接触ローラ４を冷却することができるものである。
【００１０】
請求項２の発明では、冷媒供給管９を通じて冷媒を冷媒流通路７に供給した後、この冷媒を吹き出し口８から吹き出して接触ローラ４の内周面に供給することができ、接触ローラ４を内部から確実に冷却することができるものである。
【００１１】
請求項３の発明では、冷却手段により接触ローラ４を内部から冷却することができ、接触ローラ４に外部からエアを吹き付ける場合に比べて、溶融金属めっきが施された金属板１に対する接触ローラ４の冷却の影響がほとんど無くなるものであり、接触ローラ４を冷却することができるにもかかわらず、溶融金属めっき後の金属板１に表面欠陥等の不具合を発生させないようにすることができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１２】
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【００１３】
図２に本発明の溶融金属めっきの余剰めっき液の除去装置Ａの一例を示す。この除去装置Ａは二機を一組として使用されるものであって、溶融亜鉛などの金属のめっき浴２０の上方において、二機の除去装置Ａ、Ａが水平方向において対向配置されている。
【００１４】
上記の除去装置Ａは、枠状の基体２１にエッジプレート３と接触ローラ４を設けて形成されている。エッジプレート３は鋼板などの金属板で形成されるものであって、基体２１の下端に取り付けられており、その一側端には帯材２２が設けられている。帯材２２の下部はエッジプレート３の上記一側端と反対側の側端部に向かって湾曲している。
【００１５】
接触ローラ４は鋼材などの金属材料で略円筒状に形成されるものであって、図３に示すように、その両側端部の外周には凸部２３が全周にわたって突設されている。また、接触ローラ４には水平方向に長い軸孔２４が形成されている。軸孔２４は中央部の小径部２４ａと両側端部の大径部２４ｂとで構成されており、大径部２４ｂは小径部２４ａよりも孔径が大きく形成されている。また、軸孔２４は大径部２４ｂにより接触ローラ４の側端面で開口している。また、接触ローラ４の側端面には複数個の排気孔３０、３０…が開口して形成されている。この排気孔３０は大径部２４ｂの周方向に沿って並べて配置されており、また、排気孔３０は接触ローラ４の側端部を軸方向に貫通して小径部２４ａと連通している。小径部２４ａにおける接触ローラ４の内面には軸方向に長い溝部３３が形成されており、溝部３３の端部は排気孔３０の小径部２４ａ側の開口と連通している。
【００１６】
上記の接触ローラ４は軸部材６及び一対のベアリング２５を介して基体２１に取り付けられている。軸部材６は鋼材などの金属材料で管状に形成されており、その一端は閉塞されている。また、軸部材６の内側空間は軸方向に長い冷媒流通路７として形成されており、また、軸部材６の外周面には複数の吹き出し口８が開口されている。この吹き出し口８は上記冷媒流通路７と連通している。ベアリング２５は外輪２６と内輪２７の間に複数の転動体（玉）２８、２８…を保持したボールベアリングなどを用いることができる。そして、二つのベアリング２５、２５を接触ローラ４の大径部２４ｂに嵌め込んで装着し、このベアリング２５、２５の内輪２７の内側に軸部材６を挿通することによって、図１に示すように、接触ローラ４と軸部材６とベアリング２５とを一体的に組み立てることができる。また、接触ローラ４の両側に突出する軸部材６の両端部を基体２１に設けた支持部２１ａに支持して取り付けることによって、エッジプレート３の上方において接触ローラ４を基体２１に配設することができる。
【００１７】
図４に示すように、基体２１に取り付けた軸部材６には冷媒供給管９が接続される。冷媒供給管９は耐熱性のあるホースなどを用いることができ、冷媒供給管９の一端は軸部材６の閉塞されていない方の側端部に接続されている。また、冷媒供給管９の他端は冷媒を圧送するためのポンプやボンベなどの冷媒供給装置（図示省略）に接続されている。冷媒としては常温の空気を用いることができるが、その他の公知の冷媒を用いることもできる。そして、本発明においては、上記の冷媒流通路７、吹き出し口８、冷媒供給管９、排気孔３０、冷媒供給装置及び冷媒などにより冷却手段が形成されている。
【００１８】
上記の余剰めっき液の除去装置Ａを用いて溶融金属めっき板を製造するにあたっては、次のようにして行う。まず、鋼板などの長尺帯状の金属板１をその長尺方向に搬送しながらめっき浴２０に上側から進入させた後、めっき浴２０中のシンクロール３１の下面に沿わせながら、その進行方向を上向きとなるように変更することによって、めっき浴２０に進入させた金属板１をめっき浴２０から引き上げる。この後、めっき浴２０から引き上げられた金属板１は、めっき浴２０の上方に設けた一対のワイピングノズル３２、３２の間を通過し、且つ上記一対の除去装置Ａ、Ａの間を通過するようにして進行する。そして、溶融金属めっきが施された上記金属板１がワイピングノズル３２、３２の間を通過する際に、金属板１の両面にワイピングノズル３２、３２からガスを吹き付けることによって、金属板１の表面に付着した溶融金属めっきの目付量（付着量）を調整する。また、溶融金属めっきが施された上記金属板１が一対の除去装置Ａ、Ａの間を通過する際に、金属板１の幅方向端部（金属板１の長尺方向と直交する方向の側端部）にエッジプレート３が近接することによって、金属板１の幅方向端部に付着した余剰のめっき液が除去される。この後、金属板１を冷却することによって、金属板１の表面に溶融金属めっき層が形成された溶融金属めっき板を形成することができる。
【００１９】
そして、溶融金属めっきが施された上記金属板１が一対の除去装置Ａ、Ａの間を通過する際に、除去装置Ａの接触ローラ４は回転しながら金属板１の幅方向端面（側端面）２に常に接触しており、この接触により除去装置Ａが金属板１の幅方向端面２に対して水平方向に近接離間移動することになって、エッジプレート３の帯材２２を溶融金属めっきが施された金属板１の幅方向端面２に対向して所定の間隔で離間設置することができる。つまり、接触ローラ４は金属板１の幅方向端面２とエッジプレート３との間隔を常に３〜５ｍｍに保持して規制するために設けられている。そして、接触ローラ４は常に金属板１の幅方向端面２と接触しているため、溶融金属めっきを施した直後の高温の金属板１で加熱されることになる。
【００２０】
そこで、本発明では冷却手段により接触ローラ４を内部から冷却しながら金属板１に接触させるものである。すなわち、冷媒供給装置から冷媒供給管９を通して空気等の冷媒を軸部材６の冷媒流通路７に供給し、冷媒供給路７に供給された冷媒を吹き出し口８から小径部２４ａに吹き出して接触ローラ４の内面に吹き付ける。これにより、接触ローラ４を内部から冷媒により冷却することができる。また、小径部２４ａ内に供給された冷媒は排気孔３０を通して接触ローラ４の外部に排気されるが、排気孔３０を通過する冷媒によりベアリング２５を冷却することもできる。ここで、接触ローラ４の内面には溝部３３が形成されているので、溝部３３を通じて排気孔３０にまで冷媒を流れやすくすることができる。このようにして接触ローラ４及びベアリング２５を約２００℃程度にまで冷却することができる。尚、接触ローラ４及びベアリング２５を冷却しない場合は約６００℃程度にまで加熱される。
【００２１】
このように本発明では、接触ローラ４を内部から冷却することができ、接触ローラ４に外部からエア等を吹き付けて冷却する場合に比べて、溶融金属めっきが施された金属板１に対するエア等の吹き付けが少なくなり、溶融金属めっき後の金属板１に表面欠陥等の不具合を発生させることなくなるものである。そして、冷却により接触ローラ４の熱による消耗が少なくなり、接触ローラ４の消耗による破損や回転不良などが無くなって金属板１の端部の損傷も無くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【００２２】
【図１】本発明の実施の形態の一例を示し、接触ローラの一部が破断した斜視図である。
【図２】同上の概略図である。
【図３】同上の分解斜視図である。
【図４】同上の一部の斜視図である。
【符号の説明】
【００２３】
１ 金属板
２ 幅方向端面
３ エッジプレート
４ 接触ローラ
６ 軸部材
７ 冷媒流通路
８ 吹き出し口
９ 冷媒供給管
【特許請求の範囲】
【請求項１】
溶融金属めっきが施された金属板の幅方向端面に対向して離間設置されるエッジプレートと、前記金属板の幅方向端面と前記エッジプレートとの間隔を規制するために前記金属板の幅方向端面に接触させる接触ローラとを備えた溶融金属めっきの余剰めっき液の除去装置であって、前記接触ローラの内部に冷媒を供給するための冷却手段を備えて成ることを特徴とする溶融金属めっきの余剰めっき液の除去装置。
【請求項２】
前記冷却手段が、接触ローラの軸部材の内部に形成された冷媒流通路と、軸部材の周面に開口した吹き出し口と、冷媒流通路に冷媒を供給するための冷媒供給管とを備えて成ることを特徴とする請求項１に記載の溶融金属めっきの余剰めっき液の除去装置。
【請求項３】
請求項１又は２に記載の溶融金属めっきの余剰めっき液の除去装置を用いた溶融金属めっき板の製造方法であって、冷却手段により接触ローラを内部から冷却しながら溶融金属めっきが施された金属板の幅方向端面に接触ローラを接触することを特徴とする溶融金属めっき板の製造方法。
【請求項１】
溶融金属めっきが施された金属板の幅方向端面に対向して離間設置されるエッジプレートと、前記金属板の幅方向端面と前記エッジプレートとの間隔を規制するために前記金属板の幅方向端面に接触させる接触ローラとを備えた溶融金属めっきの余剰めっき液の除去装置であって、前記接触ローラの内部に冷媒を供給するための冷却手段を備えて成ることを特徴とする溶融金属めっきの余剰めっき液の除去装置。
【請求項２】
前記冷却手段が、接触ローラの軸部材の内部に形成された冷媒流通路と、軸部材の周面に開口した吹き出し口と、冷媒流通路に冷媒を供給するための冷媒供給管とを備えて成ることを特徴とする請求項１に記載の溶融金属めっきの余剰めっき液の除去装置。
【請求項３】
請求項１又は２に記載の溶融金属めっきの余剰めっき液の除去装置を用いた溶融金属めっき板の製造方法であって、冷却手段により接触ローラを内部から冷却しながら溶融金属めっきが施された金属板の幅方向端面に接触ローラを接触することを特徴とする溶融金属めっき板の製造方法。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図２】
【図３】
【図４】
【公開番号】特開２００９−１１４４７９（Ｐ２００９−１１４４７９Ａ）
【公開日】平成２１年５月２８日（２００９．５．２８）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００７−２８６１５５（Ｐ２００７−２８６１５５）
【出願日】平成１９年１１月２日（２００７．１１．２）
【出願人】（０００２０７４３６）日鉄住金鋼板株式会社 (178)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２１年５月２８日（２００９．５．２８）
【国際特許分類】
【出願日】平成１９年１１月２日（２００７．１１．２）
【出願人】（０００２０７４３６）日鉄住金鋼板株式会社 (178)
【Ｆターム（参考）】
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