説明

溶融金属ポットの湯面高さ測定装置

【課題】従来の溶融金属ポットの湯面高さ測定装置は、溶融金属の湯面の直上にセンサヘッドが配置されているので、動作保証温度を超えてセンサヘッドが熱せられ、センサヘッドに異常が生じることがある。
【解決手段】本発明による溶融金属ポットの湯面高さ測定装置は、センサヘッド5は、溶融金属2の湯端面2bの直上線Aから外側に外されてポット1の側部上方に配置されており、前記センサヘッド5の長手方向軸5cは、前記ポット1の水平面Bに対して傾斜している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポットに溜められた溶融金属の湯面高さを測定する溶融金属ポットの湯面高さ測定装置に関し、特に、溶融金属の湯端面の直上線から外側に外されてポットの側部上方にセンサヘッドを配置することで、動作保証温度を超えてセンサヘッドが熱せられることを防ぎ、前記センサヘッドの異常を防ぐことができるようにするための新規な改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来用いられていたこの種の溶融金属ポットの湯面高さ測定装置としては、例えば特許文献1,2等に示されているものが用いられており、一般的に、この種の装置は、図6に示すように構成されている。図6は、従来の溶融金属ポットの湯面高さ測定装置を示す構成図である。図において、ポット1には、例えば溶融亜鉛めっきや、合金化溶融亜鉛めっき等の溶融金属めっきを施すための溶融金属2が溜められている。このポット1には鋼板3(ストリップ)が連続的に送られ、鋼板3が溶融金属2に浸漬されることで、鋼板3に溶融金属2がコーティングされる。また、鋼板3が溶融金属2から抜け出た後には、鋼板3に過剰にコーティングされた溶融金属2が図示しないガスワイパーにより除去される。
【0003】
ところで、鋼板3を溶融金属2に浸漬する目的としては、鋼板3に溶融金属2をコーティングさせる他に、必要な界面合金属を形成するという目的がある。例えば溶融亜鉛めっき鋼板や合金化溶融亜鉛めっき鋼板では、溶融亜鉛浴中で適切なAl富化層を形成することが、優れためっき密着性を確保する上で重要なことが知られている。適切なAl富化層を形成するには、亜鉛浴中でのAl濃度等も重要であるが、鋼板3の浸漬時間の管理も重要である。
【0004】
鋼板3の浸漬時間を管理するためには、鋼板3を送る速度の他に、溶融金属2の湯面2aの高さを管理する必要がある。図6に示すように、ポット1の上方には、湯面2aの高さを検出するためのセンサヘッド5が配置されている。このセンサヘッド5は、湯面2aに対してレーザ光6を発する投光部5aと、湯面2aで反射したレーザ光6を検出する受光部5bとを有している。このセンサヘッド5には、湯面レベル表示器7が接続されており、湯面レベル表示器7の算出部7aは、投光部5aがレーザ光6を発してから受光部5bがレーザ光6を検出し、該レーザスポットの位置に基づいて、湯面2aの高さを求める。算出部7aにより求められた湯面2aの高さは、湯面レベル表示器7の表示部7bと、外部の表示器8とに表示される。
【0005】
【特許文献1】特許第2613308号公報
【特許文献2】特許第2659266号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような従来装置では、レーザ光6を用いて湯面2aの高さを検出する場合、センサヘッド5は、湯面2aの直上に配置される。
しかしながら、溶融金属2の温度は400〜600℃程度と高温であるとともに、センサ設置箇所周辺に設備が密集している為、湯面2aの直上の雰囲気温度は非常に高温となり、動作保証温度を超えてセンサヘッド5が熱せられ、センサヘッド5に異常が生じることがある。
【0007】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、動作保証温度を超えてセンサヘッドが熱せられることを防ぎ、センサヘッドの異常を防ぐことができる溶融金属ポットの湯面高さ測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る溶融金属ポットの湯面高さ測定装置は、ポットに溜められた溶融金属の湯面の上方に配置されたセンサヘッドと、前記センサヘッドに設けられ、前記湯面に対してレーザ光を発する投光部と、前記センサヘッドに設けられ、前記湯面で反射した前記レーザ光を検出する受光部と、前記センサヘッドに接続され、前記投光部が前記レーザ光を発してから前記受光部が前記レーザ光を検出し、該レーザスポットの位置に基づいて、前記湯面の高さを求める算出部とを備え、前記センサヘッドは、前記溶融金属の湯端面の直上線から外側に外されて前記ポットの側部上方に配置されている。
また、前記センサヘッドの長手方向軸は、前記ポットの水平面に対して傾斜している。
さらに、前記算出部は、前記レーザ光の前記湯面に対する傾斜角度を記憶しており、前記レーザスポットの位置と、前記傾斜角度とに基づいて前記湯面の高さを求める。
【発明の効果】
【0009】
本発明の溶融金属ポットの湯面高さ測定装置によれば、センサヘッドは、溶融金属の湯端面の直上線から外側に外されてポットの側部上方に配置されているので、湯面直上の熱からセンサヘッドを遠ざけることができ、動作保証温度を超えてセンサヘッドが熱せられることを防ぎ、センサヘッドの異常を防ぐことができる。
また、前記算出部は、前記レーザ光の前記湯面に対する傾斜角度を記憶しており、前記レーザスポットの位置と前記傾斜角度とに基づいて前記湯面の高さを求めるので、従来と同じ構成のセンサヘッドを用いることができ、コストを抑えることができる。また、センサヘッドの角度調整を行った際の湯面高さの補正を容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して説明する。
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1による溶融金属ポットの湯面高さ測定装置を示す構成図であり、図2は図1のセンサヘッド5を詳細に示す側面図であり、図3は図2のセンサヘッド5を示す上面図であり、図4は図3のセンサヘッド5を示す背面図である。なお、従来の溶融金属ポットの湯面高さ測定装置と同一又は同等部分については同一の符号を用いて説明する。図1において、ポット1には、例えば溶融亜鉛めっきや、合金化溶融亜鉛めっき等の溶融金属めっきを施すための溶融金属2が溜められている。このポット1には鋼板3(ストリップ)が連続的に送られ、鋼板3が溶融金属2に浸漬されることで、鋼板3に溶融金属2がコーティングされる。また、鋼板3が溶融金属2から抜け出た後には、鋼板3に過剰にコーティングされた溶融金属2が図示しないガスワイパーにより除去される。
【0011】
ポット1の上方には、湯面2aの高さを検出するためのセンサヘッド5が配置されており、詳しくは、前記センサヘッド5は、溶融金属2の湯端面2bの直上線Aから外側に外されてポット1の側部上方に配置されている。なお、湯端面2bとは、ポット1の側部における溶融金属2の端面であり、ポット1の側部内壁面に相当する。また、直上線Aは、鉛直方向に沿って湯端面2bを上方に延長した線(面)である。つまり、センサヘッド5は、ポット1を上方から鉛直方向に沿って見たときに、湯面2aと重ならないように配置されている。なお、図2〜図4に示すように、センサヘッド5は、ケース20内に収納されており、ケース20は、ポット1の上方に設けられた支持部材21に回動自在に取り付けられている。
【0012】
図1に戻り、センサヘッド5は、投光部5aと受光部5bとを有している。これら投光部5a及び受光部5bは、センサヘッド5の長手方向軸5cに沿って隣り合うように配置されており、前記投光部5aは前記湯面2aに対してレーザ光6を発し、前記受光部5bは湯面2aで反射したレーザ光6を検出する。なお、長手方向軸5cは、ポット1の水平面Bに対して所定角度だけ傾斜されている。すなわち、センサヘッド5としては、従来と同じ構成のものを用いており、センサヘッド5は、ポット1の側部上方位置からレーザ光6が湯面2aに照射されるように傾けて設けられている。なお、水平面Bは、波立っていないときの湯面2aに相当する。
【0013】
前記センサヘッド5には、湯面レベル表示器7が接続されている。湯面レベル表示器7の算出部7aは、前記レーザ光6の前記湯面2aに対する傾斜角度を記憶している。この傾斜角度は、外部から入力された設定値、又は図示しないセンサにより検出された前記長手方向軸5cの前記水平面Bに対する傾斜角度から求められた演算値である。算出部7aは、投光部5aがレーザ光6を発してから受光部5bがレーザ光6を検出し、該レーザスポットの位置と、前記傾斜角度とに基づいて湯面2aの高さを求める。算出部7aにより求められた湯面2aの高さは、湯面レベル表示器7の表示部7bと、外部の表示器8とに表示される。
【0014】
次に、図5は、図1の算出部7aによる湯面高さの算出方法を示している。図において、距離D1はレーザ光6の光路に沿うセンサヘッド5と湯面2aとの間の距離を示しており、距離D2は鉛直方向に沿うセンサヘッド5と湯面2aとの間の距離を示している。距離D1に関しては、従来同様に、スポット位置に基づいて求めることができる。湯面2aの高さを検出するためには、距離D2を求める必要があるが、前記レーザ光6の前記湯面2aに対する傾斜角度θを用いて距離D1を補正することで、距離D2を求めることができる。例えば、距離D1が644[mm]であり、傾斜角度θによるsinθが0.822であるとすると、距離D2は距離D1×sinθ=644×0.822=529.368[mm]と求めることができる。
【0015】
このような溶融金属ポットの湯面高さ測定装置によれば、センサヘッド5は、溶融金属2の湯端面2bの直上線Aから外側に外されてポット1の側部上方に配置されているので、湯面直上の熱からセンサヘッド5を遠ざけることができ、動作保証温度を超えてセンサヘッド5が熱せられることを防ぎ、センサヘッド5の異常を防ぐことができる。
【0016】
また、前記算出部7aは、前記レーザ光6の前記湯面2aに対する傾斜角度θを記憶しており、前記スポット位置と前記傾斜角度θとに基づいて前記湯面2aの高さを求めるので、従来と同じ構成のセンサヘッド5を用いることができ、コストを抑えることができる。また、センサヘッド5の角度調整を行った際の湯面高さの補正を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態1による溶融金属ポットの湯面高さ測定装置を示す構成図である。
【図2】図1のセンサヘッドを詳細に示す側面図である。
【図3】図2のセンサヘッドを示す上面図である。
【図4】図3のセンサヘッドを示す背面図である。
【図5】図1の算出部による湯面高さの算出方法を示している。
【図6】従来の溶融金属ポットの湯面高さ測定装置を示す構成図である。
【符号の説明】
【0018】
1 ポット
2 溶融金属
2a 湯面
2b 湯端面
5 センサヘッド
5a 投光部
5b 受光部
5c 長手方向軸
6 レーザ光
7a 算出部
A 直上線
B 水平面
θ 傾斜角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポット(1)に溜められた溶融金属(2)の湯面(2a)の上方に配置されたセンサヘッド(5)と、
前記センサヘッド(5)に設けられ、前記湯面(2a)に対してレーザ光(6)を発する投光部(5a)と、
前記センサヘッド(5)に設けられ、前記湯面(2a)で反射した前記レーザ光(6)を検出する受光部(5b)と、
前記センサヘッド(5)に接続され、前記投光部(5a)が前記レーザ光(6)を発してから前記受光部(5b)が前記レーザ光(6)を検出し、該レーザスポットの位置に基づいて、前記湯面(2a)の高さを求める算出部(7a)と
を備え、
前記センサヘッド(5)は、前記溶融金属(2)の湯端面(2b)の直上線(A)から外側に外されて前記ポット(1)の側部上方に配置されていることを特徴とする溶融金属ポットの湯面高さ測定装置。
【請求項2】
前記センサヘッド(5)の長手方向軸(5c)は、前記ポット(1)の水平面(B)に対して傾斜していることを特徴とする請求項1記載の溶融金属ポットの湯面高さ測定装置。
【請求項3】
前記算出部(7a)は、前記レーザ光(6)の前記湯面(2a)に対する傾斜角度(θ)を記憶しており、前記レーザスポットの位置と前記傾斜角度(θ)とに基づいて前記湯面(2a)の高さを求めることを特徴とする請求項1記載の溶融金属ポットの湯面高さ測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−115766(P2009−115766A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−292349(P2007−292349)
【出願日】平成19年11月9日(2007.11.9)
【出願人】(000004581)日新製鋼株式会社 (1,178)
【Fターム(参考)】