説明

溶解工程自動作成装置および溶解工程自動作成方法

【課題】操業に支障をきたさずエネルギーを最小化し、また、故障時の再計画の立案も可能な溶解工程自動作成装置、および、溶解工程自動作成方法を提供する。
【解決手段】生産スケジュールから通達される情報からラインごとに必要な溶湯量、材質、タクト情報など溶解工程の作成に必要な情報を読み込んで保持しておく必要溶湯量保持手段110と、保持した必要溶湯量をもとに、一つ目の溶解炉が「空」または指定した重量になるまでの注湯機残湯量と溶解炉残湯量を秒単位の時系列で計算する第1の注湯機・溶解炉残湯量計算手段120と、少なくとも二つ目以降の溶解炉のいずれか一つを選択し、選択した溶解炉をもとに一つ目と同様に注湯機残湯量と溶解炉残湯量を秒単位の時系列で計算する第2の注湯機・溶解炉残湯量計算手段130と、それらによる計算を所定時間分得てその結果を出力する注湯機・溶解炉残湯量計算結果出力手段150とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋳造分野における溶解工程を自動的に計画する溶解工程自動作成装置、および、溶解工程自動作成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鋳造工場では、造型、溶解、注湯など多くの工程で構成される鋳造ラインが複数設置されており、これら複数の鋳造ラインを管理するために従来から高度な工程管理手法が要求されている。しかしながら現在は、熟練技能者の経験に基づいて鋳造ラインの工程管理がなされている。熟練技能者の経験に頼っていたのでは、作業の標準化やプロセスの可視化ができず、そのため作業の標準化やプロセスの可視化に対するニーズが高まっている。特に、多消費エネルギー工程とされる溶解炉から鋳型への出湯、保持におけるエネルギー低減を始めとしたリードタイム短縮による原価低減は不朽の命題であるが、この命題を克服すべく導入された汎用的な工程管理ソフトウェアやエネルギー監視ソフトウェアは現場の実態に即しておらず、導入効果も不明であるため、IT化は進んでいない。
【0003】
上記命題を克服すべく特許文献1は、溶解炉の温度制御技術をIT利用により実現しようとしている例を示すもので、溶解材料の重量および特性値とから溶解炉に投入される溶解材料が完全に溶融するのに必要な電力量を予め演算手段により求め、この電力量に基づいた電力の供給によって溶解材料を溶融させ、溶解材料の溶融完了後に溶湯の温度を温度測定手段により自動測定し、自動測定された溶湯の温度と溶湯の目標温度との温度差から必要とされる供給電力量を求め、必要とされる供給電力量と予め設定された溶解時間とから溶湯を目標温度に上昇させるための供給電力量を演算手段により算出している。こうすることで所定の溶解時間で溶解を精度よく完了させることができるため、サイクルタイムが決まっている場合に、残りの時間を保温のために使用して少しでもエネルギーロスを減らすようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平3−152390号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に溶解プロセスは時間がかかり、また、炉の容量に比較して少量の溶解を行うことは物理的に困難であるため、下流プロセスの要求に基づいて即時に溶解を行うことは不可能であること、溶解プロセスと下流プロセスである注湯などのプロセスとは場所が分かれており注湯などの状況を見ながら溶解プロセスをコントロールすることは難しいこと、および、溶解プロセスのアウトプットによって鋳造工程が支配され、溶解が間に合わない状況ではいわゆる湯待ち状態となって生産が停止してしまうこと、これらのことから、現状、溶解プロセスにおいては常にフルに溶解を行って保持し出湯待ちとしている。
【0006】
しかしながら、常にフルに溶解を行って保持し出湯待ちにする方法では、保持にエネルギーが消費されるため製造原価を上昇させる要因となっている。また、複数の炉がある場合に、当日の生産計画に対して支障をきたさないための炉の運転を行うためには、炉の状態(冷炉溶解と通常溶解)や運用方法(全湯出湯と残湯溶解)、溶解物の材質などを考慮して計画しなければならないことから、熟練技能者による高度な作業工程計画立案と管理が必要である。そのため限られた技能者が計画を行う必要がある。さらに造型や注湯プロセスなどでラインの故障が発生した場合に、残湯の状況などを勘案して全体の工程を組み替えて操業を再開する必要があり、この際にも炉の状態、残湯の状況、注湯プロセスの状況などを考慮して運用方法を変更する必要がある。
【0007】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、操業に支障をきたさずエネルギーを最小化し、また、故障時の再計画の立案も可能な溶解工程自動作成装置、および、溶解工程自動作成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明は、溶解炉から注湯機に溶湯を移動させて鋳造品を製造する溶解工程自動作成装置において、生産スケジュールから通達される情報から造型ラインごとに必要な溶湯量、材質、造型ラインの移動速度など溶解工程の作成に必要な情報を読み込んで保持しておく必要溶湯量保持手段と、該保持した必要溶湯量をもとに、一つ目の溶解炉が「空」または指定した重量になるまでの注湯機残湯量と溶解炉残湯量を秒単位の時系列で計算する第1の注湯機・溶解炉残湯量計算手段と、前記溶解炉残湯量が「空」になるタイミングに間に合うように少なくとも二つ目以降の溶解炉のいずれか一つを選択し、選択した溶解炉をもとに一つ目と同様に注湯機残湯量と溶解炉残湯量を秒単位の時系列で計算する第2の注湯機・溶解炉残湯量計算手段とを少なくとも備え、前記第1及び第2の注湯機・溶解炉残湯量計算手段による秒単位の時系列での計算を所定時間分得てその結果を出力する注湯機・溶解炉残湯量計算結果出力手段、を更に備える、ことを特徴とする。
【0009】
上記において、前記生産スケジュールから通達される情報は、鋳造品を製造するために使用可能な溶解炉名、溶解炉の仕様(原単位カタログ値など)、注湯機名、造型ラインの移動速度などの設備データと、鋳造品を製造するにあたり、必要な材料の材質、生産予定量、生産開始予定時刻などの生産工程データであることを特徴とする。
【0010】
また上記において、前記注湯機・溶解炉残湯量計算結果出力手段は、前記第1及び第2の注湯機・溶解炉残湯量計算手段が計算した注湯機残湯量及び溶解炉残湯量の計算結果を使用してエネルギー原単位並びに生産量を計算して溶解工程立案結果として出力するものであって、該出力ならびに前記注湯機や前記溶解炉に設けた各種計測器から得られる計測情報および前記生産スケジュール情報に基づいて溶解炉の状態、消費エネルギーの推移予測などを表示して計画・実績を管理する計画・実績管理手段をさらに備えることを特徴とする。
【0011】
また上記において、前記第1及び第2の注湯機・溶解炉残湯量計算手段は、注湯プロセスや造型などでラインの故障が発生した場合に、該ラインについて再計算処理を開始させ、他のラインの既計画実行における注湯機の残湯量および溶解炉の残湯量を含めて、該ラインにおける再計算開始時点の注湯機の残湯量および溶解炉の残湯量を勘案して溶解工程を再作成する手段をさらに備えることを特徴とする。
【0012】
また上記において、前記第2の注湯機・溶解炉残湯量計算手段は、前記第1の注湯機・溶解炉残湯量計算手段からの通知を受けて注湯機の残湯量が一定値以下となった時点から遡って二つ目の炉の溶解を開始する工程について計画することを特徴とする。
【0013】
また上記において、複数の炉がある場合に、前記第2の注湯機・溶解炉残湯量計算手段は、二つ目の炉の状態を把握して、該炉が出湯待ちとなっているものを第1優先として選定し、該第1優先による選定が不可であった場合には、出湯後の停止状態にある炉を第2優先として選定し、該第2優先による選定が不可であった場合には、停止状態にある炉を選定することを特徴とする。
【0014】
上記において、前記第2優先以降の炉選定の場合、その優先順位を、(イ)ユーザが設定する優先順位、(ロ)良好な原単位、(ハ)順番、(ニ)稼動時間、として決定することを特徴とする。
【0015】
また上記において、前記第1及び第2の注湯機・溶解炉残湯量計算手段は、溶解工程計画終了間際で炉の定格容量に満たない量の原料を溶解しなければならない場合、溶解工程計画終了前で通常実行している工程計画における空いた時間を使用して残湯溶解が可能か否かチェックする手段を更に備えることを特徴とする。
【0016】
また本発明は、溶解炉から注湯機に溶湯を移動させて鋳造品を製造する溶解工程自動作成装置における溶解工程自動作成方法であって、生産スケジュールから通達される情報から造型ラインごとに必要な溶湯量、材質、造型ラインの移動速度など溶解工程の作成に必要な情報を読み込んで保持しておく過程、該保持した必要溶湯量をもとに、一つ目の溶解炉が「空」または指定した重量になるまでの注湯機残湯量と溶解炉残湯量を秒単位の時系列で計算する第1計算過程、前記溶解炉残湯量が「空」または指定した重量になるタイミングに間に合うように少なくとも二つ目以降の溶解炉のいずれか一つを選択し、選択した溶解炉をもとに一つ目と同様に注湯機残湯量と溶解炉残湯量を秒単位の時系列で計算する第2計算過程を少なくとも含み、前記第1及び第2の計算過程における計算を所定時間分得てその結果を出力する過程、を更に含む、ことを特徴とする。
【0017】
また上記において、前記計画・実績管理手段には、エネルギー消費を解析する方法として、あらかじめ誘導炉ごとに定義した標準運転パターンと実績とを、時間と消費電力量で比較して表示する手段と、ある期間と別のある期間の電力推移を電力需要の大きさ別に時間積算して比較して表示する手段と、を更に備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、生産スケジュールから通達される情報から造型ラインごとに必要な溶湯量、材質、造型ラインの移動速度など溶解工程の作成に必要な情報を読み込んで保持し、該保持した必要溶湯量をもとに、一つ目の溶解炉が「空」または指定した重量になるまでの注湯機残湯量と溶解炉残湯量を秒単位の時系列で計算する第1計算過程、前記溶解炉残湯量が「空」または指定した重量になるタイミングに間に合うように少なくとも二つ目以降の溶解炉のいずれか一つを選択し、選択した溶解炉をもとに一つ目と同様に注湯機残湯量と溶解炉残湯量を秒単位の時系列で計算する第2計算過程を少なくとも含み、前記第1及び第2の計算過程における計算を所定時間分得てその結果を出力することで、鋳造品製造の操業に支障をきたさず鋳造品製造のエネルギーを最小化することができる。
【0019】
また炉の運転方法は、注湯機の残湯量が一定以下となった時点から遡って溶解を開始するようにしているため、溶解保持のためのエネルギーロスを減らすことができる。
さらに、炉は、エネルギー原単位や使用順番などにより炉が必要とされる時点で二つ目以降の炉を選定できるようにしたことから、鋳造品製造の操業に支障をきたさず鋳造品製造のエネルギーを最小化することができる。
【0020】
またライン停止時の再計画を速やかに行えるため、生産計画の遅れを最小限にすることができる。さらに、作成された工程計画を基にエネルギー原単位の計算などを行って計画値を表示可能とし、ここに実操業における各種計測データを重ねて表示できるようになるため、プロセスの可視化による鋳造工程全体の改善に資することができる。
【0021】
またエネルギー消費実績を比較解析することができるため、省エネルギー活動に資することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態に係る溶解工程自動作成装置の処理内容を実現する機能ブロック図である。
【図2】本発明の実施形態に係る溶解工程自動作成装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施形態に係る溶解工程自動作成装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【図4】図3に示した溶解工程作成処理の各フローにおける処理イメージを示す図である。
【図5】本発明の実施形態に係る溶解工程自動作成装置における全体的な処理内容を説明するための概要図である。
【図6】本発明の実施形態に係る炉と注湯機の関係を示す図である。
【図7A】バッファ無しにおける本発明の実施形態に係る溶解工程自動作成装置の鋳込み処理を説明するためのフローチャートである。
【図7B】図7Aに示したステップS14,S22における新規炉選択処理を説明するためのフローチャートである。
【図8A】バッファ有りにおける本発明の実施形態に係る溶解工程自動作成装置の鋳込み処理を説明するためのフローチャートである。
【図8B】図8Aに示したステップS53における処理内容を説明するためのフローチャートである。
【図8C】図8A及び図8Bに示したステップS46,S56,S536における新規炉選択処理を説明するためのフローチャートである。
【図9】本発明の実施形態により作成された溶解工程による鋳込み処理例を示す図である。
【図10】本発明の実施形態に係る溶解工程自動作成装置による計画完了時の様子を示す画面表示例である。
【図11】本発明の実施形態にかかる計画・実績管理手段で管理される、生産量と電力量の計画と実測を示す画面表示例である。
【図12】本発明の実施形態に係る溶解工程自動作成装置におけるリスタート機能を説明するための図である。
【図13】本発明の実施形態に係る溶解工程自動作成装置における残湯溶解の可否を判定するための処理フロー概要を示す図である。
【図14】本発明の実施形態に係る計画・実績管理手段で解析される、標準運転パターンと実測の比較を示す画面表示例である。
【図15】本発明の実施形態に係る計画・実績管理手段で解析される、ある期間と別のある期間の電力推移を電力需要の大きさ別に時間積算して比較する画面表示例である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る溶解工程自動作成装置の処理内容を実現する機能ブロック図である。図1に示す溶解工程自動作成装置100は、生産スケジュールから通達される情報からラインごとに必要な溶湯量、品質(材質)、タクト情報など溶解工程の作成に必要な情報を読み込んで保持しておく必要溶湯量保持手段110と、保持した必要溶湯量をもとに、一つ目の溶解炉が「空」または指定した重量になるまでの注湯機残湯量と溶解炉残湯量を秒単位の時系列で計算する第1の注湯機・溶解炉残湯量計算手段120と、溶解炉残湯量が「空」または指定した重量になるタイミングに間に合うように二つ目以降の溶解炉のいずれか一つを選択し、選択した溶解炉をもとに一つ目と同様に注湯機残湯量と溶解炉残湯量を秒単位の時系列で計算する第2の注湯機・溶解炉残湯量計算手段130乃至第nの注湯機・溶解炉残湯量計算手段140と、第1乃至第nの注湯機・溶解炉残湯量計算手段120〜140による秒単位の時系列での計算を所定時間(例.24時間)分得てその結果を出力する注湯機・溶解炉残湯量計算結果出力手段150と、注湯機・溶解炉残湯量計算結果出力手段150の出力ならびに注湯機や溶解炉から得られる計測情報及び上述の生産スケジュール情報を基に計画・実績データの管理を行う計画・実績管理手段155と、によって構成されている。上記において、nは2以上の整数である。但し、n=2の場合は第nの注湯機・溶解炉残湯量計算手段140は、第2の注湯機・溶解炉残湯量計算手段130と重複するため不要である。
【0024】
なお、図1において各注湯機・溶解炉残湯量計算手段間の信号線160,170,180,190は、例えば一つ目の溶解炉残湯量が「空」または指定した重量になるタイミングに間に合うように二つ目の溶解炉を選択する、あるいは、材質変更などで異なる炉を選択し選択した炉における注湯機・溶解炉残湯量計算などを任せる、などに利用するものである。
【0025】
図2は、本発明の実施形態に係る溶解工程自動作成装置のハードウェア構成を示すブロック図である。溶解工程自動作成装置1100は、CPU(Central Processing Unit)1101によって装置全体が制御されている。CPU1101には、バス1106を介してRAM(Random Access Memory)1102、ハードディスクドライブ(HDD:Hard Disc Drive)1103、グラフィック処理装置1104、入力インタフェース1105および外部接続制御部1107が接続されている。
【0026】
RAM1102には、CPU1101に実行させるOS(Operating System)プログラムやアプリケーションプログラムの少なくとも一部が一時的に格納される。また、RAM1102には、CPU1101による処理に必要な各種データが格納される。HDD1103には、OSプログラムやアプリケーションプログラムが格納される。
【0027】
グラフィック処理装置1104には、モニタ21が接続されている。グラフィック処理装置1104は、CPU1101からの命令に従って、画像をモニタ21の画面に表示させる。入力インタフェース1105には、キーボード22とマウス23とが接続されている。入力インタフェース1105は、キーボード22やマウス23から送られてくる信号を、バス1106を介してCPU1101に送信する。外部接続制御部1107には、接続I/F24が接続される。外部接続制御部1107は、接続I/F24から送られてくる信号、例えば生産スケジュール情報、を、バス1106を介してCPU1101に送信する。
【0028】
以上のようなハードウェア構成によって、上述した又は以下に示すような本実施形態の処理機能を実現することができる。
図3は、本発明の実施形態に係る溶解工程自動作成装置の動作を説明するためのフローチャートである。図3において、STEP1では、必要溶湯量の読み込み・保持を行う。つまり生産スケジュールから通達される情報から造型ラインごとに必要な溶湯量、品質(材質)、タクト情報など溶解工程の作成に必要な情報を読み込んで保持する。次いでSTEP2では、保持した必要溶湯量をもとに、一つ目の溶解炉が「空」または指定した重量になるまでの注湯機残湯量と溶解炉残湯量を秒単位の時系列で計算する。そしてSTEP3では、溶解炉残湯量が「空」または指定した重量になるタイミングに間に合うように二つ目以降の溶解炉のいずれか一つを選択し、選択した溶解炉をもとに一つ目と同様に注湯機残湯量と溶解炉残湯量を秒単位の時系列で計算する。最後(STEP4の記載省略)に、所定時間(例.24時間)分について注湯機・溶解炉残湯量計算が終了したか否かを判定し、終了していなければSTEP2以降の処理を実行し、終了していれば、処理を終了する。
【0029】
図4は、図3に示した溶解工程作成処理の各フローにおける処理イメージを示す図である。図3に示したようにSTEP1では、必要溶湯量の読み込み・保持を行う。つまり生産スケジュールから通達される情報から造型ラインごとに必要な溶湯量、品質(材質)、タクト情報など溶解工程の作成に必要な情報を読み込んで保持する。その例を図示上段に示している。すなわち、1分間で0.2トンのものを60分、すなわち12トンの溶湯量を要するもの、また1分間で0.2トンのものを30分、すなわち6トンの溶湯量を要するもの、さらに、1分間で0.3トンのものを60分、すなわち18トンの溶湯量を要するもの、という具合に、24時間分の必要溶湯量を各造型ラインごとに品種(材質)、タクト情報と一緒に読み込み、保持するとともに画面表示して確認する。なお、タクト情報とは造型ラインに設置される型枠に何秒おきに注湯するかの情報を示している。
【0030】
次にSTEP2では、保持した必要溶湯量をもとに、一つ目の溶解炉が「空」または指定した重量になるまでの注湯機残湯量と溶解炉残湯量を秒単位の時系列で計算する。図示例では1号炉を使用していてそれが「空」になるまで、すなわち図示中段に示しているように、注湯機残湯量が上限から下限に鋸歯状に推移する様子が示され、このように推移する出湯が複数繰り返されやがて溶解炉残湯量は「空」になる。1号炉が「空」になる様子は図示下段に示されている。
【0031】
STEP3では、溶解炉残湯量が「空」または指定した重量になるタイミングに間に合うように二つ目以降の溶解炉のいずれか一つ、図示例では2号炉、を選択し、選択した溶解炉をもとに一つ目と同様に注湯機残湯量と溶解炉残湯量を秒単位の時系列で計算する。なお図示例では、選択した2号炉で溶解した溶湯を使って造型ラインに注湯し、それが「空」になる前に1号炉を選択して1号炉で溶解した溶湯を使って造型ラインに注湯を行うケースを示しているが、このケースは使用する炉が2つで、使用する注湯機・溶解炉残湯量計算手段もたかだか2つでスケジューリング可能となった例を示しているものである。
【0032】
最後のステップ(STEP4の記載省略)では、上述してSTEP2,STEP3を繰り返してSTEP1で保持された必要溶湯量を使い切る計画を立案するものである。
図5は、本発明の実施形態に係る溶解工程自動作成装置における全体的な処理内容を説明するための概要図である。図5に図示の最上部は、移動可能な造型ラインに設けられた型枠(タクト)内に注湯を行って製品A,B,C,Dを鋳造する様子を示している。図示するように造型ラインの真ん中で型交換が行われてタクト内で製造される製品が一部異なっている。
【0033】
図5に図示の四角枠内の最上部は、上述した製品をタクト毎にどのくらいの量(重量表示、単位キログラム)を作るかの情報を示している。四角枠内の上から2番目は、これらの生産品をつくるために必要とされる溶湯量を示している。そして四角枠内の上から3番目は、図4にも示したように注湯機の残湯量の推移を示すものである。
【0034】
四角枠内の上から4番目は、炉の選択と炉の残湯量の推移を示すもので、図示例では1号炉と2号炉を使用した例を示している。また四角枠内の最下部は、1号炉と2号炉における炉で予め設定された溶解サイクルに基づいて算定される電力量を示すもので、各炉が溶解中なのか、又は保温中なのかに応じて使用する電力量の多寡がグラフ表示されている。
【0035】
図6は、本発明の実施形態に係る炉と注湯機の関係を示す図である。図6(a)に示すように、1号炉対応に設けられたとりべ1から注湯機1に注湯が行われ、注湯機1から造型ライン1の型枠に注湯が行われる例が示され、また、3号炉対応に設けられたとりべ3からバッファに注湯が行われ、該バッファから注湯機2に注湯が行われ、注湯機2から造型ライン2の型枠に注湯が行われる例が示されている。通常では、炉対応に設けられたとりべ(= 取鍋)から注湯機に直接注湯が行われるか、または、炉対応に設けられたとりべからバッファに注湯が行われ、該バッファから注湯機に注湯が行われるかのいずれかでシステム設計がなされる。そのため、図6ではバッファ経由の場合を破線で区別して表示している。またバッファにも本来、とりべが必要であるが図示省略している。
【0036】
図6(b)は、図6(a)に実線で示されたバッファ無しの場合と、図6(a)に破線で示されたバッファ有りの場合に分けて、注湯機への注湯の仕方がわかるように概説したものである。(1)バッファ無しの場合は、各炉対応に設けられたとりべから注湯機に直接注湯が行われる。これに対して、(2)バッファ有りの場合には、各炉対応に設けられたとりべからバッファに貯湯が行われ、バッファのとりべを使用して注湯機に注湯が行われる。
【0037】
図7Aは、バッファ無しにおける本発明の実施形態に係る溶解工程自動作成装置の鋳込み処理を説明するためのフローチャートである。図7Aの処理を開始する前提として、時間(i:秒単位、24時間分= 86400秒分)でループし、且つ造型ラインとして使用する使用ライン(j:最大使用ライン数 = 3)に限定してループするものとしている。そして図7Aに示すように、ステップS11において鋳込みの開始/材質変更の有無を判定する。鋳込みの開始/材質変更があれば、ステップS12に進む。このステップS12に進む前提として、使用する炉(k:最大炉数= 5)に限定して処理を実行する。ステップS12では、材質(k,i) = 同材質および状態(k,i) = 出湯待ち、かが判定される。同材質および出湯待ちなら、ステップS13で当該炉を供給元炉に設定する。また同材質および出湯待ちでなければ、ステップS14に進み、ステップS14において図7Bに示す新規炉選択処理を実行する。ステップS14の新規炉選択処理ですべての炉で条件に合致する炉が見つからなければステップS15に進んで、スケジューリングを終了する。また炉が選択できれば、ステップS16に進んで、選択した炉を供給元炉に設定する。
【0038】
ステップS16又はステップS13で供給元炉が設定された後、および、ステップS11で鋳込みの開始/材質変更が無ければ、ステップS17に進み、ステップS17において注湯機残湯量(j,i) = 残湯量(j,i-1)−鋳込み量に設定される。この場合、注湯機残湯量の配列(時間i ×ラインj)が参照される。
【0039】
次にステップS18では、注湯機残湯量(j,i)≦下限かが判定される。注湯機残湯量(j,i)が下限以下であれば、ステップS19に進み、ステップS19において注湯機残湯量(j,i) = 残湯量(j,i)+とりべ量に設定される。この場合、時刻i時点で注湯機jに供給している供給元炉(j,i)のとりべおよび注湯機残湯量の配列(時間i ×ラインj)が参照される。なお、とりべは各炉対応に1基設けられ、とりべ量は各炉によって異なる。そしてステップS20に進み、ステップS20において残湯量(k,i-とりべ移動時間) = 残湯量(j,i-とりべ移動時間- 1)−とりべ量が計算される。この場合、k = 供給元炉(j,i)であり、注湯機が下限を下回るより「移動時間」だけ前に移動を開始するものとしている。
【0040】
ステップS21では、炉残湯量(k,i)≦下限かが判定される。炉残湯量(k,i)が下限以下であれば、ステップS22に進み、ステップS22において図7Bに示す新規炉選択処理を実行する。ステップS22の新規炉選択処理ですべての炉で条件に合致する炉が見つからなければステップS23に進んで、スケジューリングを終了する。また炉が選択できれば、ステップS24に進んで、選択した炉を供給元炉に設定し、次のスケジューリングのために先頭に戻り、さらにスケジューリングを繰り返す。一方、ステップS21の判定で炉残湯量(k,i)が下限以下でなければ、また、ステップS18の判定で注湯機残湯量(j,i)が下限以下でなければ、次のスケジューリングのために先頭に戻り、さらにスケジューリングを繰り返す。
【0041】
図7Bは、図7Aに示したステップS14,S22における新規炉選択処理を説明するためのフローチャートである。図7Bに示す新規炉選択処理を開始する前提として、炉選択のためにkを1・・・最大炉数のいずれかに設定するものとし、その上で炉は使用する炉(k:最大炉数= 5)に限定して処理を実行する。ステップS31では、優先順位に従って炉(k)を選択する。この場合、優先順位は、(1)ユーザが設定する優先順位、(2)原単位、(3)順番、(4)稼動時間の順位の中から決められるものとする。なお、稼動時間は、メンテナンス直後のリセットから積算電力(kWh)又は定格kWの少ないもので選択される。
【0042】
次いでステップS32に進み、ステップS32において当該炉使用状態(k,i- 溶解時間(k))が出湯完了/残湯保持/停止中であるか否かを判定する。ステップS32において当該炉の使用状態が出湯完了/残湯保持/停止中のいずれかであれば、ステップS33に進み、ステップS33において当該炉を供給元炉に設定し、またステップS32において当該炉の使用炉状態が出湯完了/残湯保持/停止中のいずれでもなければさらに次の炉の選択処理を実行し、最大炉数に至るも選択可能な炉が見つからなければステップS34に進んで炉選定不可として処理を終える。
【0043】
図8Aは、バッファ有りにおける本発明の実施形態に係る溶解工程自動作成装置の鋳込み処理を説明するためのフローチャートである。図8Aの処理を開始する前提として、時間(i:秒単位、24時間分= 86400秒分)でループし、且つ造型ラインとして使用する使用ライン(j:最大使用ライン数 = 3)に限定してループするものとしている。そして図8Aに示すように、ステップS41において鋳込みの開始/材質変更の有無を判定する。鋳込みの開始/材質変更があれば、ステップS42に進む。ステップS42では、バッファについて材質 = 同材質および状態 = 出湯待ち、かが判定される。同材質および出湯待ちなら、ステップS43に進み、バッファを供給元に設定する。また、同材質および出湯待ちでなければ、ステップS44に進む。このステップS44に進む前提として、使用する炉(k:最大炉数= 5)に限定して処理を実行する。ステップS44では、材質(k,i) = 同材質および状態(k,i) = 出湯待ち、かが判定される。同材質および出湯待ちなら、ステップS45で当該炉を供給元炉に設定する。また同材質および出湯待ちでなければ、ステップS46に進み、ステップS46において図8Cに示す新規炉選択処理を実行する。ステップS46の新規炉選択処理ですべての炉で条件に合致する炉が見つからなければステップS47に進んで、スケジューリングを終了する。また炉が選択できれば、ステップS48に進んで、選択した炉を供給元炉に設定する。
【0044】
ステップS43、ステップS45又はステップS48で供給元炉が設定された後、および、ステップS41で鋳込みの開始/材質変更が無ければ、ステップS49に進み、ステップS49において注湯機残湯量(j,i) = 残湯量(j,i-1)−鋳込み量に設定される。この場合、注湯機残湯量の配列(時間i ×ラインj)が参照される。
【0045】
次にステップS50では、注湯機残湯量(j,i)≦下限かが判定される。注湯機残湯量(j,i)が下限以下であれば、ステップS51に進み、ステップS51において注湯機残湯量(j,i) = 残湯量(j,i)+とりべ量に設定される。この場合、時刻i時点で注湯機jに供給している供給元炉(j,i)のとりべおよび注湯機残湯量の配列(時間i ×ラインj)が参照される。なお、とりべは各炉対応に1基設けられ、とりべ量は各炉によって異なる。そしてステップS52に進み、ステップS52において供給元がバッファか否かを判定する。ステップS52において供給元がバッファであれば、ステップS53に進む。ステップS53の処理内容は後述する図8Bの説明で詳しく説明する。またステップS52において供給元がバッファでなければステップS54に進み、ステップS54において残湯量(k,i-とりべ移動時間) = 残湯量(j,i-とりべ移動時間- 1)−とりべ量が計算される。この場合、k = 供給元炉(j,i)であり、注湯機が下限を下回るより「移動時間」だけ前に移動を開始するものとしている。
【0046】
ステップS55では、炉残湯量(k,i)≦下限かが判定される。炉残湯量(k,i)が下限以下であれば、ステップS56に進み、ステップS56において図8Cに示す新規炉選択処理を実行する。ステップS56の新規炉選択処理ですべての炉で条件に合致する炉が見つからなければステップS57に進んで、スケジューリングを終了する。また炉が選択できれば、ステップS58に進んで、選択した炉を供給元炉に設定し、次のスケジューリングのために先頭に戻り、さらにスケジューリングを繰り返す。一方、ステップS55の判定で炉残湯量(k,i)が下限以下でなければ、また、ステップS50の判定で注湯機残湯量(j,i)が下限以下でなければ、さらに、ステップS53の処理で処理結果が出力端(B)に出力されれば、次のスケジューリングのために先頭に戻り、さらにスケジューリングを繰り返す。
【0047】
図8Bは、図8Aに示したステップS53における処理内容を説明するためのフローチャートである。図8Bに示すようにステップS531では、バッファ残湯量(i-とりべ1移動時間) = バッファ残湯量(i-とりべ1移動時間- 1)−とりべ1量に設定される。この場合、注湯機が下限を下回るより「移動時間」だけ前に移動を開始し、とりべ1はバッファのとりべを指す。
【0048】
次にステップS532では、バッファ残湯量(i-とりべ1移動時間) ≦下限かが判定される。バッファ残湯量(i-とりべ1移動時間)が下限以下であれば、ステップS533に進み、ステップS533においてバッファ残湯量(i-とりべ1移動時間) = バッファ残湯量(i-とりべ1移動時間)+とりべ量に設定される。とりべ1はバッファのとりべを指すことは上述したとおりである。またこの場合上記とりべ量は、時刻[i-とりべ移動時間]時点でバッファに供給しているバッファ供給元炉(i)のとりべによる量である。
【0049】
そしてステップS534では、炉残湯量(k,i-とりべ1移動時間-とりべ2移動時間) = 炉残湯量(k,i-とりべ1移動時間- とりべ2移動時間- 1)−とりべ2量に設定される。この場合、k = バッファへの供給元炉であり、バッファが下限を下回るより「移動時間」だけ前に移動を開始するものとしている。とりべ2は選択された炉(k)対応のとりべを指す。
【0050】
次いでステップS535では、炉残湯量(k,i-とりべ1移動時間-とりべ2移動時間) ≦下限かが判定される。炉残湯量(k,i-とりべ1移動時間-とりべ2移動時間)が下限以下であれば、ステップS536に進み、ステップS536において図8Cに示す新規炉選択処理を実行する。ステップS536の新規炉選択処理ですべての炉で条件に合致する炉が見つからなければステップS537に進んで、スケジューリングを終了する。またステップS536の新規炉選択処理で炉が選択できれば、ステップS538に進んで、選択した炉を供給元炉に設定し、出力端(B)に処理結果を出力する。また、ステップS535で炉残湯量(k,i-とりべ1移動時間-とりべ2移動時間)が下限以下でなければ、処理結果を出力端(B)に出力する。さらに、ステップS532でバッファ残湯量(i-とりべ1移動時間)が下限以下でなければ、処理結果を出力端(B)に出力する。
【0051】
図8Cは、図8A及び図8Bに示したステップS46,S56,S536における新規炉選択処理を説明するためのフローチャートである。図8Cに示す新規炉選択処理を開始する前提として、炉選択のためにkを1・・・最大炉数のいずれかに設定するものとし、その上で炉は使用する炉(k:最大炉数= 5)に限定して処理を実行する。ステップS61では、優先順位に従って炉(k)を選択する。この場合、優先順位は、(1)ユーザが設定する優先順位、(2)原単位、(3)順番、(4)稼動時間の順位の中から決められるものとする。なお、稼動時間は、メンテナンス直後のリセットから積算電力(kWh)又は定格kWの少ないもので選択される。
【0052】
次いでステップS62に進み、ステップS62において当該炉使用状態(k,i- 溶解時間(k))が出湯完了/残湯保持/停止中であるか否かを判定する。ステップS62において当該炉の使用状態が出湯完了/残湯保持/停止中のいずれかであれば、ステップS63に進み、ステップS63において当該炉を供給元炉に設定し、またステップS62において当該炉の使用炉状態が出湯完了/残湯保持/停止中のいずれでもなければさらに次の炉の選択処理を実行し、最大炉数に至るも選択可能な炉が見つからなければステップS64に進んで炉選定不可として処理を終える。
【0053】
図7A、図7B、図8A、図8B、図Cにおいて炉選択不可としてスケジューリングを終了した場合、新規炉が選択できるよう、生産計画を最小限の待機時間のみ確保して自動で、あるいは手動で注湯開始時刻、および出湯開始時刻以降の生産スケジュールを調整する。
【0054】
自動で開始時刻、および生産スケジュールを調整する方法として、使用中の複数炉のうちのいずれかの炉が出湯完了か残湯保持か停止となる時刻まで開始時刻をずらし、以降のスケジュールをずらした時間分ずらす方法がある。
【0055】
図9は、本発明の実施形態により作成された溶解工程による鋳込み処理例を示す図である。図9に示される例は、タクトタイム6秒に設定されている造型ライン1で設定時間(24時間分を秒単位表示)1秒目に15kgの鋳込み(注湯)が開始される(材質1)。そして30分後、すなわち設定時間1801秒目に、タクトタイム5秒に設定されている造型ライン2で10kgの鋳込み(注湯)が開始される(材質1)。そして1時間後、すなわち設定時間3601秒目に造型ライン1で材質変更(材質1から材質2に変更)されて20kgの鋳込み(注湯)が行われる様子を示している。図9では秒表示でたかだか1時間強の経過時間について溶解工程による鋳込み処理例を示しているだけで、この図で24時間分について鋳込み処理例を示すことはとても無理である。また各ラインの右側に黒枠で囲んだタクトにおいては所定の材質で所定量の鋳込み(注湯)が行われていることを注記している。
【0056】
図10は、本発明の実施形態に係る溶解工程自動作成装置による計画完了時の様子を示す画面表示例である。図10に示される画面表示の最上部には、各造型ラインにおける鋳造品の生産計画を示すもので、図示例では2造型ラインにおける6時から21時までの鋳造される製品の生産計画が時間単位に示されている。
【0057】
次に画面表示の上から2番目には、30分単位で必要溶湯量[kg]が棒グラフで表示されている。また画面表示の上から3番目には、造型ライン毎に、注湯炉の炉内重量、すなわち上限値から下限値への鋸歯状の推移を繰り返す様子が示されている。因みに図4および図5に示した注湯機残湯量のグラフでは時間スケールが大きく採られているためにその変化がさほど急にはなっていないが、24時間分を表示するようにした画面上では時間スケールが小さくなってその変化が急峻になる。なお実際には各造型ラインを色別して表示しているので重なりがあっても見やすい状態にされている。
【0058】
次に画面表示の上から4番目には、溶解炉操業計画[kg]が1号炉〜3号炉に分けて24時間分図示されている。この図示例では鋳造開始前にまず3号炉で溶解が開始され、次いで1号炉で溶解が開始され、さらに2号炉で溶解が開始される例となっている。階段状に表現されている部分は注湯が各ラインで実施されている様子を示している。また画面表示最下部には、溶解炉における消費電力量[kg]が棒グラフで、実際には炉ごとに色別表示され、すべての炉の合計値として表示されている。消費電力量は30分毎のデマンドとして電力会社と契約する必要があるためその消費電力量を画面表示することは経費節減を図るためのマインドとなる。
【0059】
図11は、本発明の実施形態にかかる計画・実績管理手段で管理される、生産量と電力量の計画と実測を示す画面表示例である。上述したように本発明の実施形態にかかる計画・実績管理手段155は、注湯機・溶解炉残湯量計算結果出力手段150の出力ならびに注湯機や溶解炉に設けた各種計測器から得られる計測情報および生産スケジュール情報に基づいて溶解炉の状態、消費エネルギーの推移予測などを表示して計画・実績を管理する。その場合において、型枠数量や鋳込み重量の計画と実績のオンライン推移グラフを作成してそれを表示したり、原単位をオンライン表示し且つ生産量、電力量、原単位などの日報、月報を作成して表示することもできる。図11に示される画面表示例は、画面左部に項目名を記載し、ついで画面中央部に計画値、次に実績値を記載し、画面右部に計画と実績の差分を記載し、全体として表形式にしたものである。画面右部でマイナスは、実績が計画を上回ったことを表している。計画立案に基づいて計画が実行された場合には、このような生産計画実績情報をジャーナルとして残しておくことが望まれる。
【0060】
図12は、本発明の実施形態に係る溶解工程自動作成装置におけるリスタート機能を説明するための図である。リスタート機能は、計画遂行中の造型ラインが停止した際に、炉からの溶湯供給を見直して、炉の操業計画を再計算するためのものである。図12の上半部は、操業計画が確定されて、炉1,炉2から造型ライン1〜3にライン別秒単位の時系列で決定されていた注湯が実行されているとき、造型ライン1の型枠1-(2)への注湯中にライン1に故障が発生してライン停止となった状態を示している。ライン停止となったことで炉2から造型ライン1の型枠1-(4)への注湯計画が予定どおり遂行できなくなる。
【0061】
そこで図12の下半部に示すように、リスタートする工程(故障した造型ライン(ライン1))を選択し、リスタート指示を行う。リスタート指示では、リスタート時刻の入力、炉のリスタート後の状態、注湯機の残湯量等を変更し再計算を指示する。そして選択された工程から当日の終了までの工程をリスタート時刻から開始するよう時刻が変更され、炉の操業計画を自動で再計算する。さらに、再計算されたスケジュールと、リスタート前のスケジュールとに基づいて炉の消費電力量、残湯量等を合わせて画面に表示する。この再計算は上述した図7A,図7B(バッファ無しの操業計画)または図8A〜図8C(バッファ有りの操業計画)における処理をやり直すことで実現する。図示例では、再計算によって、ライン停止前は、炉2から造型ライン1の型枠1-(4)への注湯計画であったものが、炉2から造型ライン2の型枠2-(4)への注湯計画に変更となったことを示している。
【0062】
図13は、本発明の実施形態に係る溶解工程自動作成装置における残湯溶湯の可否を判定するための処理フロー概要を示す図である。1日の終了時にすべての炉の残湯量が0になるようにスケジューリングすることが望ましいが、それを実現するため、終了間際で炉の定格容量に満たない溶湯を行わなければならない場合に、前の溶湯工程を残湯溶湯とみなして1日の終了時に残湯量を0にすることが可能か否かをチェックする。図13は、残湯溶湯の可否を判定するための処理概要を示すものであって、図13の左部に図示するように、通常は、注湯機が下限値となった段階で炉から注湯機にとる工程計画を変更して、注湯機が上限値−とりべ量となった段階で炉から注湯機にとり、通常実行している工程計画における空いた時間を使用して残湯溶湯が可能か否かチェックする。そして、残湯溶湯が可能であれば、図13の右上部に示すように、前にシフトして開始まで供給可否をチェックする。ここでの供給可否チェックで供給不可である場合、および、図13の左部に示した残湯溶湯可否チェックで不可である場合には、図13の右下部に示すように、残湯状態の工程を提示して終了する。つまりこの場合にはやむを得ずに残湯がある状態で終了することになる。
【0063】
図14は、本発明の実施形態に係る計画・実績管理手段で解析される、標準運転パターンと実測の比較を示す画面表示例である。標準運転パターンを初期溶解、通常溶解、成分調整、昇温、および保温の段階に区分けし、誘導炉ごとに各々に必要な時間と電力を定義しておく。1秒周期などの一定周期で電力を実測し、電力の値により初期溶解、通常溶解、保温、および停止のどの状態にあるかを判別し、その時間と電力量を積算する。標準運転パターンで定義された時間、および電力量と実測データによる時間、および電力量を比較することにより、標準運転パターンに対してどのフェーズで時間や電力量が多く消費されているかを確認することができるため、次回の運転時により標準運転パターンに近づける運転に改善することができる。
【0064】
図15は、本発明の実施形態に係る計画・実績管理手段で解析される、ある期間と別のある期間の電力推移を電力需要の大きさ別に時間積算して比較する画面表示例である。比較元の期間と比較先の期間の電力実測データを、電力需要の大きさ別(炉の定格電力を15等分程度)に時間積算して表示することにより、通常、炉の定格電力にて実施される通常溶解に要している時間や小電力にて実施される保温に要している時間、および段階的に加える電力を上昇させている初期溶解に要している時間などが確認できるため、原単位の良い日と原単位の悪い日を比較することによって、原単位の悪い日の要因を分析することができ、次回の運転時に改善することができる。
【符号の説明】
【0065】
21 モニタ
22 キーボード
23 マウス
24 接続インタフェース(I/F)
100 溶解工程自動作成装置
110 必要溶湯量保持手段
120 第1の注湯機・溶解炉残湯量計算手段
130 第2の注湯機・溶解炉残湯量計算手段
140 第nの注湯機・溶解炉残湯量計算手段
150 注湯機・溶解炉残湯量計算結果出力手段
155 計画・実績管理手段
160〜190 信号線
1100 溶解工程自動作成装置
1101 CPU(Central Processing Unit)
1102 RAM(Random Access Memory)
1103 HDD(Hard Disc Drive)
1104 グラフィック処理装置
1105 入力インタフェース
1106 バス
1107 外部接続制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶解炉から注湯機に溶湯を移動させて鋳造品を製造する溶解工程自動作成装置において、
生産スケジュールから通達される情報から造型ラインごとに必要な溶湯量、材質、造型ラインの移動速度など溶解工程の作成に必要な情報を読み込んで保持しておく必要溶湯量保持手段と、
該保持した必要溶湯量をもとに、一つ目の溶解炉が「空」または指定した重量になるまでの注湯機残湯量と溶解炉残湯量を秒単位の時系列で計算する第1の注湯機・溶解炉残湯量計算手段と、
前記溶解炉残湯量が「空」になるタイミングに間に合うように少なくとも二つ目以降の溶解炉のいずれか一つを選択し、選択した溶解炉をもとに一つ目と同様に注湯機残湯量と溶解炉残湯量を秒単位の時系列で計算する第2の注湯機・溶解炉残湯量計算手段とを少なくとも備え、
前記第1及び第2の注湯機・溶解炉残湯量計算手段による秒単位の時系列での計算を所定時間分得てその結果を出力する注湯機・溶解炉残湯量計算結果出力手段、を更に備える、
ことを特徴とする溶解工程自動作成装置。
【請求項2】
前記生産スケジュールから通達される情報は、鋳造品を製造するために使用可能な溶解炉名、溶解炉の仕様(原単位カタログ値など)、注湯機名、造型ラインの移動速度などの設備データと、鋳造品を製造するにあたり、必要な材料の材質、生産予定量、生産開始予定時刻などの生産工程データであることを特徴とする請求項1に記載の溶解工程自動作成装置。
【請求項3】
前記注湯機・溶解炉残湯量計算結果出力手段は、前記第1及び第2の注湯機・溶解炉残湯量計算手段が計算した注湯機残湯量及び溶解炉残湯量の計算結果を使用してエネルギー原単位並びに生産量を計算して溶解工程立案結果として出力するものであって、該出力ならびに前記注湯機や前記溶解炉に設けた各種計測器から得られる計測情報および前記生産スケジュール情報に基づいて溶解炉の状態、消費エネルギーの推移予測などを表示して計画・実績を管理する計画・実績管理手段をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の溶解工程自動作成装置。
【請求項4】
前記第1及び第2の注湯機・溶解炉残湯量計算手段は、注湯プロセスや造型などでラインの故障が発生した場合に、該ラインについて再計算処理を開始させ、他のラインの既計画実行における注湯機の残湯量および溶解炉の残湯量を含めて、該ラインにおける再計算開始時点の注湯機の残湯量および溶解炉の残湯量を勘案して溶解工程を再作成する手段をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の溶解工程自動作成装置。
【請求項5】
前記第2の注湯機・溶解炉残湯量計算手段は、前記第1の注湯機・溶解炉残湯量計算手段からの通知を受けて注湯機の残湯量が一定値以下となった時点から遡って二つ目の炉の溶解を開始する工程について計画することを特徴とする請求項1に記載の溶解工程作成装置。
【請求項6】
複数の炉がある場合に、前記第2の注湯機・溶解炉残湯量計算手段は、二つ目の炉の状態を把握して、該炉が出湯待ちとなっているものを第1優先として選定し、該第1優先による選定が不可であった場合には、出湯後の停止状態にある炉を第2優先として選定し、該第2優先による選定が不可であった場合には、停止状態にある炉を選定することを特徴とする請求項1に記載の溶解工程自動作成装置。
【請求項7】
前記第2優先以降の炉選定の場合、その優先順位を、(イ)ユーザが設定する優先順位、(ロ)良好な原単位、(ハ)順番、(ニ)稼動時間、として決定することを特徴とする請求項6に記載の溶解工程自動作成装置。
【請求項8】
前記第1及び第2の注湯機・溶解炉残湯量計算手段は、溶解工程計画終了間際で炉の定格容量に満たない量の鉄を溶解しなければならない場合、溶解工程計画終了前で通常実行している工程計画における空いた時間を使用して残湯溶湯が可能か否かチェックする手段を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の溶解工程自動作成装置。
【請求項9】
溶解炉から注湯機に溶湯を移動させて鋳造品を製造する溶解工程自動作成装置における溶解工程自動作成方法であって、
生産スケジュールから通達される情報から造型ラインごとに必要な溶湯量、材質、造型ラインの移動速度など溶解工程の作成に必要な情報を読み込んで保持しておく過程、
該保持した必要溶湯量をもとに、一つ目の溶解炉が「空」または指定した重量になるまでの注湯機残湯量と溶解炉残湯量を秒単位の時系列で計算する第1計算過程、
前記溶解炉残湯量が「空」になるタイミングに間に合うように少なくとも二つ目以降の溶解炉のいずれか一つを選択し、選択した溶解炉をもとに一つ目と同様に注湯機残湯量と溶解炉残湯量を秒単位の時系列で計算する第2計算過程を少なくとも含み、
前記第1及び第2の計算過程における計算を所定時間分得てその結果を出力する過程、を更に含む、
ことを特徴とする溶解工程自動作成方法。
【請求項10】
前記出力過程は、前記第1及び第2の計算過程による注湯機残湯量及び溶解炉残湯量の計算結果を使用してエネルギー原単位並びに生産量を計算して溶解工程立案結果として出力する過程、および、該出力ならびに前記注湯機や前記溶解炉に設けた各種計測器から得られる計測情報および前記生産スケジュール情報に基づいて溶解炉の状態、消費エネルギーの推移予測などを表示して計画・実績を管理する過程をさらに含むことを特徴とする請求項9に記載の溶解工程自動作成方法。
【請求項11】
前記第1及び第2の注湯機・溶解炉残湯量計算手段は、注湯プロセスや造型などでラインの故障が発生した場合に、該ラインについて再計算処理を開始させ、他のラインの既計画実行における注湯機の残湯量および溶解炉の残湯量を含めて、該ラインにおける再計算開始時点の注湯機の残湯量および溶解炉の残湯量を勘案して溶解工程を再作成する過程をさらに含むことを特徴とする請求項9に記載の溶解工程自動作成方法。
【請求項12】
前記第2計算過程は、前記第1計算過程から通知を受けて注湯機の残湯量が一定値以下となった時点から遡って二つ目の炉の溶解を開始する工程について計画することを特徴とする請求項9に記載の溶解工程自動作成方法。
【請求項13】
前記計画・実績管理手段には、エネルギー消費を解析する方法として、あらかじめ誘導炉ごとに定義した標準運転パターンと実績とを、時間と消費電力量で比較して表示する手段と、ある期間と別のある期間の電力推移を電力需要の大きさ別に時間積算して比較して表示する手段と、を更に備えることを特徴とする請求項3に記載の溶解工程自動作成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図9】
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【図13】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−159271(P2012−159271A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−21182(P2011−21182)
【出願日】平成23年2月2日(2011.2.2)
【出願人】(000213297)中部電力株式会社 (811)
【出願人】(000219820)株式会社トーエネック (51)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】