説明

漁業及び食肉加工業からの原料の加水分解処理法ならびにそれに使用するためのタンク

コラーゲン及びタンパク質を含有する原料の酵素的加水分解処理の方法。原料を酵素的加水分解に付して三つの層、すなわち、脂肪を含有する上層、水溶性成分を含む中間層ならびに骨及び不溶性タンパク質を含む不溶性の下層を生成する。これらの層を分離し、第二の層をさらに、二つの層、すなわち、部分的又は完全に固化したコラーゲンを含有する下層及び残りの水溶性タンパク質を含有する液状の上層を形成するのに十分な期間だけ冷却して分離する。後者の層を取り出し、他方の層を液状になるまで加熱する。加水分解タンク10は、回転可能な撹拌機構及び熱交換のための装置を含む。逆回転可能なスクリューがタンクの底に配設されている。コラーゲンの分離のためのクリアリングサンプ15は、加水分解産物の供給のための入口を含む。加熱ジャケットを含む熱交換システム17がサンプを包囲している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コラーゲン及びタンパク質を含有する原料の酵素的加水分解処理の方法であって、
(1)原料を酵素的加水分解に付して三つの層:
(a)脂肪を含有する上層、
(b)水溶性成分、とりわけコラーゲンをはじめとする水溶性タンパク質を含む中間層、及び
(c)骨及び不溶性タンパク質を含む不溶性の下層
を生成する工程;
(2)(a)、(b)及び(c)を分離する工程;及び
(3)(b)をさらに分離する工程
を含む方法に関する。
【0002】
本発明はまた、原料供給のための入口、産物のための出口、回転可能な撹拌機構及び熱交換のための装置を含む加水分解タンク;ならびに、コラーゲンの分離のための、加水分解産物供給のための入口ならびにコラーゲン及び残留成分のための出口を含むクリアリングサンプならびに、コラーゲン及びタンパク質含有原料の加水分解処理におけるそれらの適用に関する。
【0003】
技術背景
食品の製造、たとえば漁業及び食肉加工業における食品の製造は、タンパク質、油分及びカルシウムをはじめとする貴重な成分を非常に多く含む多量の副産物を生み出す。これらの資源を回収するため、これら貴重な成分を放出させる処理法がいくつか開発されている。そのような処理法は、多くの場合、エンシレージ又は酵素的加水分解に基づく。しかし、これは、食品産業の要求基準に満たない品質のタンパク質及び油分を作り出す。したがって、飼料の製造にしか使用することができない。
【0004】
食品産業の要求基準を満たす製品を製造するために、原料をその別々の成分に分けることができる酵素が開発されている。これらの酵素は、たとえば食肉加工場廃棄物の酵素的加水分解を考慮したものである。そして、原料中のタンパク質を水に溶かすと、タンパク質、油分及び骨の各部分に分けることができる。このような酵素は市販されている。
【0005】
漁業では、貴重なタンパク質及び油分を多く含む多量の副産物が生じる。現在、この産業では、エンシレージに基づいてそのような副産物を回収しようとする動きがある。また、酵素的加水分解が試行されている。
【0006】
本発明は、加水分解処理を不連続的に実施する方法に関する。連続的な加水分解処理法はすでに存在するが、いくつかの欠点を抱えている。連続処理であるがゆえ、タンク間及び処理工程間で抑制されない流れが生じる。これが原料の不均一な加水分解を招く。完成した加水分解産物はコラーゲンを含有し、用途が限られる混合物になってしまう。このような処理から製造された加水分解産物は人間用の食品としては適さない。
【0007】
本発明者は、漁業及び食肉加工業からの原料に対して酵素的加水分解を実施するための「バッチ」処理を開発した。この処理からの産物は人間用食品としても適する。
【0008】
本発明による加水分解処理は、市販されている酵素を使用して、ただし本発明者によって新たに開発されたタンクの中で実施される。加水分解タンクは、タンクの底にある大きなスクリューがその内容物をタンクの中央に向けて押し、撹拌機構をもっとも効果的に適用することを可能にする点で、異例に高い混合能力を備えている。徹底的な混合が大きな加熱面と相まって温度を非常に安定に維持することができ、加水分解処理を最適化する。現在使用されている連続処理システムとは違って閉鎖型の「バッチ」システムであるため、正確な温度調整が達成されるだけでなく、加水分解産物が様々な温度の下でとどまる場合の、等しく正確な時間間隔調整が達成される。
【0009】
加水分解処理は結果として三つの部分を生じさせ、その1種がタンパク質;とりわけコラーゲンを含む。本発明者は、コラーゲンを他のタンパク質から効果的に分離するための新規な方法を開発した。方法は、撹拌に頼ることなく水溶性タンパク質を速やかに冷却することを含む。コラーゲンは、高温で変性し、その結果液状であることから、自然な固体状態でサンプの底に沈殿する。そして、残る水溶性タンパク質を汲み出し、その後、コラーゲンを、変性した液体の状態まで加熱すると、クリアリングサンプから取り出すことができる。
【0010】
加水分解産物中の他の水溶性タンパク質からのコラーゲンの効果的な分離を達成するため、本発明者は、新規なタイプのクリアリングサンプを開発した。このサンプは、流体、この場合は加水分解産物の冷却及び加熱を非常に速やかかつ均一に実施することができる。撹拌に頼ることなく冷却を達成しなければならないため、均一な温度分布を得るために撹拌を適用することはできない。したがって、サンプは大きな冷却/加熱面を含み、流体体積に対する冷却/加熱表面積の比が非常に大きくなり、流体は速やかかつ均一に冷却/加熱される。
【0011】
したがって、本発明による方法は、コラーゲンがその1種である水溶性タンパク質を含む水溶性成分を含有する中間層(b)を、撹拌せずに、二つの層;
(d)部分的又は完全に固化したコラーゲンを含有する下層、及び
(e)残りの水溶性タンパク質を含有する液状の上層
を形成するための温度に達するまで十分な期間冷却し、(e)を取り出し、(d)を液状になるまで加熱することを特徴とする。
【0012】
本発明による加水分解タンクは、タンクの底の出口に1個以上の逆回転可能なスクリューを備えることを特徴とする。
【0013】
本発明によるクリアリングサンプは、タンクを包囲する加熱ジャケット及びタンクの内部にある、表面積を増すために波形を有することができる垂直な加熱/冷却面を含む熱交換システムを含むことを特徴とする。
【0014】
本発明のさらなる実施態様が請求項2〜9、11〜17及び19〜20に記載されている。
【0015】
以下、添付図面を参照しながら本発明をさらに詳細に説明する。
【0016】
加水分解処理
図1を参照して加水分解処理をさらに詳細に説明する。図1の矢印は、原料が供給されるところ及び産物が出るところを示す。漁業又は食肉加工業からの副産物の形態の原料が加水分解タンク10に充填される。漁業からの原料は、一尾まるごとであってもよいし、その部分、たとえば頭、骨、皮又は内臓であってもよい。漁業からの原料は貝類をも含む。また、食肉加工業からの原料は、動物のすべての部位又は一頭まるごとを含め、使用することができる。ここでいう「動物」は、鳥、たとえば家禽を含むことを意図する。本発明による処理法は、タンパク質及びコラーゲンを含有するすべての種類の原料、すなわち骨、結合組織及び皮膚/革に適用することができる。原料は通常、加工業からのいくつかの副産物の混合物からなるが、当然、1種の原料のみからなることもできる。
【0017】
加水分解タンク10中の原料に熱水を加える。温度は、酵素的加水分解に最適になるように調整する。したがって、温度は、使用される特定の酵素にしたがって異なるであろう。所望の温度に達すると、酵素を加えて加水分解処理を開始する。酵素が加水分解に触媒作用を及ぼして、その結果、原料に含まれる多量のタンパク質が水に溶ける。また、水溶性タンパク質の他に、油分、骨及び不溶性タンパク質が放出される。
【0018】
原料が十分に加水分解されると、酵素は通常、温度の上昇によって失活する。その後、混合物を静置する。しばらくすると、明らかに分離した層が形成する。一番上に油層が形成し、次に溶けたタンパク質を含有する水溶性層があり、タンクの底には、不溶性タンパク質及び骨からなるもっとも重い層が見られる。本明細書の以後の部分では、これらの層をそれぞれ油層、加水分解産物及び骨層と呼ぶ。
【0019】
加水分解処理は通常、いかに速やかに原料が加えられ、産物が取り出されるかに依存して、合計で3〜4時間継続する。まず、油分を、通常は抜き取りによって加水分解タンクから取り出し、その後、オイルセパレータ11中で分離することができる。次いで、骨層をタンク中に残しながら、加水分解産物を加水分解タンクから抜き取る。最後に、骨層を加水分解タンクの底から取り出す。
【0020】
加水分解タンクから取り出した加水分解産物を従来のフィルタ12に通してろ過する。その後、カスケードタンク13中で油分及び骨の最終残留物を加水分解産物から取り出し、続いてセパレータ14中で分離する。
【0021】
加水分解産物はセパレータからクリアリングサンプ15に送られる。このサンプの中で、撹拌なしで温度が下げられて、コラーゲンがゼラチンとして、すなわち凝固形態で固化する。コラーゲンを固化させるのに十分な低さの温度は、使用される原料のタイプに依存して異なり、多くの場合、元々の魚/動物/鳥の体温を反映する。たとえば、魚からのコラーゲンは動物からのコラーゲンよりも低い温度で固化する。一般には、コラーゲンを固化させるためには、加水分解産物を、魚の場合で10〜25℃、好ましくは20〜22℃、動物の場合で25〜40℃、好ましくは32〜35℃、鳥の場合で30〜45℃、好ましくは33〜40℃の範囲の温度に冷却しなければならない。コラーゲンは、残りの加水分解産物よりも高い密度を有し、したがって沈降する。このようにして、明確に分離した二つの層がサンプ中に形成する。底では固体状態のコラーゲンが固化し、その上に残りの液体状態加水分解産物がある。コラーゲンは温度低下のせいで完全又は部分的に固化する。
【0022】
液体状態加水分解産物をバッファタンク16に抜き取ったのち、サンプ中の温度を上げると、コラーゲンが液状になり、それにより、通常はポンピング又は抜き取りによってサンプから取り出すことができる。温度上昇の量は、そのコラーゲンが何のために使用されるのかに依存する。さらに保存するのならば、液状になったところで速やかに取り出す。これは、コラーゲンの製造に使用される原料のタイプに依存して変化する温度で実施され、通常、この温度は、そのコラーゲンの分離温度よりも約10〜25℃高いであろう。コラーゲンを、保存するのではなく、他の目的に使用するのならば、微生物繁殖を防ぐため、取り出す前に少なくとも65℃に加熱しなければならない。
【0023】
今や、コラーゲンが除去された加水分解産物は、他の分野から公知の方法によるさらなる処理に付すことができる。加水分解産物は、好ましくは、乾燥質量含有率が所望のレベルまで高まるよう、エバポレータ17中で処理する。コラーゲンが除去されると、乾燥質量レベルはおよそ3〜15%、通常は約7%になる。蒸発の量は、その加水分解産物が何に使用されるのかに依存する。たとえば、魚からの加水分解産物を肉への注入によってその魚に戻すのならば、その肉と正確に同じ乾燥質量、約15%の乾燥質量を有しなければならない。加水分解産物を約60%まで蒸発させるのならば、その加水分解産物は自己保存性になり、当然、長期貯蔵にとって有利であろう。しかし、蒸発のレベルとともにコストが増大し、これが通常、加水分解産物の蒸発のレベルを制限する。蒸発処理にとって、コラーゲンを加水分解産物から分離することが不可欠である。コラーゲンを除去されていない加水分解産物は、その粘度が高すぎる。すなわち、エバポレータが作動しない。本発明による方法におけるようにコラーゲンを除去することにより、タンパク質を含有する加水分解産物をさらに処理して、人間及び動物のための食品をはじめとする多くの分野でより良好な貯蔵品質及び有用性を与える乾燥質量含有率を達成することができる。
【0024】
加水分解産物は、当然、蒸発後ただちに使用することができ、この場合、他の成分との混合のために産物混合器18に移す。今や、望むならばコラーゲンを加水分解産物に戻すこともできる。エバポレータ中で多量の水が除去されているため、はじめの段階でコラーゲンを加水分解産物から除去しなかった場合に相当する産物をこの方法で得ることはない。したがって、産物はより高濃度になり、貯蔵及び出荷により適するであろう。当然、コラーゲンを加水分解産物に戻す必要はない。サンプから取り出したのち、別々に保管し、他の目的に使用してもよい。
【0025】
図1は、2個の加水分解タンク、2個のクリアリングサンプ及び2個のバッファタンクが使用される処理を示す。これは本発明の好ましい実施態様であるが、このようなタンク1個だけ又は複数個を同様に使用こともできる。タンクは、処理流体が一定の期間とどまる場所を表し、したがって、加水分解プラントの能力を最大化するために異なるタイプのいくつかのタンクを使用することは有利であるかもしれないが、その必要はない。
【0026】
加水分解タンク
可能な限り完全な加水分解処理を可能な限り短い期間で達成するためには、加水分解タンクの設計が重要である。タンクの内容物を均一かつ効果的に加熱することができなければならず、したがって撹拌が重要であろう。これは、タンク中の温度を均一なレベルに維持するための撹拌によって達成される。撹拌は、タンクの底にあるスクリューが底に集まりやすい大きめの骨などを、それらが撹拌機構と接触するタンクの中央に向けて押すという点で、より効果的に実施される。均一な温度分布を生じさせることに加えて、撹拌はまた、酵素がすべての原料に物理的に接近することに寄与する。これを達成するために、本発明者は、図2〜6でさらに詳細に示す新規なタイプの加水分解タンクを設計した。
【0027】
加水分解タンクは、当然、具体的な必要性にしたがってサイズが異なることができる。本明細書に記載する発明の実施態様では、タンクは25.000リットルの容量を有する。このタンクは、中央で構築したのち狭い道路で輸送するのに適したサイズである。しかし、小さな水産養殖プラントの場合には小さめのタンクを設計し、他の輸送手段の場合には大きめのタンクを設計し、現場での構築の場合には非常に大きなタンクを設計してもよく、当然、寸法は調節することができる。
【0028】
加水分解タンク10の底には、骨層の取り出しのための1個以上の出口20がある。出口20は、好ましくは、タンクの底壁の凹所に、水平に対して斜めに配置される。この角度は、5〜45°の範囲、好ましくは15〜30°の範囲、より好ましくは20°であることができる。したがって、骨の残存物が出口を通って誘導されるときには重力が働く一方、原料、酵素及び水の加熱及び混合の間には、角度は、出口中のスクリュー21が原料をタンクの中央に向けて押すのに十分に小さいままである。出口は、両方向に回転させることができるスクリュー21を含む。出口の端部には弁22が設けられている。出口はまた、加熱ジャケット23によって包囲されている。当然、出口のサイズは異なることができる。出口は、使用される原料のタイプに依存して様々なサイズの骨の残存物を輸送するのに十分な大きさでなければならない。図2〜5の好ましい実施態様では、直径200mmの出口が使用されている。
【0029】
加水分解タンクは、蒸気24のための1個以上の入口ならびに蒸気及び凝縮物25のための1個以上の出口を有している。側壁26、底27及び内部シリンダ28はすべて加熱ジャケット29を備えている。したがって、処理蒸気とタンク内容物との間には大きな接触面積があり、この面積は、タンクの底27、側壁26、内部シリンダ28及び天井30を含む。
【0030】
加水分解タンクは、異なるタイプのベースに取り付けることができ、好ましいタイプは高さ調節自在の6個の脚31である。
【0031】
加水分解処理中に制御を提供するため、温度及びレベルトランスミッタ32が取り付けられている。加水分解タンクの頂部への容易なアクセスを提供するため、ステップ33が取り付けられている。
【0032】
タンクの内部へのアクセスを提供するために、ふた34がタンクの頂部30に取り付けられている。頂部30はまた、原料、水及び酵素を加えるための入口35を備えている。また、タンクの通気を提供するために、キャップを備えた弁36がタンクの頂部に取り付けられている。タンクの上方にタンクをまたぐようにビーム37が配設され、そのビームの上に、撹拌機構を駆動するためのモータ38が取り付けられている。ビーム37は、構造的支持及び配管設置の可能性の両方を考慮したものである。
【0033】
撹拌機構は、回転シャフト39を駆動するモータ38からなり、この回転シャフトが他の回転シャフト40に接続され、この他の回転シャフトは他方で、撹拌羽根42が取り付けられた撹拌棒41に接続されている。撹拌羽根42は、動作中、タンクの底近くを掃くように取り付けられている。図5に示すように、本発明のこの好ましい実施態様は3枚の撹拌羽根を含むが、当然、より多数の羽根を使用してもよい。また、支持ビーム43が撹拌棒41と内部シリンダ28との間に配設されて、撹拌機構にさらなる支持を提供してもよい。
【0034】
通常の動作サイクル中、タンクはまず、入口35を介して熱水及び原料で満たされる。これらが撹拌機構の回転によって混合され、同時に、タンクの底にあるスクリュー21が回転して、トレッドがタンクの中央に向けて移動して(タンクを空にするとき加えられる回転の方向とは反対の方向)原料を絶えずタンクの中央に向けて動かす。これらのスクリューは新規な種であり、以前に加水分解タンクで使用されたことはない。したがって、水と原料との非常に効果的な混合が得られ、タンクの内容物中で均一な温度分布が得られる。
【0035】
混合中、温度は、加熱ジャケット中に蒸気を入れることによって調整される。なおも撹拌しながら、水と原料とが混合したのち、酵素を加える。反応はただちに起こる。加水分解が完了すると、混合物の温度が酵素の不活性化のレベルに達するよう、さらに多くの蒸気をジャケットに入れることにより、酵素を不活性化する。タンク中の温度調整は非常に正確である。これは、大きな加熱面と効果的な撹拌との組み合わせによって達成される。
【0036】
酵素の不活性化のレベルに達したところで撹拌を停止すると、重力により、層が形成し始める。油抜きのための出口44が様々な高さで取り付けられて、適当な出口点から抜き取りを達成することができるようになっている。加水分解産物をかき回すことを防ぐため、まず、油層と加水分解産物との間の区域よりも上の出口を使用し、次いで、抜き取りの最後に、油層中の一番下の出口を使用する。処理される原料の種類に依存して油分の量は変化し、できるだけ多くの油分を抜き取りながらも加水分解産物層から流体を抜き取らないためには、種々の高さの出口が望ましい。図3は、図2の断面A−Aから見たこれらの出口を示す。図3はまた、タンク内を見ることを考慮した窓45を示す。したがって、油のレベルを点検し、どの出口44が最適であるのかを決定することができる。タンクの天井に通して取り付けられた、光源を備えた窓46を使用してタンク内容物を検査することもことができる。
【0037】
油の抜き取りが完了すると、加水分解産物を抜き取る。タンク中の流体レベルが非常に高いならば、まず、低めの油出口44を使用することによって実施する。次いで、加水分解産物のための通常の出口47を使用する。タンク上のできるだけ高い出口を使用することが望ましく、はじめからタンクの底近くの出口を使用することは望ましくない。理由は、層の分離状態をかき乱し、下層からの骨の残存物を加水分解産物中に巻き上げるからである。これは油の抜き取りにも当てはまる。加水分解産物のレベルが一番下の出口47よりも下がるならば、少量の骨の残存物のために、加水分解産物をスクリュー21に通してポンピングすることができる。その場合、大きめの骨片がろ過器として働いて、小さめの骨片が加水分解産物に続くことを防ぐ。最後に、スクリュー21を介して骨層を取り出す。
【0038】
そして、スクリュー21の回転方向を、撹拌中に適用した方向とは反対にする。すると、スクリュー21は、骨の残存物をタンクから押し出す。この層の取り出し中にも撹拌機構が作動して、物質が、スクリューが位置する開口に落ち込む。この層は非常にポンピングしにくいため、これは合理的である。
【0039】
従来の加水分解システムも同じくスクリューを適用するが、その目的が全く異なる。スクリューは、加水分解産物の連続的な動きを得るために同じ方向に連続的に駆動される。したがって、加水分解産物は異なる温度域を通過する。その意図は、加水分解産物が、異なる温度域で所望の時間を費やしながらシステム中を均一な速度で通過するということである。しかし、実際には、そのようには作動しない。スクリューの内側では流体の自由運動が多くあるため、加水分解産物は、システム中を均一な速度では通過せず、異なる温度域で最適な時間を費やすことはない。
【0040】
このタンクは、酵素的加水分解処理における使用のために設計されたものであるが、タンクの用途は酵素的加水分解に限られない。タンクは、エンシレージによる加水分解にも十分に適している。酵素的加水分解の場合と同じ原料が使用されるが、水及び酵素ではなく、水及び酸が、おそらくは他の薬品とともに加えられる。そして、加水分解処理は高温で作動し、酵素的加水分解の場合と同様、均一な温度及び徹底的な混合が重要である。このタンクを使用することにより、エンシレージの前に原料を加熱するための予熱器の使用のせいで大きな温度変動が起こる現在使用されているシステムとは違い、分離段階を通じて同等に維持することができる高い温度が得られる。
【0041】
クリアリングサンプ
加水分解層に含まれるコラーゲンは、クリアリングサンプ中での沈殿により、残りの水溶性タンパク質から分離される。この処理は新規であり、この処理を実施するためのクリアリングサンプは新たに開発されたものである。コンセプトは単純である。加水分解産物を、コラーゲンが分離し、下層に固化するのに十分な低さの温度で静置するならば、コラーゲンの固化の後でも液状にとどまる加水分解産物の残りを抜き取り、ひいてはコラーゲンから分離することができる。その後、コラーゲンを再び加熱し、再び液状にしたのち、抜き取ることができる。
【0042】
特に、コラーゲンの分離が成功するために不可欠な要因が二つある。クリアリングサンプはこの目的のために具体的に設計されている。第一に、コラーゲンが固化するためには、全くかき乱すことなく静置しておくことが重要である。したがって、加水分解産物中に必要な温度分布を得るためでも、撹拌又は他の形態のかき混ぜを適用するべきではない。サンプの内容物中で温度が均一なままであることが不可欠である。温度が不均一であるならば、サンプの異なる部分のコラーゲンが異なる時点で固化する。すべてのコラーゲンが固化する前に残りの加水分解産物の一部が凍結し、抜き取ることができなくなることさえある。第二に、処理を停止させないためには、とりわけ、微生物が容易に繁殖し、産物を分解するおそれがあるため、時間枠が重要である。したがって、この処理が人間用の食品の製造に受け入れられるためには、速やかな冷却及び加熱の可能性の提供が非常に重要である。
【0043】
したがって、クリアリングサンプは、サンプの内容物を撹拌なしで冷却することができるよう、有意な数の加熱/冷却面を含むように設計されている。ここで、面とは、加水分解産物と接触する面をいう。図6はクリアリングサンプの平面図を示す。サンプの内容物を冷却又は加熱するために様々な温度の水又は蒸気が使用される。水は、入口60を通って入り、出口61を通って出る。水は、クリアリングサンプ62の外部のジャケット及びサンプ内部の水充填冷却/加熱面63の両方を冷却/加熱する。サンプ内部にあるこれらの冷却/加熱面こそが、加水分解産物及びコラーゲンの冷却又は加熱を速やかに達成する可能性を提供するものである。図7は、クリアリングサンプの側面図であり、冷却/加熱面63がサンプのほぼ高さ全体に及ぶ大きな面であることを明確に示している。
【0044】
冷却/加熱面63は、中に水を流すことができるような中空のプレートであり、好ましくは、表面積をさらに増すために溝又はうねが設けられている。したがって、加熱面を流れる水とサンプ中の加水分解産物との間の熱交換のための大きな表面積が得られる。当然、冷却/加熱面の数は異なることができ、同様に、それら及びクリアリングサンプそのものの寸法も異なることができる。加水分解産物の体積に対する冷却/加熱面の表面積の比が大きいことが不可欠である。冷却/加熱面は、表面積を増すために波形を有することもできる。冷却/加熱面は垂直に配設されることが必要である。水平に配設されるならば、コラーゲンがそれらの上に引っ掛かってサンプの底に落ちないおそれがある。加熱ジャケットをサンプの側面及び底だけに適用し、サンプ内部の加熱/冷却面を使用しないと、冷却プロセスは進行が遅くなりすぎる。冷却プロセスを加速するためにより冷温の水に頼ってもうまく行かないであろう。理由は、水は当然、凍るからである。他のタイプの流体又は気体を提供する、あるいは水をジャケット中でより高速で流すとしてもなお、不均一な温度分布が得られ、サンプの中央部の内容物が固化する前にサンプの壁に近い内容物が凍結するであろう。冷却をより長期間継続させることは、非常に多くの場合、微生物汚染に関連する問題を招く。理由は、サンプの内容物をこの種の微生物増殖に好都合な温度であまりに長期間とどまらせるからである。本発明のクリアリングサンプを使用すると、クリアリング処理は通常、2時間未満、多くの場合、約1.5時間で終了する。
【0045】
加水分解タンクの場合と同様、当然、クリアリングサンプのサイズは異なることができる。
【0046】
加水分解産物は、はじめにクリアリングサンプに装填されるとき、高温状態にあってもよい。温度は、加水分解中に使用される酵素の活性化温度又は加水分解タンクからの加水分解産物の取り出しとクリアリングサンプへの移送との間の期間などに依存して異なるが、通常は、高温、おそらく80〜100℃であろう。加水分解産物の速やかな冷却を得るため、冷水を冷却ジャケット及び冷却プレート中で循環させると、温度が十分に低下したとき、コラーゲンが液状からゼラチン質に変化し、サンプの底に沈降する。残りの水溶性タンパク質を含有する液体からコラーゲンを分ける明確に画定された面ができると、液体を抜き取る。
【0047】
加水分解タンクと同様に、クリアリングサンプもまた、1個の入口及びいくつかの出口を有する。出口は、加水分解タンク中の油分及び加水分解産物のための出口と同様、サンプの異なる高さに配設される。サンプを完全に空にすることができるよう、残りの水溶性タンパク質を含有する液体を抜き取る場合には、コラーゲンよりも上に位置する出口を使用し、コラーゲンを抜き取る場合には、サンプの底又はそれに近い出口を使用する。
【0048】
残りの水溶性タンパク質を含有する液体を取り出すと、加熱ジャケット及び冷却/加熱面を通って循環する熱水によってコラーゲンを再加熱することができる。このようにして、コラーゲンは液状に戻り、さらなる処理のためにサンプから汲み出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の好ましい実施態様による酵素的加水分解処理のフローチャートである。
【図2】本発明の好ましい実施態様による加水分解タンクの側面図である。
【図3】図2の側面図の断面A−Aを示す図である。
【図4】図2の加水分解タンクの平面図である。
【図5】図2の加水分解タンクの立面図である。
【図6】本発明の好ましい実施態様によるクリアリングサンプの平面図である。
【図7】図6のクリアリングサンプの断面B−Bを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コラーゲン及びタンパク質を含有する原料の酵素的加水分解処理の方法であって、
(1)原料を酵素的加水分解に付して三つの層:
(a)脂肪を含有する上層、
(b)水溶性成分、水溶性タンパク質、とりわけコラーゲンを含む中間層、及び
(c)骨及び不溶性タンパク質を含む不溶性の下層
を生成する工程、
(2)(a)、(b)及び(c)を分離する工程;及び
(3)(b)をさらに分離するための、中間層(b)を、撹拌せずに、二つの層;
(d)部分的又は完全に固化したコラーゲンを含有する下層、及び
(e)残りの水溶性タンパク質を含有する液状の上層
を形成するための温度に達するまで十分な期間冷却する工程、
(4)(e)を取り出す工程;及び
(5)(d)を液状になるまで加熱する工程
を含む方法。
【請求項2】
工程(2)における分離中、タンクの底部に位置する輸送スクリューを使用して不溶性層(c)を取り出す、請求項1記載の方法。
【請求項3】
輸送スクリューがタンクの底部の凹所に位置し、スロットによって底に接続されており、不溶性の下層が、撹拌中、凹所に落ち込み、スクリューの作用区域に達し、外に誘導される、請求項2記載の方法。
【請求項4】
輸送スクリューの回転方向を逆転させる、請求項2記載の方法。
【請求項5】
加水分解中、機械的攪拌装置を使用して混合物を撹拌し、輸送スクリューの回転方向を逆転させて、スクリューの作用区域に落ちた物質をタンクに戻す、請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
工程(3)及び(5)における加熱を、加熱流体が循環する熱交換器を含む受け器の中で実施し、熱交換器が、受け器を包囲する加熱ジャケット及び受け器の内部にある垂直加熱/冷却面を含むシステムである、請求項1記載の方法。
【請求項7】
コラーゲン及びタンパク質を含有する、魚、貝類、動物又は鳥からの原料を使用する、請求項1記載の方法。
【請求項8】
コラーゲン及びタンパク質を含有する、漁業及び/又は食肉加工業からの副産物を含む原料を使用する、請求項1記載の方法。
【請求項9】
(b)を、撹拌することなく、魚の場合で10〜25℃、好ましくは20〜22℃、動物の場合で25〜40℃、好ましくは32〜35℃、鳥の場合で30〜45℃、好ましくは33〜40℃の範囲の温度に冷却する、請求項1記載の方法。
【請求項10】
原料供給のための入口、産物のための出口、回転可能な撹拌機構及び熱交換のための装置を含む加水分解タンクであって、1個以上の逆回転可能なスクリューがタンクの底の出口に配設されている加水分解タンク。
【請求項11】
逆回転可能なスクリューが、不溶性の下層を取り出すための輸送スクリューである、請求項10記載の加水分解タンク。
【請求項12】
輸送スクリューが、タンクの底部の凹所に配設され、スロットによって底に接続されており、不溶性の下層が、撹拌中、凹所に落ち込み、スクリューの作用区域に達し、外に誘導される、請求項2記載の加水分解タンク。
【請求項13】
逆回転可能な輸送スクリューの回転方向が逆転して、スクリューの作用区域に落ちた物質をタンクに戻すように構成されている、請求項10記載の加水分解タンク。
【請求項14】
酵素的加水分解中、混合物が機械的撹拌装置によって撹拌される、請求項10〜13のいずれか1項記載の加水分解タンク。
【請求項15】
撹拌装置が撹拌羽根を含み、好ましくは、1個以上の羽根がタンクの底を掃くように配設されている、請求項10〜14のいずれか1項記載の加水分解タンク。
【請求項16】
エンシレージ処理及び酵素的加水分解処理における、請求項10記載の加水分解タンクの適用。
【請求項17】
請求項1記載の方法における、請求項10記載の加水分解タンクの適用。
【請求項18】
加水分解産物の供給のための入口ならびにコラーゲン及び残留成分のための出口を含む、コラーゲンの分離のためのクリアリングサンプであって、サンプを包囲する加熱ジャケット及びサンプの内部にある、表面積を増すために波形を有することができる垂直な加熱/冷却面を含む熱交換システムを含むクリアリングサンプ。
【請求項19】
タンパク質を含有する加水分解産物からコラーゲンを分離するための、請求項18記載のクリアリングサンプの適用。
【請求項20】
請求項1記載の方法における、請求項18記載のクリアリングサンプの適用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2008−532512(P2008−532512A)
【公表日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−500655(P2008−500655)
【出願日】平成18年3月3日(2006.3.3)
【国際出願番号】PCT/NO2006/000080
【国際公開番号】WO2006/096067
【国際公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【出願人】(507302472)ウォール・プロセス・システムズ・アーエス (1)
【氏名又は名称原語表記】WAHL PROCESS SYSTEMS AS
【Fターム(参考)】