説明

漂白洗浄剤組成物

【課題】漂白及び洗浄性に優れた酸素系漂白洗浄剤組成物の提供。
【解決手段】過硫酸塩及び/又は過硫酸水素塩(例えば過硫酸水素カリウム)、炭酸塩及び/又は炭酸水素塩(例えば炭酸ナトリウム)、並びに固体の無機酸(例えばスルファミン酸)を含有し、過ホウ酸塩(例えば過ホウ酸ナトリウム一水和物)を任意に含有する漂白洗浄剤組成物。
【効果】酸として固体の無機酸、特にスルファミン酸を使用することによって、有機酸を使用した場合と比較して、溶解性及び発泡性が向上し、漂白効果が持続及び増強された漂白洗浄剤組成物となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬質表面を有する各種物品の洗浄、特に容器の底部に沈着した有機系汚物やカビ、細菌等による着色汚染の漂白及び洗浄に好適に使用される漂白洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
トイレ、排水管、浴室、風呂釜等において発生するカビ、リン酸カルシウム等の無機物、タンパク質などの汚れを落とすために漂白洗浄剤が使用されている。漂白洗浄剤はおおまかに分類すると塩素系、酸素系に分けられる。塩素系漂白洗浄剤には、漂白成分として次亜塩素酸ソーダ、クロルシアヌル酸ソーダなどが配合され、漂白、洗浄、カビ取り効果は酸素系漂白洗浄剤より強力である。しかしながら、塩素系漂白洗浄剤は、特有の不快な臭気、すなわち塩素臭を発生すること、酸性物質と混合すると有害な塩素ガスを発生することから、使用者に対する安全性や取り扱いの容易性の点で改善が求められている。
【0003】
一方、酸素系漂白洗浄剤には、漂白成分として無機過酸化物(過硫酸塩、過硫酸水素塩、過ホウ酸塩、過炭酸塩、過炭酸水素塩など)が配合されているが、漂白効果、特に低温における漂白効果は塩素系漂白洗浄剤に及ばない。このため、漂白効果を増強する目的で漂白活性化剤(テトラアセチルエチレンジアミン、ペンタアセチルグルコース、ノナノイルオキシベンゼンスルホン酸、デカノイルオキシ安息香酸など)を配合することが研究されている(例えば、特許文献1及び2参照)。また、固形洗浄剤の分野では洗浄効果を向上させるために固形剤の溶解性及び発泡性を制御することについても研究されている(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開平05−287298号公報
【特許文献2】特開平08−269494号公報
【特許文献3】特開平07−109499号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明は、漂白及び洗浄性に優れた漂白洗浄剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記従来技術の問題点に鑑み鋭意検討を重ねた結果、過硫酸塩及び/又は過硫酸水素塩、炭酸塩及び/又は炭酸水素塩、並びに固体の無機酸を含有し、過ホウ酸塩を任意に含有する漂白洗浄剤組成物において、酸として固体の無機酸、特にスルファミン酸を使用することによって、有機酸を使用した場合と比較して、組成物の溶解性及び発泡性が向上すること、漂白効果が増強されることを見出し、本発明を完成させた。なお、前記漂白効果の増強作用は発泡のみに依拠するものではない。なぜなら、発泡による影響を受けない発泡終了後の溶液の漂白作用も増強されることを本発明者らは確認しているからである。したがって、本発明は、スルファミン酸使用に起因する発泡作用だけでなく発泡以外の何らかの要因によっても漂白作用が増強されたものである。
【0006】
すなわち、本発明は以下の組成物を提供するものである。
項1.過硫酸塩及び/又は過硫酸水素塩、炭酸塩及び/又は炭酸水素塩、並びに固体の無機酸を含有し、過ホウ酸塩を任意に含有する漂白洗浄剤組成物。
項2.固体の無機酸がスルファミン酸である項1に記載の組成物。
項3.組成物の形態が錠剤である項1又は2に記載の組成物。
項4.過ホウ酸塩を含有する項1〜3のいずれかに記載の組成物。
項5.過硫酸塩含有重量及び過硫酸水素塩含有重量の合計を1とした時の過ホウ酸塩含有重量が0〜1.5である項1〜3のいずれかに記載の組成物。
項6.過硫酸水素塩が過硫酸水素カリウムである項1〜5のいずれかに記載の組成物。
項7.過ホウ酸塩が過ホウ酸ナトリウムである項1〜6のいずれかに記載の組成物。
項8.炭酸塩が炭酸ナトリウムである項1〜7のいずれかに記載の組成物。
【0007】
本発明は、過硫酸塩及び/又は過硫酸水素塩、炭酸塩及び/又は炭酸水素塩、並びに固体の無機酸を必須成分として含有し、過ホウ酸塩を任意に含有する。過硫酸塩、過硫酸水素塩(ペルオキソ硫酸水素塩)及び過ホウ酸塩(過酸化ホウ酸塩)は漂白剤の分野では酸素系の漂白成分として使用されている。本発明組成物中において前記3種の塩の含有量は、3種の塩の総量が、好ましくは1〜60重量%、より好ましくは5〜50重量%、最も好ましくは10〜35重量%となる量である。本発明が過ホウ酸塩を含まない場合は、過硫酸塩及び過硫酸水素塩の合計が前記の範囲に適用される。
【0008】
過ホウ酸塩は溶解速度が遅いためこれを配合することによって、組成物の溶解性を制御することが容易となり、また漂白効果を長時間持続させることが容易となる。このため、本発明では、過硫酸塩及び/又は過硫酸水素塩に過ホウ酸塩を併用すること、すなわち両方の塩を含んだ組成物が好ましい。本発明が過ホウ酸塩を含有する場合、過ホウ酸塩含有量は、過硫酸塩含有重量及び過硫酸水素塩含有重量の合計を1とした時の過ホウ酸塩含有重量が好ましくは0〜1.5、より好ましくは0〜1.1、よりいっそう好ましくは0.3〜1.1、最も好ましくは0.3〜0.8となる量である。これらの範囲では漂白作用が特に高くなる。また、過ホウ酸塩含有量をこれらの範囲とすると、成形性及び保形性、特に錠剤の成形が容易になる点及び錠剤が適度な硬度を有する点で有利である。
【0009】
過硫酸塩及び過硫酸水素塩は1種単独でも2種以上を併用することもできる。過硫酸塩の具体例としては、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウムなどが挙げられる。過硫酸水素塩の具体例としては過硫酸水素ナトリウム、過硫酸水素カリウム、過硫酸水素アンモニウムなどが挙げられる。過硫酸塩及び過硫酸水素塩の中で好ましいのは、過硫酸カリウム、過硫酸水素カリウムであり、より好ましいのは過硫酸水素カリウムである。カリウム塩は溶解性の点で他の塩よりも優れ、色調及び臭いの点でもアンモニウム塩より優れる。さらに、過硫酸水素カリウムは原料としての安定性及び組成物中での安定性の点で過硫酸カリウムよりも優れている。
【0010】
過ホウ酸塩は1種単独でも2種以上を併用することもできる。過ホウ酸塩の具体例としては過ホウ酸ナトリウム、過ホウ酸アンモニウム、過ホウ酸カリウム、及びこれらの水和物などが挙げられる。好ましい過ホウ酸塩は、過ホウ酸ナトリウム四水和物(NaBO3・4H2O)、過ホウ酸ナトリウム一水和物(NaBO3・1H2O)であり、より好ましいのは過ホウ酸ナトリウム一水和物である。過ホウ酸ナトリウム一水和物は四水和物より含水量が少ないため、原料としての安定性、これを配合した組成物の安定性、組成物を成型する際の成型性などの点で四水和物より優れている。
【0011】
本発明は、過硫酸塩及び/又は過硫酸水素塩に加えて炭酸塩及び/又は炭酸水素塩を含有する。本発明組成物中の炭酸塩及び/又は炭酸水素塩の含有量は好ましくは5〜50重量%、より好ましくは15〜35重量%である。炭酸塩及び/又は炭酸水素塩は1種単独でも2種以上を併用することもできる。炭酸塩及び/又は炭酸水素塩を配合する事で、炭酸塩及び/又は炭酸水素塩が酸と反応し炭酸ガスを発生して良好に発泡しながら本発明品を溶解させる事が可能になる。炭酸塩及び炭酸水素塩の具体例としては炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウムなどが挙げられ、好ましいのは、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムである。特に炭酸ナトリウムは、少量でも液性をアルカリ性にすることが容易であるため漂白効果が高まること、入手容易であること、安価であることから、最も好ましい。
【0012】
本発明は、さらに固体の無機酸を含有する。ここで固体とは常温で固体を意味する。酸は本発明品を水中に投入した際に炭酸塩及び/又は炭酸水素塩と反応して炭酸ガスを発生させるため、本発明は発泡性を有することとなる。発泡によって水が撹拌されるため洗浄効率が向上する。本発明組成物中の固体の無機酸の含有量は好ましくは5〜40重量%、より好ましくは10〜25重量%である。固体の無機酸は1種単独でも2種以上を併用することもできる。固体の無機酸の具体例としてはスルファミン酸が挙げられる。スルファミン酸は有機酸に比べて発泡性が強いだけでなく、漂白性も向上させる。ここで漂白性の向上は発泡にも起因するであろうが、発泡だけではなくスルファミン酸による他のなんらかの作用によることも、後述の実施例等において本発明者らは確認している。
【0013】
本発明には、上記の過硫酸塩、過硫酸水素塩、過ホウ酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、固体の無機酸に加えて、漂白活性化剤(例えばテトラアセチルエチレンジアミン、ペンタアセチルグルコース、ノナノイルオキシベンゼンスルホン酸、デカノイルオキシ安息香酸など)、重量調整剤(例えば硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム等)、結合剤(例えばポリエチレングリコール(特に分子量4000〜10000のものが好ましい)、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリビニルピロリドン等)、糖類(例えばデンプン、グルコース、フラクトース、マルトース、ラクトース等)、糖アルコール類(例えばソルビトール、マルチトール 、エリスリトール等)、セルロース類(例えばカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等))、滑沢剤(例えばステアリン酸塩(例えばステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム等)、タルク、パラフィンワックス等)、香料、着色剤などを加えることが好ましい。
【0014】
また、本発明には本発明の効果を阻害しない限りにおいて漂白洗浄剤において通常利用される上記以外の成分を配合することができる。このような成分としては、賦形剤(例えば硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム等)、研磨剤(例えば炭酸カルシウム、酸化アルミニウム等)、その他の非塩素系漂白成分(例えば過炭酸ナトリウム、二酸化チオ尿素、過ピロリン酸ナトリウム等)、有機酸(例えばクエン酸、リンゴ酸、フマル酸、コハク酸、酒石酸等)、殺菌剤(例えば第4級アンモニウム塩(例えば塩化ベンザルコニウム等)等)、金属キレート剤(例えばジエチレントリアミン5酢酸、ジエチレントリアミン5酢酸塩、エチレンジアミン4酢酸、エチレンジアミン4酢酸塩、ヒドロキシエチルエチレンジアミン3酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン3酢酸塩、グリコールエーテルジアミン4酢酸、グリコールエーテルジアミン4酢酸塩、ニトリロ3酢酸、ニトリロ3酢酸塩等)、界面活性剤(例えばαオレフィンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等)、崩壊剤(例えばカンテン、ゼラチン、トウモロコシデンプン、結晶セルロース等)、洗浄用酵素(例えばプロテアーゼ、リパーゼ、アミラーゼ、セルラーゼ等)などが挙げられる。
【0015】
本発明の組成物は、固形の漂白剤、洗浄剤、漂白洗浄剤の分野で一般に利用される方法によって製造できる。通常は各成分の粉体あるいは粒状体を混合し、造粒、打錠、混練押出成型等の手段によって所望の形状に成形される。この際必要に応じて、結合剤、滑沢剤等を配合して成形することができる。なお、便器、貯水槽等の底部等の洗浄、漂白を行う場合には、漂白洗浄剤が水に投入した際に底部まで沈むと、漂白洗浄剤の発泡及び溶解により底部を効率的に洗浄及び漂白できるため、本発明の漂白洗浄剤組成物はその比重が1以上であることが好ましい。このような比重を有する組成物とする場合には、重量調整剤である硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム等の硫酸塩、塩化カルシウム、塩化マグネシウム等を配合することが好ましいが、本発明の効果を阻害しない限りにおいて比重を調整できる効果を有するものであれば特にこれらに限定されない。
【0016】
本発明の組成物の形態は用途、目的等に応じて適宜変更できる。例えば、粉剤、細粒剤、錠剤(タブレットを含む)、ブロック剤等の形態が挙げられ、ハンドリングを考慮すると、細粒剤、錠剤、ブロック剤が好ましく、特に錠剤が好ましい。
【0017】
本発明の組成物は、硬質表面に付着する汚れ(カビ等による黒ずみ、タンパク質、尿等による黄ばみ、ぬめりなど)の洗浄及び漂白に有用である。例えば、便器、貯水槽、排水管、浴室、風呂釜、食器、水筒、ポット、洗面台、花瓶、洗濯槽等の汚れの洗浄及び漂白に使用できる。本発明の組成物の使用方法及び使用量は用途、目的等に応じて適宜設定できる。例えば水洗であって水たまり部を有する一般的な便器に使用する場合、本発明の組成物10〜50g程度を使用することが好ましい。また、水洗トイレの貯水槽に使用する場合はインタンク漂白洗浄剤として使用し、貯水槽の水1Lに対し本発明の組成物5〜25g程度を使用することが好ましい。
【0018】
本発明の組成物は通常は漂白洗浄対象物(例えば便器)が水を蓄える構造であるから対象物に蓄えられた水に1回もしくは複数回に分けて投入すればよい。また、水を蓄えていない漂白洗浄対象物に使用する場合には漂白洗浄対象物に本発明の組成物を投入後水を加えることも可能である。本発明の組成物は発泡性に優れるため漂白及び洗浄時間が短時間でも効果を得られるが、発泡終了後も漂白及び洗浄効果が向上又は持続するため、漂白及び洗浄時間を長時間とするとより効果的である。好ましい漂白及び洗浄時間は、本発明組成物を水と接触させてから2分〜72時間、より好ましくは10分〜24時間である。通常、漂白及び洗浄後は必要に応じて水等を流して汚れを除去する。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、有機酸を配合した酸素系漂白洗浄剤よりも発泡性及び漂白性に優れる。特に、本発明は発泡終了後の漂白性の比較においても優れていることから、本発明の漂白性は、発泡性の向上によって漂白効率が向上したことによるもの(すなわち発泡に依拠する漂白性)だけではなく、それ以外の何らかの作用によって漂白性が発揮さるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を実施例等により、より詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0021】
実施例、比較例及び製剤例において、過硫酸水素カリウムとしてオキソン(デュポン社製;過硫酸水素カリウム43重量%含有)、過ホウ酸ナトリウムとしてペルボン(三菱瓦斯化学社製;過ホウ酸ナトリウム一水和物93重量%含有)を使用した。また、塩素系漂白成分としてジクロロイソシアヌル酸ナトリウム(商品名ハイライト60S、日産化学社製、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム98重量%含有)を使用した。
【0022】
なお、下記の表に示された上記成分の使用量は、上記商品としての配合量であり、有効成分(過硫酸水素カリウム、過ホウ酸ナトリウム一水和物、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム)の配合量ではない。
【0023】
また、以下の実施例、比較例及び製剤例においては特に明記しない限り、下記の製造法及び測定法により試験を行った。
【0024】
錠剤の製造
各々粉状の漂白剤(オキソン、ペルボン、ハイライト60S)、固形の酸(スルファミン酸、クエン酸、リンゴ酸、フマル酸、コハク酸)、炭酸塩(炭酸ナトリウム)、重量調整剤(硫酸ナトリウム(芒硝)等)、結合剤(ポリエチレングリコール6000P)、必要に応じてその他の成分を所定量混合し、円筒状の杵臼(図1)に25g投入し、油圧ポンプ(面圧900kg/cm2)で上杵を押し下げて打錠し、錠剤を製造した。錠剤は直径約4cm、高さ約1.5cmで上面中央部が窪んだ形状である(図2)。
【0025】
漂白率の測定
2L容ビーカーに水道水2Lを入れ15℃に維持する(底面から水面までの高さ約15cm)。3cm角の大きさの紅茶汚染布(EMPA167、日本資材製)を3枚用意し、各々の色差を色彩色差計(CR-300、MINOLTA社製)で測定する。色差を測定した1枚の紅茶汚染布を糸の端に固定したものを3個用意し、糸の他端をつまんで紅茶汚染布を水中に入れて配置する。布の配置は、布が容器底から約1cm上で、容器壁に近いところ、すなわち被験物質の発生する泡の影響が小さいところに位置し、ビーカーを上から見たときに3枚の紅茶汚染布を結ぶ線が正三角形になるようにした。このビーカーに被験物質1個(錠剤25g又は非成形の粉体混合物25g)を底部中央に位置するよう投入し、30分間放置した後、紅茶汚染布を取り出して水道水ですすぐ。この紅茶汚染布を送風低温乾燥機(50℃)内で30分間乾燥させる。30分後乾燥機から布を取り出し、各布の色差を測定する。得られた色差(CD)と、試験前の紅茶汚染布の色差(CD)を下記計算式に適用し各布の漂白率を算出する。
【0026】
漂白率(%)=100×(CD−CD)/CD
なお、以下の表において示した漂白率は、各布の漂白率を合計し布の枚数で除した値、すなわち、3枚の紅茶汚染布の漂白率の平均値である。以下、漂白率と表したときは前述の漂白率の平均値を示す。そして、「相対漂白度」は、塩素系漂白剤の漂白率を100と設定した時の各被験物質の相対的な漂白率をいう。
【0027】
完全溶解後漂白率の測定
前述の漂白率の測定の場合よりも希釈された溶液で測定を行う。すなわち、10L容器に水道水6Lを入れ15℃を維持する(底面から水面までの高さ約12cm)。漂白率の測定の場合と同様にして3枚の紅茶汚染布を水中に配置し、被験物質1個(錠剤25g又は非成形の粉体混合物25g)を投入する。被験物質が完全に溶解した時点を0分とし、所定の時間経過後に布を取り出し漂白率の測定の場合と同様に色差を測定し、漂白率を算出する。
【0028】
pHの測定
漂白率の測定と並行してpHを測定する。被験物質が完全に溶解した時点のpHをpHメーター(D−52、ホリバ社製)で測定する。なお、酸素系漂白剤の分野では、漂白の対象となる汚れの種類によって漂白効果が最大となるpHは異なるが、一般的にはpHが大きいほど漂白力が高くなることが知られている。
【0029】
溶解時間の測定
漂白率の測定と並行して被験物質が完全に溶解するまでの時間を5秒刻みで測定する。
【0030】
実施例及び比較例
試験1
表1に示す組成で錠剤を製造し、漂白率、pH及び溶解時間を測定した。
【0031】
【表1】

【0032】
過硫酸塩含有重量及び過硫酸水素塩含有重量の合計に対する過ホウ酸塩含有重量が0(A1)〜1.1程度(A5)では塩素系漂白剤(B2)と同程度の漂白力が得られることが確認された。なお、B3の試験では、30分経過時点において被験物質が完全に溶解せず、約2−3割が溶け残った状態であった。
【0033】
試験2
表2に示す組成で錠剤を製造し、漂白率、pH及び溶解時間を測定した。なお、A3及びB2の溶解濃度は上記の漂白率の測定に準じた溶解濃度(25g/2L)であるが、A11〜A13の溶解濃度は各々25g/4L、25g/1L及び25g/0.67Lである。
【0034】
【表2】

【0035】
A11〜A13は溶解濃度を変化させても良好な漂白率を示し、また、pHも大きく低下することはなかった。
【0036】
試験3
表3に示す組成で錠剤を製造し、漂白率、pH及び溶解時間を測定した。なお、B4〜B7における酸の量は、錠剤を溶解した溶液のpHが概ね9.1程度となる量とした。
【0037】
【表3】

【0038】
本試験において、本発明品は、溶解時pHを同じとする条件、配合量を同じとする条件において有機酸配合品より漂白率が高いことが示された。
【0039】
試験4
表4に示す組成で錠剤を製造し、溶解時間及び完全溶解後漂白率を測定した。なお、溶解濃度は25g/6Lである。
【0040】
【表4】

【0041】
有機酸含有組成物(B6)の漂白率は180分後と240分後とでほぼ同じ約70%を示したことから、最大漂白率は約70%であった。これに対しスルファミン酸を含有する本発明の組成物の漂白率は240分後で85.1%であることから最大漂白率は少なくとも85.1%であった。また、本発明の組成物では漂白率の測定を240分後より遅い時点で行うとさらに高い漂白率を示すことも期待された。また、B4、 B5、 B7〜B11の錠剤を使用して同条件で試験を行ったところ、B6と同じ傾向が確認され、これら被験物質に対しA3の最大漂白率が優位であることが示された。
【0042】
したがって、本発明の組成物は錠剤を投入後に放置する方法、いわゆるつけ置きによる漂白洗浄作用が有機酸含有組成物よりも優れていた。なお、本発明の組成物は、有機酸含有組成物より発泡力が強いため、投入初期の漂白洗浄力においても有機酸含有組成物よりも優れているものである。
【0043】
本試験では、錠剤が完全に溶解した後に漂白率が測定されていることから、発泡による水撹拌現象によって得られる漂白向上作用は測定される漂白率に寄与していない。したがって、スルファミン酸は漂白において発泡作用以外の何らかの作用を有し、この作用によって有機酸よりも優れた漂白力を発揮することが本試験によって確認された。
【0044】
試験5
表5に示す組成で錠剤を製造した。実際に一般家庭(4人家族)において使用され便器掃除を2ヶ月間されていない水洗便器(C730、TOTO社製)の水たまり部にこれらの錠剤を用い便器の喫水面の汚れ並びに水たまり部底面及び側面の汚れに対する漂白洗浄性を評価した。評価は、錠剤投入後2時間放置し、水を1回流した後の汚れ落ちの程度と汚れ残りの有無を目視で確認し、次いでさらに水を1回流した後の汚れ残りの有無を目視で確認し、同様にしてさらに水を1回流した後の汚れ残りの有無を目視で確認することにより行った。評価基準は次のとおりである。
【0045】
<1回の水洗による汚れ落ちの程度>
◎:8割以上の汚れが落ちている
○:5割以上8割未満の汚れが落ちている
△:3割以上5割未満の汚れが落ちている
×:汚れ落ちが3割未満である
<汚れ残りの有無>
◎:1回の水洗で汚れがほとんど落ちた
○:2回の水洗で汚れがほとんど落ちた
△:3回の水洗で汚れがほとんど落ちた
×:3回の水洗では汚れがほとんど落ちることはなかった
【0046】
【表5】

【0047】
本試験によって、実使用においても本発明の漂白洗浄力が有機酸含有漂白洗浄剤の漂白洗浄力よりも高いことが確認された。本発明は有機酸含有漂白洗浄剤との比較においては特に喫水面の汚れに対し強力であった。
【0048】
製剤例
実施例と同様に表6に示す組成で錠剤形態の漂白洗浄剤組成物を製造した。
【0049】
【表6】

【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は漂白洗浄剤の分野で有用である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】図1は実施例、比較例及び製剤例において錠剤を製造する際に使用した杵臼の断面模式図を示す。
【図2】図2は実施例においてA1として製造された錠剤の写真を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
過硫酸塩及び/又は過硫酸水素塩、炭酸塩及び/又は炭酸水素塩、並びに固体の無機酸を含有し、過ホウ酸塩を任意に含有する漂白洗浄剤組成物。
【請求項2】
固体の無機酸がスルファミン酸である請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
組成物の形態が錠剤である請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
過ホウ酸塩を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
過硫酸塩含有重量及び過硫酸水素塩含有重量の合計を1とした時の過ホウ酸塩含有重量が0〜1.5である請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
過硫酸水素塩が過硫酸水素カリウムである請求項1〜5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
過ホウ酸塩が過ホウ酸ナトリウムである請求項1〜6のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
炭酸塩が炭酸ナトリウムである請求項1〜7のいずれかに記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−13611(P2008−13611A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−183947(P2006−183947)
【出願日】平成18年7月3日(2006.7.3)
【出願人】(000186588)小林製薬株式会社 (518)
【Fターム(参考)】