説明

漏水防止用シール材およびその施工方法

【課題】コンクリート構造物の変形に追従して脱落することなく水密性を保持する。
【解決手段】断面形状が概略台形であり、上辺10、底辺11及び斜辺12から構成され、上辺10の中央部に窪み2が形成されて緩やかなV字状としてある。底辺11の中央部が円弧状に盛り上げて変形しやすくしてある。シール材1の中央部には台形の中空部51、その両脇には細長の中空部52が形成してある。斜辺12の中間部には抜け止め用として突起4が鋸歯状に設けてある。上辺10の中央部の窪み2は、底辺11の両端62を中央に向かって押すことによって盛り上り、上辺は変形してほぼ平坦となり、矩形状として目地に装填される。斜辺12は素材の弾発力と接着剤との併用で目地の壁面に強力に密着して漏水を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート製水路や構造物外壁の接合部における目地の漏水防止用シール材とその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリート構造物等の目地における漏水防止用の種々のシールが提案されている。
特許文献1(実開昭64−41505号)のシール材は、図3(1)に示すように断面コの字状の可撓性の本体とこの本体の凹部空間に弾性シーリング材が充填してあり、空間と充填したシーリング材を圧縮して目地に装填するものである。このシール材は、目地に嵌め込む際に所定の位置に保持することが困難であると共に、弾性反発力が弱く、外面に設けた突起の目地壁面への密着が十分でなく、漏水防止が不完全であった。また、シーリング材を充填・封入する工程が必要であり、工事費が嵩むうえに工期が長くなるという問題があった。
【0003】
特許文献2(実開昭57−193799号)のシール材は、図3(2)に示すように、断面半円形のシール材であって、その内側に半円状の弾性拡開材を装填してシール材を外側に拡開するものであるが、目地への設置工事が面倒であり、正確に設置することができないと経年変化によりジョイントラバーや弾性拡開材が目地内で傾く恐れがあり、漏水防止機能が低下し易いという問題がある。
特許文献3(特開2005−282180号)に記載されたシール材は、図3(3)に示すように、シール材を押し潰して目地に挿入するものであるが、シール材の弾性反発力が弱いうえに、突起の壁材への密着性が低く、漏水が起こる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭64−41505号公報
【特許文献2】実開昭57−193799号号公報
【特許文献3】特開2005−282180号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のシール材は、押し潰すなどして断面形状を小さくして目地に装填し、シール材の弾発力によって目地壁面に押し付けるものである。シール材の弾発力はシール材目地装填時の変形量に比例するものであるが、余り大きく変形させると装填に大きな労力を要する上に密着部分が少なくなり、このため、シール材を目地に装填した後に目地に変形が起きた場合、シール材がその変形に追従することができず、漏水防止機能が低下するという問題があった。
【0006】
また、目地に装填するときの変形量を小さくすると弾発力が小さく、シール材を目地壁面に強力に密着させることができず、漏水防止機能が低いという問題がある。
本発明は、目地への装填作業を容易にしたうえに、さらに変形量を大きくとれるようにすることによって、装填後の目地の変形に対しても追従可能とし、漏水防止機能を高めるものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の漏水防止用シール材は、断面が中空部を有する台形であり、上辺の中央を窪ませて略V字状としてあり、底辺の中央部が凸状にしてあり、中空部は中央部とその両脇に設けてあり、両斜辺には抜け止め用の突起が設けてあるシール材である。
上辺が緩やかなV字型の台形であるので、シール材を目地に装填する際に、台形の底辺の両端を相互に近づけるように押すと、上辺中央部の窪みが盛上ってほぼ直線状となり、かつ、台形の両斜辺が平行となるので、シール材は変形して四角形に近い矩形となり、変形した両斜辺が両方向に拡がる方向に弾発力が作用し、目地の壁面にシール材が密着するので漏水が防止される。
【発明の効果】
【0008】
台形の底辺が目地の幅より広い漏水防止用シール材の中空部を両側から押すようにして変形させて目地の幅と略同じにして装填し、シール材の弾発力によってシール材の斜辺が壁面に密着するものであり、密着度が高く、漏水防止機能が高い。
中央の台形中空部は、シール材を溝にはめ込む時にシール材の幅を縮めるための空間であり、中央の台形中空部と両側にある中空部の間にある隔壁は、両斜辺の突起部を溝に接着する際の支えとなり、圧接力を増す。
また、シール材が変形する時には隔壁が変形するため、外側の接着部は変形時の動きを低減できる。
【0009】
漏水防止用シール材が弾性で復元しようとする反発力を利用しているので、漏水防止用シール材が引っ張り状態とならないため、経年劣化による破断が生じにくく、長期間漏水防止用シール材として機能する。
漏水防止用シール材の中空部を押し潰して目地に装填するため、また、漏水防止用シール材斜辺の突起は、斜辺の基部及び肩部に形成していないので、漏水防止用シール材の変形量を大きくすることに寄与できるので、コンクリート構造物が伸びや段差などの変形を起こしてもそれに追従することができ、漏水防止用シール材の目地壁面への密着性がよく、漏水がおこりにくいものとなる。
斜辺に形成した突起が、漏水防止用シール材を目地から抜け出す方向に対して抵抗する向きの鋸歯状になっているので、抜け防止効果がある。また、接着剤との接着面積を大きくしていることから、水圧がかかったときの水みちを長くして止水効果を高めている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】シール材の断面図及び目地に装填した状態の断面図。
【図2】目地が大きく変形した場合のシール材の挙動の説明図。
【図3】従来のシール材の一例の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施例
図1(1)に示すように、シール材1は、3つの中空部と突起のある斜辺部を有し、断面形状が台形であり、素材はゴムまたは合成樹脂などの変形可能な材料で構成してある。
上辺10は山形状であり、中央部2が窪ませてあり、緩やかなV字状としてある。底辺中央11の厚さは薄く、上辺10の厚みの半分であると共に中央部3を凸に盛り上げてあり、内空側に折り曲げ易くしてある。台形の底辺中央11の両端部62を手で挟んで押すと、底辺中央11は中央部3が内空側に盛上ってU字状に折れ曲がり、矩形状に変形する。
【0012】
シール材1の中央部には概略台形の中空部51が形成してあり、その両脇に細長の中空部52が形成してある。
シール材1の斜辺12の中間部には抜け止め用として突起4が鋸歯状に設けてある。突起4は、台形の斜辺12の上端区間には設けず、斜辺12の途中から設けてあり、また、斜辺12の底辺の端部62に近い部分にも突起4は設けず、シール材1が目地に装填された状態において斜辺12が目地の壁面に密着した状態のままで変形できる量が大きくなるようにしてある。
また、斜辺12に形成した鋸歯状の突起4は、シール材が目地から抜け出す方向に対して抵抗する向きに傾斜させた鋸歯状突起としてある。
【0013】
本発明のシール材1は、目地に装填する前の通常の状態では概略台形であり、目地に装填する場合は、台形の底辺中央11の両端62を中央に向かって押すことにより、簡単に矩形状に変形させることができる。底辺中央11の厚みは、上辺10の厚みに比して薄くしてあり、かつ、中央部が凸に盛り上げてあるので底辺中央11は変形し易い。
上辺10の中央部の窪み2は、底辺中央11の両端62を中央に向かって押すことによって盛り上り、上辺はほぼ平坦状態に変形し、最終的には、図1(2)に示すようにほぼ矩形となる。
【0014】
この矩形となった状態でシール材1を目地に装填すると、底辺中央11に作用していた押圧力が解放され、シール材1は素材の弾発力によって元の台形に戻ろうとするので、斜辺12の突起4が目地の壁に強力に密着し、高い漏水防止機能が得られる。
【0015】
目地内に装填されたシール材1の鋸歯状突起4が目地の壁面と密着する部分には接着剤を充填し、シール材1の斜辺12が目地の壁面に固着されるようにする。
また、シール材1を目地に装填する際に中央の中空部51の空気を真空ポンプ等を使用して吸引することにより、大気圧によってシール材1を圧縮変形させ、装填を容易にすることができ、シール材1を目地に装填後、空気を吸引した中空部に空気を入れて目地の壁面に圧着設置することができる。
【0016】
本発明のシール材をコンクリート製の水路の継目のシール材として使用した場合、地下水圧が作用してシール材の底辺中央11に作用して目地から抜け出させようとすると、底辺中央11に作用する地下水圧はシール材1の両斜辺12を左右に押し広げる方向に作用することから、両斜辺12は強力に目地の壁面に押し付けられ、又接着剤との併用によりシール材1の抜け出しが防止され、高い漏水防止機能が発揮される。
本発明によるシール材の漏水防止機能は、地下水圧の他に水路内を流れる水の内水圧に対しても、シール材の弾発力と斜辺部の突起及び接着剤により発揮される。
【0017】
また、本発明のシール材を目地に使用した構造物が大幅に変形して目地に幅方向、または、段差方向に大きなずれが発生した場合のシール材1の挙動を説明する。図2(1)は、構造物が通常の状態にあることを示している。構造物に何らかの力が作用したり、地盤の変動によって水路の目地が開いた場合、図2(2)に示すように目地が幅方向にdだけ拡がった状態になっても、斜辺12の鋸歯状突起4が目地の壁面に接着されていると共に斜辺12は素材の弾性によって拡がって目地の変形に追随して移動し、斜辺12の突起4が目地の壁面に密着した状態が維持されるので漏水の恐れがない。また、図2(3)に示すように、不等沈下により目地が上下方向にhだけずれて段差が生じた場合であっても、接着剤で目地の壁面に接着されているのは、シール材1の斜辺12の中間部の突起4の部分であり、台形のシール材の上辺10の肩部及び底辺11の基部がフリーとなっているため、大きく変形することができ、斜辺の突起4が目地の壁面から剥がれることなく漏水防止機能が維持される。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明の漏水防止用シール材は、水路の継目だけでなく、構造物の目地に対しても適用できる。
【符号の説明】
【0019】
1 シール材
10 上辺
11 底辺中央
12 斜辺
2 上辺の窪み
3 底辺凸部
4 突起
51、52 中空部
62 底辺の両端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面が中空部を有する概略台形であり、台形の上辺の中央が窪ませてあって略V字状であり、底辺は中央部が凸状としてあり、中空部が台形の中央部とその両脇に形成してあり、斜辺には抜け止め用突起が設けてあるシール材。
【請求項2】
請求項1において、底辺の厚みを上辺より薄くしてあるシール材。
【請求項3】
請求項1または2において、両側斜辺に設けた抜け止め用突起は、斜辺の中間部にのみ設けてあるシール材。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかのシール材を目地に装填する施工法であって、シール材の中空部の空気を吸引してシール材を圧縮変形させ、両斜辺の突起に接着剤を充填して目地に装填後、空気を吸引した中空部に空気を入れて目地の壁面に圧着設置するシール材の施工方法。

【図2】
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【図3】
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【図1】
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【公開番号】特開2010−185192(P2010−185192A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−28992(P2009−28992)
【出願日】平成21年2月10日(2009.2.10)
【出願人】(000137074)株式会社ホクコン (40)
【Fターム(参考)】