説明

潜在性硬化剤および組成物

本発明は、高い硬化性と貯蔵安定性を両立し得る一液性エポキシ樹脂組成物およびそれを得るための潜在性硬化剤、そして、貯蔵安定性が高く、低温あるいは短時間の硬化条件であっても、高い接続信頼性、接着強度、高い封止性が得られる異方導電材料、導電性接着材料、絶縁接着材料、封止材料等を提供することを目的とする。
エポキシ樹脂用硬化剤(A)及び該エポキシ樹脂用硬化剤(A)を被覆する樹脂を含むエポキシ樹脂用潜在性硬化剤であって、該エポキシ樹脂用硬化剤(A)を被覆する樹脂が、3つの窒素原子がエステル構造を含んでもよい直鎖状または環状の脂肪族炭化水素基を介して分岐点で結合した構造(構造(1))が一のウレア結合を介して二つ結合した構造を含み、各構造(1)の窒素原子の少なくとも一つは当該ウレア結合に含まれている、上記エポキシ樹脂用潜在性硬化剤、ならびに、それを用いた一液性エポキシ樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規なエポキシ樹脂用潜在性硬化剤およびそれを用いた一液性エポキシ樹脂組成物に関する。さらに詳しくは、硬化性が高い上に、貯蔵安定性にも優れた組成物を与えるエポキシ樹脂組成物用潜在性硬化剤およびそれを用いた一液性エポキシ樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂は、その硬化物が、機械的特性、電気的特性、熱的特性、耐薬品性、接着性等の点で優れた性能を有することから、塗料、電気電子用絶縁材料、接着剤等の幅広い用途に利用されている。現在一般に使用されているエポキシ樹脂組成物は、使用時にエポキシ樹脂と硬化剤の二液を混合する、いわゆる二液性のものである。
二液性エポキシ樹脂組成物は室温で硬化しうる反面、エポキシ樹脂と硬化剤を別々に保管し、必要に応じて両者を計量、混合した後、使用する必要があるため、保管や取り扱いが煩雑である。
その上、可使用時間が限られているため、予め大量に混合しておくことができず、配合頻度が多くなり、能率の低下を免れない。
こうした二液性エポキシ樹脂配合品の問題を解決する目的で、これまでいくつかの一液性エポキシ樹脂組成物が提案されてきている。例えば、ジシアンジアミド、BF−アミン錯体、アミン塩、変性イミダゾール化合物等の潜在性硬化剤をエポキシ樹脂に配合したものがある。
【0003】
しかし、これらの潜在性硬化剤のうち、貯蔵安定性に優れているものは、硬化性が低く、硬化に高温または長時間必要であり、一方、硬化性が高いものは貯蔵安定性が低く、例えば−20℃等の低温で貯蔵する必要がある。例えば、ジシアンジアミドについては、配合品の貯蔵安定性は、常温保存の場合に6ヵ月以上であるが、170℃以上の硬化温度が必要である。この硬化温度を低下させるために硬化促進剤を併用すると、例えば130℃での硬化が可能となるものの、室温での貯蔵安定性が不充分となり、低温での貯蔵を余儀なくされる。したがって、高い硬化性と優れた貯蔵安定性を両立し得る組成物が強く求められていた。また、フィルム状成形品や、基材にエポキシ樹脂を含浸した製品を得る場合、溶剤や反応性希釈剤等を含む配合品となる場合が多く、従来の潜在性硬化剤をかかる配合品の硬化剤として用いた場合、貯蔵安定性が極端に下がり、実質的に二液性とする必要がありその改善が求められていた。
【0004】
その要求に対し、数多くの研究がなされ、例えば、特開昭61−190521号公報(特許文献1)、特開平1−70523号公報(特許文献2)、特開平11−193344号公報(特許文献3)にイソシアネート化合物の反応物により表面が被覆されたエポキシ樹脂用硬化剤が記載されている。
しかし近年、特に電子機器分野において、回路の高密度化や接続信頼性の向上に対応するため、またモバイル機器の軽量化として耐熱性の低い材料を使用するために、あるいは生産性を大幅に改善する目的で、接続材料の一つとして用いられる一液性エポキシ樹脂組成物に対して、貯蔵安定性を損なわずに、硬化性の一層の向上が強く求められ、従来技術ではその達成は困難であった。
【特許文献1】特開昭61−190521号公報
【特許文献2】特開平1−70523号公報
【特許文献3】特開平11−193344号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、高い硬化性と貯蔵安定性を両立し得る一液性エポキシ樹脂組成物およびそれを得るための潜在性硬化剤、そして、貯蔵安定性が高く、低温あるいは短時間の硬化条件であっても、高い接続信頼性、接着強度、高い封止性が得られる異方導電材料、導電性接着材料、絶縁接着材料、封止材料等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、特定構造の皮膜で被覆されたエポキシ樹脂用潜在性硬化剤が上記目的に適合しうることを見出し、本発明をなすに至った。
即ち、本発明は、下記の通りである。
I)エポキシ樹脂用硬化剤(A)及び該エポキシ樹脂用硬化剤(A)を被覆する樹脂を含むエポキシ樹脂用潜在性硬化剤であって、
該エポキシ樹脂用硬化剤(A)を被覆する樹脂が、3つの窒素原子がエステル構造を含んでもよい直鎖状または環状の脂肪族炭化水素基を介して分岐点で結合した構造(構造(1))が一のウレア結合を介して二つ結合した構造を含み、
各構造(1)の窒素原子の少なくとも一つは当該ウレア結合に含まれている、
上記エポキシ樹脂用潜在性硬化剤。
II)エポキシ樹脂用硬化剤(A)を被覆する樹脂が、2つ以上の窒素原子と結合した芳香族炭化水素基(2)をさらに含み、
構造(1)および該2つ以上の窒素原子と結合した芳香族炭化水素基(2)の総量に対する該2つ以上の窒素原子に結合した芳香族炭化水素基(2)の割合が0.5質量%以上95質量%以下である、
I)に記載のエポキシ樹脂用潜在性硬化剤。
III)構造(1)および2つ以上の窒素原子に結合した芳香族炭化水素基(2)の総量に対する該2つ以上の窒素原子に結合した芳香族炭化水素基(2)の割合が1質量%以上80質量%以下である、II)に記載のエポキシ樹脂用潜在性硬化剤。
IV) エポキシ樹脂用硬化剤(A)および
当該エポキシ樹脂用硬化剤(A)を被覆する、イソシアネート基を3つ以上有し、分子量分布を持たない低分子ポリイソシアネートを20質量%以上含むイソシアネート成分(b1)と活性水素化合物(b2)との反応によりえられた樹脂
を含む、エポキシ樹脂用潜在性硬化剤。
V)当該エポキシ樹脂用硬化剤(A)を被覆する樹脂が、波数1630cm−1〜1680cm−1の赤外線を吸収する結合基(x)を有する、IV)に記載のエポキシ樹脂用潜在性硬化剤。
VI)イソシアネート成分(b1)が20質量%以上99質量%以下の低分子ポリイソシアネート化合物と1質量%以上80質量%以下のその他のイソシアネート化合物からなる、IV)またはV)に記載のエポキシ樹脂用潜在性硬化剤。
VII)エポキシ樹脂用硬化剤(A)がアミン系硬化剤であるI)〜VI)のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂用潜在性硬化剤。
VIII)エポキシ樹脂用硬化剤(A)を被覆する樹脂のガラス転移温度(Tg)が80℃以下である、I)〜VII)のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂用潜在性硬化剤。
IX)I)〜VIII)のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂用潜在性硬化剤をコアとし、エポキシ樹脂用硬化剤(A)とエポキシ樹脂(C)の反応生成物をシェルとしてなるエポキシ樹脂用コアシェル型硬化剤。
X)I)〜VIII)のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂用潜在性硬化剤またはVI)のコアシェル型硬化剤100質量部及び10〜50,000質量部のエポキシ樹脂(C)からなるエポキシ樹脂用マスターバッチ型硬化剤。
XI)エポキシ樹脂(D)100質量部;及び
I)〜VIII)のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂用潜在性硬化剤、IX)に記載のエポキシ樹脂用コアシェル型硬化剤、またはX)に記載のエポキシ樹脂用マスターバッチ型硬化剤0.1〜1000質量部
を含み、それらを主成分とする一液性エポキシ樹脂組成物。
XII)エポキシ樹脂(D)100質量部;
酸無水物類、フェノール類、ヒドラジド類、およびグアニジン類からなる群から選ばれる少なくとも1種の硬化剤(E)1〜200質量部;および
請求項I)〜VIII)のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂用潜在性硬化剤、IX)に記載のエポキシ樹脂用コアシェル型硬化剤、またはX)に記載のエポキシ樹脂用マスターバッチ型硬化剤0.1〜200質量部
を含み、それらを主成分とする一液性エポキシ樹脂組成物。
XIII)XI)またはXII)に記載の一液性エポキシ樹脂組成物を含有する異方導電材料。
XIV)XI)またはXII)に記載の一液性エポキシ樹脂組成物を含有する導電性接着材料。
XV)XI)またはXII)に記載の一液性エポキシ樹脂組成物を含有する絶縁接着材料。
XVI)XI)またはXII)に記載の一液性エポキシ樹脂組成物を含有する封止材。
XVII)エポキシ樹脂用硬化剤(A)を、イソシアネート基を3つ以上有し、分子量分布を持たない低分子ポリイソシアネート化合物を20質量%以上含むイソシアネート成分(b1)と活性水素化合物(b2)を反応させて皮膜を形成して被覆することを含む、エポキシ樹脂用潜在性硬化剤の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の硬化剤は、高い硬化性と貯蔵安定性の両立に効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明について、以下具体的に説明する。
本発明のエポキシ樹脂用潜在性硬化剤は、少なくとも1つはウレア結合に含まれる3つの窒素原子がエステル構造を含んでもよい直鎖状または環状の脂肪族炭化水素基を介して分岐点で結合した構造(1)が同一ウレア構造に2つ窒素原子を共有する形で直結している構造を含む樹脂で被覆されていることを特徴とする。
本発明においてウレア結合に含まれる窒素原子から分岐点までのエステル構造を含んでもよい直鎖状または環状の脂肪族炭化水素基において、当該ウレア結合から分岐点までの分子鎖に含まれる炭素数は分岐点となる原子を含んで1〜20であることが好ましい。炭素数が20よりも大きいと保存安定性が充分発現されないことがあり、そのような観点から好ましい炭素数は1〜10、より好ましくは1〜7であることが望ましい。
また、当該分岐点から当該ウレア結合に含まれる窒素原子とは別の窒素原子に至るまでの分子鎖に含まれる炭素数の合計は、分岐点となる原子を含んで1〜20であることが好ましい。炭素数が20よりも大きいと保存安定性が充分発現されないことがあり、そのような観点から好ましい炭素数は1〜10、より好ましくは1〜7であることが望ましい。
また、当該ウレア結合から分岐点となる原子までの炭素数と当該ウレア結合とは異なる窒素原子までの炭素数の合計は3〜20であることが好ましい。当該炭素数の合計が3よりも小さいと得られるエポキシ樹脂用潜在性硬化剤の反応性が低くなることがあり、20よりも大きいと保存安定性が充分発現されないことがあり、そのような観点から好ましい炭素数の合計は4〜20、より好ましくは5〜10であることが望ましい。
【0009】
また、言いかえると、本発明は一のウレア結合に着目したときに、含まれる2つの窒素をそれぞれ起点として3つの窒素原子がエステル構造を含んでもよい直鎖状または環状の脂肪族炭化水素基を介して分岐点で結合した構造(1)を有していることを特徴とする。
また、本発明は、3つの窒素原子がエステル構造を含んでもよい直鎖状または環状の脂肪族炭化水素基を介して分岐点で結合した構造(1)を有するが、3つの窒素原子を介する分子鎖に含まれるエステル結合の個数は0〜5個であることが望ましい。5個以上あると保存安定性が充分に発現されないことがあり、このような観点からより好ましいエステルの個数は0〜2個であり、特に好ましくは0個である。
【0010】
本発明のエポキシ樹脂用潜在性硬化剤は少なくとも1つはウレア結合に含まれる3つの窒素原子がエステル構造を含んでもよい直鎖状または環状の脂肪族炭化水素基を介して分岐点で結合した構造(1)が同一ウレア構造に2つ窒素原子を共有する形で直結している構造を含む樹脂で被覆されていることを特徴としているが、3つの窒素原子のうちウレア結合を形成するもの以外の窒素原子は、ウレタン結合およびビウレット結合から選ばれるいずれかの結合を形成していることが硬化性と保存安定性を同時に発現するという観点から好ましい。
ここで、構造(1)に属する3つの窒素原子のうちウレア結合を形成するもの以外の窒素原子がウレタン結合およびビウレット結合から選ばれるいずれかの結合を形成している場合、通常、それらの結合を介して、構造(1)、構造(2)、または後述する活性水素化合物(b2)に由来する構造と結合している。
【0011】
構造(1)を例示すると、ウレア結合から5個のメチレン鎖を介して隣接する元素から順番に、分岐点たる1個の3級炭素、5個のメチレン鎖を経て当該窒素原子とは別の窒素原子に結合し、分岐点たる3級炭素には直接当該窒素原子とは別の窒素原子が結合している構造;
ウレア結合から4個のメチレン鎖を介して隣接する元素から順番に分岐点たる1個の3級炭素、3個のメチレン鎖を経て当該窒素原子とは別の窒素原子に結合し、分岐点たる3級炭素から1個のメチレン基を介して当該窒素原子とは別の窒素原子が結合している構造;
ウレア結合から3個のメチレン鎖を介して隣接する元素から順番に分岐点たる1個の3級炭素、2個のメチレン鎖を経て当該窒素原子とは別の窒素原子に結合し、分岐点たる3級炭素から直接当該窒素原子とは別の窒素原子が結合している構造;
ウレア結合から4個のメチレン鎖を介して隣接する元素から順番に分岐点たる1個の3級炭素、COO結合、1個のプロピレン基を経て当該窒素原子とは別の窒素原子に結合し、分岐点たる3級炭素から直接当該窒素原子とは別の窒素原子が結合している構造;
【0012】
ウレア結合からシクロヘキシル環を介して隣接する元素から順番に分岐点たる1個の3級炭素、シクロヘキシル環を経て当該窒素原子とは別の窒素原子に結合し、分岐点たる3級炭素からシクロヘキシル環を経て当該窒素原子とは別の窒素原子が結合している構造;
ウレア結合からビシクロヘプタン環を介して2つの当該窒素原子とは別の窒素原子が結合している構造;
ウレア結合から4個のメチレン鎖を介して隣接する元素から順番に分岐点たる1個の3級炭素、COO結合、2個のメチレン基を経て当該窒素原子とは別の窒素原子に結合し、分岐点たる3級炭素から直接当該窒素原子とは別の窒素原子が結合している構造;
等が例示されるが、ウレア結合から4個のメチレン鎖を介して隣接する元素から順番に分岐点たる1個の3級炭素、3個のメチレン鎖を経て当該窒素原子とは別の窒素原子に結合し、分岐点たる3級炭素から1個のメチレン基を介して当該窒素原子とは別の窒素原子が結合している構造;及び
ウレア結合から4個のメチレン鎖を介して隣接する元素から順番に分岐点たる1個の3級炭素、COO結合、2個のメチレン基を経て当該窒素原子とは別の窒素原子に結合し、分岐点たる3級炭素から直接当該窒素原子とは別の窒素原子が結合している構造;
が一液性エポキシ樹脂組成物の貯蔵安定性と硬化性のバランスの良さから一層好ましい。
【0013】
また、本発明のエポキシ樹脂用潜在性硬化剤は、少なくとも1つはウレア結合に含まれる3つの窒素原子がエステル構造を含んでもよい直鎖状または環状の脂肪族炭化水素基を介して分岐点で結合した構造(1)を含むことを特徴とするが、2つ以上の窒素原子に結合された芳香族炭化水素基(2)をさらに含んでいてもよい。
2つ以上の窒素原子に結合された芳香族炭化水素基(2)はベンゼン環に結合したメチル基に対してのオルト位に二つ、オルト位とメタ位に各一つ、メタ位に二つ、オルト位とパラ位に各一つ、又はメタ位とパラ位に各一つ、の窒素原子が結合している構造;
ベンゼン環上に二つの窒素が結合し、一の窒素が他の窒素に対してオルト位、メタ位、またはパラ位に結合している構造;
2つのベンゼン環がメチレン鎖を介して結合し、メチレン鎖に対してそれぞれのベンゼン環のオルト位、メタ位、またはパラ位に窒素が結合した構造;
などが例示できる。
構造(1)と2つ以上の窒素原子に結合された芳香族炭化水素基(2)の総量に対する当該芳香族炭化水素基(2)の割合が0.5質量%以下の場合、エポキシ樹脂を混合した時に得られるマスターバッチ保存安定性が低下することがあり、95質量%よりも大きいと本発明の効果が発揮されないことがある。このような観点から、構造(1)および構造(2)の総量に対する当該芳香族炭化水素基(2)の好ましい割合は0.5質量%以上95質量%以下であり、より好ましくは1質量%以上80質量%以下であり、より好ましくは5質量%以上70質量%以下である。
【0014】
また、当該エポキシ樹脂用潜在性硬化剤を被覆している樹脂の主成分はウレタン樹脂であることが望ましい。
そのようなウレタン樹脂はイソシアネート化合物と1分子中に1個以上の水酸基を有する化合物との反応により合成させることができる。
イソシアネート化合物としては、例えば、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート、脂肪族トリイソシアネート、ポリイソシアネートを挙げることができる。脂肪族ジイソシアネートの例としては、エチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等を挙げることができる。脂環式ジイソシアネートの例としては、イソホロンジイソシアネート、4−4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、1,4−イソシアナトシクロヘキサン、1,3−ビス(イソシアナトメチル)−シクロヘキサン、1,3−ビス(2−イソシアナトプロピル−2イル)−シクロヘキサン等を挙げることができる。芳香族ジイソシアネートの例としては、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート等を挙げることができる。脂肪族トリイソシアネートの例としては、1,3,6−トリイソシアネートメチルヘキサン、2,6−ジイソシアナトヘキサン酸−2−イソシアナトエチル等を挙げることができる。ポリイソシアネートとしては、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートや上記ジイソシアネート化合物より誘導されるポリイソシアネートが例示される。上記ジイソシアネートより誘導されるポリイソシアネートとしては、イソシアヌレート型ポリイソシアネート、ビュレット型ポリイソシアネート、ウレタン型ポリイソシアネート、アロハネート型ポリイソシアネート、カルボジイミド型ポリイソシアネート等がある。
【0015】
1分子中に1個以上の水酸基を有する化合物としては、アルコール化合物とフェノール化合物が例示される。アルコール化合物としては、メチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、アミルアルコール、ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、オクチルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ウンデシルアルコール、ラウリルアルコール、ドテシルアルコール、ステアリルアルコール、エイコシルアルコール、アリルアルコール、クロチルアルコール、プロパルギルアルコール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、べンジルアルコール、シンナミルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチル等のモノアルコール類、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、水添ビスフェノールA、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコール類を挙げることができる。また、1分子中に1個以上のエポキシ基を有する化合物と、1分子中に1個以上の水酸基、カルボキシル基、一級または二級アミノ基、メルカプト基を有する化合物との反応により得られる二級水酸基を1分子中に2個以上有する化合物も多価アルコール類として例示される。これらのアルコール化合物においては、第一、第二、または第三アルコールのいずれでもよい。フェノール化合物としては、石炭酸、クレゾール、キシレノール、カルバクロール、モチール、ナフトール等のモノフェノール類、カテコール、レゾルシン、ヒドロキノン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ピロガロール、フロログルシン等の多価フェノール類を挙げることができる。
【0016】
本発明のエポキシ樹脂用潜在性硬化剤は例えばエポキシ樹脂用硬化剤(A)をイソシアネート成分(b1)と活性水素化合物(b2)の反応により得られた皮膜で被覆することにより合成することができる
【0017】
エポキシ樹脂用硬化剤(A)としては、アミン系硬化剤、無水フタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、メチルナジック酸等の酸無水物系硬化剤、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ビスフェノールAノボラック等のフェノール系硬化剤、プロピレングリコール変性ポリメルカプタン、トリメチロールプロパンのチオグルコン酸エステル、ポリスルフィド樹脂等のメルカプタン系硬化剤、トリフルオロボランのエチルアミン塩等のハロゲン化ホウ素塩系、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−ウンデセン−7のフェノール塩等の四級アンモニウム塩系硬化剤、3−フェニル−1,1ジメチルウレア等の尿素系硬化剤、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート等のホスフィン系硬化剤等の化合物が例示され、アミン系硬化剤が低温硬化性と貯蔵安定性に優れており好ましい。
【0018】
アミン系硬化剤としては、一級、二級およびまたは三級アミノ基を有する化合物が挙げられる。これらは併用することができる。
一級アミノ基を有する化合物としては、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、メタキシレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、メタフェニレンジアミン等の一級アミン類、ジシアンジアミド、メチルグアニジン、エチルグアニジン、プロピルグアニジン、ブチルグアニジン、ジメチルグアニジン、トリメチルグアニジン、フェニルグアニジン、ジフェニルグアニジン、トルイルグアニジン等のグアニジン類、コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、フタル酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、p−オキシ安息香酸ヒドラジド、サリチル酸ヒドラジド、フェニルアミノプロピオン酸ヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド等の酸ヒドラジド類が例示される。
二級アミノ基を有する化合物としては、ピペリジン、ピロリジン、ジフェニルアミン、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール等が例示される。
【0019】
三級アミノ基を有する化合物としては、以下のものを挙げることができる。
(1)1−シアノエチル−2−ウンデシル−イミダゾール−トリメリテート、イミダゾリルコハク酸、2−メチルイミダゾールコハク酸、2−エチルイミダゾールコハク酸、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール等のイミダゾール類や、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、N,N’−ジメチルピペラジン、トリエチレンジアミン、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−ウンデセン−7、1,5−ジアザビシクロ(4,3,0)−ノネン−5、ピリジン、ピコリン等の低分子三級アミン類。
(2)少なくとも1個の一級アミノ基を有するが三級アミノ基を有さない化合物および/または少なくとも1個の二級アミノ基を有するが三級アミノ基を有さない化合物とエポキシ化合物との反応生成物(A−1)。
(3)少なくとも1個の活性水素基と三級アミノ基を共に有する化合物と、カルボン酸化合物、スルホン酸化合物、イソシアネート化合物、尿素化合物およびエポキシ化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種との反応生成物(A−2)。
【0020】
次に、反応生成物(A−1)の原料について説明する。
少なくとも1個の一級アミノ基を有するが三級アミノ基を有さない化合物としては、脂肪族第一アミン、脂環式第一アミン、芳香族第一アミンのいずれを用いてもよい。脂肪族第一アミンとしては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、エタノールアミン、プロパノールアミン等を挙げることができる。脂環式第一アミンとしては、例えばシクロヘキシルアミン、イソホロンジアミン等を挙げることができる。芳香族第一アミンとしては、例えば、アニリン、トルイジン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン等を挙げることができる。少なくとも1個の二級アミノ基を有するが三級アミノ基を有さない化合物としては、脂肪族第二アミン、脂環式第二アミン、芳香族第二アミン等のいずれを用いてもよい。脂肪族第二アミンとしては、例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジメタノールアミン、ジエタノールアミン、ジプロパノールアミン等を挙げることができる。脂環式第二アミンとしては、例えば、ジシクロヘキシルアミン、ピペリジン、ピペリドン等を挙げることができる。芳香族第二アミンとしては、例えば、ジフェニルアミン、フェニルメチルアミン、フェニルエチルアミン等を挙げることができる。
【0021】
反応生成物(A−1)の原料であるエポキシ化合物としては、モノエポキシ化合物、多価エポキシ化合物のいずれか又はそれらの混合物が用いられる。モノエポキシ化合物としては、ブチルグリシジルエーテル、ヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、パラ−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、パラキシリルグリシジルエーテル、グリシジルアセテート、グリシジルブチレート、グリシジルヘキソエート、グリシジルベンゾエート等を挙げることができる。
【0022】
多価エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールAD、テトラメチルビスフェノールS、テトラブロモビスフェノールA、テトラクロロビスフェノールA、テトラフルオロビスフェノールA等のビスフェノール類をグリシジル化したビスフェノール型エポキシ樹脂、ビフェノール、ジヒドロキシナフタレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン等のその他の2価フェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、4,4−(1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)フェニル)エチリデン)ビスフェノール等のトリスフェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂、1,1,2,2,−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン等のテトラキスフェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ビスフェノールAノボラック、臭素化フェノールノボラック、臭素化ビスフェノールAノボラック等のノボラック類をグリシジル化したノボラック型エポキシ樹脂等の多価フェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂、グリセリンやポリエチレングリコール等の多価アルコールをグリシジル化した脂肪族エーテル型エポキシ樹脂、p−オキシ安息香酸、β−オキシナフトエ酸等のヒドロキシカルボン酸をグリシジル化したエーテルエステル型エポキシ樹脂、フタル酸、テレフタル酸のようなポリカルボン酸をグリシジル化したエステル型エポキシ樹脂、4,4−ジアミノジフェニルメタンやm−アミノフェノール等のアミン化合物のグリシジル化物やトリグリシジルイソシアヌレート等のアミン型エポキシ樹脂、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート等の脂環族エポキサイド等が例示される。
【0023】
反応生成物(A−1)の原料としてのエポキシ化合物は、得られる硬化物の接着性や耐熱性が優れるため、多価エポキシ化合物が好ましく、より好ましくは多価フェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂であり、更に好ましくはビスフェノール型エポキシ樹脂である。反応生成物(A−1)の得やすさから、ビスフェノールAのグリシジル化物とビスフェノールFのグリシジル化物が一層好ましい。ビスフェノールAのグリシジル化物が更に一層好ましい。
エポキシ化合物は、通常、分子内に塩素が結合した不純末端を有する。反応生成物(A−1)の原料としてのエポキシ化合物中の全塩素量は、硬化物の電気的な特性が優れるため、2000ppm未満が好ましい。更に好ましくは1500ppm未満、一層好ましくは1000ppm未満、更に一層好ましくは500ppm未満である。
【0024】
次に、反応生成物(A−2)の原料について説明する。
反応生成物(A−2)の原料として用いられる、少なくとも1個の活性水素基と三級アミノ基を共に有する化合物において、活性水素基としては一級アミノ基、二級アミノ基、水酸基、チオール基、カルボン酸、ヒドラジド基が例示される。少なくとも1個の活性水素基と三級アミノ基を共に有する化合物としては、例えば、2−ジメチルアミノエタノール、1−メチル−2−ジメチルアミノエタノール、1−フェノキシメチル−2−ジメチルアミノエタノール、2−ジエチルアミノエタノール、1−ブトキシメチル−2−ジメチルアミノエタノール、メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−β−ヒドロキシエチルモルホリン等のアミノアルコール類、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等のアミノフェノール類、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、1−アミノエチル−2−メチルイミダゾール、1−(2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル)−2−メチルイミダゾール、1−(2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−(2−ヒドロキシ−3−ブトキシプロピル)−2−メチルイミダゾール、1−(2−ヒドロキシ−3−ブトキシプロピル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール類、1−(2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル)−2−フェニルイミダゾリン、1−(2−ヒドロキシ−3−ブトキシプロピル)−2−メチルイミダゾリン、2−メチルイミダゾリン、2,4−ジメチルイミダゾリン、2−エチルイミダゾリン、2−エチル−4−メチルイミダゾリン、2−ベンジルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリン、2−(o−トリル)−イミダゾリン、テトラメチレン−ビス−イミダゾリン、1,1,3−トリメチル−1,4―テトラメチレン−ビス−イミダゾリン、1,3,3−トリメチル−1,4―テトラメチレン−ビス−イミダゾリン、1,1,3−トリメチル−1,4―テトラメチレン−ビス−4−メチルイミダゾリン、1,3,3−トリメチル−1,4―テトラメチレン−ビス−4−メチルイミダゾリン、1,2−フェニレン−ビス−イミダゾリン、1,3−フェニレン−ビス−イミダゾリン、1,4−フェニレン−ビス−イミダゾリン、1,4−フェニレン−ビス−4−メチルイミダゾリン等のイミダゾリン類、ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ジプロピルアミノプロピルアミン、ジブチルアミノプロピルアミン、ジメチルアミノエチルアミン、ジエチルアミノエチルアミン、ジプロピルアミノエチルアミン、ジブチルアミノエチルアミン、N−メチルピペラジン、N−アミノエチルピペラジン、ジエチルアミノエチルピペラジン等の三級アミノアミン類、2−ジメチルアミノエタンチオール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトピリジン、4−メルカプトピリジン等のアミノメルカプタン類、N,N−ジメチルアミノ安息香酸、N,N−ジメチルグリシン、ニコチン酸、イソニコチン酸、ピコリン酸等のアミノカルボン酸類、N,N−ジメチルグリシンヒドラジド、ニコチン酸ヒドラジド、イソニコチン酸ヒドラジド等のアミノヒドラジド類を挙げることができる。
更に、反応生成物(A−1)も水酸基と三級アミノ基を有する化合物として反応生成物(A−2)の原料として使用できる。
【0025】
分子中に少なくとも1個の活性水素基と三級アミノ基を共に有する化合物としては、貯蔵安定性と硬化性のバランスが優れているので、反応生成物(A−1)とイミダゾール類が好ましい。イミダゾール類が更に好ましく、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾールが一層好ましい。
反応生成物(A−2)の原料として用いられる、カルボン酸化合物、スルホン酸化合物、イソシアネート化合物、尿素化合物およびエポキシ化合物を下記に示す。
カルボン酸化合物としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、ダイマー酸等が挙げられる。
スルホン酸化合物としては、例えば、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等が挙げられる。
イソシアネート化合物としては、例えば、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート、脂肪族トリイソシアネート、ポリイソシアネートを挙げることができる。脂肪族ジイソシアネートの例としては、エチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等を挙げることができる。脂環式ジイソシアネートの例としては、イソホロンジイソシアネート、4−4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、1,4−イソシアナトシクロヘキサン、1,3−ビス(イソシアナトメチル)−シクロヘキサン、1,3−ビス(2−イソシアナトプロピル−2イル)−シクロヘキサン等を挙げることができる。芳香族ジイソシアネートの例としては、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート等を挙げることができる。脂肪族トリイソシアネートの例としては、1,3,6−トリイソシアネートメチルヘキサン、2,6−ジイソシアナトヘキサン酸−2−イソシアナトエチル等を挙げることができる。ポリイソシアネートとしては、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートや上記ジイソシアネート化合物より誘導されるポリイソシアネートが例示される。上記ジイソシアネートより誘導されるポリイソシアネートとしては、イソシアヌレート型ポリイソシアネート、ビュレット型ポリイソシアネート、ウレタン型ポリイソシアネート、アロハネート型ポリイソシアネート、カルボジイミド型ポリイソシアネート等がある。
【0026】
尿素化合物としては、例えば、尿素、メチル尿素、ジメチル尿素、エチル尿素、t−ブチル尿素等が挙げられる。
エポキシ化合物としては、反応生成物(A−1)の原料として例示したエポキシ化合物が挙げられる。
反応生成物(A−2)の原料であるカルボン酸化合物、スルホン酸化合物、イソシアネート化合物、尿素化合物およびエポキシ化合物からなる群の中で、得られる硬化物の接着性や耐熱性等の性能が優れているため、エポキシ化合物が好ましい。多価エポキシ化合物がより好ましく、更に好ましくは多価フェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂であり、一層好ましくはビスフェノール型エポキシ樹脂である。反応生成物(A−1)の得やすさから、ビスフェノールAのグリシジル化物とビスフェノールFのグリシジル化物が更に一層好ましい。ビスフェノールAのグリシジル化物が特に好ましい。
【0027】
エポキシ化合物は、通常、分子内に塩素が結合した不純末端を有する。反応生成物(A−2)の原料としてのエポキシ化合物中の全塩素量は、硬化物の電気的な特性が優れるため、2000ppm未満が好ましい。更に好ましくは1500ppm未満、一層好ましくは1000ppm未満、更に一層好ましくは500ppm未満である。
反応生成物(A−2)を得るときに第3成分として1分子内に活性水素を2個以上有する化合物をその原料として併用することができる。1分子内に活性水素を2個以上有する化合物としては、特に制限はないが例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、エタノールアミン、ジメタノールアミン、ジエタノールアミン、ジプロパノールアミン、メタキシレンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、イソホロンジアミン、ジアミノシクロヘキサン、フェニレンジアミン、トルイレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ピペラジン等のアミン類、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ヒドロキノン、カテコール、レゾルシノール、ピロガロール、フェノールノボラック樹脂等の多価フェノール類、トリメチロールプロパン等の多価アルコール類、アジピン酸、フタル酸等の多価カルボン酸類、1,2−ジメルカプトエタン、2−メルカプトエタノール、1−メルカプト−3−フェノキシ−2−プロパノール、メルカプト酢酸、アントラニル酸、乳酸等を挙げることができる。これらは併用してもよい。
【0028】
更に反応生成物(A−2)は、分子中に一個の一級または二級アミノ基を有する化合物をその原料として併用することができる。その例としては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、シクロヘキシルアミン、アニリン、トルイジン等の分子中に一個の一級アミノ基を有する化合物、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジフェニルアミン、フェニルメチルアミン、フェニルエチルアミンの等の二級アミノ基を有する化合物を挙げることができる。これらは併用してもよい。
【0029】
反応生成物(A−1)および反応生成物(A−2)は、例えば、原料を一括あるいは分割して混合し、必要に応じ溶剤の存在下、通常、40〜250℃の温度範囲で0.1〜24時間に反応が行われ、必要に応じ未反応の原料と溶剤を除去することにより得ることができる。
原料の比率は、反応生成物(A−1)を得る場合は、分子中に少なくとも1個の一級アミノ基を有するが三級アミノ基を有さない化合物および/または少なくとも1個の二級アミノ基を有するが三級アミノ基を有さない化合物中の一級アミノ基および二級アミノ基の合計とエポキシ化合物中のエポキシ基の比率が当量比で1/5〜5/1の範囲内にあることが好ましい。反応生成物(A−2)を得る場合は、少なくとも1個の活性水素基と三級アミノ基を共に有する化合物中の活性水素基と、カルボン酸化合物、スルホン酸化合物、イソシアネート化合物、尿素化合物および/またはエポキシ化合物中の、カルボン酸、スルホン酸、イソシアネート基、尿素基およびエポキシ基の合計との比率が当量比で1/5〜5/1の範囲が好ましい。
【0030】
ここで必要に応じ用いられる溶剤としては、特別に制限するものではないが、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、ミネラルスピリット、ナフサ等の炭化水素類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸−n−ブチル、プロピレングリコールモノメチルエチルエーテルアセテート等のエステル類、メタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、ブチルセロソルブ、ブチルカルビトール等のアルコール類、水、等であり、これらの溶剤は併用してもよい。
【0031】
本発明に用いられるアミン系のエポキシ樹脂用硬化剤(A)としては、硬化性と貯蔵安定性に優れるため、三級アミノ基を有するアミン系化合物が好ましい。更に好ましくは反応生成物(A−1)と反応生成物(A−2)である。一層好ましくは反応生成物(A−2)、更に一層好ましくは、三級アミノ基を有するが一級および/または二級アミノ基を有さない反応生成物(A−2)である。
エポキシ樹脂用硬化剤(A)の形態としては液状、塊状、顆粒状、粉末状、などが挙げられるが、好ましくは顆粒状または粉末状であり、さらに好ましくは粉末状である。本願において粉末状とは、特別に制限するものではないが、0.1〜50μmの平均粒径が好ましく、さらに好ましくは0.5〜10μmの平均粒径である。50μm以下にすることで、均質な硬化物を得ることができる。本発明でいう粒径とは、光散乱法で測定されるストークス径を指すものである。また平均粒径は、メディアン径を指すものである。また、その形状は特に制限は無く、球状、不定形いずれでも良く、マスターバッチあるいは一液性エポキシ樹脂組成物の低粘度化のためには、球状が好ましい。ここで球状とは、真球は勿論の事、不定形の角が丸みを帯びた形状をも包含する。
【0032】
次に、イソシアネート成分(b1)について説明する。
本発明に用いられるイソシアネート成分(b1)は、その20質量%以上が低分子ポリイソシアネート化合物である。
低分子ポリイソシアネート化合物は、イソシアネート基を3つ以上有し、分子量分布を持たない化合物であり、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、1,8−ジイソシアネート−4−イソシアネートメチルオクタン、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート、2,6−ジイソシアナトヘキサン酸−2−イソシアナトエチル、2,6−ジイソシアナトヘキサン酸−1−メチル−2−イソシアネートエチル等の脂肪族低分子ポリイソシアネート化合物、トリシクロヘキシルメタントリイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート等の脂環式低分子ポリイソシアネート化合物が例示される。低分子ポリイソシアネート化合物としては、得られる一液性エポキシ樹脂組成物の貯蔵安定性と硬化性のバランスの良さから、脂肪族低分子ポリイソシアネート化合物が好ましく、工業的な入手の容易さから1,8−ジイソシアネート−4−イソシアネートメチルオクタンと2,6−ジイソシアナトヘキサン酸−2−イソシアナトエチルが更に好ましく、2,6−ジイソシアナトヘキサン酸−2−イソシアナトエチルが一層好ましい。
「分子量分布を持たない」とは実施例に記載の方法により測定されたGPCにおいて、主成分のピークが70%以上含むものを意味する。
また、低分子とは実施例に記載の方法により測定されたGPCにより求められる数平均分子量が2000以下のものを意味する。
【0033】
イソシアネート成分(b1)としては、低分子ポリイソシアネート化合物以外にその他のイソシアネート化合物を併用することができる。その他のイソシアネート化合物としては、例えば、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネートおよびポリイソシアネート等を挙げることができる。脂肪族ジイソシアネートの例としては、エチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等を挙げることができる。脂環式ジイソシアネートの例としては、イソホロンジイソシアネート、4−4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、1,4−イソシアナトシクロヘキサン、1,3−ビス(イソシアナトメチル)−シクロヘキサン、1,3−ビス(2−イソシアナトプロピル−2イル)−シクロヘキサン等を挙げることができる。芳香族ジイソシアネートの例としては、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート等を挙げることができる。ポリイソシアネートとしては、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート等のポリメリックイソシアネートや上記ジイソシアネート、低分子ポリイソシアネート化合物より誘導されるポリイソシアネートが例示される。上記ジイソシアネートや低分子ポリイソシアネート化合物より誘導されるポリイソシアネートとしては、イソシアヌレート型ポリイソシアネート、ビュレット型ポリイソシアネート、ウレタン型ポリイソシアネート、アロハネート型ポリイソシアネート、カルボジイミド型ポリイソシアネート等が例示される。
【0034】
その他のイソシアネート化合物を併用することにより、一液性エポキシ樹脂組成物に本発明の潜在性硬化剤を混合する時、あるいはマスターバッチ型硬化剤を製造する時の分散性を高める事ができ、潜在性硬化剤の2次凝集を抑制することができる。その点において、その他のイソシアネート化合物としては、芳香族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネートおよびポリメリックイソシアネートが好ましく、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートが更に好ましい。
イソシアネート成分(b1)に占める低分子ポリイソシアネート化合物の量は、貯蔵安定性と硬化性が共に優れるために20質量%以上必要である。好ましくは、20質量%以上99質量%未満であり、更に好ましくは30質量%以上95質量%未満、一層好ましくは40質量%以上90質量%未満である。
【0035】
本発明に用いられる活性水素化合物(b2)としては、水、1分子中に1個以上の一級および/または二級アミノ基を有する化合物、1分子中に1個以上の水酸基を有する化合物が例示される。水および1分子中に1個以上の水酸基を有する化合物が好ましい。これらは併用する事もできる。
活性水素化合物(b2)として用いられる1分子中に1個以上の一級および/または二級アミノ基を有する化合物としては、脂肪族アミン、脂環式アミン、芳香族アミンを使用することができる。脂肪族アミンの例としては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン等のアルキルアミン;エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等のアルキレンジアミン;ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等のポリアルキレンポリアミン;ポリオキシプロピレンジアミン、ポリオキシエチレンジアミン等のポリオキシアルキレンポリアミン類等を挙げることができる。脂環式アミンの例としては、シクロプロピルアミン、シクロブチルアミン、シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミン、イソホロンジアミン等を挙げることができる。芳香族アミンとしては、アニリン、トルイジン、べンジルアミン、ナフチルアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン等を挙げることができる。
【0036】
活性水素化合物(b2)として用いられる1分子中に1個以上の水酸基を有する化合物としては、アルコール化合物とフェノール化合物が例示される。アルコール化合物としては、メチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、アミルアルコール、ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、オクチルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ウンデシルアルコール、ラウリルアルコール、ドテシルアルコール、ステアリルアルコール、エイコシルアルコール、アリルアルコール、クロチルアルコール、プロパルギルアルコール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、べンジルアルコール、シンナミルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチル等のモノアルコール類;エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、水添ビスフェノールA、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコール類を挙げることができる。また、1分子中に1個以上のエポキシ基を有する化合物と、1分子中に1個以上の水酸基、カルボキシル基、一級または二級アミノ基、メルカプト基を有する化合物との反応により得られる二級水酸基を1分子中に2個以上有する化合物も多価アルコール類として例示される。これらのアルコール化合物においては、第一、第二、または第三アルコールのいずれでもよい。フェノール化合物としては、石炭酸、クレゾール、キシレノール、カルバクロール、モチール、ナフトール等のモノフェノール類、カテコール、レゾルシン、ヒドロキノン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ピロガロール、フロログルシン等の多価フェノール類を挙げることができる。これら1分子中に1個以上の水酸基を有する化合物としては、多価アルコール類や多価フェノール類等が好ましい。多価アルコール類が更に好ましい。
【0037】
イソシアネート成分(b1)と活性水素化合物(b2)の反応は、通常−10℃〜150℃の温度範囲で、10分〜12時間の反応時間で行われる。反応温度が−10℃よりも低いと反応の進行が遅く経済的ではなく、150℃以上では反応が速すぎて安全面で好ましくない。このような観点から、好ましい反応温度は30℃〜120℃、より好ましくは50℃〜100℃である。必要により分散媒中で行なうことができる。分散媒としては、溶媒、可塑剤、樹脂類等が例示される。溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、ミネラルスピリット、ナフサ等の炭化水素類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸−n−ブチル、プロピレングリコールモノメチルエチルエーテルアセテート等のエステル類、メタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、ブチルセロソルブ、ブチルカルビトール等のアルコール類、水、等が例示される。可塑剤としては、フタル酸ジブチル、フタル酸ジ(2−エチルヘキシシル)等のフタル酸ジエステル系、アジピン酸ジ(2−エチルヘキシシル)等の脂肪族二塩基酸エステル系、リン酸トリクレジル等のリン酸トリエステル系、ポリエチレングリコールエステル等のグリコールエステル系等が例示される。樹脂類としては、シリコーン樹脂類、エポキシ樹脂類、フェノール樹脂類等が例示される。
イソシアネート成分(b1)と活性水素化合物(b2)との量比は、特に制限は無いが通常、イソシアネート成分(b1)中のイソシアネート基と活性水素化合物(b2)中の活性水素との当量比が1:0.1〜1:1000の範囲で用いられる。
【0038】
イソシアネート成分(b1)と活性水素化合物(b2)との反応物で、エポキシ樹脂用硬化剤(A)を被覆する方法としては、得られた反応物を溶解し、エポキシ樹脂用硬化剤(A)を分散させた液体中で反応物の溶解度を下げて、エポキシ樹脂用硬化剤(A)の表面に析出させる方法、エポキシ樹脂用硬化剤(A)が分散媒中に分散した状態での存在下に、イソシアネート成分(b1)と活性水素化合物(b2)とを反応させて、反応物をエポキシ樹脂用硬化剤(A)の表面に析出させる、あるいはエポキシ樹脂用硬化剤(A)の表面を反応の場とし、そこで反応物を生成させる方法等が挙げられる。後者の方法が反応と被覆を同時に行なうことができ好ましい。
得られた皮膜は、波数1630cm−1〜1680cm−1の赤外線を吸収する結合基(x)を有する事が好ましい。結合基(x)としては、ウレア結合が特に好ましい。更に、得られた皮膜は、1680〜1725cm−1の赤外線を吸収する結合基(y)、および/または、波数が1730〜1755cm−1の赤外線を吸収する結合基(z)を有することが好ましい。結合基(y)としてはビュレット結合が、結合基(z)としてはウレタン結合が特に好ましい。
このウレア結合、ビュレット結合はイソシアネート化合物と水および/または1分子中に1個以上の一級および/または二級アミノ基を有するアミン化合物との反応により生成される。また、ウレタン結合は、イソシアネート化合物と1分子中に1個以上の水酸基を有する化合物との反応により生成される。
【0039】
得られた被膜のTgは−20℃以上100℃以下であることが好ましい。−20℃以下では安定性が充分に発揮されないことがあり、80℃以上であると硬化性が低下することがある。そのような観点から、好ましくは0℃以上80℃以下、より好ましくは10℃以上60℃以下、特に好ましくは20℃以上50℃以下であることが望ましい。
【0040】
本発明の潜在性硬化剤は、次に説明するコアシェル型硬化剤にすることで、更に高い貯蔵安定性が得られ、好ましい。
本発明のエポキシ樹脂用コアシェル型硬化剤は、本発明のエポキシ樹脂用潜在性硬化剤をコアとし、エポキシ樹脂用硬化剤(A)とエポキシ樹脂(C)の反応生成物をシェルとした硬化剤である。
本発明に用いられるエポキシ樹脂(C)としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールAD、テトラメチルビスフェノールS、テトラブロモビスフェノールA、テトラクロロビスフェノールA、テトラフルオロビスフェノールA等のビスフェノール類をグリシジル化したビスフェノール型エポキシ樹脂、ビフェノール、ジヒドロキシナフタレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン等のその他の2価フェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、4,4−(1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)フェニル)エチリデン)ビスフェノール等のトリスフェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂、1,1,2,2,−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン等のテトラキスフェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ビスフェノールAノボラック、臭素化フェノールノボラック、臭素化ビスフェノールAノボラック等のノボラック類をグリシジル化したノボラック型エポキシ樹脂、グリセリンやポリエチレングリコール等の多価アルコールをグリシジル化した脂肪族エーテル型エポキシ樹脂、p−オキシ安息香酸、β−オキシナフトエ酸等のヒドロキシカルボン酸をグリシジル化したエーテルエステル型エポキシ樹脂、フタル酸、テレフタル酸のようなポリカルボン酸をグリシジル化したエステル型エポキシ樹脂、4,4−ジアミノジフェニルメタンやm−アミノフェノール等のアミン化合物のグリシジル化物やトリグリシジルイソシアヌレート等のアミン型エポキシ樹脂、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート等の脂環族エポキサイド等が例示される。
これらエポキシ樹脂は単独で使用しても併用してもよい。
【0041】
エポキシ樹脂(C)としては、得られる硬化物の接着性や耐熱性が優れるため、多価フェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂が好ましく、更に好ましくはビスフェノール型エポキシ樹脂である。ビスフェノールAのグリシジル化物とビスフェノールFのグリシジル化物が一層好ましい。ビスフェノールAのグリシジル化物が更に一層好ましい。
エポキシ化合物は、通常、分子内に塩素が結合した不純末端を有する。反応生成物(A−1)の原料としてのエポキシ化合物中の全塩素量は、硬化物の電気的な特性が優れるため、2000ppm未満が好ましい。更に好ましくは1500ppm未満、一層好ましくは1000ppm未満、更に一層好ましくは500ppm未満である。
エポキシ樹脂用硬化剤(A)とエポキシ樹脂(C)との反応は、通常−10℃〜150℃、好ましくは0℃〜100℃の温度範囲で、1〜168時間、好ましくは2時間〜72時間の反応時間で行われ、分散媒中で行なうこともできる。分散媒としては、溶媒、可塑剤等が例示される。
【0042】
溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、ミネラルスピリット、ナフサ等の炭化水素類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸−n−ブチル、プロピレングリコールモノメチルエチルエーテルアセテート等のエステル類、メタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、ブチルセロソルブ、ブチルカルビトール等のアルコール類、水、等が例示される。可塑剤としては、フタル酸ジブチル、フタル酸ジ(2−エチルヘキシシル)等のフタル酸ジエステル系、アジピン酸ジ(2−エチルヘキシシル)等の脂肪族二塩基酸エステル系、リン酸トリクレジル等のリン酸トリエステル系、ポリエチレングリコールエステル等のグリコールエステル系等が例示される。
エポキシ樹脂用硬化剤(A)とエポキシ樹脂(C)とを反応させる時の量比は、特に制限は無いが通常、質量比で1:0.001〜1:1000の範囲、好ましくは1:0.01〜1:100の範囲で用いられる。
エポキシ樹脂用硬化剤(A)とエポキシ樹脂(C)との反応生成物からなるシェル(以下、本シェルと称す)で、本発明の潜在性硬化剤からなるコア(以下、本コアと称す)を被覆する方法としては、本シェルを溶解し、本コアを分散させた分散媒中で本シェルの溶解度を下げて、本コアの表面に析出させる方法、本コアをエポキシ樹脂(C)および/またはエポキシ樹脂(C)が溶解した分散媒に分散した後、エポキシ樹脂用硬化剤(A)とエポキシ樹脂(C)とを反応させて、本シェルを本コアの表面に析出させる、あるいは本コアの表面を反応の場として、そこで本シェルを生成させる方法等が挙げられる。後者の方法が反応と被覆を同時に行なうことができ好ましい。
また、後者の場合、エポキシ樹脂用硬化剤(A)は、本コア中のエポキシ樹脂用硬化剤(A)を使用しても構わないし、別途添加しても構わない。
本コアの表面を覆う本シェルの厚みは、平均層厚で5〜1000nmが好ましい。5nm以上で貯蔵安定性が得られ、1000nm以下で、実用的な硬化性が得られる。ここでいう層の厚みは、透過型電子顕微鏡により観察される。特に好ましいシェルの厚みは、平均層厚で10〜100nmである。
【0043】
本発明の潜在性硬化剤および/またはコアシェル型硬化剤を次に説明するマスターバッチ型硬化剤にすることで、一液性エポキシ樹脂組成物を得る時に、エポキシ樹脂との混合が容易になり好ましい。
本発明のエポキシ樹脂用マスターバッチ型硬化剤は、本発明の潜在性硬化剤および/またはコアシェル型硬化剤100質量部に対して、10〜50,000質量部(好ましくは20〜20,000質量部)のエポキシ樹脂(C)を含む。エポキシ樹脂(C)が10質量部以上で取り扱いが容易なマスターバッチ型硬化剤が得られ、50,000質量部以下で実質的に硬化剤としての性能を発揮する。
【0044】
本発明のマスターバッチ型硬化剤を製造する方法として、先に製造された本発明の潜在性硬化剤および/またはコアシェル型硬化剤を、例えば、三本ロール等を用いてエポキシ樹脂(C)中に分散させる方法や、エポキシ樹脂(C)の中で潜在性硬化剤および/またはコアシェル型硬化剤の生成反応を行い、潜在性硬化剤および/またはコアシェル型硬化剤を得ると同時に、マスターバッチ型硬化剤を得る方法等が例示される。後者が、生産性が高く好ましい。
本発明のマスターバッチ型硬化剤は室温で液状又はペースト状が好ましい。より好ましくは、25℃での粘度が50万mPa・s以下、更に好ましくは、1000〜30万mPa・s、一層好ましくは3000〜20万mPa・sである。
粘度が50万mPa・s以下で作業性が高く、容器への付着量を下げて廃棄物の低減が可能であり好ましい。
本発明のマスターバッチ型硬化剤は、本発明の潜在性硬化剤および/またはコアシェル型硬化剤とエポキシ樹脂(C)より構成されるが、その機能を低下させない範囲で、その他の成分を含有することができる。その他の成分の含有量は、好ましくは30質量%未満である。
【0045】
エポキシ樹脂(D)に、本発明の潜在性硬化剤、コアシェル型硬化剤、および/またはマスターバッチ型硬化剤(以下本硬化剤と称す)を混合することにより一液性エポキシ樹脂組成物が得られる。
本発明の一液性エポキシ樹脂組成物に用いられるエポキシ樹脂(D)は、平均して1分子当たり2個以上のエポキシ基を有するものであればよい。
例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールAD、テトラメチルビスフェノールS、テトラブロモビスフェノールA、テトラクロロビスフェノールA、テトラフルオロビスフェノールA等のビスフェノール類をグリシジル化したビスフェノール型エポキシ樹脂、ビフェノール、ジヒドロキシナフタレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン等のその他の2価フェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、4,4−(1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)フェニル)エチリデン)ビスフェノール等のトリスフェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂、1,1,2,2,−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン等のテトラキスフェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ビスフェノールAノボラック、臭素化フェノールノボラック、臭素化ビスフェノールAノボラック等のノボラック類をグリシジル化したノボラック型エポキシ樹脂、グリセリンやポリエチレングリコールのような多価アルコールをグリシジル化した脂肪族エーテル型エポキシ樹脂、p−オキシ安息香酸、β−オキシナフトエ酸のようなヒドロキシカルボン酸をグリシジル化したエーテルエステル型エポキシ樹脂、フタル酸、テレフタル酸のようなポリカルボン酸をグリシジル化したエステル型エポキシ樹脂、4,4−ジアミノジフェニルメタンやm−アミノフェノール等のアミン化合物のグリシジル化物やトリグリシジルイソシアヌレート等のアミン型エポキシ樹脂、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート等の脂環族エポキサイド等が例示される。
また、本発明に用いられるエポキシ樹脂(D)は、エポキシ樹脂の高分子量体で、自己成膜性を有する一般にフェノキシ樹脂と呼ばれる樹脂をも包含される。
【0046】
本硬化剤とエポキシ樹脂(D)の混合比は、硬化性、硬化物の特性の面から決定されるものであるが、好ましくはエポキシ樹脂(D)100質量部に対して、本硬化剤0.1〜1000質量部を用いればよい。より好ましくは、0.2〜500質量部、更に好ましくは、0.5〜200質量部である。0.1質量部以上で実用的に満足し得る硬化性能を得ることができ、1000質量部以下で、潜在性硬化剤および/またはコアシェル型硬化剤が偏在することなく、バランスの良い硬化性能を有する硬化剤を与える。
本発明の一液性エポキシ樹脂組成物は、本発明のマスターバッチ型硬化剤以外に硬化剤(E)をさらに含んでもよい。
硬化剤(E)は、酸無水物類、フェノール類、ヒドラジド類およびグアニジン類より成る群より選ばれる。複数を併用することもできる。
酸無水物類としては、例えば、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水−3−クロロフタル酸、無水−4−クロロフタル酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸、無水コハク酸、無水メチルコハク酸、無水ジメチルコハク酸、無水ジクロールコハク酸、メチルナジック酸、ドテシルコハク酸、無水クロレンデックク酸、無水マレイン酸等、フェノール類としては、例えば、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ビスフェノールAノボラック等、ヒドラジン類としては、例えば、コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、フタル酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジドテレフタル酸ジヒドラジド、p−オキシ安息香酸ヒドラジド、サリチル酸ヒドラジド、フェニルアミノプロピオン酸ヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド等、グアニジン類としては、例えば、ジシアンジアミド、メチルグアニジン、エチルグアニジン、プロピルグアニジン、ブチルグアニジン、ジメチルグアニジン、トリメチルグアニジン、フェニルグアニジン、ジフェニルグアニジン、トルイルグアニジン等が例示される。
硬化剤(E)として好ましいのは、グアニジン類および酸無水物類である。さらに好ましくは、ジシアンジアミド、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水メチルテトラヒドロフタル酸、無水メチルナジック酸である。
【0047】
硬化剤(E)を使用する場合、エポキシ樹脂(D)100質量部に対して、硬化剤(E)を1〜200質量部、本硬化剤を0.1〜200質量部用いるのが好ましい。
この範囲で用いる事で硬化性と貯蔵安定性に優れた組成物を与え、耐熱性、耐水性に優れた硬化物を得ることができる。
本硬化剤を用いて一液性エポキシ樹脂組成物を製造する場合には、所望によって、増量剤、補強材、充填材、導電微粒子、顔料、有機溶剤、反応性希釈剤、非反応性希釈剤、樹脂類、カップリング剤等を添加することができる。充填剤の例としては、例えば、コールタール、ガラス繊維、アスベスト繊維、ほう素繊維、炭素繊維、セルロース、ポリエチレン粉、ポリプロピレン粉、石英紛、鉱物性けい酸塩、雲母、アスベスト粉、スレート粉、カオリン、酸化アルミニウム三水和物、水酸化アルミニュウム、チョーク粉、石こう、炭酸カルシウム、三酸化アンチモン、ペントン、シリカ、エアロゾル、リトポン、バライト、二酸化チタン、カーボンブラック、グラファイト、酸化鉄、金、アルミニウム粉、鉄粉等を挙げることができ、これらはいずれもその用途に応じて有効に用いられる。有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル等が挙げられる。反応性希釈剤としては、例えば、ブチルグリシジルエーテル、N,N’−グリシジル−o−トルイジン、フェニルグリシジルエーテル、スチレンオキサイド、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル等が挙げられる。非反応性希釈剤としては、例えば、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジオクチルアジペート、石油系溶剤等が挙げられる。樹脂類としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエーテル樹脂、メラミン樹脂やウレタン変性エポキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂、アルキッド変性エポキシ樹脂等の変性エポキシ樹脂が挙げられる。
【0048】
本発明の一液性エポキシ樹脂組成物は、本硬化剤とエポキシ樹脂(D)および必要に応じ硬化剤(E)が主成分である。本発明の一液性エポキシ樹脂組成物は加熱により硬化することで所望の性能が発現されるが、ここで言う主成分とは、加熱による硬化反応の主体をなす成分である事を意味し、加熱硬化性成分(組成物から硬化に関与しない、すなわち反応せず、また反応を促進、遅延する効果も極めて小さい下記に例示されるような成分を除いた成分の合計)の60%以上である事が好ましい。更に好ましくは70%以上である。
一液性エポキシ樹脂組成物の内、硬化に関与しない成分としては、例えば、増量剤、補強材、充填材、導電粒子、顔料、有機溶剤、樹脂類等が挙げられるが、これらの成分は一液性エポキシ樹脂組成物全体に対して0〜90質量%の範囲で使用されるのが好ましい。
【0049】
本発明の一液性エポキシ樹脂組成物は、接着剤、封止材、充填材料、絶縁材料、導電材料、異方導電材料、シール材料、プリプレグ等として有用である。接着剤としては、液状接着剤やフィルム状接着剤、ダイボンディング材等として有用である。封止材としては、固形封止材や液状封止材、フィルム状封止材等として有用であり、液状封止材としては、アンダーフィル材、ポッティング材、ダム材等として有用である。絶縁材料としては、絶縁接着フィルム、絶縁接着ペースト、ソルダーレジスト等として、導電材料としては導電フィルム、導電ペースト等として、異方導電材料としては、異方導電性フィルム、異方導電性ペースト等として有用である。
導電材料や異方導電材料として用いる場合は、本発明の一液性エポキシ樹脂組成物に導電粒子を分散させて用いられる。導電粒子としては半田粒子、ニッケル粒子、銅と銀の傾斜粒子等の金属粒子や例えば、スチレン樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂等の樹脂粒子に金、ニッケル、銀、銅、半田などの導電性薄膜で被覆を施した粒子等が使用される。一般に導電粒子は1〜20μm程度の球形の微粒子である。フィルムにする場合は、一液性エポキシ樹脂組成物に溶剤を配合し、例えば、ポリエステル、ポリエチレン、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン等の基材に塗布後溶剤を乾燥させる方法等がある。
絶縁材料や封止材として用いる場合は、本発明の一液性組成物に、シリカ等のフィラーを充填剤として添加する。フィルムにする場合は、一液性エポキシ樹脂組成物に溶剤を配合し、ポリエステル等の基材に塗布後溶剤を乾燥させる方法等がある。
【実施例】
【0050】
本発明を実施例に基づき更に詳しく説明するが、本発明の技術範囲およびその実施態様はこれらに限定されるものではない。実施例及び比較例中の「部」または「%」は特記しない限り質量基準である。
以下に述べる手法により、本実施例および比較例に係る樹脂およびその硬化物の物性評価試験を行った。
(1)エポキシ当量
1当量のエポキシ基を含むエポキシ樹脂の質量(g)であり、JIS K−7236に準拠して求めた。
(2)ゲルタイム
(株)テイ・エスエンジニアリング社製のキュラストメーターVを使用し熱板上のストロークキュア法により求めた。
(3)FT−IR測定
日本分光(株)社製FT/IR−660Plusを使用し吸光度を測定した。
(4)マスターバッチ型硬化剤中の潜在性硬化剤の分散性
マスターバッチ型硬化剤にトルエンを不揮発分が90%となる様に混合し、25℃で1時間静置した。これをガラス板上に膜厚20μで塗布し、凝集物による塗膜のハジキ数を数え、凝集物による塗膜のハジキ数により、分散性を評価した。
塗膜のハジキ数が10個以内の場合を◎、11〜30個を○、31〜50個を△、50個を越える場合を×とした。
(5)一液性エポキシ樹脂組成物の貯蔵安定性
一液性エポキシ樹脂組成物に酢酸エチル/トルエン比1/1の混合溶媒を不揮発分が70%となる様に混合し、25℃で1時間静置した。これをアルミ板上に乾燥膜厚30μとなる様に塗布、70℃で5分加熱乾燥し、組成物中の溶剤を除去し、50℃で3日貯蔵した。50℃3日間貯蔵前後でFT−IR測定を行い、エポキシ基の残存率を算出した。
残存率が80%以上を◎、60%以上80%未満を○、40%以上60%未満を△、40%未満を×とした。
(6)一液性エポキシ樹脂組成物の硬化性
一液性エポキシ樹脂組成物のゲルタイムを測定し、ゲルタイムが30分未満となる温度が100℃以下の場合を○、100℃を超えて110℃以下の場合を△、110℃を超える場合を×とした。
(7)GPC測定
下記の測定条件で測定し、分子量580、1060、1940、5000、10050、21000、50400のポリスチレンを標準物質として検量線を作成して定量した。
カラム:東ソー株式会社製HCL−8120GEL SUPER 1000、2000、3000直列
溶出液:テトラヒドロフラン
流量:0.6ml/min
検出器:東ソー製UV8020を使用し254nmで測定
(8)Tg
DSC(セイコーインスツルメント社製DSC220C)により、昇温速度10℃/分の条件で測定した
(9)マスターバッチ保存安定性
一液性エポキシ樹脂組成物を40℃で7日間保存し、保存前後の粘度上昇率をB型粘度計で測定した。
上昇率が1.3倍未満を◎、1.3倍以上2倍未満を○、2倍以上5倍未満を△、5倍以上を×とした。
【0051】
[製造例1]
(エポキシ樹脂用硬化剤(A)の製造)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量185g/当量、全塩素量1200ppm:以下エポキシ樹脂c−1と称す)2当量と、o−ジメチルアミノメチルフェノール0.66モルおよびジメチルアミン0.33モルを、メタノールとトルエンの1/1混合溶媒中(樹脂分50%)80℃で8時間反応させた後、溶媒を減圧下180℃で留去することによって、固体状化合物を得た。これを粉砕して、平均粒径2.5μmのエポキシ樹脂用硬化剤a−1を得た。
[製造例2]
(エポキシ樹脂用硬化剤(A)の製造)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量185g/当量、全塩素量20ppm:以下エポキシ樹脂c−2と称す)を2当量と、2−メチルイミダゾール1.5モルを、メタノールとトルエンの1/1混合溶媒中(樹脂分50%)80℃で6時間反応させた後、溶媒を減圧下180℃で留去することによって、固体状化合物を得た。これを粉砕して、平均粒径3μmのエポキシ樹脂用硬化剤a−2を得た。
【0052】
[実施例1]
キシレン100質量部中にジェファーミンD−230(サンテクノケミカル社製、ポリオキシアルキレンジアミン)2質量部を溶解し、それにエポキシ樹脂用硬化剤a−1の75質量部を添加、分散し、温度を20℃とした。そこに1,8−ジイソシアネート−4−イソシアネートメチルオクタン(以下OTIと称す)4質量部とキシレン100質量部の混合液を2時間かけて滴下し、滴下終了後40℃で4時間反応を続け、キシレン相からOTIが消失したことを確認し、反応を終了しエポキシ樹脂用潜在性硬化剤を得た。更に、キシレンの除去とビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量189g/当量、全塩素量1200ppm:以下エポキシ樹脂c−3と称す)300質量部の添加の後、シェル形成反応を50℃で8時間行ない、エポキシ樹脂用コアシェル型硬化剤がエポキシ樹脂c−3に分散されたマスターバッチ型硬化剤H−1を得た。得られたマスターバッチ型硬化剤H−1からキシレンを用いてコアシェル型硬化剤を分離し、FT−IR測定により、結合基(x)、(y)、(z)を有することが確認された。
さらに分離して得られたコアシェル型硬化剤をメタノールおよびテトラヒドロフランで処理して被覆樹脂を分離してTgを測定したところ、75℃であった。
また、マスターバッチ型硬化剤H−1の分散性を評価した。評価結果を表1に示す。
得られたマスターバッチ型硬化剤H−1の30部にエポキシ樹脂c−3を100部加えて、充分に混合し、一液性エポキシ樹脂組成物を得た。
得られた一液性エポキシ樹脂組成物の貯蔵安定性、硬化性とマスターバッチ保存安定性を評価した。評価結果を表1に示す。
【0053】
[実施例2]
200部のエポキシ樹脂c−4にエポキシ樹脂用硬化剤a−1を100質量部、水2質量部、トリレンジイソシアネート1質量部、OTI7質量部を加えて、40℃で攪拌しながら3時間反応を続けたところ、イソシアネート基の99%以上が反応した。その後シェル形成反応を40℃で20時間行ない、マスターバッチ型硬化剤H−2を得た。
マスターバッチ型硬化剤H−2からキシレンを用いてコアシェル型硬化剤を分離し、FT−IR測定により、結合基(x)、(y)、(z)を有することが確認された。また、マスターバッチ型硬化剤H−2の分散性を評価した。評価結果を表1に示す。
さらに分離して得られたコアシェル型硬化剤を実施例1と同様に処理して得られた被覆樹脂のTgは70℃であった。
得られたマスターバッチ型硬化剤H−2の30部にエポキシ樹脂c−3を100部加えて、充分に混合し、一液性エポキシ樹脂組成物を得た。
得られた一液性エポキシ樹脂組成物の貯蔵安定性、硬化性とマスターバッチ保存安定性を評価した。評価結果を表1に示す。
【0054】
[実施例3、4]
表1で示した配合で、実施例2と同様にしてマスターバッチ型硬化剤H−3、H−4を得た。何れも実施例2と同様にして結合基(x)、(y)、(z)を有することを確認し、分散性を評価した。
また、実施例1と同様に処理して得られた被覆樹脂のTgはそれぞれ55℃、58℃であった。
更に実施例2と同様にして一液性エポキシ樹脂組成物を得て、貯蔵安定性、硬化性とマスターバッチ保存安定性を評価した。評価結果を表1に示す。
[比較例1、2]
表1で示した配合で、実施例2と同様にしてマスターバッチ型硬化剤H−5、H−6を得、分散性を評価した。
また、実施例1と同様に処理して得られた被覆樹脂のTgはそれぞれ92℃および98℃であった。
更に実施例2と同様にして一液性エポキシ樹脂組成物を得て、貯蔵安定性、硬化性とマスターバッチ保存安定性を評価した。評価結果を表1に示す。
【0055】
【表1】

【0056】
[実施例5]
予め平均粒径3μmに粉砕したジシアンジアミド8質量部に、実施例2で得られたマスターバッチ型硬化剤H−2の3質量部とエポキシ樹脂H−2の95質量部、EP−4023(アデカ(株)製CTBN変性エポキシ樹脂)5質量部、炭酸カルシウム20質量部を加えて均一に混合し、一液性エポキシ樹脂組成物を得た。得られた組成物の貯蔵安定性は○、140℃で硬化した。
[実施例6]
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(エポキシ当量165g/当量、全塩素量300ppm)100質量部に無水メチルヘキサヒドロフタル酸80質量部、球状溶融シリカ粉末(平均粒径10μm)300質量部を加えて均一に混合し、それに実施例2で得られたマスターバッチ型硬化剤H−2の6質量部を加え均一に混合し、液状封止材を得た。
得られた液状封止材を基板とLSIとの間に挟み、100℃で3時間後更に150℃で3時間加熱した結果、液状封止材は硬化し、封止材として有用であった。本組成物の液状封止材は、絶縁接着ペーストとしても有用であった。
[実施例7]
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量2500g/当量)40質量部を酢酸エチル30質量部に溶解し、それに、実施例4で得られたマスターバッチ型硬化剤H−4の40質量部と粒径8μmの導電粒子(金メッキを施した架橋ポリスチレン)20質量部とを加え均一に混合し、一液性エポキシ樹脂組成物を得た。これをポリエステルフィルム上に塗布し、70℃で酢酸エチルを乾燥除去し、異方導電性フィルムを得た。
得られた異方導電性フィルムを電極間に挟み、200℃のホットプレート上で30kg/cm、20秒間熱圧着を行った結果、電極間が接合し、導通がとれ、異方導電性材料として有用であった。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の硬化剤を用いた一液性エポキシ樹脂組成物は、接着剤、封止材、充填材、絶縁材料、導電材料、異方導電材料、プリプレグ、フィルム状接着剤、異方導電性フィルム、異方導電性ペースト、絶縁接着フィルム、絶縁接着ペースト、アンダーフィル材、ポッティング材、ダイボンディング材、導電ペースト、ソルダーレジスト等の分野で好適に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂用硬化剤(A)及び該エポキシ樹脂用硬化剤(A)を被覆する樹脂を含むエポキシ樹脂用潜在性硬化剤であって、
該エポキシ樹脂用硬化剤(A)を被覆する樹脂が、3つの窒素原子がエステル構造を含んでもよい直鎖状または環状の脂肪族炭化水素基を介して分岐点で結合した構造(構造(1))が一のウレア結合を介して二つ結合した構造を含み、
各構造(1)の窒素原子の少なくとも一つは当該ウレア結合に含まれている、
上記エポキシ樹脂用潜在性硬化剤。
【請求項2】
エポキシ樹脂用硬化剤(A)を被覆する樹脂が、2つ以上の窒素原子と結合した芳香族炭化水素基(2)をさらに含み、
構造(1)および該2つ以上の窒素原子と結合した芳香族炭化水素基(2)の総量に対する該2つ以上の窒素原子に結合した芳香族炭化水素基(2)の割合が0.5質量%以上95質量%以下である、
請求項1に記載のエポキシ樹脂用潜在性硬化剤。
【請求項3】
構造(1)および2つ以上の窒素原子に結合した芳香族炭化水素基(2)の総量に対する該2つ以上の窒素原子に結合した芳香族炭化水素基(2)の割合が1質量%以上80質量%以下である、請求項2に記載のエポキシ樹脂用潜在性硬化剤。
【請求項4】
エポキシ樹脂用硬化剤(A)および
当該エポキシ樹脂用硬化剤(A)を被覆する、イソシアネート基を3つ以上有し、分子量分布を持たない低分子ポリイソシアネートを20質量%以上含むイソシアネート成分(b1)と活性水素化合物(b2)との反応によりえられた樹脂
を含む、エポキシ樹脂用潜在性硬化剤。
【請求項5】
当該エポキシ樹脂用硬化剤(A)を被覆する樹脂が、波数1630cm−1〜1680cm−1の赤外線を吸収する結合基(x)を有する、請求項4に記載のエポキシ樹脂用潜在性硬化剤。
【請求項6】
イソシアネート成分(b1)が20質量%以上99質量%以下の低分子ポリイソシアネート化合物と1質量%以上80質量%以下のその他のイソシアネート化合物からなる、請求項4または5に記載のエポキシ樹脂用潜在性硬化剤。
【請求項7】
エポキシ樹脂用硬化剤(A)がアミン系硬化剤である請求項1〜6のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂用潜在性硬化剤。
【請求項8】
エポキシ樹脂用硬化剤(A)を被覆する樹脂のガラス転移温度(Tg)が80℃以下である、請求項1〜7のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂用潜在性硬化剤。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂用潜在性硬化剤をコアとし、エポキシ樹脂用硬化剤(A)とエポキシ樹脂(C)の反応生成物をシェルとしてなるエポキシ樹脂用コアシェル型硬化剤。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂用潜在性硬化剤または請求項6のコアシェル型硬化剤100質量部及び10〜50,000質量部のエポキシ樹脂(C)からなるエポキシ樹脂用マスターバッチ型硬化剤。
【請求項11】
エポキシ樹脂(D)100質量部;及び
請求項1〜8のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂用潜在性硬化剤、請求項9に記載のエポキシ樹脂用コアシェル型硬化剤、または請求項10に記載のエポキシ樹脂用マスターバッチ型硬化剤0.1〜1000質量部
を含み、それらを主成分とする一液性エポキシ樹脂組成物。
【請求項12】
エポキシ樹脂(D)100質量部;
酸無水物類、フェノール類、ヒドラジド類、およびグアニジン類からなる群から選ばれる少なくとも1種の硬化剤(E)1〜200質量部;および
請求項1〜8のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂用潜在性硬化剤、請求項9に記載のエポキシ樹脂用コアシェル型硬化剤、または請求項10に記載のエポキシ樹脂用マスターバッチ型硬化剤0.1〜200質量部
を含み、それらを主成分とする一液性エポキシ樹脂組成物。
【請求項13】
請求項11または12に記載の一液性エポキシ樹脂組成物を含有する異方導電材料。
【請求項14】
請求項11または12に記載の一液性エポキシ樹脂組成物を含有する導電性接着材料。
【請求項15】
請求項11または12に記載の一液性エポキシ樹脂組成物を含有する絶縁接着材料。
【請求項16】
請求項11または12に記載の一液性エポキシ樹脂組成物を含有する封止材。
【請求項17】
エポキシ樹脂用硬化剤(A)を、イソシアネート基を3つ以上有し、分子量分布を持たない低分子ポリイソシアネート化合物を20質量%以上含むイソシアネート成分(b1)と活性水素化合物(b2)を反応させて皮膜を形成して被覆することを含む、エポキシ樹脂用潜在性硬化剤の製造方法。

【国際公開番号】WO2005/035617
【国際公開日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【発行日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−514606(P2005−514606)
【国際出願番号】PCT/JP2004/014866
【国際出願日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】