説明

潤滑剤封入装置及び潤滑剤封入方法

【課題】潤滑剤の種類や封入量の多少を問わず、所定量(適量)の潤滑剤を軸受内部に安定して封入することが可能な潤滑剤封入技術を提供する。
【解決手段】相対回転可能に対向配置された軌道輪(内輪12、外輪14)と、軌道輪の対向面にそれぞれ形成された軌道溝間に転動自在に組み込まれた複数の転動体16とを備えた軸受10の内部に所定量の潤滑剤Jを封入する潤滑剤封入装置2であって、軌道輪を相対回転させる回転機構(回転台22、スピンドル24)と、潤滑剤を軸受内部に向けて吐出する潤滑剤吐出機構(シリンジ4、ノズル6、バルブ8)と、軌道輪の回転状態を検出する回転状態検出機構とを備える。回転状態検出機構(荷重分析装置28、振動分析装置56)は、回転機構で軌道輪を相対回転させた状態において、潤滑剤吐出機構で軸受内部に潤滑剤を吐出した際の当該軌道輪の回転状態(ロストルク、振動特性)を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑剤の種類(例えば、粘度)や封入量の多少を問わず、所定量の潤滑剤を軸受内部に飛び放して封入することが可能な潤滑剤封入装置及び潤滑剤封入方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、軸受内部に潤滑剤(例えば、油、グリース)を封入するための種々の潤滑剤封入技術が知られている。その一例として特許文献1では、吐出口を転動体に充分に近付けた状態で当該吐出口から転動体に潤滑剤を接触させて移す技術が提案されている。また、特許文献2では、潤滑剤を保持した転写ピンを軸受の所定部位(例えば、玉)に押し付けて当該潤滑剤を転写する技術が提案されている。更に、特許文献3では、保持器の爪部間に潤滑剤を滴下して当該保持器に潤滑剤を載せて封入する技術が提案されている。更にまた、特許文献4では、潤滑剤をノズルから飛ばして封入する技術が提案されている。
【0003】
ところで、特許文献1の技術では、例えば潤滑剤の種類(例えば、粘度)によっては吐出口から転動体に当該潤滑剤を接触させて移す際に、吐出口に残留する潤滑剤量と転動体に付着する潤滑剤量とが一定にならず、ある範囲で封入量が変動してしまう場合がある。また、特許文献2の技術でも、例えば潤滑剤の種類(例えば、粘度)によっては転写ピンに付着して残留する潤滑剤量と軸受に転写される潤滑剤量とが一定にならず、ある範囲で封入量が変動してしまう場合がある。更に、特許文献3の技術においても、例えば潤滑剤の種類(例えば、粘度)によっては潤滑剤の滴下量がある範囲で変動してしまう場合がある。更にまた、特許文献4の技術では、例えば潤滑剤の種類(例えば、粘度)によっては当該潤滑剤を飛ばす方向性が定まらず、ある範囲で封入量が変動してしまう場合がある。
【0004】
そして、このように潤滑剤の封入量が変動すると、予め設定した所定量(適量)の潤滑剤を軸受内部に安定して封入することが困難になってしまう。そうなると、例えば軸受回転時(例えば、加速回転時、定速度回転時)のトルクを一定に維持することができなくなり、その結果、軸受の回転性能を長期に亘って一定に維持することが困難になってしまう虞がある。このような不具合は、微量の潤滑剤を封入する際に特に顕著となる。
【0005】
また、所定量(適量)を越えた余剰の潤滑剤が軸受内部に封入された場合には、軸受回転時に潤滑剤の一部が軸受外部に漏洩したり、滲み出したりする虞がある。この場合、当該軸受によって例えばハードディスクドライブ(HDD)装置のスイングアームを回転自在に支持する使用状態において、軸受外部に潤滑剤が漏洩したり、滲み出したりすると、HDD装置内の汚染につながってしまう。
【特許文献1】特開2000−193192号公報
【特許文献2】特開2004−286061号公報
【特許文献3】特開2003−156057号公報
【特許文献4】特願2006−075897号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような要望に応えるためになされており、その目的は、潤滑剤の種類や封入量の多少を問わず、所定量(適量)の潤滑剤を軸受内部に安定して封入することが可能な潤滑剤封入技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的を達成するために、本発明は、互いに相対回転可能に対向配置された軌道輪と、軌道輪の対向面にそれぞれ形成された軌道溝間に転動自在に組み込まれた複数の転動体とを備えた軸受の内部に所定量の潤滑剤を封入する潤滑剤封入装置であって、軌道輪を相対回転させる回転機構と、潤滑剤を軸受内部に向けて吐出する潤滑剤吐出機構と、軌道輪の回転状態を検出する回転状態検出機構とを備えており、回転状態検出機構は、回転機構で軌道輪を相対回転させた状態において、潤滑剤吐出機構で軸受内部に潤滑剤を吐出した際の当該軌道輪の回転状態を検出する。
【0008】
また、本発明は、互いに相対回転可能に対向配置された軌道輪と、軌道輪の対向面にそれぞれ形成された軌道溝間に転動自在に組み込まれた複数の転動体とを備えた軸受の内部に所定量の潤滑剤を封入する潤滑剤封入方法であって、回転機構で軌道輪を相対回転させた状態において、潤滑剤吐出機構で軸受内部に潤滑剤を吐出した際の当該軌道輪の回転状態を回転状態検出機構で検出する。
【0009】
このような発明において、回転状態検出機構は、軌道輪を相対回転させながら軸受内部に潤滑剤を吐出した際の当該軌道輪のロストルクの変化を計測する荷重計測ユニットと、荷重計測ユニットの計測結果に基づいて、潤滑剤吐出機構を制御するコントローラとを備えている。この場合、コントローラは、荷重計測ユニットの計測結果が予め設定された条件を満たしたとき、潤滑剤吐出機構を制御して潤滑剤の吐出を停止させる。
【0010】
本発明において、回転状態検出機構は、回転機構で軌道輪を相対回転させた状態において、既に潤滑剤が封入されている軸受の軌道輪の回転状態を検出する。この場合、回転状態検出機構は、軌道輪を相対回転させた際の当該軌道輪のロストルクを計測する荷重計測ユニットを備えており、荷重計測ユニットは、既に潤滑剤が封入されている軸受の軌道輪を相対回転させた際の当該軌道輪のロストルクを計測すると共に、その計測結果が予め設定された条件を満たしているか否かを判定し、満たしているとの判定結果に基づいて、軸受内部に所定量の潤滑剤が封入されていることを確認可能とする。
【0011】
本発明において、回転状態検出機構は、軌道輪を相対回転させながら軸受内部に潤滑剤を吐出した際の当該軌道輪の振動特性の変化を計測する振動計測ユニットと、振動計測ユニットの計測結果に基づいて、潤滑剤吐出機構を制御するコントローラとを備えている。この場合、コントローラは、振動計測ユニットの計測結果が予め設定された条件を満たしたとき、潤滑剤吐出機構を制御して潤滑剤の吐出を停止させる。
【0012】
本発明において、回転状態検出機構は、軌道輪を相対回転させた際の当該軌道輪の振動特性を計測する振動計測ユニットを備えており、振動計測ユニットは、既に潤滑剤が封入されている軸受の軌道輪を相対回転させた際の当該軌道輪の振動特性を計測すると共に、その計測結果が予め設定された条件を満たしているか否かを判定し、満たしているとの判定結果に基づいて、軸受内部に所定量の潤滑剤が封入されていることを確認可能とする。
【0013】
また、本発明は、潤滑剤封入装置及び潤滑剤封入方法で所定量の潤滑剤が封入された軸受であって、当該軸受は、ハードディスクドライブ装置のスイングアームを回転自在に支持する。この場合、軸受は、転動体として玉を適用した玉軸受であって、玉径が1.2mm以下に設定されている。また、軌道輪の対向面において、各軌道溝を除いた領域のうち少なくとも1/3の領域は、潤滑剤が存在しない乾燥した状態に維持されている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、潤滑剤の種類や封入量の多少を問わず、所定量(適量)の潤滑剤を軸受内部に安定して封入することが可能な潤滑剤封入技術を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の一実施の形態に係る潤滑剤封入装置及び当該装置を用いた潤滑剤封入方法について、添付図面を参照して説明する。なお、本実施の形態では、例えばハードディスクドライブ装置のスイングアームを回転自在に支持する比較的小型の軸受に対して所定量(適量)の潤滑剤を高精度に封入するための装置構成を想定しており、かかる装置構成を実現するために、株式会社サンエイテックの「電磁制御式ジェットディスペンサー」を利用している。
【0016】
かかるディスペンサーを利用した装置構成の一例として、図1(a)に示すように、本実施の形態の潤滑剤封入装置2は、所定の圧力下で潤滑剤Jを収容可能なシリンジ4と、当該シリンジ4に設けられ、潤滑剤Jを吐出可能な少なくとも1つのノズル6と、シリンジ4内に挿通配置され、ノズル6の先端開口6tを開閉可能なバルブ8とを有する潤滑剤吐出機構を備えている。かかる潤滑剤吐出機構によれば、所定のタイミングでバルブ8をノズル6から離間させて、当該ノズル6の先端開口6tを開くことで、当該先端開口6tから所定量の潤滑剤Jを軸受10内部に向けて飛び放して封入することができる。
【0017】
なお、軸受10としては、例えばスラスト軸受やラジアル軸受を適用することができるが、ここでは一例としてラジアル軸受を想定する。ラジアル軸受10の構成としては、互いに相対回転可能に対向配置された軌道輪(内輪12、外輪14)と、内外輪12,14間に転動自在に組み込まれた複数の転動体16と、各転動体16を1つずつ回転可能に保持する複数のポケット18pを有する保持器18とを備えている。この場合、当該軸受10に組み込まれる転動体16としては、例えば玉やコロを適用することができるが、ここでは一例として玉径(直径)が1.2mm以下の玉が組み込まれた玉軸受を想定する。
【0018】
また、転動体(玉)16を回転自在に保持する保持器18としては、例えば波形保持器、かご形保持器、冠形保持器などを適用することができるが、ここでは一例として冠形保持器を想定する。冠形保持器18には、各ポケット18pに転動体(玉)16を挿入するための複数の開口(参照符号は付さない)が形成されていると共に、各開口を一部覆うように一対の爪部18nが対向して突設されており、開口からポケット18pに挿入された転動体(玉)16は、一対の爪部18nによってポケット18p内に挟持された状態で脱落すること無く回転可能に保持される。
【0019】
このような軸受10に対して潤滑剤封入装置2は、そのノズル6の先端開口6tが垂直上方に位置付けられており、潤滑剤Jは先端開口6tから垂直下方に向けて飛び放して軸受10内部に封入されるようになっている。具体的に説明すると、シリンジ4に挿通配置されたバルブ8は、矢印S1,S2方向に昇降可能に構成されており、矢印S1方向に下降させて、そのバルブ先端8tをノズル6内に着座させることで、当該バルブ先端8tによりノズル6の先端開口6tを閉塞させることができる。このとき、シリンジ4に収容された潤滑剤Jは、当該シリンジ4内に付与された圧力により先端開口6tに向けて常時押圧された状態を維持しつつ、先端開口6tから外部に吐出されることは無い。
【0020】
この状態において、所定のタイミングでバルブ8を矢印S2方向に上昇させてノズル6から離間させると、先端開口6tが開かれた状態となるため、所定の圧力下でシリンジ4に収容された潤滑剤Jは、バルブ先端8tとノズル6との隙間に流れ込んだ後、先端開口6tから外部に吐出される。続いて、所定のタイミングでバルブ8を矢印S1方向に下降させ、そのバルブ先端8tをノズル6内に着座させて先端開口6tを閉塞することで、所定量の潤滑剤Jを軸受10内部に封入させることができる。
【0021】
かかる封入動作において、シリンジ4内の潤滑剤Jが先細り形状のノズル6に沿って集束して流れ込むため、先端開口6t近傍の潤滑剤Jの圧力(液圧)が更に高められる。このため、先端開口6tからは、潤滑剤Jが飛び放たれるように高速で吐出することになる。このように潤滑剤Jを高速で飛ばすことで、先端開口6tに対する潤滑剤Jの離れ性を向上させることができるため、当該先端開口6tに付着して残留する潤滑剤量を殆ど無くすることができる。この結果、先端開口6tから吐出させた分量の潤滑剤Jをそのまま軸受10内部に封入させることができる。別の言い方をすると、先端開口6tから吐出させた潤滑剤Jの吐出量と軸受10内部に封入させた潤滑剤Jの封入量とを高精度に且つ正確に一致させることができる。これにより、軸受10内部に封入する潤滑剤Jの封入量を常に一定に維持することができる。
【0022】
また、ノズル6の先端開口6tから吐出させる潤滑剤量は、バルブ8の昇降タイミングによって任意に設定することができる。例えば、所定量の潤滑剤Jを一度に連続的に吐出させる場合には、バルブ8を矢印S2方向に上昇させて先端開口6tを開いた状態を長く設定すれば良い。これに対して、所定量の潤滑剤Jを複数回に分けて断続的に吐出させる場合には、バルブ8を矢印S2方向に上昇させて先端開口6tを開いた状態を短く設定して、バルブ8の昇降動作(先端開口6tの開閉動作)を複数回だけ繰り返せば良い。いずれの場合でも、先端開口6tから所定量の潤滑剤Jを軸受10内部に向けて飛び放して封入することができるため、軸受10内部に封入する潤滑剤Jの封入量を常に一定に維持することができる。
【0023】
なお、潤滑剤Jを先端開口6tから吐出させる際、バルブ8を矢印S2方向に上昇させてノズル6から離間させた状態におけるバルブ先端8tとノズル6との隙間寸法は、例えば潤滑剤Jの種類(粘度)や、潤滑剤封入装置2の使用環境及び使用目的に応じて任意に設定されるため、ここでは特に数値限定はしない。また、図面上において、バルブ先端8t及びノズル6は共に同方向に沿って先細り形状を成しているが、その先細り傾斜角度については、例えば潤滑剤Jの種類(粘度)や、潤滑剤封入装置2の使用環境及び使用目的に応じて任意に設定されるため、ここでは特に数値限定はしない。更に、ノズル6の先端開口6tの開口径についても、例えば潤滑剤Jの種類(粘度)や、潤滑剤封入装置2の使用環境及び使用目的に応じて任意に設定されるため、ここでは特に数値限定はしない。
【0024】
また、潤滑剤封入装置2には、軸受10内部における潤滑剤Jの封入位置を検出可能な封入位置検出センサ20が設けられており、これにより、ノズル6の先端開口6tから吐出した潤滑剤Jを軸受10内部に向けて正確に封入することができる。この場合、潤滑剤Jの封入位置として、封入位置検出センサ20によって例えばノズル6や先端開口6tの下部位置を直接検出することが好ましい。しかしながら、周辺機器の配置構成や封入位置検出センサ20の取付スペースの制約などにより、ノズル6や先端開口6tの下部位置を直接検出できない場合には、等配された別の玉位置を検出することで、封入位置を特定するようにしても良い。ここでは一例として、先端開口6tより玉2個分ずれた位相位置に封入位置検出センサ20を配置した構成例を想定する。
【0025】
なお、封入位置検出センサ20としては、例えば市販のCCDイメージセンサや反射型フォトセンサなどを適用し、軸受10内部の封入位置を検出すれば良い。かかる検出方法の一例としては、図1(a)に示すように、封入位置検出センサ20に対して軸受10を相対的に矢印R方向に回転させ、当該軸受10内部の光学的特性の変化を検出する。
【0026】
例えばCCDイメージセンサでは、軸受10内部の構成を光学像として取り込んで、その光学像の光学的特性の変化を検出する。そして、当該光学像の光学的特性が予め測定した封入位置の光学像の光学的特性に一致したとき、ノズル6の先端開口6tが封入位置に対向して位置付けられたことが検出される。このとき、当該封入位置に向けて先端開口6tから所定量の潤滑剤Jを飛び放して封入する。一方、例えば反射型フォトセンサでは、発光素子から光が照射された際に軸受10内部の構成からの反射光を受光素子で受光し、その受光量の光学的特性を検出する。そして、当該受光量の光学的特性が予め測定した封入位置の受光量の光学的特性に一致したとき、ノズル6の先端開口6tが封入位置に対向して位置付けられたことが検出され、当該封入位置に向けて先端開口6tから所定量の潤滑剤Jを飛び放して封入する。
【0027】
また、図1(a)に示すように、本実施の形態の潤滑剤封入装置2は、上述した潤滑剤吐出機構に加えて、軌道輪(内輪12、外輪14)を相対回転させる回転機構と、当該軌道輪の回転状態を検出する回転状態検出機構とを備えている。ここで、回転機構は、例えば内輪12を回転可能に支持する回転台22と、回転台22を所定の速度で回転させるスピンドル24とを備えて構成されている。この場合、回転機構(回転台22、スピンドル24)で内輪12を相対回転させた状態において、上述した潤滑剤吐出機構で軸受10内部に潤滑剤Jを吐出した際の外輪14の回転状態が、回転状態検出機構で検出されるようになっている。
【0028】
回転状態検出機構は、内輪12を外輪14に対して回転させながら軸受10内部に潤滑剤Jを吐出した際の当該外輪14のロストルクの変化を計測する荷重計測ユニットと、荷重計測ユニットの計測結果に基づいて、潤滑剤吐出機構を制御するコントローラ34とを備えている。ここで、内輪12を回転させると、そのときの回転力が複数の転動体(玉)16を介して外輪14に伝達されて、当該外輪14を連れ回りさせようとするが、このときの連れ回りトルクのことを“外輪14のロストルク”と言う。
【0029】
荷重計測ユニットは、外輪14のロストルクを計測する荷重計26と、荷重計26で計測された計測値に所定の分析処理を施す荷重分析装置28とを備えており、荷重計26には、計測用糸30の一端30aが固定され、その他端30bは、外輪14に固定されている。この場合、内輪12の回転によって外輪14が連れ回りすると、その際のトルクに応じて計測用糸30が引っ張られ、そのときの引張力が荷重計26で計測される。このとき、軸受内部に潤滑剤Jを吐出しない状態では、外輪14のロストルクは、一定値となるが、潤滑剤吐出機構で潤滑剤Jを吐出すると、軸受10内部に封入された潤滑剤Jの封入量に応じて、ロストルクが変化する。具体的には、潤滑剤Jの封入量が多くなるに従って、ロストルクが増加することになる。
【0030】
しかしながら、かかるロストルクの変化量(即ち、増加量)は、極僅かであるため、荷重計26から出力される計測値も小さなものとなる。このため、荷重計測ユニットには、アンプ32が設けられており、荷重計26の計測値をアンプ32によって増幅させて、荷重分析装置28に出力するようになっている。これにより、荷重分析装置28において、荷重計26の計測値に対して高精度な分析処理が施される。
【0031】
また、コントローラ34は、荷重計測ユニットの計測結果が予め設定された条件を満足したとき、潤滑剤吐出機構を制御して潤滑剤Jの吐出を停止させる。ここで、荷重計測ユニットの計測結果は、荷重分析装置28において荷重計26の計測値に分析処理が施された分析結果として規定される。また、予め設定された条件とは、サンプル用軸受(内輪、外輪、転動体)を用意し、当該軸受内部に所定量(適量)の潤滑剤を封入した状態で、内輪を回転させた際の外輪の連れ回りによるロストルクを計測したサンプル値として規定される。
【0032】
この場合、サンプル用軸受に封入する潤滑剤量は、例えば当該軸受の種類や大きさ、或いは、使用目的や使用環境に応じて最適な量に設定される。このため、それぞれの軸受毎に予めサンプル値を計測し、その計測値を予め設定された条件として記憶することが好ましい。なお、記憶場所としては、例えば荷重分析装置28やコントローラ34の内蔵メモリ(図示しない)、他の外部メモリなどを適用することができるが、ここでは一例として、荷重分析装置28の内蔵メモリを想定する。
【0033】
ここで、本実施の形態の潤滑剤封入装置2の動作について説明する。
まず、スピンドル24を矢印R方向に回転させて、回転台22に支持された内輪12を同方向に一定の速度で回転させる。この場合、内輪12の回転速度は、例えば軌道輪(内輪12、外輪14)の種類や大きさ、玉軸受10の使用目的や使用環境に応じて任意に設定されるため、ここでは特に限定しない。そして、かかる状態を維持しながら、上述した潤滑剤吐出機構で軸受10内部に向けて潤滑剤Jを飛び放し(吐出し)て封入する。
【0034】
なお、潤滑剤Jの吐出量や吐出タイミングは、例えば内輪12の回転速度や内外輪12,14の形状及びその大きさなどに応じて任意に設定されるため、ここでは特に限定しない。また、潤滑剤Jの封入位置については、内輪12と外輪14との間を狙うことで、ノズル6の先端開口6tから飛び放たれた全ての潤滑剤Jを漏れなく確実に軸受10内部に封入させることができる。この場合、内輪12と外輪14との間には、複数の転動体(玉)16の片表面と、各転動体(玉)16を保持する冠形保持器18の側周面が露出しているが、これら各面のいずれかに向けて潤滑剤Jを吐出することが好ましい。
【0035】
一例として、ここでは各転動体(玉)16の片表面に向けて潤滑剤Jを吐出させる場合を想定する。この場合、複数の転動体(玉)16の保持位置に同期させて、ノズル6の先端開口6tから潤滑剤Jを飛び放して吐出する。このとき、封入位置検出センサ20によってそれぞれの転動体(玉)16の保持位置が検出され、その検出結果に同期してノズル6の先端開口6tから潤滑剤Jを間欠的に飛び放つことで、当該潤滑剤Jを正確に各転動体(玉)16の片表面に封入させることができる。
【0036】
このように、内輪12を矢印R方向に等速で回転させながら、ノズル6の先端開口6tから潤滑剤Jを間欠的に飛び放して軸受10内部に封入していくと、潤滑剤Jの封入量に応じてロストルクが変化する。即ち、潤滑剤Jの封入量が多くなるに従って、ロストルクが大きくなり、これに伴って計測用糸30の引張力が増加する。このとき、荷重計26では、引張力の変化(増加)がリアルタイムで計測され、その計測値である変化量(増加量)がアンプ32で増幅されて荷重分析装置28に出力される。
【0037】
荷重分析装置28では、荷重計26の計測値に対して所定の分析処理が施される。具体的には、当該計測値と予め設定された条件(サンプル値)とが比較され、当該条件を満足したとき(即ち、計測値がサンプル値に達した(一致した)とき)、その旨の信号が荷重分析装置28からコントローラ34に出力される。このとき、コントローラ34は、荷重分析装置28からの出力信号に基づいて、上述した潤滑剤吐出機構を制御して潤滑剤Jの吐出を停止させる。
【0038】
ところで、予め設定された条件(サンプル値)は、軸受内部に所定量(適量)の潤滑剤Jを封入した状態におけるロストルクの計測値である。この場合、荷重計26の計測値がサンプル値に達した(一致した)ことにより(即ち、予め設定した条件を満たしたとき)、軸受10内部に所定量(適量)の潤滑剤Jが封入されたこととなる。従って、これに同期してノズル6の先端開口6tからの潤滑剤Jの吐出を停止させることで、所定量(適量)の潤滑剤Jが封入された玉軸受10を完成させることができる。
【0039】
以上、本実施の形態によれば、潤滑剤Jをノズル6の先端開口6tから飛び放すように吐出させたことで、潤滑剤Jの種類や封入量の多少を問わず、軸受10内部に所定量(適量)の潤滑剤Jを安定して封入することができる。これにより、軸受回転時(例えば、加速回転時、定速度回転時)のトルクを一定に維持することができる。この結果、その回転性能を長期に亘って一定に維持することが可能な玉軸受10を実現することができる。
【0040】
また、本実施の形態によれば、各転動体(玉)16の片表面を狙って潤滑剤Jを封入したことにより、封入時に潤滑剤Jが内外輪12,14の対向面(特に参照符号は付さない)に付着することは無く、当該潤滑剤Jは、各転動体(玉)16の表面を伝って冠形保持器18の各ポケット18pや、内外輪12,14の対向面に形成された軌道溝(図示しない)にのみ付着する。この場合、内外輪12,14の対向面において、各軌道溝を除いた領域のうち少なくとも1/3の領域は、潤滑剤Jが存在しない乾燥した状態に維持される。これにより、軸受回転時に潤滑剤Jが軸受外部に漏洩したり、滲み出したりすることは無い。
【0041】
また、本実施の形態によれば、潤滑剤封入装置2の荷重計測ユニットによって、軸受10内部に所定量(適量)の潤滑剤Jが封入されていることを確認することができる。この場合、潤滑剤Jが封入されている玉軸受10を回転台22にセットし、その外輪14と荷重計26とに計測用糸30を掛け渡す。この状態で、内輪12を矢印R方向に等速で回転させて、外輪14のロストルクを計測する。
【0042】
このとき、荷重分析装置28において、荷重計26の計測値(計測結果)が予め設定された条件を満足しているか否か(即ち、計測値がサンプル値に達した(一致した)か否か)が判定される。そして、満足しているとの判定結果に基づいて、軸受10内部に所定量(適量)の潤滑剤Jが封入されていることを確認することができる。これにより、軸受回転時に潤滑剤Jが軸受外部に漏洩したり、滲み出したりすることの無い信頼性の高い玉軸受10であることを確認することができる。
【0043】
従って、このような玉軸受10によって例えばハードディスクドライブ(HDD)装置のスイングアームを回転自在に支持する使用状態において、HDD装置内が潤滑剤Jで汚染されることは無い。この場合、内外輪12,14の両側にそれぞれ密封板(例えば、シール、シールド)を取り付けることで、軸受10内部に封入された潤滑剤Jの密封性を高めることができる。また、かかる玉軸受10をHDD装置のスイングアームを回転自在に支持する軸受として用いることにより、当該スイングアームを長期間に亘って安定して且つ滑らかに回動させることができる。
【0044】
ここで、例えば図2(a),(b)に示すように、HDD装置は、磁気ディスク36を回転させるスピンドルモータ38と、情報の記録或いは読み取り用の磁気ヘッド40とを備えている。磁気ヘッド40は、軸受装置42で回動自在に支持されたスイングアーム44の先端に取り付けられており、その基端には、当該スイングアーム44を回転駆動させるボイスコイル46が設けられている。スイングアーム44は、軸受装置42を介してHDD装置の基台48上に回動自在に支持されている。
【0045】
かかるHDD装置において、磁気ディスク36を回転させた状態でスイングアーム44を回動させて、磁気ヘッド40を磁気ディスク36に対して平行移動させることにより、磁気ディスク36に情報を記録したり、或いは磁気ディスク36から情報を読み取ることができる。
【0046】
上述した潤滑剤封入技術により所定量の潤滑剤Jが正確に封入された玉軸受10は、図2(c)に示すように、軸受装置42に組み込まれている。具体的には、当該軸受装置42には、2つの玉軸受10がシャフト50に外装されており、これらの玉軸受10には、スリーブ52を介してスイングアーム44が装着されている。これによれば、磁気ディスク36の記憶トラックピッチが20万TPI以上のHDD装置であっても当該玉軸受10のトルクは常に安定しているため、極幅の狭いトラックを高精度且つ効率よく追従する制御を容易に行うことが可能となる。
【0047】
また、上述した実施の形態では、外輪14のロストルクを計測して潤滑剤Jを封入する技術を想定して説明したが、他の実施の形態として、外輪14の振動特性を計測して潤滑剤Jを封入するようにしても良い。この場合、図1(b)に示すように、回転状態検出機構は、内輪12を外輪14に対して回転させながら軸受10内部に潤滑剤Jを吐出した際の当該外輪14の振動特性の変化を計測する振動計測ユニットと、振動計測ユニットの計測結果に基づいて、潤滑剤吐出機構を制御するコントローラ60とを備えている。
【0048】
振動計測ユニットは、外輪14の振動特性(音響)を計測する振動センサ54と、振動センサ54で計測された計測値(計測特性)に所定の分析処理を施す振動分析装置56とを備えており、振動センサ54には、外輪14に摺接する摺接端子54tが設けられている。この場合、内輪12の回転によって外輪14が連れ回りすると、その際に生じる外輪14の振動が摺接端子54tに連続して伝達され、そのときの振動特性が振動センサ54によって計測される。このとき、軸受内部に潤滑剤Jを吐出しない状態では、外輪14の振動特性は一定値となるが、潤滑剤吐出機構で潤滑剤Jを吐出すると、軸受10内部に封入された潤滑剤Jの封入量に応じて振動特性が変化する。具体的には、潤滑剤Jの封入量が多くなるに従って、外輪14の高周波成分の振動が小さくなり、その結果、振動特性が変化することになる。
【0049】
しかしながら、かかる振動特性の変化は極僅かであるため、振動センサ54から出力される計測値(計測特性)も小さなものとなる。このため、振動計測ユニットには、アンプ58が設けられており、振動センサ54の計測値をアンプ58によって増幅させて、振動分析装置56に出力するようになっている。これにより、振動分析装置56において、振動センサ54の計測値に対して高精度な分析処理が施される。
【0050】
また、コントローラ60は、振動計測ユニットの計測結果が予め設定された条件を満足したとき、潤滑剤吐出機構を制御して潤滑剤Jの吐出を停止させる。ここで、振動計測ユニットの計測結果は、振動分析装置56において振動センサ54の計測値(計測特性)に分析処理が施された分析結果として規定される。また、予め設定された条件とは、サンプル用軸受(内輪、外輪、転動体)を用意し、当該軸受内部に所定量(適量)の潤滑剤を封入した状態で、内輪を回転させた際の外輪の連れ回りによる振動特性を計測したサンプル値として規定される。
【0051】
この場合、サンプル用軸受に封入する潤滑剤量は、例えば当該軸受の種類や大きさ、或いは、使用目的や使用環境に応じて最適な量に設定される。このため、それぞれの軸受毎に予めサンプル値を計測し、その計測値を予め設定された条件として記憶することが好ましい。なお、記憶場所としては、例えば振動分析装置56やコントローラ60の内蔵メモリ(図示しない)、他の外部メモリなどを適用することができるが、ここでは一例として、振動分析装置56の内蔵メモリを想定する。
【0052】
ここで、他の実施の形態の潤滑剤封入装置2の動作について説明する。なお、この動作説明において、図1(a)の装置と同様の部分は省略する。
この場合、内輪12を矢印R方向に等速で回転させながら、ノズル6の先端開口6tから潤滑剤Jを間欠的に飛び放して軸受10内部に封入していくと、潤滑剤Jの封入量に応じて外輪14の振動特性が変化する。即ち、潤滑剤Jの封入量が多くなるに従って、外輪14の高周波成分の振動が小さくなり、これに伴って振動特性が変化する。このとき、振動センサ54では、外輪14の振動特性の変化がリアルタイムで計測され、その計測値である変化特性がアンプ58で増幅されて振動分析装置56に出力される。
【0053】
振動分析装置56では、振動センサ54の計測値(計測特性)に対して所定の分析処理が施される。具体的には、当該計測特性と予め設定された条件(サンプル値)とが比較され、当該条件を満足したとき(即ち、計測特性がサンプル値に達した(一致した)とき)、その旨の信号が振動分析装置56からコントローラ60に出力される。このとき、コントローラ60は、振動分析装置56からの出力信号に基づいて、上述した潤滑剤吐出機構を制御して潤滑剤Jの吐出を停止させる。
【0054】
ところで、予め設定された条件(サンプル値)は、軸受内部に所定量(適量)の潤滑剤Jを封入した状態における振動特性の計測値である。この場合、振動センサ54の計測特性がサンプル値に達した(一致した)ことにより(即ち、予め設定した条件を満たしたとき)、軸受10内部に所定量(適量)の潤滑剤Jが封入されたこととなる。従って、これに同期してノズル6の先端開口6tからの潤滑剤Jの吐出を停止させることで、所定量(適量)の潤滑剤Jが封入された玉軸受10を完成させることができる。
【0055】
また、他の実施の形態によれば、潤滑剤封入装置2の振動計測ユニットによって、軸受10内部に所定量(適量)の潤滑剤Jが封入されていることを確認することができる。この場合、潤滑剤Jが封入されている玉軸受10を回転台22にセットし、その外輪14に振動センサ54の摺接端子54tを摺接させる。この状態で、内輪12を矢印R方向に等速で回転させて、外輪14の振動特性を計測する。
【0056】
このとき、振動分析装置56において、振動センサ54の計測特性が予め設定された条件を満足しているか否か(即ち、計測特性がサンプル値に達した(一致した)か否か)が判定される。そして、満足しているとの判定結果に基づいて、軸受10内部に所定量(適量)の潤滑剤Jが封入されていることを確認することができる。これにより、軸受回転時に潤滑剤Jが軸受外部に漏洩したり、滲み出したりすることの無い信頼性の高い玉軸受10であることを確認することができる。
【0057】
なお、上述した図1(b)に示す実施の形態の他の構成や効果については、図1(a)に示す実施の形態に係る潤滑剤封入装置2と同様であるため、その説明は省略する。
また、上述した各実施の形態(図1(a),(b))では、外輪14のロストルクや振動特性を計測して潤滑剤Jを封入する技術について説明したが、これに代えて、例えば外輪14の楕走回転時の回転数を計測することで、潤滑剤Jの封入設定を行うようにしても良い。
【0058】
なお、上述した各実施の形態(図1(a),(b))では、1つのノズル6(先端開口6t)を備えた潤滑剤封入装置2を例示したが、これに限定されることは無く、複数のノズル6(先端開口6t)を備えて構成しても良い。この場合、ノズル6の本数は、例えば転動体(玉)16の数に一致させても良いし、それ以上又はそれ以下としても良い。
また、潤滑剤封入装置2の使用環境や使用目的に応じて、シリンジ4内の潤滑剤Jが一定の特性(例えば、粘度)に保たれるように、当該装置2に加熱・冷却・保温システムを設けても良い。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】(a)は、本発明の一実施の形態に係る潤滑剤封入装置の構成を示す斜視図、(b)は、本発明の他の実施の形態に係る潤滑剤封入装置の構成を示す斜視図。
【図2】(a)は、本発明により所定量の潤滑剤が封入された軸受をハードディスクドライブ装置のスイングアームに適用した構成例を示す断面図、(b)は、同図(a)のハードディスクドライブ装置の平面図、(c)は、同図(a)のスイングアームに組込まれた軸受の構成例を示す断面図。
【符号の説明】
【0060】
2 潤滑剤封入装置
4 シリンジ
6 ノズル
8 バルブ
10 軸受
12 内輪
14 外輪
16 転動体
22 回転台
24 スピンドル
28 荷重分析装置
56 振動分析装置
J 潤滑剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに相対回転可能に対向配置された軌道輪と、軌道輪の対向面にそれぞれ形成された軌道溝間に転動自在に組み込まれた複数の転動体とを備えた軸受の内部に所定量の潤滑剤を封入する潤滑剤封入装置であって、
軌道輪を相対回転させる回転機構と、
潤滑剤を軸受内部に向けて吐出する潤滑剤吐出機構と、
軌道輪の回転状態を検出する回転状態検出機構とを備えており、
回転状態検出機構は、回転機構で軌道輪を相対回転させた状態において、潤滑剤吐出機構で軸受内部に潤滑剤を吐出した際の当該軌道輪の回転状態を検出することを特徴とする潤滑剤封入装置。
【請求項2】
回転状態検出機構は、軌道輪を相対回転させながら軸受内部に潤滑剤を吐出した際の当該軌道輪のロストルクの変化を計測する荷重計測ユニットと、荷重計測ユニットの計測結果に基づいて、潤滑剤吐出機構を制御するコントローラとを備えていることを特徴とする請求項1に記載の潤滑剤封入装置。
【請求項3】
コントローラは、荷重計測ユニットの計測結果が予め設定された条件を満たしたとき、潤滑剤吐出機構を制御して潤滑剤の吐出を停止させることを特徴とする請求項2に記載の潤滑剤封入装置。
【請求項4】
回転状態検出機構は、回転機構で軌道輪を相対回転させた状態において、既に潤滑剤が封入されている軸受の軌道輪の回転状態を検出することを特徴とする請求項1に記載の潤滑剤封入装置。
【請求項5】
回転状態検出機構は、軌道輪を相対回転させた際の当該軌道輪のロストルクを計測する荷重計測ユニットを備えており、
荷重計測ユニットは、既に潤滑剤が封入されている軸受の軌道輪を相対回転させた際の当該軌道輪のロストルクを計測すると共に、その計測結果が予め設定された条件を満たしているか否かを判定し、満たしているとの判定結果に基づいて、軸受内部に所定量の潤滑剤が封入されていることを確認可能とすることを特徴とする請求項4に記載の潤滑剤封入装置。
【請求項6】
回転状態検出機構は、軌道輪を相対回転させながら軸受内部に潤滑剤を吐出した際の当該軌道輪の振動特性の変化を計測する振動計測ユニットと、振動計測ユニットの計測結果に基づいて、潤滑剤吐出機構を制御するコントローラとを備えていることを特徴とする請求項1に記載の潤滑剤封入装置。
【請求項7】
コントローラは、振動計測ユニットの計測結果が予め設定された条件を満たしたとき、潤滑剤吐出機構を制御して潤滑剤の吐出を停止させることを特徴とする請求項6に記載の潤滑剤封入装置。
【請求項8】
回転状態検出機構は、軌道輪を相対回転させた際の当該軌道輪の振動特性を計測する振動計測ユニットを備えており、
振動計測ユニットは、既に潤滑剤が封入されている軸受の軌道輪を相対回転させた際の当該軌道輪の振動特性を計測すると共に、その計測結果が予め設定された条件を満たしているか否かを判定し、満たしているとの判定結果に基づいて、軸受内部に所定量の潤滑剤が封入されていることを確認可能とすることを特徴とする請求項4に記載の潤滑剤封入装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の潤滑剤封入装置で所定量の潤滑剤が封入された軸受であって、当該軸受は、ハードディスクドライブ装置のスイングアームを回転自在に支持することを特徴とする軸受。
【請求項10】
軸受は、転動体として玉を適用した玉軸受であって、玉径が1.2mm以下に設定されていることを特徴とする請求項9に記載の軸受。
【請求項11】
軌道輪の対向面において、各軌道溝を除いた領域のうち少なくとも1/3の領域は、潤滑剤が存在しない乾燥した状態に維持されていることを特徴とする請求項9又は10に記載の軸受。
【請求項12】
互いに相対回転可能に対向配置された軌道輪と、軌道輪の対向面にそれぞれ形成された軌道溝間に転動自在に組み込まれた複数の転動体とを備えた軸受の内部に所定量の潤滑剤を封入する潤滑剤封入方法であって、
回転機構で軌道輪を相対回転させた状態において、潤滑剤吐出機構で軸受内部に潤滑剤を吐出した際の当該軌道輪の回転状態を回転状態検出機構で検出することを特徴とする潤滑剤封入方法。
【請求項13】
回転状態検出機構は、軌道輪を相対回転させながら軸受内部に潤滑剤を吐出した際の当該軌道輪のロストルクの変化を計測する荷重計測ユニットと、荷重計測ユニットの計測結果に基づいて、潤滑剤吐出機構を制御するコントローラとを備えていることを特徴とする請求項12に記載の潤滑剤封入方法。
【請求項14】
コントローラは、荷重計測ユニットの計測結果が予め設定された条件を満たしたとき、潤滑剤吐出機構を制御して潤滑剤の吐出を停止させることを特徴とする請求項13に記載の潤滑剤封入方法。
【請求項15】
回転状態検出機構は、回転機構で軌道輪を相対回転させた状態において、既に潤滑剤が封入されている軸受の軌道輪の回転状態を検出することを特徴とする請求項12に記載の潤滑剤封入方法。
【請求項16】
回転状態検出機構は、軌道輪を相対回転させた際の当該軌道輪のロストルクを計測する荷重計測ユニットを備えており、
荷重計測ユニットは、既に潤滑剤が封入されている軸受の軌道輪を相対回転させた際の当該軌道輪のロストルクを計測すると共に、その計測結果が予め設定された条件を満たしているか否かを判定し、満たしているとの判定結果に基づいて、軸受内部に所定量の潤滑剤が封入されていることを確認可能とすることを特徴とする請求項15に記載の潤滑剤封入方法。
【請求項17】
回転状態検出機構は、軌道輪を相対回転させながら軸受内部に潤滑剤を吐出した際の当該軌道輪の振動特性の変化を計測する振動計測ユニットと、振動計測ユニットの計測結果に基づいて、潤滑剤吐出機構を制御するコントローラとを備えていることを特徴とする請求項12に記載の潤滑剤封入方法。
【請求項18】
コントローラは、振動計測ユニットの計測結果が予め設定された条件を満たしたとき、潤滑剤吐出機構を制御して潤滑剤の吐出を停止させることを特徴とする請求項17に記載の潤滑剤封入方法。
【請求項19】
回転状態検出機構は、軌道輪を相対回転させた際の当該軌道輪の振動特性を計測する振動計測ユニットを備えており、
振動計測ユニットは、既に潤滑剤が封入されている軸受の軌道輪を相対回転させた際の当該軌道輪の振動特性を計測すると共に、その計測結果が予め設定された条件を満たしているか否かを判定し、満たしているとの判定結果に基づいて、軸受内部に所定量の潤滑剤が封入されていることを確認可能とすることを特徴とする請求項15に記載の潤滑剤封入方法。
【請求項20】
請求項12〜19のいずれかに記載の潤滑剤封入方法で所定量の潤滑剤が封入された軸受であって、当該軸受は、ハードディスクドライブ装置のスイングアームを回転自在に支持することを特徴とする軸受。
【請求項21】
軸受は、転動体として玉を適用した玉軸受であって、玉径が1.2mm以下に設定されていることを特徴とする請求項20に記載の軸受。
【請求項22】
軌道輪の対向面において、各軌道溝を除いた領域のうち少なくとも1/3の領域は、潤滑剤が存在しない乾燥した状態に維持されていることを特徴とする請求項20又は21に記載の軸受。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−267539(P2008−267539A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−113695(P2007−113695)
【出願日】平成19年4月24日(2007.4.24)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】