説明

潤滑剤組成物及びそれを含有する潤滑油組成物

【課題】金属を含まず、良好な潤滑性を有し、且つ、保存安定性が良好な潤滑油組成物を提供する。
【解決手段】一般式(1) R−(CO)n−O−A (1)(Rは炭素数6〜20の脂肪族炭化水素基、Aは窒素原子を含んでもよい炭素数3〜6で水酸基を2〜4個有するアルコールから1つの水酸基を除いた残基、nは0又は1の数を表す)で表される化合物(a)と、一般式(2) R’−[(CO)m−O−]2−A’ (2)(R'は炭素数6〜20の脂肪族炭化水素基、A'は窒素原子を含んでもよい炭素数3〜6で水酸基を2〜4個有するアルコールから2つの水酸基を除いた残基、mは0又は1の数を表す)で表される化合物(b)の割合が、(a)/(b)=100/0〜70/30(質量比)である(X)成分と、25℃で液状の炭素数6〜20の直鎖モノアルコール(Y)成分とを、(X)/(Y)=90/10〜30/70(質量比)の割合で含有する潤滑剤組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製品安定性が良好で、環境に負荷をかけない性能良好な潤滑剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属の引抜き、伸線、切削、研削、プレス等の金属加工に用いられる潤滑油は、各種加工用金属材料の高寿命化、製品仕上げ面の精密化を目的に塩素系添加剤を用いてきた。しかしながら、近年、ダイオキシンの発生源といった環境問題や、発ガン性の疑念といった人体に対する安全性の面から、塩素系添加剤の使用に対する懸念が増大している。そこで、塩素系添加剤を含有しない潤滑油の開発が行われてきた。
【0003】
こうした非塩素系潤滑油には、塩素系添加剤に変わる代替品として、例えば、硫黄系の添加剤(例えば、特許文献1、2を参照)や、リン系の添加剤(例えば、特許文献3,4を参照)が知られている。しかし、これらの添加剤も金属元素を有しており、廃液処理等で環境に対する負荷が大きく、更に、金属に対して腐食を生じる場合もあった。
【0004】
また、グリセリンエステル等の非金属含有の添加剤もよく知られているが、こうしたエステル類の中で潤滑性の良好なものは油への溶解性が悪く、保存中に析出する等の問題がある。そこで、保存安定性を改良するために塩基性金属清浄剤と組み合わせることが知られている(例えば、特許文献5を参照)が、塩基性金属清浄剤には多量の金属が含有している。
【0005】
【特許文献1】特開平6−158074号公報
【特許文献2】特開2002−105476号公報
【特許文献3】特開平8−253786号公報
【特許文献4】特開2001−081491号公報
【特許文献5】特開2000−273481号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明が解決しようとする課題は、金属を減らし、良好な潤滑性を有し、且つ、保存安定性が良好な潤滑油組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで本発明者等鋭意検討し、金属を含まず、且つ、保存安定性が良好な潤滑油の添加剤を見出し、本発明に至った。即ち、本発明は、下記の一般式(1)
【0008】
【化1】

【0009】
(Rは炭素数6〜20の脂肪族炭化水素基を表し、Aは窒素原子を含んでもよい炭素数3〜6で水酸基を2〜4個有するアルコールから1つの水酸基を除いた残基を表し、nは0又は1の数を表す。)
で表される化合物(a)と、下記の一般式(2)
【0010】
【化2】

【0011】
(R'は炭素数6〜20の脂肪族炭化水素基を表し、A'は窒素原子を含んでもよい炭素数3〜6で水酸基を2〜4個有するアルコールから2つの水酸基を除いた残基を表し、mは0又は1の数を表す。)
で表される化合物(b)の割合が、(a)/(b)=100/0〜70/30(質量比)である(X)成分と、25℃で液状の炭素数6〜20の直鎖モノアルコール(Y)成分とを、(X)/(Y)=90/10〜30/70(質量比)の割合で含有することを特徴とする潤滑剤組成物である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の効果は、金属を含まず、良好な潤滑性を有し、且つ、保存安定性が良好な潤滑油組成物を提供したことにある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の(X)成分中の(a)及び(b)は、下記一般式(1)及び(2)で表される、エステル又はエーテル化合物である。下記一般式(1)
【0014】
【化3】

【0015】
(Rは炭素数6〜20の脂肪族炭化水素基を表し、Aは窒素原子を含んでもよい炭素数3〜6で水酸基を2〜4個有するアルコールから1つの水酸基を除いた残基を表し、nは0又は1の数を表す。)で表される化合物(a)と、下記一般式(2)
【0016】
【化4】

【0017】
(R'は炭素数6〜20の脂肪族炭化水素基を表し、A'は窒素原子を含んでもよい炭素数3〜6で水酸基を2〜4個有するアルコールから2つの水酸基を除いた残基を表し、mは0又は1の数を表す。)で表される化合物(b)の割合が、(a)/(b)=100/0〜70/30(質量比)である。
【0018】
一般式(1)のA及び一般式(2)のA'は、窒素原子を含んでもよい炭素数3〜6で水酸基を2〜4個有するアルコールから1つ又は2つの水酸基を除いた残基である。こうしたA又はA'由来のアルコールとしては、例えば、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、イソプレングリコール(3−メチル−1,3−ブタンジオール)、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ジエタノールアミン、ジプロパノールアミン等の2価のアルコール;グリセリン、1,2,3−ブタントリオール、1,2,4−ブタントリオール、2−メチル−1,2,3−プロパントリオール、1,2,3−ペンタントリオール、1,2,4−ペンタントリオール、1,3,5−ペンタントリオール、2,3,4−ペンタントリオール、2−メチル−2,3,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、2,3,4−ヘキサントリオール、2−エチル−1,2,3−ブタントリオール、トリメチロールプロパン、トリエタノールアミン等の3価のアルコール;ジグリセリン、ペンタエリスリトール、1,2,3,4−ペンタンテトロール、2,3,4,5−ヘキサンテトロール、1,2,4,5−ペンタンテトロール、1,3,4,5−ヘキサンテトロール、ジグリセリン、ジトリメチロールプロパン、ソルビタン等の4価のアルコールが挙げられる。
【0019】
これらのアルコールの中でも、潤滑性が良好なことから、グリセリン、ジグリセリン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンがより好ましく、グリセリン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンが更に好ましく、グリセリンが最も好ましい。アルコールの水酸基の数が1の場合は潤滑性に劣り、水酸基の数が5以上になると油への溶解性が悪くなって保存安定性が悪化する。
【0020】
一般式(1)のR及び一般式(2)のR'は炭素数6〜20の脂肪族炭化水素基を表す。こうしたR及びR'としては、例えば、アルコール又は脂肪酸から誘導されるものであり、n及びmが0のときはROH又はR'OHで表されるアルコールから誘導され、n及びmが1のときはRCOOH又はR'COOHで表される脂肪酸から誘導される。
【0021】
ROH及びR'OHで表されるアルコールとしては、例えば、ヘキサノール、2級ヘキサノール、ヘプタノール、2級ヘプタノール、オクタノール、2−エチルヘキサノール、2級オクタノール、ノナノール、2級ノナノール、デカノール、2級デカノール、ウンデカノール、2級ウンデカノール、ドデカノール、2級ドデカノール、トリデカノール、イソトリデカノール、2級トリデカノール、テトラデカノール、2級テトラデカノール、ヘキサデカノール、2級ヘキサデカノール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、エイコサノール等が挙げられる。
【0022】
またRCOOH又はR'COOHで表される脂肪酸としては、例えば、ヘプタン酸、イソヘプタン酸、オクタン酸(カプリル酸)、2−エチルヘキサン酸、イソオクタン酸、ノナン酸(ペラルゴン酸)、イソノナン酸、デカン酸(カプリン酸)、イソデカン酸、ウンデカン酸、イソウンデカン酸、ドデカン酸(ラウリン酸)、イソドデカン酸、トリデカン酸、イソトリデカン酸、テトラデカン酸(ミリスチン酸)、ヘキサデカン酸(パルミチン酸)、オクタデカン酸(ステアリン酸)、イソステアリン酸、エイコサン酸(アラキン酸)、10−ウンデセン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ガドレン酸等が挙げられる。
【0023】
これらのアルコール又は脂肪酸の中でも、溶解性と潤滑性のバランスから、炭素数10〜20のアルコール又は脂肪酸が好ましく、炭素数12〜18のアルコール又は脂肪酸がより好ましく、オレイルアルコール、オレイン酸が更に好ましい。Rの炭素数が6未満の場合は潤滑性が不良になり、20を超えると溶解性が急激に悪化する。
【0024】
一般式(1)及び一般式(2)で表される化合物は、n及びmの値が1のときエステル化合物になり、n及びmの値が0のときはエーテル化合物になる。これらの化合物は公知の方法であればいずれの方法を用いて製造してもよく、エステル化合物は、例えば、上記の脂肪酸とA又はA'由来のアルコールとをエステル化反応させる方法や、上記の脂肪酸由来の脂肪酸メチルエステルとA又はA'由来のアルコールとをエステル化反応する方法が挙げられるが、反応が容易に進行することから、原料に脂肪酸メチルエステルを使用する方法が好ましい。具体的な製造方法としては、A又はA'由来のアルコール1モルに対して、脂肪酸又は脂肪酸メチルエステルを1〜2モル添加し、触媒を加えて120〜220℃程度に加熱し、減圧にて脱水又は脱メタノール反応を2〜20時間行えばよい。このとき、原料の配合比等によってモノエステルである化合物(a)や、ジエステルである化合物(b)の混合物が得られるが、良好な潤滑性を得るためには、モノエステルの比が70質量%以上である必要があり、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましい。モノエステルの比を上げるためには、脂肪酸又は脂肪酸メチルエステルの配合比を少なくして反応させた後に未反応のアルコールを除去するか、未反応のアルコールが出ないように反応させた後に生成したジエステルやトリエステルを蒸留等で除去すればよい。但し、モノエステルの比を100質量%にするには過度な蒸留や複数回の精製等が必要になり、経済的に有利であるとは言えないため、最も好ましいモノエステルの比は90〜99質量%である。
【0025】
またエーテル化合物は、例えば、上記ROHで表されるアルコールとA又はA'由来のアルコールとを脱水縮合させる方法や、ROHで表されるアルコールとエポキシ基を含有したA又はA'由来のアルコールの誘導体とを反応させる方法が挙げられるが、反応が容易に進み、モノエーテルが多く生成することから原料にエポキシ基を含有したA又はA'由来のアルコールの誘導体を使用する方法が好ましい。具体的には、A又はA'由来のアルコールがグリセリンの場合であれば、触媒の存在下、ROHで表されるアルコール1モルに対して、グリシドールを1〜3モル添加して20〜90℃程度で反応させてやればよい。エーテル化合物の場合もエステル化合物と同様に、得られた化合物はモノエーテルの比が70質量%以上である必要があり、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましい。この中でもモノエーテルの比が100質量%のものが最も好ましい。
【0026】
上記エステル化合物及び/又はエーテル化合物である(X)成分は、金属を含有しない潤滑油添加剤として高い性能を持つが、鉱油や合成油等の基油に溶解させた場合保存安定性が悪く、低温時に(X)成分が析出してくる場合や、常温で保存していても経時で潤滑油全体が白濁してくる場合がある。そうしたことから、通常(X)成分が含有された潤滑油を使う場合は、常に加温や混合を行ってから使用する必要があり、使い勝手の悪さや、加温による潤滑油の劣化等の問題がある。
【0027】
そこで、本発明の(Y)成分である25℃で液状の炭素数6〜20の直鎖モノアルコールを(X)成分と同時に基油へ添加すると、潤滑油組成物の安定性が大幅に向上する。具体的な(Y)成分としては、例えば、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ドデカノール等の直鎖飽和アルコール;へキセノール、ヘプテノール、オクテノール、ノネノール、デセノール、ウンデセノール、ドデセノール、トリデセノール、テトラデセノール、ペンタデセノール、ヘキサデセノール、ヘプタデセノール、オクタデセノール、ノナデセノール、エイコセノール等の直鎖不飽和アルコールが挙げられる。炭素数が6より小さい場合や、20より大きい場合、及び分岐鎖のアルコールは、潤滑油組成物を安定化させる効果に劣る場合や、潤滑油組成物の性能が悪化する場合がある。また、炭素数が6〜20であっても25℃で液状でない直鎖モノアルコールも潤滑油組成物を安定化させる効果に劣る。これらの(Y)成分の中でも、安定性の効果が大きく、潤滑性能を悪化させないことから、炭素数8〜12の直鎖飽和アルコール、炭素数14〜18の直鎖不飽和アルコールが好ましい。
【0028】
本発明の潤滑油組成物は、基油に本発明の潤滑剤組成物を添加したものである。基油としては、例えば、鉱油、合成油、油脂等が挙げられる。これらの中でも、製品の安定性に問題のある鉱油や合成油に本発明の潤滑剤組成物は効果を発揮する。
【0029】
ここで鉱油及び合成油について詳しく説明する。鉱油は、天然の原油から分離されるものであり、これを蒸留、精製等を行って製造される。鉱油の主成分は炭化水素(多くはパラフィン類である)であるが、その他ナフテン分、芳香族分等を含有している。一般に、パラフィン系鉱油又はナフテン系鉱油とよばれる鉱油は、鉱油を水素化精製、溶剤脱れき、溶剤抽出、溶剤脱ろう、水添脱ろう、接触脱ろう、水素化分解、アルカリ蒸留、硫酸洗浄、白土処理等の精製を行うことで得られる鉱油のことであり、本発明にはいずれの鉱油も使用することができる。また、合成油は化学的に合成された潤滑油であって、例えば、ポリ−α−オレフィン、ポリイソブチレン(ポリブテン)、ジエステル、ポリオールエステル、リン酸エステル、ケイ酸エステル、ポリアルキレングリコール、ポリフェニルエーテル、シリコーン、フッ素化化合物、アルキルベンゼン等が挙げられる。これらの中でも、ポリ−α−オレフィン、ポリイソブチレン(ポリブテン)、ジエステル、ポリオールエステル、ポリアルキレングリコールを好適に使用することができる。
【0030】
本発明の潤滑剤組成物は上記の(X)成分と(Y)成分からなるものであるが、(X)成分と(Y)成分の配合割合は、(X)/(Y)=90/10〜30/70(質量比)の割合である必要があり、(X)/(Y)=90/10〜50/50(質量比)であることが好ましい。(Y)成分がこの範囲より少ない場合は安定化する効果が現れず、(Y)成分が多すぎると良好な潤滑性が得られない。また、本発明の潤滑油組成物は、上記の基油に本発明の潤滑剤組成物を添加したものであり、その添加量としては、潤滑油組成物全量に対して(X)成分と(Y)成分の合計量が0.1〜20質量%になるように添加するのが好ましく、0.1〜10質量%がより好ましく、0.2〜5質量%が更に好ましい。添加量が多すぎると潤滑油組成物の安定性が悪くなる場合があり、少なすぎると潤滑油としての効果が発揮できない場合がある。
【0031】
本発明の潤滑油組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲内で他の成分を含有してもよい。他の潤滑油添加剤としては、例えば、油性剤、摩擦緩和剤、極圧剤、酸化防止剤、清浄剤、分散剤、粘度指数向上剤、消泡剤、防錆剤、流動点降下剤、乳化剤、界面活性剤、防腐剤、金属不活性剤等が挙げられる。
【0032】
油性剤としては、例えば、カプリン酸、カプロン酸、ペラルゴン酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、アラキン酸、ガドレン酸、ベヘニン酸、エルカ酸、リグノセリン酸、セラコレイン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸、セロプラスチン酸、リシノレイン酸、12−ヒドロキシステアリン酸等の脂肪酸;ダイマー酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等のジカルボン酸;ラウリルアミン、ミリスチルアミン、パルミチルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン等のアミン類;ラウリルアミド、ミリスチルアミド、パルミチルアミド、ステアリルアミド、オレイルアミド等のアミド;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−長鎖アルキルアルカノールアミン等のアルカノールアミン類が挙げられる。尚、アルカノールアミン又はN−長鎖アルキルアルカノールアミンは、防錆剤又は防腐剤として作用する場合もある。
【0033】
摩擦緩和剤としては、例えば、硫化オキシモリブデンジアルキルジチオカーバメート、硫化オキシモリブデンジアルキルジチオホスフェート、ジンクジアルキルジチオホスフェート、ジンクジアルキルジチオカーバメート等の金属塩類等が挙げられる。これらの化合物のなかには、酸化防止性能を有するものもある。
【0034】
極圧剤としては、例えば、硫化オレフィン、硫化パラフィン、硫化ポリオレフィン、硫化ラード、硫化魚油、硫化鯨油、硫化大豆油、硫化ピネン油、硫化フェノール、硫化アルキルフェノール、硫化脂肪酸、ジアルキルポリスルフィド、ジベンジルジスルフィド、ジフェニルジスルフィド、ポリフェニレンスルフィド、アルキルメルカプタン、アルキルスルホン酸、ジチオカルバミン酸エステル、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール誘導体、チウラムジスルフィド、ジアルキルジチオリン酸2量体等の硫黄系化合物;ブチル(チオ、ジチオ)ホスフェート又はホスファイト、ヘキシル(チオ、ジチオ)ホスフェート又はホスファイト、オクチル(チオ、ジチオ)ホスフェート又はホスファイト、2−エチルヘキシル(チオ、ジチオ)ホスフェート又はホスファイト、ノニル(チオ、ジチオ)ホスフェート又はホスファイト、デシル(チオ、ジチオ)ホスフェート又はホスファイト、ラウリル(チオ、ジチオ)ホスフェート又はホスファイト、ミリスチル(チオ、ジチオ)ホスフェート又はホスファイト、パルミチル(チオ、ジチオ)ホスフェート又はホスファイト、ステアリル(チオ、ジチオ)ホスフェート又はホスファイト、オレイル(チオ、ジチオ)ホスフェート又はホスファイト、フェニル(チオ、ジチオ)ホスフェート又はホスファイト、クレジル(チオ、ジチオ)ホスフェート又はホスファイト等の(チオ、ジチオ)リン酸又は亜リン酸系化合物等が挙げられる。これらの化合物のなかには、酸化防止性能を有するものもある。
【0035】
フェノール系酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−tert.−ブチルフェノール(以下、tert.−ブチルをt−ブチルと略記する。)、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、2,4−ジメチル−6−t−ブチルフェノール、4,4'−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、4,4'−ビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、4,4'−ビス(2−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2'−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4'−イソプロピリデンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−ノニルフェノール)、2,2'−イソブチリデンビス(4,6−ジメチルフェノール)、2,6−ビス(2'−ヒドロキシ−3'−t−ブチル−5'−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、3−t−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、2−t−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオン酸ステアリル、3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオン酸オレイル、3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオン酸ドデシル、3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオン酸デシル、3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオン酸オクチル、テトラキス{3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオニルオキシメチル}メタン、3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオン酸グリセリンモノエステル、3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオン酸とグリセリンモノオレイルエーテルとのエステル、3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオン酸ブチレングリコールエステル、3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオン酸チオジグリコールエステル、4,4'−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4'−チオビス(2−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2'−チオビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,6−ジ−t−ブチル−α−ジメチルアミノ−p−クレゾール、2,6−ジ−t−ブチル−4−(N,N'−ジメチルアミノメチルフェノール)、ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)サルファイド、トリス{(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル−オキシエチル}イソシアヌレート、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、ビス{2−メチル−4−(3−n−アルキルチオプロピオニルオキシ)−5−t−ブチルフェニル}サルファイド、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌレート、テトラフタロイル−ジ(2,6−ジメチル−4−t−ブチル−3−ヒドロキシベンジルサルファイド)、6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−2,4−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン、2,2−チオ−{ジエチル−ビス−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)}プロピオネート、N,N'−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシナミド)、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジル−リン酸ジエステル、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルベンジル)サルファイド、3,9−ビス〔1,1−ジメチル−2−{β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、ビス{3,3'−ビス−(4'−ヒドロキシ−3'−t−ブチルフェニル)ブチリックアシッド}グリコールエステル等が挙げられる。
【0036】
アミン系酸化防止剤としては、例えば、1−ナフチルアミン、フェニル−1−ナフチルアミン、p−オクチルフェニル−1−ナフチルアミン、p−ノニルフェニル−1−ナフチルアミン、p−ドデシルフェニル−1−ナフチルアミン、フェニル−2−ナフチルアミン等のナフチルアミン系酸化防止剤;N,N'−ジイソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N'−ジイソブチル−p−フェニレンジアミン、N,N'−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N,N'−ジ−β−ナフチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N'−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N−シクロヘキシル−N'−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−1,3−ジメチルブチル−N'−フェニル−p−フェニレンジアミン、ジオクチル−p−フェニレンジアミン、フェニルヘキシル−p−フェニレンジアミン、フェニルオクチル−p−フェニレンジアミン等のフェニレンジアミン系酸化防止剤;ジピリジルアミン、ジフェニルアミン、p,p'−ジ−n−ブチルジフェニルアミン、p,p'−ジ−t−ブチルジフェニルアミン、p,p'−ジ−t−ペンチルジフェニルアミン、p,p'−ジオクチルジフェニルアミン、p,p'−ジノニルジフェニルアミン、p,p'−ジデシルジフェニルアミン、p,p'−ジドデシルジフェニルアミン、p,p'−ジスチリルジフェニルアミン、p,p'−ジメトキシジフェニルアミン、4,4'−ビス(4−α,α−ジメチルベンゾイル)ジフェニルアミン、p−イソプロポキシジフェニルアミン、ジピリジルアミン等のジフェニルアミン系酸化防止剤;フェノチアジン、N−メチルフェノチアジン、N−エチルフェノチアジン、3,7−ジオクチルフェノチアジン、フェノチアジンカルボン酸エステル、フェノセレナジン等のフェノチアジン系酸化防止剤が挙げられる。
【0037】
硫黄系酸化防止剤としては、例えば、ジオクチルチオジプロピオネート、ジデシルチオジプロピオネート、ジラウリルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ラウリルステアリルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、ジステアリル−β,β'−チオジブチレート、(3−オクチルチオプロピオン酸)ペンタエリスリトールテトラエステル、(3−デシルチオプロピオン酸)ペンタエリスリトールテトラエステル、(3−ラウリルチオプロピオン酸)ペンタエリスリトールテトラエステル、(3−ステアリルチオプロピオン酸)ペンタエリスリトールテトラエステル、(3−オレイルチオプロピオン酸)ペンタエリスリトールテトラエステル、2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプトメチルベンズイミダゾール、2−ベンズイミダゾールジスルフィド、ジラウリルサルファイド、アミルチオグリコレート等が挙げられる。
金属塩系酸化防止剤としては、例えば、ニッケルジチオカーバメート、ジンク−2−メルカプトベンズイミダゾール等が挙げられる。
【0038】
防錆剤としては、例えば、カルシウムスルホネート、カルシウムフェネート、カルシウムサリシレート、マグネシウムスルホネート、マグネシウムフェネート、マグネシウムサリシレート、バリウムスルホネート、バリウムフェネート、バリウムサリシレート、グリセリンモノオレート、グリセリンモノラウレート、グリセリンモノステアレート、ソルビタンモノオレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、アルケニルコハク酸、アルケニルコハク酸誘導体、ソルビタンモノオレート、ペンタエリスリトールモノオレエート、グリセリンモノオレート、アミンフォスフェート等が挙げられる。
【0039】
分散剤としては、例えば、ポリアルケニルコハク酸モノイミド又はビスイミド、ポリアルケニルコハク酸モノイミド又はビスイミドホウ酸変性物、ポリアルケニルコハク酸エステル、ベンジルアミン等が挙げられる。粘度指数向上剤としては、例えば、ポリ(メタ)アクリレート、ポリイソブチレン、ポリスチレン、エチレン−プロピレン共重合体、スチレン−イソブチレン共重合体等が挙げられる。
銅腐食防止剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0040】
界面活性剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールモノアルキル(アリール)エーテル、ポリエチレングリコールジアルキル(アリール)エーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体、ポリオールエステル、ポリエーテルポリオール、アルカノールアミド、アルキルベンゼンスルホン酸、石油スルホネート等が挙げられ、これら界面活性剤は油性剤又は乳化剤としても作用することがある。
【0041】
金属不活性剤としては、アリザニン、キニザリン、メルカプトベンゾチアゾール、N,N’−ジサリチリデン−1,2−ジアミノエタンなどが挙げられる。
粘度指数向上剤としてはポリメタクリレート、ポリイソブチレン、オレフィン共重合体、ポリアルキルスチレンなどが挙げられる。
防腐剤としては、ベンゾトリアゾール、脂肪族アミン類やアルケニルコハク酸エステル等が挙げられる。
【0042】
消泡剤としては、ジメチルポリシロキサン等のシリコーン油やジエチルシリケート等のオルガノシリケート類、フルオロシリコーン等のオルガノシリケート類、ポリアルキルアクリレート等の非シリコーン系消泡剤等が挙げられる。
【0043】
本発明の潤滑油組成物は、あらゆる分野で使用することができる。使用することができる潤滑油の分野としては、例えば、ギア油、タービン油、摺動面油、エンジン油、作動油、金属加工油、圧縮材油、油圧油、グリース基油、熱媒体油、工作機械油、歯車油、軸受油等が挙げられるが、特にギア油、タービン油、摺動面油、油圧油、軸受油、金属加工油に使用することが好ましい。
【実施例】
【0044】
以下本発明を実施例により、具体的に説明する。尚、以下の実施例等において%及びppmは特に記載が無い限り質量基準である。
下記に示す添加剤及び可溶化剤を表1に示す配合に従って、鉱油に溶解させて試験を実施した。
<添加剤:(X)成分>
(L−1)オレイルグリセリルエステル(モノエステル90%、ジエステル10%)
(L−2)オレイルグリセリルエステル(モノエステル70%、ジエステル30%)
(L−3)パルミチルグリセリルエステル(モノエステル90%、ジエステル10%)
(L−4)ラウリルグリセリルエステル(モノエステル90%、ジエステル10%)
(L−5)オレイルジグリセリルエステル(モノエステル90%、ジエステル10%)
(L−6)オレイルグリセリルエーテル(モノエーテル100%)
(L−7)オレイルトリエタノールアミンエステル(モノエステル90%、ジエステル10%)
(L−8)ドデシルグリセリルエーテル(モノエーテル100%)
(M−1)オレイルグリセリルエステル(モノエステル50%、ジエステル50%)
(M−2)ジオレイルグリセリルエステル(ジエステル100%)
(M−3)テトラコシルグリセリルエステル(モノエステル90%、ジエステル10%)
<可溶化剤:(Y)成分>
(N−1)ラウリルアルコール
(N−2)オレイルアルコール
(O−1)ブタノール
(O−2)2−エチルヘキサノール(分岐アルコール)
(O−3)ステアリルアルコール(25℃で固体)
【0045】
<溶解性試験>
上記添加剤、可溶化剤を表1に示した配合で混合した。続いて、この混合物を鉱油に0.5%溶解させ、試験を行った。即ち、各添加剤を調整後、25℃で1時間攪拌した。25℃、及び、0℃で24時間静置したのち、目視で沈殿の有無を確認した。この結果を表1に示す。完全に溶解し、沈殿がなかったものには○、沈殿が生じたものについて×で示す。
<摩擦試験>
続いて、溶解性試験に使用した混合物中の添加剤が鉱油に対して0.5%になるように溶解させ、摩擦試験を行った。試験は、バウデンレーベン試験機(新東科学製)を用いて行った。下記の条件下、試験板と試験鋼球を接触させることで、両媒体間に生じる摩擦を測定し求めた。
試験機:バウデンレーベン試験機(新東科学製)
試験温度:80℃
荷重:800g
ストローク長さ:10mm
速度:20mm/s
往復回数:2000回
以上の条件で、摩擦係数を測定した結果を表1に示す。
【0046】
【表1】

【0047】
表1より、本発明品は可溶化剤と組み合わせることで、溶解性が向上しており、安定な潤滑油を得られたことがわかる。また比較例を見ると、溶解性の良いものは摩擦係数が悪く、摩擦係数が良いものは溶解性が悪い。以上より、本発明品は、良好な潤滑性を有し、且つ、安定性が良好なバランスの良い潤滑油組成物であることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の一般式(1)
【化1】

(Rは炭素数6〜20の脂肪族炭化水素基を表し、Aは窒素原子を含んでもよい炭素数3〜6で水酸基を2〜4個有するアルコールから1つの水酸基を除いた残基を表し、nは0又は1の数を表す。)
で表される化合物(a)と、下記の一般式(2)
【化2】

(R'は炭素数6〜20の脂肪族炭化水素基を表し、A'は窒素原子を含んでもよい炭素数3〜6で水酸基を2〜4個有するアルコールから2つの水酸基を除いた残基を表し、mは0又は1の数を表す。)
で表される化合物(b)の割合が、(a)/(b)=100/0〜70/30(質量比)である(X)成分と、25℃で液状の炭素数6〜20の直鎖モノアルコール(Y)成分とを、(X)/(Y)=90/10〜30/70(質量比)の割合で含有することを特徴とする潤滑剤組成物。
【請求項2】
A及びA'が、グリセリン、ジグリセリン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種のアルコールから1つ又は2つの水酸基を除いた残基であることを特徴とする請求項1に記載の潤滑剤組成物。
【請求項3】
(Y)成分が、炭素数8〜12の直鎖飽和モノアルコール又は炭素数14〜18の直鎖不飽和モノアルコールであることを特徴とする請求項1又は2に記載の潤滑剤組成物。
【請求項4】
基油に請求項1〜3のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物を0.1〜20質量%含有した潤滑油組成物。

【公開番号】特開2009−67873(P2009−67873A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−236994(P2007−236994)
【出願日】平成19年9月12日(2007.9.12)
【出願人】(000000387)株式会社ADEKA (987)
【Fターム(参考)】