説明

潤滑油組成物

【課題】防錆性が良好で、かつ、低い摩擦係数を有する省エネ性に優れた潤滑油組成物を得ようとする。
【解決手段】鉱油系基油や合成油基油に、アスパラギン酸誘導体とコハク酸誘導体を組み合わせて添加し、潤滑油組成物とする。アスパラギン酸誘導体とコハク酸誘導体の相乗作用により、防錆性が良好で、かつ低摩擦性の潤滑油組成物を得ることができる。また、アミン化合物、アミド化合物、アルコール化合物、カルボン酸化合物、エステル化合物などを更に添加することによって、一段と優れた低摩擦性が得られる。この潤滑油組成物は、精製度の高い基油を用いた工業用潤滑油全般に適用でき、特に機械油、油圧作動油、タービン油、コンプレッサー油、歯車油、擦動面油、軸受油、キャリブレーション油として好適に使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑油組成物に関し、その中でも精製度の高い基油を用いた工業用の潤滑油に関し、特に機械油、油圧作動油、タービン油、コンプレッサー油、歯車油、擦動面油、軸受油、キャリブレーション油として使用する潤滑油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
機械設備に使用する潤滑油には、その性能を維持するために本質的に防錆性が必要とされている。これは、機械装置におけるタンク内の潤滑油温度は使用条件により上下するので、そのためタンク内の潤滑油には凝縮水が混入することがあること、また冷却水配管からの漏水により水分が混入することがあること、等によるものである。
【0003】
また近年、工業用潤滑油組成物には良好な摩擦特性が要求されている。これは、低い摩擦係数(μ)を有すること、すなわち低摩擦性を潤滑油に付与することによって、効率的に機械装置における摩擦損失を低減し、高い省エネルギー性を達成することができるためである。また、建設用機械等において油圧装置が多用されているが、油圧作動油として使用される潤滑油の摩擦係数が高い場合、油圧シリンダーの往復動によりパッキングのしゅう動部において、微小スティックスリップ現象が発生し、シリンダーのビビリ、振動、鳴き、異音発生などの現象を引き起こし、油圧装置を精度良く制御できなくなる。そこで、油圧シリンダーが正確かつスムーズに作動するようにするためには、潤滑油の低摩擦化が必要となっている。
そして、上記の如き防錆効果を得るために潤滑油組成物中に、N−アシル−N−ヒドロカーボンオキシアルキルアスパラギン酸エステルを配合することが知られている(特許文献1)。
【特許文献1】特開平6−200268
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、優れた防錆性を有すると共に、潤滑油に低摩擦性を付与し、高い省エネ性を持つ工業油潤滑油を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、鉱油系基油や合成油基油に、添加剤としてアスパラギン酸誘導体とコハク酸誘導体を組み合わせて使用すると、これら化合物の相乗作用により防錆性と共に、優れた低摩擦性が得られることを見出し、こうした知見に基づいて油圧作動油などの工業用潤滑油として好適な潤滑油組成物を得るものである。
また、アミン化合物、アミド化合物、アルコール化合物、カルボン酸化合物、エステル化合物から選ばれる少なくとも1つの化合物を更に添加することによって、一段と優れた低摩擦性の潤滑油組成物を得るものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、錆の発生を抑制し、摩擦係数が低い優れた潤滑油組成物を得ることができる。摩擦係数を低くすることにより、各種工業用の装置で発生する摩擦損失を効果的に減らすことができ、省エネルギー化を図ることができる。また、特に油圧作動油として使用した場合に、摩擦係数を低減させることにより、油圧シリンダーのビビリ、振動、鳴き、異音発生などの現象を引き起こすことなく、油圧装置を精度良く制御することができる。
この潤滑油組成物は、広く工業用潤滑油全般に使用することができ、特に機械油、油圧作動油、タービン油、コンプレッサー油、歯車油、擦動面油、軸受油、キャリブレーション油として有効に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本潤滑油組成物の基油には、高度精製基油と呼ばれる鉱油、合成油を使用することができ、特に、API(American Petroleum Institute,米国石油協会)基油カテゴリーでグループ1、グループ2、グループ3、グループ4などに属する基油を、単独または混合物として使用することができる。ここで使用する基油は、硫黄元素分が700ppm未満、好ましくは500ppm未満が良い。また密度は0.8〜0.9が良い。アロマ分は5%以下、好ましくは3%以下が良い。
【0008】
グループ1基油には、例えば、原油を常圧蒸留して得られる潤滑油留分に対して、溶剤精製、水素化精製、脱ろうなどの精製手段を適宜組み合わせて適用することにより得られるパラフィン系鉱油がある。粘度指数は80〜120、好ましくは95〜110が良い。40℃における動粘度は、好ましくは2〜680mm/s、より好ましくは8〜220mm/sである。また全硫黄分は700ppm未満、好ましくは500ppm未満が良い。全窒素分も50ppm未満、好ましくは25ppm未満が良い。さらにアニリン点は80〜150℃、好ましくは90〜120℃のものを使用するのが良い。
【0009】
グループ2基油には、例えば、原油を常圧蒸留して得られる潤滑油留分に対して、水素化分解、脱ろうなどの精製手段を適宜組み合わせて適用することにより得られたパラフィン系鉱油がある。ガルフ社法などの水素化精製法により精製されたグループ2基油は、全イオウ分が10ppm未満、アロマ分が5%以下であり、本発明に好適である。これらの基油の粘度は特に制限されないが、粘度指数は80〜120、好ましくは100〜120が良い。40℃における動粘度は、好ましくは2〜680mm/s、より好ましくは8〜220mm/sである。また全硫黄分は300ppm未満、好ましくは200ppm未満、更に好ましくは10ppm未満が良い。全窒素分も10ppm未満、好ましくは1ppm未満が良い。さらにアニリン点は80〜150℃、好ましくは100〜135℃のものを使用するのが良い。
【0010】
グループ3基油及びグループ2プラス基油には、例えば、原油を常圧蒸留して得られる潤滑油留分に対して高度水素化精製により製造されるパラフィン系鉱油や、脱ろうプロセスにて生成されるワックスをイソパラフィンに変換・脱ろうするISODEWAXプロセスにより精製された基油や、モービルWAX異性化プロセスにより精製された基油も好適である。アメリカの広告審議を担当するNAD(National Advertising Division)の評決により「合成油」として表記が可能なものを含む。これらの基油の粘度は特に制限されないが、粘度指数は95〜145、好ましくは100〜140が良い。40℃における動粘度は、好ましくは2〜680mm/s、より好ましくは8〜220mm/sである。また全硫黄分は、0〜100ppm、好ましくは10ppm未満が良い。全窒素分も10ppm未満、好ましくは1ppm未満が良い。さらにアニリン点は80〜150℃、好ましくは110〜135℃のものを使用するのが良い。
【0011】
天然ガスの液体燃料化技術のフィッシャートロプッシュ法により合成されたGTL(ガストゥリキッド)は、原油から精製された鉱油基油と比較して、硫黄分や芳香族分が極めて低く、パラフィン構成比率が極めて高いため、酸化安定性に優れ、蒸発損失も非常に小さいため、本発明の基油として好適である。GTL基油の粘度性状は特に制限されないが、通例粘度指数は130〜180、より好ましくは140〜175である。また40℃における動粘度は、2〜680mm/s、より好ましくは5〜120mm/sである。また通例全硫黄分は10ppm未満、全窒素分1ppm未満である。そのようなGTL基油商品の一例として、SHELL XHVI(登録商標)がある。
【0012】
また、その他の合成油としては、例えば、ポリオレフィン、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、エステル、ポリオキシアルキレングリコール、ポリフェニルエーテル、ジアルキルジフェニルエーテル、含フッ素化合物(パーフルオロポリエーテル、フッ素化ポリオレフィン等)、シリコーン油などが挙げられる。
【0013】
上記ポリオレフィンには、各種オレフィンの重合物又はこれらの水素化物が含まれる。オレフィンとしては任意のものが用いられるが、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、炭素数5以上のα−オレフィン、例えばオクテン、デセン、ドデセンなどが挙げられる。ポリオレフィンの製造にあたっては、上記オレフィンの1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いても良い。特にポリαオレフィン(PAO)と呼ばれているポリオレフィンが好適であり、これはグループ4基油である。これら合成基油の粘度は特に制限されないが、40℃における動粘度は、好ましくは2〜680mm/s、より好ましくは8〜220mm/sである。
【0014】
本発明の潤滑油組成物における上記基油の含有量は特に制限されないが、潤滑油組成物の全量基準で60質量%以上、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上である。
【0015】
アスパラギン酸誘導体は、一般式1に示すものである。
【化1】

【0016】
上記一般式1中、X及びXは各々水素又は炭素数3〜6の同一または異なったアルキル基、アルケニル基、若しくはヒドロキシアルキル基であり、好ましくはそれぞれが2−メチルプロピル基やターシャリーブチル基が良い。Xは炭素数1〜30のアルキル基若しくはアルケニル基、エーテル結合を有するアルキル基、またはヒドロキシアルキル基である。例えば、オクタデシル基、アルコキシプロピル基、3−(C〜C18)ヒドロカーボンオキシ(C〜C)アルキル基、更に好ましくは、シクロヘキシルオキシプロピル基、3−オクチルオキシプロピル基、3−イソオクチルオキシプロピル基、3−デシルオキシプロピル基、3−イソデシルオキシプロピル基、3−(C12〜C16)アルコキシプロピル基が良い。Xは炭素数1〜30の飽和若しくは不飽和カルボン酸基、または炭素数1〜30のアルキル基、アルケニル基若しくはヒドロキシアルキル基である。例えばプロピオン酸基や、プロピオニル酸基が良い。
【0017】
上記アスパラギン酸誘導体は、JIS K2501で定める酸価が10〜200mgKOH/gのもの、好ましくは50〜150mgKOH/gのものが良い。アスパラギン酸誘導体は、潤滑油組成物中に約0.001〜0.5質量%程度、好ましくは約0.001〜0.1質量%程度、より好ましくは約0.005〜0.05質量%程度で用いられる。このアスパラギン酸誘導体は、1種で又は数種を混ぜて使用することができる。
【0018】
コハク酸誘導体は、一般式2に示すものである。
【化2】

【0019】
上記一般式2中、X及びXは各々水素又は炭素数3〜6の同一または異なったアルキル基、アルケニル基、若しくはヒドロキシアルキル基であり、好ましくは、水素原子、1−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシプロピル基、2−メチルプロピル基、ターシャリーブチル基が良い。Xは炭素数1〜30のアルキル基若しくはアルケニル基、エーテル結合を有するアルキル基、またはヒドロキシアルキル基である。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、ドデシレン基、トリデシル基、テトラデシル基、テトラデシレン基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、オクタデシレン基、エイコシル基、ドコシル基、アルコキシプロピル基、3−(C〜C18)ヒドロカーボンオキシ(C〜C)アルキル基、更に好ましくは、テトライソプロピル基、オレイル基、シクロヘキシルオキシプロピル基、3−オクチルオキシプロピル基、3−イソオクチルオキシプロピル基、3−デシルオキシプロピル基、3−イソデシルオキシプロピル基、3−(C12〜C16)アルコキシプロピル基が良い。またこれらの化合物のアミン化物でも良い。
【0020】
上記コハク酸誘導体は、JIS K2501で定める酸価が10〜300mgKOH/gのもの、好ましくは30〜200mgKOH/gのものが良い。コハク酸誘導体は、潤滑油組成物中に約0.001〜0.5質量%程度、好ましくは約0.001〜0.1質量%程度、より好ましくは約0.005〜0.05質量%程度で用いられる。このコハク酸誘導体は、1種で又は数種を混ぜて使用することができる。
【0021】
この潤滑油組成物中には、アミン化合物を配合することができる。こうしたアミン化合物としては脂肪族アミン化合物を用いることができ、一般式(3)に示される一級アミン、一般式(4)に示される二級アミン、一般式(5)に示される三級アミン、および一般式(6)に示されるジアミンが挙げられる
【0022】
【化3】

上記一般式3中、Xは炭素数1〜30のアルキル基若しくはアルケニル基である。例えば、ラウリルアミン、ココナットアミン、n−トリデシルアミン、ミリスチルアミン、n−ペンタデシルアミン、n−パルミチルアミン、n−ヘプタデシルアミン、n−ステアリルアミン、イソステアリルアミン、n−ノナデシルアミン、n−エイコシルアミン、n−ヘンエイコシルアミン、n−ドコシルアミン、n−トリコシルアミン、n−ペンタコシルアミン、オレイルアミン、牛脂アミン、水素化牛脂アミン、大豆アミン等が挙げられる。好ましくはXの炭素数は8〜24、更に好ましくは12〜18が良い。またXは直鎖脂肪族でも、分岐脂肪族でも、三級アルキル基でも良い。
【0023】
【化4】

上記一般式4中、XおよびX10は炭素数1〜30のアルキル基若しくはアルケニル基である。例えば、ジラウリルアミン、ジココナットアミン、ジn−トリデシルアミン、ジn−ミリスチルアミン、ジn−ペンタデシルアミン、ジn−パルミチルアミン、ジn−ヘプタデシルアミン、ジn−ステアリルアミン、ジイソステアリルアミン、ジn−ノナデシルアミン、ジn−エイコシルアミン、ジn−ヘンエイコシルアミン、ジn−ドコシルアミン、ジn−トリコシルアミン、ジn−ペンタコシルアミン、ジオレイルアミン、ジ牛脂アミン、ジ水素化牛脂アミン、ジ大豆アミン等が挙げられる。好ましくはXおよびX10の炭素数は8〜24、更に好ましくは12〜18が良い。XおよびX10は同一でも、異なっていても良い。
【0024】
【化5】

上記一般式5中、X21は炭素数1〜30のアルキル基若しくはアルケニル基であり、好ましくはX21の炭素数は1〜20が良い。X22、X23は炭素数1〜20のアルキル基、アルケニル基、若しくはヒドロキシアルキル基であり、好ましくはX22、X23の炭素数が1〜18が良い。X22及びX23は、同じでもよく、異なっていてもよい。X21がメチル基であるものとして、例えば、ジオクチルメチルアミン、ジノニルメチルアミン、ジデシルメチルアミン、ジウンデシルメチルアミン、ジラウリルメチルアミン、ジトリデシルメチルアミン、ジミリスチルメチルアミン、ジテトラデシルメチルアミン、ジペンタデシルメチルアミン、ジパルミチルメチルアミン、ジヘプタデシルメチルアミン、ジオレイルメチルアミン、ジステアリルメチルアミン、ジイソステアリルメチルアミン、ジノナデシルメチルアミン、ジエイコシルメチルアミン、ジココナットメチルアミン、ジ牛脂メチルアミン、ジ水素化牛脂メチルアミン、ジ大豆メチルアミン、等のジアルキルメチルアミン類がある。
また、X22、X23がメチル基であるものとして、例えばオクチルジメチルアミン、ノニルジメチルアミン、デシルジメチルアミン、ウンデシルジメチルアミン、ラウリルジメチルアミン、トリデシルジメチルアミン、ミリスチルジメチルアミン、テトラデシルジメチルアミン、ペンタデシルジメチルアミン、パルミチルジメチルアミン、ヘプタデシルジメチルアミン、オレイルジメチルアミン、ステアリルジメチルアミン、イソステアリルジメチルアミン、ノナデシルジメチルアミン、エイコシルジメチルアミン、ココナットジメチルアミン、牛脂ジメチルアミン、水素化牛脂ジメチルアミン、大豆ジメチルアミン、等のアルキルジメチルアミン類がある。
また、X22、X23がヒドロキシアルキル基であるものとして、例えば、N−オクチルジエタノールアミン、N−ノニルジエタノールアミン、N−デシルジエタノールアミン、N−ウンデシルジエタノールアミン、N−ラウリルジエタノールアミン、N−トリデシルジエタノールアミン、N−ミリスチルジエタノールアミン、N−テトラデシルジエタノールアミン、N−ペンタデシルジエタノールアミン、N−パルミチルジエタノールアミン、N−ヘプタデシルジエタノールアミン、N−オレイルジエタノールアミン、N−ステアリルジエタノールアミン、N−イソステアリルジエタノールアミン、N−ノナデシルジエタノールアミン、N−エイコシルジエタノールアミン、N−ココナットジエタノールアミン、N−牛脂ジエタノールアミン、N−水素化牛脂ジエタノールアミン、N−大豆ジエタノールアミン等のN−アルキルジエタノールアミン類、またN−オクチルジプロパノールアミン、N−ノニルジプロパノールアミン、N−デシルジプロパノールアミン、N−ウンデシルジプロパノールアミン、N−ラウリルジプロパノールアミン、N−トリデシルジプロパノールアミン、N−ミリスチルジプロパノールアミン、N−テトラデシルジプロパノールアミン、N−ペンタデシルジプロパノールアミン、N−パルミチルジプロパノールアミン、N−ヘプタデシルジプロパノールアミン、N−オレイルジプロパノールアミン、N−ステアリルジプロパノールアミン、N−イソステアリルジプロパノールアミン、N−ノナデシルジプロパノールアミン、N−エイコシルジプロパノールアミン、N−ココナットジプロパノールアミン、N−牛脂ジプロパノールアミン、N−水素化牛脂ジプロパノールアミン、N−大豆ジプロパノールアミン等のN−アルキルジプロパノールアミン類がある。
【0025】
【化6】

上記一般式6中、X13は炭素数1〜30のアルキル基若しくはアルケニル基である。好ましくはX13の炭素数は8〜24、更に好ましくは12〜18が良い。X14は炭素数1〜12のアルキレンル基である。好ましくはX14の炭素数は1〜8、更に好ましくは2〜4が良い。
例えば、N−オクチル−1,2−エチレンジアミン、N−ノニル−1,2−エチレンジアミン、N−デシル−1,2−エチレンジアミン、N−ウンデシル−1,2−エチレンジアミン、N−ラウリル−1,2−エチレンジアミン、N−トリデシル−1,2−エチレンジアミン、N−ミリスチル−1,2−エチレンジアミン、N−テトラデシル−1,2−エチレンジアミン、N−ペンタデシル−1,2−エチレンジアミン、N−パルミチル−1,2−エチレンジアミン、N−ヘプタデシル−1,2−エチレンジアミン、N−オレイル−1,2−エチレンジアミン、N−ステアリル−1,2−エチレンジアミン、N−イソステアリル−1,2−エチレンジアミン、N−ノナデシル−1,2−エチレンジアミン、N−エイコシル−1,2−エチレンジアミン、N−ココナット−1,2−エチレンジアミン、N−牛脂−1,2−エチレンジアミン、N−水素化牛脂−1,2−エチレンジアミン、N−大豆−1,2−エチレンジアミン、等のエチレンジアミン類がある。
また、N−オクチル−1,3−プロピレンジアミン、N−ノニル−1,3−プロピレンジアミン、N−デシル−1,3−プロピレンジアミン、N−ウンデシル−1,3−プロピレンジアミン、N−ラウリル−1,3−プロピレンジアミン、N−トリデシル−1,3−プロピレンジアミン、N−ミリスチル−1,3−プロピレンジアミン、N−テトラデシル−1,3−プロピレンジアミン、N−ペンタデシル−1,3−プロピレンジアミン、N−パルミチル−1,3−プロピレンジアミン、N−ヘプタデシル−1,3−プロピレンジアミン、N−オレイル−1,3−プロピレンジアミン、N−ステアリル−1,3−プロピレンジアミン、N−イソステアリル−1,3−プロピレンジアミン、N−ノナデシル−1,3−プロピレンジアミン、N−エイコシル−1,3−プロピレンジアミン、N−ココナット−1,3−プロピレンジアミン、N−牛脂−1,3−プロピレンジアミン、N−水素化牛脂−1,3−プロピレンジアミン、N−大豆−1,3−プロピレンジアミン、等のプロピレンジアミン類がある。
更に、N−オクチル−1,4−ブチレンジアミン、N−ノニル−1,4−ブチレンジアミン、N−デシル−1,4−ブチレンジアミン、N−ウンデシル−1,4−ブチレンジアミン、N−ラウリル−1,4−ブチレンジアミン、N−トリデシル−1,4−ブチレンジアミン、N−ミリスチル−1,4−ブチレンジアミン、N−テトラデシル−1,4−ブチレンジアミン、N−ペンタデシル−1,4−ブチレンジアミン、N−パルミチル−1,4−ブチレンジアミン、N−ヘプタデシル−1,4−ブチレンジアミン、N−オレイル−1,4−ブチレンジアミン、N−ステアリル−1,4−ブチレンジアミン、N−イソステアリル−1,4−ブチレンジアミン、N−ノナデシル−1,4−ブチレンジアミン、N−エイコシル−1,4−ブチレンジアミン、N−ココナット−1,4−ブチレンジアミン、N−牛脂−1,4−ブチレンジアミン、N−水素化牛脂−1,4−ブチレンジアミン、N−大豆−1,4−ブチレンジアミン、等のブチレンジアミン類がある。
【0026】
上記したアミン化合物は、JIS K2501で定める塩基価が10〜800mgKOH/gのもの、好ましくは100〜500mgKOH/gのものが良い。これらのアミン化合物は、単独で又は適宜に組み合わせて潤滑油組成物中に上記した群から選ばれた少なくとも1種を約0.005〜5質量%程度、好ましくは約0.01〜1質量%程度で用いると良い。
【0027】
本発明におけるアミド化合物としては、脂肪酸とモノアミンまたはポリアミンによる生成物であるアミド化合物が挙げられる。
【化7】

脂肪酸とモノアミンによるアミド化合物として、上記一般式7中、X15は炭素数1〜30のアルキル基若しくはアルケニル基である。例えば、ラウリルアミド、ココナットアミド、n−トリデシルアミド、ミリスチルアミド、n−ペンタデシルアミド、n−パルミチルアミド、n−ヘプタデシルアミド、n−ステアリルアミド、イソステアリルアミド、n−ノナデシルアミド、n−エイコシルアミド、n−ヘンエイコシルアミド、n−ドコシルアミド、n−トリコシルアミド、n−ペンタコシルアミド、オレイルアミド、牛脂アミド、水素化牛脂アミド、大豆アミド等が挙げられる。好ましくはX15の炭素数は6〜30、好ましくは8〜24、更に好ましくは12〜18が良い。またX15は直鎖脂肪族でも、分岐脂肪族でも、三級アルキル基でも良い。
【0028】
またポリアミンと脂肪酸によるアミド化合物としては、例えばイソステアリン酸トリエチレンテトラミド,イソステアリン酸テトラエチレンペンタミド,オレイン酸ジエチレントリアミド,オレイン酸ジエタノールアミドなど、炭素数6〜30、好ましくは8〜24の飽和若しくは不飽和脂肪酸と脂肪族アミン,ポリアルキレンポリアミンなどとの反応物が挙げられる。
【0029】
本発明の潤滑油組成物に対して、エステル化合物として、脂肪酸エステルを配合することができる。例えば、グリセロール、ソルビトール、アルキレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、キシリトール等の多価アルコールと、炭素数6〜30、好ましくは炭素数8〜24、更に好ましくは炭素数8〜18の飽和または不飽和脂肪酸の部分または完全エステルを用いることができる。
例えば、グリセロールエステルとして、グリセロールモノラウリレート、グリセロールモノステアレート、グリセロールモノパルミテート、グリセロールモノオレート、グリセロールジラウリレート、グリセロールジステアレート、グリセロールジパルミテート、グリセロールジオレート等がある。
ソルビトールエステルとしては、ソルビトールモノラウリレート、ソルビトールモノパルミテート、ソルビトールモノステアレート、ソルビトールモノオレート、ソルビトールジラウリレート、ソルビトールジパルミテート、ソルビトールジステアレート、ソルビトールジオレート、ソルビトールトリステアレート、ソルビトールトリラウリレート、ソルビトールトリオレート、ソルビトールテトラオレート、ソルビトールセスキオレート等が挙げられる。
アルキレングリコールエステルとしては、エチレングリコールモノラウリレート、エチレングリコールモノステアレート、エチレングリコールモノオレート、エチレングリコールジラウリレート、エチレングリコールジステアレート、エチレングリコールジオレート、プロピレングリコールモノラウリレート、プロピレングリコールモノステアレート、プロピレングリコールモノオレート、プロピレングリコールジラウリレート、プロピレングリコールジステアレート、プロピレングリコールジオレート等がある。
ネオペンチルグリコールエステルとしては、ネオペンチルグリコールモノラウリレート、ネオペンチルグリコールモノステアレート、ネオペンチルグリコールモノオレート、ネオペンチルグリコールジラウリレート、ネオペンチルグリコールジステアレート、ネオペンチルグリコールジオレート等が挙げられる。
トリメチロールプロパンエステルとしては、トリメチロールプロパンモノラウリレート、トリメチロールプロパンモノステアレート、トリメチロールプロパンモノオレート、トリメチロールプロパンジラウリレート、トリメチロールプロパンジステアレート、トリメチロールプロパンジオレート等がある。
ペンタエリスリトールエステルとしては、ペンタエリスリトールモノラウリレート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールモノオレート、ペンタエリスリトールジラウリレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールジオレート等がある。
キシリトールエステルとしては、キシリトールモノラウリレート、キシリトールモノステアレート、キシリトールモノオレート、キシリトールジラウリレート、キシリトールジステアレート、キシリトールジオレート、キシリトールトリオレート等が挙げられる。
こうした多価アルコールの脂肪酸エステルとしては、好ましくは多価アルコールと不飽和脂肪酸との部分エステルを用いると良い。
また、脂肪酸エステルとしてエポキシ化エステル化合物を配合することもできる。エポキシ化エステル化合物は、菜種油、大豆油、アマニ油、ヒマシ油、ヤシ油、パーム油、パーム核油、ひまわり油、米ぬか油、サフラワー油、牛脂、豚脂等の脂肪酸のエステルをエポキシ化して製造されたもので、例えば、エポキシ化菜種脂肪酸エステル、エポキシ化大豆脂肪酸エステル、エポキシ化アマニ脂肪酸エステル、エポキシ化ヒマシ脂肪酸エステル、エポキシ化サフラワー脂肪酸エステル等、およびエポキシ化ステアリン酸メチル、エポキシ化ステアリン酸ブチル、エポキシ化ステアリン酸オクチル等のエポキシ化ステアリン酸エステル、又はエポキシ化オレイン酸エステルなどが挙げられる。またエステルのアルコール残基は、アルキル基、若しくはエーテル結合を有するアルキル基、若しくはヒドロキシアルキル基であり、より好ましくはブチル基、イソブチル基、2エチルヘキシル基である。一例として、エポキシ化菜種脂肪酸イソブチルエステル、エポキシ化菜種脂肪酸2エチルヘキシルエステル、エポキシ化亜麻仁油脂肪酸ブチルエステルなどが挙げられる。なお一般的な菜種脂肪酸の主成分はオレイン酸63%、リノール酸20%、リノレン酸8%の炭素数18の脂肪酸であり、亜麻仁脂肪酸の主成分は、オレイン酸21%、リノール酸13%、リノレン酸57%の炭素数18の脂肪酸である。
【0030】
本発明には、アルコール化合物として、炭素数6〜30の1価アルコールを配合することもできる。直鎖状又は分岐状のいずれであっても良く、飽和でも不飽和でも良く、好ましくは炭素数8〜24、より好ましくは炭素数10〜22、特に好ましくは炭素数12〜22の1価アルキルアルコール、及び/又はアルケニルアルコールであることが望ましい。このようなアルコールとして、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール、ヘキサデカノール、ヘプタデカノール、オクタデカノール(ステリルアルコール等)、ノナデカノール、エイコサノール、ヘンエイコサノール、ドコサノール(ベヘニルアルコール等)、トリコサノール、テトラコサノール等の1価アルキルアルコールや、オクテノール、ノネノール、デセノール、ウンデセノール、ドデセノール、トリデセノール、テトラデセノール、ペンタデセノール、ヘキサデセノール、ヘプタデセノール、オクタデセノール(オレイルアルコール等)、ノナデセノール、エイコセノール、ヘンエイコセノール、ドコセノール、トリコセノール、テトラコセノール等の1価アルケニルアルコール、及びこれらの2種以上の混合物が挙げられる。本発明の潤滑油組成物において、アルコールの炭素数が6未満の場合や30を超える場合は、潤滑油基油に対する溶解性や熱安定性が低下する傾向にある。
【0031】
本発明には、カルボン酸化合物として、モノカルボン酸類、多価カルボン酸類、炭素環カルボン酸類、複素環式カルボン酸類を配合することもできる。
【0032】
上記モノカルボン酸類は、具体的にはカルボキシル基を分子中に1つ有する炭素数6〜30、好ましくは炭素数8〜24の脂肪族モノカルボン酸類である。炭素数8〜24の飽和脂肪族モノカルボン酸の例として、オクタン酸(カプリル酸等)、ノナン酸(ペラルゴン酸等)、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸(ラウリン酸等)、トリデカン酸、テトラデカン酸(ミリスチン酸等)、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸(パルミチン酸等)、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸(ステアリン酸等)、ノナデカン酸、イコサン酸、ヘンイコサン酸、ドコサン酸、トリコサン酸、テトラコサン酸等が挙げられ、これら飽和脂肪族は直鎖状でも分枝状でも良く、更に好ましくは炭素数12〜22がよい。
炭素数8〜24の不飽和脂肪族モノカルボン酸の例として、オクテン酸、ノネン酸、デセン酸、ウンデセン酸、ドデセン酸、トリデセン酸、テトラデセン酸、ペンタデセン酸、ヘキサデセン酸、ヘプタデセン酸、オクタデセン酸(オレイン酸等)、ノナデセン酸、イコセン酸、ヘンイコセン酸、ドコセン酸、トリコセン酸、テトラコセン酸等が挙げられ、これら不飽和脂肪族は直鎖状でも分枝状でも良く、更に好ましくは炭素数12〜22がよく、また不飽和結合の位置も任意である。
また、モノカルボン酸類として、N−メチル−Nー(1−オキソ−デシル)グリシン、N−メチル−Nー(1−オキソ−ウンデシル)グリシン、N−メチル−Nー(1−オキソ−ドデシル)グリシン、N−メチル−Nー(1−オキソ−トリデシル)グリシン、N−メチル−Nー(1−オキソ−テトラデシル)グリシン、N−メチル−Nー(1−オキソ−ペンタデシル)グリシン、N−メチル−Nー(1−オキソ−ヘキサデシル)グリシン、N−メチル−Nー(1−オキソ−ヘプタデシル)グリシン、N−メチル−Nー(1−オキソ−オクタデシル)グリシン、N−メチル−Nー(1−オキソ−9−オクタデセニル)グリシン、N−メチル−Nー(1−オキソ−ノナデシル)グリシン、N−メチル−Nー(1−オキソ−イコサデシル)グリシン、等も挙げられ、これら飽和および不飽和脂肪族は直鎖状でも分枝状でもよい。
【0033】
また上記多価カルボン酸類としては、飽和又は不飽和脂肪族ジカルボン酸があり、ヘキサン二酸(アジピン酸等)、ヘプタン二酸(ピメリン酸等)、オクタン二酸(スベリン酸等)、ノナン二酸(アゼライン酸等)、デカン二酸(セバシン酸等)、ヘキセン二酸、ヘプテン二酸、オクテン二酸、ノネン二酸、デセン二酸等が挙げられ、これら飽和脂肪族又は不飽和脂肪族は直鎖状でも分枝状でもよく、また不飽和結合の位置も任意である。飽和又は不飽和脂肪族トリカルボン酸として、ヘキサントリカルボン酸、ヘプタントリカルボン酸、オクタントリカルボン酸、ノナントリカルボン酸、デカントリカルボン酸等が挙げられ、これら飽和脂肪族又は不飽和脂肪族は直鎖状でも分枝状でもよく、また不飽和結合の位置も任意である。また飽和又は不飽和脂肪族テトラカルボン酸も挙げられ、飽和脂肪族又は不飽和脂肪族は直鎖状でも分枝状でもよく、また不飽和結合の位置も任意である。
【0034】
更に、上記炭素環カルボン酸類は、具体的には、炭素環にカルボキシル基を分子中に1つ又は2つ以上有するカルボン酸類であり、例えば、シクロヘキサンモノカルボン酸、メチルシクロへキサンモノカルボン酸、エチルシクロヘキサンモノカルボン酸、プロピルシクロへキサンモノカルボン酸、ブチルシクロへキサンモノカルボン酸、ペンチルシクロへキサンモノカルボン酸、ヘキシルシクロへキサンモノカルボン酸、ヘプチルシクロへキサンモノカルボン酸、オクチルシクロへキサンモノカルボン酸、シクロヘプタンモノカルボン酸、シクロオクタンモノカルボン酸、トリメチルシクロペンタンジカルボン酸(ショウノウ酸等)等の炭素数3〜40の、ナフテン環を有するモノ、ジ、トリ又はテトラカルボン酸(アルキル基、アルケニル基を置換基として有する場合、それらは直鎖状でも分枝状でも良く、二重結合の位置も任意であり、また、その置換数、置換位置も任意である)、ベンゼンカルボン酸(安息香酸)、メチルベンゼンカルボン酸(トルイル酸等)、エチルベンゼンカルボン酸、プロピルベンゼンカルボン酸、ベンゼンジカルボン酸(フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等)、ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸等)、ベンゼンテトラカルボン酸(ピロメリット酸等)ナフタリンカルボン酸(ナフトエ酸等)等、炭素数7〜40の芳香族モノカルボン酸類、フェニルプロパン酸(ヒドロアトロパ酸)、フェニルプロペン酸(アトロパ酸、ケイ皮酸等)、メチルフェノキシ酢酸、エチルフェノキシ酢酸、プロピルフェノキシ酢酸、ブチルフェノキシ酢酸、ヘキシルフェノキシ酢酸、ヘプチルフェノキシ酢酸、オクチルフェノキシ酢酸、ノニルフェノキシ酢酸、デシルフェノキシ酢酸等のフェノキシ酢酸類、サリチル酸、炭素数1〜30のアルキル基を1つ又は2つ以上有するアルキルサリチル酸等の炭素数7〜40のアリール基を有するモノ、ジ、トリ又はテトラカルボン酸(アルキル基、アルケニル基を置換基として有する場合、それらは直鎖状でも分枝状でも良く、二重結合の位置も任意であり、またその置換数、置換位置も任意である)等が挙げられる。
【0035】
更にまた、上記複素環式カルボン酸類としては、具体的には、カルボキシル基を分子中に1つ又は2つ以上有する複素環式カルボン酸類であり、例えば、フランカルボン酸、チオフェンカルボン酸、ピリジンカルボン酸(ニコチン酸、イソニコチン酸等)等、炭素数5〜40の複素環式カルボン酸類が挙げられる。
【0036】
本発明には、チオリン酸エステル化合物を配合することができる。チオリン酸エステル化合物として、下記の一般式(8)及び一般式(9)に示すチオリン酸エステルが挙げられる。
【化8】

【0037】
上記一般式(8)中、X16及びX17は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素基を示し、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基等が挙げられる。X18は炭素数1〜20のアルキレン基を示し、X19は水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素基を示す。上記ホスホリル化カルボン酸の中でも、X19が水素原子であるこのβ−ジチオホスホリル化カルボン酸としては、具体的に、3−(ジ−イソブトキシ−チオホスホリルスルファニル)−2−メチル−プロピオン酸などが挙げられる。また、X19がエチル基であるβ−ジチオホスホリルカルボン酸エステルとして、エチル−3−[[ビス(1−メチルエトキシ)フォスフィノチオイル]チオ]プロピオネートなどが挙げられる。
【0038】
【化9】

上記一般式(9)中、X20は水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素基を示す。具体的にはトリフェニルホスホロチオネートやノニルフェニルホスホロチオネートなどが挙げられる。
【0039】
本潤滑油組成物におけるチオリン酸エステル化合物の含有量は、特に制限されるものではないが、基油100質量%に対して、好ましくは0.001〜1質量%、より好ましくは0.002〜0.5質量%である。チオリン酸エステル化合物の含有量が前記下限値未満では十分な潤滑性が得られない傾向にある。一方、前記上限値を超えて加えても含有量に見合う潤滑性向上効果が得られない傾向にあり、更には熱・酸化安定性や加水分解安定性が低下するおそれがある。このチオリン酸エステル化合物は、1種で又は数種を混ぜて使用することができる。
【0040】
本発明の潤滑油組成物に対して、チオリン酸エステル以外にもリン化合物を添加することができ、これによって更に耐摩耗性や極圧性を付与することができる。本発明に適したリン化合物としては、例えば、リン酸エステル、酸性リン酸エステル、酸性リン酸エステルのアミン塩、亜リン酸エステル、ホスフォロチオネート、ジチオリン酸亜鉛、リン含有カルボン酸、リン含有カルボン酸エステル、などが挙げられる。これらのリン化合物は、基油100質量%に対して、0.01〜2質量%の範囲で単独又は複数組み合わせて使用できる。
【0041】
上記リン酸エステルとしては、例えば、トリブチルホスフェート、トリペンチルホスフェート、トリヘキシルホスフェート、トリヘプチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリノニルホスフェート、トリデシルホスフェート、トリウンデシルホスフェート、トリドデシルホスフェート、トリトリデシルホスフェート、トリテトラデシルホスフェート、トリペンタデシルホスフェート、トリヘキサデシルホスフェート、トリヘプタデシルホスフェート、トリオクタデシルホスフェート、トリオレイルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリス(iso−プロピルフェニル)ホスフェート、トリアリルフォスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、などが挙げられる。
【0042】
上記酸性リン酸エステルの具体例としては、モノブチルアシッドホスフェート、モノペンチルアシッドホスフェート、モノヘキシルアシッドホスフェート、モノヘプチルアシッドホスフェート、モノオクチルアシッドホスフェート、モノノニルアシッドホスフェート、モノデシルアシッドホスフェート、モノウンデシルアシッドホスフェート、モノドデシルアシッドホスフェート、モノトリデシルアシッドホスフェート、モノテトラデシルアシッドホスフェート、モノペンタデシルアシッドホスフェート、モノヘキサデシルアシッドホスフェート、モノヘプタデシルアシッドホスフェート、モノオクタデシルアシッドホスフェート、モノオレイルアシッドホスフェート、ジブチルアシッドホスフェート、ジペンチルアシッドホスフェート、ジヘキシルアシッドホスフェート、ジヘプチルアシッドホスフェート、ジオクチルアシッドホスフェート、ジノニルアシッドホスフェート、ジデシルアシッドホスフェート、ジウンデシルアシッドホスフェート、ジドデシルアシッドホスフェート、ジトリデシルアシッドホスフェート、ジテトラデシルアシッドホスフェート、ジペンタデシルアシッドホスフェート、ジヘキサデシルアシッドホスフェート、ジヘプタデシルアシッドホスフェート、ジオクタデシルアシッドホスフェート、ジオレイルアシッドホスフェート、などが挙げられる。
【0043】
上記酸性リン酸エステルのアミン塩としては、前記酸性リン酸エステルのメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン、などのアミンとの塩などがある。
【0044】
上記亜リン酸エステルとしては、ジブチルホスファイト、ジペンチルホスファイト、ジヘキシルホスファイト、ジヘプチルホスファイト、ジオクチルホスファイト、ジノニルホスファイト、ジデシルホスファイト、ジウンデシルホスファイト、ジドデシルホスファイト、ジオレイルホスファイト、ジフェニルホスファイト、ジクレジルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリペンチルホスファイト、トリヘキシルホスファイト、トリヘプチルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリノニルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリウンデシルホスファイト、トリドデシルホスファイト、トリオレイルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリクレジルホスファイト、などが挙げられる。
【0045】
上記したジチオリン酸亜鉛としては、一般に、ジアルキルジチオリン酸亜鉛、ジアリールジチオリン酸亜鉛、アリールアルキルジチオリン酸亜鉛等が挙げられる。例えば、ジアルキルジチオリン酸亜鉛のアルキル基は、炭素数3〜22の第1級又は第2級のアルキル基、炭素数3〜18のアルキル基で置換されたアルキルアリール基を有するジアルキルジチオリン酸亜鉛が使用される。 ジアルキルジチオリン酸亜鉛の具体例としては、ジプロピルジチオリン酸亜鉛、ジブチルジチオリン酸亜鉛、ジペンチルジチオリン酸亜鉛、ジヘキシルジチオリン酸亜鉛、ジイソペンチルジチオリン酸亜鉛、ジエチルヘキシルジチオリン酸亜鉛、ジオクチルジチオリン酸亜鉛、ジノニルジチオリン酸亜鉛、ジデシルジチオリン酸亜鉛、ジドデシルジチオリン酸亜鉛、ジプロピルフェニルジチオリン酸亜鉛、ジペンチルフェニルジチオリン酸亜鉛、ジプロピルメチルフェニルジチオリン酸亜鉛、ジノニルフェニルジチオリン酸亜鉛、ジドデシルフェニルジチオリン酸亜鉛、ジドデシルフェニルジチオリン酸亜鉛、などがある。
【0046】
本発明においては酸化安定性を増強する目的で酸化防止剤を配合しても良い。酸化防止剤としては、潤滑油に使用されるものが実用的には好ましく、フェノール系酸化防止剤、芳香族アミン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、リン系酸化防止剤などを挙げることができる。これらの酸化防止剤は、基油100質量%に対して、0.01〜5質量%の範囲で単独又は複数組み合わせて使用できる。
【0047】
上記芳香族アミン系酸化防止剤としては、p,p’−ジオクチル−ジフェニルアミン(精工化学社製:ノンフレックスOD−3)、p,p’−ジ−α−メチルベンジル−ジフェニルアミン、N−p−ブチルフェニル−N−p’−オクチルフェニルアミンなどのジアルキル−ジフェニルアミン類、モノ−t−ブチルジフェニルアミン、モノオクチルジフェニルアミンなどのモノアルキルジフェニルアミン類、ジ(2,4−ジエチルフェニル)アミン、ジ(2−エチル−4−ノニルフェニル)アミンなどのビス(ジアルキルフェニル)アミン類、オクチルフェニル−1−ナフチルアミン、N−t−ドデシルフェニル−1−ナフチルアミンなどのアルキルフェニル−1−ナフチルアミン類、1−ナフチルアミン、フェニル−1−ナフチルアミン、フェニル−2−ナフチルアミン、N−ヘキシルフェニル−2−ナフチルアミン、N−オクチルフェニル−2−ナフチルアミンなどのアリール−ナフチルアミン類、N,N’−ジイソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミンなどのフェニレンジアミン類、フェノチアジン(保土谷化学社製:Phenothiazine)、3,7−ジオクチルフェノチアジンなどのフェノチアジン類などが挙げられる。
【0048】
フェノール系酸化防止剤としては、2−t−ブチルフェノール、2−t−ブチル−4−メチルフェノール、2−t−ブチル−5−メチルフェノール、2,4−ジ−t−ブチルフェノール、2,4−ジメチル−6−t−ブチルフェノール、2−t−ブチル−4−メトキシフェノール、3−t−ブチル−4−メトキシフェノール、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン(川口化学社製:アンテージDBH)、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノールなどの2,6−ジ−t−ブチル−4−アルキルフェノール類、2,6−ジ−t−ブチル−4−メトキシフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エトキシフェノールなどの2,6−ジ−t−ブチル−4−アルコキシフェノール類がある。
また、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルメルカプト−オクチルアセテート、n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(吉富製薬社製:ヨシノックスSS)、n−ドデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2’−エチルヘキシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ベンゼンプロパン酸3,5−ビス(1,1−ジメチル−エチル)−4−ヒドロキシ−C7〜C9側鎖アルキルエステル(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製:IrganoxL135)などのアルキル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート類、2,6−ジ−t−ブチル−α−ジメチルアミノ−p−クレゾール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)(川口化学社製:アンテージW−400)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)(川口化学社製:アンテージW−500)などの2,2’−メチレンビス(4−アルキル−6−t−ブチルフェノール)類がある。
さらに、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)(川口化学社製:アンテージW−300)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)(シェル・ジャパン社製:Ionox220AH)、4,4’−ビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、2,2−(ジ−p−ヒドロキシフェニル)プロパン(シェル・ジャパン社製:ビスフェノールA)、2,2−ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4’−シクロヘキシリデンビス(2,6−t−ブチルフェノール)、ヘキサメチレングリコールビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製:IrganoxL109)、トリエチレングリコールビス[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート](吉富製薬社製:トミノックス917)、2,2’−チオ−[ジエチル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製:IrganoxL115)、3,9−ビス{1,1−ジメチル−2−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル}2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン(住友化学:スミライザーGA80)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)(川口化学社製:アンテージRC)、2,2’−チオビス(4,6−ジ−t−ブチル−レゾルシン)などのビスフェノール類がある。
そして、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製:IrganoxL101)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン(吉富製薬社製:ヨシノックス930)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン(シェル・ジャパン社製:Ionox330)、ビス−[3,3’−ビス−(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、2−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル−4−(2”,4”−ジ−t−ブチル−3”−ヒドロキシフェニル)メチル−6−t−ブチルフェノール、2,6−ビス(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチル−ベンジル)−4−メチルフェノールなどのポリフェノール類、p−t−ブチルフェノールとホルムアルデヒドの縮合体、p−t−ブチルフェノールとアセトアルデヒドの縮合体などのフェノールアルデヒド縮合体などが挙げられる。
【0049】
硫黄系酸化防止剤としては、ジドデシルサルファイド、ジオクタデシルサルファイドなどのジアルキルサルファイド類、ジドデシルチオジプロピオネート、ジオクタデシルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、ドデシルオクタデシルチオジプロピオネートなどのチオジプロピオン酸エステル類、2−メルカプトベンゾイミダゾールなどが挙げられる。
【0050】
リン系酸化防止剤として、トリフェニルフォスファイト、トリクレジルフォスファイトなどのトリアリールフォスファイト類、トリオクタデシルフォスファイト、トリデシルフォスファイトなどのトリアルキルフォスファイト類、トリドデシルトリチオフォスファイトなどが挙げられる。
【0051】
本発明において、金属材料との適合性を増強する目的で、金属腐食防止剤を配合することができる。本発明の組成物と併用できる金属不活性剤としては、ベンゾトリアゾール、4−メチル−ベンゾトリアゾール、4−エチル−ベンゾトリアゾールなどの4−アルキル−ベンゾトリアゾール類、5−メチル−ベンゾトリアゾール、5−エチル−ベンゾトリアゾールなどの5−アルキル−ベンゾトリアゾール、1−ジオクチルアミノメチル−2,3−ベンゾトリアゾールなどの1−アルキル−ベンゾトリアゾール類、1−ジオクチルアミノメチル−2,3−トルトリアゾールなどの1−アルキル−トルトリアゾール類等のベンゾトリアゾール誘導体、ベンゾイミダゾール、2−(オクチルジチオ)−ベンゾイミダゾール、2−(デシルジチオ)−ベンゾイミダゾール、2−(ドデシルジチオ)−ベンゾイミダゾールなどの2−(アルキルジチオ)−ベンゾイミダゾール類、2−(オクチルジチオ)−トルイミダゾール、2−(デシルジチオ)−トルイミダゾール、2−(ドデシルジチオ)−トルイミダゾールなどの2−(アルキルジチオ)−トルイミダゾール類等のベンゾイミダゾール誘導体がある。
また、インダゾール、4−アルキル−インダゾール、5−アルキル−インダゾールなどのトルインダゾール類等のインダゾール誘導体、ベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール誘導体(千代田化学社製:チオライトB−3100)、2−(ヘキシルジチオ)ベンゾチアゾール、2−(オクチルジチオ)ベンゾチアゾールなどの2−(アルキルジチオ)ベンゾチアゾール類、2−(ヘキシルジチオ)トルチアゾール、2−(オクチルジチオ)トルチアゾールなどの2−(アルキルジチオ)トルチアゾール類、2−(N,N−ジエチルジチオカルバミル)ベンゾチアゾール、2−(N,N−ジブチルジチオカルバミル)−ベンゾチアゾール、2−(N,N−ジヘキシルジチオカルバミル)−ベンゾチアゾールなど2−(N,N−ジアルキルジチオカルバミル)ベンゾチアゾール類、2−(N,N−ジエチルジチオカルバミル)トルチアゾール、2−(N,N−ジブチルジチオカルバミル)トルチアゾール、2−(N,N−ジヘキシルジチオカルバミル)トルチアゾールなどの2−(N,N−ジアルキルジチオカルバミル)−トルゾチアゾール類等のベンゾチアゾール誘導体がある。
さらに、2−(オクチルジチオ)ベンゾオキサゾール、2−(デシルジチオ)ベンゾオキサゾール、2−(ドデシルジチオ)ベンゾオキサゾールなどの2−(アルキルジチオ)−ベンゾオキサゾール類、2−(オクチルジチオ)トルオキサゾール、2−(デシルジチオ)トルオキサゾール、2−(ドデシルジチオ)トルオキサゾールなどの2−(アルキルジチオ)トルオキサゾール類等のベンゾオキサゾール誘導体、2,5−ビス(ヘプチルジチオ)−1,3,4−チアジアゾール、2,5−ビス(ノニルジチオ)−1,3,4−チアジアゾール、2,5−ビス(ドデシルジチオ)−1,3,4−チアジアゾール、2,5−ビス(オクタデシルジチオ)−1,3,4−チアジアゾールなどの2,5−ビス(アルキルジチオ)−1,3,4−チアジアゾール類、2,5−ビス(N,N−ジエチルジチオカルバミル)−1,3,4−チアジアゾール、2,5−ビス(N,N−ジブチルジチオカルバミル)−1,3,4−チアジアゾール、2,5−ビス(N,N−ジオクチルジチオカルバミル)−1,3,4−チアジアゾールなどの2,5−ビス(N,N−ジアルキルジチオカルバミル)−1,3,4−チアジアゾール類、2−N,N−ジブチルジチオカルバミル−5−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール、2−N,N−ジオクチルジチオカルバミル−5−メルカプト−1,3,4−チアジアゾールなどの2−N,N−ジアルキルジチオカルバミル−5−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール類等のチアジアゾール誘導体、1−ジ−オクチルアミノメチル−2,4−トリアゾールなどの1−アルキル−2,4−トリアゾール類等のトリアゾール誘導体などが挙げられる。
これらの金属不活性剤は、基油100質量%に対して、0.01〜0.5質量%の範囲で単独又は複数組み合わせて使用できる。
【0052】
上記した成分のほかに更に性能を向上させるため、必要に応じて種々の添加剤を適宜使用することができる。これらのものとしては、消泡剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、清浄分散剤、防錆剤、抗乳化剤等や、その他の公知の潤滑油添加剤を挙げることができる。
【0053】
本発明の潤滑油組成物に対して、低温流動性や粘度特性を向上させるために、流動点降下剤や粘度指数向上剤を添加しても良い。粘度指数向上剤としては、例えばポリメタクリレート類やエチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ジエン共重合体、ポリイソブチレン、ポリスチレンなどのオレフィンポリマー類等の非分散型粘度指数向上剤や、これらに含窒素モノマーを共重合させた分散型粘度指数向上剤等が挙げられる。その添加量は、基油100質量%に対して、0.05〜20質量%の範囲で使用できる。流動点降下剤としては、例えばポリメタクリレート系のポリマーが挙げられる。その添加量は、基油100質量%に対して、0.01〜5質量%の範囲で使用できる。
【0054】
本発明の潤滑油組成物に対して、消泡性を付与するために、消泡剤を添加しても良い。こうした消泡剤として、例えばジメチルポリシロキサン、ジエチルシリケート、フルオロシリコーン等のオルガノシリケート類、ポリアルキルアクリレート等の非シリコーン系消泡剤が挙げられる。その添加量は、基油100質量%に対して、0.0001〜0.1質量%の範囲で単独又は複数組み合わせて使用できる。
また、抗乳化剤として、通常潤滑油添加剤として使用される公知のものがあり、その添加量は、基油100質量%に対して、0.0005〜0.5質量%の範囲で使用できる。
【実施例】
【0055】
以下本発明について、実施例及び比較例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
実施例及び比較例の調製にあたり、下記の組成材料を用意した。
1.基油
(1−1) 基油1:原油を常圧蒸留して得られた潤滑油留分に対して、水素化分解、脱ろうなどの精製手段を適宜組み合わせて適用することにより得られたパラフィン系鉱油で、API(米国石油協会)基油分類によりグループ2(Gp2)に分類されるもの。(特性:100℃における動粘度;5.35mm/s、40℃における動粘度;31.4mm/s、粘度指数;103、15℃密度;0.864、硫黄分含有量(硫黄元素換算値);10ppm未満、窒素分含有量(窒素元素換算値);1ppm未満、アニリン点;110℃、ASTM D3238法による環分析のパラフィン分;62%、同ナフテン分;38%、同アロマ分;1%未満、ASTM D5480法によるガスクロ蒸留による初留点温度;312℃)
(1−2) 基油2:原油を常圧蒸留して得られた潤滑油留分に対して、水素化分解、脱ろうなどの精製手段を適宜組み合わせて適用することにより得られたパラフィン系鉱油で、API基油分類によりグループ3(Gp3)に分類されるもの。(特性:100℃における動粘度;6.57mm/s、40℃における動粘度;37.5mm/s、粘度指数;130、15℃密度;0.823、硫黄分含有量(硫黄元素換算値);10ppm未満、窒素分含有量(窒素元素換算値);1ppm未満、アニリン点;130℃、ASTM D3238法による環分析のパラフィン分;78%、同ナフテン分;22%、同アロマ分;1%未満、IP346法による多環芳香族分;0.2%)
(1−3) 基油3:フィッシャートロプッシュ法により合成されたGTL基油で、API基油分類によりグループ3に分類されるもの。(特性:100℃における動粘度;5.10mm/s、40℃における動粘度;23.5mm/s、粘度指数;153、15℃密度;0.821、硫黄分含有量(硫黄元素換算値);10ppm未満、窒素分含有量(窒素元素換算値);1ppm未満、ASTM D3238法による環分析のアロマ分:1%未満)
(1−4) 基油4:合成油のポリαオレフィン(PAO)、一般名称PAO6で、API基油分類によりグループ4に分類されるもの。(特性:100℃における動粘度;5.89mm/s、40℃における動粘度;31.2mm/s、粘度指数;135、15℃密度;0.827、硫黄分含有量(硫黄元素換算値);10ppm未満、窒素分含有量(窒素元素換算値);1ppm未満、アニリン点;128℃、ASTM D3238法による環分析のアロマ分;1%未満、ASTM D5480法によるガスクロ蒸留による初留点温度;403℃)
(1−5) 基油5:原油を常圧蒸留して得られた潤滑油留分に対して、脱ろうなどの精製手段を適宜組み合わせて適用することにより得られたパラフィン系鉱油で、API基油分類によりグループ1(Gp1)に分類されるもの。(特性:100℃における動粘度;4.60mm/s、40℃における動粘度;24.6mm/s、粘度指数;101、15℃密度;0.866、硫黄分含有量(硫黄元素換算値);460ppm、窒素分含有量(窒素元素換算値);20ppm、ASTM D3238法による環分析のパラフィン分;66%、同ナフテン分;31%、同アロマ分;3%、アニリン点;99℃、IP346法による多環芳香族分;0.8%、ASTM D5480法によるガスクロ蒸留による初留点温度;331℃)
【0056】
2.添加剤
(2−1) 添加剤A:アスパラギン酸誘導体:N−1−オキソ−3−カルボニルオキシプロピル−N−3−オクチルオキシプロピル−アスパラギン酸ジイソブチルエステル、N−1−オキソ−3−カルボニルオキシプロピル−N−3−デシルオキシプロピル−アスパラギン酸ジイソブチルエステル、N−1−オキソ−3−カルボニルオキシプロピル−N−3−ドデシルオキシプロピル−アスパラギン酸ジイソブチルエステル、N−1−オキソ−3−カルボニルオキシプロピル−N−3−テトラデシルオキシプロピル−アスパラギン酸ジイソブチルエステルの混合物(JIS K2501法による酸価:100mgKOH/g)
(2−2) 添加剤B:コハク酸誘導体:テトライソプロペニルコハク酸,1,3−プロパンジオールハーフエステル (JIS K2501法による酸価:160mgKOH/g)
(2−3) 添加剤C1:ココナットアミン(主成分はドデシルアミン);1級アルキルの1級アミン化合物(JIS K2501法による塩基価;390mgKOH/g)
(2−4) 添加剤C2:ココナットジアミン(主成分はN−ドデシル−1,3−プロピレンジアミン)(JIS K2501法による塩基価:440mgKOH/g)
(2−5) 添加剤C3:三級アルキル基を有する一級アミン(主成分は1,1,3,3,5,5,7,7,9,9−デカメチルデシルアミンを含む、C16〜C22の三級アルキル基を有する一級アミン化合物;JIS K2501法による塩基価:155mgKOH/g)
(2−6) 添加剤C4:N−アルケニルジエタノールアミン(主成分はN−オレイルジエタノールアミン);3級アミン化合物(JIS K2501法による塩基価:160mgKOH/g)
(2−7) 添加剤C5:イソステアリン酸トリエチレンテトラミド(JIS K2501法による塩基価:7.2mgKOH/g)
(2−8) 添加剤C6:ベヘニルアルコール
(2−9) 添加剤C7:エポキシ化菜種脂肪酸2エチルヘキシルエステル
(2−10) 添加剤C8:ソルビトールセスキオレート(JIS K0070法による水酸基価:200mgKOH/g)
(2−11) 添加剤C9:オレイン酸(JIS K2501法による酸価:197mgKOH/g)
(2−12) 添加剤C10:N−メチル−N−(1−オキソ−9−オクタデセニル)グリシン(JIS K2501法による酸価:157mgKOH/g)
(2−13) 添加剤C11:p−ノニルフェノキシ酢酸(JIS K2501法による酸価:190mgKOH/g)
【0057】
(実施例1〜17、比較例1〜3)
上記した組成材料を用いて、表1〜表4に示す組成(質量%)により実施例1〜17、比較例1〜3の潤滑油組成物を調製した。
【0058】
(試験)
上記実施例1〜17及び比較例1〜3の各潤滑油組成物について、その性能を見るために以下の試験を行った。
【0059】
(錆止め性試験)
JIS K2510に則り、恒温槽内に設置した容器に、試験油300mlを採取し、毎分1000回転で攪拌し、60℃になったときに鉄製の試験片を試験油中に挿入し、更に人工海水を30ml加え、60℃に保ったまま24時間攪拌を続ける。その後試験片を取り出し、試験片の錆の発生有無を目視で評価し、錆が発生しなかった場合を合格とした。
【0060】
(摩擦係数)
神鋼造機株式会社製の曽田式振子型油性試験機により摩擦係数を測定した。この試験は、振子支点の摩擦部分に試験油を与え、振子を振動させ、振動の減衰から摩擦係数を求めるものである。
試験の評価は次の基準によって行った。
摩擦係数が0.135以下・・・・・・・・・◎(優)
摩擦係数が0.136〜0.150未満・・・○(良)
摩擦係数が0.150以上・・・・・・・・・×(不可)
【0061】
(試験結果)
各試験の結果を表1〜表4に示す。
【0062】
(考察)
表1及び表3が示す試験結果から明らかなように、実施例1及び実施例2の基油1にアスパラギン酸誘導体(添加剤A)とコハク酸誘導体(添加剤B)を併用したものでは、錆の発生が見られないし、摩擦係数が大幅に低下しており、両添加剤の相乗効果が現われて低摩擦性を一段と向上させていることが判る。
また、実施例3〜実施例6のものは、基油を変更したものであるが、実施例3の基油2や実施例6の基油5のように高度に精製された基油を用いた場合でも、また実施例4の基油3や実施例5の基油4のように合成基油を用いた場合においても、錆の発生が見られないし、摩擦係数が大幅に低下しており、アスパラギン酸誘導体とコハク酸誘導体の組み合わせに相乗効果があることが判る。
実施例7〜実施例17は、実施例1に示すアスパラギン酸誘導体とコハク酸誘導体の併用に加えて、更に添加剤を加えている。実施例7〜10では添加剤C1〜添加剤C4のアミン化合物をそれぞれ添加することにより、いずれも実施例1と比べて良好な防錆性を維持しながら、摩擦係数を更に低下させている。同様に、実施例11ではアミン化合物に代えて添加剤C5のアミド化合物を、実施例12では添加剤C6のアルコール化合物を、実施例13〜14では添加剤C7〜添加剤8のエステル化合物を、実施例15〜17では添加剤C9〜添加剤11のカルボン酸化合物を添加することにより、実施例1と比べて良好な防錆性を維持しながら、摩擦係数を更に低下させている。この実施例7〜実施例17により、アミン化合物、アミド化合物、アルコール化合物、エステル化合物、カルボン酸化合物の添加が低摩擦性を一段と向上させていることが判る。
これに対して、比較例1の基油1だけのものは錆の発生が見られるし、摩擦係数も大きい。また、比較例2の基油1にアスパラギン酸誘導体(添加剤A)を添加したもの、或いは、比較例3のコハク酸誘導体(添加剤B)を添加したものでは、防錆性が得られているものの、摩擦係数が高くて充分な摩擦性能を有するものではないことが判る。
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉱油及び合成油から選ばれる少なくとも1種の基油と、添加剤としてアスパラギン酸誘導体とコハク酸誘導体を含有することを特徴とする潤滑油組成物。
【請求項2】
添加剤としてさらにアミン化合物、アミド化合物、アルコール化合物、カルボン酸化合物、エステル化合物から成る群より選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項3】
上記添加剤のアスパラギン酸誘導体の酸価が10〜200mgKOH/gであることを特徴とする請求項1または2に記載の潤滑油組成物。
【請求項4】
上記添加剤のコハク酸誘導体の酸価が10〜300mgKOH/gであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の潤滑油組成物。
【請求項5】
上記添加剤のアミン化合物、アミド化合物、アルコール化合物、カルボン酸化合物、エステル化合物が脂肪族系の化合物であって、アミン化合物、アミド化合物については脂肪族の炭素数が1〜30であること、アルコール化合物、カルボン酸化合物、エステル化合物については脂肪族の炭素数が6〜30であることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の潤滑油組成物。
【請求項6】
上記基油が、合成油であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の潤滑油組成物。
【請求項7】
上記合成油が、ポリαオレフィンであることを特徴とする請求項6に記載の潤滑油組成物。
【請求項8】
上記合成油が、GTLであることを特徴とする請求項6に記載の潤滑油組成物。

【公開番号】特開2010−138265(P2010−138265A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−315253(P2008−315253)
【出願日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願人】(000186913)昭和シェル石油株式会社 (322)
【Fターム(参考)】