説明

潤滑系と冷却系と始動系を備えた内燃機関

【課題】総組立費が削減できる内燃機関の潤滑系、冷却系および始動系に対する新たな構想を提供する。
【解決手段】潤滑系と冷却系と始動系の分配管を、1個の共通の構造ユニットの形に結集し、該構造ユニットを、潤滑油通路(22)と冷却水給排路付き冷却水通路(23)と始動空気通路(24)を形成すべく、複数の配管セグメント(21)から構成し、複数の配管セグメント(21)から成る構造ユニットを、別個の連絡管(26〜29)により各潤滑系と冷却系と始動系のエンジン内部管路への接続が生じるようにエンジンブロック(30)に沿って配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は請求項1の前文に記載の内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
従来公知の特に中速回転の四サイクル重油燃料エンジンの場合、エンジン、特にシリンダと燃料供給装置並びに場合により設けられる過給装置に対する油循環潤滑のための潤滑系の組立品、エンジンブロックに配置された、特に複数のシリンダに冷却水を供給するための冷却系の組立品および内燃機関を圧縮空気で始動するための始動系の組立品は、別個の管路組立品の形をした別個の構成要素として形成されてきた。
【0003】
即ち、上述の内燃機関は例えば1台の潤滑油ポンプを有し、該ポンプに潤滑油分配管が接続され、この分配管が、エンジン内部管路を介して、特にクランクシャフト、シリンダと燃料供給要素を含むシリンダブロック、弁駆動装置および場合により補助的に設けられる過給装置に潤滑油を供給する。
【0004】
公知の内燃機関の場合、例えば潤滑油ポンプが油槽から油を汲み上げ、一般に供給管を経て分配管に圧送する。分配管からは、各クランクシャフトに少なくとも1本の分岐管が通じている。油は、クランクシャフトに在る孔を経て、クランクシャフト軸受および潤滑すべき他の箇所に送られる。また油は、一般にエンジン長手軸線に沿って配置された分配管から、分岐管とシリンダブロックに在る孔を経て、弁駆動装置のローラ付きタペットおよび燃料噴射ポンプに送られる。更に分配管から各制御軸軸受への配管が分岐している。
【0005】
冷却水は、通常シリンダ列の片側に沿って延びる分配管内を導かれ、各シリンダに対して特に1本の供給管でシリンダブロックの冷却室に送られ、そこから集合管に送られる。
【0006】
エンジンは圧縮空気で始動される。該圧縮空気は一般に空気槽から取り出され、シリンダの弁に送られる。エンジンの構造に応じて、V形エンジンの片側あるいは両側のシリンダ列に始動空気供給管および始動弁が装備されている。
【0007】
上述した3個の別個の組立品は、労力を要する予組立を必要とし、このため総組立時間がかなり長くなる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、総組立時間を短縮できる潤滑系、冷却系および始動系に対する新たな構想を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題は請求項1に記載の内燃機関によって解決される。本発明に基づいて、潤滑系と冷却系と始動系の分配管が、1個の共通の構造ユニットに結集され、該ユニットが、潤滑油通路と冷却水給排路付き冷却水通路と始動空気通路を形成すべく、複数の配管セグメントから構成される。複数の配管セグメントから成る構造ユニットが、別個の連絡管により各潤滑系と冷却系と始動系のエンジン内部管路への接続が生じるようにエンジンブロックに沿って配置される。
【発明の効果】
【0010】
この処置は、「パイプレス エンジン」、即ち配管無し内燃機関に向かって大きく開発を前進させる。従来3個の別個の組立品を複数の配管要素から成る1個の組立品に結集することで、部品数のかなりの削減を達成し、かつ単純な予組立、従ってかなり短時間の総組立時間を明らかに達成できる。
【0011】
また本発明は、各配管セグメントを少なくとも3個の通路を持つ鋳造品として形成し、該鋳造品をモジュール状に組立品の形に結合し、各鋳造品が、少なくとも1個の冷却水入口と冷却水出口と少なくとも1個の油入口と少なくとも1個の始動空気入口を有するように構成することを提案する。配管セグメントから成る構造ユニットは、シリンダの排気管に対し平行に、前記排気管を配管セグメントで支持し、配管セグメントをエンジンブロックに固定するように配置する。
【0012】
この結果、配管セグメント上への排気管の支持が可能となる利点がある。従って、実際に公知の内燃機関において、別個の構成要素として形成した保持要素および場合により従来利用していた排気管を固定するための支持ブラケットが不要となる。
【0013】
本発明の有利な実施態様では、シリンダをV形に配置する場合、配管セグメントの組立品をシリンダ間で排気管の下側に配置し、そのために必要な各シリンダないし供給すべき他の箇所への媒体接続を、差込み接続要素の形をした連絡管により実現できる。
【0014】
単純な差込み接続のため、鋳造配管セグメントの単純な仕上げと管理が可能になる。
【0015】
配管セグメントは、これが4個のシリンダに供給するように設計するとよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の有利な実施態様を、従属請求項および以下の説明から明らかにする。以下本発明の実施例を図を参照して詳細に説明するが、本発明はこれに限定されない。なお、図2と図3において、同一部分には同一符号を付している。
【実施例1】
【0017】
図1はV形エンジンを示し、エンジンブロック1は下側に油溜め(オイルパン)2を備える。エンジンブロック1の両外側面に沿って潤滑油・分配管3を設けている。この潤滑油・分配管3からクランクシャフト5に油を供給する分岐管4が出ている。
【0018】
ここで図示しない潤滑油ポンプは、公知の如く、油槽から油を分配管3に搬送する。分配管3から分岐管4が各クランクシャフト軸受に通じ、クランクシャフト5に在る油貫流孔が潤滑すべき箇所に通じている。
【0019】
油は分配管3から導出され、弁駆動装置6および燃料噴射ポンプ7のローラ付きタペットに送られる。
【0020】
V形エンジンのシリンダ8間に、冷却系の分配管9の形をした供給路と排出路が配置されている。シリンダブロックの冷却室に供給するため、分岐管10がエンジン1の内部管路に通じている。冷却水分配管9は、固有の保持要素11によりエンジンブロック1にねじ止めされている。冷却水分配管9の上側を排気管12が延び、該排気管12は固有の支持ブラケット13によりエンジンブロック1で支持されている。
【0021】
同様にエンジンブロック1の両外側面に、始動空気分配管14が据え付けられている。この始動空気分配管14は、公知の如く、エンジンブロック1の内部管路に接続され、この結果、通常空気槽から取り出された始動空気がシリンダの弁に送られる。
【0022】
潤滑系、冷却系および始動系は、共通の管路を利用せずに、別個の組立品3、9、14として形成されている。
【0023】
これに対し、図2は、同形のセグメント21をモジュール状に複数個結集することで1個の組立品を生ずる、本発明に従った配管セグメント21を示す。この組立品では、潤滑系と冷却系と始動系の分配管が、油通路22と、冷却水入口と冷却水出口の形をした冷却水通路23と、始動空気通路24を形成すべく結集されている。
【0024】
配管セグメント21は、4個のシリンダ25に供給すべく設計されている。各シリンダ25に対し、差込み接続ノズル(短管)の形で連絡管を形成するため、冷却水入口26、冷却水出口27および始動空気入口28を備えている。図2は正面しか示さないが、配管セグメント21の背面も同様に形成されている。エンジンブロック30に油を供給するため、同様に差込み接続ノズル29を油通路22から下向きに開いて設けている。
【0025】
また、配管セグメント21に保持要素31が一体形成され、該要素31は上側を延びる排気管32を支え、同時に配管セグメント21をエンジンブロック30に固定する。
【0026】
また、配管セグメント21は両側端面にプラグ要素33ないし接続要素34を有し、該プラグ要素33ないし接続要素34によって、複数の配管セグメント21がモジュール状に1個の組立品の形に結合できる。
【0027】
図3は、V形エンジン30の4個のシリンダ25と、シリンダ列間を通る排気管32とを備える本発明に基づく内燃機関を、再度斜視図で示している。
【0028】
図2に応じた配管セグメント21から成る組立品は、下側がエンジンブロック30に、配管セグメント21に一体成形された保持要素31により互いに平行に固定されている。保持要素31はその上に位置する排気管32を支え、該排気管32は取付けねじで保持要素31上に固定されている。各差込み接続ノズル26〜29は、エンジンブロック30の相応した配管ノズルに結合されている。
【0029】
従って本発明によれば、配管セグメント21で構成した組立品において、多数の機能、即ち油と潤滑材と始動空気の供給および排気管と分配管に対する支え・支持機能を統合できる。従来公知の内燃機関の場合、これらの機能は別個の組立品で実現されていた。
【0030】
これによって、内燃機関の構造を著しく単純化できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】従来公知の内燃機関の断面図。
【図2】油通路と冷却水通路と始動空気通路を有する本発明に基づく配管セグメントの斜視図。
【図3】単一構造ユニットの形に結合された配管セグメントを備えた本発明に基づく内燃機関の組立状態の斜視図。
【符号の説明】
【0032】
21 配管セグメント、22 油通路、23 冷却水通路、24 始動空気通路、25 シリンダ、26 冷却水入口、27 冷却水出口、32 排気管
30 エンジンブロック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油循環潤滑のための潤滑系と、エンジンブロックに配置された複数のシリンダに冷却水を供給するための冷却系と、内燃機関を圧縮空気で始動するための始動系を備え、前記各系に分配管が付属し、該分配管が分岐管ないし供給管を介してエンジンブロックの各管路に接続されている内燃機関において、
潤滑系と冷却系と始動系の分配管が、1個の共通の構造ユニットの形に結集され、該構造ユニットが、潤滑油通路(22)と冷却水給排路付き冷却水通路(23)と始動空気通路(24)を形成すべく複数の配管セグメント(21)から構成され、複数の配管セグメント(21)から成る構造ユニットが、別個の連絡管(26〜29)により各潤滑系と冷却系と始動系のエンジン内部管路への接続が生じるようにエンジンブロック(30)に沿って配置されたことを特徴とする内燃機関。
【請求項2】
各配管セグメント(21)が少なくとも3個の通路(22、23、24)を有する鋳造品として形成され、該鋳造品がモジュール状に組立品の形に結合され、各鋳造品が、少なくとも1個の冷却水入口(26)と冷却水出口(27)と少なくとも1個の油入口(29)と少なくとも1個の始動空気入口(28)を有することを特徴とする請求項1記載の内燃機関。
【請求項3】
配管セグメント(21)から成る組立品が、シリンダ(25)の排気管(32)に対して平行に、該排気管(32)が配管セグメント(21)に支持され、配管セグメント(21)がエンジンブロック(30)に固定されるように配置されたことを特徴とする請求項1又は2記載の内燃機関。
【請求項4】
シリンダ(25)がV形に配置されており、配管セグメント(21)の組立品がシリンダ(25)間で排気管(25)の下側に配置され、各シリンダ(25)および供給すべき他の箇所への媒体接続(26、27、28)が、差込み接続要素の形をした連絡管により実現されたことを特徴とする請求項3記載の内燃機関。
【請求項5】
配管セグメント(21)が4個のシリンダ(25)に供給することを特徴とする請求項4記載の内燃機関。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−138931(P2007−138931A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−310264(P2006−310264)
【出願日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【出願人】(390041520)エムアーエヌ ディーゼル エスエー (59)
【Fターム(参考)】