説明

潮流・海流発電システム及び電力輸送方法

【課題】洋上で発電した電力を離隔場所に輸送し、システム全体として効率的に電力を得る。
【解決手段】
この潮流・海流発電システム1においては、発電手段10によって発電が行われる。発電状態検出手段40は、発電に関連する海の状態を検出する。この潮流・海流発電システム1の動作は、主に制御手段30によって制御される。制御手段30は、発電状態検出手段40が検出した発電に関わる海水の動きの変化に基づいて、潮流・海流発電機11からの給電先への給電状態を規定する状態切替手段50を制御する。特に、状態切替手段50は、複数の給電先に対しての給電状態、すなわち給電のオンオフや給電先の切替を行い、この動作は制御手段30からの指令により行われる。また、発電機構部12を制御することにより、発電手段10からの出力状態も制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海水の流れによって発電を行い、その電力を伝達する潮流・海流発電システムに関する。また、海上で得られた電力を陸上へ輸送する電力輸送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自然現象を利用して発電を行う方法として、風力発電等が用いられているが、同様に、海水の流れによって発電を行うこともできる。風力発電に用いられる風は吹いていない状態も多く、発電量が安定していないのに対して、こうした海水の流れは大半の時間で生じている。従って、風力発電等と比べ、これらの海水の流れを利用してより安定的に発電を行うことが可能であるという利点がある。
【0003】
こうした水流を利用した発電装置については、例えば特許文献1に記載されている。この技術においては、海上に浮かべられた浮体ユニット中に水車を設置し、海水の流れによって発電を行うことが記載されている。また、特許文献2には、潮位の変動を利用して発電を行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−68638号公報
【特許文献1】特開平6−123274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の技術においては、発電器を海上の船舶等に設置し、これを用いて発電を行う。ところが、風力発電に用いられる風と比較して上記の海水の流れが生じている時間は長いものの、この流れが停止している時期もある。あるいは、この海流は一定ではなく、その変動が大きい場合もある。すなわち、風力発電よりは安定しているものの、海水の流れによって発電を行う場合にも、こうした不安定性は問題になる。また、海上や海中でこうした発電を行っても、実際にその電力を使用するのは陸上やこれと離隔した場所に居る船舶等である。従って、発生した電力を陸上等離隔した場所に輸送する必要があるが、洋上の沖合からの輸送に際してのロスも生じ、インフラ、設備にコストがかかっていた。
【0006】
従って、海水の流れを利用して洋上で発電した電力を離隔場所に輸送し、システム全体として効率的に電力を得ることは困難であった。
【0007】
本発明は、斯かる問題点に鑑みてなされたものであり、上記問題点を解決する発明を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決すべく、以下に掲げる構成とした。
本発明の請求項1に係る潮流・海流発電システムは、海水の流れによって発電を行い、給電先へ電力を供給する潮流・海流発電システムであって、海水の流れによってプロペラを回転させて発電を行う発電手段と、海水の流れを検出する発電状態検出手段と、前記発電手段の出力状態を調整する、及び/又は前記発電手段から前記給電先への給電状態を規定する、状態切替手段と、前記発電状態検出手段の検出結果に基づき、前記状態切替手段の動作の制御を行う制御手段と、を具備することを特徴とする。
この発明においては、潮流・海流によって発電を行う発電手段の出力は、給電先に供給される。この際、発電手段の出力状態や、発電手段の状態や給電先への給電状態は、状態切替手段によって規定される。この際、制御手段は、発電状態検出手段が直接的あるいは間接的に検出した海水の流れのデータに基づきこの制御を行う。
本発明の請求項2に係る潮流・海流発電システムにおいて、前記制御手段は、前記発電手段による発電の出力が見込まれないときに、前記状態切替手段に、前記発電手段の出力状態を調整する、及び/又は前記給電先への給電を停止させることを特徴とする。
この発明においては、特に発電の出力が見込まれないときに、前記発電手段の出力状態が調整される、及び/又は給電が停止される。
本発明の請求項3に係る潮流・海流発電システムにおいて、前記発電状態検出手段は、予測される潮位のデータを記憶又は算出し、前記制御手段は、前記データと前記検出された海水の流れとに基づき、前記状態切替手段の動作の制御を行うことを特徴とする。
この発明においては、制御手段は、予め予測される潮位のデータを用いて、前記の状態切替手段の制御を行う。潮位のデータは例えば天文学的に予想できる。
本発明の請求項4に係る潮流・海流発電システムにおいて、前記発電状態検出手段は、前記発電手段の出力を検出し、前記制御手段は、検出された前記発電手段の出力に基づき、前記状態切替手段の動作の制御を行うことを特徴とする。
この発明においては、発電状態検出手段は、発電手段の出力を直接検出する。制御手段は、この検出結果に基づいて前記の状態切替手段の制御を行う。
本発明の請求項5に係る潮流・海流発電システムにおいて、前記制御手段は、前記発電状態検出手段の出力に基づき、前記発電手段による発電の出力が見込まれないときに、メインテナンスを行わせる指示を表示させる、及び/又は前記発電手段からの出力を停止させる制御を行うことを特徴とする。
この発明においては、制御手段は、発電の出力が見込まれないときに、メインテナンスを行わせる指示を表示させることによって、利用者に対して指示を行う、及び/又は発電手段からの出力を停止させる。
【0009】
本発明の請求項6に係る潮流・海流発電システムにおいて、前記給電先には商用電源が含まれ、前記制御手段は、前記発電状態検出手段の出力に基づき、前記発電手段による発電の出力が低い場合に、前記状態切替手段に、前記商用電源への給電を停止させることを特徴とする。
この発明においては、給電先の中には少なくとも商用電源が含まれる。この場合に、発電の出力が低いために送電ロスの影響が大きいと予想される場合には、商用電源への給電が停止される。
本発明の請求項7に係る潮流・海流発電システムにおいて、前記給電先には、蓄電手段が含まれることを特徴とする。
この発明においては、給電先の中には、充電が可能であり輸送が容易である蓄電手段(蓄電池、キャパシタ等)が少なくとも含まれる。
本発明の請求項8に係る潮流・海流発電システムにおいて、前記蓄電手段は海上において前記状態切替手段に接続され、該蓄電手段が前記潮流・海流発電システムを用いて充電された後に、輸送されることを特徴とする。
この発明においては、電力の輸送は、充電後の蓄電手段が輸送されることによって行われる。
本発明の請求項9に係る潮流・海流発電システムにおいて、前記蓄電手段は海上コンテナ又はコンテナ船に収納されることを特徴とする。
この発明においては、充電された蓄電手段は、これを容易に運搬することのできる海上コンテナ又はコンテナ船によって輸送される。
本発明の請求項10に係る潮流・海流発電システムは、複数の給電先を具備し、前記状態切替手段は、前記発電状態検出手段の出力に基づき、前記複数の給電先の中の一つを選択して前記発電手段からの給電を行い、他の給電先への給電を停止させることを特徴とする。
この発明においては、複数の給電先がこの潮流・海流発電システムの出力側に接続される。この際、発電状態検出手段の出力に基づき、予想される発電の出力に応じて、一つの給電先が選択されて出力が行われる。
【0010】
本発明の請求項11に係る電力輸送方法は、前記潮流・海流発電システムに用いられる電力輸送方法であって、海上において前記状態切替手段に前記蓄電手段を接続し、該蓄電手段を前記潮流・海流発電システムを用いて充電した後に、陸上に輸送することを特徴とする。
この発明においては、海上において前記潮流・海流発電システムにおける出力切替手段に蓄電手段を接続し、これを充電する。この蓄電手段を輸送することによって、前記潮流・海流発電システムが発生させた電力を陸上まで輸送する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の潮流・海流発電システム、電力輸送方法は以上のように構成されているので、海水の流れを利用して、効率的に電力を得ることができる。
この際、上記の潮流・海流発電システムにおいて、発電状態検出手段が検出した海水の流れのデータが用いられることにより、例えば、潮流や海流の変化時に、特に発電手段の出力の状態や給電先への給電のオンオフの調整が最適化される。発電手段の出力の状態を変える一例として、例えば海水の流れに対するプロペラの回転方向等を変えることによって、常に一定の向きのDC出力を得ることができるため、更に効率的に電力を得ることができる。
また、予測される潮位のデータが用いられる場合には、特に容易にこの最適化を行うことができる。また、実測された発電量のデータを用いる場合には、更に正確に上記の最適化を行うことができる。また、給電をオフすると同時に、利用者に対してメインテナンスを行う指示を出す、あるい発電手段からの出力を停止させることにより、安全かつ効率的にメインテナンスを行うことができる。
また、給電先として商用電源を設定すれば、商用電源への逆潮流を効率的に行うことが可能である。この際、発電の出力が低い場合にはこの給電を停止させる設定とすれば、更に効率的な運用が可能である。
また、給電先として蓄電手段を設定すれば、充電された蓄電手段を運搬することにより、特にこの潮流・海流発電システムが陸上から遠い海上に設置された場合に、送電ロスの大きな送電ケーブルを用いる場合と比べて、電力の輸送を特に高効率で行うことができる。この場合、発電効率の高い海上でこの蓄電手段を充電することができるので、特に電力を得る効率が高くなる。この際、海上コンテナをこの輸送に用いることにより、この輸送を更に簡易かつ効率的に行うことができる。
また、給電先の中に予備バッテリーが含まれる場合、これをこの潮流・海流発電システム自身の非常用電源とすることができるため、特に安定した運用をすることが可能である。
また、複数の給電先を設定し、その中から選択した一つに給電させる構成とすることにより、更に効率的な運用が可能となる。
【0012】
また、上記の電力輸送方法においては、送電ロスが大きくかつ敷設コストの高い送電ケーブルを用いる必要がない。従って、高効率かつ低コストでの電力輸送が可能となる。特に、蓄電手段の輸送を船舶で行う設定とすれば、特にこの輸送を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態となる潮流・海流発電システムの構成を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態となる潮流・海流発電システムにおいて用いられる電力輸送方法の形態を示す図である。
【図3】潮位が周期的に変動する場合の発電量の変化を示す図である。
【図4】潮位が周期的でない変動をする場合の発電量の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態となる潮流・海流発電システムについて説明する。この潮流・海流発電システムは、海水の流れによって発電を行う。ここで、潮流とは、潮汐力によって生じた海水の流れを意味し、海流とは、潮汐力以外の原因によって生じた海水の流れを意味するものとする。また、潮位とは、海面の水位を意味するものとする。
【0015】
図1は、この潮流・海流発電システム1の構成を示す図である。この潮流・海流発電システム1においては、発電手段10によって発電が行われる。発電手段10は、潮流・海流(水流)によって回転するプロペラによって発電を行う潮流・海流発電機11と、この潮流・海流発電機11の出力状態を機械的、電気的に制御する発電機構部12からなる。発電機構部12は、例えば、プロペラの角度(プロペラ回転面に対する角度)の制御や、ギヤの切替、回転の伝達のオンオフ等の制御を行うことによって、発電手段10からの出力状態を制御する。この発電手段10は、運転設定部20からの指令で動作する。潮流・海流発電機11の出力は、制御されて複数の給電先に切り替えて出力される。この給電先としては、商用電源110、バッテリー120、バッテリー船130、予備バッテリー140等がある。ここで、商用電源110とは、陸上の商用電源(例えばAC100V)あるいはこれに応じた伝送用の交流電源(AC6600V等)であり、電力調整部111によってこれに適合した電圧に調整され、海底ケーブル112を介して接続される。バッテリー120とは、この潮流・海流発電システム1とは独立して設けられた蓄電池であり、例えば海上コンテナ内あるいはコンテナ船に収納され、同時に複数個接続され、充電される。バッテリー船130とは、蓄電池を固定して搭載した船であり、同時に単数あるいは複数接続され、充電される。図1に示されるように、バッテリー120やバッテリー船130は、これらを複数準備し、そのうちのいくつかをこの潮流・海流発電システム1に接続せずに近傍に待機させておくことができる。予備バッテリー140とは、この潮流・海流発電システム1における非常用電源となるバッテリーである。
【0016】
この潮流・海流発電システム1においては、海中の潮流・海流発電機11によって発電が行われ、発生した電力は、陸上の変電所まで輸送され、使用される。この電力の輸送には、バッテリー120、バッテリー船130を蓄電することによって電力を輸送する方法と、海底ケーブル112を介して電力を輸送する方法、の2種類が用いられる。
【0017】
この潮流・海流発電システム1の動作は、主に制御手段30によって制御される。制御手段30は、発電状態検出手段40が検出した発電に関わる海水の動きの変化に基づいて、潮流・海流発電機11からの給電先への給電状態を規定する状態切替手段50を制御する。特に、状態切替手段50は、複数の給電先に対しての給電状態、すなわち給電のオンオフや給電先の切替を行い、この動作は制御手段30からの指令により行われる。また、発電機構部12を制御することにより、発電手段10からの出力状態も制御する。
【0018】
また、発電状態検出手段40による検出結果は、表示部60によって表示され、利用者(システム管理者)は、これを見て現在の海の状態を知ることができる。また、バッテリー120、バッテリー船130、予備バッテリー140には、これらの充電状態が検知できるように蓄電量検出部70が接続される。
【0019】
潮流・海流発電機11は、水流によって回転する羽根(プロペラ)によって発電する発電機であり、この羽根は、水流によって効率的に回転するように水中に設けられる。また、プロペラの角度(回転面に対する設定角度)は水、流の方向が変わっても潮流・海流発電機11の回転方向が同一方向となるように可変とされる。この角度を適宜設定することにより、実際の水流の方向に関わらず、常に同一極性のDC出力を得ることができる。あるいは、プロペラの角度を変えずに、増速用の駆動ギヤの切替を行うことによっても、実質的に同様の動作を行わせることもできる。これらの制御は、発電機構部12によって行われる。なお、潮流・海流の方向の変化に対応して発電手段全体の向きを変えることによりプロペラの角度を可変とせずに同一極性のDC出力を得ることもできる。また、潮流・海流発電機11を交流発電機とすることにより、回転方向にかかわらず、支障なく電力を取り出すことも可能である。
【0020】
運転設定部20は、利用者(システム管理者)の操作によって発電手段10を動作させ、発電を開始させる。この際の発電手段10の状態(潮流・海流発電機11、動作パラメータ等)もこれによって設定される。
【0021】
発電状態検出手段40は、発電に関連する海水の流れ(海の状態)を直接的あるいは間接的に検出する。具体的には、直接的に海水の流れ(流速)及びその方向を検出する流速・方位計41と、間接的に海水の流れを検出するために潮位(海面の高さ)を検出する干満計42が用いられる。これらの出力は、流速の瞬時値からその変化を予測する第1変化予測部43に入力される。同様に、これらの出力は、潮流・海流の方向を予測する方向判別部44にも入力される。また、海の状態を直接測定するものではないが、潮流・海流発電機11の出力を直接モニターする発電量計45も設けられ、その出力も流速・方位計41と同様に、第2変化予測部46に入力される。なお、流速・方位計41、干満計42、発電量計45は全て具備しなくても、場合によってどれか1つ、あるいは任意の2つの組み合わせとすることもできる。これらに接続される第1変化予測部43、第2変化予測部46についても同様である。
【0022】
制御手段30は、例えばCPU等で構成され、発電状態検出手段40からの出力、特に第1変化予測部43、方向判別部44、第2変化予測部46等からの出力に応じて、状態切替手段50を制御する。なお、制御手段30、第1変化予測部43、方向判別部44、第2変化予測部46を例えばパーソナルコンピュータ等を用いて一体化して構成してもよい。
【0023】
状態切替手段50には、給電選択部51が設けられる。給電選択部51は、潮流・海流発電機11の出力を、バックアップ切替部53、蓄電切替部54、蓄電船切替部55、予備バッテリー140のいずれかに切り替えて接続する。蓄電切替部54には、前記のバッテリー120が複数接続され、これらのうちのいずれかと給電選択部51との接続が行われ、その制御は制御手段30によって行われる。同様に、蓄電船切替部55には、前記のバッテリー船130が複数接続され、これらのうちのいずれかと給電選択部51との接続が行われ、その制御は制御手段30によって行われる。
【0024】
また、状態切替手段50には、発電機構切替部56も設けられる。発電機構切替部56は、発電機構部12を制御し、発電手段10からの出力の状態を制御する。具体的には、例えば、プロペラの角度を制御する。これによって、水流の方向に応じて角度を制御し、水流の方向に関わらず潮流・海流発電機11における回転方向を常に同一方向とし、同一極性のDC出力を得ることができる。あるいは、プロペラの角度ではなく、駆動ギヤを切り替えることによっても同様の動作を行わせることもできる。また、駆動ギヤの切替によって、出力される電流の大きさの調整も行うことができる。
【0025】
また、状態切替手段50には、メインテナンス切替部52も設けられる。メインテナンス切替部52は、この潮流・海流発電システム1(潮流・海流発電機11、状態切替手段50等)のメインテナンスを行なう際に、潮流・海流発電機11の回転を止める、プロペラをロックさせる等の処置、あるいは出力を給電選択部41側に出力させない処置等、点検を容易にするために用いられる。
【0026】
上記の構成において、運転設定部20、表示部60は、利用者が直接接することができるように、例えば海上又は海中に固定あるいは係留された施設内や船舶内に設けられる。これに対し、潮流・海流発電機11は、少なくともその一部が海水に接して設置される。流速・方位計41、及び干満計42は、その形式により、海水に接したりあるいは施設内や船舶内に設けられる。発電量計45、制御手段30、及び状態切替手段50は、運転設定部20、表示部60と同様に前記の施設内や船舶に設けられていてもよいが、運転設定部20、表示部60とは別の箇所に設けられていてもよい。ここで、状態切替手段50における蓄電切替部54、蓄電船切替部55の出力側の端子は、海上に設置されていることが好ましい。予備バッテリー140は、例えば発電量計45等と同じ施設内や船舶に設けられていてもよいが、この潮流・海流発電システム1における予備電源として用いることができる限りにおいて、任意の箇所に設置することができる。ただし、以上の構成要素は、図1に示されるように接続される。
【0027】
なお、潮流・海流発電機11の出力は直流であるが、バックアップ切替部53を介しての出力は交流とすることが好ましく、その周波数等は、商用電源110に適合したものとされる。
【0028】
この潮流・海流発電システム1によって得られた電力は、メインテナンス切替部52が動作した場合、あるいは状態切替手段50が商用電源110(電力調整部111)又は予備バッテリー140に接続される場合を除き、潮流・海流発電システム1とは独立した蓄電池(バッテリー120、バッテリー船130)に切り離し可能なケーブル線で接続され、この蓄電池が充電される。この蓄電池が充電された後で、蓄電切替部54又は蓄電船切替部55の出力側の端子とバッテリー120又はバッテリー船130との接続は切り離される。バッテリー120を充電した場合、充電されたバッテリー120あるいはこれを収納したコンテナは、これを積載した船舶によって港に運搬され、バッテリー毎に個別の用途に利用されるか、港から変電所まで輸送されて陸上の回線に接続され、商用電源(例えばAC100V)となるように変換される。バッテリー船130を充電した場合には、港で陸上の送電ケーブルに接続され、変電所まで送電される。なお、これらコンテナに搭載されたバッテリーやバッテリー船は、この潮流・海流発電システム1とは離隔した場所にある洋上の浮体や船舶に輸送され、電力を供給することもできる。
【0029】
バッテリー120とコンテナ船を用いてこの電力輸送を行う場合における状況を概念的に示したのが図2である。ここで、制御手段30は、発電状態検出手段40(第1変化予測部43、方向判別部44、第2変化予測部46)からの出力、特に、潮流や海流が弱く発電量が小さくなると予想される時間に応じ、蓄電切替部54を制御する。なお、第1変化予測部43、第2変化予測部46の動作(上記の予想を行う方法)については後述する。
【0030】
図2において、この潮流・海流発電システム1は、海上における潮流・海流の強い箇所に設置される。潮流・海流発電機11を回転させるプロペラ13は、有効に発電が行われるような位置、角度で設置される。例えば潮流は潮位の変化によって生ずるが、潮流の強さ(速度)は、海底や周囲の地形の影響を受けるため、沖合において最も潮流が強くなる箇所にこの潮流・海流発電システム1を設置することが好ましい。
【0031】
海上コンテナ200は、例えばISO規格準拠の、6058mm×2438mm×2591mmの矩形体のコンテナであり、バッテリー120は、この海上コンテナ200中に収納され、バッテリー120と蓄電切替部54とはケーブル線で接続される。図2においては、4台のバッテリー120をそれぞれ収納する4台の海上コンテナ200が用いられているが、その数は任意である。
【0032】
4台のバッテリー120は、蓄電切替部54にそれぞれケーブル線121によって接続され、順次切り替えて充電される。この際、制御手段30は、発電量が小さくなると予想される時間に、充電が完了したバッテリー120が収容された海上コンテナ200の運搬作業を行わせる指示を作業者に対して出すことができる。作業者はこの指示後に、充電が完了したバッテリー120に接続されたケーブル線121を取り外し、このバッテリー120が収容された海上コンテナ200をコンテナ船210まで運搬することができるため、この充電作業及び海上コンテナ200の運搬作業を効率的に行うことができる。あるいは、この時間において、給電選択部51の出力を他の系統、例えばバックアップ切替部53(商用電源110)、予備バッテリー140等に切り替えてもよい。なお、各バッテリー120の充電状況は、蓄電量検出部70を用いて認識することができ、制御手段30は、この充電状況に応じて上記の切替を順次行い、4台のバッテリー120を順次充電することが可能である。また、一つの海上コンテナ200中に複数のバッテリー120を収納し、これらを順次充電してもよい。また、海上コンテナ200を船舶に搭載した状態で、充電することもできる。この場合、海上コンテナ200の運搬作業を省くことができる。
【0033】
所定の数(図2中では4台)のバッテリー120の充電が全て完了し、全ての海上コンテナ200がコンテナ船210に搭載された後に、コンテナ船210は、陸上(港)に向かう。また、コンテナ船210は、全ての海上コンテナ200を港で降ろした後に、新たに充電すべきバッテリー120(海上コンテナ200)を搭載し、再び沖合の潮流・海流発電システム1のある場所まで向かい、以上と同様にして充電が行われる。この際、制御手段30は、干満計42(発電状態検出手段40)からの出力を見て、満ち潮(潮位が上昇している状態)においては、コンテナ船210を沖合から港に向かわせる指示を出し、逆に引き潮(潮位が下降している状態)においては、コンテナ船210を港から沖合に向かわせる指示を出すことができる。これによって、コンテナ船210を潮流に乗せ、その燃料消費を少なくした効率的な輸送を行うことができる。なお、コンテナ船210は、必ずしもバッテリー120の充電中に沖合で待機している必要はない。例えば、沖合の潮流・海流発電システム1のある場所で全ての海上コンテナ200を降ろした後に、空荷の状態で港へ向かい、再び新たに充電すべきバッテリー120(海上コンテナ200)を積載して潮流・海流発電システム1のある場所まで向かう設定としてもよい。あるいは、複数のコンテナ船210を用いて上記の作業を並列に行うことも可能である。使用するコンテナ船210やバッテリー120の数は、バッテリー120の充電時間、コンテナ船210が運搬できる海上コンテナ200(バッテリー120)の台数、コンテナ船210の往復に要する時間等を考慮して、適宜設定できる。
【0034】
港では、充電されたバッテリー120を収容した状態で降ろされた海上コンテナ200を、例えばフォークリフト250を用いて運搬することができる。その後、バッテリー120が収容された海上コンテナ200を変電所300まで貨物車等を用いて運搬し、変電所300で、充電されたバッテリー120から電力を取り出し、これを商用電源(AC100V)に変換して外部に供給することができる。あるいは、陸上において電力を使用する各種の施設まで海上コンテナ200を同様に運搬し、この施設で電源として用いることもできる。固定された施設ではなく、自動車等、各種の移動可能な装置を対象とすることも可能である。このように、バッテリー120を用いることにより、任意の対象に電力を供給することが可能である。
【0035】
すなわち、上記の動作においては、海上あるいは海中で発電が行われるが、その電力の陸上(電力を使用する場所)への輸送は、蓄電池を介して行われる。特に、バッテリー120を海上コンテナ200に収納した場合には、これを船舶で輸送することは容易であり、例えば海上コンテナ200を複数積層して運搬し、陸上でこれを運搬することも通常の貨物と同様にして容易に行うことができる。
【0036】
従来の潮流・海流発電システムにおいては、電力は、陸上の変電所まで送電ケーブルのみを用いて輸送されていた。しかしながら、前記の通り、効率的に発電を行うためには、潮流・海流発電システムを設置すべき場所は限定され、陸上から遠い海上にこれを設置する場合もある。この場合、送電ケーブルの長さに比例して送電ロスが大きくなる。
【0037】
これに対して、上記の潮流・海流発電システム1を用いた場合には、この送電ロスは発生しない。この潮流・海流発電システム1と港までの間のコンテナ船210の運行が可能であれば、充電されたバッテリー120(海上コンテナ200)の輸送は可能である。従って、この潮流・海流システム1を陸地から遠い場所、例えば沖合50km以上に設置した場合には、送電ケーブルのみを用いる従来の潮流・海流システムと比べて、より低コストで高効率の電力輸送が可能である。
【0038】
なお、上記の例では、バッテリー120を用いて電力の運搬を行う例につき記載したが、バッテリー船130を用いる場合についても同様である。バッテリー船130は、1台あるいは複数台のバッテリー120を搭載した1隻のコンテナ船210と等価であるため、上記と同様の操作により、効率的な電力の運搬を行うことが可能である。ただし、この場合には、効率的な電力輸送を行うためには、2隻以上のバッテリー船130を同時に用いることが好ましく、これらを潮流・海流発電システム1のある沖合の箇所に停泊させて充電を行うことが好ましい。また、港に到着したバッテリー船130から変電所300等への電力輸送は、地上の電線によって行うことが可能である。
【0039】
次に、上記の動作における発電状態検出手段40に関わる動作について説明する。
【0040】
図3(a)は、潮汐力による海水の潮位の時間変動を示す図である。周知のように、潮位は、主に月や太陽との位置関係で決まるため、ほぼ周期的に変動する。この潮位の変化が潮流をもたらす。前記の潮流・海流発電機11は、この潮流によってプロペラを回転させ、発電機を回転させることによって発電を行う。図3(a)に示された周期的な潮位の変動によって発生する海流の速度は、近似的には図3(a)の特性をほぼ微分したものとなり、これに応じて潮流・海流発電機11の発電量は決定されることになる。ただし、実際には、潮流がある下限値以下の場合には、発電機を回転させることができないため、実際には、図3(a)の潮位に対応した発電量の変化は、図3(b)に示すようになる。すなわち、満潮と干潮の前後の期間(図3(b)中のA)においては、発電量が零となる。こうした潮位の変動は大雑把には予測が可能であり、第1変化予測部43、方向判別部44は、予めこのデータを記憶しておくことができる。従って、制御手段30は、図3(a)(b)に示す変化を記憶し、これに基づき、潮流・海流発電機11、状態切替手段50を制御することができる。
【0041】
例えば、図3(b)中のAの期間においては、発電の出力が見込まれないと認識できるため、上記の通り、充電が完了したバッテリー120(海上コンテナ200)の運搬等を作業者に行わせる指示を出すことができる。同時に、制御手段30は、給電先であるバッテリー120等への給電を停止させる、すなわち、給電選択部51(状態切替手段50)からの出力を停止させる制御を行う。これにより、給電状態の切替時の発電損失が低減でき、発電効率を向上させることができる。また、作業者が手動操作で切替を行う場合と比べて、安全が確保される。また、メインテナンス切替部52を制御して潮流・海流発電機11の出力を停止させ、後述するメインテナンスモードとすることもできる。この場合においても、発電効率や安全性が向上することは明らかである。この期間にある旨の表示は、表示部60によって行うことができるが、バッテリー120の近くに別に設けられた他の表示装置によって行ってもよい。こうした操作を自動的に行うことにより、発電手段10や状態切替手段50に対する負荷(電磁クラッチ等の運転機構や機械的動作を行う切替スイッチ等に対する負荷)を低減し、その耐久性、信頼性を向上させることができる。
【0042】
また、Aの期間が到来した後には潮流が逆転することが明らかである。従って、この場合に、制御手段30は、発電機構切替部56を制御し、潮流・海流発電機11において海水の流れに対するプロペラの回転方向を逆転させることもできる。これにより、潮流・海流発電機11から出力される電圧の極性を一定に保つことができる。従って、バッテリー120等の充電作業を安全かつ効率的に行うことができる。なお、発電機構切替部56におけるこの制御と給電選択部51における前記の制御は、両者を同時に行うことができるが、一方のみを行うこともできる。
【0043】
あるいは、図3(b)中のBの期間においては、特に発電量が大きくなる。この場合、バッテリー120等の充電電流が許容値を越えた場合には、バッテリー120が過充電となるため、好ましくない。従って、この場合には、この許容電流に対応した発電量(図3(b)中のC)を越える期間であるBの期間においては、バッテリー120等が過充電となることを抑制する動作を行うことができる。例えば、予備バッテリー140の充電電流の許容値がバッテリー120よりも大きな場合、図3(b)におけるBの期間においては、給電選択部51を制御し、その出力先を、一時的に自動的に予備バッテリー140とし、予備バッテリー140を充電させる設定とすることができる。あるいは、予備バッテリー140とバッテリー120に適宜配分し、充電させることができる。このように、予想される発電の出力に応じて一つの給電先が選択されて出力を行わせることにより、効率的な運用が可能となる。
【0044】
なお、発電量計45と第2変化予測部46とを用いた制御も上記と同様に行うことができる。この場合には図3(b)に対応する測定結果が発電量計45によって得られる。
【0045】
すなわち、制御手段30は、予め記憶したデータに基づき、上記の制御を行い、この潮流・海流発電システム1を適正に動作させることができる。上記の例では、潮位が主に月や太陽との位置関係で決まる場合について説明したが、季節毎の変動を示す海流が存在する場合についても同様である。この際、単に記憶したデータに基づくだけでなく、干満計42によって実測された潮位のデータも考慮すればより正確な予測が可能である。例えば、実測された潮位と記憶したデータとの差分が小さければ、記憶したデータによって図3(b)中の期間A、Bの到来時刻を予測すればよい。また、気象条件等、天文学的な要因以外の要因によって潮位の時間変動にずれが生ずる場合には、例えば、記憶したデータから予測される満潮(干潮)の時刻と実測の満潮(干潮)の時刻との差から、図3(b)中の期間A、Bの到来時刻を更に正確に予測できる。
【0046】
上記の動作は、潮位の変化が予め予測可能な場合について行われるが、実際の潮位の変化は、必ずしも全てが予測可能ではない。例えば、海流には正確な予想が不可能な不規則成分も存在する。典型的な例は、地震等によって発生する場合である。
【0047】
こうした不規則な変動をモニターするためには、流速・方位計41が用いられる。流速・方位計41は、海流の流れの強さ及びその方向を検知する。海流の流れが強くなった場合には、例えばバッテリー120の過充電を防止するために、制御手段30は、前記と同様の動作を行うことができる。発電量計45の出力を用いても同様の動作が可能である。
【0048】
例えば、図3の場合とは異なり潮位が周期的ではない増減をする図4(a)に示される変動をする場合、これに対応する発電量は図4(b)に示される通りの変化をする。この際にも、前記の場合と同様に、発電量が零となる場合(Dの期間)においてはバッテリー120等への電気的接続を切断し、発電量が許容値Gを越えた場合(E、Fの期間)の場合には、給電選択部51を制御することによって、過充電を防止することができる。不規則的に潮位が増加した場合であっても、図4(a)に示されるように、潮位が増加してその増加が止まった場合では、その直後に潮位は大きく減少し、これに対応して強い潮流が生ずる。この場合においても、干満計42で潮位を検出することによって、この変動を予測し、Fの期間が到来することを予め予測することが可能である。また、潮位の変化が予め予測可能な場合と同様に、予想される発電の出力に応じて一つの給電先が選択されて出力が行われ、効率的な運用が可能となる。
【0049】
また、流速・方位計41と発電量計45を用いることにより、更に適正な制御が可能である。例えば、流速・方位計41で計測された流速に見合った発電量が潮流・海流発電機11で得られていない場合、制御手段30は、潮流・海流発電機11に異常があると認識する。この場合、例えば、制御手段30は、水流の方向に対する潮流・海流発電機11のプロペラの向きを制御してその発電量が最大になるように調整する、あるいは、表示部60に警告を表示し、利用者に警告を発することができる。同様に、例えば潮位の変動が大きいにもかかわらず流速や発電量が小さい場合には、潮流・海流発電機11あるいはこれが設置された周辺の環境に異常があると認識することができ、警告を発することができる。
【0050】
従って、制御手段30は、流速・方位計41、干満計42、発電量計45等(発電状態検出手段40)を用いて状態切替手段50等の制御を行い、この潮流・海流発電システム1の動作をより適切に行わせることができる。
【0051】
また、この潮流・海流発電システム1においては、従来と同様に、海底ケーブル112を用いて電力を輸送することもできる。この場合には、この潮流・海流発電システム1は、潮流・海流発電機11の出力をバックアップ切替部53に接続し、海底ケーブル112を用いて陸上の商用電源110に逆潮流させる。この場合には、電力調整部111が、潮流・海流発電機11の出力電圧を、商用電源のための送電用に適合した高圧(例えば交流6.6kV)に変換し、海底ケーブル112から商用電源110へ出力する。
【0052】
この場合においても、この潮流・海流発電システム1においては、発電状態検出手段40を用いて、この電力輸送を高効率とする動作を行うことができる。例えば、流速・方位計41、干満計42、発電量計45を前記と同様に用い、特に発電の出力が低く、送電ロスの影響が大きくなると判断される場合には、給電選択部51からの出力をバックアップ切替部53に接続せず、予備バッテリー140に接続し、これを充電することができる。この場合には、発電手段10からの出力がほぼ零となる場合以外でも、送電ロスの影響が大きくなると見込まれる程度に低い場合には、商用電源110(バックアップ切替部53)に出力をさせない制御を行うことができる。前記の通り、海底ケーブル112を用いた電力輸送の場合には送電ロスが大きいが、この動作により、充分な送電量を確保できる期間のみに送電を行うことができる。
【0053】
なお、海中から地上まで海底ケーブル112を介して電力を輸送する際の送電ロスを低減するためには、交流で送電を行なう方が好ましいが、これを再び地上で送電する際に、再びバッテリー等を用いて電力輸送することも可能である。こうした電力輸送は、輸送距離が長い場合に有効であることは前記の通りであり、この場合には、この電力は地上で直流に変換された後にバッテリーを充電するために用いられる。
【0054】
最後に、メインテナンス切替部52に関わる動作について説明する。メインテナンス切替部52は、この潮流・海流発電システム1のメインテナンス(点検)等を行なう際に用いられる。このメインテナンスの時期も、前記と同様に、発電状態検出手段40を用いて、発電量が小さな場合に行う設定とすれば、電力輸送(電力生成)をより効率的に行うことができる。例えば、制御手段30は、現在あるいは将来のある時期に発電量が小さくなることを、表示部60で表示させ、利用者(システム管理者)は、これを見て、運転設定部20を操作し、通常運転から、メインテナンスモードへの切替を行う。その後、表示部60には、メインテナンスモードになった旨が表示される。
【0055】
また、メインテナンス切替部52は、給電選択部51等、発電機構部12(発電手段10)を制御し、メインテナンスに適した動作を行わせることができる。例えば、給電選択部51側に潮流・海流発電機11の出力をさせず、かつ電磁クラッチをオフすることにより、プロペラと発電部を切り離し出力をさせずに潮流・海流発電機11のプロペラを回した状態で、潮流・海流発電機11の点検を行うことができる。これにより、潮流・海流発電機11からの出力がなくなるため、給電選択部51、バックアップ切替部53、蓄電切替部54、蓄電船切替部55の点検を安全に行うことができる。また、この潮流・海流発電システム1外においても、バッテリー120、バッテリー船130を接続した状態でその点検を行うこともできる。あるいは、プロペラのロック、固定や予備バッテリーの切り離し等、各種のメインテナンスに適した動作を発電機構部12(発電手段10)、給電選択部51(状態切替手段50)に行わせることができる。点検が終了した後、利用者は運転設定部20を操作してメインテナンスモードを解除する操作を行うが、制御手段30は、給電選択部51等の安全が確保されているのを確認してから再び潮流・海流発電機11の出力を開始する。この際、発電状態検出手段40を用い、充分な発電量が確保できると予想される状態になってから再び潮流・海流発電機11の出力を開始させることもできる。
【0056】
なお、上記の例においては、送電ケーブル112を用いて電力輸送を行う場合と、バッテリー120、バッテリー船130を用いて電力輸送を行う場合とを給電選択部51によって切り替える設定としたが、送電ケーブル112を用いない(バックアップ切替部53を用いない)設定とすることもできる。また、バッテリー120、バッテリー船130のどちらかを利用する構成とし、コンテナ船あるいはバッテリー船で蓄電した電力を輸送する方式としてもよい。これらの場合には、送電ケーブル112の敷設工事が不要となるため、更に低コストで電力生成・輸送を行うことができる。
【0057】
ただし、バッテリー120の輸送、バッテリー船130の運行は、気象条件等の影響を受けるのに対し、既に敷設された送電ケーブル112を介した電力輸送は、気象条件等の影響を受けにくい。従って、コンテナ船210やバッテリー船130の運行に問題がない場合にはこれらを使用し、これらの運行に問題がある場合には、送電ケーブル112を用いて電力輸送を行う設定とすることもできる。従って、これらを両方用いることにより、特に安定した電力供給が低コストで可能となる。
【0058】
また、上記の例では、この潮流・海流発電システム1における電力の供給先が複数(商用電源110、複数のバッテリー120、複数のバッテリー船130、予備バッテリー140)あり、状態切替手段50が制御手段30からの制御によってこれらの給電先を切り替える例につき記載した。しかしながら、給電先が単数であっても、発電の出力が見込まれないときに、発電手段10からの出力状態を制御する動作や、状態切替手段50がこの給電先への給電を停止させるという動作は有効であることは明らかである。
【0059】
また、上記の例では、バッテリー120等への充電を行う蓄電切替部54等を潮流・海流発電機11の近くに設置した設定としたが、これらの間の送電ロスが無視できる限りにおいて、この設定は任意である。蓄電切替部54、蓄電船切替部55は、コンテナ船210やバッテリー船130が係留可能な箇所に設置することが必要であるが、発電効率の高い場所においては必ずしもこれらが係留可能であるとは限らない。こうした場合には、これらの間での送電ロスが無視できる範囲内で蓄電切替部54、蓄電船切替部55を適宜設置することができる。
【0060】
また、例えばバッテリー船130を用いた輸送を行う場合、バッテリー船130に蓄電した電力を地上でのみ用いるのではなく、その電力をバッテリー船130自身の運行のため、あるいはその内部での用力として使用することも可能である。また、バッテリー船130から他の船舶にこの電力を海上で供給することも可能である。この場合、船舶ではなく、電力を必要とする海上の設備(無人観測機器等)に電力を供給することもできる。こうした点についてはバッテリー120を用いる場合においても同様である。
【0061】
なお、上記の例においては、蓄電池を用いて電力輸送を行う場合につき記載したが、蓄電池以外にも、キャパシタ等、充電可能でかつ運搬が容易な電池(蓄電手段)が使用可能であることは明らかである。また、発電状態検出手段として、例えば海水を用いて発電を行なう際に発電量に影響を与える他のパラメータを計測する手段を適宜使用することができることも明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0062】
上記の潮流・海流発電システム及び電力輸送方法は、上記の通り、海上又は海中で発電を行なう際に用いることができる。
【符号の説明】
【0063】
1 潮流・海流発電システム
10 発電手段
11 潮流・海流発電機(発電手段)
12 発電機構部(発電手段)
20 運転設定部
30 制御手段
40 発電状態検出手段
41 流速・方位計(発電状態検出手段)
42 干満計(発電状態検出手段)
45 発電量計(発電状態検出手段)
50 状態切替手段
51 給電選択部
52 メインテナンス切替部
110 商用電源
120 バッテリー(蓄電手段)
130 バッテリー船(蓄電手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
海水の流れによって発電を行い、給電先へ電力を供給する潮流・海流発電システムであって、
海水の流れによってプロペラを回転させて発電を行う発電手段と、
海水の流れを検出する発電状態検出手段と、
前記発電手段の出力状態を調整する、及び/又は前記発電手段から前記給電先への給電状態を規定する、状態切替手段と、
前記発電状態検出手段の検出結果に基づき、前記状態切替手段の動作の制御を行う制御手段と、
を具備することを特徴とする潮流・海流発電システム。
【請求項2】
前記制御手段は、前記発電手段による発電の出力が見込まれないときに、前記状態切替手段に、前記発電手段の出力状態を調整する、及び/又は前記給電先への給電を停止させることを特徴とする請求項1に記載の潮流・海流発電システム。
【請求項3】
前記発電状態検出手段は、予測される潮位のデータを記憶又は算出し、
前記制御手段は、前記データと前記検出された海水の流れとに基づき、前記状態切替手段の動作の制御を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の潮流・海流発電システム。
【請求項4】
前記発電状態検出手段は、前記発電手段の出力を検出し、
前記制御手段は、検出された前記発電手段の出力に基づき、前記状態切替手段の動作の制御を行うことを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の潮流・海流発電システム。
【請求項5】
前記制御手段は、前記発電状態検出手段の出力に基づき、前記発電手段による発電の出力が見込まれないときに、メインテナンスを行わせる指示を表示させる、及び/又は前記発電手段からの出力を停止させる制御を行うことを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の潮流・海流発電システム。
【請求項6】
前記給電先には商用電源が含まれ、
前記制御手段は、前記発電状態検出手段の出力に基づき、前記発電手段による発電の出力が低い場合に、前記状態切替手段に、前記商用電源への給電を停止させることを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の潮流・海流発電システム。
【請求項7】
前記給電先には、蓄電手段が含まれることを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の潮流・海流発電システム。
【請求項8】
前記蓄電手段は海上において前記状態切替手段に接続され、
該蓄電手段が前記潮流・海流発電システムを用いて充電された後に、輸送されることを特徴とする請求項7に記載の潮流・海流発電システム。
【請求項9】
前記蓄電手段は海上コンテナ又はコンテナ船に収納されることを特徴とする請求項7又は8に記載の潮流・海流発電システム。
【請求項10】
複数の給電先を具備し、
前記状態切替手段は、前記発電状態検出手段の出力に基づき、前記複数の給電先の中の一つを選択して前記発電手段からの給電を行い、他の給電先への給電を停止させることを特徴とする請求項1から請求項9までのいずれか1項に記載の潮流・海流発電システム。
【請求項11】
海上に設置された潮流・海流発電システムによって発生した電力を陸上に輸送する電力輸送方法であって、
海上において前記電力によって蓄電手段を充電した後に、該蓄電手段を陸上に輸送することを特徴とする電力輸送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−32994(P2011−32994A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−182546(P2009−182546)
【出願日】平成21年8月5日(2009.8.5)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度、独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構 委託研究:「日本沿岸域に適した低コスト潮流発電システムの開発(コスト評価システムの開発、システム性能評価試験方法の確立)」産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(501204525)独立行政法人海上技術安全研究所 (185)
【Fターム(参考)】