説明

濃縮した日本酒、濃縮した日本酒の製造方法、遠心分離装置、及び酒類の濃縮装置

常温下で質の良い熟成を可能とするため、アルコール度数を高い濃縮倍率で30度以上に濃縮した日本酒、濃縮した日本酒の製造方法、及び、遠心分離装置、並びに、酒類の製造装置を提供することを目的として、均一に凍結後水分を分離することによってアルコール度数を30〜50度まで濃縮した日本酒であって、濃縮倍率が1.59倍以上であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、濃縮した日本酒、濃縮した日本酒の製造方法及び酒類の濃縮装置に関し、詳しくは、日本酒の本来の成分を損なわず実質的に水分を選択的に除去した濃縮した日本酒、その製造方法、遠心分離装置、並びに、酒類の濃縮装置に関するものである。
【背景技術】
一般に、酒類は長期間熟成させると、味が円やかになり飲みやすくなるといわれており、日本酒においても3〜30年の長期熟成酒が市販されているが、元来、日本酒は長期間熟成には適さないものとされてきた。
日本酒が長期間熟成に適さないものとされた要因の一つとしては、純米からなる日本酒は20度以下のアルコール濃度(18度程度)しか有さないということがあげられる。すなわち、アルコール濃度が低い酒を熟成させるために常温保管する場合、例えば、酸度が少なかったり、菌が育成するための栄養分が残存しているなどの環境が整ってしまうと、火落ち菌(乳酸菌の一種)が繁殖し、酒を白濁させてしまうからである。
ちなみに、日本酒の製造工程においては、火落ち菌及び雑菌の繁殖防止と、酵素を失活させて経年変化を防止する目的で、60〜65℃で加熱するいわゆる火入れが行われる場合もある。
また、アルコール度数を上げるため、醸造用アルコールを添加する方法があるが、醸造用アルコールは経年変化しがたく、時間がたっても刺激感が無くならず、質の良い熟成を促進させることができない。
ところで、熟成させる酒としては、ウィスキーや焼酎などがあげられるが、これらは30度以上という高いアルコール濃度を有している。
そこで、日本酒を長期間熟成するためには、濃縮することで、アルコール濃度を高める方法が考えられる。日本酒を濃縮する方法としては、例えば、以下のような方法が知られている。
特許文献1(特開昭56−45185号公報(特許請求の範囲、第8頁第10〜14行目等参照))に記載の方法によれば、清酒(日本酒)を適当な凍結手段によって、約−20度以下の温度(清酒の凝固点以下の温度)まで長時間、例えば2日間かけてゆっくり完全凍結させ、その後融解させる。このような方法によれば、例えばアルコール濃度20.3度の清酒から、アルコール濃度25.6度の高濃度酒を得ることができるとする。
また、特許文献2(特開昭57−47472号公報(特許請求の範囲、第2頁〜第3頁、実施例3等参照))に記載の方法によれば、対象酒類のアルコール含量により定まる一定の関係式によって冷却速度を導き出し、その冷却速度で酒類を一部凍結させ、これから氷晶と残留液体分(濃縮酒)を分離させるとする。このような方法によれば、アルコール度数が21.6度の清酒(原酒)10Lから31.5度の高濃度酒6.1Lを得ることがでる。この場合の濃縮率は、1.46倍となる。
しかしながら、特許文献1に記載の方法によれば、原料となる清酒よりアルコール濃度をあげることができるが、30度以上のアルコール濃度を有する酒は得られていない。
また、いわゆる火入れ工程を設けた日本酒においては、常温保管しても腐敗・変質はしがたいが、酵素が失活しているため、質の良い熟成は期待できない。
特許文献2に記載の方法によれば、30度以上のアルコール濃度を有する酒が得られるが、これは、原料となる清酒のアルコール度数が20度以上である場合であり、20度以下の清酒からは30度以上の濃縮酒は得られない。例えば、原酒のアルコール度数が18度である場合は18×1.46(濃縮倍率)=26.3%であり、この点に改良すべき点があった。なお、この方法においては、原料たる清酒を完全に凍結させないので、凍結温度を−20℃まで下げることはできなかった。
そこで、本発明は上記の点に鑑みて創作されたものであり、常温下で質の良い熟成を可能とするため、アルコール度数を高い濃縮倍率で30度以上に濃縮した日本酒、濃縮した日本酒の製造方法、及び、遠心分離装置、並びに、酒類の製造装置を提供することを課題とする。
【発明の開示】
前記課題を解決すべく、請求の範囲第1項に記載の発明は、均一に凍結後水分を分離することによってアルコール度数を30〜50度まで濃縮した日本酒であって、濃縮倍率が1.59倍以上であることを特徴とする。
請求の範囲第1項に記載の濃縮した日本酒は、原料となる日本酒を均一に凍結させ、その後、凍結温度と近似する温度下で水分を分離させて得られるアルコール度数が30から50度である濃縮した日本酒である。このようにして得られた日本酒は、濃縮倍率が1.59倍以上を有し、アルコール度数が30度以上あるため、常温下で質の良い熟成を可能とする。
本明細書において使用される用語「日本酒」は、清酒と同義であり、以下、本明細書においては、日本酒と言う。
請求の範囲第2項に記載の発明は、日本酒そのものの成分を損なわずアルコール度数を1.59倍以上の倍率で、30から50度まで濃縮した日本酒の製造方法であって、(a)前記日本酒を均一に−20から−40℃の間の所定温度まで冷却することによって凍結させ、(b)凍結した前記日本酒を、水分と濃縮した前記日本酒とに、前記所定温度以上の温度で強制的に分離することを特徴とする。
請求の範囲第2項に記載の濃縮した日本酒の製造方法によれば、日本酒を−20から−40℃の間の所定温度で均一に凍結させ、その後、所定温度以上の分離温度で水分を強制的に分離させて、アルコール度数が30度から50度まで濃縮した日本酒を製造することができる。
なお、「所定温度」とは、−20から−40℃の間で、原料となる日本酒のアルコール濃度等によって適宜変更される温度である。そして、「日本酒そのものの成分」とは、例えば、酵素、アミノ酸、糖類等の成分をいう。従って、「日本酒そのものの成分を損なわず」とは、日本酒を濃縮側と水分側へ分離する際に、これらの成分のうち、特定の成分が実質的に水分側へ流出しないことを意味する。
さらに、「強制的に分離」とは、例えば、遠心分離、圧搾機による分離、超音波による分離等があげられる。以下、同一の用語は同一の意味を示すものとする。
請求の範囲第3項に記載の発明は、請求の範囲第2項に記載の濃縮した日本酒の製造方法において、前記日本酒を薄層状態で−20から−40℃の間の所定温度の冷却雰囲気内で急冷することを特徴とする。
請求の範囲第3項に記載の濃縮した日本酒の製造方法によれば、薄層状態で−20から−40℃の間の所定温度で凍結させることから、均一に凍結させることができる。ここで、「薄層状態」とは、3mm〜15mmの深さ(厚さ)をいう。
請求の範囲第4項に記載の発明は、請求の範囲第2項に記載の濃縮した日本酒の製造方法において、−20から−40℃の間の所定温度まで0.5から2℃/時の冷却速度で徐冷することを特徴とする。
請求の範囲第4項に記載の濃縮した日本酒の製造方法によれば、徐々に冷却していくことで、アルコール及びエキス分等の回収率が高く、品質の良い濃縮した日本酒を得ることができる。
請求の範囲第5項に記載の発明は、請求の範囲第2項乃至請求の範囲第4項のいずれか1項に記載の濃縮した日本酒の製造方法であって、凍結した前記日本酒を遠心分離によって前記水分と濃縮した前記日本酒とに分離することを特徴とする。
請求の範囲第5項に記載の濃縮した日本酒の製造方法によれば、遠心分離の作用によって、前記水分と濃縮した日本酒に分離できるため、自然分離によるよりも、能率的に分離を促進させることができる。
請求の範囲第6項に記載の発明は、被処理物を固体物と液体に分離するための被処理物の遠心分離装置であって、モータと、外周に大口径の孔を有し、スパイラル状のエッジを有する内バスケットと、外周に小口径の孔を有し、前記内バスケットの外側に配置される外バスケットと、前記外バスケット及び前記内バスケットを格納する格納容器と、前記外バスケットの側面上部付近に設けられる固体排出口と、前記外バスケット及び前記内バスケットのそれぞれに前記モータの回転伝達比を可変にして回転を伝達する回転伝達機構とを備え、前記内バスケットに導入された前記被処理物は大口径の前記孔から外バスケットに排出され、前記外バスケットにおいては、前記被処理物から抽出される固体物を前記内バスケットの前記エッジで上部まで搬送して前記固体排出口から外部に排出するとともに、前記被処理物から抽出される液体を小口径の前記孔から前記格納容器に排出することを特徴とする。
請求の範囲第6項に記載の被処理物の遠心分離装置によれば、被処理物は、モータの駆動により回転する内バスケット内で遠心分離作用により、大口径の孔から外バスケット側に排出される。また、外バスケット内においても遠心分離作用により、固液分離が促進される。分離された固体物は、内バスケットのエッジによって外バスケットの上方に搬送され、固体排出口から外部に排出される。また、分離された液体部分は、濃縮した被処理物として小口径の孔から外バスケットの外部に排出される。
請求の範囲第7項に記載の発明は、被処理物を固体物と液体に分離するための被処理物の遠心分離装置であって、2つのモータと、外周に大口径の孔を有し、スパイラル状のエッジを有する内バスケットと、外周に小口径の孔を有し、前記内バスケットの外側に配置される外バスケットと、前記外バスケット及び前記内バスケットを格納する格納容器と、前記外バスケットの側面上部付近に設けられる固体排出口と、一のモータの回転を前記外バスケットまで伝達する第1の回転伝達機構と、他のモータの回転を前記内バスケットまで伝達する第2の回転伝達機構とを備え、前記内バスケットに導入された前記被処理物は大口径の前記孔から外バスケットに排出され、前記外バスケットにおいては、前記被処理物から抽出される固体物を前記内バスケットの前記エッジで上部まで搬送して前記固体排出口から外部に排出するとともに、前記被処理物から抽出される液体を小口径の前記孔から前記格納容器に排出することを特徴とする。
請求の範囲第7項に記載の被処理物の遠心分離装置によれば、被処理物は、一のモータの駆動により、第1の回転伝達機構を介して回転する内バスケット内で遠心分離作用により、大口径の孔から外バスケット側に排出される。また、他のモータの駆動により、第2の回転伝達機構を介して回転する外バスケット内においても遠心分離作用により、固液分離が促進される。分離された固体物は、内バスケットのエッジによって外バスケットの上方に搬送され、固体排出口から外部に排出される。また、分離された液体部分は、濃縮した被処理物として小口径の孔から外バスケットの外部に排出される。なお、内バスケットの外バスケットの回転は同速回転であっても差速回転であってもよい。この内バスケットと外バスケットはそれぞれ異なるモータで駆動されるため、それぞれの回転制御を容易にでき、回転伝達機構の構造を簡易にすることができる。
請求の範囲第8項に記載の発明は、酒類の濃縮装置であって、酒類導入口を有し、酒類を凍結するために所定温度に冷却する冷却手段を有する冷凍室と、前記冷凍室で凍結した前記酒類を水分と濃縮した酒類に分離するための遠心分離装置を有し、前記遠心分離装置の温度を所定温度に近似した温度に保つための固液分離室とを備えたことを特徴とする。
請求の範囲第8項に記載の酒類の濃縮装置は、前記した濃縮した日本酒の製造方法を具現化するための装置である。冷凍室において、酒類を凍結させ、遠心分離装置によって凍結した酒類を水分を組成とする氷と濃縮した酒類に分離させることができる。
請求の範囲第9項に記載の発明は、請求の範囲第8項に記載の酒類の濃縮装置において、前記冷凍室は、前記酒類を貯蔵するトレーと、前記トレーを搬送する搬送手段と、搬送された前記トレーから凍結した前記酒類を剥離する剥離手段とを有することを特徴とする。
請求の範囲第9項に記載の酒類の濃縮装置によれば、冷凍室内において酒類を搬送させるので、その間に凍結を促進させることができる。またトレー上の凍結した日本酒を剥離手段で剥離させることができるので、人手による作業を介さず、工業生産に適している。さらに、請求の範囲第9項に記載の酒類の濃縮装置は、酒類を、搬送されるトレーに薄層状態(3mmから15mmの厚さ)に順次供給して、請求の範囲第3項に記載の日本酒の製造方法に使用することができる。また、全トレーに厚く(20mm〜40mmの厚さ)供給した後、一旦搬送を停止して、所定の冷却速度で冷却させるようにすることで、請求の範囲第4項に記載の日本酒の製造方法に使用することができる。
請求の範囲第10項に記載の発明は、請求の範囲第9項に記載の酒類の濃縮装置において、前記トレーを密閉する蓋を有し、前記蓋の内側に前記トレーを複数の区画に仕切る区画板を形成していることを特徴とする。
請求の範囲第10項に記載の酒類の濃縮装置によれば、区画板がトレーを複数の区画に仕切っているので、冷却効果が向上し、トレーに貯蔵される日本酒を、早く、かつ、均一に凍結させることができる。また、区画板が、複数の区画に仕切ることで、密閉度があがる。さらに、トレーから剥離される凍結した日本酒は、小さいブロック状となっているので、遠心分離装置に供給しやすい。
請求の範囲第11項に記載の発明は、請求の範囲第8項に記載の酒類の濃縮装置において、前記冷凍室は、一方の端部に前記酒類導入口を有する外筒と、前記外筒の内側に設けられ、外周にスパイラル状のエッジを有する内筒と、前記内筒を回転させるモータとを有し、前記内筒が前記モータの駆動により回転することで前記酒類導入口から前記外筒と前記内筒の間に導入された前記酒類を前記外筒の他方の端部から排出できることを特徴とする。
請求の範囲第11項に記載の酒類の濃縮装置によれば、一方の端部にある酒類導入口から外筒と内筒の間に導入した酒類を、外周にスパイラル状のエッジを有する内筒を回転させることで、他方の端部方向に移動させることができる。その間に、日本酒は凍結され、他方の端部からは、凍結した酒類を自動的に排出できる。これによれば、冷凍室内のスペースを効率よく活用でき、冷凍室を小さく形成することもできる。
請求の範囲第12項に記載の発明は、所定の温度に保たれた固液分離室に、酒類を貯蔵するための貯蔵手段と、前記貯蔵手段を浸漬させ、前記酒類を凍結させるために所定温度に冷却された不凍液と、前記不凍液によって凍結した前記酒類を水分と濃縮した酒類に分離するための遠心分離装置とを備える酒類の濃縮装置であって、前記貯蔵手段は、一方の端部に酒類導入口を有する外筒と、前記外筒の内側に設けられ、外周にスパイラル状のエッジを有する内筒と、前記内筒を回転させるモータとを有し、前記内筒が前記モータの駆動により回転することで前記酒類導入口から前記外筒と前記内筒の間に導入した前記酒類を前記外筒の他方の端部から排出できることを特徴とする。
請求の範囲第12項に記載の酒類の濃縮装置によれば、貯蔵手段は、一方の端部にある酒類導入口から外筒と内筒の間に導入した酒類を、外周にスパイラル状のエッジを有する内筒を回転させることで、他方の端部方向に移動させることができる。そして、貯蔵手段の外筒の外側及び内筒の内側を、所定温度に冷却された不凍液に浸漬させることで、貯蔵手段内で酒類が移動する短時間に酒類は凍結され、他方の端部から、凍結した酒類を自動的に排出できる。自動的に排出された酒類は、所定の温度に保たれた固液分離室内において、遠心分離装置により、水分と濃縮した酒類に分離される。
ここで、「所定の温度」とは、固液分離室内の温度であり、不凍液の「所定温度」に近似した温度のことである。
請求の範囲第13項に記載の発明は、請求の範囲第8項から請求の範囲第12項のいずれか1項に記載の酒類の濃縮装置において、前記遠心分離装置は、モータと、外周に大口径の孔を有するとともに、スパイラル状のエッジを有する内バスケットと、外周に小口径の孔を有し、前記内バスケットの外側に配置される外バスケットと、前記外バスケット及び前記内バスケットを格納する格納容器と、前記外バスケットの側面上部付近に設けられる固体排出口と、前記外バスケット及び前記内バスケットのそれぞれに前記モータの回転伝達比を可変にして回転を伝達する回転伝達機構とを備え、前記内バスケットに導入された前記酒類は大口径の前記孔から前記外バスケットに排出され、前記外バスケットにおいては、前記内バスケットの回転と回転数に差があることで、前記酒類から抽出される固体物を前記エッジで上部まで搬送して前記固体排出口から外部に排出できることを特徴とする。
請求の範囲第13項に記載の酒類の濃縮装置によれば、凍結した日本酒は、モータの駆動により回転する内バスケット内で遠心分離作用により、大口径の孔から外バスケット側に排出される。また、外バスケット内においても遠心分離作用により、固液分離が促進される。分離された固体物は、エッジによって外バスケットの上方に搬送され、固体排出口から外部に排出される。また、分離された液体部分は、濃縮した酒類として小口径の孔から格納容器側(外バスケットの外部)に排出される。
また、このような遠心分離装置は、酒類の濃縮にかかわらず新規な装置である。従って、請求の範囲第13項に記載の遠心分離装置は、他の用途にも適用可能である(請求の範囲第6項)。
請求の範囲第14項に記載の発明は、請求の範囲第8項から請求の範囲第12項のいずれか1項に記載の酒類の濃縮装置において、前記遠心分離装置は、2つのモータと、外周に大口径の孔を有し、スパイラル状のエッジを有する内バスケットと、外周に小口径の孔を有し、前記内バスケットの外側に配置される外バスケットと、前記外バスケット及び前記内バスケットを格納する格納容器と、前記外バスケットの側面上部付近に設けられる固体排出口と、一のモータの回転を前記外バスケットまで伝達する第1の回転伝達機構と、他のモータの回転を前記内バスケットまで伝達する第2の回転伝達機構とを備え、前記内バスケットに導入された前記被処理物は大口径の前記孔から外バスケットに排出され、前記外バスケットにおいては、前記被処理物から抽出される固体物を前記内バスケットの前記エッジで上部まで搬送して前記固体排出口から外部に排出するとともに、前記被処理物から抽出される液体を小口径の前記孔から前記格納容器に排出することを特徴とする。
請求の範囲第14項に記載の酒類の濃縮装置によれば、凍結した日本酒は、一のモータの駆動により、第1の回転伝達機構を介して回転する内バスケット内で遠心分離作用により、大口径の孔から外バスケット側に排出される。また、他のモータの駆動により、第2の回転伝達機構を介して回転する外バスケット内においても、遠心分離作用により、固液分離が促進される。分離された固体物は、エッジによって外バスケットの上方に搬送され、固体排出口から外部に排出される。また、分離された液体部分は、濃縮した酒類として小口径の孔から格納容器側(外バスケットの外部)に排出される。
なお、内バスケットと外バスケットの回転は同速回転であってもよいし、差速回転であってもよい。この内バスケットと外バスケットはそれぞれ異なるモータで駆動されるため、それぞれの回転制御を容易にでき、回転伝達機構の構造を簡易にすることができる。
また、このような遠心分離装置は、酒類の濃縮にかかわらず新規な装置である。従って、請求の範囲第14項に記載の遠心分離装置は、他の用途にも適用可能である(請求の範囲第7項)。
【図面の簡単な説明】
第1図は第1の実施の形態に係る日本酒の濃縮装置の構成を示す図である。
第2図はトレー及び蓋の斜視図である。
第3図は分離装置の正面図である。
第4図は分離装置の部分断面斜視図である。
第5図はシリンダの一部断面側面図である。
第6図は第3の実施の形態に係る日本酒の濃縮装置の構成を示す図である。
第7図は第4の実施の形態に係る分離装置の断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明に係る酒類の濃縮装置の実施の形態を、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に説明する各実施の形態においては、酒類として日本酒を適用した場合を想定する。
〔第1の実施の形態〕
第1図は第1の実施の形態に係る日本酒の濃縮装置の構成を示す図である。
第1図に示すように、日本酒の濃縮装置(以下、単に「濃縮装置」という)1は、原料となる日本酒Aを原料タンクTから供給されて凍結させるための冷凍室10と、凍結した日本酒Aを、水分を組成とする氷Iと濃縮した日本酒Cに分離するための分離装置30を備えた固液分離室20とを備えて構成されている。
原料タンクTには、原料となる日本酒Aが貯蔵されている。日本酒Aは、いわゆる純米酒(吟醸酒を含む)であり、低温殺菌(いわゆる火入れ)が1回もされていない(一般には製造直後と瓶詰直前の2回の火入れが行われている)いわゆる生酒であることが望ましい。生酒は、種々の酵素も活性度が高い状態に保たれているので、質の良い熟成が製造後に可能であるからである。
原料タンクTには、冷凍室10内に日本酒Aを供給するための供給管(酒類導入口)11が接続されている。
冷凍室10は、供給される日本酒Aを凍結させるための冷却手段12と、日本酒Aを搬送する搬送手段13と、搬送手段13から搬送された日本酒Aを分離装置30に供給するために剥離する剥離手段14を備えて構成されている。冷却手段12においては、日本酒Aを−10〜−40℃の間の所定の温度に冷却できるように任意に調節できるものであり、冷却速度も任意に調節できるものが望ましい。このような冷却手段12を有する冷凍室10内で、日本酒Aを搬送させ、搬送のための時間を稼ぐことで、確実かつ均一に凍結させることができるようになっている。なお、凍結した日本酒Aは固めのシャーベット状になる。
搬送手段13は、日本酒Aを充填するための複数のトレー131と、トレー131上に載置される蓋132と、トレー131を固定して搬送するチェーン133,133と、蓋132をトレー131上に載置されるように搬送するチェーン134,134と、チェーン133,134を巻きかけられるスプロケットホイールWとから構成される(第2図参照)。
第2図は、トレー131と蓋132の斜視図である。
トレー131は、10mm〜50mmの深さを有する矩形状の器であり、日本酒Aを供給管11から供給されて、搬送するための器として用いられる。
蓋132は、トレー131上に載置され、トレー131を密閉状態にして供給された日本酒Aを均一に、アルコール等揮発成分を失うことなく凍結させるために設けられる。また、蓋132がトレー131に対する面(内側)は、複数の区画に仕切られるように、複数の区画板132aが形成されている。これにより、蓋132が日本酒Aを貯溜したトレー131上に載置されると、トレー131上で複数の区画に仕切ることができ、この状態で搬送させることで、日本酒Aを小さいブロックごとに凍結させることができる。
チェーン133は、平行に2本設けられるものであり、スプロケットホイールW1,W2に巻きかけられ、全体として環状に連結されている。このチェーン133,133間に配置されるように、複数枚のトレー131の底面の搬送方向両側中央付近にある支持部131a,131aで支持されて固定されている。そして、図示しない駆動機構によりスプロケットホイールW1,W2が回転することで、チェーン133が循環し、トレー131を搬送できるようになっている。チェーン133に固定されるトレー131は、第1図に示すP1,P2地点で、チェーン133の搬送方向が変わるときは、反転されて搬送される。
チェーン134は、チェーン133と同様に、平行に2本設けられるものであり、スプロケットホイールW3,W4(又はW5,W6)に巻きかけられ、全体として環状に連結されている。このスプロケットホイールW3,W4とスプロケットホイールW5,W6は、互いに搬送方向にずれた位置に配置され、チェーン134,134もスプロケットホイールW4・・・の位置に合わせて、互いに搬送方向にずれた位置に配置される(第2図参照)。このチェーン134,134に配置される蓋132の幅方向の側部においては、互いに対向する側部が搬送方向にずれる位置に支持部132b,132cを有し、この支持部132b,132cがチェーン134,134に固定されるブラケット135,135に回転可能に支持される。
そして、図示しない駆動機構によりスプロケットホイールW4,W5,W6,W7を回転させることで、チェーン134,134を循環させて、蓋132を搬送できるようになっている。このように構成されていることで、チェーン134,134の循環領域で、搬送方向が変わるのに従ってブラケット135の方向が変わっても、ブラケット135に対し回転自在な蓋132は常に水平状態に保たれたまま、搬送されることができる。
剥離手段14には、例えば、スクレーパーを用いることができる。P2地点で反転したトレー131内にスクレーパーを移動させて、凍結した日本酒Aをトレー131から掻き出すようにして剥離させることができる。
ちなみに、この剥離手段14は、凍結した日本酒Aをトレー131から剥離させることができればよく、例えば、超音波振動子を採用することもできる。これによれば、反転させた状態のトレー131に、超音波振動子の作用によって超音波振動を与えて、日本酒Aがトレー131から剥離して落下する。
ここで、剥離された日本酒Aは、蓋132の区画板132aによって小さくブロック状に形成されており、コンベヤ15等に載置され、固液分離室20の分離装置30まで搬送されて供給されるようになっている。凍結した日本酒Aは、小さいブロック状で製氷されることで、分離装置30に供給しやすくなるとともに、分離装置30内で粉砕する時間を短縮させることができる。
以下、搬送手段13の動作について説明する。
トレー131には、P1点において、供給管11から日本酒Aを供給された後、チェーン134に固定された蓋132が載置されて、P2地点まで搬送される。P2地点まで搬送されたトレー131及び蓋132は、トレー131と蓋132が分離して、蓋132は上方向に水平な状態のまま搬送されていき、トレー131は下方向に反転して搬送される。ここで、反転されたトレー131から凍結した日本酒Aを剥離手段14によって剥離して、コンベヤ15で固液分離室20側に供給できるようになっている。そして、日本酒Aを剥離されたトレー131及び蓋132は、再びP1地点に搬送され、同様の動作を繰り返す。
固液分離室20は、凍結した日本酒Aを固液分離する分離装置30と、分離装置30を所定の温度に保つための冷却手段21とを備える。
第3図は、分離装置の断面図であり、第4図は、分離装置の部分断面斜視図である。
第3図に示すように、分離装置30は、格納容器40と、格納容器40を支持する支持台50とを備えて構成され、格納容器40内において遠心分離の脱水作用を利用して氷Iと濃縮した日本酒Cの固液分離を行えるようになっている。
格納容器40は、容器本体40aと、容器蓋40bと、容器本体40aの下部に配設される液排出管40cと、容器本体40aの上側面部に配設される氷排出口40dとを有する。
容器本体40aの内部中央には、投入部41が配置されており、投入部41の外側に内バスケット42が、また、内バスケット42の外側に外バスケット43が配設されている。投入部41から投入された日本酒Aは内バスケット42内で細かく粉砕されて外バスケット43に排出されて、外バスケット43内で濃縮した日本酒Cのみをさらに外バスケット43の外部に排出して、氷Iと分離できるようになっている。
投入部41は、筒状部材からなり、容器本体40aの中央に配置されるように容器蓋40bに固定されている。投入部41は、剥離手段14から剥離されて供給された日本酒Aを受け入れて、内バスケット42に投入できるようになっているため、投入部41の下部と内バスケット42の底面にはわずかなクリアランスが設けられている。
内バスケット42は、例えばステンレス(SUS)等の材質からなり、底面を有した円筒状をしており、その上端部にはフランジ42aが設けられている。内バスケット42の内側中央の底面には、削り出しエッジ42bが設けられており、投入部41から投入された氷状の日本酒Aを細かく粉砕できるようになっている。また、内バスケット42の側面には、直径10mm程度の孔42c(第3図参照)が複数設けられており、ここから粉砕された日本酒Aの細かい氷Iを外部、つまり後記する外バスケット43側に排出できるようになっている。さらに、内バスケット42の外側側面にはスパイラル状にエッジ42dが形成されている。
内バスケット42の外側には、内バスケット42のエッジ42dとの間に僅かなクリアランスを設けて、例えばステンレス等からなる外バスケット43が配置される。外バスケット43も同様に底面を有した円筒状をしており、その上部にはフランジ43aが設けられている。外バスケット43の側面には、直径1.0mm以下、好ましくは0.05mm程度の孔43bが設けられており、氷Iから分離された濃縮した日本酒Cを格納容器40側に排出できるようになっている。なお、内バスケット42及び外バスケット43の側面に設けられる孔42c,43bの大きさは、前記した径に限定されるものではなく、適宜変更可能であるが、必ず孔42cの方が大きいものとする。
支持台50は格納容器40の下部に固定され、その内部に、モータMと、モータMの回転速度を変えて内バスケット42又は外バスケット43に回転を伝達する回転伝達機構60を有している。
回転伝達機構60は、モータMの回転軸に直結される回転伝達軸61を有し、内バスケット42に回転を伝達するための機構として、内バスケット42に固定される内バスケット回転軸62と、回転伝達軸61に設けられ、その回転を内バスケット42に伝達するためのギヤG1と、内バスケット回転軸62に取り付けられるギヤG2とを備えている。また、回転伝達機構60は、外バスケット43に回転を伝達するための機構として、外バスケット43に固定される外バスケット回転軸63と、回転伝達軸61に設けられ、その回転を外バスケット43に伝達するためのギヤG3と、外バスケット回転軸63に取り付けられるギヤG4とを備えている。外バスケット回転軸63は、ベアリングBを介して、内バスケット回転軸62を外嵌するように設けられており、ギヤG1〜G4の歯数を変えることで、それぞれ異なる回転を伝達されることができるように構成される。ここで、ギヤG1〜G4のそれぞれの歯数の比によって、内バスケット42及び外バスケット43の回転数は異なるものとなる。内バスケット42と外バスケット43の回転数に差を設けることで、内バスケット42の孔42cから排出された日本酒Aを、外バスケット43内において、氷Iをエッジ42dで上方向に移動させてフランジ43a上を介して、氷排出口40dから排出できるように構成されている。
以上のように構成された分離装置30の動作について、以下、説明する。
まず、モータMを駆動させて、内バスケット42及び外バスケット43を回転させながら、冷凍室10において凍結した日本酒Aが投入部41から投入される。投入された日本酒Aは、回転する内バスケット42内の削り出しエッジ42bによって粉砕され、孔42cから外バスケット43側に排出される。外バスケット43内においては、氷Iはエッジ42dで上方向に搬送され氷排出口40dから排出され、遠心分離によって濃縮した日本酒Cは孔43bから格納容器40側に排出されて、最終的には、液排出管40cから排出される。
<製造方法>
次に、濃縮装置1を用いた濃縮した日本酒の製造方法について第1図及び第3図を参照しながら、説明する。
(凍結工程)
まず、本発明の濃縮した日本酒の製造方法において、日本酒を所定温度(−20℃〜−40℃、好ましくは−25℃〜−40℃)まで均一に凍結させる。
図示された装置においては、冷凍室10において、日本酒Aを搬送手段13において搬送させながら、凍結させる。本発明においては−20℃〜−40℃の間の所定の温度まで均一に凍結させることが必須である。
すなわち、この凍結工程において、凍結温度が−20℃未満であったり、不均一に凍結させたりすると、目的とする30度以上のアルコール度数(例えば、原料酒のアルコール度数が18度の場合で濃縮倍率が1.67であれば、濃縮後のアルコール度数が30度となる)を有する濃縮した日本酒Cが製造できないことを実験的に見出した。冷却能力や実用的なアルコール度数を鑑みて上限を−40℃とした。
具体的には、冷却手段12において、冷凍室10内を−20℃〜−40℃の間の所定の温度に設定して、トレー131に日本酒Aを薄層状(例えば、5mmの深さ)に充填して、搬送手段13で搬送させる短時間で急速凍結させる。このように凍結させる方法は、アルコール回収率、製品の品質確保の観点から原料たる日本酒Aの外周部及び中央部を均一に冷却することがポイントであり、このように凍結した日本酒Aは均質なシャーベット状となる。ちなみに、日本酒Aを薄層状に充填させるのは、均一な凍結温度で凍結させるためである。
(分離工程)
次いで、本発明の方法において、凍結した日本酒を固液分離して、濃縮した酒と水分とに分離する。
図示した装置においては、凍結した日本酒Aは、剥離手段14でトレー131から剥離されて、分離装置30の投入部41に投入され、液体部分と固体部分とに分離される。分離された液体部分が目的とする濃縮した日本酒Cであり、固体部分はその組成が水分を主体とした氷である。分離装置30が載置される固液分離室20においては、冷凍室10と略同一の温度に設定されている。なお、この冷凍室10における凍結温度と固液分離室20の固液分離時の品温は、製品の品質、アルコール及びエキス分等の濃縮倍率、アルコール回収率に大きく影響する。
具体的には、投入された日本酒Aは、内バスケット42内で細かく粉砕されて、孔42cを通過して外バスケット43側に排出される。外バスケット43において、孔43bを通過しない氷Iはエッジ42dで上方向に搬送されて、氷排出口40dから格納容器40の外部に排出され、孔43bを通過した液体部分は脳出した日本酒Cとして、液排出管40cから排出される。
以上のように構成された濃縮装置1によれば、以下の効果を得ることができる。
冷凍室10において搬送手段13のトレー131上に日本酒Aを充填して搬送させる間に凍結させるので、生産効率が高く、工業生産に適している。
また、日本酒Aをトレー131から剥離手段14で剥離させて、コンベヤ等で分離装置30まで搬送できることから、人手を使うことなく、能率的に工程をすすめることができる。
さらに、分離装置30では、遠心分離の脱水作用を利用して固液分離をすることができ、また、氷I等は自動的かつ連続的に外部に排出できるようになっているので、生産効率が高く、自動工程に用いられるのに適している。
そして、このようにして得られた濃縮した日本酒Cは、アルコール、糖、アミノ酸、酵素等日本酒が本来含有している成分が1.5倍以上に濃縮されたものとなる。
また、このようにして得られた日本酒Cにおいては、アルコール度数が30度以上と高いため、常温において変質することなく保管(熟成)することができる。また、常温で保管するので、熟成の進行を早めることができる。
さらに、濃縮した日本酒Cは、原料酒に火入れをしていない日本酒を用いているため、酵素の活性度も高く、質の良い(例えば、味が円やか、香りがよい、アルコールの刺激が少ない等)熟成をさせることができる。
以上、本発明の好適な実施形態についての一例を説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更が可能である。
例えば、本実施の形態においては、トレー131の深さを10mm〜50mmとしたが、本発明はこれに限定されず、適宜設計変更可能である。例えば、トレー131の深さをより大きく形成して、日本酒Aをより多く充填させることもできる。こうすることにより、より多くの量を凍結させることができる。
また、本実施の形態においては、搬送手段13において、トレー131と蓋132をそれぞれチェーン133に固定させて、両者を合体させる構成としているが、本発明はこれに限定されず、例えば、トレー131に蓋を直接取り付けるように構成することもできる。このようにすれば、構造をより簡易にすることができる。
さらに、本実施の形態においては、搬送手段13のチェーン133,134をそれぞれ単なる環状にして、日本酒Aが充填されるのは一段だけと構成したが、日本酒Aを充填させる段を多段にして構成することもできる。このように構成することで、冷凍室10内のスペース効率を向上させることができ、また、搬送される日本酒Aの量を増やすことができるので、量産性にも優れる。
〔第2の実施の形態〕
本発明の第2の実施の形態について、適宜図面を参照しながら、詳細に説明する。なお、第2の実施の形態は第1の実施の形態の構成を一部変更したものであるので、同一の構成要素については同一の符号を付して、その説明を省略する。
本実施の形態における日本酒の濃縮装置(以下、単に「濃縮装置」という)は、原料となる日本酒Aを原料タンクTから供給されて凍結させるための冷凍室10と、凍結した日本酒Aを、水分を組成とする氷Iと濃縮した日本酒Cに分離するための分離装置30を備えた固液分離室20とを備えて構成されている(第1図参照)。
冷凍室10は、日本酒Aをその内部で一端から他端に搬送するシリンダ70と、シリンダ70を冷却するための冷却手段12とを有する。このシリンダ70は、第1の実施の形態における搬送手段13と、剥離手段14と、コンベヤ15の機能を果たすものである。
第5図は、シリンダの断面図である。
第5図に示すように、シリンダ70は、片側が開放されている外筒71と、外筒71の内側に配設される内筒72と、内筒72を回転させるためのモータM’を備えて構成される。
外筒71は、中空に形成され、その両端部においては、一方が開放端71aとなっており、他方に閉塞端となる底面71bが形成されている。底面71b側の端部付近に酒類導入口71cを有しており、原料タンクTから酒類導入口71cを介して日本酒Aを外筒71の内部に導入できるようになっている。
そして、外筒71は、開放端71aが上を向くように、水平方向に対して略15〜45°傾けて冷凍室10内に設置してあり、開放端71aの下方には分離装置30の投入部41があるように配置される。
内筒72は、中空に形成され、外周面にスパイラル状のエッジ72aを有しているとともに、軸方向に回転できるようにモータM’が接続されている。また、その下端側には底面72bを有しており、モータM’の回転軸を支持できるようになっている。なお、内筒72の内側にも冷却手段12からの冷却された空気を循環させるように構成すれば、冷却効率を向上できる。
このように構成されたシリンダ70には、酒類導入口71cから外筒71と内筒72の間のスペースに日本酒Aが導入される。そして、モータM’の駆動によって軸方向に回転する内筒72のエッジ72aが、日本酒Aを上方向に搬送する。冷凍室10内に配置されるシリンダ70は、冷却手段12によって、外筒71の外側から冷却される。また、冷却された空気を内筒72の内側にも循環させれば、内筒72の内側からも冷却される。そのため、日本酒Aは搬送される間に急速に凍結されながら(凍結工程)、開放端71aから外部(分離装置30の投入部41側)に排出される。なお、分離装置30での日本酒Aの分離作用(分離工程)については、第1の実施の形態と同様であるので、ここでは説明を省略する。
以上のように構成された濃縮装置によれば、以下の効果が得られる。
シリンダ70によれば、モータM’を回転させることで、一端側(酒類導入口71c)から他端側(開放端71a)に日本酒Aを搬送させることができ、その搬送時間を利用して日本酒Aを凍結させることができる。そのため、順次シリンダ70内に日本酒Aを導入して、連続的に凍結させていくことができ、生産効率をあげることができるとともに、工業生産にも適している。
また、外筒71の開放端から排出される日本酒Aは、下方に配置された分離装置30の投入部41に直接投入される。そのため、凍結した日本酒Aをシリンダ70から連続的に分離装置30に供給でき、自動工程に適用できる。
そして、このようにして得られた濃縮した日本酒Cは、アルコール、エキス分、酵素類、アミノ酸、香り成分等日本酒が本来含有している成分が1.5倍から2倍以上に濃縮されたものとなる。
また、このようにして得られた日本酒Cにおいては、アルコール度数が高いため、変質することなく保管(熟成)することができる。また、常温で保管するので、熟成の進行を早めることができる。
さらに、濃縮した日本酒Cは、原料酒に火入れをしていない日本酒を用いているため、酵素の活性度も高く、質の良い(例えば、味が円やか、香りがよい、アルコールの刺激が少ない等)熟成をさせることができる。
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、以下のような形態でも実施することができる。
例えば、本実施の形態においてはシリンダ70を一本のみ採用した例について説明したが、本発明はこれに限定されず、複数本で構成するようにしてもよい。このようにすることで、生産効率をより上げることができる。
また、例えば、前記した実施の形態における濃縮装置1においては、原料として日本酒を適用したが、本発明はこれに限定されず、あらゆる酒類(例えば、ビール、リキュール、ラム酒等)に適用することができる。
なお、前記した実施の形態においては、濃縮装置を用いて製造した濃縮日本酒及びこれを製造する方法について説明したが、濃縮装置を用いないで同様の方法で製造された日本酒、及び同様の形態で実施される方法を含む製造方法であれば、本発明の技術的範囲に属するものとする。
前記した実施の形態においては、凍結工程において、日本酒Aを−20〜−40℃の間の所定温度まで均一に急速冷却させることとしたが、本発明はこれに限定されず、例えば、所定温度まで冷凍庫の温度制御を行って、1時間あたり0.5〜2.0℃の冷却速度で徐冷させることもできる。このようにすると、前記した実施の形態よりも凍結完了までの時間を要するが、アルコール及びエキス分等の回収率が高く、品質の良い濃縮日本酒が得られることが実施例において見出されている。
〔第3の実施の形態〕
本発明の第3の実施の形態について、適宜図面を参照しながら、詳細に説明する。なお、第3の実施の形態は第2の実施の形態の構成を一部変更したものであるので、同一の構成要素については同一の符号を付して、その説明を省略する。
第6図は、第3の実施の形態に係る日本酒の濃縮装置の構成を示す図である。
本実施の形態における日本酒の濃縮装置2(以下、単に「濃縮装置」という)は、固液分離室20内において、原料となる日本酒Aを原料タンクTから供給されてその内部において搬送させるためのシリンダ(貯蔵手段)70と、貯留槽80内に貯留される不凍液81と、シリンダ70から排出される日本酒Aを、水分を組成とする氷Iと濃縮した日本酒Cに分離するための分離装置30を備えて構成されている。
シリンダ70は、貯留槽80内に配置され、外筒71の外側及び内筒72の内側(第5図参照)から、後記する不凍液81によって冷却されるものである。シリンダ70が冷却されることで、酒類導入口71cから外筒71と内筒72の間のスペースに導入される日本酒Aが、開放端71aまで搬送される間に凍結される。
そして、外筒71は、開放端71aが上を向くように、水平方向に対して略15〜45°傾けて貯留槽80内に設置してあり、開放端71aからは、分離装置30の投入部41まで連続するスロープ71eが形成されている。
不凍液81は、貯留槽80内に貯留され、シリンダ70を浸漬する。また、内筒72の内部に不凍液81を循環させるように構成してもよい。不凍液81は、日本酒Aを所定温度で凍結させるために、例えば、−40℃に冷却されている。
また、固液分離室20の温度は、冷却手段21によって、前記した凍結温度と近似した温度、例えば、−35℃に保たれている。
このように構成されたシリンダ70には、酒類導入口71cから外筒71と内筒72の間のスペースに日本酒Aが導入される。そして、モータM’の駆動によって軸方向に回転する内筒72のエッジ72aが、日本酒Aを上方向に搬送する。不凍液81に浸漬されるシリンダ70は、不凍液81によって、外筒71の外側から冷却される。また、内筒72の内側にも不凍液81を循環させることで、さらに冷却効率を高めることができる。そのため、日本酒Aは搬送される間に急速に凍結されながら(凍結工程)、開放端71aからスロープ71eを介して外部(分離装置30の投入部41側)に排出される。なお、分離装置30での日本酒Aの分離作用(分離工程)については、第1の実施の形態と同様であるので、ここでは説明を省略する。
以上のように構成された濃縮装置2によれば、以下の効果が得られる。
シリンダ70によれば、モータM’を回転させることで、一端側(酒類導入口71c)から他端側(開放端71a)に日本酒Aを搬送させることができ、その搬送時間(短時間)を利用して日本酒Aを凍結させることができる。そのため、順次シリンダ70内に日本酒Aを導入して、連続的に凍結させていくことができ、生産効率をあげることができるとともに、工業生産にも適している。
また、外筒71の開放端から排出される日本酒Aは、下方に配置された分離装置30の投入部41に直接投入される。そのため、凍結した日本酒Aをシリンダ70から連続的に分離装置30に供給でき、自動工程に適用できる。
そして、このようにして得られた濃縮した日本酒Cは、アルコール、エキス分、酵素類、アミノ酸、香り成分等日本酒が本来含有している成分が1.5倍から2倍以上に濃縮されたものとなる。
また、このようにして得られた日本酒Cにおいては、アルコール度数が高いため、変質することなく保管(熟成)することができる。また、常温で保管するので、熟成の進行を早めることができる。
さらに、濃縮した日本酒Cは、原料酒に火入れをしていない日本酒を用いているため、酵素の活性度も高く、質の良い(例えば、味が円やか、香りがよい、アルコールの刺激が少ない等)熟成をさせることができる。
なお、前記した分離装置30は、日本酒(酒類)の濃縮にかかわらず、新規な装置である。従って、請求の範囲第13項に記載の遠心分離装置は、他の用途にも適用可能である(請求の範囲第6項)。
[第4の実施の形態]
本発明の第4の実施の形態について、適宜図面を参照しながら、詳細に説明する。なお、第4の実施の形態は、第1の実施の形態の分離装置の構成を一部変更したものであるので、同一の構成要素については同一の符号を付して、その説明を省略する。
本実施の形態における日本酒の濃縮装置(以下、単に「濃縮装置」という)は、原料となる日本酒Aを原料タンクTから供給されて凍結させるための冷凍室10と、凍結した日本酒Aを、水分を組成とする氷Iと濃縮した日本酒Cに分離するための分離装置90を備えた固液分離室20とを備えて構成されている(第1図、第7図参照)。
第7図は、分離装置の断面図である。
第7図に示すように、分離装置90は、2つのモータM1,M2と、モータM1から回転伝達機構96(第2の回転伝達機構)を介して回転を伝達される内バスケット92と、モータM2から回転伝達機構97(第1の回転伝達機構)を介して回転を伝達される外バスケット93と、内バスケット92及び外バスケット93を内部に格納する格納容器94とを備えて構成されており、格納容器94とモータM1,M2は基台51に固定されている。
分離装置90では、遠心分離の脱水作用を利用して、格納容器94内で、日本酒Aを、氷Iと濃縮した日本酒Cに固液分離できるようになっている。
内バスケット92は、例えばステンレス(SUS)等の材質からなり、底面92aを有した円筒状に形成される。内バスケット92の内側中央の底面には、削り出しエッジ92bが設けられており、後記する投入部95から投入された氷状の日本酒Aを細かく粉砕できるようになっている。また、内バスケット92の側面には、直径10mm程度の孔92cが複数設けられており、ここから粉砕された日本酒Aの細かい氷Iを内バスケット92の外部、つまり、後記する外バスケット93側に排出できるようになっている。さらに、内バスケット92の外側側面にはスパイラル状にエッジ92dが形成されている。
内バスケット92の外側には、内バスケット92のエッジ92dとの間に僅かなクリアランスを設けて、例えばステンレス等からなる外バスケット93が配置される。外バスケット93は、底面93aを有した円筒状をしており、その上部にはフランジ93bが設けられている。外バスケット93の側面には、濃縮した日本酒Cを格納容器94側に排出するための小さい孔93cが設けられている。孔93cは、日本酒Aの固液分離時に、内バスケット92と外バスケット93が同速回転する場合は、直径1.0mm以下、好ましくは、0.4mm程度、差速回転する場合は、0.05mm程度に形成されることが好ましい。ちなみに、同速回転の場合は、外バスケット93の内周面に、残存する粉砕された酒氷(氷I)の壁ができ、この壁がフィルター作用(いわゆる「ケーキ濾過」)をすると考えられる。なお、内バスケット92及び外バスケット93の側面に設けられる孔92c,93cの大きさは、前記した径に限定されるものではなく、適宜変更可能であるが、必ず孔92cの方が大きいものとする。
格納容器94は、容器本体94aと、容器蓋94bと、容器本体94aの下部に配設される液排出管94cと、容器本体94aの上側部に配設される氷排出口94dとを有する。
容器本体94aの内部中央には、投入部95が、容器蓋94bに固定されて配置されており、投入部95の外側に内バスケット92が配置され、また、内バスケット42の外側に外バスケット93が配置されている。投入部95から投入された日本酒Aは、内バスケット42内で削り出しエッジ92bによって細かく粉砕されて外バスケット43に排出される。このようにして、外バスケット43内で濃縮した日本酒Cのみをさらに格納容器94(外バスケット43の外部)に排出して、氷Iと分離できるようになっている。
投入部95は、筒状部材からなり、容器本体94aの中央に配置されるように容器蓋94bに固定されている。投入部95は、剥離手段14(第1図参照)から剥離されて供給された日本酒Aを受け入れて、内バスケット92に投入できるようになっているため、投入部95の下部と内バスケット42の底面にはわずかなクリアランスが設けられている。
基台51の中央上部には、格納容器94をボルト等で固定し、その両側にモータM1,M2を配置して固定している。また、基台51の内部には、モータM1から内バスケット92まで回転を伝達する回転伝達機構96と、モータM2から外バスケット93まで回転を伝達する回転伝達機構97を有している。
回転伝達機構96は、モータM1の回転軸に直結される回転伝達軸96aと、この回転伝達軸96aに固定されるプーリP1と、内バスケット92の底面92aの中央部に固定される内バスケット回転軸96bと、この内バスケット回転軸96bに固定されるプーリP2と、プーリP1とプーリP2に巻きかけられるタイミングベルトV1からなる。回転伝達機構96では、モータM1を駆動すると、その回転軸に直結される回転伝達軸96aの回転が、プーリP1、タイミングベルトV1、プーリP2、内バスケット回転軸96bを介して、内バスケット92に伝達される。
また、回転伝達機構97は、モータM2の回転軸に直結される回転伝達軸97aと、この回転伝達軸97aに固定されるプーリP3と、外バスケット93の底面93aの中央部に固定される外バスケット回転軸97bと、この外バスケット回転軸97bに固定されるプーリP4と、プーリP3とプーリP4に巻きかけられるタイミングベルトV2とからなる。回転伝達機構97では、モータM2を駆動すると、その回転軸に直結される回転伝達軸97aの回転が、プーリP3、タイミングベルトV2、プーリP4、外バスケット回転軸97bを介して、外バスケット93に伝達される。
なお、外バスケット93に固定される外バスケット回転軸97bは、円筒状をなしており、格納容器94及び基台51にベアリングB1を介して回転可能に支持されている。また、内バスケット92に固定される内バスケット回転軸96bは、外バスケット回転軸97bの内側に配置され、この外バスケット回転軸97bにベアリングB2を介して回転可能に支持されている。
このモータM1,M2の駆動によって回転する内バスケット92及び外バスケット93は、同速回転であってもよいし、差速回転であってもよい。
なお、氷Iの排出時は、内バスケット92と外バスケット93の回転数に差を設けることで、内バスケット92の孔92cから排出された日本酒Aを、外バスケット93内において、氷Iを内バスケット92のエッジ92dで上方向に移動させて、フランジ93b上を介して、氷排出口94dから排出できるようになっている。
以上のように構成された濃縮装置の動作について、以下、説明する。なお、凍結した日本酒Aを投入部95に投入するまでは、前記した第1の実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
まず、第7図に示すように、モータM1とモータM2を駆動させて、内バスケット92及び外バスケット93を回転させる。モータM1とモータM2は同期モータであり、本実施形態では、共に1800rpmで回転(同速回転)される。そして、冷凍室10(第1図参照)において凍結した日本酒Aを投入部95から投入する。投入された日本酒Aは、回転する内バスケット92内の削り出しエッジ92bによって粉砕され、孔92cから外バスケット93側に排出される。外バスケット93内においては、凍結した日本酒Aから遠心分離されて濃縮した日本酒Cは孔93cから格納容器94側に排出されて、最終的には、液排出管94cから排出される。なお、氷Iを排出するときは、モータM1とモータM2を別々に制御して、内バスケット92を300rpm、外バスケット93を290rpmで回転させるようにする。このように、内バスケット92と外バスケット93の回転数に差を設けることで、氷Iを内バスケット92のエッジ92dで上部に搬送し、氷排出口94dから排出する。また、回転数を低くすることで遠心力を弱め、外バスケット93から格納容器94側に氷Iが抜けないようにして、アルコール濃度を効率的に高めることができる。
なお、本実施の形態では、日本酒Aの固液分離時には内バスケット92と外バスケット93を同速回転させているため、残氷排出(氷Iを外バスケット93の上部に搬送すること)を同時に行えず、その関係上、凍結した日本酒Aを連続的に投入することができない。そのため、凍結した日本酒Aを投入部95から投入する際に、当該技術分野に公知の搬送方法、例えば、凍結した日本酒Aを処理に応じて搬送する定量搬送手段により、間欠的に投入部95に投入する点が第1の実施の形態と異なる。
以上によれば、第4の実施の形態において、以下の効果を得ることができる。
分離装置90では、遠心分離の脱水作用を利用して固液分離をすることができ、また、氷I等は自動的かつ連続的に外部に排出できるようになっているので、生産効率が高く、自動工程に用いられるのに適している。
また、内バスケット92と外バスケット93を別々のモータM1,M2で回転させるので、それぞれの回転制御を容易にでき、回転伝達機構96,97も簡易に構成することができる。
そして、このようにして得られた濃縮した日本酒Cは、アルコール、糖、アミノ酸、酵素等日本酒が本来含有している成分が1.5倍以上に濃縮されたものとなる。
また、このようにして得られた日本酒Cにおいては、アルコール度数が30度以上と高いため、常温において変質することなく保管(熟成)することができる。また、常温で保管するので、熟成の進行を早めることができる。
さらに、濃縮した日本酒Cは、原料酒に火入れをしていない日本酒を用いているため、酵素の活性度も高く、質の良い(例えば、味が円やか、香りがよい、アルコールの刺激が少ない等)熟成をさせることができる。
なお、前記した分離装置90は、日本酒(酒類)の濃縮にかかわらず、新規な装置である。従って、請求の範囲第14項に記載の遠心分離装置は、他の用途にも適用可能である(請求の範囲第7項)。
また、前記した実施の形態では、日本酒を濃縮する場合について説明したが、本発明は、同濃度の酒類を濃縮する場合についても適用することができる。
【実施例】
【実施例1】
以下、実施例1に基づき、本発明をさらに詳細に説明する。本実施例では、前記第4の実施形態で説明した濃縮装置(つまり、分離装置90を備えたもの)を使用して、かつ、前記第1の実施形態で説明した製造方法により濃縮した日本酒を生産した。そして、その凍結温度と分離温度によるアルコールの抽出特性を測定し、その結果を表1に示す。ただし、本発明が以下の実施例に限定されることはない。
この測定試験では、原料酒として、アルコール度数が18.3度の日本酒10000mlを用い、分離装置90において、内バスケット92及び外バスケット93を共に1800rpmの速度で回転させる同速回転に設定し、544Gの遠心力で分離させた。

ここで、「凍結温度」とは、日本酒Aを凍結させたときの温度であり、「分離温度」とは、日本酒Aを氷Iと濃縮した日本酒Cに分離するときの温度である。そして、分離温度は凍結温度の+5℃の範囲内に設定するものとする。また、「急速凍結」とは、急冷した場合を示し、「緩慢凍結」とは、1時間に1℃の割合で徐冷した場合を示す。
以下、この測定試験の結果について説明する。
まず、表1に示すように、この方法で得られた日本酒のアルコール度数は全て30度を超えていることがわかる。
そして、凍結温度が低ければ低いほどアルコール度数及びアルコール濃縮倍率が高くなるのがわかる。特に、急速凍結及び緩慢凍結いずれの場合においても、凍結温度が−30度以下で、アルコール濃縮倍率が2倍以上になっていることがわかった。一方、凍結温度、分離温度が低い方が抽出量、アルコール回収率は低くなった。
また、同一の凍結温度であれば、凍結温度により近似した分離温度で分離する場合の方が濃縮倍率が高いことがわかる。具体的には急速凍結の場合において、−25℃の凍結温度であれば、分離温度が−20℃のときよりも−23℃である方が、アルコール濃縮倍率が高い。
なお、緩慢凍結であれば、急速凍結の場合よりアルコール回収率が高いことがわかった。従って、アルコール回収率等を高めたいときは、急速凍結よりも緩慢凍結の方が優れていることがわかるが、生産性をあげるためには、急速凍結の方が短時間で生産できるのでよい。
次に、凍結温度と分離温度による成分特性を測定し、その結果を表2に示す。
本測定試験においては、糖度測定にアタゴ株式会社製の糖度計を使用し、アミノ酸度測定にはホルモール滴定法、酸度測定には中和法、酵素A(酸性カルボキシペプチダーゼ)及び酵素B(グルコアミラーゼ+α−グルコシダーゼ)には、キッコーマン株式会社製の測定キットを使用した。


各行第1列目に記載の温度は、左側が凍結温度、右側が分離温度を示すものである。
以下、この測定試験の結果について説明する。
表2に示すように、本実施例で得られた日本酒は、いずれも原料酒の1.5倍以上に濃縮された成分を有することがわかる。また、凍結温度と分離温度の条件が同一であれば、急速凍結よりも緩慢凍結の方が各種成分を高めることができることがわかる。例えば、凍結温度が−35℃、分離温度が−33℃の場合を見ると、糖度が1.0Brix%、アミノ酸度が0.2ml、酸度が0.6ml、酵素A活性度が0.008U/ml、酵素B活性度が0.006U/mlだけ、緩慢凍結の方が高いことがわかる。
【産業上の利用可能性】
請求の範囲第1項に記載の濃縮した日本酒は、原料となる日本酒を均一に凍結させ、その後、凍結温度と近似する温度下で水分を分離させて得られるアルコール度数が30から50度である濃縮した日本酒である。このようにして得られた日本酒は、濃縮倍率が1.59倍以上を有し、アルコール度数が30度以上あるため、常温下で質の良い熟成を可能とする。
請求の範囲第2項に記載の濃縮した日本酒の製造方法によれば、日本酒を−20から−40℃度の間の所定温度で均一に凍結させ、その後、所定温度以上の分離温度で水分を強制的に分離させて、アルコール度数が30度から50度まで濃縮した日本酒を製造することができる。
請求の範囲第3項に記載の濃縮した日本酒の製造方法によれば、薄層状態で−20から−40℃の間の所定温度で凍結させることから、均一に凍結させることができる。
請求の範囲第4項に記載の濃縮した日本酒の製造方法によれば、徐々に冷却していくことで、アルコール及びエキス分等の回収率が高く、品質の良い濃縮した日本酒を得ることができる。
請求の範囲第5項に記載の濃縮した日本酒の製造方法によれば、遠心分離の作用によって、前記水分と濃縮した日本酒に分離できるため、自然分離によるよりも、能率的に分離を促進させることができる。
請求の範囲第6項に記載の被処理物の遠心分離装置によれば、被処理物は、モータの駆動により回転する内バスケット内で遠心分離作用により、大口径の孔から外バスケット側に排出される。また、外バスケット内においても遠心分離作用により、固液分離が促進される。分離された固体物は、内バスケットのエッジによって外バスケットの上方に搬送され、固体排出口から外部に排出される。また、分離された液体部分は、濃縮した被処理物として小口径の孔から外バスケットの外部に排出される。
請求の範囲第7項に記載の被処理物の遠心分離装置によれば、被処理物は、一のモータの駆動により、第1の回転伝達機構を介して回転する内バスケット内で遠心分離作用により、大口径の孔から外バスケット側に排出される。また、他のモータの駆動により、第2の回転伝達機構を介して回転する外バスケット内においても遠心分離作用により、固液分離が促進される。分離された固体物は、内バスケットのエッジによって外バスケットの上方に搬送され、固体排出口から外部に排出される。また、分離された液体部分は、濃縮した被処理物として小口径の孔から外バスケットの外部に排出される。なお、内バスケットの外バスケットの回転は同速回転であっても差速回転であってもよい。この内バスケットと外バスケットはそれぞれ異なるモータで駆動されるため、それぞれの回転制御を容易にでき、回転伝達機構の構造を簡易にすることができる。
請求の範囲第8項に記載の酒類の濃縮装置は、前記した濃縮した日本酒の製造方法を具現化するための装置である。冷凍室において、酒類を凍結させ、遠心分離装置によって凍結した酒類を水分を組成とする氷と濃縮した酒類に分離させることができる。
請求の範囲第9項に記載の酒類の濃縮装置によれば、冷凍室内において酒類を搬送させるので、その間に凍結を促進させることができる。またトレー上の凍結した日本酒を剥離手段で剥離させることができるので、人手による作業を介さず、工業生産に適している。さらに、請求の範囲第9項に記載の酒類の濃縮装置は、酒類を、搬送されるトレーに薄層状態(3mmから15mmの厚さ)に順次供給して、請求の範囲第3項に記載の日本酒の製造方法に使用することができる。また、全トレーに厚く(20mm〜40mmの厚さ)供給した後、一旦搬送を停止して、所定の冷却速度で冷却させるようにすることで、請求の範囲第4項に記載の日本酒の製造方法に使用することができる。
請求の範囲第10項に記載の酒類の濃縮装置によれば、区画板がトレーを複数の区画に仕切っているので、冷却効果が向上し、トレーに貯蔵される日本酒を、早く、かつ、均一に凍結させることができる。また、区画板が、複数の区画に仕切ることで、密閉度があがる。さらに、トレーから剥離される凍結した日本酒は、小さいブロック状となっているので、遠心分離装置に供給しやすい。
請求の範囲第11項に記載の酒類の濃縮装置によれば、一方の端部にある酒類導入口から外筒と内筒の間に導入した酒類を、外周にスパイラル状のエッジを有する内筒を回転させることで、他方の端部方向に移動させることができる。その間に、日本酒は凍結され、他方の端部からは、凍結した酒類を自動的に排出できる。これによれば、冷凍室内のスペースを効率よく活用でき、冷凍室を小さく形成することもできる。
請求の範囲第12項に記載の酒類の濃縮装置によれば、貯蔵手段は、一方の端部にある酒類導入口から外筒と内筒の間に導入した酒類を、外周にスパイラル状のエッジを有する内筒を回転させることで、他方の端部方向に移動させることができる。そして、貯蔵手段の外筒の外側及び内筒の内側を、所定温度に冷却された不凍液に浸漬させることで、貯蔵手段内で酒類が移動する短時間に酒類は凍結され、他方の端部から、凍結した酒類を自動的に排出できる。自動的に排出された酒類は、所定の温度に保たれた固液分離室内において、遠心分離装置により、水分と濃縮した酒類に分離される。
請求の範囲第13項に記載の酒類の濃縮装置によれば、凍結した日本酒は、モータの駆動により回転する内バスケット内で遠心分離作用により、大口径の孔から外バスケット側に排出される。また、外バスケット内においても遠心分離作用により、固液分離が促進される。分離された固体物は、エッジによって外バスケットの上方に搬送され、固体排出口から外部に排出される。また、分離された液体部分は、濃縮した酒類として小口径の孔から格納容器側(外バスケットの外部)に排出される。
請求の範囲第14項に記載の酒類の濃縮装置によれば、凍結した日本酒は、一のモータの駆動により、第1の回転伝達機構を介して回転する内バスケット内で遠心分離作用により、大口径の孔から外バスケット側に排出される。また、他のモータの駆動により、第2の回転伝達機構を介して回転する外バスケット内においても、遠心分離作用により、固液分離が促進される。分離された固体物は、エッジによって外バスケットの上方に搬送され、固体排出口から外部に排出される。また、分離された液体部分は、濃縮した酒類として小口径の孔から格納容器側(外バスケットの外部)に排出される。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
均一に凍結後水分を分離することによってアルコール度数を30〜50度まで濃縮した日本酒であって、濃縮倍率が1.59倍以上であることを特徴とする濃縮した日本酒。
【請求項2】
日本酒そのものの成分を損なわずアルコール度数を1.59倍以上の倍率で、30から50度まで濃縮した日本酒の製造方法であって、
(a) 前記日本酒を均一に−20から−40℃の間の所定温度まで冷却することによって凍結させ、
(b) 凍結した前記日本酒を、水分と濃縮した前記日本酒とに、前記所定温度以上の温度で強制的に分離する
ことを特徴とする濃縮した日本酒の製造方法。
【請求項3】
前記日本酒を薄層状態で−20から−40℃の間の所定温度の冷却雰囲気内で急冷することを特徴とする請求の範囲第2項に記載の濃縮した日本酒の製造方法。
【請求項4】
前記日本酒を−20から−40℃の間の所定温度まで0.5から2℃/時の冷却速度で徐冷することを特徴とする請求の範囲第3項に記載の濃縮した日本酒の製造方法。
【請求項5】
凍結した前記日本酒を遠心分離によって前記水分と濃縮した前記日本酒とに分離することを特徴とする請求の範囲第2項乃至請求の範囲第4項のいずれか1項に記載の濃縮した日本酒の製造方法。
【請求項6】
被処理物を固体物と液体に分離するための被処理物の遠心分離装置であって、
モータと、
外周に大口径の孔を有し、スパイラル状のエッジを有する内バスケットと、
外周に小口径の孔を有し、前記内バスケットの外側に配置される外バスケットと、
前記外バスケット及び前記内バスケットを格納する格納容器と、
前記外バスケットの側面上部付近に設けられる固体排出口と、
前記外バスケット及び前記内バスケットのそれぞれに前記モータの回転伝達比を可変にして回転を伝達する回転伝達機構とを備え、
前記内バスケットに導入された前記被処理物は大口径の前記孔から外バスケットに排出され、前記外バスケットにおいては、前記被処理物から抽出される固体物を前記内バスケットの前記エッジで上部まで搬送して前記固体排出口から外部に排出するとともに、前記被処理物から抽出される液体を小口径の前記孔から前記格納容器に排出することを特徴とする被処理物の遠心分離装置。
【請求項7】
披処理物を固体物と液体に分離するための被処理物の遠心分離装置であって、
2つのモータと、
外周に大口径の孔を有し、スパイラル状のエッジを有する内バスケットと、
外周に小口径の孔を有し、前記内バスケットの外側に配置される外バスケットと、
前記外バスケット及び前記内バスケットを格納する格納容器と、
前記外バスケットの側面上部付近に設けられる固体排出口と、
一のモータの回転を前記外バスケットまで伝達する第1の回転伝達機構と、他のモータの回転を前記内バスケットまで伝達する第2の回転伝達機構とを備え、
前記内バスケットに導入された前記被処理物は大口径の前記孔から外バスケットに排出され、前記外バスケットにおいては、前記被処理物から抽出される固体物を前記内バスケットの前記エッジで上部まで搬送して前記固体排出口から外部に排出するとともに、前記被処理物から抽出される液体を小口径の前記孔から前記格納容器に排出することを特徴とする被処理物の遠心分離装置。
【請求項8】
酒類導入口を有し、酒類を凍結するために所定温度まで冷却する冷却手段を有する冷凍室と、前記冷凍室で凍結した前記酒類を水分と濃縮した酒類に分離するための遠心分離装置を有し、前記遠心分離装置の温度を前記所定温度と近似した温度に保つための固液分離室とを備えたことを特徴とする酒類の濃縮装置。
【請求項9】
前記冷凍室は、前記酒類を貯蔵するトレーと、前記トレーを搬送する搬送手段と、搬送された前記トレーから凍結した前記酒類を剥離する剥離手段とを有することを特徴とする請求の範囲第8項に記載の酒類の濃縮装置。
【請求項10】
前記トレーを密閉する蓋を有し、前記蓋の内側に前記トレーを複数の区画に仕切る区画板を形成していることを特徴とする請求の範囲第9項に記載の酒類の濃縮装置。
【請求項11】
前記冷凍室は、一方の端部に前記酒類導入口を有する外筒と、前記外筒の内側に設けられ、外周にスパイラル状のエッジを有する内筒と、前記内筒を回転させるモータとを有し、前記内筒が前記モータの駆動により回転することで前記酒類導入口から前記外筒と前記内筒の間に導入された前記酒類を前記外筒の他方の端部から排出できることを特徴とする請求の範囲第8項に記載の酒類の濃縮装置。
【請求項12】
所定の温度に保たれた固液分離室に、酒類を貯蔵するための貯蔵手段と、前記貯蔵手段を浸漬させ、前記酒類を凍結させるために所定温度に冷却された不凍液と、前記不凍液によって凍結した前記酒類を水分と濃縮した酒類に分離するための遠心分離装置とを備える酒類の濃縮装置であって、
前記貯蔵手段は、一方の端部に酒類導入口を有する外筒と、前記外筒の内側に設けられ、外周にスパイラル状のエッジを有する内筒と、前記内筒を回転させるモータとを有し、前記内筒が前記モータの駆動により回転することで前記酒類導入口から前記外筒と前記内筒の間に導入した前記酒類を前記外筒の他方の端部から排出できることを特徴とする酒類の濃縮装置。
【請求項13】
前記遠心分離装置は、
モータと、
外周に大口径の孔を有し、スパイラル状のエッジを有する内バスケットと、
外周に小口径の孔を有し、前記内バスケットの外側に配置される外バスケットと、
前記外バスケット及び前記内バスケットを格納する格納容器と、
前記外バスケットの側面上部付近に設けられる固体排出口と、
前記外バスケット及び前記内バスケットのそれぞれに前記モータの回転伝達比を可変にして回転を伝達する回転伝達機構とを備え、
前記内バスケットに導入された前記酒類は大口径の前記孔から前記外バスケットに排出され、前記外バスケットにおいては、前記酒類から抽出される固体物を前記内バスケットの前記エッジで上部まで搬送して前記固体排出口から外部に排出するとともに、前記被処理物から抽出される液体を小口径の前記孔から前記格納容器に排出することを特徴とする請求の範囲第8項から請求の範囲第12項のいずれか1項に記載の酒類の濃縮装置。
【請求項14】
前記遠心分離装置は、
2つのモータと、
外周に大口径の孔を有し、スパイラル状のエッジを有する内バスケットと、
外周に小口径の孔を有し、前記内バスケットの外側に配置される外バスケットと、
前記外バスケット及び前記内バスケットを格納する格納容器と、
前記外バスケットの側面上部付近に設けられる固体排出口と、
一のモータの回転を前記外バスケットまで伝達する第1の回転伝達機構と、他のモータの回転を前記内バスケットまで伝達する第2の回転伝達機構とを備え、
前記内バスケットに導入された前記被処理物は大口径の前記孔から外バスケットに排出され、前記外バスケットにおいては、前記被処理物から抽出される固体物を前記内バスケットの前記エッジで上部まで搬送して前記固体排出口から外部に排出するとともに、前記被処理物から抽出される液体を小口径の前記孔から前記格納容器に排出することを特徴とする請求の範囲第8項から請求の範囲第12項のいずれか1項に記載の酒類の濃縮装置。

【国際公開番号】WO2004/085605
【国際公開日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【発行日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−504117(P2005−504117)
【国際出願番号】PCT/JP2004/004292
【国際出願日】平成16年3月26日(2004.3.26)
【出願人】(500374227)株式会社シマシステム (3)
【Fターム(参考)】