説明

濃縮器

【課題】濃縮器の伝熱効率を高めることにより、医薬品(酵素、抗生物質、蛋白質液等)や食物色素等の液体を濃縮する場合でも、熱変性させることなく濃縮することを可能とする。
【解決手段】内部に液体を貯留する濃縮缶10と、濃縮缶10の内部に設けられ、外壁筒31a及び内壁筒31bからなる筒状の二重壁(側部31)を有する加熱体30と、二重壁の間に形成され、熱媒体を流通させる熱媒体通路(蒸気通路33b)と、加熱体30を液体に対して相対的に回転させ、遠心力を発生させる回転手段(駆動モータ40)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品、健康食品、食品色素、香料、工場廃液等の液体を加熱して、液体中の水分を蒸発させることにより濃縮する濃縮器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
濃縮器では、液体を加熱する際の伝熱効率を高めて、省エネルギー化及び濃縮時間の短縮を図ることが課題となっている。特に、医薬品(酵素、抗生物質、蛋白質液等)や健康食品、あるいは食品色素など、加熱により変性しやすい液体を濃縮する場合、濃縮器の伝熱効率が低いと加熱時間が長くなるため、熱変性により液体の品質が低下する恐れがある。このため、医薬品等を濃縮する場合は、例えば、液体を凍結させた後、加熱して水分を昇華させる凍結乾燥法(特許文献1参照)や、濃縮缶の内部を高真空状態にして水分を蒸発させる高真空濃縮法(特許文献2参照)等の特殊な方法が用いられることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−54064号公報
【特許文献2】特開平8−47602号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、凍結乾燥法や高真空濃縮法による濃縮器は、濃縮に要するエネルギーが莫大である上、装置自体のコストも高い。
【0005】
本発明が解決すべき課題は、濃縮器の伝熱効率を簡略な構造で高めることにより、医薬品や食品等でも熱変性を生じさせることなく濃縮することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は、内部に液体を貯留する濃縮缶と、濃縮缶の内部に設けられ、径の異なる外壁筒及び内壁筒からなる筒状の二重壁を有し、二重壁の内周壁面及び外周壁面で液体と接触する加熱体と、二重壁の間に形成された熱媒体通路と、加熱体を液体に対して相対的に回転させる回転手段とを備えた濃縮器を提供する。
【0007】
このように、加熱体を液体に対して相対的に回転させることにより、加熱体の表面の伝熱抵抗となる液境膜を遠心力で剥離して新たな液境膜に更新することができる。このため、例えば加熱体を液体に対して静止させた状態で加熱する場合と比べて総括伝熱効率が飛躍的に大きくなり、伝熱効率が大幅に高められる。また、加熱体が筒状を成すことで、加熱体の筒状内周壁面及び筒状外周壁面の双方を液体と接触させることができるため、加熱体と液体との接触面積(伝熱面積)を大きく取ることができ、伝熱効率がさらに高められる。さらに、加熱体の表面の液境膜を更新しながら加熱することで、液境膜が過度に加熱されることがないため、被加熱液体の品質を保持できると共に、加熱体の伝熱表面に液体が焦げ付いてスケールが発生する事態を防止できる。
【0008】
上記の濃縮器では、例えば加熱体を濃縮缶の内部で回転可能に設けることが好ましい。この場合、液体の濃度が高くなって流動性が低下した場合であっても、液体に浸漬した加熱体を回転させることにより加熱体の表面における液境膜が更新されるため、高い伝熱効率を保持することができる。
【0009】
筒状の加熱体を液体に対して相対的に回転させた場合、加熱体の外周壁面の液境膜は遠心力で外径側にはじき飛ばされて更新されるが、加熱体の内周壁面の液境膜は遠心力で加熱体に押し付けられるため、更新されにくい。そこで、加熱体の二重壁を貫通する貫通孔を形成することにより、加熱体の内周壁面の液境膜が貫通孔を介して外径側に通り抜け、これにより加熱体の内周壁面の液境膜の更新を促進することができる。例えば、加熱体の二重壁を連結する連結チューブを設け、この連結チューブの内孔を上記の貫通孔とすることができる。
【0010】
上記の濃縮器において、複数の加熱体を設ければ、伝熱面積が大きくなって伝熱量がさらに高められる。このとき、径の異なる複数の加熱体を設け、一の加熱体の内周に他の加熱体を配すれば、加熱体を収容する濃縮缶を大型化することなく、伝熱面積を拡大することができ、大量の伝熱量が得られる。
【0011】
濃縮缶の内部を複数の空間に区画し、各空間に加熱体を設ければ、一つの濃縮缶に液体を濃縮する空間が複数設けられるため、例えば複数の濃縮器を並べて配置する場合と比べて濃縮器の設置スペースを縮小することができる。この場合、一の空間の液体から生じた蒸気を他の空間の加熱体の熱媒体通路に供給すれば、蒸気の熱を有効に活用することができ省エネルギー化が図られる。このような濃縮器を複数設け、一の濃縮器の他の空間の液体から生じた蒸気を、他の濃縮器の一の空間の加熱体の熱媒体通路に供給すれば、エネルギーをさらに有効に活用することができ、効用缶が成立する。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明によれば、筒状の加熱体の内周壁面及び外周壁面に液体を接触させると共に、加熱体を液体に対して相対的に回転させると、液境膜を更新しながら液体を加熱することになり、伝熱効率が飛躍的に高められ、少ないエネルギーで、且つ、短時間で液体を濃縮することができる。これにより、医薬品や健康食品、あるいは食品色素などの熱変性の影響を受けやすい液体であっても、品質を低下させることなく高品質の濃縮液を生産することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る濃縮器の断面図である。
【図2】第2次液室の回転軸及び加熱体の断面図である。
【図3】図2の回転軸及び加熱体をIII方向から見た側面図である。
【図4】図2の回転軸及び加熱体をIV方向から見た上面図である。
【図5】図2の回転軸及び加熱体をV方向から見た下面図である。
【図6】加熱体の側部の貫通孔付近における液体の流動を示す断面図である。
【図7】加熱体の底部の貫通孔付近における液体の流動を示す断面図である。
【図8】図1の濃縮器を複数設けた多重効用式濃縮装置を概念的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
本発明の一実施形態に係る濃縮器1は、図1に示すように、濃縮缶10と、濃縮缶10の内部に設けられた回転軸20と、回転軸20に取り付けられた加熱体30と、回転軸20及び加熱体30を回転させる回転手段としての駆動モータ40とを主に備える。本実施形態では、濃縮缶10の内部空間が第1次液室M1及び第2次液室M2に区画され、各液室M1,M2にそれぞれ回転軸20及び加熱体30が設けられる。
【0016】
濃縮缶10は、縦長の円筒状に形成される。濃縮缶10の内部空間は区画壁11で区画され、区画壁11の上側に第1次液室M1が、区画壁11の下側に第2次液室M2がそれぞれ設けられる。区画壁11は、中央部を上方に膨らませた湾曲形状を成している。濃縮缶10は、下側を開口した第1濃縮缶12と、上側を開口した第2濃縮缶13とを有し、第1濃縮缶12及び第2濃縮缶13の開口部同士を連結して構成される。図示例では、第1濃縮缶12の開口部に設けたフランジ部12aと、第2濃縮缶13の開口部に設けたフランジ部13aとで区画壁11を挟持固定している。これにより、第1濃縮缶12と区画壁11とで第1次液室M1が形成され、第2濃縮缶13と区画壁11とで第2次液室M2が形成される。尚、濃縮缶10の構成はこれに限らず、例えば、第1濃縮缶12を有底筒状とし、この第1濃縮缶12を第2濃縮缶13の上端開口部に取り付けることにより、第1次液室M1及び第2次液室M2を形成してもよい。
【0017】
第1次液室M1には、濃縮すべき液体の原液が供給される原液供給口14と、濃縮された液体を排出する濃縮液排出口15とが設けられる。原液供給口14は、第1濃縮缶12の側壁に設けられる。濃縮液排出口15は、区画壁11の外周部に設けられ、詳しくは、区画壁11のうち、下方に最も凹んだ箇所に設けられる。
【0018】
第2次液室M2には、第1次液室M1で濃縮した液体(濃縮液)が供給される濃縮液供給口16と、第2次液室M2でさらに濃縮した液体(製品液)を排出する製品液排出口17とが設けられる。濃縮液供給口16は、第2濃縮缶13の側壁に設けられ、第1次液室M1の濃縮液排出口15と配管71を介して連通している。製品液排出口17は、第2濃縮缶13の底部に設けられる。
【0019】
第1次液室M1及び第2次液室M2には、液体から生じた蒸気を排出する蒸気排出口18,19がそれぞれ設けられる。第1次液室M1の蒸気排出口18は、第1濃縮缶12の上端部付近に設けられ、第2次液室M2の蒸気排出口19は、第2濃縮缶13の上端部付近に設けられる。
【0020】
第1次液室M1及び第2次液室M2には、それぞれ回転軸20及び加熱体30が設けられる。回転軸20及び加熱体30は、各液室M1,M2内で回転可能に設けられる。本実施形態では、各液室M1,M2の回転軸20が、伝動軸41を介して一つの駆動モータ40により同時に回転駆動される。第1次液室M1の回転軸20及び加熱体30と、第2次液室M2の回転軸20及び加熱体30とは、おおよそ同様の構成を成している。以下、第2次液室M2の回転軸20及び加熱体30の構成を説明し、第1次液室M1の回転軸20及び加熱体30は、第2次液室M2の回転軸20及び加熱体30と異なる点だけ説明する。
【0021】
第2次液室M2の回転軸20は、第2濃縮缶13の底部を貫通し、シール部51及び軸受52を介して回転可能且つ液密的に第2濃縮缶13に取り付けられる。第2濃縮缶13から突出した回転軸20の先端部(下端部)には回転継手53が設けられる。回転継手53には蒸気入口54及びドレン出口55が設けられる。ドレン出口55は、図示しない吸引ポンプに接続される。
【0022】
回転軸20は、図2に示すように、大径管21と小径管22とからなる二重管構造を成している。小径管22は、大径管21の先端から突出している。大径管21と小径管22との間には、加熱体30に供給する熱媒体(本実施形態では蒸気)を流通させる蒸気通路23が形成される。蒸気通路23は、回転継手53の蒸気入口54(図1参照)と連通している。第2次液室M2の回転軸20の蒸気入口54は、図示しないボイラに接続される。一方、第1次液室M1の回転軸20の蒸気入口54は、図1に示すように、第2次液室M2の蒸気排出口19と配管72を介して連通している。小径管22の内部には、加熱体30から排出されたドレンを流通させるドレン通路24が形成される。ドレン通路24は、回転継手53のドレン出口55(図1参照)と連通している。第2次液室M2のドレン出口55はボイラに接続される。一方、第1次液室M1のドレン出口55は、図示しないドレンタンクに接続される。
【0023】
加熱体30は、回転軸20に固定され、回転軸20と共に第2次液室M2内で回転可能とされる。加熱体30は、筒状の二重壁からなる側部31を有し、本実施形態では、図3及び図4に示すように、側部31及び底部32からなる有底筒状の略コップ形状を成している。第2液室M2には、図1に示すように、2個の加熱体30が同軸状に設けられ、相対的に大径な加熱体30の内周に、相対的に小径な加熱体30が収容されている。一方、第1次液室M1には、略コップ形状を成した3個の加熱体30が同軸状に設けられている。尚、加熱体30の数は限定されず、1個としたり、4個以上としたりすることもできる。
【0024】
加熱体30は、図2に示すように、金属で形成された円筒状の二重壁からなる側部31と、側部31の下端部に設けられ、金属で形成された曲面状の二重壁からなる底部32とを有する。側部31は、円筒状の外壁筒31aと、外壁筒31aの内周に配され、外壁筒31aと隙間を介して半径方向に対向した円筒状の内壁筒31bとを有する。底部32は、第2次液室M2の底面に沿った形状を成し、具体的には中央部が下方に膨らんだ形状を成している。底部32は、外壁板32aと、外壁板32aの上方に設けられ、外壁板32aと隙間を介して上下方向に対向した内壁板32bとを有する。一方、第1次液室M1の加熱体30の底部32は、図1に示すように、第1次液室M1の底面(区画壁11)に沿った形状を無し、具体的には中央部が上方に膨らんだ形状を成している。
【0025】
加熱体30の側部31及び底部32の二重壁の間の隙間は、熱媒体としての蒸気を流通させる熱媒体通路(蒸気通路33a及び33b)として機能する。具体的には、図2に示すように、底部32が回転軸20の大径管21の外周面に固定され、これにより底部32の蒸気通路33aが回転軸20の蒸気通路23と連通する。底部32の蒸気通路33aは、側部31の蒸気通路33bと連通する。側部31の上端部は、径方向に延びた連結管34(図4参照)を介して回転軸20の小径管22の外周面に固定され、これにより側部31の蒸気通路33bが回転軸20のドレン通路24と連通する。
【0026】
加熱体30には、二重壁を貫通する貫通孔が形成される。本実施形態では、側部31の外壁筒31a及び内壁筒31bを連結する連結チューブ35を設けると共に、底部32の外壁板32a及び内壁板32bを連結する連結チューブ36を設け、これらの連結チューブ35,36の内孔で貫通孔35a,36aを構成する。連結チューブ35,36は例えば金属で形成され、外壁筒31a,内壁筒31b,外壁板32a,内壁板32bにそれぞれ溶接により固定される。
【0027】
加熱体30には、液体を攪拌する攪拌部材が設けられる。本実施形態では、加熱体30の底部32の上面及び下面に攪拌部材60が固定される(図1参照)。具体的には、図5に示すように、底部32の下面に複数の円弧状の攪拌部材60がスパイラル状に配列され、各攪拌部材60の間に貫通孔36aが配される。この攪拌部材60は、回転軸20及び加熱体30の回転に伴って、液体を外径側に流動させる。攪拌部材60の形状はこれに限らず、例えば、液体を内径側に流動させる形状としたり、直線状の攪拌部材を放射線状に配列したりすることができる(図示省略)。また、攪拌部材60を加熱体30の側部31に設けたり、攪拌部材60を省略してもよい。尚、底部32の上面の攪拌部材60は、下面の攪拌部材60と同様であるため、説明を省略する。また、図2〜4では、図面の簡略化のため、攪拌部材60を省略している。
【0028】
以上の構成の濃縮器1により、液体を濃縮する手順を説明する。
【0029】
まず、図1に示すように、原液供給口14から第1次液室M1に濃縮すべき液体の原液が供給され、第1次液室M1の加熱体30により加熱濃縮される(第1次濃縮)。第1次液室M1で濃縮された液体(濃縮液)は、濃縮液排出口15から排出され、配管71及び濃縮液供給口16を介して第2次液室M2に供給される。濃縮液は、第2次液室M2の加熱体30によりさらに加熱濃縮される(第2次濃縮)。こうして、2段階にわたって濃縮された液体(製品液)が、製品液排出口17から排出される。
【0030】
第1次液室M1及び第2次液室M2では、液体が、加熱体30の蒸気通路33a,33bに流通させた蒸気との間で熱交換することにより濃縮される。このとき、加熱体30の円筒状の側部31の外周壁面及び内周壁面、さらに、曲面状の底部32の上面及び下面に液体を接触させることにより、大きな伝熱面積が得られる。
【0031】
第1次液室M1及び第2次液室M2における液体の濃縮は、液体に浸漬した加熱体30を液体に対して相対的に回転させながら行われる。本実施形態では、駆動モータ40で回転軸20を回転駆動して加熱体30を濃縮缶10の内部で回転させる。このように加熱体30を回転させることで、加熱体30の表面における液境膜を更新することができるため、加熱体30を常に新たな液体(濃縮されていない液体)と接触させることができ、伝熱効率が高められる。このとき、図6に示すように、加熱体30の側部31の外壁筒31aと接触する液体は、遠心力により外径側に移動し、これにより外壁筒31aの表面における液境膜が更新される。一方、側部31の内壁筒31bと接触する液体は、遠心力により連結チューブ35の貫通孔35aを通過して外径側に抜け、これにより内壁筒31bの表面における液境膜が更新される。同様に、図7に示すように、加熱体30の底部32の外壁板32aと接触する液体は遠心力により外径側に移動し、これにより外壁板32aの表面における液境膜が更新される。一方、底部32の内壁板32bと接触する液体は、遠心力により連結チューブ36の貫通孔36aを通過して外径側に抜け、これにより内壁板32bの表面における液境膜が更新される。以上のように、加熱体30を回転させ、且つ、加熱体30の二重壁に貫通孔35a,36aを設けることで、加熱体30の外周壁面及び内周壁面における液境膜を確実に更新することができ、伝熱効率が大幅に高められた。
【0032】
加熱体30への熱媒体の供給は、以下のように行なわれる。まず、図1に示すように、第2次液室M2の回転軸20に設けられた回転継手53の蒸気入口54から、第2次濃縮の熱媒体としての加熱蒸気を供給する。この加熱蒸気が、図2に示すように、回転軸20の蒸気通路23を介して加熱体30の蒸気通路33a及び33bに供給され、第2次液室M2の液体(濃縮液)を加熱濃縮する。加熱蒸気は、加熱体30で液体との熱交換により凝縮してドレンとなり、図示しない吸引ポンプで吸引され、連結管34の内部及び小径管22のドレン通路24を介して回転継手53のドレン出口55から排出される(図1参照)。このドレンは、濃縮する液体と直接接触しておらず、不純物は混入していないため、イオン交換樹脂の充填浴を通す等の特別な処理を要することなく、そのままボイラ給水として再利用できる利点が発揮される。
【0033】
第2次濃縮により液体から生じた蒸気は、図1に示すように第2次液室M2の蒸気排出口19から排出され、配管72を介して第1次液室M1の回転軸20に設けられた回転継手53の蒸気入口54に、第1次濃縮の熱媒体として供給される。この蒸気は、液体との熱交換により凝縮してドレンとなる。このドレンは、液体から生じた非凝縮ガス(NCG)と共に図示しない吸引ポンプで吸引されて、回転継手53のドレン出口55から排出され、図示しないドレンタンクに回収される。このように、第2次濃縮により液体から生じた蒸気を、凝縮させることなくそのまま第1次濃縮の熱媒体として利用することにより、蒸気エネルギーを有効に活用することができる。また、吸引ポンプで吸引して第2次液室M2を減圧することにより、第2次濃縮により液体から生じた蒸気を凝縮させずに蒸気の状態を維持することができる。
【0034】
ところで、第2次濃縮では、ボイラから供給された高温の加熱蒸気が熱媒体蒸気として使用される。一方、第1次濃縮の熱媒体蒸気は、第2次濃縮の加熱により液体から生じた蒸気を熱媒体蒸気として利用しているため、第2次濃縮の加熱蒸気よりも温度が低くなる。このように、比較的低温な蒸気で原液を加熱して第1次濃縮を行った後、その濃縮液を高温の加熱蒸気でさらに加熱して第2次濃縮を行なうことにより、加熱蒸気のエネルギーを有効に活用し、効率よく液体を濃縮することができる効用缶となる。
【0035】
本発明は、上記の実施形態に限られない。以下、本発明の他の実施形態を説明するが、上記の実施形態と同様の機能を有する箇所には同一の符号を付して説明を省略する。
【0036】
上記の実施形態では、第2次液室M2の液体から生じた蒸気を第1次液室M1の熱媒体蒸気として利用する、いわゆる2重効用式濃縮器を示しているが、この2重効用式濃縮器を複数設けることで多重効用式濃縮装置を構成することもできる。具体的には、例えば図8に示すように、上記構成の2重効用式濃縮器1を3台設け、第1次液室M1〜第6次液室M6を有する6重効用式の濃縮装置を構成することができる。この濃縮装置では、第1次液室M1に供給された液体が、各液室M1〜M6を順番に移送されながら濃縮され、第6次液室M6の製品液排出口(図示省略)から排出される。
【0037】
各液室の加熱体への熱媒体の供給及び排出は以下のように行なわれる。まず、第2次液室M2では、蒸気入口54から熱媒体(加熱蒸気)が供給される。熱交換を終えて凝縮した熱媒体(ドレン)は、ドレン出口55から排出され、ボイラに供給される。
【0038】
その他の液室M1、M3〜M6では、他の液室の液体から生じた蒸気が熱媒体蒸気として使用される。具体的には、第2次液室M2の液体から生じた蒸気V1が、第1次液室M1の熱媒体蒸気として使用される。同様に、第1次液室M1の液体から生じた蒸気V2が第4次液室M4の熱媒体蒸気として使用され、第4次液室M4の液体から生じた蒸気V3が第3次液室M3の熱媒体蒸気として使用される。さらに、第3次液室M3の液体から生じた蒸気V4が第6次液室M6の熱媒体蒸気として使用され、第6次液室M6の液体から生じた蒸気V5が第5次液室M5の熱媒体蒸気として使用される。第5次液室M5の液体から生じた蒸気V6は、コンデンサCに供給されて凝縮される。第1次液室M1及び第3〜6次液室M3〜M6から排出されたドレン及び非凝縮蒸気(NCG)と、コンデンサCで凝縮されたドレン及び非凝縮蒸気は、吸引ポンプ(図示省略)で吸引されてドレンタンク(図示省略)に送られる。このように、吸引ポンプで第1次液室M1及び第3〜6次液室M3〜M6を減圧することで、各液室から生じた上記を凝縮させることなく次の液室の熱媒体蒸気として供給することができる。このような多重効用式の濃縮装置によれば、外部から供給した加熱蒸気のエネルギーをより一層有効に活用することができ、CO2削減に大きく貢献することができる。
【0039】
以上の実施形態では、加熱体30を回転させているが、これに限らず、加熱体30を濃縮缶10に固定して、他の回転手段により、円筒状の加熱体の円周方向に沿って液体を回転させることで、加熱体30を液体に対して相対的に回転させるようにしてもよい。ただし、上記の実施形態のように加熱体30を回転させることにより、液体の濃度が高くなって粘性が増加することで流動性が低下した場合でも、加熱体30の表面における液境膜が更新される効果により好結果が得られた。
【0040】
また、以上の実施形態では、一つの濃縮缶10に二つの液室が設けられているが、これに限らず、一つの濃縮缶に一つの液室、あるいは、三つ以上の液室を設けても良い。
【0041】
また、以上の実施形態では、加熱体30が底部32を有しているが、底部32を省略し、側部31のみとすることもできる。この場合、熱媒体(蒸気)を側部31の蒸気通路33bに供給する連結管が設けられる(図示省略)。
【0042】
また、以上の実施形態では、加熱体30に円筒状の連結チューブ35,36を設けているが、連結チューブは、加熱体30の二重壁を貫通する貫通孔が形成され、且つ、二重壁の間の蒸気通路33a,33bの気密性が損なわれない構成であれば、他の構成を採用してもよい。例えば、連絡チューブを、角筒状などの他の形状としてもよい。
【0043】
また、以上の実施形態では、熱媒体としてボイラで発生させた蒸気を使用しているが、これに限らず、加熱した熱媒体液を使用することもできる。
【符号の説明】
【0044】
1 濃縮器
10 濃縮缶
11 区画壁
12 第1濃縮缶
13 第2濃縮缶
14 原液供給口
15 濃縮液排出口
16 濃縮液供給口
17 製品液排出口
18 蒸気排出口
19 蒸気排出口
20 回転軸
21 大径管
22 小径管
23 蒸気通路
24 ドレン通路
30 加熱体
31 側部(筒状の二重壁)
31a 外壁筒
31b 内壁筒
32 底部
32a 外壁板
32b 内壁板
33a,33b 蒸気通路(熱媒体通路)
34 連結管
35,36 連結チューブ
35a,36a 貫通孔
40 駆動モータ(回転手段)
41 伝動軸
51 シール部
52 軸受
53 回転継手
54 蒸気入口
55 ドレン出口
60 攪拌部材
M1 第1次液室
M2 第2次液室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に液体を貯留する濃縮缶と、前記濃縮缶の内部に設けられ、径の異なる外壁筒及び内壁筒からなる筒状の二重壁を有し、該二重壁の内周壁面及び外周壁面で前記液体と接触する加熱体と、前記外筒壁と内筒壁との間に形成された熱媒体通路と、前記加熱体を前記液体に対して相対的に回転させる回転手段とを備えた濃縮器。
【請求項2】
前記加熱体を、前記濃縮缶の内部で回転可能とした請求項1記載の濃縮器。
【請求項3】
前記二重壁を貫通する貫通孔を有する請求項1又は2記載の濃縮器。
【請求項4】
前記外筒壁及び内筒壁を連結する連結チューブを設け、該連結チューブの内孔を前記貫通孔とした請求項3記載の濃縮器。
【請求項5】
径の異なる複数の前記加熱体を設け、一の前記加熱体の内周に他の前記加熱体を配した請求項1〜4の何れかに記載の濃縮器。
【請求項6】
前記濃縮缶の内部を複数の液室に区画し、各液室に前記加熱体を設けた請求項1〜5の何れかに記載の濃縮器。
【請求項7】
前記濃縮缶の内部の複数の液室のうち、一の液室の前記液体から生じた蒸気を他の液室の前記加熱体の熱媒体通路に供給する請求項6記載の濃縮器。
【請求項8】
請求項7記載の濃縮器を複数有し、一の濃縮器の前記他の液室から生じた蒸気を、他の濃縮器の前記一の液室の前記加熱体の熱媒体通路に供給する多重効用式濃縮装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2011−218272(P2011−218272A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−88882(P2010−88882)
【出願日】平成22年4月7日(2010.4.7)
【出願人】(595047396)株式会社ジーテック (2)
【Fターム(参考)】