濾過器
【課題】ケース内に容易に濾過部材を支持できるとともに、濾過面積を可能な限り確保し、異物除去能力を向上できる濾過器を提供する。
【解決手段】流体を流通させる流通孔の密度が比較的低い粗部5と、流通孔の密度が比較的高い密部7とを有する濾過部材4、および濾過部材4を支持し、流入通路31と排出通路21とを有する支持部材2、3を有し、密部7は、粗部5を支持するとともに、粗部5と排出通路21との間に配置され、さらに支持部材2、3から機械的な圧力を受けて支持されている。
【解決手段】流体を流通させる流通孔の密度が比較的低い粗部5と、流通孔の密度が比較的高い密部7とを有する濾過部材4、および濾過部材4を支持し、流入通路31と排出通路21とを有する支持部材2、3を有し、密部7は、粗部5を支持するとともに、粗部5と排出通路21との間に配置され、さらに支持部材2、3から機械的な圧力を受けて支持されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、濾過器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、流体中の異物を捕集する濾過器800が知られている(特許文献1参照)。この濾過器800は、図19に示すように、濾過部材801、その濾過部材801を収容するケース802およびキャップ803から構成されている。濾過部材801は、波状濾紙と平板状濾紙とを重ね合わせたものをロールしたものであるため、径方向の力には弱く、ケース802に収容する際には、濾過部材801の外周壁とケース802の内壁との間に接着剤804を設けている。接着剤804は、ケース802に濾過部材801を支持するとともに、ケース802と濾過部材801との間をシールし、ケース802内に流入した流体が濾過部材801を通過せずに排出されるのを防いでいる。
【特許文献1】特開平8−210211号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、上記のような濾過器800では、濾過部材801をケース802に固定すべく濾過部材801とケース802との間に接着剤804を供給すると、接着剤804が濾過部材801の一部に染み込んだり、接着剤804の供給過剰により、本来流体を通過させる部分に接着剤804がはみ出したりして、濾過面積が減少してしまい、濾過部材801自体を十分に利用できないという問題が発生していた。
【0004】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、ケース内に容易に濾過部材を支持できるとともに、濾過面積を可能な限り確保し、異物除去能力を向上できる濾過器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明によれば、流体を流通させる流通孔の密度が比較的低い粗部と、流通孔の密度が比較的高い密部とを有する濾過部材、および濾過部材を支持し、流入通路と排出通路とを有する支持部材を有し、密部は、粗部を支持するとともに、粗部と排出通路との間に配置され、さらに支持部材から機械的な圧力を受けて支持されていることを特徴としている。
【0006】
この構成によれば、密部は、粗部に比べ比較的機械的強度が高いため、支持部材から機械的な圧力を受けても、密部の濾過機能を損なうことなく濾過部材と支持部材との密着度が高められる。これにより、濾過部材は、接着剤を使用せずとも、濾過部材を支持部材に支持させることができ、さらに濾過部材と支持部材とのシール性を確保できる。その結果、濾過部材の濾過面積を可能な限り確保でき、濾過器の異物除去能力を向上できる。
【0007】
請求項2に記載の発明によれば、密部は、粗部と排出通路の入口部との間に配置されていることを特徴としている。この構成によれば、密部は、粗部と排出通路の入口部との間に配置されるため、流入通路から流入した流体の大部分は、必ず粗部から密部を経て排出通路から排出される。このため、異物除去能力向上と長寿命化とを両立できる。
【0008】
請求項3に記載の発明によれば、濾過部材は、粗部から密部にかけて、流通孔の密度が段階的に変化していることを特徴としている。この構成によれば、濾過部材は、粗部から密部にかけて、流通孔の密度が段階的に変化しているので、流通孔の密度の異なる濾過部材をいくつか用意し、それらを組み合わせるだけで、粗部と密部を有する濾過部材を容易に製造できる。
【0009】
請求項4に記載の発明によれば、濾過部材は、粗部から密部にかけて、流通孔の密度が連続的に変化していることを特徴としている。この構成によれば、濾過部材は、粗部から密部にかけて、流通孔の密度が連続的に変化しているので、異物除去能力向上と長寿命化とを高度に両立できる。
【0010】
請求項5に記載の発明によれば、密部のうち、支持部材から機械的な圧力を受ける部分は、最も流通孔の密度が高い部分であることを特徴としている。この構成によれば、密部のうち、支持部材から機械的な圧力を受ける部分は、最も流通孔の密度が高い部分であるため、機械的強度が最も高く、濾過部材と支持部材とを強固に支持できる。
【0011】
請求項6に記載の発明によれば、支持部材は、軸方向に分割される第1支持部材と第2支持部材とから構成されており、密部は、第1支持部材と第2支持部材とが組み合わされるときの軸方向の機械的な圧力を受けて支持されることを特徴としている。この構成によれば、濾過部材は、軸方向に分割されている第1支持部材と第2支持部材とが組み合わされるときの軸方向の機械的な圧力によって、支持されるので強固に濾過部材を支持部材に支持させることができるとともに、濾過部材と支持部材との間のシール性を向上できる。
【0012】
請求項7に記載の発明によれば、密部は、粗部よりも外周側に突出する密部側突部を有し、密部側突部は、第1支持部材と第2支持部材との間に挟まれることにより支持されることを特徴としている。この構成によれば、濾過部材の密部には、粗部よりも外周側に突出し、第1、第2支持部材に挟まれる密部側突部を有するので、支持部材内での濾過部材の軸方向位置を容易に定められる。
【0013】
請求項8に記載の発明によれば、密部は、外周側に突出する密部側突部を有し、粗部は、外周側に突出する粗部側突部を有し、密部側突部と粗部側突部は、ともに第1支持部材と第2支持部材との間に挟まれることにより支持されることを特徴としている。この構成によれば、密部だけでなく、粗部にも外周側に突出する粗部側突部を有し、密部側突部および粗部側突部を第1、第2支持部材で挟んでいるので、密部と支持部材との支持を強固にし、シール性を確保するだけでなく、密部と粗部との支持も強固にできる。
【0014】
請求項9に記載の発明によれば、密部を挟み込む第1支持部材または第2支持部材の軸方向端部には、軸方向に延びる突起部が形成されていることを特徴としている。この構成によれば、密部を挟み込む第1または第2支持部材の軸方向端部には、軸方向に延びる突起が形成されているので、比較的高い機械的圧力を密部に加えることができ、濾過部材と支持部材との間のシール性を向上できる。
【0015】
請求項10に記載の発明によれば、第1支持部材、第2支持部材および濾過部材は、樹脂製であって、第1支持部材と第2支持部材の外壁には、少なくとも密部側突部を挟み込むようにして第1支持部材と第2支持部材とを突き合わせた後、第1支持部材、第2支持部材、および密部側突部を互いに溶着させる溶融樹脂が流し込まれる溝部が形成されていることを特徴としている。
【0016】
この構成によれば、樹脂製の第1、第2支持部材を少なくとも密部側突部を挟み込むようにして突き合わせた後、第1、第2支持部材および密部側突部を互いに溶着させる溶融樹脂が流し込まれる溝部が第1、第2支持部材の外壁に形成されているので、この溝部に溶融樹脂を流し込むことができる。溶融樹脂を溝部に流し込むことにより、第1、第2支持部材および密部側突部を互いに溶着でき、それぞれを強固に固定できる。
【0017】
請求項11に記載の発明によれば、第1支持部材、第2支持部材および濾過部材は、樹脂製であって、密部側突部、または密部側突部および粗部側突部を覆う樹脂製のカバーを有し、カバーは、第1支持部材と第2支持部材との間に溶着によって接合されていることを特徴としている。この構成によれば、樹脂製のカバーによって密部側突部、または密部側突部および粗部側突部が覆われ、カバーは第1、第2支持部材との間に溶着によって接合されているので、密部側突部または粗部側突部の径方向端面から流体が漏れ出ることを抑制できる。
【0018】
請求項12に記載の発明によれば、密部は、支持部材の内壁から支持部材の中心軸に向かう径方向の機械的な圧力を受けて支持されていることを特徴としている。この構成によれば、密部は、粗部に比べ比較的機械的強度が高いため、支持部材に密部を圧入しても、密部の濾過機能を損なうことなく濾過部材を支持部材に支持できる。
【0019】
請求項13に記載の発明によれば、密部は、粗部を支持する板状の底部と、該底部から軸方向に延び、粗部の径方向側面を覆う側壁部を有することを特徴としている。この構成によれば、粗部に流入した流体は、密部を経て排出通路から排出される。そして、粗部の外周側を流れる流体は、密部を経て排出通路から排出される。支持部材に流入した流体は、いずれのルートであっても必ず密部を経て排出通路から排出されるようになっているので、流体中に含まれる小さな異物を捕捉できる。
【0020】
請求項14に記載の発明によれば、支持部材および濾過部材は、同一の樹脂材料で形成されていることを特徴としている。この構成によれば、支持部材および濾過部材の全てが同一の樹脂材料で形成されているので、リサイクルが容易にできる。
【0021】
請求項15に記載の発明によれば、濾過部材は、ポリアセタール樹脂であることを特徴としている。ポリアセタール樹脂は、耐燃料性に優れているという特徴を有している。濾過部材をポリアセタール樹脂で形成することにより、燃料を濾過する場合に濾過部材の寿命を長期化ができる。
【0022】
請求項16に記載の発明によれば、請求項1から15に記載の濾過器は、自動車用燃料を濾過することを特徴としている。自動車は、世界中で使用されるものであり、その自動車が使用される国によって燃料の質(燃料に含まれる異物の量や大きさ)が異なる。また、自動車に搭載される内燃機関の種類もさまざまであるため、燃料フィルタを通過する流量が内燃機関の種類によって異なる。請求項1から15に記載の濾過器は、異物除去性能を向上させているので、自動車用燃料を濾過するのに特に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の複数の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0024】
(第1実施形態)
本発明の濾過器を燃料フィルタとして使用し、その燃料フィルタを自動車に搭載される内燃機関に適用した場合について説明する。図1は、本実施形態による燃料フィルタ1を示す断面図である。燃料フィルタ1は、図示しない燃料タンクと図示しない内燃機関の燃料噴射装置とを接続する燃料配管途中に設けられる燃料フィルタであり、燃料中に含まれる異物を捕捉するものである。燃料フィルタ1は、ケース2、キャップ3、濾過部材4などから構成されている。
【0025】
ケース(請求項に記載の第1支持部材に相当)2は、ポリアセタール樹脂で有底円筒状に形成されており、その底部の略中央には、排出通路21が形成されている。排出通路21は、ケース2の底部に入口部22が開口し、底部から軸方向に延びる通路であって、出口部23に内燃機関の燃料噴射装置に繋がる燃料配管(図示せず)が接続される。
【0026】
キャップ3(請求項に記載の第2支持部材に相当)は、ポリアセタール樹脂で有底円筒状に形成されており、その底部の略中央には、流入通路31が形成されている。流入通路31は、キャップ3の底部に出口部33が開口し、底部から軸方向に延びる通路であって、入口部32に燃料タンクに繋がる燃料配管(図示せず)が接続される。
【0027】
濾過部材4は、ケース2とキャップ3とを突き合わせたときに形成される空間内に収容されており、繊維状のポリアセタール樹脂が三次元的に絡み合って、燃料が流通可能な多数の流通孔を有する不織布から形成されている。流入通路31から流入してきた燃料中に含まれる流通孔よりも大きい異物は、繊維に捕捉され、燃料と異物とを分離することができる。異物が除去された燃料は、排出通路21から排出される。
【0028】
本実施形態では、濾過部材4は、耐燃料性を有するポリアセタール樹脂より形成されているため、燃料による劣化を抑制することができる。このため、濾過部材4を長寿命化できる。また、本実施形態では、ケース2、キャップ3も濾過部材4と同じポリアセタール樹脂で形成しているので、リサイクル性が向上する。
【0029】
本実施形態では、濾過部材4は、粗層(請求項に記載の粗部に相当)5、中間層6、密層(請求項に記載の密部に相当)7の3つの層が軸方向に積層されて構成されている。これらの層5、6、7は、単位体積当たりの流通孔の密度によって区別される。流通孔の密度が最も高いものが密層7であり、最も低いものが粗層5である。流通孔の密度が高ければ高いほど、流通孔の径は小さい。つまり、最も目が細かいものとなり、より細かい異物を捕捉できる。
【0030】
本実施形態では、略円柱状に形成された粗層5が最も流入通路31の出口部33側に配置され、その下方(燃料流れ下流側)に略円柱状に形成された中間層6が配置されている。密層7は、略円盤状の密層底部71とその密層底部71の外周側から軸方向に延びる略円筒状の密層側壁部72を有している。密層底部71は、中間層6の燃料流れ下流側に配置され、密層側壁部72は、中間層6の側壁と粗層5の側壁の一部を覆うように配置されている。密層底部71は、排出通路21の入口部22と対向するように配置されている。
【0031】
次に、濾過部材4の、ケース2、キャップ3に対する支持構造について説明する。本実施形態では、濾過部材4は、ケース2とキャップ3とが突き合わされるときの軸方向の機械的な圧力によって支持される。すなわち、濾過部材4は、ケース2の端部に、全周に渡って径方向に突き出るように形成されたフランジ部24とキャップ3の端部に、全周に渡って径方向に突き出るように形成されたフランジ部34との間に、密層側壁部72から全周に渡って径方向に突き出た密層突部73を挟み込み、両フランジ部24、34を固定することで支持される。このようにして密層7を支持することにより、濾過部材4の軸方向および径方向の移動が規制される。なお、ケース2とキャップ3との固定構造については後ほど説明する。
【0032】
また、密層突部73は、濾過部材4の他の部分(粗層5、中間層6)に比べ、流通孔の密度が高く、機械的強度が高い。このため、密層突部73を両フランジ部24、34によって所定の機械的な圧力で挟み込んでも密層側壁部72の濾過機能を損なうことなく、濾過部材4とケース2、キャップ3の内壁との間のシール性を確保できる。これによれば、従来技術にて濾過部材とケース、キャップとの間をシールするために使用していた接着剤が必要なくなるので、燃料フィルタ1の部品点数を削減できる。
【0033】
また、密層突部73は、濾過部材4の中で最も流通孔の密度が高い部分であるため、機械的強度が高く、濾過部材4とケース2、キャップ3とを強固に支持できる。また、濾過部材4は、密層突部73をケース2とキャップ3との間に挟みこむことにより支持されているため、容易に濾過部材4の軸方向を定められる。
【0034】
また、本実施形態では、接着剤を使用しないため、従来技術のように接着剤が濾過部材の一部に染み込んだり、接着剤の供給過剰により、本来燃料が通過すべき部分に接着剤がはみ出したりして、濾過面積が減少してしまい、濾過部材自体を十分に利用できないという問題が発生しなくなる。本実施形態では、ケース2、キャップ3に支持される密層7自体も濾過機能を有しているため、濾過部材4の濾過面積を可能な限り確保し、異物除去処理能力を向上できる。
【0035】
また、本実施形態では、濾過部材4の異物除去処理能力が向上できるので、異物除去処理能力を同じにした場合、従来技術のものに比べ、燃料フィルタ1の体格を小さくできる。さらに、濾過部材4は、接着剤を使用せずにケース2、キャップ3に支持されているので、燃料フィルタ1を製造する際、接着剤の粘度および供給量の管理や乾燥時間が必要なくなるため、製造コストを低減できるという利点もある。
【0036】
次に、ケース2とキャップ3とを固定する構造について説明する。本実施形態では、ケース2とキャップ3との間に密層突部73を挟み込んだときに形成される溝部74に溶融樹脂を流し込むことによって固定する。溝部74は、両フランジ部24、34の軸方向端面と密層突部73の径方向端面とで形成される。この溝部74に溶融樹脂を流し込むことにより、溶融樹脂の熱により両フランジ部24、34の軸方向端面の表面と密層突部73の径方向端面の表面が溶ける。流し込んだ溶融樹脂が冷えて固まり蓋部75となると、ケース2、キャップ3、密層突部73の3つが溶着され強固に固定される。
【0037】
なお、密層突部73は、密層側壁部72から径方向に延びるものであるため、この突部73が溶融樹脂により溶融しても、密層側壁部72の濾過機能には影響を及ぼさない。
【0038】
次に、上述したように構成された燃料フィルタ1の動作について説明する。燃料タンクからの燃料が、流入通路31を介して粗層5と流入通路31との間に形成される流入側空間8に流入する。
【0039】
この空間8に流入した燃料は、そのほとんどが粗層5に流入する(図1の実線矢印で示す)。粗層5では、この層5に形成された流通孔の大きさ以上の異物が捕捉される。ここで捕捉されなかった異物を含む燃料は、燃料流れ下流側の中間層6に流入する。なお、粗層5の側壁とキャップ3との間を通る燃料については後ほど説明する。
【0040】
中間層6では、この層6に形成された流通孔の大きさ以上の異物(粗層5で捕捉された異物よりも小さい)が捕捉される。ここで捕捉されなかった異物を含む燃料は、更に燃料流れ下流側の密層7の密層底部71に流入する。
【0041】
密層底部71では、この底部71に形成された流通孔の大きさ以上の異物が捕捉される。ここでは、非常に小さい異物が捕捉され、燃料と分離される。密層底部71を通過した燃料は、一旦、密層底部71と排出通路21との間に形成される排出空間9に流入し、排出通路21から排出される。
【0042】
このように、燃料流れ上流側から下流側に向かって、粗層5、中間層6、密層底部71と濾過部材4の流通孔の密度が徐々に高くするように配置することにより、効率よく異物を燃料から除去することができ、濾過部材4の寿命を長期化できる。
【0043】
流入側空間8に流入した燃料は、そのほとんどが粗層5に流入するが、一部は、粗層5の側壁とキャップ3との間を通る。ここを通る燃料は、図1中の破線矢印示すように、密層側壁部72に流入する。上述したように、密層側壁部72に形成される密層突部73をケース2とキャップ3との間に挟み、シール性を確保しているので、粗層5の外周側を通る燃料は、密層側壁部72とケース2、キャップ3との間を通らずに、密層側壁部72内を通過する。
【0044】
密層側壁部72に流入した燃料は、この側壁部72に形成された流通孔の大きさ以上の異物が捕捉される。ここでは、比較的大きな異物から、非常に小さい異物までを捕捉することができる。密層側壁部72を通過した燃料は、排出空間9に流入し、粗層5、中間層6、密層底部71を通過してきた燃料とともに排出通路21から排出される。
【0045】
なお、本実施形態では、濾過部材4を粗層5、中間層6、密層7と段階的に流通孔が変化するようにしているが、燃料流れ上流側から下流側に向かって連続的に流通孔を変化させるような濾過部材4としても良い。このように濾過部材4を形成すれば、さらに濾過部材4の異物除去能力を高めつつ、寿命を長期化できる。
【0046】
(第2実施形態)
次に、濾過部材4を支持する構造、およびケース2とキャップ3とを固定する構造の第2の実施形態を図2に基づいて説明する。
【0047】
図2は、第2実施形態における燃料フィルタ1aの要部断面図である。ここでは、第2実施形態の特徴点のみを説明する。図2では、第1実施形態と同じ機能を有する部品および部分については、第1実施形態と同じ符号を付与する。
【0048】
図2に示すように、ケース2の端部には、全周に渡って径方向に突き出るようにフランジ部24aが形成される。このフランジ部24aの外周側端部には、キャップ3に向かって軸方向に延びる側壁部が形成され、内周側端部には、同じくキャップ3に向かって軸方向に延びる突起25が形成されている。
【0049】
キャップ3の端部には、全周に渡って径方向に突き出るようにフランジ部34aが形成される。このフランジ部34aの外周側端部には、ケース2に形成される側壁部と対向するようにケース2のフランジ部24aに向かって延びる側壁部が形成され、内周側端部には、ケース2のフランジ部24aに向かって延びる突起35が形成されている。
【0050】
密層側壁部72には、第1実施形態と同様、密層突部73が形成されており、密層突部73は、両フランジ部24a、34aとの間に挟みこまれることにより支持される。ケース2とキャップ3とは、両フランジ部24a、34aに形成された側壁部同士を突き合わせた後、熱を加え溶着させることにより固定される。
【0051】
本実施形態では、両フランジ部24a、34aに互いに向かい合う突起25、35を形成しているので、両フランジ部24a、34aを突き合わせたときに比較的高い機械的な圧力を密層突部73に加えることができる。これにより、濾過部材4とケース2、キャップ3との間のシール性を向上できる。
【0052】
(第3実施形態)
次に、濾過部材4を支持する構造、およびケース2とキャップ3とを固定する構造の第3の実施形態を図3に基づいて説明する。
【0053】
図3は、第3実施形態における燃料フィルタ1bの要部断面図である。ここでは、第3実施形態の特徴点のみを説明する。図3では、第1実施形態と同じ機能を有する部品および部分については、第1実施形態と同じ符号を付与する。
【0054】
本実施形態では、図3に示すように、密層突部73を覆う樹脂製のカバー76をケース2およびキャップ3に形成された両フランジ部24b、34bで挟み込むことにより、濾過部材4を支持している。密層突部73とカバー76とは、熱を加えることにより溶着され、カバー76と両フランジ部24b、34bも熱を加えることにより溶着されている。
【0055】
この構成によれば、密層突部73がカバー76で覆われる構造となっているため、密層側壁部72から密層突部73に流入した燃料が密層突部73の径方向端面から漏れ出ることを抑制できる。
【0056】
(第4実施形態)
次に、濾過部材4を支持する構造、およびケース2とキャップ3とを固定する構造の第4の実施形態を図4および図5に基づいて説明する。
【0057】
図4および図5は、第4実施形態における燃料フィルタ1c、1dの要部断面図である。ここでは、第4実施形態の特徴点のみを説明する。図4および図5では、第1実施形態と同じ機能を有する部品および部分については、第1実施形態と同じ符号を付与する。
【0058】
図4に示すように、ケース2に形成されているフランジ部24cとキャップ3に形成されているフランジ部34cの間に挟み込まれる濾過部材4は、密層突部73だけではなく、粗層5に形成されている粗層突部51および中間層6に形成されている中間層突部61も挟み込まれている。なお、ケース2とキャップ3との固定構造については、第1実施形態(図1)の固定構造と同じであるため、説明は省略する。
【0059】
このように、粗層突部51、中間層突部61、密層突部73を重ね合わせた上で、両フランジ部24c、34cで挟み込むことで、各層5、6、7同士の支持がより強固なものとなる。また、図5に示すように、密層突部73と中間層突部61のみを両フランジ部24d、34dで挟み込むような構成としてもよい。
【0060】
(第5実施形態)
次に、濾過部材4を支持する構造、およびケース2とキャップ3とを固定する構造の第5の実施形態を図6および図7に基づいて説明する。
【0061】
図6は、第5実施形態における燃料フィルタ1eの断面図であり、図7は、図6中のVII−VII線の断面図である。図6および図7では、第1実施形態と同じ機能を有する部品および部分については、第1実施形態と同じ符号を付与する。
【0062】
図6および図7に示すように、ケース2の底部には、密層底部71を支持する複数のリブ26が形成されている。キャップ3の内壁には、密層側壁部72の上端面を支持する環状の段差部36が形成されている。
【0063】
図6に示すように、ケース2とキャップ3とを突き合わせることにより、密層7は、リブ26と段差部36との間に挟まれ支持される。なお、ケース2とキャップ3とは、熱を加えることにより溶着されている。
【0064】
本実施形態では、密層底部71が複数のリブ26により支持されているため、密層側壁部72を通って排出側空間9に流入する燃料は、図7中の破線矢印で示すように、その流れがリブ26によって邪魔されることなく、リブ26と隣接するリブ26との間を通ることができる。これにより、リブ26が環状に形成される場合に比べ、濾過部材4の流通抵抗が増大するのを抑制できる。
【0065】
また、図8に示すように、燃料フィルタ1fのキャップ3の端面とケース2のリブ26との間に略円盤状の密層7を挟みこんで支持するようにしても良い。これによれば、密層7の形状を簡単なものとすることができ、製造コストの上昇を抑制できる。
【0066】
(第6実施形態)
次に、上記複数の実施形態と異なる構造で、濾過部材4を支持しているものを図9に基づいて説明する。
【0067】
図9は、第6実施形態における燃料フィルタ1gの断面図である。ここでは、第6実施形態の特徴点のみを説明する。図9では、第1実施形態と同じ機能を有する部品および部分については、第1実施形態と同じ符号を付与する。
【0068】
本実施形態は、濾過部材4がケース2およびキャップ3からの機械的な圧力を受けて支持されているという点では、上記第1から第5実施形態の支持構造と同じであるが、濾過部材4がケース2またはキャップ3から受ける機械的な圧力の方向が異なる。つまり、第1〜第5実施形態では、濾過部材4は、ケース2およびキャップ3から軸方向の機械的な圧力を受けて支持されているのに対し、本実施形態では、ケース2またはキャップ3から径方向の機械的な圧力を受けて支持されている。
【0069】
密層7は、略円盤状の密層底部71とその密層底部71から軸方向に延びる略円柱状の密層側壁部72を有している。粗層5および中間層6は、図9に示すように、密層底部71から中間層6、粗層5の順で軸方向に並んで積層されている。粗層5および中間層6は、粗層5の一部および中間層6の側壁が密層側壁部72で覆われるようにして密層7に収容されている。
【0070】
粗層5、中間層6および密層7が一体となった濾過部材4は、ケース2に圧入することにより支持される。濾過部材4のうち最も外周側に位置する密層側壁部72はケース2から径方向の機械的な圧力を受ける。密層側壁部72は、比較的機械的強度が高いため、上記径方向の機械的な圧力を受けても濾過機能を損なうことなく、濾過部材4とケース2の内壁との間のシール性を確保できる。
【0071】
また、本実施形態では、第1から第4実施形態のように密層側壁部72に密層突部73を形成する必要がないため、密層7の構造を簡単にでき、製造コストの上昇を抑制できる。
【0072】
(第7実施形態)
次に、本発明の濾過器を燃料フィルタとして使用し、その燃料フィルタをインタンク式の燃料供給装置に適用した場合について説明する。図10は、インタンク式の燃料供給装置の断面図を示している。
【0073】
燃料供給装置100の取付部材101は円盤状に形成されており、樹脂で一体成形された図示しない燃料タンクの上壁に係止されて取り付けられ、燃料供給装置100の他の部品は燃料タンク内に収容されている。
【0074】
取付部材101には、燃料吐出管102および電気コネクタ103が一体的に樹脂成形されている。燃料吐出管102は、サブタンク104の内側に収容されている燃料ポンプ105から吐出された燃料を燃料タンクの外部に吐出する管である。電気コネクタ103は、リード線106および図示しない給電コネクタにより燃料ポンプ105の端子部107と電気的に接続されており、燃料ポンプ105に電力を供給する。
【0075】
サブタンク104は密封されておらず、上方は開口している。サブタンク104の内部には、サクションフィルタ108、プレッシャレギュレータ109、燃料ポンプ105および燃料フィルタ1hなどが収容されている。サクションフィルタ108は、燃料ポンプ105がサブタンク104内から吸入する燃料に含まれる比較的大きな異物を捕捉する。プレッシャレギュレータ109は、燃料ポンプ105から吐出される燃料の圧力を所定圧に調圧する。
【0076】
燃料ポンプ105は内部にモータ110を有し、モータ110の回転により燃料吸引力を発生する。燃料ポンプ105の上部は樹脂カバー111に覆われている。モータ110は外周側に設置されている金属製のケース112に収容されている。樹脂カバー111は、ケース112によりかしめ固定されている。燃料ポンプ105は、サクションフィルタ108側に形成されている吸入口113からサクションフィルタ108を通過した燃料を吸入し、インペラ114により加圧した後、加圧した燃料を吐出口115から吐出する。
【0077】
燃料ポンプ105により加圧された燃料の一部は、サブタンク104の底側外部に設置されている図示しないノズル部から噴射される。ノズル部は、サブタンク104に形成されている図示しない燃料入口に向けて燃料を噴射する。このとき発生する吸引圧により燃料タンク内の燃料はサブタンク104内に吸い上げられる。燃料ポンプ105が加圧した燃料の一部を噴射するノズル部は、いわゆるジェットポンプを構成している。
【0078】
燃料フィルタ1hは、フィルタケース11h(請求項に記載の支持部材に相当)と濾過部材4hを有している。濾過部材4hはフィルタケース11hに収容されている。フィルタケース11hは、ケース本体(請求項に記載の第1支持部材に相当)2hとキャップ(請求項に記載の第2支持部材に相当)3hとを有しており、円筒状に形成されている。ケース本体2hは、図10および図11に示すように燃料ポンプ105の外周を囲む内筒部27h、内筒部27hの外周側を囲む外筒部28h、ならびに内筒部27hと外筒部28hとを接続する底部29hを有している。内筒部27h、外筒部28hおよび底部29hとから形成される空間に濾過部材4hが収容される。
【0079】
図10に示すようにケース本体2hの反底部側には、キャップ3hが設置され、ケース本体2hを密閉している。燃料ポンプ105の吐出口115から吐出された燃料は、吐出口115に接続された流入通路(請求項に記載の流入通路に相当)31hを通り、濾過部材4hへ流入し、濾過部材4hを通過する。濾過部材4hを通過した燃料は、プレッシャレギュレータ109により燃料圧力を所定圧に調圧された後、フィルタケース11hの排出通路(請求項に記載の排出通路に相当)21hから流出する。排出通路21hから流出した燃料は、蛇腹管116を通り燃料吐出管102から吐出される。
【0080】
次に、燃料フィルタ1hを図11に基づいて説明する。フィルタケース11hは、ポリアセタール樹脂により形成されている。濾過部材4hは、フィルタケース11hと同じくポリアセタール樹脂により形成されている。濾過部材4hは、上記複数の実施形態と同様、粗層5h、中間層6h、密層7hの3つの層が軸方向に積層されて構成されている。
【0081】
粗層5hは、略円環状に形成されており、流入通路31hの出口側に配置され、下方に略円環状に形成された中間層6hが配置されている。密層7hは、略円環状の密層底部71hとその密層底部71hの内周側および外周側端部からそれぞれ軸方向に延びる略円筒状の密層側壁部72hを有している。密層底部71hは、中間層6hの下方に配置され、密層側壁部72hは、中間層6hの側壁と粗層5hの側壁の一部を覆うように配置されている。
【0082】
内周側の密層側壁部72hには、内周側に向かって延びる密層突部731hが全周に渡って形成されており、外周側の密層側壁部72hには、外周側に向かって延びる密層突部732hが全周に渡って形成されている。
【0083】
ケース本体2hの内筒部27hには、内周側に向かって延びるフランジ部241hが全周に渡って形成されており、外筒部28hには、外周側に向かって延びるフランジ部242hが全周に渡って形成されている。
【0084】
キャップ3hの上記内筒部27hと当接する部分には、内周側に向かって延びるフランジ部341hが形成されており、キャップ3hの上記外筒部28hと当接する部分には、外周側に向かって延びるフランジ部342hが形成されている。
【0085】
濾過部材4hは、ケース本体2hのフランジ部241h、242h、とキャップ3hのフランジ部341h、342hとの間に密層突部731h、732hを挟み込み、フランジ部241hとフランジ部341h、およびフランジ部242hとフランジ部342hを固定することで支持される。
【0086】
フランジ部241hとフランジ部341h、およびフランジ部242hとフランジ部342hの固定は、密層突部731h、732hを挟み込んだときに形成される溝部741h、742hに溶融樹脂を流し込むことでなされる。溝部741h、742hに溶融樹脂を流し込むことで、フランジ部241h、341h、242h、342hおよび密層突部731h、732hの一部が溶け、溶融樹脂が冷えて固まることにより、ケース本体2h、キャップ3h、密層突部731h、732hの3つが強固に固定される。
【0087】
(第8実施形態)
次に、本発明の濾過器をスピンオン型フィルタのフィルタエレメントに適用した場合について説明する。図12は、スピンオン型フィルタの断面図を示している。スピンオン型フィルタ200は、ディーゼル内燃機関に燃料を供給する図示しない燃料供給管の途中に設置される。
【0088】
スピンオン型フィルタ200は、内部にフィルタエレメント(以下、単にエレメントという)4jを備えるフィルタ部1jと、内燃機関に装着され、フィルタ部1jが下部に取り付けられ、ハンドポンプ201を有するキャップ202と、フィルタ部1jの他端部に取り付けられるフロート式センサ203を有するセンサ部204とから構成されている。
【0089】
キャップ202には、燃料が流入するインレット205と、燃料が排出するアウトレット206と、インレット205から流入した燃料をフィルタ部1jに送る燃料通路207とが形成されている。インレット205と燃料通路207との間には、ハンドポンプ201によって加圧されるポンプ室208が形成されている。
【0090】
フィルタ部1jは、ケーシング209、エンドプレート210、エレメント支持プレート(請求項に記載の支持部材に相当)11j、センサ部支持プレート211およびエレメント(請求項に記載の濾過部材に相当)4jとから構成されている。
【0091】
エンドプレート210は、ケーシング209の一端部側の周縁部にかしめ固定される。エンドプレート210は、略中央に燃料通路207と連結する貫通孔212を有し、その外周側にアウトレット206と連通する貫通孔213を有している。貫通孔213は、エレメント支持プレート11jの取付孔および燃料通路として使用される。
【0092】
エレメント支持プレート11jは、エレメント4jの外径と略同径の内径を有する有底円筒状の第1プレート(請求項に記載の第1支持部材に相当)2jと、円筒状の第2プレート(請求項に記載の第2支持部材に相当)3jとを有し、エレメント4jの一部を挟み込んで支持する。
【0093】
第1プレート2jは、底部からエンドプレート210の方向に延び、貫通孔213と接続される排出通路21jと、底部から反エンドプレート210の方向に延びる側壁部の端部に径方向に延び、エレメント4jの一部を覆うフランジ部24jとを有する。第2プレート3jは、エンドプレート210側の端部に径方向に延びるフランジ部34jと、このフランジ部34jの先端に形成され、第1プレート2jのフランジ部24jと係合するかしめ部37とを有する。
【0094】
センサ部支持プレート211は、ケーシング209の他端部側の内径と略同径の外径を有する円筒状に形成されており、ケーシング209にかしめ固定されている。センサ部204は、フロート式センサ203、ドレンコック214およびコネクタ215を有し、センサ部支持プレート211に支持されている。
【0095】
次に、スピンオン型フィルタ200の作動を図12に基づいて説明する。図12に示すように図示しない燃料供給管からインレット205に流入した異物を含む燃料は、ポンプ室208および燃料通路207を経由してフィルタ部1j内に流入する。フィルタ部1jに流れ込んだ燃料は、エレメント支持プレート11jの底部外壁面に流れ込む。そして、その燃料は、底部外壁面に沿いながら径方向外側に向かって流れ、エレメント支持プレート11jの外周壁を伝った後、ケーシング209の内壁とエレメント4jの側壁との間を通過してエレメント4jに流入する。
【0096】
エレメント4jに流入した燃料は、ここで燃料に含まれる異物が除去され、第1プレート2jに形成されている排出通路21jから排出される。排出通路21jを通過した燃料は、貫通孔213およびアウトレット206を経由して、アウトレット206に接続されている図示しない燃料供給管に排出される。
【0097】
ここで、燃料に水分が含まれる場合、燃料と水との比重差によって、比重の大きい水が燃料から沈降分離されるため、分離された水がケーシング209の下方に位置する空間部216に溜められる。そして、空間部216に溜められた水の水位はセンサ部204のフロート式センサ203によって監視されており、コネクタ215から出力されるセンサ信号が図示しない電子制御ユニットに送られる。
【0098】
空間部216に溜められた水の水位が所定水位に達すると、電子制御ユニットは、ディーゼル内燃機関の運転者などにそのことを通知し、空間部216に溜まった水の排出を促す。この水は、ドレンコック214を開けた後、フィルタ部1jの上部に位置するハンドポンプ201でフィルタ部1j内を加圧することで排出される。
【0099】
次に、エレメント4jを図13に基づいて説明する。エレメント4jは、上記複数の実施形態と同様、粗層5j、中間層6j、密層7jの3つの層が軸方向に積層されて構成されている。
【0100】
粗層5jは、略円柱状に形成されており、第2プレート3jの流入通路31j側に配置され、その上方に略円柱状に形成された中間層6jが配置されている。密層7jは、略円盤状の密層底部71jとその密層底部71jの外周側からそれぞれ軸方向に延びる略円筒状の密層側壁部72jを有している。密層底部71jは、中間層6jの上方に配置され、密層側壁部72jは、中間層6jの側壁と粗層5jの側壁の一部を覆うように配置されている。密層側壁部72jには、外周側に向かって延びる密層突部73jが全周に渡って形成されている。
【0101】
エレメント4jは、次に説明するような構造でエレメント支持プレート11jに支持される。第1プレート2jのフランジ部24jに密層突部73jの上側を当接させ、第2プレート3jのフランジ部34jを密層突部73jの下側に当接させた状態で、第2プレート3jのかしめ部37を折り曲げて第1プレート2jと第2プレート3jとを固定する。
【0102】
次に、ケースとキャップとの間に密層突部を挟み込んで、ケースとキャップとを固定する場合のさまざまな固定構造を図14から図18に基づいて説明する。なお、ここで説明するケースおよびキャップは、樹脂製であっても良いし、金属製であっても良い。
【0103】
(第9実施形態)
図14に示すように、ケース320とキャップ330とは、それぞれのフランジ部324、334を貫通するボルト380と、そのボルト380に螺合されるナット381によって固定されている。なお、フランジ部324と密層突部73、およびフランジ部334と密層突部73との間にOリング77を設けても良い。
【0104】
(第10実施形態)
図15に示すように、キャップ430のフランジ部434には、このフランジ部434の外周側端部から下方に延び、ケース420のフランジ部424に係合する爪部438が形成されている。ケース420とキャップ430とは、この爪部438をケース420のフランジ部424に係合することにより固定されている。
【0105】
(第11実施形態)
図16に示すように、キャップ530のフランジ部534には、このフランジ部534の外周側端部から下方に延び、ケース520のフランジ部524が係合する係合孔539が形成されている。ケース520とキャップ530とは、この係合孔539にケース520のフランジ部524を係合させることにより固定されている。
【0106】
(第12実施形態)
図17に示すように、キャップ630のフランジ部634には、このフランジ部634の外周側端部から下方に延びるかしめ部640が形成されている。ケース620とキャップ630とは、このケース620のフランジ部624にかしめ部640を折り曲げ、係止することにより固定されている。
【0107】
(第13実施形態)
図18に示すように、キャップ730のフランジ部734には、このフランジ部734の下方側端面から下方に延びる連結棒741が形成されている。ケース720とキャップ730とは、この連結棒741をケース720のフランジ部724に形成されている貫通孔729に貫通させ、貫通孔729から突き出た部位に熱を加えながら潰すことにより固定されている。
【0108】
自動車は、世界中で使用されるものであり、その自動車が使用される国によって燃料の質(燃料に含まれる異物の量や大きさ)が異なる。また、自動車に搭載される内燃機関の種類(排気量、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジンなど)もさまざまである。このため、燃料フィルタ1は、さまざまな燃料の質や内燃機関の種類に適用できるようなものでなければならないという要望がある。第1から第12実施形態に記載の燃料フィルタおよびフィルタエレメントによれば、流体中の異物除去能力を向上することができるので、上記要望を満足させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】本発明の第1実施形態による燃料フィルタの断面図である。
【図2】本発明の第2実施形態による燃料フィルタの要部断面図である。
【図3】本発明の第3実施形態による燃料フィルタの要部断面図である。
【図4】本発明の第4実施形態による燃料フィルタの要部断面図である。
【図5】第4実施形態による燃料フィルタの他の形態を示す要部断面図である。
【図6】本発明の第5実施形態による燃料フィルタの断面図である。
【図7】図6中のVII−VII線断面図である。
【図8】第5実施形態による燃料フィルタの他の形態を示す断面図である。
【図9】本発明の第6実施形態による燃料フィルタの断面図である。
【図10】本発明の第7実施形態による燃料フィルタを適用した燃料供給装置の断面図である。
【図11】本発明の第7実施形態による燃料フィルタの要部断面図である。
【図12】本発明の第8実施形態によるフィルタエレメントを適用したスピンオン型フィルタの断面図である。
【図13】本発明の第8実施形態によるフィルタエレメントの要部断面図である。
【図14】本発明の第9実施形態による燃料フィルタの要部断面図である。
【図15】本発明の第10実施形態による燃料フィルタの要部断面図である。
【図16】本発明の第11実施形態による燃料フィルタの要部断面図である。
【図17】本発明の第12実施形態による燃料フィルタの要部断面図である。
【図18】本発明の第13実施形態による燃料フィルタの要部断面図である。
【図19】従来技術の濾過器の断面図である。
【符号の説明】
【0110】
1 燃料フィルタ(濾過器)、2 ケース(第1支持部材)、21 排出通路、22 入口部、23 出口部、24 フランジ部、3 キャップ(第2支持部材)、31 流入通路、32 入口部、33 出口部、34 フランジ部、4 濾過部材、5 粗層、6 中間層、7 密層、71 密層底部、72 密層側壁部、73 密層突部、74 溝部、75 蓋部、8 流入側空間、9 排出側空間
【技術分野】
【0001】
本発明は、濾過器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、流体中の異物を捕集する濾過器800が知られている(特許文献1参照)。この濾過器800は、図19に示すように、濾過部材801、その濾過部材801を収容するケース802およびキャップ803から構成されている。濾過部材801は、波状濾紙と平板状濾紙とを重ね合わせたものをロールしたものであるため、径方向の力には弱く、ケース802に収容する際には、濾過部材801の外周壁とケース802の内壁との間に接着剤804を設けている。接着剤804は、ケース802に濾過部材801を支持するとともに、ケース802と濾過部材801との間をシールし、ケース802内に流入した流体が濾過部材801を通過せずに排出されるのを防いでいる。
【特許文献1】特開平8−210211号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、上記のような濾過器800では、濾過部材801をケース802に固定すべく濾過部材801とケース802との間に接着剤804を供給すると、接着剤804が濾過部材801の一部に染み込んだり、接着剤804の供給過剰により、本来流体を通過させる部分に接着剤804がはみ出したりして、濾過面積が減少してしまい、濾過部材801自体を十分に利用できないという問題が発生していた。
【0004】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、ケース内に容易に濾過部材を支持できるとともに、濾過面積を可能な限り確保し、異物除去能力を向上できる濾過器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明によれば、流体を流通させる流通孔の密度が比較的低い粗部と、流通孔の密度が比較的高い密部とを有する濾過部材、および濾過部材を支持し、流入通路と排出通路とを有する支持部材を有し、密部は、粗部を支持するとともに、粗部と排出通路との間に配置され、さらに支持部材から機械的な圧力を受けて支持されていることを特徴としている。
【0006】
この構成によれば、密部は、粗部に比べ比較的機械的強度が高いため、支持部材から機械的な圧力を受けても、密部の濾過機能を損なうことなく濾過部材と支持部材との密着度が高められる。これにより、濾過部材は、接着剤を使用せずとも、濾過部材を支持部材に支持させることができ、さらに濾過部材と支持部材とのシール性を確保できる。その結果、濾過部材の濾過面積を可能な限り確保でき、濾過器の異物除去能力を向上できる。
【0007】
請求項2に記載の発明によれば、密部は、粗部と排出通路の入口部との間に配置されていることを特徴としている。この構成によれば、密部は、粗部と排出通路の入口部との間に配置されるため、流入通路から流入した流体の大部分は、必ず粗部から密部を経て排出通路から排出される。このため、異物除去能力向上と長寿命化とを両立できる。
【0008】
請求項3に記載の発明によれば、濾過部材は、粗部から密部にかけて、流通孔の密度が段階的に変化していることを特徴としている。この構成によれば、濾過部材は、粗部から密部にかけて、流通孔の密度が段階的に変化しているので、流通孔の密度の異なる濾過部材をいくつか用意し、それらを組み合わせるだけで、粗部と密部を有する濾過部材を容易に製造できる。
【0009】
請求項4に記載の発明によれば、濾過部材は、粗部から密部にかけて、流通孔の密度が連続的に変化していることを特徴としている。この構成によれば、濾過部材は、粗部から密部にかけて、流通孔の密度が連続的に変化しているので、異物除去能力向上と長寿命化とを高度に両立できる。
【0010】
請求項5に記載の発明によれば、密部のうち、支持部材から機械的な圧力を受ける部分は、最も流通孔の密度が高い部分であることを特徴としている。この構成によれば、密部のうち、支持部材から機械的な圧力を受ける部分は、最も流通孔の密度が高い部分であるため、機械的強度が最も高く、濾過部材と支持部材とを強固に支持できる。
【0011】
請求項6に記載の発明によれば、支持部材は、軸方向に分割される第1支持部材と第2支持部材とから構成されており、密部は、第1支持部材と第2支持部材とが組み合わされるときの軸方向の機械的な圧力を受けて支持されることを特徴としている。この構成によれば、濾過部材は、軸方向に分割されている第1支持部材と第2支持部材とが組み合わされるときの軸方向の機械的な圧力によって、支持されるので強固に濾過部材を支持部材に支持させることができるとともに、濾過部材と支持部材との間のシール性を向上できる。
【0012】
請求項7に記載の発明によれば、密部は、粗部よりも外周側に突出する密部側突部を有し、密部側突部は、第1支持部材と第2支持部材との間に挟まれることにより支持されることを特徴としている。この構成によれば、濾過部材の密部には、粗部よりも外周側に突出し、第1、第2支持部材に挟まれる密部側突部を有するので、支持部材内での濾過部材の軸方向位置を容易に定められる。
【0013】
請求項8に記載の発明によれば、密部は、外周側に突出する密部側突部を有し、粗部は、外周側に突出する粗部側突部を有し、密部側突部と粗部側突部は、ともに第1支持部材と第2支持部材との間に挟まれることにより支持されることを特徴としている。この構成によれば、密部だけでなく、粗部にも外周側に突出する粗部側突部を有し、密部側突部および粗部側突部を第1、第2支持部材で挟んでいるので、密部と支持部材との支持を強固にし、シール性を確保するだけでなく、密部と粗部との支持も強固にできる。
【0014】
請求項9に記載の発明によれば、密部を挟み込む第1支持部材または第2支持部材の軸方向端部には、軸方向に延びる突起部が形成されていることを特徴としている。この構成によれば、密部を挟み込む第1または第2支持部材の軸方向端部には、軸方向に延びる突起が形成されているので、比較的高い機械的圧力を密部に加えることができ、濾過部材と支持部材との間のシール性を向上できる。
【0015】
請求項10に記載の発明によれば、第1支持部材、第2支持部材および濾過部材は、樹脂製であって、第1支持部材と第2支持部材の外壁には、少なくとも密部側突部を挟み込むようにして第1支持部材と第2支持部材とを突き合わせた後、第1支持部材、第2支持部材、および密部側突部を互いに溶着させる溶融樹脂が流し込まれる溝部が形成されていることを特徴としている。
【0016】
この構成によれば、樹脂製の第1、第2支持部材を少なくとも密部側突部を挟み込むようにして突き合わせた後、第1、第2支持部材および密部側突部を互いに溶着させる溶融樹脂が流し込まれる溝部が第1、第2支持部材の外壁に形成されているので、この溝部に溶融樹脂を流し込むことができる。溶融樹脂を溝部に流し込むことにより、第1、第2支持部材および密部側突部を互いに溶着でき、それぞれを強固に固定できる。
【0017】
請求項11に記載の発明によれば、第1支持部材、第2支持部材および濾過部材は、樹脂製であって、密部側突部、または密部側突部および粗部側突部を覆う樹脂製のカバーを有し、カバーは、第1支持部材と第2支持部材との間に溶着によって接合されていることを特徴としている。この構成によれば、樹脂製のカバーによって密部側突部、または密部側突部および粗部側突部が覆われ、カバーは第1、第2支持部材との間に溶着によって接合されているので、密部側突部または粗部側突部の径方向端面から流体が漏れ出ることを抑制できる。
【0018】
請求項12に記載の発明によれば、密部は、支持部材の内壁から支持部材の中心軸に向かう径方向の機械的な圧力を受けて支持されていることを特徴としている。この構成によれば、密部は、粗部に比べ比較的機械的強度が高いため、支持部材に密部を圧入しても、密部の濾過機能を損なうことなく濾過部材を支持部材に支持できる。
【0019】
請求項13に記載の発明によれば、密部は、粗部を支持する板状の底部と、該底部から軸方向に延び、粗部の径方向側面を覆う側壁部を有することを特徴としている。この構成によれば、粗部に流入した流体は、密部を経て排出通路から排出される。そして、粗部の外周側を流れる流体は、密部を経て排出通路から排出される。支持部材に流入した流体は、いずれのルートであっても必ず密部を経て排出通路から排出されるようになっているので、流体中に含まれる小さな異物を捕捉できる。
【0020】
請求項14に記載の発明によれば、支持部材および濾過部材は、同一の樹脂材料で形成されていることを特徴としている。この構成によれば、支持部材および濾過部材の全てが同一の樹脂材料で形成されているので、リサイクルが容易にできる。
【0021】
請求項15に記載の発明によれば、濾過部材は、ポリアセタール樹脂であることを特徴としている。ポリアセタール樹脂は、耐燃料性に優れているという特徴を有している。濾過部材をポリアセタール樹脂で形成することにより、燃料を濾過する場合に濾過部材の寿命を長期化ができる。
【0022】
請求項16に記載の発明によれば、請求項1から15に記載の濾過器は、自動車用燃料を濾過することを特徴としている。自動車は、世界中で使用されるものであり、その自動車が使用される国によって燃料の質(燃料に含まれる異物の量や大きさ)が異なる。また、自動車に搭載される内燃機関の種類もさまざまであるため、燃料フィルタを通過する流量が内燃機関の種類によって異なる。請求項1から15に記載の濾過器は、異物除去性能を向上させているので、自動車用燃料を濾過するのに特に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の複数の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0024】
(第1実施形態)
本発明の濾過器を燃料フィルタとして使用し、その燃料フィルタを自動車に搭載される内燃機関に適用した場合について説明する。図1は、本実施形態による燃料フィルタ1を示す断面図である。燃料フィルタ1は、図示しない燃料タンクと図示しない内燃機関の燃料噴射装置とを接続する燃料配管途中に設けられる燃料フィルタであり、燃料中に含まれる異物を捕捉するものである。燃料フィルタ1は、ケース2、キャップ3、濾過部材4などから構成されている。
【0025】
ケース(請求項に記載の第1支持部材に相当)2は、ポリアセタール樹脂で有底円筒状に形成されており、その底部の略中央には、排出通路21が形成されている。排出通路21は、ケース2の底部に入口部22が開口し、底部から軸方向に延びる通路であって、出口部23に内燃機関の燃料噴射装置に繋がる燃料配管(図示せず)が接続される。
【0026】
キャップ3(請求項に記載の第2支持部材に相当)は、ポリアセタール樹脂で有底円筒状に形成されており、その底部の略中央には、流入通路31が形成されている。流入通路31は、キャップ3の底部に出口部33が開口し、底部から軸方向に延びる通路であって、入口部32に燃料タンクに繋がる燃料配管(図示せず)が接続される。
【0027】
濾過部材4は、ケース2とキャップ3とを突き合わせたときに形成される空間内に収容されており、繊維状のポリアセタール樹脂が三次元的に絡み合って、燃料が流通可能な多数の流通孔を有する不織布から形成されている。流入通路31から流入してきた燃料中に含まれる流通孔よりも大きい異物は、繊維に捕捉され、燃料と異物とを分離することができる。異物が除去された燃料は、排出通路21から排出される。
【0028】
本実施形態では、濾過部材4は、耐燃料性を有するポリアセタール樹脂より形成されているため、燃料による劣化を抑制することができる。このため、濾過部材4を長寿命化できる。また、本実施形態では、ケース2、キャップ3も濾過部材4と同じポリアセタール樹脂で形成しているので、リサイクル性が向上する。
【0029】
本実施形態では、濾過部材4は、粗層(請求項に記載の粗部に相当)5、中間層6、密層(請求項に記載の密部に相当)7の3つの層が軸方向に積層されて構成されている。これらの層5、6、7は、単位体積当たりの流通孔の密度によって区別される。流通孔の密度が最も高いものが密層7であり、最も低いものが粗層5である。流通孔の密度が高ければ高いほど、流通孔の径は小さい。つまり、最も目が細かいものとなり、より細かい異物を捕捉できる。
【0030】
本実施形態では、略円柱状に形成された粗層5が最も流入通路31の出口部33側に配置され、その下方(燃料流れ下流側)に略円柱状に形成された中間層6が配置されている。密層7は、略円盤状の密層底部71とその密層底部71の外周側から軸方向に延びる略円筒状の密層側壁部72を有している。密層底部71は、中間層6の燃料流れ下流側に配置され、密層側壁部72は、中間層6の側壁と粗層5の側壁の一部を覆うように配置されている。密層底部71は、排出通路21の入口部22と対向するように配置されている。
【0031】
次に、濾過部材4の、ケース2、キャップ3に対する支持構造について説明する。本実施形態では、濾過部材4は、ケース2とキャップ3とが突き合わされるときの軸方向の機械的な圧力によって支持される。すなわち、濾過部材4は、ケース2の端部に、全周に渡って径方向に突き出るように形成されたフランジ部24とキャップ3の端部に、全周に渡って径方向に突き出るように形成されたフランジ部34との間に、密層側壁部72から全周に渡って径方向に突き出た密層突部73を挟み込み、両フランジ部24、34を固定することで支持される。このようにして密層7を支持することにより、濾過部材4の軸方向および径方向の移動が規制される。なお、ケース2とキャップ3との固定構造については後ほど説明する。
【0032】
また、密層突部73は、濾過部材4の他の部分(粗層5、中間層6)に比べ、流通孔の密度が高く、機械的強度が高い。このため、密層突部73を両フランジ部24、34によって所定の機械的な圧力で挟み込んでも密層側壁部72の濾過機能を損なうことなく、濾過部材4とケース2、キャップ3の内壁との間のシール性を確保できる。これによれば、従来技術にて濾過部材とケース、キャップとの間をシールするために使用していた接着剤が必要なくなるので、燃料フィルタ1の部品点数を削減できる。
【0033】
また、密層突部73は、濾過部材4の中で最も流通孔の密度が高い部分であるため、機械的強度が高く、濾過部材4とケース2、キャップ3とを強固に支持できる。また、濾過部材4は、密層突部73をケース2とキャップ3との間に挟みこむことにより支持されているため、容易に濾過部材4の軸方向を定められる。
【0034】
また、本実施形態では、接着剤を使用しないため、従来技術のように接着剤が濾過部材の一部に染み込んだり、接着剤の供給過剰により、本来燃料が通過すべき部分に接着剤がはみ出したりして、濾過面積が減少してしまい、濾過部材自体を十分に利用できないという問題が発生しなくなる。本実施形態では、ケース2、キャップ3に支持される密層7自体も濾過機能を有しているため、濾過部材4の濾過面積を可能な限り確保し、異物除去処理能力を向上できる。
【0035】
また、本実施形態では、濾過部材4の異物除去処理能力が向上できるので、異物除去処理能力を同じにした場合、従来技術のものに比べ、燃料フィルタ1の体格を小さくできる。さらに、濾過部材4は、接着剤を使用せずにケース2、キャップ3に支持されているので、燃料フィルタ1を製造する際、接着剤の粘度および供給量の管理や乾燥時間が必要なくなるため、製造コストを低減できるという利点もある。
【0036】
次に、ケース2とキャップ3とを固定する構造について説明する。本実施形態では、ケース2とキャップ3との間に密層突部73を挟み込んだときに形成される溝部74に溶融樹脂を流し込むことによって固定する。溝部74は、両フランジ部24、34の軸方向端面と密層突部73の径方向端面とで形成される。この溝部74に溶融樹脂を流し込むことにより、溶融樹脂の熱により両フランジ部24、34の軸方向端面の表面と密層突部73の径方向端面の表面が溶ける。流し込んだ溶融樹脂が冷えて固まり蓋部75となると、ケース2、キャップ3、密層突部73の3つが溶着され強固に固定される。
【0037】
なお、密層突部73は、密層側壁部72から径方向に延びるものであるため、この突部73が溶融樹脂により溶融しても、密層側壁部72の濾過機能には影響を及ぼさない。
【0038】
次に、上述したように構成された燃料フィルタ1の動作について説明する。燃料タンクからの燃料が、流入通路31を介して粗層5と流入通路31との間に形成される流入側空間8に流入する。
【0039】
この空間8に流入した燃料は、そのほとんどが粗層5に流入する(図1の実線矢印で示す)。粗層5では、この層5に形成された流通孔の大きさ以上の異物が捕捉される。ここで捕捉されなかった異物を含む燃料は、燃料流れ下流側の中間層6に流入する。なお、粗層5の側壁とキャップ3との間を通る燃料については後ほど説明する。
【0040】
中間層6では、この層6に形成された流通孔の大きさ以上の異物(粗層5で捕捉された異物よりも小さい)が捕捉される。ここで捕捉されなかった異物を含む燃料は、更に燃料流れ下流側の密層7の密層底部71に流入する。
【0041】
密層底部71では、この底部71に形成された流通孔の大きさ以上の異物が捕捉される。ここでは、非常に小さい異物が捕捉され、燃料と分離される。密層底部71を通過した燃料は、一旦、密層底部71と排出通路21との間に形成される排出空間9に流入し、排出通路21から排出される。
【0042】
このように、燃料流れ上流側から下流側に向かって、粗層5、中間層6、密層底部71と濾過部材4の流通孔の密度が徐々に高くするように配置することにより、効率よく異物を燃料から除去することができ、濾過部材4の寿命を長期化できる。
【0043】
流入側空間8に流入した燃料は、そのほとんどが粗層5に流入するが、一部は、粗層5の側壁とキャップ3との間を通る。ここを通る燃料は、図1中の破線矢印示すように、密層側壁部72に流入する。上述したように、密層側壁部72に形成される密層突部73をケース2とキャップ3との間に挟み、シール性を確保しているので、粗層5の外周側を通る燃料は、密層側壁部72とケース2、キャップ3との間を通らずに、密層側壁部72内を通過する。
【0044】
密層側壁部72に流入した燃料は、この側壁部72に形成された流通孔の大きさ以上の異物が捕捉される。ここでは、比較的大きな異物から、非常に小さい異物までを捕捉することができる。密層側壁部72を通過した燃料は、排出空間9に流入し、粗層5、中間層6、密層底部71を通過してきた燃料とともに排出通路21から排出される。
【0045】
なお、本実施形態では、濾過部材4を粗層5、中間層6、密層7と段階的に流通孔が変化するようにしているが、燃料流れ上流側から下流側に向かって連続的に流通孔を変化させるような濾過部材4としても良い。このように濾過部材4を形成すれば、さらに濾過部材4の異物除去能力を高めつつ、寿命を長期化できる。
【0046】
(第2実施形態)
次に、濾過部材4を支持する構造、およびケース2とキャップ3とを固定する構造の第2の実施形態を図2に基づいて説明する。
【0047】
図2は、第2実施形態における燃料フィルタ1aの要部断面図である。ここでは、第2実施形態の特徴点のみを説明する。図2では、第1実施形態と同じ機能を有する部品および部分については、第1実施形態と同じ符号を付与する。
【0048】
図2に示すように、ケース2の端部には、全周に渡って径方向に突き出るようにフランジ部24aが形成される。このフランジ部24aの外周側端部には、キャップ3に向かって軸方向に延びる側壁部が形成され、内周側端部には、同じくキャップ3に向かって軸方向に延びる突起25が形成されている。
【0049】
キャップ3の端部には、全周に渡って径方向に突き出るようにフランジ部34aが形成される。このフランジ部34aの外周側端部には、ケース2に形成される側壁部と対向するようにケース2のフランジ部24aに向かって延びる側壁部が形成され、内周側端部には、ケース2のフランジ部24aに向かって延びる突起35が形成されている。
【0050】
密層側壁部72には、第1実施形態と同様、密層突部73が形成されており、密層突部73は、両フランジ部24a、34aとの間に挟みこまれることにより支持される。ケース2とキャップ3とは、両フランジ部24a、34aに形成された側壁部同士を突き合わせた後、熱を加え溶着させることにより固定される。
【0051】
本実施形態では、両フランジ部24a、34aに互いに向かい合う突起25、35を形成しているので、両フランジ部24a、34aを突き合わせたときに比較的高い機械的な圧力を密層突部73に加えることができる。これにより、濾過部材4とケース2、キャップ3との間のシール性を向上できる。
【0052】
(第3実施形態)
次に、濾過部材4を支持する構造、およびケース2とキャップ3とを固定する構造の第3の実施形態を図3に基づいて説明する。
【0053】
図3は、第3実施形態における燃料フィルタ1bの要部断面図である。ここでは、第3実施形態の特徴点のみを説明する。図3では、第1実施形態と同じ機能を有する部品および部分については、第1実施形態と同じ符号を付与する。
【0054】
本実施形態では、図3に示すように、密層突部73を覆う樹脂製のカバー76をケース2およびキャップ3に形成された両フランジ部24b、34bで挟み込むことにより、濾過部材4を支持している。密層突部73とカバー76とは、熱を加えることにより溶着され、カバー76と両フランジ部24b、34bも熱を加えることにより溶着されている。
【0055】
この構成によれば、密層突部73がカバー76で覆われる構造となっているため、密層側壁部72から密層突部73に流入した燃料が密層突部73の径方向端面から漏れ出ることを抑制できる。
【0056】
(第4実施形態)
次に、濾過部材4を支持する構造、およびケース2とキャップ3とを固定する構造の第4の実施形態を図4および図5に基づいて説明する。
【0057】
図4および図5は、第4実施形態における燃料フィルタ1c、1dの要部断面図である。ここでは、第4実施形態の特徴点のみを説明する。図4および図5では、第1実施形態と同じ機能を有する部品および部分については、第1実施形態と同じ符号を付与する。
【0058】
図4に示すように、ケース2に形成されているフランジ部24cとキャップ3に形成されているフランジ部34cの間に挟み込まれる濾過部材4は、密層突部73だけではなく、粗層5に形成されている粗層突部51および中間層6に形成されている中間層突部61も挟み込まれている。なお、ケース2とキャップ3との固定構造については、第1実施形態(図1)の固定構造と同じであるため、説明は省略する。
【0059】
このように、粗層突部51、中間層突部61、密層突部73を重ね合わせた上で、両フランジ部24c、34cで挟み込むことで、各層5、6、7同士の支持がより強固なものとなる。また、図5に示すように、密層突部73と中間層突部61のみを両フランジ部24d、34dで挟み込むような構成としてもよい。
【0060】
(第5実施形態)
次に、濾過部材4を支持する構造、およびケース2とキャップ3とを固定する構造の第5の実施形態を図6および図7に基づいて説明する。
【0061】
図6は、第5実施形態における燃料フィルタ1eの断面図であり、図7は、図6中のVII−VII線の断面図である。図6および図7では、第1実施形態と同じ機能を有する部品および部分については、第1実施形態と同じ符号を付与する。
【0062】
図6および図7に示すように、ケース2の底部には、密層底部71を支持する複数のリブ26が形成されている。キャップ3の内壁には、密層側壁部72の上端面を支持する環状の段差部36が形成されている。
【0063】
図6に示すように、ケース2とキャップ3とを突き合わせることにより、密層7は、リブ26と段差部36との間に挟まれ支持される。なお、ケース2とキャップ3とは、熱を加えることにより溶着されている。
【0064】
本実施形態では、密層底部71が複数のリブ26により支持されているため、密層側壁部72を通って排出側空間9に流入する燃料は、図7中の破線矢印で示すように、その流れがリブ26によって邪魔されることなく、リブ26と隣接するリブ26との間を通ることができる。これにより、リブ26が環状に形成される場合に比べ、濾過部材4の流通抵抗が増大するのを抑制できる。
【0065】
また、図8に示すように、燃料フィルタ1fのキャップ3の端面とケース2のリブ26との間に略円盤状の密層7を挟みこんで支持するようにしても良い。これによれば、密層7の形状を簡単なものとすることができ、製造コストの上昇を抑制できる。
【0066】
(第6実施形態)
次に、上記複数の実施形態と異なる構造で、濾過部材4を支持しているものを図9に基づいて説明する。
【0067】
図9は、第6実施形態における燃料フィルタ1gの断面図である。ここでは、第6実施形態の特徴点のみを説明する。図9では、第1実施形態と同じ機能を有する部品および部分については、第1実施形態と同じ符号を付与する。
【0068】
本実施形態は、濾過部材4がケース2およびキャップ3からの機械的な圧力を受けて支持されているという点では、上記第1から第5実施形態の支持構造と同じであるが、濾過部材4がケース2またはキャップ3から受ける機械的な圧力の方向が異なる。つまり、第1〜第5実施形態では、濾過部材4は、ケース2およびキャップ3から軸方向の機械的な圧力を受けて支持されているのに対し、本実施形態では、ケース2またはキャップ3から径方向の機械的な圧力を受けて支持されている。
【0069】
密層7は、略円盤状の密層底部71とその密層底部71から軸方向に延びる略円柱状の密層側壁部72を有している。粗層5および中間層6は、図9に示すように、密層底部71から中間層6、粗層5の順で軸方向に並んで積層されている。粗層5および中間層6は、粗層5の一部および中間層6の側壁が密層側壁部72で覆われるようにして密層7に収容されている。
【0070】
粗層5、中間層6および密層7が一体となった濾過部材4は、ケース2に圧入することにより支持される。濾過部材4のうち最も外周側に位置する密層側壁部72はケース2から径方向の機械的な圧力を受ける。密層側壁部72は、比較的機械的強度が高いため、上記径方向の機械的な圧力を受けても濾過機能を損なうことなく、濾過部材4とケース2の内壁との間のシール性を確保できる。
【0071】
また、本実施形態では、第1から第4実施形態のように密層側壁部72に密層突部73を形成する必要がないため、密層7の構造を簡単にでき、製造コストの上昇を抑制できる。
【0072】
(第7実施形態)
次に、本発明の濾過器を燃料フィルタとして使用し、その燃料フィルタをインタンク式の燃料供給装置に適用した場合について説明する。図10は、インタンク式の燃料供給装置の断面図を示している。
【0073】
燃料供給装置100の取付部材101は円盤状に形成されており、樹脂で一体成形された図示しない燃料タンクの上壁に係止されて取り付けられ、燃料供給装置100の他の部品は燃料タンク内に収容されている。
【0074】
取付部材101には、燃料吐出管102および電気コネクタ103が一体的に樹脂成形されている。燃料吐出管102は、サブタンク104の内側に収容されている燃料ポンプ105から吐出された燃料を燃料タンクの外部に吐出する管である。電気コネクタ103は、リード線106および図示しない給電コネクタにより燃料ポンプ105の端子部107と電気的に接続されており、燃料ポンプ105に電力を供給する。
【0075】
サブタンク104は密封されておらず、上方は開口している。サブタンク104の内部には、サクションフィルタ108、プレッシャレギュレータ109、燃料ポンプ105および燃料フィルタ1hなどが収容されている。サクションフィルタ108は、燃料ポンプ105がサブタンク104内から吸入する燃料に含まれる比較的大きな異物を捕捉する。プレッシャレギュレータ109は、燃料ポンプ105から吐出される燃料の圧力を所定圧に調圧する。
【0076】
燃料ポンプ105は内部にモータ110を有し、モータ110の回転により燃料吸引力を発生する。燃料ポンプ105の上部は樹脂カバー111に覆われている。モータ110は外周側に設置されている金属製のケース112に収容されている。樹脂カバー111は、ケース112によりかしめ固定されている。燃料ポンプ105は、サクションフィルタ108側に形成されている吸入口113からサクションフィルタ108を通過した燃料を吸入し、インペラ114により加圧した後、加圧した燃料を吐出口115から吐出する。
【0077】
燃料ポンプ105により加圧された燃料の一部は、サブタンク104の底側外部に設置されている図示しないノズル部から噴射される。ノズル部は、サブタンク104に形成されている図示しない燃料入口に向けて燃料を噴射する。このとき発生する吸引圧により燃料タンク内の燃料はサブタンク104内に吸い上げられる。燃料ポンプ105が加圧した燃料の一部を噴射するノズル部は、いわゆるジェットポンプを構成している。
【0078】
燃料フィルタ1hは、フィルタケース11h(請求項に記載の支持部材に相当)と濾過部材4hを有している。濾過部材4hはフィルタケース11hに収容されている。フィルタケース11hは、ケース本体(請求項に記載の第1支持部材に相当)2hとキャップ(請求項に記載の第2支持部材に相当)3hとを有しており、円筒状に形成されている。ケース本体2hは、図10および図11に示すように燃料ポンプ105の外周を囲む内筒部27h、内筒部27hの外周側を囲む外筒部28h、ならびに内筒部27hと外筒部28hとを接続する底部29hを有している。内筒部27h、外筒部28hおよび底部29hとから形成される空間に濾過部材4hが収容される。
【0079】
図10に示すようにケース本体2hの反底部側には、キャップ3hが設置され、ケース本体2hを密閉している。燃料ポンプ105の吐出口115から吐出された燃料は、吐出口115に接続された流入通路(請求項に記載の流入通路に相当)31hを通り、濾過部材4hへ流入し、濾過部材4hを通過する。濾過部材4hを通過した燃料は、プレッシャレギュレータ109により燃料圧力を所定圧に調圧された後、フィルタケース11hの排出通路(請求項に記載の排出通路に相当)21hから流出する。排出通路21hから流出した燃料は、蛇腹管116を通り燃料吐出管102から吐出される。
【0080】
次に、燃料フィルタ1hを図11に基づいて説明する。フィルタケース11hは、ポリアセタール樹脂により形成されている。濾過部材4hは、フィルタケース11hと同じくポリアセタール樹脂により形成されている。濾過部材4hは、上記複数の実施形態と同様、粗層5h、中間層6h、密層7hの3つの層が軸方向に積層されて構成されている。
【0081】
粗層5hは、略円環状に形成されており、流入通路31hの出口側に配置され、下方に略円環状に形成された中間層6hが配置されている。密層7hは、略円環状の密層底部71hとその密層底部71hの内周側および外周側端部からそれぞれ軸方向に延びる略円筒状の密層側壁部72hを有している。密層底部71hは、中間層6hの下方に配置され、密層側壁部72hは、中間層6hの側壁と粗層5hの側壁の一部を覆うように配置されている。
【0082】
内周側の密層側壁部72hには、内周側に向かって延びる密層突部731hが全周に渡って形成されており、外周側の密層側壁部72hには、外周側に向かって延びる密層突部732hが全周に渡って形成されている。
【0083】
ケース本体2hの内筒部27hには、内周側に向かって延びるフランジ部241hが全周に渡って形成されており、外筒部28hには、外周側に向かって延びるフランジ部242hが全周に渡って形成されている。
【0084】
キャップ3hの上記内筒部27hと当接する部分には、内周側に向かって延びるフランジ部341hが形成されており、キャップ3hの上記外筒部28hと当接する部分には、外周側に向かって延びるフランジ部342hが形成されている。
【0085】
濾過部材4hは、ケース本体2hのフランジ部241h、242h、とキャップ3hのフランジ部341h、342hとの間に密層突部731h、732hを挟み込み、フランジ部241hとフランジ部341h、およびフランジ部242hとフランジ部342hを固定することで支持される。
【0086】
フランジ部241hとフランジ部341h、およびフランジ部242hとフランジ部342hの固定は、密層突部731h、732hを挟み込んだときに形成される溝部741h、742hに溶融樹脂を流し込むことでなされる。溝部741h、742hに溶融樹脂を流し込むことで、フランジ部241h、341h、242h、342hおよび密層突部731h、732hの一部が溶け、溶融樹脂が冷えて固まることにより、ケース本体2h、キャップ3h、密層突部731h、732hの3つが強固に固定される。
【0087】
(第8実施形態)
次に、本発明の濾過器をスピンオン型フィルタのフィルタエレメントに適用した場合について説明する。図12は、スピンオン型フィルタの断面図を示している。スピンオン型フィルタ200は、ディーゼル内燃機関に燃料を供給する図示しない燃料供給管の途中に設置される。
【0088】
スピンオン型フィルタ200は、内部にフィルタエレメント(以下、単にエレメントという)4jを備えるフィルタ部1jと、内燃機関に装着され、フィルタ部1jが下部に取り付けられ、ハンドポンプ201を有するキャップ202と、フィルタ部1jの他端部に取り付けられるフロート式センサ203を有するセンサ部204とから構成されている。
【0089】
キャップ202には、燃料が流入するインレット205と、燃料が排出するアウトレット206と、インレット205から流入した燃料をフィルタ部1jに送る燃料通路207とが形成されている。インレット205と燃料通路207との間には、ハンドポンプ201によって加圧されるポンプ室208が形成されている。
【0090】
フィルタ部1jは、ケーシング209、エンドプレート210、エレメント支持プレート(請求項に記載の支持部材に相当)11j、センサ部支持プレート211およびエレメント(請求項に記載の濾過部材に相当)4jとから構成されている。
【0091】
エンドプレート210は、ケーシング209の一端部側の周縁部にかしめ固定される。エンドプレート210は、略中央に燃料通路207と連結する貫通孔212を有し、その外周側にアウトレット206と連通する貫通孔213を有している。貫通孔213は、エレメント支持プレート11jの取付孔および燃料通路として使用される。
【0092】
エレメント支持プレート11jは、エレメント4jの外径と略同径の内径を有する有底円筒状の第1プレート(請求項に記載の第1支持部材に相当)2jと、円筒状の第2プレート(請求項に記載の第2支持部材に相当)3jとを有し、エレメント4jの一部を挟み込んで支持する。
【0093】
第1プレート2jは、底部からエンドプレート210の方向に延び、貫通孔213と接続される排出通路21jと、底部から反エンドプレート210の方向に延びる側壁部の端部に径方向に延び、エレメント4jの一部を覆うフランジ部24jとを有する。第2プレート3jは、エンドプレート210側の端部に径方向に延びるフランジ部34jと、このフランジ部34jの先端に形成され、第1プレート2jのフランジ部24jと係合するかしめ部37とを有する。
【0094】
センサ部支持プレート211は、ケーシング209の他端部側の内径と略同径の外径を有する円筒状に形成されており、ケーシング209にかしめ固定されている。センサ部204は、フロート式センサ203、ドレンコック214およびコネクタ215を有し、センサ部支持プレート211に支持されている。
【0095】
次に、スピンオン型フィルタ200の作動を図12に基づいて説明する。図12に示すように図示しない燃料供給管からインレット205に流入した異物を含む燃料は、ポンプ室208および燃料通路207を経由してフィルタ部1j内に流入する。フィルタ部1jに流れ込んだ燃料は、エレメント支持プレート11jの底部外壁面に流れ込む。そして、その燃料は、底部外壁面に沿いながら径方向外側に向かって流れ、エレメント支持プレート11jの外周壁を伝った後、ケーシング209の内壁とエレメント4jの側壁との間を通過してエレメント4jに流入する。
【0096】
エレメント4jに流入した燃料は、ここで燃料に含まれる異物が除去され、第1プレート2jに形成されている排出通路21jから排出される。排出通路21jを通過した燃料は、貫通孔213およびアウトレット206を経由して、アウトレット206に接続されている図示しない燃料供給管に排出される。
【0097】
ここで、燃料に水分が含まれる場合、燃料と水との比重差によって、比重の大きい水が燃料から沈降分離されるため、分離された水がケーシング209の下方に位置する空間部216に溜められる。そして、空間部216に溜められた水の水位はセンサ部204のフロート式センサ203によって監視されており、コネクタ215から出力されるセンサ信号が図示しない電子制御ユニットに送られる。
【0098】
空間部216に溜められた水の水位が所定水位に達すると、電子制御ユニットは、ディーゼル内燃機関の運転者などにそのことを通知し、空間部216に溜まった水の排出を促す。この水は、ドレンコック214を開けた後、フィルタ部1jの上部に位置するハンドポンプ201でフィルタ部1j内を加圧することで排出される。
【0099】
次に、エレメント4jを図13に基づいて説明する。エレメント4jは、上記複数の実施形態と同様、粗層5j、中間層6j、密層7jの3つの層が軸方向に積層されて構成されている。
【0100】
粗層5jは、略円柱状に形成されており、第2プレート3jの流入通路31j側に配置され、その上方に略円柱状に形成された中間層6jが配置されている。密層7jは、略円盤状の密層底部71jとその密層底部71jの外周側からそれぞれ軸方向に延びる略円筒状の密層側壁部72jを有している。密層底部71jは、中間層6jの上方に配置され、密層側壁部72jは、中間層6jの側壁と粗層5jの側壁の一部を覆うように配置されている。密層側壁部72jには、外周側に向かって延びる密層突部73jが全周に渡って形成されている。
【0101】
エレメント4jは、次に説明するような構造でエレメント支持プレート11jに支持される。第1プレート2jのフランジ部24jに密層突部73jの上側を当接させ、第2プレート3jのフランジ部34jを密層突部73jの下側に当接させた状態で、第2プレート3jのかしめ部37を折り曲げて第1プレート2jと第2プレート3jとを固定する。
【0102】
次に、ケースとキャップとの間に密層突部を挟み込んで、ケースとキャップとを固定する場合のさまざまな固定構造を図14から図18に基づいて説明する。なお、ここで説明するケースおよびキャップは、樹脂製であっても良いし、金属製であっても良い。
【0103】
(第9実施形態)
図14に示すように、ケース320とキャップ330とは、それぞれのフランジ部324、334を貫通するボルト380と、そのボルト380に螺合されるナット381によって固定されている。なお、フランジ部324と密層突部73、およびフランジ部334と密層突部73との間にOリング77を設けても良い。
【0104】
(第10実施形態)
図15に示すように、キャップ430のフランジ部434には、このフランジ部434の外周側端部から下方に延び、ケース420のフランジ部424に係合する爪部438が形成されている。ケース420とキャップ430とは、この爪部438をケース420のフランジ部424に係合することにより固定されている。
【0105】
(第11実施形態)
図16に示すように、キャップ530のフランジ部534には、このフランジ部534の外周側端部から下方に延び、ケース520のフランジ部524が係合する係合孔539が形成されている。ケース520とキャップ530とは、この係合孔539にケース520のフランジ部524を係合させることにより固定されている。
【0106】
(第12実施形態)
図17に示すように、キャップ630のフランジ部634には、このフランジ部634の外周側端部から下方に延びるかしめ部640が形成されている。ケース620とキャップ630とは、このケース620のフランジ部624にかしめ部640を折り曲げ、係止することにより固定されている。
【0107】
(第13実施形態)
図18に示すように、キャップ730のフランジ部734には、このフランジ部734の下方側端面から下方に延びる連結棒741が形成されている。ケース720とキャップ730とは、この連結棒741をケース720のフランジ部724に形成されている貫通孔729に貫通させ、貫通孔729から突き出た部位に熱を加えながら潰すことにより固定されている。
【0108】
自動車は、世界中で使用されるものであり、その自動車が使用される国によって燃料の質(燃料に含まれる異物の量や大きさ)が異なる。また、自動車に搭載される内燃機関の種類(排気量、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジンなど)もさまざまである。このため、燃料フィルタ1は、さまざまな燃料の質や内燃機関の種類に適用できるようなものでなければならないという要望がある。第1から第12実施形態に記載の燃料フィルタおよびフィルタエレメントによれば、流体中の異物除去能力を向上することができるので、上記要望を満足させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】本発明の第1実施形態による燃料フィルタの断面図である。
【図2】本発明の第2実施形態による燃料フィルタの要部断面図である。
【図3】本発明の第3実施形態による燃料フィルタの要部断面図である。
【図4】本発明の第4実施形態による燃料フィルタの要部断面図である。
【図5】第4実施形態による燃料フィルタの他の形態を示す要部断面図である。
【図6】本発明の第5実施形態による燃料フィルタの断面図である。
【図7】図6中のVII−VII線断面図である。
【図8】第5実施形態による燃料フィルタの他の形態を示す断面図である。
【図9】本発明の第6実施形態による燃料フィルタの断面図である。
【図10】本発明の第7実施形態による燃料フィルタを適用した燃料供給装置の断面図である。
【図11】本発明の第7実施形態による燃料フィルタの要部断面図である。
【図12】本発明の第8実施形態によるフィルタエレメントを適用したスピンオン型フィルタの断面図である。
【図13】本発明の第8実施形態によるフィルタエレメントの要部断面図である。
【図14】本発明の第9実施形態による燃料フィルタの要部断面図である。
【図15】本発明の第10実施形態による燃料フィルタの要部断面図である。
【図16】本発明の第11実施形態による燃料フィルタの要部断面図である。
【図17】本発明の第12実施形態による燃料フィルタの要部断面図である。
【図18】本発明の第13実施形態による燃料フィルタの要部断面図である。
【図19】従来技術の濾過器の断面図である。
【符号の説明】
【0110】
1 燃料フィルタ(濾過器)、2 ケース(第1支持部材)、21 排出通路、22 入口部、23 出口部、24 フランジ部、3 キャップ(第2支持部材)、31 流入通路、32 入口部、33 出口部、34 フランジ部、4 濾過部材、5 粗層、6 中間層、7 密層、71 密層底部、72 密層側壁部、73 密層突部、74 溝部、75 蓋部、8 流入側空間、9 排出側空間
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を流通させる流通孔の密度が比較的低い粗部と、前記流通孔の密度が比較的高い密部とを有する濾過部材、および前記濾過部材を支持し、流入通路と排出通路とを有する支持部材を有し、
前記密部は、前記粗部を支持するとともに、前記粗部と前記排出通路との間に配置され、さらに前記支持部材から機械的な圧力を受けて支持されていることを特徴とする濾過器。
【請求項2】
前記密部は、前記粗部と前記排出通路の入口部との間に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の濾過器。
【請求項3】
前記濾過部材は、前記粗部から前記密部にかけて、前記流通孔の密度が段階的に変化していることを特徴とする請求項1または2に記載の濾過器。
【請求項4】
前記濾過部材は、前記粗部から前記密部にかけて、前記流通孔の密度が連続的に変化していることを特徴とする請求項1または2に記載の濾過器。
【請求項5】
前記密部のうち、前記支持部材から機械的な圧力を受ける部分は、最も前記流通孔の密度が高い部分であることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の濾過器。
【請求項6】
前記支持部材は、軸方向に分割される第1支持部材と第2支持部材とから構成されており、
前記密部は、前記第1支持部材と前記第2支持部材とが組み合わされるときの軸方向の機械的な圧力を受けて支持されることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の濾過器。
【請求項7】
前記密部は、前記粗部よりも外周側に突出する密部側突部を有し、
前記密部側突部は、前記第1支持部材と前記第2支持部材との間に挟まれることにより支持されることを特徴とする請求項6に記載の濾過器。
【請求項8】
前記密部は、外周側に突出する密部側突部を有し、
前記粗部は、外周側に突出する粗部側突部を有し、
前記密部側突部と前記粗部側突部は、ともに前記第1支持部材と前記第2支持部材との間に挟まれることにより支持されることを特徴とする請求項6に記載の濾過器。
【請求項9】
前記密部を挟み込む前記第1支持部材または前記第2支持部材の軸方向端部には、軸方向に延びる突起部が形成されていることを特徴とする請求項6から8のいずれか一項に記載の濾過器。
【請求項10】
前記第1支持部材、前記第2支持部材および前記濾過部材は、樹脂製であって、
前記第1支持部材と前記第2支持部材の外壁には、少なくとも前記密部側突部を挟み込むようにして前記第1支持部材と前記第2支持部材とを突き合わせた後、前記第1支持部材、前記第2支持部材、および前記密部側突部を互いに溶着させる溶融樹脂が流し込まれる溝部が形成されていることを特徴とする請求項7から9のいずれか一項に記載の濾過器。
【請求項11】
前記第1支持部材、前記第2支持部材および前記濾過部材は、樹脂製であって、
前記密部側突部、または前記密部側突部および前記粗部側突部を覆う樹脂製のカバーを有し、
前記カバーは、前記第1支持部材と前記第2支持部材との間に溶着によって接合されていることを特徴とする請求項7または8に記載の濾過器。
【請求項12】
前記密部は、前記支持部材の内壁から前記支持部材の中心軸に向かう径方向の機械的な圧力を受けて支持されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の濾過器。
【請求項13】
前記密部は、前記粗部を支持する板状の底部と、該底部から軸方向に延び、前記粗部の径方向側面を覆う側壁部を有することを特徴とする請求項1から12のいずれか一項に記載の濾過器。
【請求項14】
前記支持部材および前記濾過部材は、同一の樹脂材料で形成されていることを特徴とする請求項1から13のいずれか一項に記載の濾過器。
【請求項15】
前記濾過部材は、ポリアセタール樹脂であることを特徴とする請求項1から14のいずれか一項に記載の濾過器。
【請求項16】
請求項1から15に記載の濾過器は、自動車用燃料を濾過することを特徴とする濾過器。
【請求項1】
流体を流通させる流通孔の密度が比較的低い粗部と、前記流通孔の密度が比較的高い密部とを有する濾過部材、および前記濾過部材を支持し、流入通路と排出通路とを有する支持部材を有し、
前記密部は、前記粗部を支持するとともに、前記粗部と前記排出通路との間に配置され、さらに前記支持部材から機械的な圧力を受けて支持されていることを特徴とする濾過器。
【請求項2】
前記密部は、前記粗部と前記排出通路の入口部との間に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の濾過器。
【請求項3】
前記濾過部材は、前記粗部から前記密部にかけて、前記流通孔の密度が段階的に変化していることを特徴とする請求項1または2に記載の濾過器。
【請求項4】
前記濾過部材は、前記粗部から前記密部にかけて、前記流通孔の密度が連続的に変化していることを特徴とする請求項1または2に記載の濾過器。
【請求項5】
前記密部のうち、前記支持部材から機械的な圧力を受ける部分は、最も前記流通孔の密度が高い部分であることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の濾過器。
【請求項6】
前記支持部材は、軸方向に分割される第1支持部材と第2支持部材とから構成されており、
前記密部は、前記第1支持部材と前記第2支持部材とが組み合わされるときの軸方向の機械的な圧力を受けて支持されることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の濾過器。
【請求項7】
前記密部は、前記粗部よりも外周側に突出する密部側突部を有し、
前記密部側突部は、前記第1支持部材と前記第2支持部材との間に挟まれることにより支持されることを特徴とする請求項6に記載の濾過器。
【請求項8】
前記密部は、外周側に突出する密部側突部を有し、
前記粗部は、外周側に突出する粗部側突部を有し、
前記密部側突部と前記粗部側突部は、ともに前記第1支持部材と前記第2支持部材との間に挟まれることにより支持されることを特徴とする請求項6に記載の濾過器。
【請求項9】
前記密部を挟み込む前記第1支持部材または前記第2支持部材の軸方向端部には、軸方向に延びる突起部が形成されていることを特徴とする請求項6から8のいずれか一項に記載の濾過器。
【請求項10】
前記第1支持部材、前記第2支持部材および前記濾過部材は、樹脂製であって、
前記第1支持部材と前記第2支持部材の外壁には、少なくとも前記密部側突部を挟み込むようにして前記第1支持部材と前記第2支持部材とを突き合わせた後、前記第1支持部材、前記第2支持部材、および前記密部側突部を互いに溶着させる溶融樹脂が流し込まれる溝部が形成されていることを特徴とする請求項7から9のいずれか一項に記載の濾過器。
【請求項11】
前記第1支持部材、前記第2支持部材および前記濾過部材は、樹脂製であって、
前記密部側突部、または前記密部側突部および前記粗部側突部を覆う樹脂製のカバーを有し、
前記カバーは、前記第1支持部材と前記第2支持部材との間に溶着によって接合されていることを特徴とする請求項7または8に記載の濾過器。
【請求項12】
前記密部は、前記支持部材の内壁から前記支持部材の中心軸に向かう径方向の機械的な圧力を受けて支持されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の濾過器。
【請求項13】
前記密部は、前記粗部を支持する板状の底部と、該底部から軸方向に延び、前記粗部の径方向側面を覆う側壁部を有することを特徴とする請求項1から12のいずれか一項に記載の濾過器。
【請求項14】
前記支持部材および前記濾過部材は、同一の樹脂材料で形成されていることを特徴とする請求項1から13のいずれか一項に記載の濾過器。
【請求項15】
前記濾過部材は、ポリアセタール樹脂であることを特徴とする請求項1から14のいずれか一項に記載の濾過器。
【請求項16】
請求項1から15に記載の濾過器は、自動車用燃料を濾過することを特徴とする濾過器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2008−155097(P2008−155097A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−344954(P2006−344954)
【出願日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【出願人】(000161840)京三電機株式会社 (99)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【出願人】(000161840)京三電機株式会社 (99)
【Fターム(参考)】
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