説明

灌水用チューブ保持具

【課題】本発明は、取り付け手間を軽減でき、効率的に灌水作業が行える構成を有した灌水用チューブ保持具を提供することを目的とした。
【解決手段】本発明の灌水用チューブ保持具1は、灌水用のチューブ2を保持する保持部13と、既設の支持体4に固定可能とする本体固定部11を有している。本体固定部11は、枠部12を有し、枠部12に既設の支持体4と係合する本体係合部5が設けられ、さらに枠部12には、一部が切り離し可能で、その切り離し部分を接合可能な接合手段16を有している。そして、接合手段16を接合することで枠部12を環状にすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物栽培の灌水作業などに使用される灌水用チューブを、既設の桟等に固定する灌水用チューブ保持具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
植物栽培においては、植物栽培ハウスのような室内、又は屋外に関わらず、土壌の乾燥を防いだり、植物の生長のために灌水作業が行われる。このような灌水作業は、一般的には気温が高くなる3月頃から開始され、特に夏場7月から9月末頃の高温期に最も必要とされる。そのため、太陽が直接照りつける屋外、あるいは室内温度が40度以上になる夏場の植物栽培ハウス等での作業は、体への負担がさらに増すものである。
【0003】
そこで最近では、ポンプを利用して予め敷設したチューブなどに自動的に送水できる設備環境を整え、この灌水設備を利用して灌水作業を行う農家が増加している。
なお、チューブなどを敷設する場合は、チューブを畝同士の間の谷部に直に置いたり、支柱を打設して、その支柱にチューブの保持具を設ける方策等がある。
【0004】
特許文献1には、上記した畝同士の間の谷部に支柱を打設して、その支柱にチューブ保持部を設けた灌水用チューブ保持部が開示されている。
【特許文献1】特開平8−37959号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、灌水作業で使用されるチューブは、ポンプを利用した場合の送水の際に、水の圧力によりチューブが蛇のように動くことがある。そして、チューブに発生した圧力が支柱に伝わるため、支柱においては、土中にしっかり固定され、倒れることがないようにしなければならない。
【0006】
つまり特許文献1に記載の発明であれば、灌水用チューブを効率的に利用できる環境を構成するために、1本1本しっかりと支柱を打設しなければならない。そのため、灌水用チューブの延長距離が長い場合は、灌水作業を実行するための準備が、かなりの重労働になるという問題がある。
【0007】
また、灌水用チューブを用いて自動散水をする場合、植物の成長に応じて植物が育成しやすいように、畝全体に十分散水が行き渡るようにしなければならない。これは、支柱の高さを変えることで払拭できるが、支柱の高さを調整する場合、支柱の長さが増すほど、土中への打設長さも長くなり、さらに重労働となる懸念がある。
【0008】
そこで本発明は、上述した欠点に鑑み、取り付け手間を軽減して、効率的に灌水作業が行える環境を整えることが可能な灌水用チューブ保持具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、既設の支持体に灌水用チューブを取り付ける灌水用チューブ保持具であって、灌水用のチューブを保持する保持部と、既設の支持体に固定される本体固定部とを有し、前記本体固定部は、枠部を有し、当該枠部に既設の支持体と係合する本体係合部が設けられ、さらに前記枠部は一部が切り離し可能であって、当該切り離し部分を接合する接合手段を有し、前記接合手段を接合することによって枠部が環状に繋がることを特徴とする灌水用チューブ保持具である。
【0010】
本発明における灌水用チューブ保持具は、本体固定部に枠部が設けられ、その枠部に既設の支持体に固定するための本体係合部が設けられている。そのため、枠部を切り離し可能とする構成とし、直線状に連続した長い既設の支持体に取り付ける場合であっても、枠部を切り離すことで本体係合部が設けられた枠部内に容易に支持体を配置させることができる。
また、保持具自体は本体係合部と既設の支持体とを係合させることで固定できるので、作業手間が殆ど掛からない。要するに、ビス等の他の取り付け部材を使用する必要がなく、容易に保持具の取り付けをすることができる。また、切り離した枠部は、既設の支持体を本体係合部に係合した後に再び接合することが可能であるため、保持具と支持体の係合状態を維持させることができる。
つまり、本発明の灌水用チューブ保持具であれば、本体係合部と既設の支持体を係合することで容易に固定でき、さらに枠部の接合手段を環状にすることで支持体との係合状態を容易に維持することができる。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記枠部は、片持ち支持された揺動枠辺を持ち、本体係合部は、対向する1対の係合壁によって構成され、前記係合壁の少なくとも一方は前記揺動枠辺と一体に形成されていることを特徴とする灌水用チューブ保持具である。
【0012】
請求項2の灌水用チューブ保持具は、枠部に揺動枠辺が設けられ、その揺動枠辺に1対の係合壁のうちの一方が形成されている。そのため、既設の支持体を係合させる際の取り付け作業が容易である。要するに、揺動枠辺により本体係合部である係合壁の間隔をある程度拡げることが可能であるため、支持体の幅が係合壁同士の間隔より実質的に大きい場合であっても、支持体を本体係合部に容易に取り付けることができる。
【0013】
請求項3の発明は、請求項2の発明において、前記枠部が切り離し状態から環状に繋げると、揺動枠辺の支持端側の角度が減少することを特徴とする灌水用チューブ保持具である。
【0014】
請求項3の灌水用チューブ保持具は、枠部を環状に接合すると揺動枠辺の支持端側の角度が減少するため、枠部内部で係合された支持体が締めつけられ、支持体との固定をより強固にすることができる。つまり、支持体は揺動枠辺に設けられた一方の係合壁ともう一方の対向した係合壁とで係合されるため、支持体を係合した後、枠部を環状にすることで係合壁同士の間隔が若干狭まる。そのため、枠部を環状にした状態と、切り離した状態とで支持体との係合力を比較すると、環状にした状態の方がより強固に支持体を締め付けることができるため、予期しない外力が生じても簡単に保持具が外れるという問題は起こりえない。
【0015】
請求項4の発明は、請求項3に記載の発明において、1対の係合壁にはいずれも2以上の溝が設けられており、既設の支持体は、断面形状が「C」形であって、背面壁と背面壁に連続する2つの側壁を有し、背面壁と側壁となす角は鋭角であり、前記係合壁の溝に前記支持体の角が係合することを特徴とする灌水用チューブ保持具である。
【0016】
請求項4の灌水用チューブ保持具は、1対の係合壁のいずれにも溝が設けられており、その溝に支持体の背面壁と側壁の角が嵌り込む構成である。そのため、簡単に保持具自身を支持体に係合することができる。また、溝は2以上設けられているため、本発明の灌水用チューブ保持具であれば1つの構成で、異なる方向への取り付けが可能となる。例えば、一方の溝を利用すると北向きに取り付けができるとすると、他方の溝では南向きに取り付けができる。つまり、保持具の取り付けの制限が緩和され、より効率的に取り付け作業が行える。また、支持体が植物栽培ハウスの桟を構成するようなC形の部材であるため、植物栽培ハウスなどの限られた範囲でも、必要最小限の場所に取り付けることができる。要するに、植物の栽培に邪魔にならないため、栽培可能面積を縮減することなく灌水装置を設けることが可能となる。
【0017】
請求項5の発明は、請求項2乃至4のいずれかの発明において、前記接合手段は揺動枠辺に設けられたフックであり、当該フックは揺動枠辺が接合される他の枠辺の内側に係合することを特徴とする灌水用チューブ保持具である。
【0018】
請求項5の灌水用チューブ保持具は、接合手段が枠部の内側から外側に向けて接合する構成であるため、枠部を接合した後、予期せぬ外力により容易に枠部が切り離し状態となる問題は生じない。
【0019】
請求項6の発明は、請求項1乃至5のいずれかの発明において、前記保持部は、灌水用チューブが保持される曲面保持部と、灌水用チューブの一部が挟み込まれる狭持部とを有し、前記灌水用チューブは、少なくとも一方に保持されていることを特徴とする灌水用チューブ保持具である。
【0020】
請求項6の灌水用チューブ保持具は、灌水用チューブを保持する保持部に曲面保持部と狭持部を有しており、灌水用チューブは少なくともどちらか一方に保持される。そのため、灌水用チューブは確実に保持され、保持部から地面等に落下する問題はない。要するに、送水あるいは散水する際に、チューブ内部に水圧が掛かるが、そのような力によってチューブが保持具から離反あるいは落下することはない。
【発明の効果】
【0021】
本発明の灌水用チューブ保持具は、植物栽培ハウス等を構成する桟や柱等の既設の支持体に対して、保持具本体の本体嵌合部を嵌合させることにより、容易に保持具本体を所望の位置に固定できるため、少ない作業手間をもって効率的に灌水作業環境を作ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
次に本発明の実施形態である灌水用チューブ保持具1(以下、保持具1とも言う)について図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態である灌水用チューブ保持具1を用いた灌水作業の状況を示す概略図であり、図2は、図1に示す灌水用チューブ保持具1の拡大斜視図である。
まず、本実施形態で採用された支持体4及び灌水用チューブ2について説明する。
【0023】
灌水作業とは、図1に示すように、屋外や植物栽培ハウスなどにおいて、畝などの土壌の乾燥防止や、植物の生育のために行われる散水などで、水を供給する作業のことである。
【0024】
本実施形態の保持具1は、植物栽培ハウス等の既存の施設に支持体4を固定して、それを利用して設置できるものであり、その保持具1に容易に灌水用チューブ2(以下、チューブ2とも言う)を敷設して灌水作業を行うことができる。なお、本実施形態で用いられた支持体4は、ステンレス等の金属で製品化された「ビニペット」(東都興業株式会社製)が採用されている。この支持体4は、図2に示すように、外観が「C」形である。つまり支持体4は、背面壁51の両端側を一方向に曲げた側壁52,52を有する構成で、背面壁51と側面壁52は、鋭角を成し、本実施形態が言うところの支持体係合部22が形成されている。また、各側面壁52の端部には略環状に曲げられた環状部が形成されている。
なお本実施形態で採用する支持体4は、植物栽培ハウスを構成する既設の柱を利用して固定する構成であり、支持体4は各柱にビスや釘(図示しない)などを用いて固定する。なお、本発明はこの固定方法に限られるわけではない。要するに、支持体4が容易に固定できればよい。
【0025】
また、本実施形態で採用されている灌水用チューブ2は、「ミストエースS54あるいはミストエースS72」(住化農業資材株式会社製)である。このチューブ2は、図7(a),(b)に示すように、散水孔54が設けられ、送水時と非送水時で形状を変化させる。詳細には、送水時には、図7(a)のように水圧により断面積が略円状となり、非送水時は、図7(b)のようにチューブ2の内部に大気圧を押しのける圧力を生じなくなるため、略平面状に半分に折りたたまれた形状となる。
【0026】
また、このチューブ2は、図7(a)に示すように外径上で、円の中心を基準に対向する位置に突起部31,31が形成されている。さらに、この突起部31は、チューブ2の長手方向、いわゆるチューブ2の長さ方向に連続して設けられている。そして、この突起部31,31は、後述する保持部13に形成された狭持部19,20に挟まれチューブ2が保持されるものである。
【0027】
次に灌水用チューブ保持具1の各部位の構造について説明する。
灌水用チューブ保持具1は、プラスチック等の合成樹脂により構成されており、図2、図3,図4の様に本体固定部11と灌水用チューブ2を保持する保持部13とで構成されている。そして、本体固定部11が既設の支持体4に固定され、保持部13には灌水用チューブ2が敷設されるものである。
【0028】
本実施形態の灌水用チューブ保持具1は、図2に示すように、本体保持部11が枠部12と張出部14とで構成されており、張出部14の長さにより2種類のタイプに分けられている。要するに、本実施形態では、張出部14の長さが短いタイプAと、張出部14の長さが長いタイプBの2つのタイプが採用されている。言い換えると、張出部14の長さは、タイプAよりもタイプBの方が長い。なお、タイプA及びタイプBは、双方とも略同じ構成であるため、主にタイプAについて説明することとする。
図3は、図2に示すタイプAの灌水用チューブ保持具を示す側面図である。
【0029】
まず張出部14について説明すると、図3に示すように、外観は長方形の棒形状と曲線状を組み合わせた構成であり、張出部14の側面d,e(図2)は、軽量化を目的として、形あるいは大きさの異なる複数の貫通しない長方形状の孔及び一部曲線状を有する孔が形成されている。つまり側面dと側面eに挟まれた略中央には、仕切板41が設けられており、側面d側と側面e側に形成された前記した孔は仕切板41に対して対称な構造である。
また、側面d,e及び仕切板41を繋ぐ上面fには、2個の補助突起53が設けられている。補助突起53は、側面視した形状が直角三角形である。そして補助突起53同士は、結束バンド等が掛けられる掛架部55を形成している。その掛架部55は、補助突起53の90度の角度を有する一辺を向かい合わせて、一定長さの間隔を空けることで形成されるものである。
【0030】
また張出部14の一端部側には保持部13が設けられ、他端部側には枠部12が設けられており、両者は張出部14を挟んで対向するように配置されている。さらに前記両者は、張出部14が有する一定の長さにより、間隔を空けて配置されている。
また、張出部14は、保持部13側に張出枝部37,38が設けられており、さらに張出枝部37は中途が分岐されて補強部36が形成された構成である。なお補強部36により、チューブ2やその他の外力から伝わる力が分散されるため、張出部14の局部が外力による疲労で破損することを防止できる。
【0031】
また枠部12は、図3に示すように、張出部14を一辺に持ち、係合面24と係接合面25と接合面26により構成され、枠部12の内部は支持体4を上下左右に動かせるほどの空間が設けられている。
この枠部12は、上部に張出部14が位置し、その張出部14の一端部から略垂直に下方に延びた位置に係合面24が配されている。この係合面24には、枠部12の内部方向に突出した係合壁17が設けられている。この係合壁17は、係合面24に対して略垂直に突出しており、側面視した形状は2個の波を組み合わせた波形状である。つまり、係合壁17の下部側に2つの溝42,43が形成されている。
【0032】
また、この係合面24の下方に位置する端部から連続、且つ係合面24に対して略直角あるいは鈍角を有する角度に曲げられた係接合面25が設けられている。要するに、係接合面25は、係合面24の端部に片持ち支持された揺動枠辺である。また係接合面25の支持端側と反対の端部にフック状の凸接合部21(接合手段16)が形成されている。この凸係合部21は、係接合面25の一端部を下方に曲げた形状であるため、枠部12の内側から外側に向けて係合できる構成である。
また係接合面25には、前記した係合壁17と同様の溝44,45が形成された係合部15(係合壁)が設けられており、係合壁17と対向する位置に配されている。言い換えれば、係合部15は係接合面25の支持端側に形成されている。要するに、係合壁17と係合部15に形成された2個ずつの溝は、互いに向かい合った一対の構成で、支持体4が係合される程度の間隔が設けられている。
【0033】
また、張出部14の中途には係合面24と略平行に下方に延びた接合面26が設けられており、その接合面26の下方に位置する端部には凸接合部21が接合可能な凹接合部23(接合手段16)が形成されている。この凹接合部23は、接合面26の一端部を溝を有するように曲げた形状であり、その溝は上方を向くように形成されている。つまり、枠部12は切り離し可能であり、係接合面25を上下に揺動させて凸接合部21を凹接合部23に接合できる構成である。さらに、揺動枠辺たる係接合面25は、接合した状態では凸接合部21と反対の支持端側の角度が90度よりも小さくなる。つまり、枠部12の接合状態では、切り離した状態と比べると、係接合面25と係合面24が形成する角度は小さくなる。
【0034】
つまり、枠部12を上記構成とすることで、時間を掛けずに、支持体4に保持具1をしっかり固定できる。要するに、本体係合部5には、支持体4を係合させることで保持具1を固定できるため、ビスなどの取り付け部材を必要としない。また枠部12には、凸接合部21及び凹接合部23が設けられ、切り離し可能な構成であるため、支持体4の長さに関わらず、容易に支持体4を枠部12の内部に配置させることができる。さらに、揺動枠辺たる係接合面25は上下に揺動可能であり、接合することで支持端側の角度が減少するため、より確実且つ強固に支持体4に保持具1を固定できる。
【0035】
保持部13は、図3に示すように、互いに対向する配置の狭持部19,19及び20,20とそれら狭持部19,20よりも下部に上向きに凹形状である曲面保持部18を有する構成である。
【0036】
狭持部19,20は、図2に示すように、灌水用チューブ2を保持したときのチューブ2の長さ方向に平行に形成された細長い空間である。詳しくは、狭持部19,20は、1つの垂直部32に対して3つの水平部33,34,35によって構成されている。要するに、水平部33,34,35が高さ方向に間隔を空けながら層状に配されることで形成される空間が狭持部19,20である。そして、それらの水平部33,34,35の外側端部を垂直部32に接合する構成とすることで、それぞれの前記間隔が維持される構成となる。
【0037】
なお、水平部33は、図3に示すように、側面視した形状が三角形と長方形を組み合わせた形状である。つまり、水平部33の上部側の中途から垂直部32と反対方向に角が切り落とされており、先端に向かうほど水平部33の厚みが薄くされた尖形状である。これにより、チューブ2の外径が水平部33同士の間隔よりも大きい場合でも、チューブ2の一部が水平部33同士に挟まれてチューブ2を保持することができる。
また、灌水用チューブ2に設けられた突起部31が狭持部19又は20に保持され、送水時あるいは非送水時のどちらの状況においても、チューブ2を保持具1に安定して配置させることができる。
【0038】
また、狭持部20を構成する水平部35は、対向する他方の狭持部20を構成する水平部35と連続した構成である。そして、この連続した部位が曲面保持部18であり、図3に示すように、チューブ2を配置したときのチューブ2の円弧と同方向(高さ方向下方)に凸状にチューブ2より大きいあるいは同程度の円弧が形成されている。言い換えると、上向きに凹状の円弧が形成されている。つまり、この構成により、本実施形態で採用した外径部に突起部31を設けたチューブ2以外のもの(突起部31がなく一般的に使用されているチューブ等)であっても保持されるため、チューブを保持具1に安定して配置させることができる。
【0039】
上記したように保持部13は、張出部14に接合されている。詳しくは、張出枝部37,38及び補強部36が接合されており、さらに側面d,eに挟まれた略中央の仕切板41によって保持部13を下方から支持している。さらに詳しくは、狭持部20を構成する水平部35は仕切板41及び張出枝部37,38に接合され、曲面保持部18は張出枝部37から分岐した補強部36及び仕切板41に接合されている。
【0040】
次にタイプBについてタイプAと比較して説明する。
図4は、図2に示すタイプBの灌水用チューブ保持具を示す側面図である。タイプBの保持具1は、張出部14の長さがタイプAの長さよりも長い。また、タイプAとタイプBの枠部12の係合部15及び係合壁17と、接合手段16は、係合面24を軸にして略鏡像の関係である。つまりタイプBの枠部12は、図4に示すように、接合面26が張出部14の端部から下方に延びており、係合面24が張出部14の中途で接合面26に略平行に下方に延びており、係接合面25が係合面24の下端部から連続して張出部14に略平行に延びた構成とされている。要するに、係接合面25は、係合面24の下端部に片持ち支持された揺動枠辺である。
【0041】
この枠部12の鏡像の関係により、図2に示すように、それぞれのタイプを互いに対向する方向に配置させることができる。そのため、1本の支持体4を用いて、異なる場所への灌水作業が可能となる。
【0042】
つまり、タイプBの保持具1においても、タイプAと同様に支持体4を係合部15,係合壁17で係合し、接合手段16を接合することで保持具1自体が容易に外れないようにしっかりと固定することができる。
【0043】
図1に示すように、植物栽培ハウス内における灌水用チューブ保持具1は、植物栽培ハウスを構成する柱に固定された支持体4に係合させることで支持される。詳細には、図2に示すように、保持具1の枠部12における本体係合部5である係合部15及び係合壁17によって支持体4に固定されている。このとき、支持体4の支持体係合部22と係合している。そして、枠部12に設けられた接合手段16が接合状態を維持することで、枠部12が環状を維持して本体係合部5の係合力が強化される配置である。
【0044】
そして、枠部12の高さ方向上部には張出部14が設けられており、保持部13に繋がっている。つまり、保持部13は、張出部14の長さの分だけ支持体4から離れた位置に配されている。また、保持部13は、張出部14の端部である張出枝部37,38及び補強部36に下方から支持された配置である。
また、保持部13には灌水用チューブ2が置かれ、チューブ2の曲面の一部が曲面保持部18に保持され、チューブ2の突起部31が狭持部19あるいは20に保持される。
【0045】
本実施形態では、保持具1の既設の支持体4への固定作業には、ビスなどの取り付け部材を必要としない。そのため、時間を掛けずに容易に固定可能であるので作業効率が高い。また、柱に固定する支持体4の高さの配置を調整するだけで、植物に最適な高さに変更することができるため、植物の成長に応じて容易に保持具1の高さを調整することができる。
【0046】
また、保持具1におけるタイプAとタイプBは、互いに鏡像の関係であるので、図1のように、連棟式の植物栽培ハウス等の場合、その施設を構成する谷部の柱に固定された支持体4に異なるあるいは同じタイプの保持具1を交互に配置させることで、1本の支持体4により2方向の畝に散水などを行うことができる。
【0047】
次に灌水用チューブ保持具1を既設の支持体4に取り付ける方法について、図面を用いて説明する。
【0048】
まず、図5(a)に示すように、枠部12に設けられた接合手段16を切り離した状態にする。つまり、凸接合部21を凹接合部23の溝から上方に持ち上げて凸接合部21が凹接合部23に接合しないように下方へ下ろす。
そして、枠部12の切り離したところから支持体4を枠部12の内部に位置するように、保持具1を支持体4の上部から移動させる。
【0049】
すると、図5(b)に示すように、本体係合部5に支持体4を係合させることができる。このとき、保持部13側を上方あるいは下方に傾けることで、支持体4の支持体係合部22を係合壁17と係合部15の間に容易に配置させることができる。
そして、その状態から図5(c)に示すように、保持部13の傾きを水平に戻すことで、支持体係合部22が本体係合部5に完全に嵌り込む。このとき、「カチッ」という音がするので、取り付け時の確認は容易である。なお、目視のみでも支持体4と本体係合部5との係合状態の確認は容易である。
【0050】
そして次に、切り離した本体係合部5を再び接合する。要するに、揺動枠辺たる係接合面25の凸接合部21側を上方に移動させて、図3に示すように凹接合部23の溝に係合させる。このとき、係接合面25の凸接合部21側が支持端側より若干上部に位置するため、本体係合部5の締まりが強くなる。これにより、本体固定部11と支持体4との固定力がより強固になり、外れにくくなる。即ち係接合面25は片持ち支持状であり、係接合面25の凸接合部21側を凹接合部23の溝に係合させ、全体として四角形の枠部12を構成させることにより、揺動枠辺の支持端側の角度が減少し、本体係合部5同士が近接する。そのため本体係合部5によって支持体4が締めつけられる。
【0051】
なお、本発明の灌水用チューブ保持具1は、耐久性に優れるものであるが、長期間の使用により接合手段16が破損する状況が考えられる。その場合、支持体4を締め付けるために、揺動枠辺の角度を減少させてその状態を維持させることが不可能になる。しかし、本発明の保持具1は、このような状況にも適応できる構成となっている。即ち、図6に示すように、上記した補助突起53により形成された掛架部55と揺動枠辺たる係接合面25に「インシュロック」(ヘラマンタイトン株式会社製)等の結束バンドを掛架することで支持体4を締め付ける効果を得ることができる。
【0052】
したがって、上記したように保持具1の本体固定部11に枠部12を設け、枠部12に本体係合部5及び接合手段16を設ける構成とすることで、効率的な取り付け作業を行うことができる。
つまり、接合手段16を切り離し可能として既設の支持体4を枠部12の内部に配置させやすくすることで、支持体4の長さに関わらず、欲しい箇所にピンポイントに配置させることが可能となる。さらに接合手段16は、接合時に揺動枠辺の凸接合部21側が支持端側より若干上方に持ち上がるため、本体係合部5の固定力を強化することができる。
また、その本体係合部5は、1対の向かい合った係合壁17と係合部15によって構成されており、それぞれの向かい合った面には支持体4を係合する溝が形成されている。そのため、保持具1は確実に支持体4と係合することができる。つまり本実施形態の保持具1は、ビスなどの取り付け部材を必要とせず、容易に既設の支持体4に固定することができる。また、支持体4は植物栽培ハウスなどの既設の柱などにビスなどで簡単に固定できる構成であるため、植物の成長に応じて容易に高さの調整をすることができる。
【0053】
本実施形態の保持具1では、支持体4として「ビニペット」(東都興業株式会社製)を採用した構成を示したが、本発明はこれに限定されるわけではない。要するに、他社製品であっても、上記した実施形態の本体嵌合部15,17に嵌合可能な構成であれば構わない。
【0054】
本実施形態の保持具1では、保持するチューブ2を「ミストエース20」(住化農業資材株式会社製)を採用した構成を示したが、本発明はこれに限定されるわけではない。
例えば、灌水作業において、一般的に使用されている突起部31が設けられていないチューブであっても構わない。つまり、上述した実施形態の保持具1は、狭持部19,20と曲面保持部18が設けられており、少なくともどちらか一方と保持されていれば、安定した灌水作業が行える構成だからである。
【0055】
本実施形態の保持具1は、狭持部19,20を高さ方向に2カ所設ける構成を示したが、本発明はこれに限定されるわけではない。
例えば、狭持部は1カ所あるいは3カ所以上であっても構わない。
【0056】
本実施形態の保持具1は、接合手段16が凹凸形状の構成を示したが、本発明はこれに限定されるわけではない。
例えば、一方の面にスリットを設け、他方の面の端部を差し込むことで係合させる構成であっても構わない。要するに、枠部12が開閉可能で、係合手段16は高さ方向上方に解放可能で、下方向きに係合される構成であれば上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0057】
本実施形態の保持具1は、係合面24に略垂直な係合壁17を設けた構成を示したが、本発明はこれに限定されるわけではない。
例えば、係合壁17は、張出部14が兼ねる構成であっても構わない。要するに、支持体4が本体係合部5に挟まれて係合される構成であれば、取り付け手間が掛からず、保持具1は容易に固定することができる。
【0058】
本実施形態の保持具1は、タイプAとタイプBは、枠部12が係合面24を軸に鏡像の関係を示したが、本発明はこれに限定されるわけではない。
例えば、タイプAとタイプBは鏡像の関係ではなく、張出部14の長さだけが異なる構成であっても構わない。
【0059】
本実施形態の保持具1は、本体係合部5に形成された溝の形状が波形状の構成を示したが、本発明はこれに限定されるわけではない。
例えば、側面視した形状が矩形状の凹凸であっても構わない。要するに、支持体4に嵌合できればよい。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】連棟式の植物栽培ハウスに灌水用チューブ保持具を取り付けた状況を示す概略図である。
【図2】灌水用チューブ保持具を示す斜視図である。
【図3】図2に示すタイプAの灌水用チューブ保持具を示す側面図である。
【図4】図2に示すタイプBの灌水用チューブ保持具を示す側面図である。
【図5】タイプAの灌水用チューブ保持具の係合部を解放した状況を示す側面図で、(a)灌水用チューブ保持具の枠部を開いた状況,(b)灌水用チューブを傾けて枠部に支持体の一部を係合させた状況,(c)枠部に支持体を係合させた状況である。
【図6】接合手段が破損した場合の対処手段を示す灌水用チューブ保持具の側面図である。
【図7】(a)灌水用チューブの送水時を示す断面図で、(b)灌水用チューブの非送水時を示す断面図である。
【符号の説明】
【0061】
1 灌水用チューブ保持具(保持具)
2 灌水用チューブ(チューブ)
4 支持体
5 本体係合部
11 本体固定部
12 枠部
13 保持部
15 係合部
16 接合手段
17 係合壁
18 曲面保持部
19,20 狭持部
22 支持体係合部
25 係接合面(揺動枠辺)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設の支持体に灌水用チューブを取り付ける灌水用チューブ保持具であって、
灌水用のチューブを保持する保持部と、既設の支持体に固定される本体固定部とを有し、
前記本体固定部は、枠部を有し、当該枠部に既設の支持体と係合する本体係合部が設けられ、
さらに前記枠部は一部が切り離し可能であって、当該切り離し部分を接合する接合手段を有し、前記接合手段を接合することによって枠部が環状に繋がることを特徴とする灌水用チューブ保持具。
【請求項2】
前記枠部は、片持ち支持された揺動枠辺を持ち、
本体係合部は、対向する1対の係合壁によって構成され、
前記係合壁の少なくとも一方は前記揺動枠辺と一体に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の灌水用チューブ保持具。
【請求項3】
前記枠部が切り離し状態から環状に繋げると、揺動枠辺の支持端側の角度が減少することを特徴とする請求項2に記載の灌水用チューブ保持具。
【請求項4】
1対の係合壁にはいずれも2以上の溝が設けられており、
既設の支持体は、断面形状が「C」形であって、背面壁と背面壁に連続する2つの側壁を有し、背面壁と側壁となす角は鋭角であり、
前記係合壁の溝に前記支持体の角が係合することを特徴とする請求項2又は3に記載の灌水用チューブ保持具。
【請求項5】
前記接合手段は揺動枠辺に設けられたフックであり、当該フックは揺動枠辺が接合される他の枠辺の内側に係合することを特徴とする請求項2乃至4のいずれかに記載の灌水用チューブ保持具。
【請求項6】
前記保持部は、灌水用チューブが保持される曲面保持部と、灌水用チューブの一部が挟み込まれる狭持部とを有し、
前記灌水用チューブは、少なくともどちらか一方に保持されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の灌水用チューブ保持具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−51193(P2010−51193A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−217146(P2008−217146)
【出願日】平成20年8月26日(2008.8.26)
【出願人】(596005964)住化農業資材株式会社 (29)
【Fターム(参考)】