説明

灯具

【課題】 LEDを光源とする灯具の発光面を三次元面に構成するとともに均一な明るさで広い面積での発光を可能にした灯具を提供する。
【解決手段】 ランプハウジング1内に設けたLED素子332と、これに対向配置されてLED素子332から出射した光を正面方向に向けて反射するメインリフレクタ31と、これらの間に介在されLED素子332から出射した光をメインリフレクタ31に向けて反射するサブリフレクタ34と、LED素子332を搭載した平坦部331aを段差部331bを介して連結して水平方向に延出した回路基板331と、LED素子332と回路基板331を覆い隠すセンター部34とを備える。回路基板331を階段状に形成するのでメインリフレクタ31の湾曲形状に沿ってLED素子332を配設でき、発光面を三次元面に構成できるとともに、水平方向に広い範囲にわたって均一な発光の灯具が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はLED(発光ダイオード)素子を光源とする灯具に関し、特に発光面積が広く、かつ発光面形状に自由度が得られる灯具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の自動車の灯具としてLED素子を光源としたものが提案されている。LED素子は白熱光源に比較すると消費電力を低くすることができる点では有利であるが、光の出射角度が小さいため自動車の灯具として用いる場合には灯具の発光面積が大きくなるように構成する必要がある。例えば、特許文献1の灯具では、LED素子から出射した光を順序的に反射させるための第1、第2の2つの反射面を有するほぼ円形をしたリフレクタを備えており、第1の反射面で反射した光を平行光束にして光軸と垂直な円周方向に向けて反射し、この反射した光を第2の反射面で出射光軸と反対側に向けて反射させて灯具の正面方向に向けて出射している。このように、第1の反射面で円周方向に反射させることで、最終的に第2の反射面から反射する面積を拡大し、灯具としての発光面積を拡大することを可能にしている。
【0003】
また、特許文献2の灯具では、平面に近い形状をした反射面を有するリフレクタを正面方向に向けて若干下方に傾斜して配置するとともに、この反射面の直下位置にLED素子を配置し、LED素子から出射した光をフレネルレンズにより平行光束としてリフレクタの反射面に投射させ、リフレクタで反射した光を灯具の正面方向に向けて出射する構成としている。この構成では、LED素子から出射した光は反射面のほぼ全面に投射させることができるので、この反射面の面積に対応した広い発光面積の灯具として構成できる。
【特許文献1】特開2001−297609号公報
【特許文献2】特開2003−59313号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、特許文献1,2の技術ではLED素子から出射した光を単純に灯具から出射する場合に比較して発光面積を増大する上では有利である。しかし、特許文献1の灯具は第1の反射面をほぼ円錐型にして平行光束の状態で円周方向に反射させる構成としているため、灯具の配光パターンは円形に近い配光パターンとなり、中心に近い領域を発光面とすることが難しい。そのため、特許文献1では中心領域を照明するための別のLED素子や第1及び第2の反射面が必要であり、構造が複雑化することになる。また、この特許文献1の灯具では、灯具としての発光面は第2の反射面が存在する領域、すなわち第1の反射面で反射した光束が存在する光軸に垂直な平面(二次元面)に限定されるため、例えば、自動車の灯具のように左右方向の配光範囲を上下方向の配光範囲よりも広い配光パターンで、しかも発光面を上下左右方向に湾曲させた三次元面とすることが要求される灯具では特許文献1の技術をそのまま適用することは難しい。
【0005】
一方、特許文献2の灯具では、LED素子から出射した光をフレネルレンズにおいて平行光束にしているが、この平行光束に対して傾斜させた反射面を灯具の発光面として構成しているので、LED素子に近い部分と遠い部分との光路長の差がそのまま反射面での明るさの違いになって表れ、発光面における均一な明るさが得られ難いとともに、リフレクタは平面形状に近い反射面を有しているので、灯具の発光面は二次元面に近い面に制約されることになり、前述したように自動車の灯具として三次元的に湾曲させた発光面が要求される灯具に適用することは難しい。
【0006】
本発明の目的は、発光面積を広くするとともに、発光面を三次元面に構成することを可能にした灯具を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、灯具ハウジング内に設けた複数のLEDと、複数のLEDに対向配置され各LEDから出射した光を灯具の正面方向に向けて反射するメインリフレクタと、LEDとメインリフレクタの間に介在され、LEDから出射した光をメインリフレクタに向けて拡散して反射するサブリフレクタと、少なくとも1つの段差部を介して連結されLEDがそれぞれ少なくとも1つ搭載される複数の平坦部を有する長く延出した基板と、基板及びLEDを灯具の正面側に露見させないように覆い隠す意匠部とを備え、当該意匠部は基板が延びる方向に長く延出した形状を成すことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、LEDから出射した光をサブリフレクタで拡散して反射した上でメインリフレクタにより反射して灯具の正面方向に出射させるので、メインリフレクタでの実質的な反射面積を大きくし、発光面積が広い灯具が構成できる。また、LEDを搭載する基板は複数の平坦部を段差部を介して連結して長く延出しているので、この延出方向に配光面積を拡大するとともに、発光面を三次元面に構成でき、発光面が湾曲した灯具への適用も可能になる。さらに、意匠部は基板とLEDを正面側から露見されないように覆い隠し、かつ同時にメインリフレクタの反射面とならない領域も覆い隠すので灯具の外観上の見栄えが低下することもない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明における好ましい形態として、サブリフレクタはLEDから出射した光を意匠部の延出方向と垂直な方向に広く拡散して反射するように構成され、メインリフレクタは灯具ハウジングの正面カバーの湾曲形状に沿って階段状に配置された複数の単位反射面で構成する。意匠部の延出方向、すなわち基板及びLEDの延出方向と垂直な方向の配光領域を拡大するとともに、正面カバーの形状が大きく湾曲した、いわゆる回り込みが大きい灯具でも、メインリフレクタの反射面を回り込み領域にまで配設し、回り込み領域を含む広い面積での均一な発光が可能になる。
【0010】
本発明における他の形態として、意匠部は正面に反射面を備え、メインリフレクタは反射した光の一部を意匠部の正面に向けて反射する反射ステップを備える。メインリフレクタで反射した光の一部は意匠部の正面において反射されるので、メインリフレクタと意匠部が共に発光面となる灯具が得られ、暗部が生じることがない広い面積での発光が可能になる。
【0011】
本発明におけるさらに他の形態として、基板は意匠部に支持され、サブリフレクタは基板又は意匠部に支持され、意匠部は長く延出したその端部においてメインリフレクタとの位置決めがなされるよう灯具の固定部に支持される。灯具の固定部はメインリフレクタに対して意匠部を固定的に支持するものであれば、メインリフレクタに限られるものではなく、灯具ボディあるいはメインリフレクタと一体に形成される疑似リフレクタ(エクステンション)であってもよい。基板とサブリフレクタは直接又は間接的に意匠部に支持され、意匠部はメインリフレクタに対して位置決めされた状態で支持されるので、基板に搭載したLED及びサブリフレクタはメインリフレクタに対して位置決めされることになり、設計通りの配光パターンの灯具が得られる。
【実施例1】
【0012】
次に、本発明の実施例1を説明する。図1は本発明を自動車の右側テールランプに適用した実施例1の正面図、図2は図1のII−II線垂直断面図、図3は図1のIII −III 線水平断面図である。これらの図において、自動車の車体後部右側に装備可能で前面(正面)を開口した容器状をしたランプボディ11と、このランプボディ11の正面開口に取着された透明な正面カバー12とでランプハウジング1が構成されている。この正面カバー12は自動車の車体形状の一部を構成するように、車体の膨らみに合わせて正面ないし左右方向に向けて凸状に湾曲した形状とされている。実施例1のテールランプはテールランプ機能とストップランプ機能を有する複合型ランプとして構成されており、そのため前記ランプハウジング1内には、夜間走行時に点灯させるテールランプとして構成されている第1の発光ユニットである導光板発光ユニット2と、ブレーキ操作したときに点灯させるストップランプとして構成されている第2の発光ユニットであるリフレクタ発光ユニット3が一体的に組み込まれている。本発明の灯具はこのリフレクタ発光ユニット3として構成している。なお、左側テールランプについてはここでは図示並びに説明は省略しているが、右側テールランプとは左右に対称な構成となっているので、以下の説明において左と右を読み代えればよい。
【0013】
図4は前記導光板発光ユニット2とリフレクタ発光ユニット3の概略構成を示すための実施例1のテールランプの部分分解斜視図である。導光板発光ユニット2は、ここではテールランプの正面方向、すなわち自動車の後方から見て、ランプハウジング1内の左下領域から右上領域にわたって徐々に幅寸法が低減されるとともに、板厚方向には徐々に後方に反るように湾曲した板状の導光板21と、この導光板21の下端面の下側に配設され、当該下端面に対峙して配置された第1の光源としての複数個のLED素子を含むLED素子構体22とで構成されている。また、同図において、本発明にかかるリフレクタ発光ユニット3は、導光板発光ユニット2の背後に配置されて正面カバー12のほぼ全面に近い領域にわたって延設されたメインリフレクタ31と、このメインリフレクタ31の正面側の位置において水平方向に架設した意匠部としてのステム状のセンター部32を備えている。このセンター部32の内側には、同図には図示されていないが、後述するように第2の光源としてセンター部32の長さ方向に沿って配列された複数個のLED素子332を含むLED素子構体33と、このLED素子構体33に対向するようにメインリフレクタ31との間に配設されたサブリフレクタ34とを備えている。
【0014】
図5は導光板発光ユニット2の一部の拡大斜視図、図6(a),(b)は導光板発光ユニット2の概念構成を示す正面図と側面図である。導光板21は光を透過する透明樹脂をほぼ均一な板厚に加工したものであり、正面から見ると左下領域から右上領域に向けて幅寸法が徐々に低減されながら緩やかな右カーブを描きながら湾曲した形状とされ、しかも板厚方向には灯具の後方に向けて正面カバーの湾曲した内面に沿って緩やかな曲率で反るように湾曲した形状とされている。この導光板21の正面は光を出射する光出射面21oとして構成されているが、導光板21のこのような湾曲構造によって当該光出射面21oは三次元方向に湾曲された形状となっている。前記導光板21の背面には導光された光を反射するための多数の微小反射素子211が配設されている。この微小反射素子211は導光板21の背面のほぼ全領域にわたって配設した円錐型あるいは角錘型の微小な凹部、いわゆる点刻で構成されている。また、導光板21の左下領域の端面は光入射面21iとして構成されており、この光入射面21iには光を透過する部材からなる細長いステップ板23が近接配置され、さらにこのステップ板23の下側にはステップ板に沿って複数個の赤色発光のLED素子222が配列され、前記ステップ板23を挟んで前記光入射面21uに対峙されている。これらのLED素子222は細長い回路基板221に所要の間隔で一列に搭載されており、さらに支持基板223に支持されて前記LED素子構体22として構成されている。これらのLED素子222はチップあるいはディスクリートのいずれのLED素子でも良いが、各LED素子222の光の出射光軸Oxは鉛直上方に向けられている。すなわち、前記光入射面21iに対して垂直に向けられている。
【0015】
前記ステップ板23は透明な樹脂により細長い板片状に形成されており、その長さ方向の両端において前記LED素子構体22の支持基板223に一体的支持されている。前記ステップ板23の下面は各LED素子222からの光が導光板21の光入射面21iに入射する際にその入射方向を変化させるための光を屈折する光学ステップ231として構成されている。ここでは、光学ステップ231は各LED素子222に対応して区画形成され、各LED素子222から出射される光の光軸Oxに対してそれぞれ光入射面が異なる角度に傾斜した楔状ステップで形成している。なお、この実施例1では、ステップ板23の厚みを低減させるために各光学ステップ231をフレネルレンズ化しており、そのため各LED素子222に対してそれぞれ複数個(ここでは3つ)の楔状ステップ231aで形成している。これにより、前記ステップ板23は傾斜が同じあるいは異なる複数の楔状ステップ231aを配列した鋸歯形状に形成されている。
【0016】
すなわち、各LED素子222に対応する各光学ステップ231はそれぞれの光入射面の角度は後述するように各LED素子から出射した光がそれぞれ光学ステップ231により屈折されたときに導光板の三次元方向に湾曲した方向、例えば、正面から見たときには図6(a)に示すように、導光板21の右上領域に向けられるようにする。ここでは、正面から見て左側のLED素子から出射した光の右方向への屈折角は、右側のLED素子から出射した光の右方向への屈折角よりも大きくなるように、各光学ステップ231の光入射面の傾斜角が右から左に向けて段階的に大きくなるような鋸歯状に形成している。なお、図6(a)は光学ステップ231の屈折角を説明するために各LED素子222に対して単一の光学ステップ231で構成した場合の概念図であり、実際には光学ステップ231は図5に示したように1つのLED素子22に対して3つの楔状ステップ231aからなるフレネルステップで構成している。
【0017】
また、導光板21は板厚方向に湾曲しているので、各光学ステップ231の板厚方向の断面形状は、図6(b)に示すように、各LED素子222から出射された光が導光板21の板厚方向の湾曲に沿って後部上方に向けられるように、光入射面が正面側に向けて傾斜した片屋根状の断面形状に形成されている。ここでは、この正面側に向けられた光入射面の傾斜角は全ての光学ステップ231においてほぼ同じ角度となっている。
【0018】
この導光板発光ユニット2では、各LED素子222から出射された光は垂直上方に向けてステップ板23に入射されるが、ステップ板23の各光学ステップに入射された光はそれぞれ光学ステップ231により屈折されて導光板21の光入射面21iから導光板21の内に入射され、導光板21内を上方に向けて導光されることになる。光学ステップ231は前述のように正面視は鋸歯状であり、側面視は片屋根状であるので、光学ステップ231で屈折された光は図6(a)のように導光板21の正面から見ると右上方に向けられ、図6(b)のように導光板21の側面から見ると後上方に向けられる。そして、導光板21の内部に導光された光は導光板21の正面、背面、左右の側面において内面反射されながら右上領域にまで導光される。このように導光される光は導光の途中において光微小反射素子211によって反射され、一部は導光板21の正面方向に向けて反射され、導光板21の正面の光出射面21oから灯具の前方に向けて出射されることになる。
【0019】
このとき、導光板21の内部を導光される光は右上領域に向けて導光されて行くのに従って導光板21により吸収され、あるいは導光板21の正面、背面、両側面から一部が洩出されるため右上領域にまで導光される光量は低下されるが、光入射面21iから入射される光は光学ステップ231での屈折によって導光板21の光出射面21oの三次元方向に湾曲した方向に沿った方向に向けられているため、導光板21の湾曲した正面、背面、及び両側面の各内面での光の内面反射に際しての入射角を臨界角よりも大きくでき、これらの面から外部に洩出する光を抑制することができる。また、導光板21は右上領域に向けて幅寸法が徐々に低減されているので、光量が低下されても右上領域における導光板21の単位面積の光量、すなわち明るさは左下領域に比較して顕著な差が生じることはない。また、導光板21は入射面21iから遠ざかるに従って板厚を薄くしてもよく、導光される光の減衰を抑制することができる。したがって導光板21のほぼ全面領域にわたって均一な明るさで光を出射することができ、導光板21は全面がほぼ均一な明るさの発光体として機能することになる。因みに、図6(a),(b)において、各LED素子222から出射した光が光軸Oxの方向で導光板21の光入射面21iに入射した場合には、各光が導光板21の湾曲した左側内面に投射したときの入射角が大きいため全反射しない光量が増大することになり、右上領域にまで導光する光量が顕著に大きくなり、右上領域を明るく発光させることは困難になる。
【0020】
図7は本発明にかかるリフレクタ発光ユニット3の概略構成を示す部分分解斜視図であり、図8はその要部の拡大斜視図である。これらの図と図2及び図3を合わせて参照すると、メインリフレクタ31は、ここでは灯具ボディ11の正面を垂直断面が概ね放物面形状となるように成形した上で、当該正面に光を反射する表面処理、例えばアルミニウム等の金属のメッキや蒸着を施して反射面を形成している。このメインリフレクタ31は、水平断面形状は正面カバー12の水平方向の湾曲に沿って階段状に配置した複数の単位反射面311で構成されている。各単位反射面311は水平方向に3つの領域に区画された微小幅反射面311aで構成されている。各微小幅反射面311aの正面、すなわち反射面は、ほぼ凸球面状をした反射ステップ311bを垂直方向に配列した構成となっている。隣合う微小幅反射面311aの各反射ステップ311bは垂直方向の位置が揃うように配置されているので、メインリフレクタ31を正面から見たときには各反射ステップは枡目状に配置されていることになる。これにより各単位反射面311は、投射された光が垂直面方向にはほぼ平行に近い光束となるような反射面として構成されるが、これと同時に各反射ステップ311bにより垂直及び水平方向に若干拡散された状態で反射する反射面として構成されることになる。なお、テールランプを搭載する自動車の中心側に配置されている単位反射面311は正面方向に向けているが、自動車の外側、ここでは右側に配置されている単位反射面311ほど右方向を向くようにそれぞれの反射面の向きが設定されている。特に、正面カバー12が自動車の側方領域のいわゆる回り込み領域にまで延長されている場合には、メインリフレクタ31の単位反射面311はその回り込み領域にまで延長形成されている。
【0021】
前記メインリフレクタ31の周囲には疑似リフレクタとしてのエクステンション312が一体に延長形成されており、前記導光板発光ユニット2の導光板21の下端部と第1の光源としてのLED素子構体22やステップ板23はエクステンション312の下部領域に設けられたスリット313を通して当該エクステンション312の下側に配置され、これらはエクステンション312によって隠されるので、正面カバー12を透過して外部に露見されないようになっている。また、前記スリット313は飾り板24(図2参照)によって露見されないようになっている。なお、左側テールランプの場合にはこの反対になる。
【0022】
本発明の意匠部としての前記センター部32は、前記メインリフレクタ31の各単位反射面311のそれぞれの焦点位置(各単位反射面の垂直方向の断面形状である放物面の焦点位置)にほぼ近い位置を水平方向に連結する線に沿って水平左右方向に長く延出されており、ランプ光軸Lxに沿った方向の断面形状が背面側に向けてV字型に開いた構成とされるとともに、その延出方向の両端部において前記エクステンション312の左右壁にそれぞれ固定されている。この固定では図には表れないが係止構造、あるいはネジ止め等の固定構造が用いられる。これにより、センター部32はメインリフレクタ31に対する位置合わせ、すなわち焦点位置にほぼ近い位置に位置決めされることになる。このセンター部32の正面321は垂直方向に若干凹んだ断面形状をしてメインリフレクタ31と同様に光を反射する表面処理が施されている。一方、センター部32の背面側のV字型の内部には前記メインリフレクタ31の各単位反射面311の水平方向の配列間隔に等しい間隔で、しかも各単位反射面311の正面方向にそれぞれ等しい距離で対向するように複数の平坦部331aをそれぞれ段部331bを介して連結した左右に細長い階段状に延出した回路基板331が配設され、センター部32に一体的に支持されている。ここでは長さ方向の複数箇所において接着やネジ等により一体に固定支持されている。この回路基板331の複数の平坦部331aにはそれぞれ光の出射方向を背面方向に向けた1個の赤色発光のLED素子332が搭載されており、これらで第2の光源のLED素子構体33を構成している。これらのLED素子332はチップあるいはディスクリートのいずれであってもよく、LED素子332の個数は導光板発光ユニット2のLED素子222よりも多く、全体として高い光度で発光する光源として構成されるが、必要に応じて前記複数の平坦部331aには複数個のLED素子222を搭載してもよい。
【0023】
さらに、前記LED素子構体33の背面側で各LED素子332から出射した光が投射される位置には、サブリフレクタ34がセンター部32に沿って水平方向に延長されており、その長さ方向の複数箇所においてネジ等により前記回路基板331に支持されている。このサブリフレクタ34は前記各LED素子332に対してそれぞれ等しい間隔を保つように階段状に曲げられて水平方向に細い幅のステム状に形成されるとともに、前記LED素子332にそれぞれ光軸方向に対向する位置には各LED素子332から出射した光を反射させるための断面形状が横V字状をし、その正面が反射面として表面処理された補助反射面341が形成されている。これらの補助反射面341は、垂直方向には各LED素子332から出射した光を背面側にあるメインリフレクタ31の上下の領域、すなわちランプ光軸Lxの近傍領域を除くメインリフレクタ31の各単位反射面311に向けて投射されるように比較的に大きな角度で、換言すれば光束幅が拡大するように拡散して反射するように構成される。ここでは、垂直上下の各背面方向に傾斜しかつ若干凸状をした曲面に形成しているのでLED素子332から出射した光は垂直方向に拡散して反射される。この場合、LED素子332から出射した光はもともと若干拡散した状態で出射されるので、補助反射面341を平面に形成していても補助反射面341で反射した光を拡散光にすることが可能である。また、サブリフレクタ34はセンター部32に直接支持されてもよい。この構成により、回路基板331とこれに搭載されているLED素子332はもとより、ここではサブリフレクタ34もランプの正面方向から視認したときに前記センター部32によって覆い隠されて露見されないようになっている。
【0024】
このリフレクタ発光ユニット3では、図9(a),(b)に水平方向、垂直方向の模式的な断面図を示すように、各LED素子332から背面方向に向けて出射された光はサブリフレクタ34の各補助反射面341で反射され、さらにこの反射された光はメインリフレクタ31に投射され、ここで正面方向に向けて反射され、正面カバー12を通してテールランプの正面方向、すなわち自動車の後方に向けて出射される。このときサブリフレクタ34の補助反射面341により水平方向に延出されたセンター部32の延出方向と垂直方向には上下に向けて大きな角度で拡散して反射され、水平方向にはLED素子332の出射角度にほぼ等しい角度のままで反射される。このため、各LED素子332から出射され、かつサブリフレクタ34で反射された光は、それぞれメインリフレクタ31の各LED素子332に対応する各単位反射面311のそれぞれに投射されることになり、各単位反射面311のそれぞれ3つの微小幅反射面311aにおいて反射されることになる。このとき、特に垂直方向についてみると、LED素子332から出射した光はメインリフレクタ31のランプ光軸Lxの近傍領域を除く領域に光が投射されるので、これらの光は全てが単位反射面311で反射されてランプの正面方向に出射される。そのため、LED素子332からの光がメインリフレクタ31のランプ光軸Lxの近傍領域に投射され、その反射した光がサブリフレクタ34やセンター部32によって遮光されてランプの正面方向に向けて出射されなくなるという光の利用効率が低下することはない。
【0025】
単位反射面311は垂直断面が放物面形状であるので各単位反射面311で反射された光の大部分は正面方向に向けられた平行に近い光束となる。水平方向については、単位反射面311は水平断面が直線形状であるのでLED素子332から出射した光束のまま反射された光束となる。この反射に際し、微小幅反射面311aはそれぞれ凸面状をした多数の反射ステップ311bによりそれぞれ拡散されることになる。結果として、1つのLED素子332でメインリフレクタ31の1つの単位反射面311を発光させた形態での照明となり、しかもメインリフレクタ31のランプ光軸Lxの近傍に生じる陰の部分を除いてメインリフレクタの全面にわたって均一な明るさの照明が実現できる。
【0026】
また、このように、LED素子332から出射した光をサブリフクレタ34で上下方向に分割した状態で反射してメインリフレクタ31に投射することで、LED素子332とメインリフレクタ31との間隔寸法が小さくてもメインリフレクタ31の広い領域にわたって光を投射させることができる。そのため、リフレクタ発光ユニット3のランプ光軸Lxに沿った方向の寸法を小さくすることができ、テールランプの薄型化を図る上で有利になる。特に、実施例1のように、導光板発光ユニット2を一体的に組み込んだテールランプにおいてもランプ光軸方向の寸法を小さくして薄型化が可能になる。
【0027】
さらに、回路基板331はLED素子332を搭載している複数の平坦部331aを段差部331bを介して連結して水平左右方向に延出しているので、LED素子332の光軸をランプ光軸Lxに向けた状態で各平坦部331aに搭載することができるとともに、段差部331bを適切に設計することで複数のLED素子332をメインリフレクタ31の水平方向の湾曲形状に沿って、すなわち各単位反射面311の焦点位置に沿って三次元面上で位置決めすることができる。そのため、各LED素子332のそれぞれにおいて垂直方向の配光特性を保ったまま回路基板331の水平方向の長さ領域にわたって広い範囲で、しかも均一な明るさの照明が可能になり、特に自動車の車体形状に対応させて発光面を三次元面とすることが要求される灯具への適用が可能になる。
【0028】
一方、各単位反射面311において、各LED素子332の照射光軸Oxを含むサブリフレクタ34が対峙している領域にはLED素子332からの光が投射されない領域が存在することになる。この領域ではメインリフクレタ31での反射光は存在せず、テールランプを正面から見たときにはこの部分が陰になることになる。しかし、この領域はもともとセンター部32によって覆い隠される領域であって外観上の問題が生じることはなく、照明には寄与しない領域であるので、光の利用効率を高める上では有利になる。さらに、各単位反射面311の垂直方向の両端部、すなわち、上部領域又は下部領域で反射された光の一部は反射ステップ311bでの拡散反射によって大きく下方または上方に向けて反射され、これらの反射光はセンター部32の正面321に投射される。センター部32の正面321は凹面状をした反射面として形成されているので、この正面321で反射されてランプの正面方向に向けられる。したがって、ランプを正面から見たときに、各単位反射面311での反射光とセンター部32の正面321での反射光が一体となって正面カバー12を通してランプの正面に出射されることになり、結局ランプの正面から見るとメインリフレクタ31とセンター部32を合わせた領域が発光する点灯状態となる。これにより、サブリフレクタ34での反射光が投射されないメインリフレクタ31の光軸近傍の陰となる領域はセンター部32での反射によって発光されることになり暗部が生じることはない。したがって、メインリフレクタ31の全面を発光面とした発光面積が大きく、しかもメインリフレクタ31の全面にわたって均一で、しかもセンター部32による暗部が生じることがない均一な明るさの発光が実現できる。
【0029】
このように構成された導光板発光ユニット2とリフレクタ発光ユニット3とを備える実施例1のテールランプでは、夜間走行時には第1の光源としてのLED素子222を発光する。LED素子222から出射した光はステップ板23の光学ステップ231で屈折されて導光板21の下端面の光入射面21i面から入射され、導光板21内を導光される。そして、導光された光は微小反射素子211において導光板21の光出射面21oから出射される。このとき、光学ステップ231で屈折されて導光板21の内部を導光される光は、前述のように導光板21の光出射面21oの三次元方向の湾曲形状に沿った方向に向けられているので、導光板21の内面反射を助長して導光板21の両側面や背面等から洩出する光を少なくでき、導光板21内での光の導光効率が高められ、特に導光板21の曲げられた右上領域の光出射面21oからの光の出射効率も高められる。また、導光板21の光出射面21oは右上領域に向けて幅寸法が徐々に低減された形状とされているので、右上領域の面積は左下領域よりも低面積となり、導光板21の内部での導光に際しての光減衰が生じても単位面積当たりの光出射効率をほぼ同じにでき、導光板21の全面においてほぼ同じ明るさで光が出射される。なお、導光板21において微小反射素子211により反射されない光や、導光板21で内面反射されない光は導光板21の正面や背面はもとより、左右の側面から出射され、これらの光はランプの左右や上下に拡散する光となるので、これらの光はテールランプを左右側方や上下方向から見たときに導光板21が発光した状態に見えるようになる。これにより、導光板21の全面がほぼ均一な明るさで発光する形態となり、意匠的に優れた発光形態のテールランプとして点灯する。
【0030】
一方、自動車のブレーキ操作時には、第2の光源としてのLED素子332を発光する。各LED素子332で発光した光はサブリフレクタ34の補助反射面341で上下方向には大きい角度で拡散され、左右方向にはそのままの方向に反射される。この反射により各LED素子332からの光はメインリフレクタ31の各対応する段部を構成する微小幅反射面331に投射され、それぞれ反射される。大部分の光はテールランプの正面方向に向けて反射され、正面カバー12を通してテールランプの正面方向に出射される。このとき、テールランプを正面から見て導光板発光ユニット2の導光板21が重ねられている領域では、リフレクタ31からの光は導光板21を厚み方向に透過した後に正面カバー12から出射される。また、メインリフレクタ31の上部領域と下部領域で反射された光はセンター部32に向けられてセンター部32の正面321で反射された上でテールランプの正面に向けられ、正面カバー12を通して出射される。これにより、メインリフレクタ31とセンター部32から出射された光は一体となって正面カバー12から出射されるので、テールランプを正面から見たときにはこれらの領域の全体が明るく発光した状態になり、導光板発光ユニット2よりも高い光度で発光するストップランプとして点灯する。
【0031】
この実施例1のテールランプでは、テールランプ機能としての点灯時には導光板21の全面が発光した状態での点灯であり、ストップランプ機能としての点灯時にはメインリフレクタ31とセンター部32が発光した状態となる。これにより、各ランプ機能での点灯時における発光パターンが変化され、この発光パターンの違いによって後続車にテールランプ機能とストップランプ機能の各発光を認識し易くする。これに加えて、テールランプ機能での点灯時は導光板21による発光であるので、ソフトな光を出射する点灯となり後続車を眩惑することがない。ストップランプ機能での点灯時は個数の多いLED素子322を光源としたメインリフレクタ31による発光であるので高光度の光を出射する点灯となり後続車に対する確実な表示が可能になる。
【0032】
ここで、実施例1ではセンター部32の断面を横向きのV字状に形成し、正面321を凹面に形成しているので、正面321で反射した光をランプ光軸Lxに沿って出射できるが、正面321で反射したときにその頂部に線状の明るいパターン、あるいは暗いパターンが生じる場合がある。センター部32の断面形状を半円状、あるいは半楕円状等の曲面形状に形成すれば、センター部32の正面での反射の拡散方向が広い範囲にわたって均一に近い状態となり、線状の明るい部分や暗い部分が生じることはない。また、センター部32は必ずしもメインリフレクタ31の垂直方向の中心位置に配置される必要はなく、中心を外れた位置に配置された場合でも、LED素子332から出射した光をサブリフレクタ34により反射してメインリフレクタ31に投射し、メインリフレクタ31で灯具の正面方向に向けて反射する構成の灯具であれば本発明を同様に適用することが可能である。
【0033】
また、図示は省略するが、メインリフレクタ31の微小幅反射面311aの反射ステップ311bの形状は、実施例1のように凸状の球面に限られるものではなく、垂直方向の断面が凸状をしたかまぼこ型の反射ステップであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】実施例1のテールランプの正面図である。
【図2】図1のII−II線に沿った垂直断面図である。
【図3】図1のIII −III 線に沿った水平断面図である。
【図4】実施例1のテールランプの概略構成を示す分解斜視図である。
【図5】導光板発光ユニットの拡大斜視図である。
【図6】導光板発光ユニットの正面図と側面図である。
【図7】リフレクタ発光ユニットの部分分解拡大斜視図である。
【図8】リフレクタ発光ユニットの要部の概念構成を示す拡大斜視図である。
【図9】リフレクタ発光ユニットの反射光路を説明する図である。
【符号の説明】
【0035】
1 ランプハウジング
2 導光板発光ユニット
3 リフレクタ発光ユニット
11 ランプボディ
12 正面カバー
21 導光板
21i 光入射面
21o 光出射面
22 LED構体
222 LED素子
23 ステップ板
231 光学ステップ
31 メインリフレクタ
311 単位反射面
311a 微小幅反射面
311b 反射ステップ
32 センター部(意匠部)
321 正面(反射面)
33 LED素子構体
331 回路基板
331a 平坦部
331b 段差部
332 LED素子
34 サブリフレクタ
341 補助反射面



【特許請求の範囲】
【請求項1】
灯具ハウジング内に設けた複数のLEDと、前記複数のLEDに対向配置され各LEDから出射した光を灯具の正面方向に向けて反射するメインリフレクタと、前記LEDとメインリフレクタの間に介在され、LEDから出射した光をメインリフレクタに向けて拡散して反射するサブリフレクタと、少なくとも1つの段差部を介して連結され前記LEDがそれぞれ少なくとも1つ搭載される複数の平坦部を有する長く延出した基板と、前記基板及びLEDを灯具の正面側に露見させないように覆い隠す意匠部とを備え、当該意匠部は前記基板が延びる方向に長く延出した形状を成すことを特徴とする灯具。
【請求項2】
前記サブリフレクタは、前記LEDから出射した光を前記意匠部の延出方向と垂直な方向に広く拡散して反射するように構成され、前記メインリフレクタは前記灯具ハウジングの正面カバーの湾曲形状に沿って階段状に配置された複数の単位反射面で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の灯具。
【請求項3】
前記意匠部は正面に反射面を備え、前記メインリフレクタは反射した光の一部を前記意匠部の正面に向けて反射する反射ステップを備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の灯具。
【請求項4】
前記基板は前記意匠部に支持され、前記サブリフレクタは前記基板又は前記意匠部に支持され、前記意匠部は長く延出したその端部において、前記メインリフレクタとの位置決めがなされるよう灯具の固定部に支持されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の灯具。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−21002(P2010−21002A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−179997(P2008−179997)
【出願日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(000001133)株式会社小糸製作所 (1,575)
【Fターム(参考)】