説明

灯具

【課題】高輝度外光照り込み時の点灯誤認を防止することができる車両用尾灯等の灯具の提供。
【解決手段】光出射面に円偏光板を配してなる灯具である。ランプ本体と、該ランプ本体の内部に配された光源と、該光源からの出射光が通過するように光出射面に配された円偏光板とを備えた態様、円偏光板が直線偏光板と1/4波長板とからなり、該直線偏光板の偏光吸収軸に対し該1/4波長板の光軸が45度となるように貼り合せてなる態様、などが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高輝度外光照り込み時の点灯誤認を防止することができる車両用尾灯等の灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両用尾灯は、通常、テールランプ(「テールライト」と称することもある)と呼ばれている。このテールランプは、夜間などに後ろを走行する車に、前に車が走っていることを知らせる警告灯具であり、該テールランプの点灯は、ヘッドランプと連動することが義務付けられている。また、テールランプは、通常ブレーキランプ(ストップランプ)と兼用されており、ブレーキをかけた時により明るく(約5倍の光量)点灯して注意を喚起する。
【0003】
ところで、夕日を背負って車が走行しているときや、自分の車のヘッドライトが強く先行車両のテールランプを照らしたとき、先行車両のテールランプが高輝度外光をランプまで到達した光として反射してくると、あたかもテールランプが点灯していると(ブレーキをかけたと)誤認してしまい。このことが原因で追突事故に発展するケースが多発しており、安全運転上大きな問題となっている。
【0004】
これに対する先行技術として、例えば特許文献1には、表面に微細な凹凸構造を備えた偏光フィルムをランプカバーに取り付けた車両用灯具が提案されているが、点灯時と消灯時とで外観を変化させて意匠性を向上させるものであり、高輝度外光照り込み時の点灯誤認を防止するという本願発明の特徴点を明らかにするものではない。
【0005】
したがって耐久性に優れ、外光反射を抑制してテールランプ等の灯具の視認性を改善することができる提案はいまだ提供されていないのが現状である。
【0006】
また、屋外広告の分野では、例えば非特許文献1にあるようにデジタルサイネージと呼ばれる技術が立ち上がりつつある。現在のところ、デジタルサイネージの主役はLEDディスプレイであるようだが、この分野へは液晶ディスプレイを初め、有機ELやプラズマディスプレイ等の自発光型素子など、様々な技術が次期実用化を試みようとしている。
完全屋外の場合、夕刻から夜にかけてはこうした広告表示板の画質はさほど劣っているようには見えないが、昼間の見難さは如何ともしがたい。これは、表面反射光に比べて表示光量が足らないことと、外光の映り込みにより「黒」表示が白ボケを起こしてしまうことが原因である。強い外光とは、屋外の場合、太陽光であるから太陽光の表面反射強度にまともに勝てる発行表示を行うことはエネルギーの無駄遣いと言われてしまう。
また、準屋外と言えるのは、大型店舗の中の広告表示板、鉄道駅構内表示板、空港のフライト表示板などで、やはり状況により見難さが否めないときがある。この場合の強い外光とは、高輝度照明である。
何れの方式をとっても、外光に曝されることに起因する画像コントラストの低さを何とかすればかなりの改善が期待できるが、現在までのところ、これに応える技術発表が無いのが現状である。
【0007】
【特許文献1】特開2003−141907号公報
【非特許文献1】日経マイクロデバイス2008 8月号 p53−61
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、高輝度外光照り込み時の点灯誤認を防止することができ、耐久性に優れた灯具を提供することを目的とする。また、本発明は、高輝度外光照り込み時の屋外表示などにおいてコントラストが飛躍的に向上した表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため本発明者が鋭意検討を重ねた結果、光出射面に円偏光板を配することにより外光が灯具のランプ本体に照り込んできても、その大半は円偏光板によって反射光として再度出て行くことを阻止される。一方、光源からの点灯光は円偏光板を1回通過するだけなので、偏光板の濃度分だけ減光されるものの外部から点灯していることがはっきり認識できる。結果として、外光の反射が抑制され、夕日を背負って車が走行しているときや、自分の車のヘッドライトが強く先行車両のテールランプを照らしたときでも前方を走行する車のテールランプが点灯したか否かをはっきりと視認でき、安全運転を推進できることを知見した。
また、屋外表示装置に対しては、その最外層に、該円偏光板の偏光板側表面に反射防止処理を施した膜を配することにより、強い外光に照らされても表面からの反射光は抑制され、かつ内部まで入り込んだ外光は上記灯具の説明と同様の原理で、その大半は円偏光板によって反射光として再度出て行くことを阻止される。その結果、日中の太陽光の元においても高いコントラストを確保した画像表示を可能とするものである。
【0010】
本発明は、本発明者による前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては以下の通りである。即ち、
<1> 光出射面に円偏光板を配してなることを特徴とする灯具である。
<2> ランプ本体と、該ランプ本体の内部に配された光源と、該光源からの出射光が通過するように光出射面に配された円偏光板とを備えた前記<1>に記載の灯具である。
<3> 円偏光板が直線偏光板と1/4波長板とからなり、該直線偏光板の偏光吸収軸に対し該1/4波長板の光軸が45度となるように貼り合せてなる前記<1>から<2>のいずれかに記載の灯具である。
<4> 円偏光板が、該円偏光板における1/4波長板側の面が光源側となるように光出射面に配された前記<3>に記載の灯具である。
<5> 直線偏光板における偏光子が、棒状金属微粒子である前記<3>から<4>のいずれかに記載の灯具である。
<6> 棒状金属微粒子が、金、銀、銅、及びアルミニウムから選択される少なくとも1種からなる前記<5>に記載の灯具である。
<7> 車両用尾灯である前記<1>から<6>のいずれかに記載の灯具である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、従来における問題を解決することができ、高輝度外光照り込み時の点灯誤認を防止することができ、耐久性に優れた灯具を提供することができる。また、本発明によると、高輝度外光照り込み時の屋外表示においてコントラストが飛躍的に向上したLEDディスプレイ等の表示装置を提供することを目的とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の灯具は、光出射面に円偏光板を配してなり、具体的には、ランプ本体と、光源と、円偏光板とを備えており、更に必要に応じてその他の部材を有してなる。
【0013】
<円偏光板>
前記円偏光板は、直線偏光板と1/4波長板とからなり、該偏光板の偏光吸収軸に対し該1/4波長板の光軸が45度となるように貼り合せてなることが好ましい。
【0014】
ここで、テールランプ等の灯具における外光照り込み時の点灯誤認を防止する原理について説明する。図3に示すように、外光は円偏光板1の直線偏光板10を透過して、一旦直線偏光になった後、1/4波長板11を通過して円偏光になる。この円偏光はランプ本体内の反射板12で反射されて、逆回転方向の円偏光となり、再び1/4波長板11を通過して直線偏光になるが、この直線偏光は直線偏光板10の直線偏光子の軸と直交するので、直線偏光板を透過することができない。即ち、円偏光板によって反射光として再度出て行くことを阻止される。
一方、光源からの光は円偏光板1により輝度が約50%低下するが外に出射され、ランプが点灯していることが視認できる。
以上の原理により、外光の影響をなくし、警告灯が点灯していることをはっきりと視認でき、点灯誤認を防止できるものである。
【0015】
−直線偏光板−
前記直線偏光板は、少なくとも偏光層を有してなり、基材、更に必要に応じてその他の層を有してなる。
【0016】
−−偏光層−−
前記偏光層は、少なくとも偏光子を含有し、バインダー樹脂、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
前記偏光子としては、二色性材料が好適である。前記二色性材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば棒状金属微粒子、カーボンナノチューブ、金属錯体、などが挙げられる。これらの中でも、棒状金属微粒子が耐久性の面から特に好ましい。
【0017】
前記棒状金属微粒子は、数nm〜100nmのナノサイズの棒状金属微粒子である。ここで、前記棒状金属微粒子とは、アスペクト比(長軸長さ/短軸長さ)が1.1以上である粒子を意味する。
このような棒状金属微粒子は、表面プラズモン共鳴を示し、紫外〜赤外領域に吸収を示す。例えば短軸長さが1nm〜50nm、長軸長さが10nm〜1000nm、アスペクト比が1.1以上の棒状金属微粒子は、短軸方向と、長軸方向とで吸収位置を変えることができる。
前記棒状金属微粒子における金属としては、例えば金、銀、銅、白金、パラジウム、ロジウム、オスミウム、ルテニウム、イリジウム、鉄、錫、亜鉛、コバルト、ニッケル、クロム、チタン、タンタル、タングステン、インジウム、アルミニウム、又はこれらの合金などが挙げられる。これらの中でも、金、銀、銅、アルミニウムが好ましく、金、銀が特に好ましい。
前記棒状金属微粒子としては、少なくとも2種の金属を含有し、コアナノロッドをシェルで被覆してなるコアシェル構造からなるものが好ましい。
【0018】
前記バインダー樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えばポリビニルアルコール、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸、ポリエチレンテレフタレート、ポリビニルブチラール、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルホルマール、ポリカーボネート、セルロースブチレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、ポリエチレンアジパミド、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、又はこれらの共重合体(例えば、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0019】
前記偏光層の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、10μm〜300μmが好ましい。
【0020】
−−基材−−
前記基材としては、その形状、構造、大きさ等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記形状としては、例えば平板状、シート状などが挙げられ、前記構造としては、例えば単層構造であってもいし、積層構造であってもよく適宜選択することができる。
【0021】
前記基材の材料としては、特に制限はなく、無機材料及び有機材料のいずれであっても好適に用いることができる。
前記無機材料としては、例えば、ガラス、石英、シリコンなどが挙げられる。
前記有機材料としては、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)等のアセテート系樹脂;ポリエステル系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリノルボルネン系樹脂、セルロース系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0022】
前記基材は、適宜合成したものであってもよいし、市販品を使用してもよい。
前記基材の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、10〜2,000μmが好ましく、50〜500μmがより好ましい。
【0023】
前記偏光板は、基材上に、偏光子及びバインダー樹脂を含む塗布液を塗布し、乾燥させてなる塗布膜を一定方向に延伸することにより製造することができる。
【0024】
<1/4波長板>
前記1/4波長板としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、延伸されたポリカーボネートフィルム、延伸されたノルボルネン系ポリマーフィルム、炭酸ストロンチウムのような複屈折を有する無機粒子を含有して配向させた透明フィルム、支持体上に無機誘電体を斜め蒸着した薄膜などが挙げられる。
【0025】
前記1/4波長板としては、例えば、(1)特開平5−27118号公報、及び特開平5−27119号公報に記載された、レターデーションが大きい複屈折性フィルムと、レターデーションが小さい複屈折性フィルムとを、それらの光軸が直交するように積層させた位相差板、(2)特開平10−68816号公報に記載された、特定波長において1/4波長となっているポリマーフィルムと、それと同一材料からなり同じ波長において1/2波長となっているポリマーフィルムとを積層させて、広い波長領域で1/4波長が得られる位相差板、(2)特開平10−90521号公報に記載された、二枚のポリマーフィルムを積層することにより広い波長領域で1/4波長を達成できる位相差板、(3)国際公開第00/26705号パンフレットに記載された変性ポリカーボネートフィルムを用いた広い波長領域で1/4波長を達成できる位相差板、(4)国際公開第00/65384号パンフレットに記載されたセルロースアセテートフィルムを用いた広い波長領域で1/4波長を達成できる位相差板、などが挙げられる。
このような1/4波長板としては、市販品を用いることができ、該市販品としては、例えば商品名:ピュアエース WR(帝人株式会社製)などが挙げられる。
【0026】
本発明で用いられる円偏光板は、前記直線偏光板と前記1/4波長板とからなり、図4に示すように直線偏光板10の偏光吸収軸13に対し該1/4波長板の光軸14が45度となるように貼り合せてなる。該貼り合せ方法としては、例えば粘着フィルムを用いてロール同士のラミネーションを行う方法、などが挙げられる。
【0027】
前記円偏光板は、光源から出射された光の光路が円偏光板を通過するように光出射面に配されている。この場合、前記円偏光板は、該円偏光板における1/4波長板側の面が光源側となるように光出射面に配されることが好ましい。
前記円偏光板を光出射面に取り付ける方法としては、円偏光板の1/4波長板側の面を光源側に配することができれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば光出射面に配置される透明基板に円偏光板を接着剤で貼り付ける方法、視認を邪魔することの無い周辺部に取付金具を介して円偏光板を取り付ける方法、などが挙げられる。
【0028】
<ランプ本体>
前記ランプ本体は、内部に光源を配することができる限り、その形状、構造、大きさ、材質等については特に制限はなく、用途、目的等に応じて適宜選択することができる。
前記ランプ本体の形状としては、例えば、筒状(円筒、角筒など)、管状(円管、角管など)、などが好適に挙げられる。
前記ランプ本体の構造としては、例えば、単一空間構造、空間が複数に分割された複数空間構造、などが挙げられ、また、単一の部材で形成されていてもよいし、2以上の部材が組み合わされた構造であってもよい。
前記ランプ本体の材質(材料)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ガラス、樹脂などが挙げられる。
【0029】
前記ランプ本体の内壁は、光源からの光が集光されるように凹面鏡構造、又はそれに類する光反射面となっていることが好ましい。
前記ランプ本体の光出射面には、通常、透明なランプカバーが設けられている。
前記ランプカバーは前記光出射面を少なくとも覆う形状及び大きさを備えていれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記形状としては、長方形、正方形、円形などが挙げられる。
前記ランプカバーとしては赤色の発色が求められるテールランプでは赤色に着色されている。また、カバーを着色する代わりに無色のカバーを使用して赤色に着色されたランプを用いてもよい。
【0030】
<光源>
前記光源としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば電球、LEDなどが挙げられる。光源の数は、1つに限られず、2つ以上であっても構わない。
【0031】
前記その他の部材としては、前記ランプ本体を覆うランプボックス、などが挙げられる。
【0032】
ここで、図1は、本発明の灯具の一例を示す概略図である。この灯具は、ランプ本体3と、該ランプ本体の内部に配された光源2と、該光源からの出射光が通過するように光出射面(ランプカバー)4に配された円偏光板1とを備えている。
円偏光板1は直線偏光板10と1/4波長板11とからなり、円偏光板が、該円偏光板における1/4波長板側の面が光源側となるようにランプ本体の光出射面(ランプカバー)に配されている。
図2は、本発明の灯具の一例を示す概略図である。この灯具は、ランプ本体3がランプボックス5で覆われている以外は、図1の灯具と同様である。この場合には、ランプボックスの光出射面に円偏光板が配されている。
【0033】
本発明の灯具は、点灯することにより注意を喚起する灯具であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、光に照らされる用途に用いられる灯具が挙げられ、例えば車両用尾灯(テールランプ)が好適である。
前記車両用尾灯における車両としては、例えば乗用車(RV車、キャンピングカー等も含む)、バス、トラック、鉄道車両、二輪車、自転車などが挙げられる。
【0034】
<表示装置>
本発明で用いられる表示装置は、最表面に円偏光板を配してなり、更に必要に応じてその他の部材を有してなる。
前記円偏光板としては、前記灯具と同じものを用いることができる。
前記表示装置は、最表面に円偏光板を配しているので、内部まで入り込んだ外光は上記灯具の説明と同様の原理で、その大半は円偏光板によって反射光として再度出て行くことを阻止される。その結果、日中の太陽光の元においても高いコントラストを確保した画像表示が可能となる。
【0035】
また、前記円偏光板の直線偏光板側表面には、反射防止膜を配することが好ましい。これにより、強い外光に照らされても表面からの反射光が抑制できる。
前記反射防止膜としては、実使用上充分な耐久性、耐熱性を有しているものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、(1)微細な表面凹凸を形成した膜、(2)高屈折率膜と低屈折率膜を組み合わせた2層膜の構成、(3)中屈折率膜、高屈折率膜、及び低屈折率膜を順次積層した3層膜構成などが挙げられる。これらの中でも、(2)及び(3)が特に好ましい。
これら反射防止膜は、基材表面に直接ゾルゲル法、スパッタリング法、蒸着法、CVD法などで形成してもよい。また、透明支持体上にディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート、マイクログラビア法やエクストルージョンコート法による塗布により反射防止膜を形成し、基材表面に反射防止膜を粘着又は接着してもよい。
【0036】
前記表示装置は、例えば屋外の広告表示板、大型店舗の中の広告表示板、鉄道駅構内表示板、空港のフライト表示板、などの各種「デジタルサイネージ」ディスプレイに適用することができる。
【実施例】
【0037】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は下記実施例に何ら限定されるものではない。
【0038】
(製造例1)
−金ナノ粒子(種晶)の合成工程−
100mMのCTAB(セチルトリメチルアンモニウムブロミド、和光純薬株式会社製)水溶液100mlに、10mMの塩化金酸水溶液(関東化学株式会社製)5mlを添加し、更に直前に溶解した10mMの水素化ホウ素ナトリウム水溶液10mlを添加し、強攪拌することにより、金ナノ粒子(種晶)を形成した。
【0039】
−金ナノロッド(コアナノロッド)の合成工程−
100mMのCTAB水溶液1000mlに、10mMの硝酸銀水溶液100ml、10mMの塩化金酸水溶液200ml、及び100mMのアスコルビン酸水溶液50mlを添加し、攪拌することにより、無色透明の液を得た。更に前記金ナノ粒子(種晶)水溶液100mlを添加し、2時間攪拌することにより、金ナノロッド水溶液を得た。
<評価>
得られた金ナノロッドの吸収スペクトルを紫外可視赤外分光計(日本分光株式会社製、V−670)で測定したところ、金ナノロッドの短軸の吸収に帰属する510nmと、長軸に帰属する800nmのピークを示した。
得られた金ナノロッドについて、透過型電子顕微鏡(TEM)観察により、短径、長径、アスペクト比、及び球相当半径を測定したところ、短径が6nm、長径が21nm、アスペクト比が3.5、球相当半径が5.7nmのロッド状粒子であることが分かった。
【0040】
−CTABの除去−
作製した金ナノロッド水溶液を5℃で12時間静置することにより析出したCTABの結晶を濾布(#200)で濾別し、CTABを粗除去した金ナノロッド分散液を得た。この時のCTABの回収率は、約75%であった。
【0041】
−銀シェル形成工程−
1質量%のPVP(ポリビニルピロリドンK30、和光純薬株式会社製)水溶液8kgに、前記CTABを粗除去した金ナノロッド分散液を2kg、10mMの硝酸銀水溶液100ml、及び100mMのアスコルビン酸水溶液100mlを添加し、攪拌した。更に0.1Nの水酸化ナトリウム水溶液280mlを5分間かけて添加し、溶液のpHを7〜8に調整することにより、銀を金ナノロッド表面に析出させて、金コア銀シェルナノロッドを合成した。
得られた金コア銀シェルナノロッド分散液を限外濾過膜(旭化成ケミカルズ株式会社製、ACP0013)を用いて限外濾過処理することにより、10倍に濃縮し、更に分散液の電気伝導度が70mS/m以下になるまで精製を行い、金コア銀シェルナノロッド分散液を得た。
【0042】
次に、得られた金コア銀シェルナノロッド分散液について、以下のようにして、光学特性、粒子サイズ、コアナノロッドとシェルの体積比を測定した。
【0043】
<光学特性>
得られた金コア銀シェルナノロッドについて、紫外可視近赤外分光度計(日本分光株式会社製、V−670)で吸収スペクトルを測定したところ、短軸の吸収に帰属する410nmと、長軸に帰属する650nmのピークを示した。
【0044】
<粒子サイズ、球相当半径、コアナノロッドとシェルの体積比、及び端部の形状>
得られた金コア銀シェルナノロッドについて、透過型電子顕微鏡(TEM)観察により、短径、長径、アスペクト比、及び球相当半径を測定したところ、短径が12nm、長径が24nm、アスペクト比が2.0、球相当半径9.4nmのロッド状粒子であることが確認できた。
また、コアナノロッドとシェルの体積比(シェル/コアナノロッド)をTEM観察により算出したところ、3.6であった。
【0045】
−金コア銀シェルナノロッド含有PVAフィルムの作製−
次に、10質量%のPVA124水溶液(株式会社クラレ製)10.0g、純水10.0g、及び得られた前記金コア銀シェルナノロッド分散液2.0gを混合し、清浄なPETベース(東洋紡績株式会社製、200μm厚み)に1mm厚みのアプリケーターを設置し、塗布バー(#0)を用いてバーコート塗布し、12時間室温で乾燥させた後、PETベースよりPVAフィルムを剥離し、厚み40μmの金コア銀シェルナノロッド含有PVAフィルムを作製した。
【0046】
<分光スペクトルの測定>
得られたPVAフィルムの吸収スペクトルを紫外可視近赤外分光計(日本分光株式会社製、V−670)で測定したところ、含有する金銀複合ナノロッドに由来する吸収を示した。
【0047】
−偏光板の作製−
得られた厚み40μmのPVAフィルムを、90℃で加熱しながら、4倍まで自動二軸延伸機で一軸延伸し、偏光性を示すフィルム(偏光板)を作製した。
【0048】
<配向度>
得られた偏光板の偏光性を評価した。分光スペクトルは、紫外可視近赤外分光計(日本分光株式会社製、V−670)の試料側の光路に偏光子を1枚設置し、偏光子と偏光板試料の延伸軸のなす角度を0°、90°に変えて、偏光スペクトルを測定し、0°と90°のスペクトルから金銀複合ナノロッドの長軸由来の極大吸収波長の吸光度の比率を配向度Sとした。この配向度Sは下記数式1で表される。作製した製造例1の偏光板の配向度は0.94であった。また偏光子と偏光板試料の延伸軸のなす角度を45°にして透過スペクトルを測定した結果、偏光板の透過率は、50.2%であった。
<数式1>
S=(A0deg.−A90deg.)/(A0deg.+2A90deg.
【0049】
(製造例2)
−円偏光板の作製−
1/4波長板としてピュアエース WR(帝人株式会社製)を用い、前記製造例1の偏光板の偏光吸収軸に対し、前記1/4波長板の光軸が45度となるように粘着シート(パナック株式会社製、PD−S1)を介して貼り合わせ、製造例2の円偏光板を作製した。
【0050】
(製造例3)
−円偏光板の作製−
製造例2において、偏光板としてヨウ素・PVA系の偏光板(サンリッツ社製)を用いた以外は、製造例2と同様にして、製造例3の円偏光板を作製した。
【0051】
(実施例1〜2及び比較例1)
実施例1として製造例2で作製した円偏光板、及び実施例2として製造例3で作製した円偏光板を用い、以下のようにして光学系モデルを使用し、点灯視認性及び耐光性を評価した。なお、比較例1として、円偏光板を用いないで同様に評価を行った。
【0052】
<点灯視認性の評価>
図5に示す光学系モデルを組み立てて、点灯視認性を評価した。即ち、すり鉢型反射鏡を有したペンライト(MAG INSTRUMENT社製、MINI MAGLITE AA)の光出射面に、製造例2の円偏光板及び製造例3の円偏光板を1/4波長板側の面をペンライト側にして配置し、該円偏光板の前に赤色フィルター(光伸光学工業株式会社製、LCD用赤色カラーフィルター)を配置した。
外光ランプとして人工太陽灯(セリック社製、SOLAX500−1AF)をペンライト先端から5mの距離でペンライトの正面軸(1点鎖線)に対し角度+10度で配置し、ペンライトに照射した。
デジタルカメラをペンライト先端から5mの距離でペンライトの正面軸(1点鎖線)に対し角度−3度で配置し、ペンライトの状態を撮影した。
【0053】
この光学系モデルを用いて、円偏光板の有無によるペンライトの点灯視認性を評価した。結果を図6〜図9に示す。
図6は、比較例1として、円偏光板を配置せずにペンライトを点灯した状態を示す。図7は、比較例1として、円偏光板を配置せずにペンライトを消灯した状態を示す。このように、円偏光板を配置しないと、強い外光が照り込んでいると、照り返しによってペンライト自身が点灯しているか否かが肉眼では分かり難く、点灯誤認を生じるおそれが高いことが分かった。
図8は、実施例1及び2として、製造例2及び製造例3で作製した円偏光板を配置してペンライトを点灯した状態を示す。図9は、実施例1及び2として、製造例2及び製造例3で作製した円偏光板を配置してペンライトを消灯した状態を示す。このように、光出射面に円偏光板が配置されていると、外光の照り返しが抑制されてペンライト自身の点灯及び消灯が確認し易いことが分かった。
【0054】
<耐光性>
製造例2及び製造例3で作製した円偏光板について、超高圧水銀灯を使用して、1,000時間爆光試験を行い、爆光後において上記同様に点灯視認性を評価した。
製造例2の円偏光板を用いた実施例1では、図8及び図9と同様な結果が得られた。製造例3の円偏光板を用いた実施例2では、図6及び図7と同様の結果が得られた。このことから、実施例1で用いた製造例2の円偏光板は、実施例2で用いた製造例3の円偏光板に比べて耐光性に優れていることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の灯具は、高輝度外光照り込み時の点灯誤認を防止することができ、耐久性に優れているので、例えば乗用車(RV車、キャンピングカー等も含む)、バス、トラック、二輪車、自転車、鉄道車両などの各種車両のテールランプとして好適である。
また、高輝度外光照り込み時の屋外表示などにおいてコントラストが飛躍的に向上したLEDディスプレイ等の表示装置に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】図1は、本発明の灯具の一例を示す概略図である。
【図2】図2は、本発明の灯具の他の一例を示す概略図である。
【図3】図3は、外光照り込み時の点灯誤認を防止する原理を示す図である。
【図4】図4は、円偏光板における直線偏光板と1/4波長板との貼り合せ方法を示す図である。
【図5】図5は、実施例における点灯視認性を評価するための光学系モデルを示す図である。
【図6】図6は、比較例1の円偏光板を配置せずにペンライトを点灯した状態を示す写真である。
【図7】図7は、比較例1の円偏光板を配置せずにペンライトを消灯した状態を示す写真である。
【図8】図8は、実施例1の製造例2で作製した円偏光板、及び実施例2の製造例3で作製した円偏光板を配置してペンライトを点灯した状態を示す写真である。
【図9】図9は、実施例1の製造例2で作製した円偏光板、及び実施例2の製造例3で作製した円偏光板を配置してペンライトを消灯した状態を示す写真である。
【符号の説明】
【0057】
1 円偏光板
2 光源
3 ランプ本体
4 光出射面(ランプカバー)
5 ランプボックス
10 直線偏光板
11 1/4波長板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光出射面に円偏光板を配してなることを特徴とする灯具。
【請求項2】
ランプ本体と、該ランプ本体の内部に配された光源と、該光源からの出射光が通過するように光出射面に配された円偏光板とを備えた請求項1に記載の灯具。
【請求項3】
円偏光板が直線偏光板と1/4波長板とからなり、該直線偏光板の偏光吸収軸に対し該1/4波長板の光軸が45度となるように貼り合せてなる請求項1から2のいずれかに記載の灯具。
【請求項4】
円偏光板が、該円偏光板における1/4波長板側の面が光源側となるように光出射面に配された請求項3に記載の灯具。
【請求項5】
直線偏光板における偏光子が、棒状金属微粒子である請求項3から4のいずれかに記載の灯具。
【請求項6】
棒状金属微粒子が、金、銀、銅、及びアルミニウムから選択される少なくとも1種からなる請求項5に記載の灯具。
【請求項7】
車両用尾灯である請求項1から6のいずれかに記載の灯具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−73494(P2010−73494A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−239908(P2008−239908)
【出願日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】