説明

災害対策システム

【課題】複数の焼却炉施設およびこれらのネットワークによるシステムを、災害対策用として有効に活用して、被災者の安全を守ることができる災害対策システムを提供する。
【解決手段】複数の焼却炉施設2と、これら焼却炉施設2に対して通信可能な監視センター1とを有する災害対策システムであって、上記監視センター1が、GPS津波計6を一例とする災害検知手段からの津波検知信号S1を受信する受信部と、この受信部で受信した信号に基づき津波Tの規模を判断する判断部と、この判断部で判断された津波Tの規模に基づき焼却炉施設2に救援信号S2を発信する発信部とを備え、上記救援信号S2が、津波Tの規模と、被災地Vの場所との情報を含み、上記焼却炉施設2が、上記救援信号S2を受信して被災地Vに津波通知信号S3を発信する津波対応装置と、被災地Vから避難する被災者が利用可能な避難用設備とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、災害対策システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
焼却炉施設は、ごみを焼却して処理するものであるから、その臭気対策などの理由から人里離れた場所に建設するのが通例である。実際には、ほとんどの焼却炉施設が山間部や高台、埋立地など住宅地から離れた場所に設けられている。近年では、このような遠隔地に設けられた焼却炉施設の効率的な運転管理のため、複数の焼却炉施設によるネットワークシステムが構築され、ごみ処理の地域的な管理が行われている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−257376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載のシステムだと、住宅地から離れた場所という災害に強い立地にある焼却炉施設と、各焼却炉施設の情報を一括管理する中央監視センターとのネットワークにより、災害対策用としても活用できる余地がある。特に、焼却炉施設の数が多ければ、上記システムはネットワーク外部性の効果により、災害対策用として非常に有効である。しかしながら、現状のシステムは、各焼却炉施設の効率的な運転管理のために用いられているに過ぎず、災害対策用として活用されていなかった。
【0005】
そこで本発明は、複数の焼却炉施設およびこれらのネットワークによるシステムを、災害対策用として有効に活用して、被災者の安全を守ることができる災害対策システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の請求項1に係る災害対策システムは、複数の焼却炉施設と、これら焼却炉施設に対して通信可能な監視センターとを有する災害対策システムであって、
上記監視センターが、災害検知手段からの災害検知信号を受信する受信部と、この受信部で受信した信号に基づき災害の規模を判断する判断部と、この判断部で判断された災害の規模に基づき焼却炉施設に救援信号を発信する発信部とを備え、
上記救援信号が、災害の規模と、被災地の場所との情報を含み、
上記焼却炉施設が、上記救援信号を受信して被災地に災害通知信号を発信する災害対応装置と、被災地から避難する被災者が利用可能な避難用設備とを備えたものである。
【0007】
また、本発明の請求項2に係る災害対策システムは、請求項1に記載の災害対策システムにおいて、災害検知手段が、気象観測計、河川水位計、波浪計または地すべり計を備えたものである。
【0008】
さらに、本発明の請求項3に係る災害対策システムは、請求項1に記載の災害対策システムにおいて、災害検知手段が地震計およびGPS津波計を備え、焼却炉施設が高台に設けられたものである。
【0009】
また、本発明の請求項4に係る災害対策システムは、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の災害対策システムにおいて、災害対応装置が、救援信号の受信により被災地から焼却炉施設までの避難経路を選定する経路選定部を備え、
災害通知信号が、上記経路選定部で選定された避難経路の情報を含むものである。
【0010】
また、本発明の請求項5に係る災害対策システムは、請求項4に記載の災害対策システムにおいて、経路選定部で選定された避難経路を往復して被災者を被災地から焼却炉施設まで輸送および/または誘導し得る移動手段が設けられたものである。
【0011】
また、本発明の請求項6に係る災害対策システムは、請求項5に記載の災害対策システムにおいて、焼却炉施設がごみ発電設備を備え、
このごみ発電設備で得られた電力を充電するとともに、充電した電力を移動手段に供給する充電手段が設けられたものである。
【0012】
また、本発明の請求項7に係る災害対策システムは、請求項6に記載の災害対策システムにおいて、避難用設備が、災害用物資を貯蔵し得る防災倉庫と、被災者を収容し得る避難所とを有し、
ごみ発電設備が、上記避難所に収容された被災者に電力を供給するとともに、焼却炉施設の近隣の施設に余剰電力を供給するものである。
【0013】
また、本発明の請求項8に係る災害対策システムは、請求項6または7に記載の災害対策システムにおいて、ごみ発電設備が、ごみの燃焼で発電を行うためのボイラを有し、
焼却炉施設が、このボイラに用いられるボイラ水を飲料水に精製し得る飲料用浄水装置を備えたものである。
【発明の効果】
【0014】
上記災害対策システムによると、災害の発生を被災地に知らせて、焼却炉施設の避難用設備に被災者を避難させることで、被災者の安全を守ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態に係る災害対策システムの概略構成を示すブロック図である。
【図2】同災害対策システムにおける監視センターの構成を示すブロック図である。
【図3】同災害対策システムにおける焼却炉施設およびその近隣の施設を示す模式図である。
【図4】同災害対策システムにおける焼却炉施設の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態に係る災害対策システムについて図面に基づき説明する。
まず、上記災害対策システムの概略構成について簡単に説明する。
図1に示すように、上記災害対策システムは、複数の焼却炉施設2と、これら焼却炉施設2に対して通信可能な監視センター1とから構成される。複数の焼却炉施設2を地域(例えば県単位であり、この場合、各焼却炉施設は市町村レベル)で管理するため、上記焼却炉施設2の数は、十分なネットワークを構築するためにも、多い方(10棟以上)が好ましい。図1では一例として、5棟の焼却炉施設2を示す。上記監視センター1は、地震計(図示しない)およびGPS津波計6で検知された津波Tの情報から津波検知信号(災害検知信号の一例である)S1により市街地や住宅地への津波Tの到来を予測し、上記各焼却炉施設2に救援信号S2を発信するものである。なお、以下では、津波Tが到来した市街地や住宅地だけでなく、津波Tが到来すると予測される市街地や住宅地も被災地Vといい、この被災地Vの居住者を被災者という。また、地震計およびGPS津波計6は、災害検知手段の一例である。
【0017】
次に、上記監視センター1について詳細に説明する。
図2に示すように、上記監視センター1は、津波検知信号S1を受信する受信部11と、この受信部11で受信した津波検知信号S1に基づき津波Tの規模を判断する判断部12と、この判断部12で判断された津波Tの規模に基づき焼却炉施設2に救援信号S2を発信する発信部15とを備えている。
【0018】
上記津波検知信号S1は、図1に示すGPS津波計6が設置された海面での津波Tの情報と、地震計が設置された場所での地震の情報とを含むものである。上記海面での津波Tは、GPS津波計6、GPS衛星7、並びに、図示しないが陸上のGPS基準局および観測局により計測される。また、図2に示すように、上記判断部12は、津波Tの到来による被害の有無および規模を予測する被害予測部13と、この被害予測部13で予測した被害の規模に基づき津波Tに対応すべき焼却炉施設2を選定する施設選定部14とから構成される。上記被害予測部13は、津波検知信号S1に基づき津波Tが到来する地域を予測し、その地域が農地などではなく、人の密集する市街地や住宅地であれば「被害有り」と判断して被災者概数を算出し、その地域が市街地や住宅地でなければ「被害無し」と判断するものである。上記被害予測部13による被災者概数の算出は、津波Tの波高および波長と、当該津波Tが到来する市街地や住宅地におけるメッシュ標高データと、当該市街地や住宅地の居住者分布データとに基づき、津波Tが到来した後の当該市街地や住宅地における予測浸水地域を計算することにより行われる。なお、この予測は、被災地域を特定するためのもので被災量を予測するものではない。
【0019】
また、上記施設選定部14は、被害予測部13で「被害有り」と判断された場合、図1に示す被災地Vに最も近い焼却炉施設2を、被災者を受け入れるべき焼却炉施設2(以下では「受入施設2R」という)として選定するものである。また、上記施設選定部14は、被害予測部13で算出された被災者概数が、上記受入施設2Rで収容できる被災者数を超えている場合、上記受入施設2Rの近隣の焼却炉施設2を、受入施設2Rを支援すべき焼却炉施設2(以下では「支援施設2S」という)として選定するものである。支援施設2Sによる支援の具体的な内容は、受入施設2Rに不足する災害用物資の提供や、受入施設2Rから被災者の引き受けなどである。なお、受入施設2Rおよび支援施設2Sは、いずれも1棟に限定されるものではなく、必要に応じた数だけ選定される。ところで、上記救援信号S2の内容を具体的に説明すると、受入施設2Rに対しては、被災者を受け入れて被災地Vの災害対応を指示する信号(以下では受入信号という)であり、支援施設2Sに対しては、受入施設2Rの支援を指示する信号(以下では支援信号という)である。また、上記救援信号S2は、上記受入信号または支援信号であるか否かにかかわらず、津波Tの情報を含むものである。なお、津波Tの情報とは、例えば、津波Tの波高および波長、被災地Vの場所、津波Tの被災地Vへの到来予定時刻、被災地Vにおける予測浸水地域および被災者概数などの情報である。
【0020】
次に、焼却炉施設2やその近隣について説明する。
図3に示すように、焼却炉施設2は、高台に設けられており、津波Tの直撃を受けるおそれがないと考えられる。一方、市街地や住宅地Vは、利便性のため海岸近くや低い平地にあることが多く、津波Tによる被害を受けやすい。このような津波Tの到来を予測して市街地や住宅地Vを津波Tによる被害から守るため、津波Tを検知するGPS津波計6が沖合に設置されるとともに、津波Tの原因となる地震を検知する地震計(図示しない)が陸上に設置されている。
【0021】
上記市街地や住宅地Vの居住者は、津波Tの到来を予測することができれば、予め高台に避難することができる。高台の避難先としては、上記焼却炉施設2や小学校Eなど、広い空間を有する施設である。特に負傷者は、これら焼却炉施設2や小学校Eではなく、高台の病院Hに収容されて、治療を受けることになる。このような高台の小学校Eや病院Hは、上記焼却炉施設2の近隣にあり、詳しくは後述するが、当該焼却炉施設2から直接余剰電力の送電供給を受けている。
【0022】
次に、上記焼却炉施設2について詳しく説明する。
図4に示すように、焼却炉施設2は、上記監視センター1と通信可能で津波Tの発生に対応し得る津波対応装置(災害対応装置の一例である)21と、当該焼却炉施設2で消費される電力以上の発電能力を有する発電設備31と、被災者が利用可能な避難用設備41とを備えている。また、詳しくは後述するが、上記焼却炉施設2の敷地内には、被災者を被災地Vから焼却炉施設2まで輸送し得る電気バス(移動手段の一例である)47を多数常駐させている駐車場がある。
【0023】
上記津波対応装置21は、監視センター1からの救援信号S2を受信する通信部22と、この通信部22で受信した救援信号S2の種類に応じてサイレン24を鳴動させる警報部23と、上記通信部22で受信した救援信号S2に基づき電気バス47の経路を選定する経路選定部25と、この経路選定部25で選定された経路および救援信号S2に含まれた津波Tの情報を表示するモニター26と、津波通知信号(災害通知信号の一例である)S3を発信する津波通知部27と有している。ところで、上記津波検知信号S1、救援信号S2および津波通知信号S3による通信は、帯域無線または通信衛星が利用される。
【0024】
上記経路選定部25は、通信部22が受入信号を受信した場合、すなわち当該焼却炉施設2が受入施設2Rとなる場合、被災地Vから当該焼却炉施設2までの最適な避難経路を選定するものである。一方、上記経路選定部25は、通信部22が支援信号を受信した場合、すなわち当該焼却炉施設2が支援施設2Sとなる場合、受入施設2Rから当該焼却炉施設2までの最適な支援経路を選定するものである。また、上記経路選定部25による避難経路または支援経路の選定は、ファジィツリーおよび学習機能(例えばニューラルネットワークや遺伝的アルゴリズム)を併用して、地図選択により行われる。ところで、上記津波通知部27からの津波通知信号S3は、通信部22が受入信号を受信した場合、すなわち当該焼却炉施設2が受入施設2Rとなる場合、被災地Vに津波Tが到来する旨の情報と、被災地Vから当該受入施設2Rまでの避難経路の情報とを含み、被災地Vおよび当該受入施設2Rの電気バス47に向けて発信されるものである。一方、上記津波通知部27からの津波通知信号S3は、通信部22が支援信号を受信した場合、すなわち当該焼却炉施設2が支援施設2Sとなる場合、受入施設2Rから当該支援施設2Sまでの支援経路の情報を含み、当該支援施設2Sの電気バス47に向けて発信されるものである。
【0025】
上記発電設備31は、ごみ発電設備32および太陽光発電設備35を有している。また、当該発電設備31からの電力を焼却炉施設2内の各所38,43,44,46に供給する配電盤37と、この配電盤37からの電力を焼却炉施設2外の近隣の施設に供給する送電装置38とを、上記焼却炉施設2は備えている。この近隣の施設とは、上記焼却炉施設2の周辺において避難用に利用できる施設であり、例えば小学校Eや病院Hなどである。また、上記ごみ発電設備32は、焼却炉施設2における主たる発電設備であり、ごみの焼却で発生する熱エネルギーを利用して発電を行うものである。具体的に説明すると、上記ごみ発電設備32は、ごみを焼却する焼却炉33と、この焼却炉33からの熱エネルギーを利用してボイラによりタービンを回して発電する発電装置34とから構成される。さらに、上記太陽光発電設備35は、焼却炉施設2における従たる発電設備であり、当該焼却炉施設2の敷地内に敷設された太陽電池で太陽光エネルギーを利用して発電を行うものである。なお、従たる発電設備として、上記太陽光発電設備35の他に、焼却炉施設2の敷地内に、風力発電設備、小水力発電設備および温水発電設備を設置してもよい。この温水発電設備は、温水の熱エネルギーを利用して発電を行うものである。特に、焼却炉施設では随所に熱交換用の温水が使用されているが、その温水の熱エネルギーは有効に活用されていないので、本実施の形態では、温水発電設備により、焼却炉施設2で使用された温水から発電を行う。また、焼却炉施設2で使用された温水は、温水発電設備により発電用として活用される他、近隣の大浴場や温水プールにも供給される。
【0026】
上記避難用設備41は、災害用物資を貯蔵した防災倉庫42と、被災者を少なくとも500人以上収容し得る広大な避難所43と、この避難所43に収容された被災者が利用し得る大規模な入浴設備44とを有している。上記防災倉庫42に貯蔵された災害用物資は、乾パン、缶詰、レトルト食品、インスタント食品、ペットボトル詰めの飲料水などの保存用飲食物や、毛布などの日用雑貨、医薬品などである。なお、上記防災倉庫42における災害用物資の貯蔵量は、上記避難所43で収容され得る最大被災者数×2週間分以上である。さらに、上記入浴設備44は、図示しないが、浴室内に設置された大浴槽と、蛇口やシャワーなど洗体・洗髪のための設備とを有している。この入浴設備44では、生活用浄水装置(後述する)で得られた生活用水を、上記焼却炉33からの熱エネルギーを利用して沸かした湯が用いられる。なお、防災倉庫42に貯蔵された飲料水が枯渇した場合を想定し、焼却炉施設2には、発電装置34のボイラに用いられるボイラ水を飲料水に精製し得る飲料用浄水装置が備えられている。
【0027】
上記焼却炉施設2の建屋の屋上は、図示しないが、野菜などを栽培するために菜園として利用されている。菜園は、被災者および焼却炉施設2の職員に新鮮な野菜などを供給し、焼却炉施設2での避難生活における上記保存用飲食物の消耗を減らし、より長期の避難生活を可能にする。また、上記焼却炉施設2の敷地内には、図示しないが、雨水または近隣の河川水を浄化して生活用水にする生活用浄水装置が設けられている。これら菜園および生活用浄水装置は、被災者および焼却炉施設2の職員に新鮮な野菜などを供給して栄養の偏りを防止するとともに、入浴設備44やトイレの浄化などに用いられる生活用水を供給して、長期の避難生活における精神的な疲労を軽減するためのものである。なお、平時だと、菜園で栽培された新鮮な野菜などは、近隣の住民に販売され、または近隣のスーパーマーケットなどに搬送、販売されている。
【0028】
上記焼却炉施設2の敷地内にある駐車場に多数常駐された電気バス47は、可能な限り多くの被災者を被災地Vから焼却炉施設2まで輸送するため、中型または大型である。また、上記電気バス47には、上記津波通知部27から津波通知信号S3を受信して避難経路または支援経路を当該電気バス47の運転手に知らせるナビゲーション装置(図示しない)が設けられている。なお、このナビゲーション装置は、上記津波通知部27から津波通知信号S3を受信できない場合に備えて、GPSを利用した通常のカーナビゲーション機能を有している。さらに、上記駐車場に隣接して、上記電気バス47に電力を供給する充電スタンド(充電手段の一例である)46が設けられている。この充電スタンド46は、上記配電盤37から電力の供給を受けて充電するとともに、充電コネクターにより、モータバイクや電気バス47、ごみ収集用電気自動車に電力を供給するものである。
【0029】
以下、上記災害対策システムの動作について説明する。
まず、地震が発生し、津波Tが市街地や住宅地Vに到来する場面を想定して説明する。
地震は地震計で検知されるとともに、この地震により発生して沖合まで到来した津波TはGPS津波計6により検知される。そして、地震の情報は地震計が設置された設備から、津波Tの情報は陸上の観測局(GPS津波計6および陸上のGPS基準局からのデータにより津波Tを詳細に解析する)から、津波検知信号S1として発信される。監視センター1では、この津波検知信号S1を受信して市街地や住宅地Vへの津波Tの到来を予測し、各焼却炉施設2に救援信号S2を発信する。
【0030】
救援信号S2のうち受入信号を受信した焼却炉施設2、つまり受入施設2Rでは、警報部23でサイレン24を鳴動させるとともに、経路選定部25で被災地Vから受入施設2Rまでの最適な避難経路が選定される。この避難経路および津波Tの情報は、受入施設2Rのモニター26に表示され、一方で津波通知部27から津波通知信号S3として被災地Vおよび電気バス47に発信される。
【0031】
サイレン24の鳴動により津波Tの到来を知った受入施設2Rの職員は、電気バス47を駐車場から被災地Vに向けて出発させる。電気バス47は、予め災害用物資が満載されるとともに、充電および整備が行われている。出発した電気バス47は、ナビゲーション装置で受入施設2Rから被災地Vまでの最適な避難経路を受信し、効率よく被災地Vに向かう。
【0032】
被災地Vでは、受入施設2Rからの津波通知信号S3を受信し、被災者に津波Tの到来が知らされる。そして、被災者は、受入施設2Rから電気バス47が到着するまで、避難準備を進める。被災地Vに電気バス47が到着すると、当該電気バス47に満載した災害用物資が降ろされるとともに、被災者を電気バス47に収容する。その後、電気バス47は、受入施設2Rからの避難経路を引き返し、受入施設2Rやその近隣の小学校Eなど、津波Tの直撃を受けない高台に向かう。その際に、電気バス47は、被災者を乗せた他の車両を誘導することで、より多くの被災者を最適な避難経路で避難させる。このように、受入施設2Rと被災地Vとを結ぶ最適な避難経路において、電気バス47でピストン輸送することにより、可能な限り多くの被災者を速やかに避難させるとともに、災害用物資を被災地Vに届ける。
【0033】
電気バス47で受入施設2Rに輸送された被災者は、避難所43に収容されて、津波Tによる混乱が収まるまで当該避難所43で避難生活をすることになる。避難生活において、被災者は、防災倉庫42に貯蔵された保存用飲食物、日用雑貨および医薬品の配給を受ける。また、新鮮な飲食物については菜園および生活用浄水装置から、必要な電力については発電設備31から、被災者に供給される。さらに、被災者は入浴設備44により入浴することで、避難生活に伴う精神的な疲労を軽減させ、衛生を保ち疫病の発生が抑えられる。ところで、受入施設2Rの近隣にある小学校Eや病院Hは、受入施設2Rと同様に被災者を受け入れるが、停電となった場合でも受入施設2Rの送電装置38から優先的に電力の供給を受けるなど、被災者の受入体制が強化されている。
【0034】
救援信号S2のうち支援信号を受信した焼却炉施設2、つまり支援施設2Sでは、警報部23でサイレン24を鳴動させるとともに、経路選定部25で受入施設2Rから支援施設2Sまでの最適な支援経路が選定される。この支援経路および津波Tの情報は、支援施設2Sのモニター26に表示され、一方で津波通知部27から津波通知信号S3として電気バス47に発信される。
【0035】
サイレン24の鳴動により津波Tの到来を知った支援施設2Sの職員は、電気バス47を駐車場から受入施設2Rに向けて出発させる。電気バス47は、予め災害用物資が満載されるとともに、充電および整備が行われている。出発した電気バス47は、ナビゲーション装置で支援施設2Sから受入施設2Rまでの最適な支援経路を受信し、効率よく受入施設2Rに向かう。
【0036】
受入施設2Rに電気バス47が到着すると、当該電気バス47に満載した災害用物資が降ろされるとともに、被災者を電気バス47に収容する。その後、電気バス47は、支援施設2Sからの支援経路を引き返す。また、被災地Vから被災者の避難に緊急を要する場合、支援施設2Sの電気バス47は支援施設2Sに引き返すことなく、受入施設2Rと被災地Vとのピストン輸送に従事する。
【0037】
このように、上記災害対策システムによると、津波Tの到来および規模を被災地Vに早期に知らせて、被災者を焼却炉施設2の避難用設備41に避難させることで、被災者の安全を守ることができる。
【0038】
また、被災者を焼却炉施設2の避難用設備41に輸送する電気バス47は、焼却炉施設2と被災地Vとの最適な避難経路を往復することで、速やかに被災者を避難させ、より多くの被災者の安全を守ることができる。
【0039】
さらに、焼却炉施設2の広大な避難所43と、防災倉庫42に貯蔵された災害用物資と、発電設備31で得られた電力とにより、被災者が長期の避難生活を送ることができる。また、被災者は、菜園から新鮮な野菜などが供給されるとともに、入浴設備により入浴することで、避難生活による被災者の精神的な疲労を軽減させることができる。
【0040】
また、複数の焼却炉施設2のうち、被災地Vに最も近くて被災者を受け入れる受入施設2Rと、受入施設2Rを支援する支援施設2Sとに分けて選定されることで、実際の被災者数が1棟の焼却炉施設2で収容できる被災者数を超えても、十分に対応することができる。
【0041】
また、焼却炉施設2に備えられたごみの焼却によるごみ発電設備32および太陽光発電設備35により、化石燃料(石油、石炭、天然ガスなど)の補給を必要とせずに発電するため、緊急時に燃料切れによる電力不足が発生することなく、焼却炉施設2を安定した防災拠点として活用することができる。さらに、焼却炉施設2は、ごみ発電設備32および太陽光発電設備35により豊富な電力が得られるので、直接余剰電力を近隣の小学校Eや病院Hに送電供給することができる。
【0042】
ところで、上記実施の形態では、災害検知手段の一例として、地震計およびGPS津波計6について説明したが、これに限定されるものではなく、気象観測計、河川水位計、波浪計、地すべり計、災害監視衛星、風量計、放射能検出器、または官庁若しくは公共の防災設備であってもよい。なお、この場合、焼却炉施設2は、土砂災害や洪水などの災害から直接的な影響を受けない場所、例えば、急傾斜地や河川などから離れた場所に設けられる。
【0043】
また、上記実施の形態では、移動手段として電気バス47について説明したが、これに限定されるものではなく、焼却炉施設2の敷地内に設けられたヘリポートに離発着するヘリコプター、被災地Vと焼却炉施設2とを接続するモノレールなどであってもよい。このモノレールは、被災地Vと焼却炉施設2との往復において、往時は自重により被災地Vまで滑り降り、復時は電力により焼却炉施設2に自動的に戻るように設計されたものである。なお、平時だと、上記電気バス47やモノレールは、ごみの地域収集車として利用されている。
【0044】
さらに、上記実施の形態では、焼却炉施設2が設けられた場所について、高台である以外に詳しく説明しなかったが、離島や過疎集落など日用品の供給が途絶えがちな場所であってもよい。このような焼却炉施設2だと、余剰電力や温水、災害用物資、新鮮な野菜などを離島や過疎集落の住民に供給することで、より住民の生活に密着し、平時においても住民を支援することができる。
【符号の説明】
【0045】
S1 津波検知信号
S2 救援信号
S3 津波通知信号
T 津波
V 被災地
1 監視センター
2 焼却炉施設
2R 受入施設
2S 支援施設
11 受信部
12 判断部
15 発信部
21 津波対応装置
31 発電設備
41 避難用設備

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の焼却炉施設と、これら焼却炉施設に対して通信可能な監視センターとを有する災害対策システムであって、
上記監視センターが、災害検知手段からの災害検知信号を受信する受信部と、この受信部で受信した信号に基づき災害の規模を判断する判断部と、この判断部で判断された災害の規模に基づき焼却炉施設に救援信号を発信する発信部とを備え、
上記救援信号が、災害の規模と、被災地の場所との情報を含み、
上記焼却炉施設が、上記救援信号を受信して被災地に災害通知信号を発信する災害対応装置と、被災地から避難する被災者が利用可能な避難用設備とを備えたことを特徴とする災害対策システム。
【請求項2】
災害検知手段が、気象観測計、河川水位計、波浪計または地すべり計を備えたことを特徴とする請求項1に記載の災害対策システム。
【請求項3】
災害検知手段が地震計およびGPS津波計を備え、焼却炉施設が高台に設けられたことを特徴とする請求項1に記載の災害対策システム。
【請求項4】
災害対応装置が、救援信号の受信により被災地から焼却炉施設までの避難経路を選定する経路選定部を備え、
災害通知信号が、上記経路選定部で選定された避難経路の情報を含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の災害対策システム。
【請求項5】
経路選定部で選定された避難経路を往復して被災者を被災地から焼却炉施設まで輸送および/または誘導し得る移動手段が設けられたことを特徴とする請求項4に記載の災害対策システム。
【請求項6】
焼却炉施設がごみ発電設備を備え、
このごみ発電設備で得られた電力を充電するとともに、充電した電力を移動手段に供給する充電手段が設けられたことを特徴とする請求項5に記載の災害対策システム。
【請求項7】
避難用設備が、災害用物資を貯蔵し得る防災倉庫と、被災者を収容し得る避難所とを有し、
ごみ発電設備が、上記避難所に収容された被災者に電力を供給するとともに、焼却炉施設の近隣の施設に余剰電力を供給するものであることを特徴とする請求項6に記載の災害対策システム。
【請求項8】
ごみ発電設備が、ごみの燃焼で発電を行うためのボイラを有し、
焼却炉施設が、このボイラに用いられるボイラ水を飲料水に精製し得る飲料用浄水装置を備えたことを特徴とする請求項6または7に記載の災害対策システム。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2013−69179(P2013−69179A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−208332(P2011−208332)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000005119)日立造船株式会社 (764)
【Fターム(参考)】