説明

災害救護支援システムおよび災害救護支援方法

【課題】各傷病者のトリアージ情報を災害医療救護本部110のサーバへ迅速に送り、災害医療救護本部110が収集した各トリアージ情報を元に各病院に対して的確に指揮し、より多くの傷病者を救えるようにする。
【解決手段】災害発生時に救護所130において各傷病者にICタグを付加したIC内蔵トリアージタグ600を割り当てる。そして、医療者はトリアージ情報を筆記にてIC内蔵トリアージタグ600に記載すると共にトリアージ情報端末200を用いてICタグに記録する。また、トリアージ情報端末200はICタグに記録したトリアージ情報を衛星通信端末300および通信衛星120を介して救護本部用サーバ400に送信する。救護本部用サーバ400は収集した各トリアージ情報に基づいて職員に入力された救護指示情報を救護所130や各災害拠点病院131に送信する。救護所130および各災害拠点病院131は救護指示に従い各傷病者を治療する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、救急医療分野や防災医療分野に用いる災害救護支援システムおよび災害救護支援方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、震災などの災害時において当該負傷者の重傷度や治療優先順位などの医療情報を示すトリアージタグは担当者が筆記により紙に必要な事項を書き込むことで作成されている。
このため、各負傷者に対して個別に対応することしかできず、災害全体の負傷者の状況を把握することが困難であった。
【特許文献1】特開2004−240797号公報
【非特許文献1】医療施設の行動基準(第1版)、2000年1月、大阪府医師会 救急・災害医療部
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、例えば、各負傷者のトリアージタグに記載される医療情報を災害救護本部のサーバへ迅速に送ることができるようにすることを目的とする。
これにより、災害救護本部は本発明により収集できた各負傷者の医療情報を元に各病院や災害現場の救護チームなどに対して的確に指揮してより多くの負傷者を救うことができる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の災害救護支援システムは、傷病者毎に割り当てられ傷病者の傷病情報を記憶する記憶媒体を有する電子カードと、傷病情報を入力機器を用いて入力する傷病情報入力部と前記傷病情報入力部が入力した傷病情報を通信機器を用いて前記電子カードの記憶媒体に記憶する第一の通信部と前記傷病情報入力部が入力した傷病情報を通信機器を用いて通信ネットワークに送信する第二の通信部とを備える情報入力端末装置と、前記情報入力端末装置から送信された傷病情報を通信ネットワークを介して通信機器を用いて受信する情報収集部と前記情報収集部が受信した各傷病者情報を出力装置に出力する情報出力部とを備える情報収集サーバ装置とを有することを特徴とする。
【0005】
また、前記電子カードは傷病情報が手書きされる筆記スペースを有することを特徴とする。
【0006】
また、前記電子カードはトリアージタグにIC(Integrated Circuit)タグを付加したものであることを特徴とする。
【0007】
また、前記情報入力端末装置は、前記電子カードから記憶媒体に記憶されている傷病情報を通信機器を用いて読み出す第三の通信部と、前記第三の通信部が読み出した傷病情報を表示装置に表示する入力端末表示部とを備えたことを特徴とする。
【0008】
さらに、前記災害救護支援システムは、前記情報入力端末装置と通信機器を用いて通信して傷病情報を受信する傷病情報受信部と、前記傷病情報受信部が受信した傷病情報を通信機器を用いて通信ネットワークを介して前記情報収集サーバ装置に送信する通信端末通信部とを備える傷病情報通信端末装置を有することを特徴とする。
【0009】
また、前記情報収集サーバ装置は、各傷病者についての救護指示を入力機器を用いて入力する救護指示入力部と、各傷病者を救護する救護拠点の救護拠点端末装置に前記救護指示入力部が入力した救護指示を通信機器を用いて送信する救護指示送信部とを備えたことを特徴とする。
【0010】
本発明の災害救護支援方法は、情報入力端末装置において、傷病情報入力部が傷病情報を入力機器を用いて入力し、傷病者毎に割り当てられ傷病者の傷病情報を記憶する記憶媒体を有する電子カードに第一の通信部が前記傷病情報入力部の入力した傷病情報を通信機器を用いて記憶し、第二の通信部が前記傷病情報入力部の入力した傷病情報を通信機器を用いて通信ネットワークに送信し、情報収集サーバ装置において、情報収集部が前記情報入力端末装置から送信された傷病情報を通信ネットワークを介して通信機器を用いて受信し、情報出力部が前記情報収集部の受信した各傷病者情報を出力装置に出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、例えば、各負傷者のトリアージタグに記載される医療情報を災害救護本部のサーバ(情報収集サーバ装置)へ迅速に送ることができる。
これにより、災害救護本部は収集できた各傷病者の傷病情報を元に各病院や災害現場の救護チームなどに対して的確に指揮してより多くの負傷者を救うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
実施の形態1.
地震などの大規模災害発生時には、災害現場や災害現場付近の救護所において負傷者の救護活動が行われる。そして、災害救護活動では、重傷者を効率よく迅速に医療機関に収容し、一人でも多くの負傷者の命を救うことが求められる。しかし、負傷者の情報が電子的に管理されていない場合、災害医療救護本部で負傷者や救護組織の状況を正確に把握することは不可能である。
そこで、実施の形態1では、地上の通信インフラが破壊されるような大規模な災害が発生しても運用することが可能な衛星通信と携帯通信端末を利用することで、負傷者全体の状況把握を可能とし、各組織での円滑な救護活動を可能とする災害救護支援システムについて説明する。
実施の形態1における災害救護支援システムでは、災害救護活動で実施されるトリアージから得られる負傷者の情報の管理を効率よく行うため、IC(RFID)タグが貼り付けられたトリアージタグを使用する。
以下に、実施の形態1における災害救護支援システムの詳細について説明する。
【0013】
図1は、実施の形態1における災害救護支援システム100の構成図である。
実施の形態1における災害救護支援システム100の構成について、図1に基づいて以下に説明する。
災害救護支援システム100は、以下のものを有して、災害による各傷病者の傷病情報(トリアージ情報、医療情報)を収集して災害医療救護本部110による各病院や各救急車等への的確な指揮を支援する。
【0014】
災害医療救護本部110は、大規模災害が発生した場合に設置され、傷病者の状況や救護組織全体の状況を掌握し、救護活動全体を指揮する組織である。
救護所130(医療救護所)は、災害現場の近くに臨時に設営される救護施設で、病院等から派遣された医師、救急隊員、看護師および医学知識を有する一般市民など(以下、医療者とする)が傷病者の救護にあたる。
災害拠点病院131(近隣災害拠点病院、遠隔災害拠点病院)は、災害時における初期救急医療体制の充実強化を図るための医療機関である。
救急車132や救急ヘリコプター133や救急船舶(図示省略)など(以下、救急搬送機関134という)は、負傷者を災害拠点病院131や一般病院(以下、共に災害拠点病院131という)に搬送する役割を担う。
【0015】
トリアージ情報端末200(情報入力端末装置の一例)は、救護所130において各傷病者に1つずつ割り当てられたIC内蔵トリアージタグ600に当該傷病者の傷病情報の電子データ(以下、トリアージ情報とする)を書き込んだり、IC内蔵トリアージタグ600に記憶されているトリアージ情報を読み出し、読み出したトリアージ情報をディスプレイに表示したりするRFID(Radio Frequency Identification)リーダ・ライタ(IC[Integrated Circuit]リーダ・ライタ)である。トリアージ情報とは、後述するように、各傷病者の治療優先順位を決定するための情報(傷病者の症状、重傷度など)および治療優先順位を示す情報(例えば、死亡、緊急、準緊急、非緊急の種別)である。
また、トリアージ情報端末200は、IC内蔵トリアージタグ600に書き込んだトリアージ情報またはIC内蔵トリアージタグ600から読み出したトリアージ情報を通信衛星120経由で災害医療救護本部110の救護本部用サーバ400に送信したり、通信衛星120経由で送信された災害医療救護本部110からの救護指示情報を受信したりする超小型携帯通信端末である。
【0016】
衛星通信端末300(傷病情報通信端末装置の一例)は、トリアージ情報端末200と無線または有線で通信してIC内蔵トリアージタグ600に書き込まれたトリアージ情報を取得し、取得したトリアージ情報を通信衛星120経由で災害医療救護本部110の救護本部用サーバ400に送信するポータブル端末である。
衛星通信端末300は通信衛星120とのデータ通信を高速に行うために高機能な通信機器を備える。例えば、衛星通信端末300はトリアージ情報端末200より出力電波強度が高いアンテナ装置を備える。
【0017】
通信衛星120は、静止軌道上に位置し、トリアージ情報端末200や衛星通信端末300や救護本部用サーバ400の間での通信データを仲介する。
災害救護支援システム100は通信衛星120を用いてトリアージ情報や救護指示情報を通信することにより、災害の影響により通信ケーブルや無線中継器などの地上通信設備に障害が発生した場合でも通信を可能とし、システムの可用性を向上させる。
【0018】
衛星通信装置111は通信衛星120との間で通信データを搬送する電波を受発信する大型のアンテナ装置であり、通信衛星120から受信したトリアージ情報を救護本部用サーバ400に出力したり、救護本部用サーバ400から出力された救護指示情報を通信衛星120に送信したりする。
【0019】
救護本部用サーバ400は、衛星通信装置111を介して受信した各トリアージ情報を記憶管理する救護データベース490を備え、災害全体の傷病者の状況を管理する傷病者管理端末112や各災害拠点病院131に対して救護指示を与える災害拠点病院情報通信端末113として機能する。
【0020】
各災害拠点病院131の病院端末500(図示省略)は、救護本部用サーバ400から通信衛星120やインターネット940を介して受信した救護指示情報や搬送された傷病者のIC内蔵トリアージタグ600に記憶されているトリアージ情報を表示装置901に表示したり、プリンタ装置906に出力したりして医者、看護師、その他の病院職員(以下、医療者とする)に知らせる。
【0021】
本実施の形態において、「〜サーバ」、「〜端末」というものは「〜サーバ装置」、「〜端末装置」といったコンピュータハードウェアを意味する。
また、「〜データベース」は記憶機器に構成され、コンピュータハードウェアおよびコンピュータソフトウェアを意味する。
【0022】
図2は、従来のトリアージタグ601を示す図である。
図3は、実施の形態1におけるIC内蔵トリアージタグ600の一例を示す図である。
実施の形態1におけるIC内蔵トリアージタグ600(電子カードの一例)は、図2に示すような従来のトリアージタグ601に対して、メモリに電子データを記録しメモリに記録された電子データを無線通信するICタグ610が任意の箇所に付加されている。図3にICタグ610を付加した実施の形態1におけるIC内蔵トリアージタグ600の一例を示す。
従来のトリアージタグ601にはトリアージ情報が筆記にて記載され、実施の形態1におけるIC内蔵トリアージタグ600にはトリアージ情報が筆記にて記載される共にトリアージ情報が電子データ形式でICタグ610に記憶される。
【0023】
トリアージとは、災害発生時など多数の傷病者が同時に発生した場合、傷病者の緊急度や重症度に応じて適切な処置や搬送を行うために傷病者の治療優先順位を決定することをいう。
実施の形態においてトリアージ情報とはトリアージを行うための情報およびトリアージの結果情報を意味し、図2や図3に示すように、氏名、年齢、性別、住所、電話番号、トリアージ実施月日・時刻、トリアージ実施者氏名、搬送機関名、収容医療機関名、トリアージ実施場所、トリアージ実施機関、傷病名、トリアージ区分といった情報が含まれる。また、トリアージ区分において「0」は“死亡”、「I」は“緊急”、「II」は“準緊急”、「III」は“非緊急”といった傷病者の治療優先順位を示す。
【0024】
実施の形態1におけるIC内蔵トリアージタグ600は、トリアージ情報を筆記(手書き)にて記載可能な部分(従来のトリアージタグ601)とトリアージ情報を電子データとして記憶可能な部分(ICタグ610部分)とを有する構成であることを特徴とする。
このようなIC内蔵トリアージタグ600を用いることにより、医療者が筆記されたトリアージ情報に基づいて当該傷病者に対して適切な処置を行えるだけでなく、災害医療救護本部110では各傷病者のトリアージ情報の電子データを収集して各救護所130や各災害拠点病院131に対して適切な救護指示を与えることができる。
【0025】
但し、実施の形態1においてIC内蔵トリアージタグ600として説明するものは、従来のトリアージタグ601にICタグ610を付加したものでなくても構わない。例えば、磁気記憶式クレジットカードやICキャッシュカードなどのように電子データの入出力が可能なものであればよい。特に、傷病者毎に発行できるものがよい。さらに、筆記可能な部分を有するものが好ましい。
【0026】
図4は、実施の形態1におけるトリアージ情報端末200、衛星通信端末300、救護本部用サーバ400および病院端末500のハードウェア資源の一例を示す図である。
図4において、トリアージ情報端末200、衛星通信端末300、救護本部用サーバ400および病院端末500は、プログラムを実行するCPU911(Central・Processing・Unit、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、プロセッサともいう)を備えている。CPU911は、バス912を介してROM913、RAM914、通信ボード915(または、通信チップ)、表示装置901、キーボード902(または、入力ボタン)、磁気ディスク装置920と接続され、これらのハードウェアデバイスを制御する。さらに、衛星通信端末300、救護本部用サーバ400および病院端末500のCPU911はマウス903、FDD904(Flexible・Disk・Drive)、CDD905(コンパクトディスク装置)、プリンタ装置906などにも接続され、これらを制御する。磁気ディスク装置920の代わりに、光ディスク装置、メモリカード読み書き装置などの記憶装置でもよい。
RAM914は、揮発性メモリの一例である。ROM913、FDD904、CDD905、磁気ディスク装置920の記憶媒体は、不揮発性メモリの一例である。これらは、記憶機器、記憶装置あるいは記憶部の一例である。また、入力データが記憶されている記憶機器は入力機器、入力装置あるいは入力部の一例であり、出力データが記憶される記憶機器は出力機器、出力装置あるいは出力部の一例である。
通信ボード915、キーボード902、スキャナ装置907、FDD904などは、入力機器、入力装置あるいは入力部の一例である。
また、通信ボード915、表示装置901、プリンタ装置906などは、出力機器、出力装置あるいは出力部の一例である。
【0027】
通信ボード915は、有線または無線により、LAN、インターネット940、ISDN等のWAN(ワイドエリアネットワーク)、電話回線網、衛星通信網などの通信網に接続されている。
【0028】
磁気ディスク装置920には、OS921(オペレーティングシステム)、ウィンドウシステム922、プログラム群923、ファイル群924が記憶されている。プログラム群923のプログラムは、CPU911、OS921、ウィンドウシステム922により実行される。
【0029】
上記プログラム群923には、実施の形態において「〜部」として説明する機能を実行するプログラムが記憶されている。プログラムは、CPU911により読み出され実行される。
【0030】
ファイル群924には、実施の形態において、「〜部」の機能を実行した際の「〜の判定結果」、「〜の計算結果」、「〜の処理結果」などの結果データ、「〜部」の機能を実行するプログラム間で受け渡しするデータ、その他の情報やデータや信号値や変数値やパラメータが、「〜ファイル」や「〜データベース」の各項目として記憶されている。トリアージ情報や救護指示情報などはファイル群924に含まれるものの一例である。
「〜ファイル」や「〜データベース」は、ディスクやメモリなどの記録媒体に記憶される。ディスクやメモリなどの記憶媒体に記憶された情報やデータや信号値や変数値やパラメータは、読み書き回路を介してCPU911によりメインメモリやキャッシュメモリに読み出され、抽出・検索・参照・比較・演算・計算・処理・出力・印刷・表示などのCPUの動作に用いられる。抽出・検索・参照・比較・演算・計算・処理・出力・印刷・表示のCPUの動作の間、情報やデータや信号値や変数値やパラメータは、メインメモリやキャッシュメモリやバッファメモリに一時的に記憶される。
また、実施の形態において説明するフローチャートの矢印の部分は主としてデータや信号の入出力を示し、データや信号値は、RAM914のメモリ、FDD904のフレキシブルディスク、CDD905のコンパクトディスク、磁気ディスク装置920の磁気ディスク、その他光ディスク、ミニディスク、DVD(Digital・Versatile・Disc)等の記録媒体に記録される。また、データや信号値は、バス912や信号線やケーブルその他の伝送媒体によりオンライン伝送される。
【0031】
また、実施の形態において「〜部」として説明するものは、「〜回路」、「〜装置」、「〜機器」であってもよく、また、「〜ステップ」、「〜手順」、「〜処理」であってもよい。すなわち、「〜部」として説明するものは、ROM913に記憶されたファームウェアで実現されていても構わない。或いは、ソフトウェアのみ、或いは、素子・デバイス・基板・配線などのハードウェアのみ、或いは、ソフトウェアとハードウェアとの組み合わせ、さらには、ファームウェアとの組み合わせで実施されても構わない。ファームウェアとソフトウェアは、プログラムとして、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、DVD等の記録媒体に記憶される。プログラムはCPU911により読み出され、CPU911により実行される。すなわち、プログラムは、「〜部」としてコンピュータを機能させるものである。あるいは、「〜部」の手順や方法をコンピュータに実行させるものである。
【0032】
図5は、実施の形態1におけるトリアージ情報端末200の機能構成図である。
実施の形態1におけるトリアージ情報端末200の機能構成について、図5に基づいて以下に説明する。
【0033】
図5において、トリアージ情報端末200(情報入力端末装置の一例)は、トリアージ情報入力部210、ICリーダ・ライタ部220、情報端末LAN通信部230、情報端末衛星通信部240、情報端末表示部250および情報端末記憶部290を備える。
【0034】
トリアージ情報入力部210(傷病情報入力部の一例)はトリアージ情報(傷病情報の一例)を入力機器を用いて入力する。例えば、トリアージ情報端末200は表示装置901としてタッチパネルディスプレイを備え、トリアージ情報入力部210はタッチパネルディスプレイで押下され指定されたトリアージ情報を入力する。また例えば、トリアージ情報入力部210はタッチパネルディスプレイにスタイラスペン(入力ペン)を用いて入力された文字をCPUを用いて文字認識し、認識した文字情報をトリアージ情報として入力する。また例えば、トリアージ情報入力部210は十字キーや10キーや決定キーの押下により指定されたトリアージ情報を入力する。
【0035】
ICリーダ・ライタ部220(第一の通信部、第三の通信部の一例)はIC内蔵トリアージタグ600のICタグ610に対してRFID通信機器を用いて接触または非接触によりデータ通信を行い、データの書き込み・読み出しを行う。例えば、ICリーダ・ライタ部220はトリアージ情報入力部210が入力したトリアージ情報をIC内蔵トリアージタグ600のICタグ610に記憶する。また、ICリーダ・ライタ部220はIC内蔵トリアージタグ600のICタグ610に記憶されているトリアージ情報を取得する。
【0036】
情報端末LAN通信部230(第二の通信部の一例)は通信機器を用いて無線または有線により衛星通信端末300とデータ通信を行う。例えば、情報端末LAN通信部230はトリアージ情報入力部210が入力したトリアージ情報を無線LANにおいて衛星通信端末300に送信する。また例えば、情報端末LAN通信部230は救護本部用サーバ400や他のトリアージ情報端末200から送信された情報を衛星通信端末300を介して受信する。
【0037】
情報端末衛星通信部240(第二の通信部の一例)は通信機器を用いて無線により通信衛星120とデータ通信を行う。例えば、情報端末衛星通信部240はトリアージ情報入力部210が入力したトリアージ情報を衛星通信ネットワークにおいて通信衛星120に送信する。また例えば、情報端末衛星通信部240は救護本部用サーバ400や他のトリアージ情報端末200から送信された情報を衛星通信ネットワークにおいて通信衛星120を介して受信する。
【0038】
情報端末表示部250(入力端末表示部の一例)はトリアージ情報端末200のディスプレイ(表示装置901)にトリアージ情報端末200で利用する各種情報を表示する。例えば、情報端末表示部250はトリアージ情報入力部210が入力したトリアージ情報、ICリーダ・ライタ部220が取得したIC内蔵トリアージタグ600に記憶されているトリアージ情報、情報端末LAN通信部230が衛星通信端末300を介して救護本部用サーバ400や他のトリアージ情報端末200から受信した情報、情報端末衛星通信部240が通信衛星120を介して救護本部用サーバ400や他のトリアージ情報端末200から受信した情報をディスプレイに表示する。また例えば、トリアージ情報の指定用に予め用意されたトリアージ情報の入力項目を選択するためのメインメニュー画面、各トリアージ情報項目の指定値を選択するためのプルダウンメニュー、傷病箇所を指定するための人体マップなどの表示情報が情報端末記憶部290に記憶され、情報端末表示部250は情報端末記憶部290に記憶されているこのようなトリアージ情報指定用画面情報をディスプレイに表示する。
【0039】
情報端末記憶部290はトリアージ情報端末200で用いる各種情報を記憶機器を用いて記憶管理する。例えば、情報端末記憶部290はトリアージ情報入力部210が入力したトリアージ情報、ICリーダ・ライタ部220が取得したIC内蔵トリアージタグ600に記憶されているトリアージ情報、情報端末LAN通信部230が衛星通信端末300を介して救護本部用サーバ400や他のトリアージ情報端末200から受信した情報、情報端末衛星通信部240が通信衛星120を介して救護本部用サーバ400や他のトリアージ情報端末200から受信した情報、ユーザにトリアージ情報を指定させるためのトリアージ情報指定用画面情報を記憶管理する。
【0040】
図6は、実施の形態1における衛星通信端末300の機能構成図である。
実施の形態1における衛星通信端末300の機能構成について、図6に基づいて以下に説明する。
【0041】
図6において、衛星通信端末300(傷病情報通信端末装置の一例)は、通信端末入力部310、通信端末LAN通信部330、通信端末衛星通信部340、通信端末表示部350および通信端末記憶部390を備える。
【0042】
通信端末入力部310はキーボード902やマウス903などの入力機器からユーザの指定情報を入力する。例えば、通信端末入力部310は衛星通信端末300へのログイン情報やトリアージ情報端末200や通信衛星120との通信コマンドを入力する。
【0043】
通信端末LAN通信部330(傷病情報受信部の一例)は通信機器を用いて無線または有線によりトリアージ情報端末200とデータ通信を行う。例えば、通信端末LAN通信部330はトリアージ情報端末200からトリアージ情報を無線LANにおいて受信する。また例えば、通信端末LAN通信部330は通信端末衛星通信部340が受信した救護本部用サーバ400や他のトリアージ情報端末200からの情報を無線LANにおいてトリアージ情報端末200に送信する。
【0044】
通信端末衛星通信部340(通信端末通信部の一例)は通信機器を用いて無線により通信衛星120とデータ通信を行う。例えば、通信端末衛星通信部340は通信端末LAN通信部330がトリアージ情報端末200から受信したトリアージ情報を衛星通信ネットワークにおいて通信衛星120を介して救護本部用サーバ400、他のトリアージ情報端末200、他の衛星通信端末300に送信する。また例えば、通信端末衛星通信部340は救護本部用サーバ400や他のトリアージ情報端末200が送信した情報を衛星通信ネットワークにおいて通信衛星120を介して受信する。
【0045】
通信端末表示部350は衛星通信端末300のディスプレイに衛星通信端末300の利用する各種情報を表示する。例えば、通信端末表示部350は衛星通信端末300へのログイン情報やトリアージ情報端末200や通信衛星120との通信コマンドをディスプレイに表示する。
【0046】
通信端末記憶部390は衛星通信端末300で用いる各種情報を記憶機器を用いて記憶管理する。例えば、通信端末記憶部390は通信端末LAN通信部330がトリアージ情報端末200から受信したトリアージ情報、通信端末衛星通信部340が通信衛星120を介して救護本部用サーバ400、他のトリアージ情報端末200、他の衛星通信端末300から受信した情報、通信端末入力部310が入力したユーザの指定情報を記憶管理する。
【0047】
図7は、実施の形態1における救護本部用サーバ400の機能構成図である。
実施の形態1における救護本部用サーバ400の機能構成について、図7に基づいて以下に説明する。
【0048】
図7において、救護本部用サーバ400(情報収集サーバ装置の一例)は、サーバ入力部410、サーバ通信部430、情報出力部450、情報集計部460および救護データベース490を備える。
【0049】
サーバ入力部410(救護指示入力部の一例)は各負傷者をどの災害拠点病院131に搬送するかを示す搬送先情報や各傷病者の治療指示情報(順序や方法など)などのユーザが指定した救護指示情報をキーボード902やマウス903などの入力機器から入力する。
【0050】
サーバ通信部430(情報収集部、救護指示送信部の一例)は通信機器を用いて無線または有線により各トリアージ情報端末200や各災害拠点病院131の病院端末500とデータ通信を行う。例えば、サーバ通信部430は衛星通信装置111を用いて通信衛星120を介して救護所130のトリアージ情報端末200やトリアージ情報端末200と通信接続する衛星通信端末300から各負傷者のトリアージ情報を受信する。また例えば、サーバ通信部430はサーバ入力部410が入力した救護指示情報を通信衛星120またはインターネットを介して各救護所130のトリアージ情報端末200、衛星通信端末300や各災害拠点病院131の病院端末500に送信する。また例えば、サーバ通信部430は各災害拠点病院131の病院端末500から通信衛星120またはインターネットを介して傷病者の収容状況・治療状況などの救護状況を示す病院状況情報を受信する。
【0051】
情報出力部450は救護本部用サーバ400で利用する各種情報を出力機器に出力する。例えば、情報出力部450はサーバ通信部430が受信した各トリアージ情報や情報集計部460が各傷病者のトリアージ情報に基づいて災害全体の負傷者の状況をまとめた傷病者集計情報や情報集計部460が各災害拠点病院131の病院状況情報に基づいて各病院の救護状況をまとめた病院集計情報をディスプレイに表示したり、プリンタ装置906を用いて印刷したりして災害医療救護本部110の職員に救護指示情報の入力を促す。
【0052】
情報集計部460はCPUを用いて集計処理を行い発生した災害に関する集計情報を生成する。例えば、情報集計部460はサーバ通信部430が受信した各傷病者のトリアージ情報に基づいて災害全体の傷病者の状況をまとめた傷病者集計情報を生成する。また例えば、情報集計部460はサーバ通信部430が受信した各災害拠点病院131の病院状況情報に基づいて各病院の救護状況をまとめた病院集計情報を生成する。
【0053】
救護データベース490は救護本部用サーバ400で用いる各種情報を記憶機器を用いて記憶管理する。例えば、救護データベース490はサーバ通信部430が受信したトリアージ情報や病院状況情報、サーバ入力部410が入力した搬送情報や救護指示情報、情報集計部460が生成した傷病者集計情報や病院集計情報を記憶管理する。
【0054】
図8、図9および図10は、実施の形態1における病院端末500の機能構成図である。
実施の形態1における病院端末500の機能構成について、図8〜図10に基づいて以下に説明する。
【0055】
図8〜図10において、病院端末500(救護拠点端末装置の一例)は、病院端末入力部510、病院端末通信部530、病院端末出力部550および病院端末記憶部590を備える。
【0056】
病院端末入力部510はユーザの入力情報をキーボード902やマウス903などの入力機器から入力する。例えば、病院端末入力部510は傷病者の収容状況・治療状況などの救護状況を示す病院状況情報を入力する。
【0057】
病院端末通信部530は通信機器を用いて無線または有線により災害医療救護本部110の救護本部用サーバ400や各トリアージ情報端末200とデータ通信を行う。例えば、病院端末通信部530は無線LANにおいてトリアージ情報端末200と通信し、搬送された傷病者のIC内蔵トリアージタグ600に対してトリアージ情報端末200を介してトリアージ情報の読み取り・書き込みを行う。また例えば、病院端末通信部530は救護本部用サーバ400から救護指示情報を受信したり、病院端末入力部510が入力した病院状況情報を救護本部用サーバ400に送信したりする。このとき、被災地付近ではインターネット940を利用するためのインフラが故障して使用できないことが想定されるため、病院端末500と救護本部用サーバ400は当該災害拠点病院131の場所や災害医療救護本部110の設置場所に応じたインフラを用いて通信を行う。例えば、被災地から離れた所に位置する(遠隔)災害拠点病院131の病院端末通信部530は、災害医療救護本部110が被災地から離れた場所に設置され救護本部用サーバ400がインターネット940を利用できる場合、図8に示すように、インターネット940を介して救護本部用サーバ400と通信する。また例えば、(遠隔)災害拠点病院131において病院端末通信部530は、災害医療救護本部110が被災地付近に設置され救護本部用サーバ400がインターネット940を利用できない場合、図9に示すように、インターネット940に接続している衛星通信端末300を中継局として衛星通信端末300および通信衛星120を介して救護本部用サーバ400と通信する。また例えば、被災地の近くに位置する(近隣)災害拠点病院131の病院端末通信部530は、インターネット940を利用できない場合、図10に示すように、(近隣)災害拠点病院131に持ち運ばれた衛星通信端末300と有線または無線LANで接続し、衛星通信端末300および通信衛星120を介して救護本部用サーバ400と通信する。
【0058】
病院端末出力部550は病院端末500で利用する各種情報を出力機器に出力する。例えば、病院端末出力部550は病院端末通信部530が災害医療救護本部110の救護本部用サーバ400から受信した救護指示情報や搬送された傷病者のIC内蔵トリアージタグ600から読み取ったトリアージ情報をディスプレイに表示したり、プリンタ装置906を用いて印刷したりして病院の医療者に適切な救護を促す。
ここで、病院端末500で利用する情報の種類は、ユーザの所属やレベルに応じて設定し、変更することができる。例えば、救護本部用サーバ400で管理している全ての情報をディスプレイに表示したりするように設定することもできる。
【0059】
病院端末記憶部590は病院端末500で用いる各種情報を記憶機器を用いて記憶管理する。例えば、病院端末記憶部590は病院端末通信部530が災害医療救護本部110の救護本部用サーバ400から受信した救護指示情報や搬送された傷病者のIC内蔵トリアージタグ600から取得したトリアージ情報、病院端末入力部510が入力した病院状況情報を記憶管理する。
【0060】
なお、病院端末500は病院だけでなく救護所130など救護本部用サーバ400と通信できる所であればどこでも使うことができる。
【0061】
図11、図12は、実施の形態1における災害救護支援システム100の災害救護支援方法を示すフローチャートである。
実施の形態1における災害救護支援システム100の災害救護支援方法について、図11、図12に基づいて以下に説明する。
【0062】
まず、図11に基づいて災害救護支援方法を説明する。
【0063】
<S110:トリアージ処理>
地震などの災害が発生した場合、災害地付近に救護所130が設置され、救護所130では搬送された各傷病者に対してIC内蔵トリアージタグ600が1枚ずつ割り当てられる。そして、救護所130の医療者は各傷病者の症状を把握し、IC内蔵トリアージタグ600に対して把握した症状に基づいてトリアージ情報を筆記で記載すると共にトリアージ情報端末200を用いてICタグ610に記録する。
【0064】
このとき、トリアージ情報端末200では以下のような処理がCPUを用いて行われる。
【0065】
<S111:トリアージ情報指定画面表示処理>
まず、情報端末表示部250は情報端末記憶部290からトリアージ情報を指定させるためのトリアージ情報指定用画面情報を取得する。そして、情報端末表示部250は取得したトリアージ情報指定用画面情報に基づいてトリアージ情報の項目を選択するためのメインメニュー画面、各トリアージ情報項目の指定値を選択するためのプルダウンメニュー、傷病箇所を指定するための人体マップなどをタッチパネルディスプレイに表示する。
<S112:トリアージ情報入力処理>
次に、トリアージ情報入力部210は情報端末表示部250が表示した各画面に応じて医療者がタッチパネルディスプレイを押下したり、スタイラスペンを用いたり、十字キーや10キーや決定キーを押下したりして入力したトリアージ情報を情報端末記憶部290に記憶する。
<S113:トリアージ情報記録処理>
そして、トリアージ情報の入力されたトリアージ情報端末200は当該傷病者のIC内蔵トリアージタグ600に近接され、ICリーダ・ライタ部220は情報端末記憶部290に記憶されたトリアージ情報を無線送信して当該IC内蔵トリアージタグ600のICタグ610に記録する。
【0066】
<S120:トリアージ情報送信処理>
次に、各救護所130において医療者はトリアージ情報端末200および衛星通信端末300を用いて各傷病者のトリアージ情報を災害医療救護本部110にデータ送信する。
【0067】
このとき、トリアージ情報端末200および衛星通信端末300では以下のような処理がCPUを用いて行われる。
【0068】
<S121:トリアージ情報送出処理>
救護所130には無線LANルータが設置されており、医療者の操作によってトリアージ情報端末200と衛星通信端末300とは通信接続する。
そして、トリアージ情報端末200の情報端末LAN通信部230は情報端末記憶部290に記憶されている各傷病者のトリアージ情報を衛星通信端末300に無線送信する。
<S122:トリアージ情報取得処理>
衛星通信端末300では通信端末LAN通信部330がトリアージ情報端末200により無線送信された各トリアージ情報を受信して通信端末記憶部390に記憶する。
<S123:トリアージ情報発信処理>
そして、衛星通信端末300の通信端末衛星通信部340は通信端末記憶部390に記憶された各トリアージ情報について変調処理を行い、変調した電波を発信して各トリアージ情報を通信衛星120を介して災害医療救護本部110の救護本部用サーバ400に送信する。
このとき、通信衛星120では衛星通信端末300から無線発信されたトリアージ情報を示す電波を災害医療救護本部110のアンテナ(衛星通信装置111)が位置する方向に反射して災害医療救護本部110の救護本部用サーバ400にトリアージ情報を転送する。
【0069】
トリアージ情報端末200より通信機能が高い衛星通信端末300を用いて通信を行うことによりトリアージ情報の送信にかかる時間を短縮することができる。
但し、医療者は衛星通信端末300を用いず、トリアージ情報端末200から直接、トリアージ情報を通信衛星120を介して災害医療救護本部110の救護本部用サーバ400に送信してもよい。この場合、トリアージ情報端末200の情報端末衛星通信部240が情報端末記憶部290に記憶されている各トリアージ情報について変調処理を行い、変調した電波を発信して各トリアージ情報を通信衛星120を介して災害医療救護本部110の救護本部用サーバ400に送信する。
【0070】
また、実施の形態1における災害救護支援システム100では、災害医療救護本部110の救護本部用サーバ400に送信するトリアージ情報を、例えば、図13に示すようにコード化することを特徴とする。
トリアージ情報をコード化することにより、トリアージ情報のデータ量を縮小することができ、同じ通信時間であってもより多くの傷病者のトリアージ情報を救護本部用サーバ400に収集することができる。また、多くの傷病者が発生した場合であっても通信負荷の増大により通信エラーが発生してトリアージ情報を救護本部用サーバ400に収集できないということを抑止することができる。また、トリアージ情報端末200、衛星通信端末300、救護本部用サーバ400、IC内蔵トリアージタグ600などにおいて、より小さい記憶容量の記憶媒体を用いてトリアージ情報を記憶管理することができる。
例えば、トリアージ情報端末200のトリアージ情報入力部210は医療者に指定されたトリアージ情報について対応するコードを所定のテーブルやアルゴリズムに基づいて取得し、コード化したトリアージ情報を情報端末記憶部290に記憶する。これにより、それ以後、トリアージ情報端末200、衛星通信端末300、救護本部用サーバ400、IC内蔵トリアージタグ600などにおいて通信するトリアージ情報はコード化されたものとなる。
【0071】
図13は、実施の形態1におけるトリアージ情報の一例を示す表である。
図13において、トリアージ情報は“個人情報”、“トリアージ”、“応急処置”、“搬送”に区分され、各区分の情報が複数の項目で表され、当該傷病者の各項目についての状況が項目の内容に応じた特定ビット数で示される。
例えば、図13において、“個人情報”に区分される“性別”は“男(コード:1)”、“女(コード:2)”または“不明(コード:0)”のいずれかを最小のデータ量で示せるように2ビットで表されている。また例えば、START(Simple Triage And Rapid Treatment)アルゴリズムに基づいて特定されたトリアージ区分(死亡、緊急、準緊急または非緊急)は2ビットでコード化されている。また例えば、当該傷病者の重傷度を決定するために用いられるAIS90(THE ABBREVIATED INJURY SCALE)の情報は“負傷の種類”、“体の部位(大区分)”、“体の部位(中区分)”、“体の部位(詳細区分)”などの項目で表され、各項目はそれぞれ負傷名、部位名ではなく負傷名、部位名に対応する4ビットのコードで示される。
【0072】
例えば、トリアージ情報端末200のトリアージ情報入力部210は医療者に指定された当該傷病者についての“歩行の可否(歩行可否)”、“呼吸の有無(呼吸数)”、“気道確保処置後の反応”、“爪床を圧迫後の爪床の再充血時間(爪充血時間)”、“指示に対する反応”といった情報を入力データとしてSTARTアルゴリズムを処理し、処理結果に相当するトリアージ区分のコードをトリアージ情報として情報端末記憶部290に記憶する。例えば、“呼吸の有無”を示す情報として「30回以上/分」という呼吸数が指定された場合、トリアージ情報入力部210はSTARTアルゴリズムに基づいて“トリアージ区分”のコードとして「1(緊急)」を情報端末記憶部290に記憶する。
また例えば、トリアージ情報端末200のトリアージ情報入力部210はディスプレイに表示された人体マップに対して医療者が指定した箇所に相当するコードをAIS90に関するトリアージ情報として情報端末記憶部290に記憶する。
【0073】
次に、図12に基づいて災害救護支援方法について説明を続ける。
【0074】
<S130:トリアージ情報収集処理>
次に、災害医療救護本部110において救護本部用サーバ400は各救護所130の衛星通信端末300や各トリアージ情報端末200から送信された各トリアージ情報を受信し、受信した各トリアージ情報をデータベース化する。
【0075】
このとき、救護本部用サーバ400では以下のような処理がCPUを用いて行われる。
【0076】
<S131:トリアージ情報受信処理>
サーバ通信部430は災害医療救護本部110に設置されているアンテナ(衛星通信装置111)に通信衛星120を介して到達した各衛星通信端末300や各トリアージ情報端末200からの電波に対して復調処理を行い、電波から得られたトリアージ情報を救護データベース490に記憶する。
このとき、救護データベース490は各トリアージ情報を“トリアージ”や“応急処置”の“実施場所ID”、“トリアージ区分”をキーとしたデータベースとして記憶管理する。
<S132:災害集計処理>
次に、情報集計部460は救護データベース490に記憶されている各トリアージ情報に基づいて災害全体の傷病者の状況をまとめた傷病者集計情報(例えば、重症度別に表した傷病者の発生地点の分布を示すデータ)を生成する。また、情報集計部460は救護データベース490に記憶されている各災害拠点病院131の病院状況情報に基づいて各病院の救護状況をまとめた病院集計情報(例えば、傷病者の収容余力とその地理上の分布を示すデータ)を生成する。
<S133:災害状況出力処理>
次に、情報出力部450は救護データベース490に記憶されている各トリアージ情報、情報集計部460が生成した傷病者集計情報や病院集計情報をディスプレイに表示したり、プリンタ装置906を用いて印刷したりして災害医療救護本部110の職員に救護指示情報の入力を促す。
【0077】
<S140:救護指示処理>
次に、災害医療救護本部110から各災害拠点病院131および各救護所130に救護指示が出される。
【0078】
このとき、災害医療救護本部110の救護本部用サーバ400では以下のような処理がCPUを用いて行われる。
【0079】
<S141:救護指示入力処理>
まず、サーバ入力部410は災害医療救護本部110の職員がキーボード902やマウス903などの入力機器を用いて指定したどの傷病者をどこの災害拠点病院131に搬送してどのような治療優先順位でどのような治療を施すかといった情報や各傷病者のトリアージ情報といった救護指示情報を入力する。
<S142:救護指示送信処理>
そして、サーバ通信部430はサーバ入力部410が入力した救護指示情報を衛星通信装置111および通信衛星120を介して、又は、インターネット940を介して各災害拠点病院131の病院端末500や各救護所130のトリアージ情報端末200または衛星通信端末300に送信する。
【0080】
<S150:救護処理>
そして、各災害拠点病院131および各救護所130では災害医療救護本部110からの救護指示に応じて各傷病者の救護を行う。
【0081】
このとき、各災害拠点病院131の病院端末500や各救護所130のトリアージ情報端末200または衛星通信端末300では以下のような処理がCPUを用いて行われる。
【0082】
<S151:救護指示受信処理>
まず、各災害拠点病院131において病院端末500の病院端末通信部530は通信衛星120またはインターネット940を介して災害医療救護本部110の救護本部用サーバ400から送信された救護指示情報を受信する。また、各救護所130においてトリアージ情報端末200の情報端末衛星通信部240または衛星通信端末300の通信端末衛星通信部340は通信衛星120を介して災害医療救護本部110の救護本部用サーバ400から送信された救護指示情報を受信する。
<S152:救護指示出力処理>
そして、各災害拠点病院131において病院端末500の病院端末出力部550は病院端末通信部530が受信した救護指示情報をディスプレイに表示して医療者に傷病者の受け入れ準備や救護指示内容に従った治療の実施を促す。また、各救護所130においてトリアージ情報端末200の情報端末表示部250または衛星通信端末300の通信端末表示部350は情報端末衛星通信部240または通信端末衛星通信部340が受信した救護指示情報をディスプレイに表示して医療者に各救急搬送機関134への傷病者の搬送指示や救護指示内容に従った治療の実施を促す。
【0083】
これにより、災害救護支援システム100は各救護所130から各傷病者を適した災害拠点病院131に搬送し、より多くの人命を救出することができる。
【0084】
図14は、実施の形態1における災害救護支援システム100のデータフローの一例を示す図である。
実施の形態1における災害救護支援システム100のデータフローの一例を図14に示す。
【0085】
図14において、救護所130ではトリアージ情報端末200は傷病者のトリアージ情報(図中の情報A)が入力され、入力されたトリアージ情報をIC内蔵トリアージタグ600のICタグ610に書き込むと共に(S211)、無線LANで通信接続する衛星通信端末300に出力する(S212)。衛星通信端末300はトリアージ情報端末200から取得したトリアージ情報を通信衛星120を介して災害医療救護本部110の救護本部用サーバ400(図示省略)に送信する(S213)。
災害医療救護本部110では救護本部用サーバ400が受信したトリアージ情報は救護データベース490に記憶管理される(S221)。そして、救護本部用サーバ400は各傷病者の搬送先を示す搬送先情報(図中の情報B)が入力され、トリアージ情報および入力された搬送先情報をインターネットまたは通信衛星120を介して各災害拠点病院131の病院端末500や救護所130の衛星通信端末300に送信する(S222)。また、救護本部用サーバ400は当該トリアージ情報の搬送先情報について救護データベース490を更新する(S223)。
救護所130ではトリアージ情報端末200が衛星通信端末300から搬送先情報を取得し(S231)、取得した搬送先情報をIC内蔵トリアージタグ600のICタグ610に記録する(S232)。
また、救護所130では災害医療救護本部110から指示された搬送先情報に基づいて救急搬送機関134に傷病者の搬送を依頼し、依頼を受けた救急搬送機関134は救護所130で傷病者を収容し、収容した傷病者を当該災害拠点病院131に搬送する。この際、救護所130における傷病者の収容時には傷病者の搬送開始を示す搬送状況情報(図中の情報C)がトリアージ情報端末200または衛星通信端末300から通信衛星120を介して災害医療救護本部110の救護本部用サーバ400に送信される(S241)。また、傷病者が災害拠点病院131に搬送された時には傷病者の搬送終了を示す搬送状況情報がトリアージ情報端末200または病院端末500から通信衛星120またはインターネット940を介して災害医療救護本部110の救護本部用サーバ400に送信される(S242)。搬送状況情報を受信した際、救護本部用サーバ400は受信した搬送状況情報に基づいて当該トリアージ情報の搬送状況について救護データベース490を更新する(S243)。
【0086】
これにより、災害医療救護本部110では搬送先情報や搬送状況情報に基づいてどの災害拠点病院131にどの程度の症状の傷病者を何人搬送するかを判断することができる。
【0087】
実施の形態1において以下のような特徴を有する災害救護支援システム100について説明した。
(1)トリアージタグにIC(RFID)タグを添付(IC内蔵トリアージタグ600)
(2)超小型携帯通信端末(トリアージ情報端末200)を活用
(3)超小型携帯通信端末よりも高速な衛星通信を可能にするポータブル端末(衛星通信端末300)を利用
【0088】
上記のような特徴を有することにより、実施の形態1における災害救護支援システム100は以下のような課題に対して解決または解決の支援をすることができる。
【0089】
(a)大規模災害発生時の通信インフラの破壊や通信網の輻輳
(b)トリアージタグが電子化されていない
(c)負傷者の取り違え
(d)負傷者の搬送先が不明となる、または、なかなか決まらない
(e)災害における負傷者の全体数と状況が把握できない
(f)災害拠点病院の収容力が不明で、特定の災害拠点病院に負傷者が集中
(g)被災者の家族や親族が負傷者の状況を知ることができない
(h)災害の状況や救護活動の状況が正しく把握されないため、今後の防災対策に必要な貴重な情報が残らない
【0090】
より具体的には、実施の形態1において以下のような災害救護支援システム100について説明した。
【0091】
医療提供が少なく負傷者数が多い場合に救命できる負傷者の数を最大化するために、トリアージタグにICタグを付加し、ICタグに医療情報(トリアージ情報)を記録し、災害救護本部へ医療情報を送る。また、小型の端末(トリアージ情報端末200)で医療情報を逐次、ICタグ付きトリアージタグ(IC内蔵トリアージタグ600)に記憶する。また、救護所や病院など災害救護本部サーバと通信可能な所でICタグに記録された個人情報、医療情報を送信する。そして、災害救護本部サーバに格納された医療情報で優先的に治療が必要な負傷者を特定後に当該負傷者を治療可能な病院へ搬送し救命する。
つまり、災害救護支援システム100は医療情報を災害救護本部サーバへ迅速に送ることができ、災害救護本部では収集された医療情報を元に的確に指揮をすることが可能になるため、救命できる負傷者の数を最大化するという効果が得られる。
【0092】
また、携帯通信端末(トリアージ情報端末200)で直接衛星回線をアクセスした場合、50〜400bps(Bits Per Second)程度と通信速度が非常に遅いため、大量の情報を送受信するには時間がかかる。したがって、端末の操作性を考慮し、できるだけ通信データ量を圧縮する必要がある。そのような事情に対して災害救護支援システム100では、通信データをバイナリで表現することとし、情報をできるだけコード化して取り扱うことによって情報量を圧縮している。
つまり、災害救護支援システム100はトリアージ情報を最小ビット数で構成することにより、トリアージ情報の通信時間を短くし、災害医療救護本部110におけるトリアージ作業(救護指示作業)の迅速化が図れるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】実施の形態1における災害救護支援システム100の構成図。
【図2】従来のトリアージタグ601を示す図。
【図3】実施の形態1におけるIC内蔵トリアージタグ600の一例を示す図。
【図4】実施の形態1におけるトリアージ情報端末200、衛星通信端末300、救護本部用サーバ400および病院端末500のハードウェア資源の一例を示す図。
【図5】実施の形態1におけるトリアージ情報端末200の機能構成図。
【図6】実施の形態1における衛星通信端末300の機能構成図。
【図7】実施の形態1における救護本部用サーバ400の機能構成図。
【図8】実施の形態1における病院端末500の機能構成図。
【図9】実施の形態1における病院端末500の機能構成図(救護本部用サーバ400がインターネット940を利用できない場合)。
【図10】実施の形態1における病院端末500の機能構成図(病院端末500がインターネット940を利用できない場合)。
【図11】実施の形態1における災害救護支援システム100の災害救護支援方法を示すフローチャート。
【図12】実施の形態1における災害救護支援システム100の災害救護支援方法を示すフローチャート。
【図13】実施の形態1におけるトリアージ情報の一例を示す表。
【図14】実施の形態1における災害救護支援システム100のデータフローの一例を示す図。
【符号の説明】
【0094】
100 災害救護支援システム、110 災害医療救護本部、111 衛星通信装置、112 傷病者管理端末、113 災害拠点病院情報通信端末、120 通信衛星、130 救護所、131 災害拠点病院、132 救急車、133 救急ヘリコプター、134 救急搬送機関、200 トリアージ情報端末、210 トリアージ情報入力部、220 ICリーダ・ライタ部、230 情報端末LAN通信部、240 情報端末衛星通信部、250 情報端末表示部、290 情報端末記憶部、300 衛星通信端末、310 通信端末入力部、330 通信端末LAN通信部、340 通信端末衛星通信部、350 通信端末表示部、390 通信端末記憶部、400 救護本部用サーバ、410 サーバ入力部、430 サーバ通信部、450 情報出力部、460 情報集計部、490 救護データベース、500 病院端末、510 病院端末入力部、530 病院端末通信部、550 病院端末出力部、590 病院端末記憶部、600 IC内蔵トリアージタグ、601 トリアージタグ、610 ICタグ、901 表示装置、902 キーボード、903 マウス、904 FDD、905 CDD、906 プリンタ装置、911 CPU、912 バス、913 ROM、914 RAM、915 通信ボード、920 磁気ディスク装置、921 OS、922 ウィンドウシステム、923 プログラム群、924 ファイル群、940 インターネット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
傷病者毎に割り当てられ傷病者の傷病情報を記憶する記憶媒体を有する電子カードと、
傷病情報を入力機器を用いて入力する傷病情報入力部と前記傷病情報入力部が入力した傷病情報を通信機器を用いて前記電子カードの記憶媒体に記憶する第一の通信部と前記傷病情報入力部が入力した傷病情報を通信機器を用いて通信ネットワークに送信する第二の通信部とを備える情報入力端末装置と、
前記情報入力端末装置から送信された傷病情報を通信ネットワークを介して通信機器を用いて受信する情報収集部と前記情報収集部が受信した各傷病者情報を出力装置に出力する情報出力部とを備える情報収集サーバ装置と
を有することを特徴とする災害救護支援システム。
【請求項2】
前記電子カードは傷病情報が手書きされる筆記スペースを有することを特徴とする請求項1記載の災害救護支援システム。
【請求項3】
前記電子カードはトリアージタグにIC(Integrated Circuit)タグを付加したものであることを特徴とする請求項1〜請求項2いずれかに記載の災害救護支援システム。
【請求項4】
前記情報入力端末装置は、さらに、
前記電子カードから記憶媒体に記憶されている傷病情報を通信機器を用いて読み出す第三の通信部と、
前記第三の通信部が読み出した傷病情報を表示装置に表示する入力端末表示部と
を備えたことを特徴とする請求項1〜請求項3いずれかに記載の災害救護支援システム。
【請求項5】
前記災害救護支援システムは、さらに、
前記情報入力端末装置と通信機器を用いて通信して傷病情報を受信する傷病情報受信部と、
前記傷病情報受信部が受信した傷病情報を通信機器を用いて通信ネットワークを介して前記情報収集サーバ装置に送信する通信端末通信部と
を備える傷病情報通信端末装置を有することを特徴とする請求項1〜請求項4いずれかに記載の災害救護支援システム。
【請求項6】
前記情報収集サーバ装置は、さらに、
各傷病者についての救護指示を入力機器を用いて入力する救護指示入力部と、
各傷病者を救護する救護拠点の救護拠点端末装置に前記救護指示入力部が入力した救護指示を通信機器を用いて送信する救護指示送信部と
を備えたことを特徴とする請求項1〜請求項5いずれかに記載の災害救護支援システム。
【請求項7】
情報入力端末装置において、傷病情報入力部が傷病情報を入力機器を用いて入力し、傷病者毎に割り当てられ傷病者の傷病情報を記憶する記憶媒体を有する電子カードに第一の通信部が前記傷病情報入力部の入力した傷病情報を通信機器を用いて記憶し、第二の通信部が前記傷病情報入力部の入力した傷病情報を通信機器を用いて通信ネットワークに送信し、
情報収集サーバ装置において、情報収集部が前記情報入力端末装置から送信された傷病情報を通信ネットワークを介して通信機器を用いて受信し、情報出力部が前記情報収集部の受信した各傷病者情報を出力装置に出力する
ことを特徴とする災害救護支援システムの災害救護支援方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−282218(P2008−282218A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−125807(P2007−125807)
【出願日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【出願人】(503361400)独立行政法人 宇宙航空研究開発機構 (453)
【出願人】(591102095)三菱スペース・ソフトウエア株式会社 (148)
【Fターム(参考)】