説明

炉底温度測定方法及び装置、並びに溶融炉の炉底監視方法及び装置

【課題】 炉底表面の温度を広範囲に亘って精度良く測定することが可能な炉底温度測定方法及び装置、及び該測定した温度に基づき炉底の異常を検知することができる溶融炉の炉底監視方法及び装置を提供する。
【解決手段】 溶融炉10の炉底17表面を測定範囲に含む位置にサーモグラフィ装置30を設置し、前記測定範囲に含まれる任意の温度測定点32の近傍に、放射率を1.0若しくはこれに近似させた黒体31を設けておき、予め基準放射率を1.0若しくはこれに近似させた値に設定し、前記サーモグラフィ装置30にて前記黒体31の放射エネルギから黒体温度を測定し、該サーモグラフィ装置にて前記測定点の放射エネルギから測定した測定点温度が、前記黒体温度と略一致する放射率を求め、該求めた放射率を前記測定範囲の放射率に設定し、前記サーモグラフィ装置により該測定範囲の温度分布を測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融炉の炉底表面の温度分布を広範囲に且つ高精度で以って測定する炉底温度測定方法及び装置に関し、さらに、該測定した温度に基づいて溶融炉の炉底の異常を検知する溶融炉の炉底監視方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
廃棄物を溶融処理する溶融炉は、廃棄物の無害化、減容化及び資源化の観点からその必要性が高まりつつある。溶融炉には、重油等を燃料として被処理物を溶融するバーナ式溶融炉や、電気を熱源として被処理物を溶融する電気抵抗式溶融炉及びプラズマ式溶融炉等が知られている。
一例として、プラズマ式溶融炉につき図7を参照して説明すると、このプラズマ式溶融炉50は、炉頂部から垂下される主電極51と、炉底に配設される炉底電極52とが設けられ、これらの両電極間に直流電圧53を印加することによりプラズマアークを発生する。そして、投入ホッパ55より炉本体54内に投下された被処理物をプラズマ熱により加熱して溶融する。被処理物は溶融して溶融スラグ56と、これより比重が大である溶融メタル57が炉本体54内に溜まり、出滓口58より排出される。また、炉本体54内は高温に維持されるため、その内部は不定形耐火材60や耐火レンガ61等の耐火材により形成され、この耐火材を鉄皮62により被覆した構造が採られている。
【0003】
このような溶融炉においては、炉内から溶融メタルや溶融スラグが漏れ出す可能性があり、水蒸気爆発等の危険性があることから炉底は水冷却しない場合が多い。しかし、自然空冷の場合は冷却が弱く、耐火物がメタルやスラグによって侵食されてしまう。一般に、侵食の進行は、耐火物同士を固着させる目地から発生し、目地の侵食が進むと耐火レンガの固定が劣弱となりメタルより比重の小さい耐火レンガが剥離してメタル中に浮き上がる。耐火レンガは剥離部を中心として徐々に拡大し、該剥離部近傍の鉄皮の温度は上昇する。鉄皮は、耐熱温度以上(350℃程度)まで昇温すると変形、抜け落ち等の不具合が発生してしまう惧れがある。従って、炉底の鉄皮温度を監視する必要がある。
【0004】
従来は、炉体温度の測定には、特許文献1(特開平11−218320号公報)等に記載されるように、炉本体底部から耐火物に貫通するごとく熱電対65(図7参照)を設置し、耐火物の温度を測定したり、また、炉底鉄皮に熱電対を設置して炉底表面の温度を測定する方法が一般的であった。
【0005】
【特許文献1】特開平11−218320号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載される方法では、炉底温度を局所的にしか測定できなかった。ところが、炉底に略一面に敷設された耐火材のうち、どの耐火材が浮き上がるかは不明であるため炉底表面の広範囲における温度分布を把握する必要がある。この場合、特許文献1では多数の熱電対を設置しなければならず、且つ複数の熱電対で得られた局所的な温度を総合して得られる温度分布は推測の範囲を出ず、精度の良い測定とは言えなかった。
従って、本発明は上記従来技術の問題点に鑑み、炉底表面の温度を広範囲に亘って精度良く測定することができる炉底温度測定方法及び装置を提供することを目的とする。さらにまた、前記炉底温度測定技術を用いて、炉底の異常を検知することが可能である溶融炉の炉底監視方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本発明はかかる課題を解決するために、
溶融炉の炉底表面を測定範囲に含む位置にサーモグラフィ装置を設置し、前記測定範囲に含まれる任意の温度測定点の近傍に、放射率を1.0若しくはこれに近似させた黒体を設けておき、
予め基準放射率を1.0若しくはこれに近似させた値に設定し、前記サーモグラフィ装置にて前記黒体の放射エネルギから黒体温度を測定する工程と、
前記サーモグラフィ装置にて前記測定点の放射エネルギから測定した測定点温度が、前記黒体温度と略一致する放射率を求める工程と、
前記求めた放射率を前記測定範囲の放射率に設定し、前記サーモグラフィ装置により該測定範囲の温度分布を測定する工程と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明のように、サーモグラフィ装置を用いて炉底面からの放射エネルギを測定することにより、炉底の広範囲な温度分布を測定することができる。ここで、サーモグラフィ装置は、非接触で測定対象からの放射エネルギを捉えて、その測定対象の温度を測定することができる温度計として知られているが、測定対象の放射率は、その種類、形状、温度等の種々の因子の支配を受けることがわかっている。従って、より精度の良い温度測定をするためには炉底部の測定域の放射率を正確に把握する必要がある。そこで、本発明のように、放射率が1.0若しくはこれに近似する値を有する理想的な黒体を炉底面に設け、該黒体の温度と、該黒体の近傍の温度に基づき、測定域の放射率を求めることにより、精度の良い温度測定が可能となる。
【0009】
また、前記黒体を、前記溶融炉の略中心位置から該溶融炉の出滓口を結ぶ線上に対応する炉底表面に設けることを特徴とする。
本発明のように、溶融スラグの流れ方向であって、溶融炉の略中心位置から出滓口を結ぶ線上のうち何れかの位置に黒体を設け、溶融炉において最も高温になり易く、炉内耐火材の侵食が著しい出滓口近傍を測定範囲とすることによって、炉底の異常を確実に検知することが可能となる。
【0010】
また、前記黒体を複数設ける場合であって、該黒体を、溶融炉の中心位置を中心軸とした同心円上に複数設けるか、或いは前記溶融炉の半径方向に複数設け、該複数の黒体に対応した炉底表面の温度分布を測定するようにしたことを特徴とする。
これは、溶融スラグ及び溶融メタルの温度の関係から、溶融炉の同心円上は温度変化が小さいため、該同心円状に黒体を複数設けることにより、温度変化による放射率の誤差を最小限に抑え、測定域の温度分布をより一層正確に測定することが可能である。また、前記半径方向は、温度分布が比較的大きいため、ここに複数の黒体を設けることにより放射率の温度依存を補正することができる。
また、前記サーモグラフィ装置の選定波長を、8〜14μmの範囲内とすることが好ましく、これにより前記サーモグラフィ装置にて検出する放射エネルギに対する太陽光の影響を防ぎ、より一層精度の高い温度測定が可能となる。
【0011】
さらに、前期炉底温度測定方法を用いた溶融炉の炉底監視方法において、
前記測定した温度分布に基づき、通常運転時より高温を示す高温域を検出する工程と、該検出した高温域に基づき炉底の異常を検知する工程と、を備えたことを特徴とする。
さらにまた、前記高温域検出工程にて検出した高温域が局所的であるか広域的であるかを判定する工程と、
前記高温域が広域的であると判定された場合に、他の測定因子に基づき溶融炉の炉内温度が適正温度より高温であるか否かを判定する工程と、
前記炉内温度が適正である場合、若しくは前記高温域が局所的である場合には、前記炉底の耐火材に異常が発生したと判断する工程と、を備えたことを特徴とする。
このように、前記測定した温度分布から高温域を検出することにより、運転中であっても炉底の耐火材の侵食、浮き上がり等の不具合を正確に把握することが可能であり、鉄皮の変形、抜け落ち等を未然に防止することが可能である。尚、前記他の測定因子とは、例えば、熱電対或いは放射温度計により測定した溶融スラグ温度、熱電対により測定した耐火材温度、炉壁の冷却水熱量等が挙げられる。
【0012】
また、装置の発明として、溶融炉の炉底表面を測定範囲に含む位置に設置されたサーモグラフィ装置と、前記測定範囲に含まれる任意の温度測定点の近傍に設けられた放射率を1.0若しくはこれに近似させた黒体と、を備えるとともに、
基準放射率を1.0若しくはこれに近似させた値に設定して前記サーモグラフィ装置にて測定された黒体温度を記憶させる記憶手段と、前記サーモグラフィ装置にて測定した測定点温度が、前記黒体温度と略一致する放射率を求める放射率補正手段と、を有する制御装置を備え、
前記制御装置にて求めた放射率を前記測定範囲の放射率に設定し、前記サーモグラフィ装置により該測定範囲の温度分布を測定することを特徴とする。
【0013】
また、前記黒体を、前記溶融炉の略中心位置から該溶融炉の出滓口を結ぶ線上に対応する炉底表面に設けることを特徴とする。
また、前記サーモグラフィ装置を炉底の直下を外れた位置に配置したことを特徴とし、これにより、溶融炉からの溶融物等の落下によるサーモグラフィ装置の損傷等を防止できる。
さらに、前記黒体を複数設ける場合であって、該黒体を、溶融炉の中心位置を中心軸とした同心円上に複数設けるか、或いは前記溶融炉の半径方向に複数設けることを特徴とする。
さらにまた、前記サーモグラフィ装置の選定波長が、8〜14μmの範囲内であることが好ましい。
また、前記炉底温度測定装置を用いた溶融炉の炉底監視装置において、
前記制御装置が、前記測定した温度分布に基づき、通常運転時より高温を示す高温域を検出する手段と、該検出した高温域に基づき炉底の異常を検知する手段と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
以上記載のごとく本発明によれば、炉底の広範囲な温度分布を簡単に測定することができ、また黒体を設けて正確な放射率を算出し、これに基づき温度測定を行っているため、精度の高い炉底の温度測定が可能となり、延いては炉底耐火材の侵食、耐火材の浮き上がり等の不具合を早期に検知でき、炉底表面の鉄皮の変形、抜け落ち等の不具合を未然に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
本実施例では炉底温度測定、監視対象である溶融炉として、一例としてプラズマ式溶融炉につき説明するが、被処理物を溶融処理する溶融炉であれば特にこれに限定されるものではない。
図1は本発明の実施例に係る炉底監視装置を備えた溶融炉の側断面を示す全体構成図、図2は本実施例に係る炉底監視装置を備えた炉底部の概略を示す側断面図、図3は図2に示した炉底監視装置を備えた炉底部の概略を示す平面図である。
【実施例1】
【0016】
まず、図1を参照して本実施例に係る炉底温度測定装置及び監視装置が設置されるプラズマ式溶融炉につき説明する。プラズマ式溶融炉1は、炉本体14の炉蓋から主電極11が垂下され、これに対向して炉底17から炉底電極12が挿設されている。プラズマ式灰溶融炉10では、これらの電極間に直流電源13により直流電流を通流して炉内にプラズマアーク24を発生させる。投入ホッパ21より投入された被処理物は、炉壁に設けられた被処理物投入口20より炉内に投下され、プラズマアーク熱及び前記電極間を流れる電流のジュール熱により溶融処理され、溶融スラグ22として炉底に溜まる。また溶融スラグ22の下部には比重差により溶融メタル23が形成されている。溶融後は、適宜出滓口25より排出される。
【0017】
炉本体14の側壁及び蓋部の内側は不定形耐火材15で形成され、底部には耐火レンガ18が内張りされ、その外表面が鉄皮16で被覆されている。
また、前記プラズマ式溶融炉10では、円滑で適正な運転を行なうために各種計測器(不図示)を具備し、これにより取得した計測値に基づいて運転及び炉内監視を行なっている。例えば、炉蓋に設けられた計測用開口に設置されたスラグ温度計、炉壁に埋設され耐火レンガ温度を検出する熱電対、前記出滓口の内部に通流する冷却水の入口温度及び出口温度を検出する温度検出計、炉内温度を検出する温度検出計、前記電極間の電流、電圧を計測する電流計及び電圧計、炉内へ投入する灰を計量する計量器などが挙げられる。
【0018】
また本実施例では、炉底17の温度を測定する温度測定装置を設けている。この温度測定装置は、サーモグラフィ装置30と、画像処理機能を備えた制御装置40とを備える。
前記サーモグラフィ装置30は、測定対象から放出される放射エネルギ量を非接触で検出して該放射エネルギ量から測定対象の温度を求める周知の装置である。該サーモグラフィ装置30は、前記炉底17の鉄皮表面のうち少なくとも一部を測定範囲に含む位置に設置され、特に好ましくは、前記溶融炉10の直下から外れた側方位置から炉底17を測定範囲とする位置に設置される。これにより、溶融スラグ22等が流出した際に、サーモグラフィ装置30に落下して損傷することを防止する。該サーモグラフィ装置30は、複数設けるようにしても良い。また、前記サーモグラフィ装置30を炉底の直下に配置する場合には、該サーモグラフィ装置30を治具等により自在に移動可能にしても良い。さらに、前記サーモグラフィ装置30を移動自在な構造とし、定期的に測定範囲が異なる位置に移動するようにしても良い。
また、前記サーモグラフィ装置30の選定波長は8〜14μmとすることが好適である。これにより、太陽光の影響を受けず、正確な測定が可能となる。
【0019】
また、サーモグラフィ装置30では、測定対象の放射率が変化すると大幅な誤差を生じるため、これを解消するために、本実施例では放射率を補正する補正機構を設けている。図2及び図3に示されるように、炉底17のうち、測定範囲33に含まれる温度測定点32の近傍に、放射率1.0若しくはこれに近似させた黒体31を設ける。該黒体31は、黒色塗料を塗布しても良いし、同様の外表面加工及び処理しても良く、その形態は特に限定されない。
前記黒体31は、一又は複数設けられる。さらに、該黒体31の設置位置は、炉底17のうち、スラグの流れ方向に沿って、前記炉底電極12と前記出滓口25を結ぶ線上に対応する位置に設けることが好ましい。これは、溶融炉10において最も高温になり易く、炉内耐火材の侵食が著しい出滓口近傍を測定範囲33とするためである。
また、前記黒体31を複数設ける場合には、電極12を中心とした同心円状に設けることが好ましい。これは、溶融炉10の同心円上は温度変化が小さいため、該同心円状に黒体31を複数設けることにより、温度変化による放射率の誤差を最小限に抑え、測定範囲33の温度分布をより一層正確に測定するためである。また、前記炉底17の半径方向に複数設けるようにしても良く、半径方向は温度分布が比較的大きいため、ここに複数の黒体を設けることにより放射率の温度依存を補償することができる。
【0020】
上記した構成により、予め設定した基準放射率εを補正し、測定範囲33である炉底鉄皮表面に固有の放射率を算出する方法につき、図5及び図6を参照して説明する。
図に示されるように、まず、基準放射率をεを1.0、若しくはこれに近似した値に設定してサーモグラフィ装置30にて黒体31の温度Tを測定し(S1)、測定した黒体温度Tを記録しておく(S2)。さらに、サーモグラフィ装置30を任意の予測放射率εに設定して、前記測定点32の放射エネルギから該測定点温度Tを測定し、前記予測放射率εを段階的に変化させていき(S3)、黒体温度Tと前記測定点温度Tが略一致するときの予測放射率εを測定範囲33の放射率に設定する(S4)。
このようにして炉底鉄皮表面の放射率εを設定し、該放射率に応じて前記サーモグラフィ装置30により炉底17の温度分布を測定する。これにより、正確な炉底の温度分布を得ることが可能となる。
【0021】
さらにまた、本実施例では、上記したように測定した炉底温度を基にして炉底監視を行う装置を備えている。
この炉底監視装置は、サーモグラフィ装置30と、該サーモグラフィ装置30に接続された制御装置40とからなり、該制御装置40にて演算された制御信号が溶融炉10の各種制御機器へ伝達されるようになっている。
炉底監視を行う方法の一例につき図6を参照して説明すると、通常運転(S10)の際に、定期的に前記サーモグラフィ装置30により炉底鉄皮表面の温度分布を測定する(S11)。該測定された温度分布から、高温域が局所的であるか広域的であるかを判断し(S12)、広域的である場合には、前記溶融炉10が具備する前記各種計測器により求められた他の測定因子から運転状態の確認を行う(S13)。該測定因子とは、例えば、検出スラグ温度(S14)、計算スラグ温度(S15)、冷却水熱量(S16)、スタンプ温度(S17)等が挙げられる。これらの測定因子から、溶融炉の運転温度が高いために高温域が広域的に現れているか否かを判断し(S18)、運転温度が高いと判断された場合には、直流電源13の制御、主電極の上昇、被処理物投入量の増加等により運転温度を低下させ(S19)、通常運転に戻る。
【0022】
ここで、広域的な温度上昇が溶融炉の運転温度が高いことが要因でないと判断された場合には、炉底17の耐火レンガ18が全体的に浮いている可能性が高いと判断され(S20)、炉の運転を停止し(S21)、耐火レンガ18の補修・交換を行う(S22)。
一方、サーモグラフィ装置30により得られた温度分布画像から、前記高温域が局所的であると判断された場合には、炉底17の耐火レンガ18が部分的に浮いている可能性が高いと判断され(S23)、炉の運転を停止し(S24)、耐火レンガ18の補修・交換を行う(S25)。
このように、前記測定した温度分布から高温域を検出することにより、運転中であっても炉底17の耐火材の侵食、浮き上がり等の不具合を正確に把握することが可能であり、鉄皮16の変形、抜け落ち等を未然に防ぐことが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は、炉底の温度を広範囲に且つ精度良く検出可能であるため、プラズマ式溶融炉を始めとして、電気抵抗式溶融炉、バーナ式溶融炉、旋回式溶融炉、反射式溶融炉等の何れの溶融炉にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施例に係る炉底監視装置を備えた溶融炉の側断面を示す全体構成図である。
【図2】本実施例に係る炉底監視装置を備えた炉底部の概略を示す側断面図である。
【図3】図2に示した炉底監視装置を備えた炉底部の概略を示す平面図である。
【図4】放射率補正方法を説明するための模式図である。
【図5】本実施例における放射率補正処理を示すフロー図である。
【図6】本実施例における溶融炉の炉底監視処理を示すフロー図である。
【図7】従来の溶融炉の断面を示す全体構成図である。
【符号の説明】
【0025】
10 プラズマ溶融炉
11 主電極
12 炉底電極
14 炉本体
15 不定形耐火材
16 鉄皮
17 炉底
18 耐火レンガ
22 溶融スラグ
23 溶融メタル
25 出滓口
30 サーモグラフィ装置
31 黒体
32 標的
40 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融炉の炉底表面を測定範囲に含む位置にサーモグラフィ装置を設置し、前記測定範囲に含まれる任意の温度測定点の近傍に、放射率を1.0若しくはこれに近似させた黒体を設けておき、
予め基準放射率を1.0若しくはこれに近似させた値に設定し、前記サーモグラフィ装置にて前記黒体の放射エネルギから黒体温度を測定する工程と、
前記サーモグラフィ装置にて前記測定点の放射エネルギから測定した測定点温度が、前記黒体温度と略一致する放射率を求める工程と、
前記求めた放射率を前記測定範囲の放射率に設定し、前記サーモグラフィ装置により該測定範囲の温度分布を測定する工程と、を備えたことを特徴とする炉底温度測定方法。
【請求項2】
前記黒体を、前記溶融炉の略中心位置から該溶融炉の出滓口を結ぶ線上に対応する炉底表面に設けることを特徴とする請求項1記載の炉底温度測定方法。
【請求項3】
前記黒体を複数設ける場合であって、該黒体を、溶融炉の中心位置を中心軸とした同心円上に複数設けるか、或いは前記溶融炉の半径方向に複数設け、該複数の黒体に対応した炉底表面の温度分布を測定するようにしたことを特徴とする請求項1記載の炉底温度測定方法。
【請求項4】
前記サーモグラフィ装置の選定波長が、8〜14μmの範囲内であることを特徴とする請求項1記載の炉底温度測定方法。
【請求項5】
請求項1記載の炉底温度測定方法を用いた溶融炉の炉底監視方法において、
前記測定した温度分布に基づき、通常運転時より高温を示す高温域を検出する工程と、該検出した高温域に基づき炉底の異常を検知する工程と、を備えたことを特徴とする溶融炉の炉底監視方法。
【請求項6】
前記高温域検出工程にて検出した高温域が局所的であるか広域的であるかを判定する工程と、
前記高温域が広域的であると判定された場合に、他の測定因子に基づき溶融炉の炉内温度が適正温度より高温であるか否かを判定する工程と、
前記炉内温度が適正である場合、若しくは前記高温域が局所的である場合には、前記炉底の耐火材に異常が発生したと判断する工程と、を備えたことを特徴とする請求項5記載の溶融炉の炉底監視方法。
【請求項7】
溶融炉の炉底表面を測定範囲に含む位置に設置されたサーモグラフィ装置と、前記測定範囲に含まれる任意の温度測定点の近傍に設けられた放射率を1.0若しくはこれに近似させた黒体と、を備えるとともに、
基準放射率を1.0若しくはこれに近似させた値に設定して前記サーモグラフィ装置にて測定された黒体温度を記憶させる記憶手段と、前記サーモグラフィ装置にて測定した測定点温度が、前記黒体温度と略一致する放射率を求める放射率補正手段と、を有する制御装置を備え、
前記制御装置にて求めた放射率を前記測定範囲の放射率に設定し、前記サーモグラフィ装置により該測定範囲の温度分布を測定することを特徴とする炉底温度測定装置。
【請求項8】
前記黒体を、前記溶融炉の略中心位置から該溶融炉の出滓口を結ぶ線上に対応する炉底表面に設けることを特徴とする請求項7記載の炉底温度測定装置。
【請求項9】
前記サーモグラフィ装置を炉底直下を外れた位置に配置したことを特徴とする請求項7記載の炉底温度測定装置。
【請求項10】
前記黒体を複数設ける場合であって、該黒体を、溶融炉の中心位置を中心軸とした同心円上に複数設けるか、或いは前記溶融炉の半径方向に複数設けることを特徴とする請求項7記載の炉底温度測定装置。
【請求項11】
前記サーモグラフィ装置の選定波長が、8〜14μmの範囲内であることを特徴とする請求項7記載の炉底温度測定装置。
【請求項12】
請求項7記載の炉底温度測定装置を用いた溶融炉の炉底監視装置において、
前記制御装置が、前記測定した温度分布に基づき、通常運転時より高温を示す高温域を検出する手段と、該検出した高温域に基づき炉底の異常を検知する手段と、を備えたことを特徴とする溶融炉の炉底監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−308497(P2006−308497A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−133562(P2005−133562)
【出願日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】