説明

炉頂圧回収タービン

【課題】静翼に対するダストの多量付着を未然に防止し、長期間の連続運転時にも安定かつ効率のよい運転を継続することができるようにする。
【解決手段】タービンとこのタービンに連結された発電機を備えて高炉から供給される高炉ガスにより回転駆動されて上記発電機により発電を行なう炉頂圧回収タービンにおいて、タービンの静翼11の表面上に親水性皮膜26を形成する。この炉頂圧回収タービンは、湿式の炉頂圧回収タービン発電設備に配設されるものであり、上記静翼は第1段の静翼であり、親水性皮膜はその凸面22上に形成する。親水性皮膜の下に耐腐食性皮膜25が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炉頂圧回収タービン、特にタービンの静翼へのダスト付着を防止することができる炉頂圧回収タービンに関する。
【背景技術】
【0002】
高炉プラントの排ガス路にタービンを設置して発電等に利用する炉頂圧回収タービン発電設備は、製鉄所の高炉で発生する高炉ガスの持つ圧力エネルギをタービンによって電力として回収すると共に、高炉の炉頂圧制御を行なうものであり、近年、製鉄所の省エネルギ化を図り、環境保全に貢献するための極めて重要な設備となっている。
【0003】
この炉頂圧回収タービン発電設備には湿式と乾式とがあり、湿式の炉頂圧回収タービン発電設備は、高炉から出た高炉ガスを湿式除塵装置で水洗浄した後に、発電機駆動用の炉頂圧回収タービンに導くものである。
【0004】
これに対し、乾式の炉頂圧回収タービン発電設備は、高炉ガスが乾式除塵装置により水洗浄されることなく除塵されるため、高炉ガスの温度が低下せず、回収電力が湿式に比べて25〜45%高くなり、電力の回収を効率的に行なうことができる。
【0005】
このように、現在、国内製鉄所のほとんどの高炉には、湿式又は乾式の炉頂圧回収タービン発電設備が設置されている。しかしながら、上述の湿式の炉頂圧回収タービン発電設備においては、高炉ガスが湿式除塵装置で水洗浄される結果、高炉ガスが蒸気を飽和状態まで含むと共に、湿式除塵装置で回収しきれなかったダストを随伴している。このため、図7に示すように、このダストが、通常運転時に第1段静翼101の凸面102上に多量に付着するという問題を発生させる。
【0006】
この第1段静翼101へのダストの付着が発生すると、第1段動翼103に流入する流れに乱れが生じ、第1段動翼103に対して強い励振力を発生させる。その結果、動翼103に繰り返し応力が発生し、第1段動翼103の疲労限界を著しく低下させるという問題を発生させる。また、ダストによって適正なガス流を形成することができず、タービン効率を低下させるという問題もある。さらに、高炉ガス中のミストには塩素イオンが溶け込んでおり、腐食雰囲気を作り出すため、付着堆積したダストの内部では塩素イオン濃度が上昇し、材料の腐食を引き起こすという問題もある。
【0007】
この一方、炉頂圧制御を行うため、第1段静翼には角度可変機構が備えられる場合が多い。しかしながら、上述のように第1段静翼の凸面上にダストが多量に付着すると、全閉時に第1段静翼をその流路全閉角度まで閉じることができず、タービンへのガス流入を所定の流量まで減少させることができなくなるという問題を発生させる。また、全閉時に第1段静翼がこのダストの付着物に噛み込んで、翼部や角度可変機構に過大な力が働き、損傷を引き起こすという問題もある。
【0008】
このため、従来は、図8に示すように、専ら静翼の表面に耐腐食性に優れた非親水性(撥水性)の皮膜105を形成し、ダストが付着しても静翼が腐食しないようにしてきた。しかしながら、非親水性皮膜105を形成した場合、水滴106が皮膜105上に付着しても、その撥水性故に、水滴106が皮膜105の表面上に乗るだけで、ダスト107を除去することはできない。
【0009】
このように、この耐腐食性に優れた非親水性の皮膜の形成だけではダストの付着を到底防止することができないため、通常運転時等に、タービンの入口部や静翼上流部から水や水蒸気の噴射ないし噴霧を行って、付着しているダストを剥離させて、その除去を行なってきた(例えば、特許文献1及び非特許文献1参照)。
【0010】
この一方、本願出願人は、第1段静翼の内部に冷却水を循環させて第1段静翼を水冷却することにより、高炉ガス中に含まれる水分を第1段静翼の翼表面上に凝縮させて翼表面上に水滴及び又は水膜を形成し、これにより第1段静翼へのダスト付着を防止する炉頂圧回収タービンの発明を開示した(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2005−214033号公報
【特許文献2】特開2007−315364号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】「炉頂圧タービン発電設備」、中村敏明ほか5名、川崎重工技報第155号P20〜P23、川崎重工業株式会社、2004年5月発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
このように、従来の炉頂圧回収タービンは、通常運転時等に、タービンの入口部や静翼上流部から水や蒸気の噴射ないし噴霧を行なって、付着しているダストを除去したり、あるいは、第1段静翼の内部に冷却水を循環させて第1段静翼を水冷却することにより、高炉ガス中に含まれる水分を第1段静翼の翼表面上に凝縮させて翼表面上に水滴及び又は水膜を形成し、第1段静翼へのダスト付着の防止を図ってきた。
【0014】
しかしながら、前者のタービンの入口部や静翼上流部から水や蒸気の噴射ないし噴霧を行なって、付着しているダストを除去する炉頂圧回収タービンは、タービン内を通過する高炉ガスの流れが極めて速く、静翼表面上、特にその凸面(負圧面)に水滴等が充分に到達しないと共に、周方向に多数配置された静翼のすべてに、水や蒸気を均一に噴射ないし噴霧することができないという問題がある。
【0015】
また、たとえ静翼表面に水滴等が到達したとしても、従来は非親水性の皮膜が形成されているために、水滴等を衝突させるだけでは、付着したダストを翼表面から簡単には剥離させることができないという問題がある。
【0016】
このように、水噴射等だけでは、第1段静翼に対するダスト付着防止に充分な効果を上げていないというのが実情であり、上述の第1段動翼に繰り返し応力を発生させて動翼の疲労限界を著しく低下させるという問題、適正なガス流を形成することができずにタービン効率を低下させるという問題、全閉時にタービンへのガスの流入を所定の流量まで減少させることができなくなるという問題、堆積したダスト内部の塩素イオンにより材料の腐食を引き起こすという問題、そして、第1段静翼がこのダストの付着物に噛み込んで翼部等に損傷を引き起こすという問題などが、依然として解決できないままになっている。
【0017】
また、後者の第1段静翼の内部に冷却水を循環させて、第1段静翼を水冷却する炉頂圧回収タービンは、ダスト付着防止に関しては多大な効果が期待できる一方、冷却水を循環させるための冷却水供給装置や、第1段静翼の内部に冷却水路を設けなければならず、コスト高になるという問題が懸念される。
【0018】
これと共に、乾式の炉頂圧回収タービンによる発電設備は、タービン静翼へのダスト付着が湿式ほど深刻な問題にはなっていないが、電力の回収効率のよい乾式の炉頂圧回収タービン発電設備の設置が今後ますます増加すると予想されることから、乾式の炉頂圧回収タービンへのダスト付着対策も併せて行なう必要性がある。
【0019】
本発明はこのような問題を解決するためになされたもので、静翼に対するダストの多量付着を未然に防止することができ、長期間の連続運転時にも安定かつ効率のよい運転を継続することができる、炉頂圧回収タービンを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上述の課題を解決するために、本発明が採用する手段は、タービンとこのタービンに連結された発電機を備えて、高炉から供給される高炉ガスにより回転駆動されて上記発電機により発電を行なう炉頂圧回収タービンにおいて、タービンの静翼の表面に親水性皮膜を形成したことにある。
【0021】
このように、本発明の炉頂圧回収タービンにおいては、タービンの静翼の表面に親水性皮膜を形成したから、翼面上にダストが付着しても、静翼表面に付着した通常運転時の凝縮水や水噴射時の水滴により、親水性皮膜の働きでダストと翼表面との間に水の液膜が形成され、ダストを容易に剥離させることができる。つまり、静翼自体が自己洗浄機能を備えることになる。また、特に通常運転時の凝縮水の場合には、この水膜を周方向に配置したすべての翼外面全体に均一に発生させることから、親水性皮膜を形成したすべての静翼についてムラなくダストを剥離させることができる。
【0022】
上記炉頂圧回収タービンは、湿式の炉頂圧回収タービン発電設備に配設されるものであり、静翼は、第1段の静翼であることが望ましい。湿式の炉頂圧回収タービンにおいては、特に第1段の静翼に多量のダストが付着するため、第1段の静翼の表面に親水性皮膜を形成することにより、ダスト付着を最も効率的に防止することができる。
【0023】
上記炉頂圧回収タービンは、乾式の炉頂圧回収タービン発電設備に配設されるものであり、静翼は、最終段の静翼であることが望ましい。乾式の炉頂圧回収タービンにおいては、特に最終段の静翼にダストが付着するため、最終段の静翼の表面に親水性皮膜を形成にすることにより、ダスト付着を最も効率的に防止することができる。
【0024】
上記静翼の凸面(負圧面)上に親水性皮膜を形成することが望ましい。ダストは特に静翼の凸面側に付着する傾向にあるため、静翼の凸面上に親水性皮膜を形成することにより、ダスト付着を最も効率的に防止することができる。
【0025】
上記静翼の親水性皮膜の下に耐腐食性皮膜が形成されていることが望ましい。このように、静翼の親水性皮膜の下に耐腐食性の高い耐腐食性皮膜を形成することにより、親水性皮膜の上記自己洗浄機能と共に、静翼の耐腐食性を一段と高めることができる。
【0026】
上記親水性皮膜を塗装法によるコーティング又は焼結法によるコーティングにより形成することが望ましい。このように、親水性皮膜を塗装法によるコーティング又は焼結法によるコーティングにより形成することにより、静翼の表面に極めて均質かつ安定的な親水性皮膜を形成することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の炉頂圧回収タービンは、タービンとこのタービンに連結された発電機を備えて高炉から供給される高炉ガスにより回転駆動されて上記発電機により発電を行なう炉頂圧回収タービンにおいて、タービンの静翼の表面に親水性皮膜を形成したから、炉頂圧回収タービンの静翼に対するダストの多量付着を未然に防止することができ、長期間の連続運転時にも安定かつ効率のよい運転を継続することができる、という優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】一例としての湿式の炉頂圧回収タービン発電設備を示す模試図である。
【図2】図1の炉頂圧回収タービンを示す側面図である。
【図3】図2の第1段静翼を示す断面図である。
【図4】飽和ガスの冷却温度と飽和ガスの凝縮水量との関係を示すグラフである。
【図5】親水性皮膜の働きを説明するための図である。
【図6】図2の第1段静翼に対する水噴射の状態を示す模試図である。
【図7】従来の炉頂圧回収タービンのダスト付着状態を示す模試図である。
【図8】非親水性皮膜の働きを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明に係る炉頂圧回収タービンを実施するための形態を、図1ないし図6を参照して詳細に説明する。
【0030】
図1に示すように、一例としての、高炉プラントの排ガス路にタービンを設置して発電等に利用する湿式の炉頂圧回収タービン発電設備においては、高炉1から排気された高炉ガスが、ダストキャッチャ2、湿式集塵装置3、入口塞止弁4、危急遮断弁5、調速弁6を介して炉頂圧回収タービン10に導かれて、タービン10を回転駆動させる。
【0031】
この炉頂圧回収タービン10によって、タービン10に連結された発電機7を回転駆動させることにより、発電を行なう。炉頂圧回収タービン10の第1段静翼11、第2段静翼12、第3段静翼13は、安定かつ効率のよい運転を継続するために、ガス流に対する角度を変更させるための角度可変機構15を備えている。
【0032】
上記炉頂圧回収タービン発電設備において、炉頂圧回収タービン10の起動時及び停止時には、例えば、起動開始から初期設定回転数までは調速弁6による調速弁開度制御が、初期設定回転数から揃速開始直前設定回転数までの間は回転数制御がそれぞれ行われる。また、100%回転数に到達して電力網に併入された直後に負荷がかけられるが、その負荷が増加して通常運転になるまでは負荷制御が行われる。そして、通常運転時にはタービンの前圧制御が行われる。
【0033】
一方、タービン10の停止時には、例えば、通常運転から負荷が低減されて解列直前までは負荷制御が、解列直後の設定回転数から初期設定回転数までの間は回転数制御がそれぞれ行われる。また、初期設定回転数から停止するまでは調速弁6による調速弁開度制御が行われる。
【0034】
タービン10の起動時には、タービン10の前圧が通常運転時の圧力に高められた状態で調速弁6を徐々に開けていき、ガスを翼列に導く。調速弁6がほぼ全開となった時点で、角度可変機構13を備えた静翼11,12,13をその流路初期設定角度から徐々に開けていき、通常運転に移行する。このとき、バイパス主弁8は全閉にされている一方、バイパス制御弁9が徐々に閉じられるので、タービン10の前圧は、常に通常運転時の圧力に維持される。
【0035】
この炉頂圧回収タービン発電設備において、タービン10の起動及び停止動作を主体的に制御するものは、静翼11,12,13の角度可変機構15、あるいは調速弁6であり、バイパス制御弁9は、タービン10の前圧を通常運転時の圧力に維持するために使用される。このようにして、炉頂圧回収タービンによる発電とタービンの前圧制御が行われる。
【0036】
図2に示すように、例えば、炉頂圧回収タービン10は3段タービンからなり、第1段静翼11、第1段動翼16、第2段静翼12、第2段動翼17、第3段静翼13、第3段動翼18が、ガス路の上流側からこの順に配設される。
【0037】
図3に示すように、第1段静翼11には、母材21の凸面(負圧面)22及び凹面(正圧面)23の全面について、耐腐食性の高い耐腐食性皮膜25が形成されている。ここで、耐腐食性皮膜とは、シリコーン樹脂を特殊変性し、樹脂本来が有する耐熱性に加えて酸やアルカリに対する耐食性、耐海水性、耐スチーム性に優れた皮膜で、例えば分子骨格はジメチルポリシロキサンに反応性の強い官能基を有するもの等をいう。この耐腐食性皮膜25には、例えばサントモ(登録商標)等が使用される。
【0038】
このため、上述の湿式の炉頂圧回収タービン発電設備において、高炉1から排出される高炉ガスが湿式除塵装置3で水洗浄された結果、高炉ガスは蒸気を飽和状態まで含んでいる。湿式除塵装置3で回収しきれなかったダストを随伴する飽和状態の蒸気により、第1段静翼11上にダストが付着しても、母材21に腐食が発生しないようにしている。また、第2段静翼12及び第3段静翼13についても、その表面上に上述の耐腐食性皮膜を形成する。
【0039】
第1段静翼11の凸面(負圧面)22には、この耐腐食性皮膜25の上に、さらに親水性皮膜26が形成される。この親水性皮膜26には、特に耐摩耗性に優れたものを使用し、例えば、塗装法によるコーティング又は焼結法によるコーティングにより形成される。このように、親水性皮膜を塗装法によるコーティング又は焼結法によるコーティングにより形成することにより、静翼11の凸面22上に、極めて均質かつ安定的な耐摩耗性に優れた親水性皮膜26を皮膜を形成することができる。
【0040】
ここで、皮膜の親水性は一般的にはその接触角により評価され、親水性皮膜とは接触角が50度以下のものをいう。この親水性皮膜26は、上述の耐腐食性皮膜25に比べて濡れ性に極めて優れたものであり、例えば、クリスタコート(登録商標)、WIN−KOTE(登録商標)、ZACROM(登録商標)、SG−KOTE(登録商標)などが使用される。なお、これらは親水性皮膜の一例にすぎず、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0041】
飽和水蒸気を含む高炉ガスは、タービン10内で下流側へ断熱膨張しながら流れるため、ガス温度が徐々に低下していき、その間に凝縮水が多量に発生し、翼外表面に水滴や水膜を発生させる。図4に示すように、タービン10内で飽和ガスの温度が10°C低下すると、約3%重量の凝縮水が発生する。
【0042】
図5に示すように、第1段静翼11の凸面22の表面には、上述のように親水性皮膜26が形成されているから、この付着した水滴により親水性皮膜25とダスト28との間に水膜27が形成され、堅固に付着しているダスト28が剥離しやすくなる。このようにして剥離しやすくなったダスト28は、運転時に容易に剥離する。この水膜は周方向に配置したすべての翼外面全体に均一に発生することから、親水性皮膜を形成したすべての静翼についてムラなくダスト28等を剥離させることができる。
【0043】
つまり、本発明の炉頂圧回収タービンは、第1段静翼11自体が自己洗浄機能を備えることになる。上記のとおり、従来は専ら水滴の除去及び母材の腐食防止という観点から、静翼の表面に撥水性を備えた耐腐食性皮膜の形成を行ってきたが、本発明の炉頂圧回収タービンは、単に耐腐食性のみではなく、自己洗浄機能をもたらす親水性と、耐摩耗性とを備えた皮膜が形成される。
【0044】
図6に示すように、図示しない水噴射装置から第1段静翼11に対し、主流ガスに対して所定の角度θを設けて水噴射ないし水噴霧が行われる。これは、第1段静翼11が主流ガスに対して一定の角度が付いているためである。第1段静翼11の角度調整は、上述の角度可変機構15の作動により行われる。このとき、第1段静翼11の凹面23については、この水噴射ないし水噴霧が直接衝突し、ダスト等の付着があれば、この水噴射の勢いで付着しているダスト等を除去する。
【0045】
この一方、第1段静翼11の凸面22については、この水噴射ないし水噴霧が直接には衝突しないが、その表面に水滴となって付着する。第1段静翼11の凸面22の表面には、上述のように親水性皮膜26が形成されているから、通常運転時と同様に、この付着した水滴により親水性皮膜を施した翼面とダストとの間に水膜が形成され、堅固に付着しているダストが剥離しやすくなる。このようにして剥離しやすくなったダストは、この水噴射ないし水噴霧中、あるいは引き続き行われる運転時に容易に剥離する。
【0046】
このように、本発明の炉頂圧回収タービンは、静翼に対するダストの多量付着を未然に防止することができ、長期間の連続運転時にも安定かつ効率のよい運転を継続することができるものである。また、このダストの付着防止により、上述の母材に対する腐食等の諸問題をすべて解決することができる。
【0047】
なお、上述の親水性皮膜の形成は、第1段静翼11の母材21上に耐腐食性皮膜25を形成することなく、母材21の表面上に直接形成することもできる。また、第1段静翼11の内部に冷却水を循環させて第1段静翼11を水冷却することにより、高炉ガス中に含まれる水分を第1段静翼11の翼表面上に凝縮させて翼表面上に水滴及び又は水膜を形成し、これにより第1段静翼11へのダスト付着を防止する炉頂圧回収タービンの発明(例えば、特許文献2参照)を同時に実施すれば、ダスト付着防止効果が一段と高いものとなる。
【0048】
上述の炉頂圧回収タービン発電設備は一例にすぎず、その他、様々な方式の湿式炉頂圧回収タービン設備がある。また、乾式の炉頂圧回収タービン発電設備の炉頂圧回収タービンの静翼に対しても、実施することができることは勿論である。この乾式の炉頂圧回収タービンでは、最終段の静翼の凸面(負圧面)上にダストが付着する傾向があるため、最終段の静翼、特にその凸面(負圧面)上に親水性皮膜の形成するとダスト付着防止に極めて効果的である。乾式の炉頂圧回収タービンによる発電設備については、電力が回収効率のよいため、その設置が今後ますます増加すると予想されることから、本発明によるダスト付着対策を併せて行なうことが有用である。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の炉頂圧回収タービンは、必ずしも上述の湿式及び乾式の炉頂圧回収タービンの発電設備に限定して利用されるものではなく、コスト効果的に極めて有利であることから、他の形式のタービンに対しても広く利用されることが期待される。
【符号の説明】
【0050】
1 高炉
2 ダストキャッチャ
3 湿式集塵装置
4 入口塞止弁
5 危急遮断弁
6 調速弁
7 発電機
8 バイパス主弁
9 バイパス制御弁
10 炉頂圧回収タービン
11 第1段静翼
12 第2段静翼
13 第3段静翼
15 角度可変機構
16 第1段動翼
17 第2段動翼
18 第3段動翼
21 母材
22 凸面
23 凹面
25 非親水性皮膜
26 耐腐食性皮膜
27 水膜
28 ダスト
101 第1段静翼
102 凸面
103 第1段動翼
105 非親水性皮膜
106 水滴
107 ダスト
θ 所定角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービン(10)と前記タービンに連結された発電機(7)を備えて高炉(1)から供給される高炉ガスにより回転駆動されて前記発電機により発電を行なう炉頂圧回収タービンにおいて、前記タービンの静翼(11)の表面上に親水性皮膜(26)を形成したことを特徴とする炉頂圧回収タービン。
【請求項2】
前記炉頂圧回収タービン(10)は、湿式の炉頂圧回収タービン発電設備に配設されるものであり、前記静翼は、第1段の静翼(11)であることを特徴とする請求項1に記載の炉頂圧回収タービン。
【請求項3】
前記炉頂圧回収タービンは、乾式の炉頂圧回収タービン発電設備に配設されるものであり、前記静翼は、最終段の静翼であることを特徴とする請求項1に記載の炉頂圧回収タービン。
【請求項4】
前記静翼(11)の凸面(22)上に前記親水性皮膜(26)を形成したことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の炉頂圧回収タービン。
【請求項5】
前記静翼(11)の前記親水性皮膜(26)の下に耐腐食性皮膜(25)が形成されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の炉頂圧回収タービン。
【請求項6】
前記親水性皮膜(26)を塗装法によるコーティング又は焼結法によるコーティングにより形成したことを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の炉頂圧回収タービン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−197714(P2012−197714A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−62053(P2011−62053)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【Fターム(参考)】