説明

炊飯器

【課題】 簡単な構成によって、鍋の中の水が沸騰しやすく、ご飯が早く炊ける、また、鍋底からの急激大量の沸騰水でお米を底からかき混ぜながら炊き上げることができ、ふっくらした美味しいご飯が炊ける炊飯器を提供する。
【解決手段】 被炊飯物を入れる鍋3に、少なくとも内底部分3aに米の粒径よりも小さい幅又は直径を有する複数の凹部51を形成したものである。鍋3に形成した凹部51は、溝51aであるか、円形、楕円形、矩形又は多角形などのくぼみ51bであってよい。また、鍋3に形成した凹部51は、鍋3の内底部分3aに同心円状にあるいは部分的に切断された同心円状に配列して設けられ、あるいは、鍋3の内底部分3aに中心部から放射状に配列したり、平行な線状に配列したりして設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電気炊飯器に係り、特に大量の沸騰水の対流を作りご飯を炊き上げる炊飯器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化及び環境汚染の問題が地球規模において最優先課題として解決しなければならない時代に突入している。このうち、頻発する自然災害の一因が地球温暖化にあるとされていることから、地球温暖化の防止、すなわちCO排出量の数値目標が世界各国及び地域に設定されて、その目標達成に向けて様々な施策が打ち出され、我が国においても京都議定書での削減目標達成に向けた取り組みがなされている。かかる状況を踏えて、一般家庭で使用される電化製品もその対象となり、電気炊飯器も省エネルギー対策が急務となって、これまでさまざまな工夫がなされた炊飯器が特許文献で紹介されている。
【0003】
ところで、ご飯は炊飯によりお米の美味さを引き出し、米の芯までふっくらと炊き上げ、鍋全体でむらなく炊き上げられることが望ましい。また、単位時間当たり同じエネルギーにより短時間でご飯を炊き上げることができれば、エネルギーの消費も節減できる。そのためには炊飯時の被炊飯物の鍋内部における対流によって鍋全体に均一な加熱ができることが重要である。しかしながら、従来の炊飯器においては、炊飯器内部の被炊飯物の対流の状況は鍋の形状と誘導加熱コイルの形状によって決まり、大量の沸騰水の対流を作りご飯を炊き上げることは困難であった。
【0004】
従来、特許文献1のように、アルミ層とステンレス層のクラッド材で作られた炊飯器の鍋の内面のアルミ部分を部分的に取り去る、あるいは減らすことにより、加熱時に温度の高い外側のステンレス部分を露出させ若しくはより薄いアルミ層を介してステンレス部分に近接させて、鍋内面に周囲よりもより温度の高い部分を作り出し、密度差に起因する上昇対流を得るものがある。
【特許文献1】特開平11−290204号公報[段落(0007)〜(0011)、(0019)、図2]
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この、特許文献1のくぼみは、くぼみ内部の水の沸騰を発生させるものではなく、鍋内面に周囲よりも温度の高い部分を作り出し、密度差に起因する上昇対流を得るものである。その明細書に説明されているように、くぼみの内部に被炊飯物が入り加熱されるものであるので、沸騰する水の量は従来と変わらず、大量の沸騰水で炊き上げるものではない。また、くぼみの中に炊飯物が入るので、炊飯後くぼみの中に被炊飯物が多く残ったりして鍋の手入れも困難である。したがって、以上のような状況から、鍋底からの爆発的な大量の沸騰水によって被炊飯物を底からかき混ぜながら速やかに炊き上げることができ、ふっくらした美味しいご飯が炊ける炊飯器が求められている。また、手入れも容易な鍋であることが望ましい。
【0006】
本願の発明者は、上記の問題点を解決すべく種々検討を行った結果、鍋の内底部に水が保持できる複数のくぼみを設けることによって、鍋内の水が沸騰しやすくなり、熱対流でお米をかき混ぜながらむらなくご飯を早く炊くことができることを見出し、本発明の炊飯器を完成するに至ったものである。
【0007】
すなわち、本発明は、簡単な構成によって、鍋の中の水が沸騰しやすく、ご飯が早く炊ける炊飯器を提供することを目的とするものである。
【0008】
また、本発明は、鍋底からの急激で大量な沸騰水により対流を起こしお米を底からかき混ぜながら炊き上げることができ、ふっくらした美味しいご飯を炊くことができる炊飯器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1の炊飯器は、被炊飯物を入れる鍋と、前記鍋を収容する開口部及び該鍋内の被炊飯物を加熱する加熱手段並びに前記加熱手段を制御して被炊飯物の炊飯及び保温制御を行なう制御手段を有する炊飯器本体と、前記鍋及び前記炊飯器本体の開口部を塞ぐ蓋体と、を備えた炊飯器において、前記鍋の少なくとも内底部分には、前記被炊飯物の粒径よりも小さい幅又は直径を有する複数の凹部を形成していることを特徴とする。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1に記載の炊飯器において、前記鍋に形成した凹部は、溝であることを特徴とする。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1に記載の炊飯器において、前記鍋に形成した凹部は、円形、楕円形又は多角形のいずれかの形状からなるくぼみであることを特徴とする。
【0012】
請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載の炊飯器において、前記鍋に形成した凹部は、同心円状に配列して設けられていることを特徴とする。
【0013】
請求項5の発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載の炊飯器において、前記鍋に形成した凹部は、部分的に切断された同心円状に配列して設けられていることを特徴とする。
【0014】
請求項6の発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載の炊飯器において、前記鍋に形成した凹部は、中心部から放射状に配列して設けられていることを特徴とする。
【0015】
請求項7の発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載の炊飯器において、前記鍋に形成した凹部は、平行な線状に配列して設けられていることを特徴とする。
【0016】
請求項8の発明は、請求項1乃至7のいずれかに記載の炊飯器において、前記鍋に形成した凹部の断面の形状は、矩形、U字形又はV字形のいずれかであることを特徴とする。
【0017】
請求項9の発明は、被炊飯物を入れる鍋と、前記鍋を収容する開口部及び該鍋内の被炊飯物を加熱する加熱手段並びに前記加熱手段を制御して被炊飯物の炊飯及び保温制御を行なう制御手段を有する炊飯器本体と、前記鍋及び前記炊飯器本体の開口部を塞ぐ蓋体と、を備え、炊飯の過程において加圧と減圧を繰り返して炊飯を行なう炊飯器において、
前記鍋の少なくとも内底部分には、前記被炊飯物の粒径よりも小さい幅又は直径を有する複数の凹部を形成していることを特徴とする。
【0018】
請求項10の発明は、請求項9に記載の炊飯器において、前記鍋に形成した凹部は、溝であることを特徴とする。
【0019】
請求項11の発明は、請求項9に記載の炊飯器において、前記鍋に形成した凹部は、円形、楕円形又は多角形のいずれかの形状からなるくぼみであることを特徴とする。
【0020】
請求項12の発明は、請求項9乃至11のいずれかに記載の炊飯器において、前記鍋に形成した凹部は、同心円状に配列して設けられていることを特徴とする。
【0021】
請求項13の発明は、請求項9乃至11のいずれかに記載の炊飯器において、前記鍋に形成した凹部は、部分的に切断された同心円状に配列して設けられていることを特徴とする。
【0022】
請求項14の発明は、請求項9乃至11のいずれかに記載の炊飯器において、前記鍋に形成した凹部は、中心部から放射状に配列して設けられていることを特徴とする。
【0023】
請求項15の発明は、請求項9乃至11のいずれかに記載の炊飯器において、前記鍋に形成した凹部は、平行な線状に配列して設けられていることを特徴とする。
【0024】
請求項16の発明は、請求項9乃至15のいずれかに記載の炊飯器において、前記鍋に形成した凹部の断面の形状は、矩形、U字形又はV字形のいずれかであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明は上記の構成を備えることにより、以下に示すような優れた効果を奏する。すなわち、請求項1の発明によれば、炊飯器の被炊飯物を入れる鍋の少なくとも内底部分に被炊飯物、例えば米の粒径よりも小さい幅又は直径を有する複数の凹部を形成したことによって、その部分に溜められた水が炊飯時に加熱されると一気に沸騰し、しかも従来よりも大量の水であるので、急激な対流が起こり米をかき混ぜるので、ふっくらした美味しいご飯を早く炊き上げることができる。また、炊飯に要するエネルギーを節約できる。
【0026】
請求項2乃至請求項3の発明によれば、鍋の内壁上に米粒よりも幅寸法又は直径寸法の小さい複数の溝又はくぼみを設けることによって、この溝又はくぼみに水が溜められていて加熱により一気に沸騰するので、従来の鍋に比較して水量が多く激しい熱対流を引き起こすことができる。この沸騰熱が米に浸透し、美味さを引き出すことができる。かつ大量の沸騰水によりかき混ぜられた米は吸水が促進され各粒の芯からのα化ができる。そしてこのことにより温度が上がりにくい鍋の中心部まで加熱され、鍋の中心部にある米も美味しく炊き上がることになる。
【0027】
請求項4乃至請求項7の発明によれば、炊飯器の鍋の凹部は、実施態様としてさまざまな配列を取り得る。そして、これらの配列のうち要求に適したものを選ぶことによって、請求項1の発明の効果をより確実にすることができる。
【0028】
請求項8の発明によれば、溝やくぼみの断面は、矩形、U字形、V字形などから適宜選択できる。
【0029】
請求項9の発明によれば、この炊飯器は、炊飯過程で加圧と減圧を繰り返して炊飯を行なう炊飯方式を採用しており、この方式における減圧沸騰時に、さらに急激な対流が起こり米をかき混ぜるので、よりふっくらした美味しいご飯を早く炊き上げることができる。すなわち、この方式の炊飯器の被炊飯物を入れる鍋の少なくとも内底部分に被炊飯物の粒径よりも小さい幅又は直径を有する複数の凹部を形成したことによって、その部分に溜められた水が炊飯時に加熱され加圧状態から急激に減圧されると一気に沸騰し、しかも従来よりも大量の水であるので、急激な対流が起きて米をかき混ぜるので、ふっくらした美味しいご飯を早く炊き上げることができる。また、炊飯に要するエネルギーを節約できる。
【0030】
請求項10乃至請求項11の発明によれば、鍋の内壁上に米粒よりも幅寸法又は直径寸法の小さい複数の溝又はくぼみを設けることによって、この溝又はくぼみに水が溜められていて加熱され、加圧状態から急激に減圧されると一気に沸騰するので、従来の鍋に比較して水量が多く激しい熱対流を引き起こすことができる。この沸騰熱が米に浸透し、美味さを引き出すことができる。かつ大量の沸騰水によりかき混ぜられた米は吸水が促進され各粒の芯からのα化ができる。そしてこのことにより温度が上がりにくい鍋の中心部まで加熱され、鍋の中心部にある米も美味しく炊き上がることになる。
【0031】
請求項12乃至請求項16の発明によれば、炊飯過程で加圧と減圧を繰り返して炊飯を行なう炊飯方式を採用した炊飯器の鍋の凹部は、実施態様としてさまざまな配列を取り得る。そして、これらの配列のうち要求に適したものを選ぶことによって、請求項9の発明の効果をより確実にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、図面を参照して、本発明の最良の実施形態を説明する。但し、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための炊飯器を例示するものであって、本発明をこの炊飯器に特定することを意図するものではなく、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のものにも等しく適用し得るものである。
【実施例】
【0033】
図1は本発明の一実施例に係る炊飯器の断面図である。図2は炊飯器の鍋の断面図であり、図2(a)は鍋の全体図、図2(b)は図2(a)の鍋底部分の拡大図を示している。図3は同心円状に溝を設けた実施例の平面図である。図4は形成した凹部が部分的に切断された同心円状に配列して設けられた実施例に係る鍋の平面図である。図5は形成した凹部が中心部から放射状に配列して設けられた実施例に係る鍋の平面図である。図6は形成した凹部が円形のくぼみであり線状に配列して設けられた実施例に係る鍋の平面図である。図7は凹部が平行な線状に配列して設けられた実施例に係る鍋の平面図である。図8は鍋に形成した凹部の断面図であり、図8(a)は矩形、図8(b)はU字形、図8(c)はV字形の凹部をそれぞれ示している。
【0034】
本発明の実施例に係る炊飯器1は、例えば図1に示すように、被炊飯物を入れる鍋3と、この鍋3を着脱自在に収容する開口部及び鍋3内の被炊飯物を加熱する誘導加熱コイル5等並びに器外へ連通する通気孔23a及び排気孔23bを有する炊飯器本体2と、鍋3及び炊飯器本体2の開口部を塞ぐ蓋体4と、誘導加熱コイル5及び側面ヒータ6等を制御して被炊飯物の炊飯及び保温を行なう制御手段とを備え、炊飯器本体2に、通気孔23a及び排気孔23bを開閉するシャッター機構25を設け、制御手段は炊飯器本体内部の温度が所定温度以上の期間は通気孔23a及び排気孔23bを開き、また所定温度以下の期間は通気孔23a及び排気孔23bを閉鎖するようにシャッター機構25を制御する構成となっている。
【0035】
炊飯器本体2は、その内部に鍋3を収容する非金属材料で成形された有底筒状の内ケース21と、この内ケースを覆う外ケース22とを有し、内ケース21内に鍋3が着脱自在に収容されるようになっている。内ケース21は、その上端部に外周へ突出したフランジ21aが形成されている。鍋3は、その上端開口部に外方に張り出すフランジ31が形成されており、このフランジ31が内ケース21のフランジ21aに掛るように載置される。内ケース21は、その底部付近の外周囲に誘導加熱コイル5が配設される。この誘導加熱コイル5は、鍋3の外周面までの距離が一定になるように耐熱性樹脂材料で成形されたコイルカバー(図示省略)に支持されている。また、内ケース21には、上方開口部と誘導加熱コイル5との間に側面ヒータ6が配設されている。
【0036】
蓋体4は、枠体42の上下に表蓋41及び蓋カバー48をそれぞれ取り付け、蓋カバー48を介して枠体に内蓋43が装着された構成を有し、炊飯器本体2の内ケース21の上方開口部を覆うように取り付けられている。その取り付けは、枠体42をヒンジ部材44と枢支ピン45とを用いて炊飯器本体2に軸支した構成となっている。また枠体42と内蓋43の間には、蓋カバー48に覆われて蓋ヒータ49が配設されるとともに、蓋温度センサ(図示省略)が設けられている。さらに、内蓋43には、炊飯器本体2内の圧力を調整する圧力調整弁4a及び安全弁4bが装着されている。蓋カバー48は枠体42に固定され、内蓋43は蓋カバー48を覆って枠体42に着脱自在に支持されている。圧力調整弁4aは、図示しないソレノイドにより一連の炊飯工程のうち沸騰維持工程で作動される。表蓋41には、鍋3内の炊飯物が吹きこぼれて一気に飛び出すのを防止する吹きこぼれ防止蓋4cが着脱自在に装着されている。
【0037】
内蓋43の外周囲には、鍋のフランジ部31と内蓋43をシールする鍋パッキン46が外枠50に支持されて装着されている。また、ヒンジ部材44の反対側には、内ケース21の上端部に形成された係止部材47aが設けられ、枠体42に設けた係止レバー47bに係止されて蓋体4を閉じた状態に支持するようになっている。炊飯器本体2内に鍋3を収容して蓋体4で覆うと、鍋パッキン46が鍋3の開口縁部に圧接されて鍋3が閉鎖される。
【0038】
炊飯器本体2は、外ケース22の前面に操作プレート7が装着されている。この操作プレート7には、電源スイッチ7a、炊飯スタートスイッチ、メニュー選択スイッチ、保温スイッチ等(図示せず)のスイッチ類の操作釦及び表示パネル7bが装着されており、これらの部品のうち、表示パネル7bには操作制御基板8に取り付けられた電子部品(図示省略)によって選択された炊飯メニュー等が表示される。
【0039】
炊飯器本体2には、温度センサの情報を受けて、内蔵する所定のプログラムに合わせ、誘導加熱コイル5、側面ヒータ6及び蓋ヒータ49等へ電力を供給・制御する電源制御基板10が通気孔23aに近接した箇所に配設されている。この電源制御基板10には、半導体素子からなるインバータ、スイッチング素子、タイマー素子等の電子部品が装着されている。これらの電子部品のうち、特にインバータ9は作動時に発熱するのでヒートシンク、或いは冷却ファンによって冷却される。また、炊飯器本体2は、その底部23の中央部に鍋3の底面に接触するようにして温度検出センサ32が設けられている。さらに炊飯器本体2又は蓋体4のいずれかに外気温度を検知する外気温センサ(図示省略)が設けられている。この外気温センサの出力は、制御装置に入力されて冷却ファン11或いはシャッター機構25が作動される。
【0040】
炊飯器本体2の底部23には、図1に示すように、空気を吸気する通気孔23a及び吸気された空気を排出する排気孔23bが形成され、通気孔23aに近接した位置に冷却ファン11が配設されている。この冷却ファン11は、図示しないモータにより作動される。
【0041】
通気孔23a及び排気孔23bは、底部23に所定の幅長及び長さを有する複数本の細溝、いわゆるスリットで形成されている。また、これらのスリットからなる通気孔23a及び排気孔23bは、それぞれのスリットを塞ぐ幅長及び長さを有する板状体からなる開閉扉、すなわちシャッター板23a’、23b’で開閉される。その開閉は、各シャッター板23a’、23b’が作動板24に連結されて、この作動板24がソレノイド12によって移動されることによって通気孔23a及び排気孔23bがそれぞれ開閉される。この作動板24は、炊飯器本体2の底部23に設けたガイド機構26でガイドされながら底部で摺動可能になっている。シャッター機構25は、各シャッター板23a’、23b’を有する作動板24と、この作動板を作動させるソレノイド12とで構成されている。
【0042】
本発明は、例えば上記のような、被炊飯物を入れる鍋3と、鍋3を収容する開口部及び鍋3内の被炊飯物を加熱する加熱手段並びにその加熱手段を制御して被炊飯物の炊飯及び保温制御を行なう制御手段を有する炊飯器本体2と、鍋3及び炊飯器本体2の開口部を塞ぐ蓋体4とを備えた炊飯器1において、図2に示すように、鍋3の少なくとも内底部分3aに米の粒径よりも小さい幅又は直径を有する複数の凹部51を形成した炊飯器である。
【0043】
鍋3に形成した凹部51は、図3に示すように溝51aであってもよいし、また、図6に示すように円形のくぼみ51bでもよいし、その他楕円形や矩形又は六角形その他の多角形などいろいろの形状のくぼみであってもよい。要するに、米の粒径よりも小さい幅又は直径を有する複数の凹部で、通常の米粒が入らないようなものであれば差し支えない。
【0044】
これらの鍋3に形成した凹部51は、図3に示すように、鍋3の内底部分3aに同心円状に所定の間隔をおいて配列して設けられる。凹部51の間隔や本数などは適宜選択すればよい。あるいは、図4に示すように、円の一部が部分的に切断された同心円状に配列して設けてもよく、この場合全体として扇形に配置された四箇所の溝部分の間に溝やくぼみのない4つの扇形部分があることになる。
【0045】
さらに、鍋3に形成した凹部51は、図5に示すように鍋の内底部分3aに溝51aを中心部から放射状に配列して設けたり、図6のように複数の円形のくぼみ51bで列を作ってこれを放射状に配列したりしてもよい。もちろん、くぼみ51bは円形に限らず、その他図示しないが楕円形や、矩形、六角形などの多角形などいろいろの形体のくぼみであってもよい。あるいは、図7のように、鍋3の内底部分3aに複数の溝51aを平行な線状に配列して設けてもよく、その形態、配列、配列の密度などは適宜選択すればよい。
【0046】
これらの鍋3に形成した凹部51は、その断面を図8に示したように、図8(a)のような矩形、図8(b)のようなU字形又は図8(c)のようなV字形などに形成することができる。そして、これらの凹部の幅は図示のように米の粒径よりも狭いので、米が入り込まずに水が溜められることになる。
【0047】
以上は鍋の内底部分に凹部を設けた例を示したが、内底部分のみならず鍋の立ち上がり壁の内側に溝など凹部を設けてもよい。
【0048】
このように、炊飯器の被炊飯物を入れる鍋の少なくとも内底部分に米の粒径よりも小さい幅又は直径を有する複数の凹部を形成したことによって、鍋底全体に直接米粒が接触している従来のものに比較して、本発明では、これらの凹部に溜まった水が炊飯時に加熱されると一気に沸騰し、しかも従来の鍋に比較して水量が多いので熱対流を引き起こすことができかつ大量の沸騰水によりかき混ぜられた米は吸水が促進され各粒の芯からのα化ができる。そしてこのことにより温度が上がりにくい鍋の中心部まで加熱され、鍋の真ん中の米も美味しく炊き上がることになる。しかも、従来よりも大量の水であるので、この沸騰熱が米に浸透し、ふっくらした美味しいご飯を早く炊き上げて提供することができる。また、炊飯に要するエネルギーを節約することもできる。
【0049】
かかる作用を有する本発明は、炊飯の過程で加圧と減圧を行い、加圧時に高温を加えて熱と水分を米の芯に浸透させ、その状態からの急激な減圧によって起きる爆発的対流により米をかき混ぜる方式の炊飯器に適用すれば、極めて効果的である。この炊飯方式は、加圧時には例えば1.2気圧、105℃で炊飯し、減圧時には急激に1気圧まで減圧することを、被炊飯物に応じて数回乃至十数回繰り返すものである。そうすると、米の場合には加圧時には熱と水分が米の芯まで浸透して甘みと粘りを引き出し、減圧時には大沸騰が生じて米が鍋の底からかき混ぜられることになるので、米の吸水が促進され米が芯からα化するとともに攪拌により鍋の中心部まで加熱されふっくらしたご飯が炊ける。この沸騰時の減圧の際に、突沸が起き急激で大きな攪拌を行なうために鍋底に大量の水を必要とするが、本発明によれば必要な水量を確保することができる。
【0050】
すなわち、この方式の炊飯器1の被炊飯物を入れる鍋3の少なくとも内底部分3aに被炊飯物の粒径よりも小さい幅又は直径を有する複数の凹部51を形成することによって、その部分に溜められた水が炊飯時に加熱され加圧状態から急激に減圧されると一気に沸騰し、しかも従来よりも大量の水であるので、急激な対流が起こり米をかき混ぜるので、ふっくらした美味しいご飯を早く炊き上げることができる。また、炊飯に要するエネルギーを節約できるのである。
【0051】
この炊飯方式の場合も、図2乃至図8に示したのと同様に、鍋3の内壁上に米粒よりも幅寸法又は直径寸法の小さい複数の溝51a又はくぼみ51bを設けることによって、この溝51a又はくぼみ51bに水が溜められていて加熱され、加圧状態から急激に減圧されると一気に沸騰して、従来の鍋に比較して水量が多い激しい熱対流を引き起こすことができる。この沸騰熱が米に浸透し、美味さを引き出すことができる。かつ大量の沸騰水によりかき混ぜられた米は吸水が促進され各粒の芯からのα化ができる。また、このことにより温度が上がりにくい鍋の中心部まで加熱され、鍋3の中心部にある米も美味しく炊き上がることになる。かかる炊飯器の鍋3の凹部51は、実施態様としてさまざまな配列を取り得るが、前述の配列のうち要求に適したものを選ぶことによって、その効果をより確実にすることができる。
【0052】
以上述べたように、本発明によれば、炊飯器本体に収容する鍋の少なくとも内底部分に米の粒径よりも小さい幅又は直径を有する複数の凹部を形成するという簡単な構成によって、鍋の中の水が沸騰しやすく、ご飯が早く炊ける炊飯器を提供できる。また、鍋底からの急激大量の沸騰水でお米を底からかき混ぜながら炊き上げることができ、ふっくらした美味しいご飯が炊ける炊飯器を提供することができる。このため、エネルギーが有効活用でき、省エネルギー化にも有効である。また、鍋の手入れも容易である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】図1は本発明の一実施例に係る炊飯器の断面図である。
【図2】図2は炊飯器の鍋の断面図であり、図2(a)は鍋の全体図、図2(b)は図2(a)の鍋底部分の拡大図を示している。
【図3】図3は同心円状に溝を設けた実施例の平面図である。
【図4】図4は形成した凹部が部分的に切断された同心円状に配列して設けられた実施例に係る鍋の平面図である。
【図5】図5は形成した凹部が中心部から放射状に配列して設けられた実施例に係る鍋の平面図である。
【図6】図6は形成した凹部が円形のくぼみであり線状に配列して設けられた実施例に係る鍋の平面図である。
【図7】図7は凹部が平行な線状に配列して設けられた実施例に係る鍋の平面図である。
【図8】図8は鍋に形成した凹部の断面図であり、図8(a)は矩形、図8(b)はU字形、図8(c)はV字形の凹部をそれぞれ示している。
【符号の説明】
【0054】
2 炊飯器本体
3 鍋
4 蓋体
4a 圧力調整弁
4b 安全弁
4c 吹きこぼれ防止蓋
5 誘導加熱コイル
6 側面ヒータ
7 操作プレート
7a 電源スイッチ
7b 表示パネル
8 操作制御基板
9 インバータ
10 電源制御基板
11 冷却ファン
12 ソレノイド
21 内ケース
22 外ケース
24 作動板
25 シャッター機構
31 鍋のフランジ部
32 鍋底温度センサ
41 表蓋
42 枠体
43 内蓋
46 鍋パッキン
48 蓋カバー
49 蓋ヒータ
51 凹部
51a 溝
51b くぼみ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被炊飯物を入れる鍋と、前記鍋を収容する開口部及び該鍋内の被炊飯物を加熱する加熱手段並びに前記加熱手段を制御して被炊飯物の炊飯及び保温制御を行なう制御手段を有する炊飯器本体と、前記鍋及び前記炊飯器本体の開口部を塞ぐ蓋体と、を備えた炊飯器において、前記鍋の少なくとも内底部分には、前記被炊飯物の粒径よりも小さい幅又は直径を有する複数の凹部を形成していることを特徴とする炊飯器。
【請求項2】
前記鍋に形成した凹部は、溝であることを特徴とする請求項1に記載の炊飯器。
【請求項3】
前記鍋に形成した凹部は、円形、楕円形又は多角形のいずれかの形状からなるくぼみであることを特徴とする請求項1に記載の炊飯器。
【請求項4】
前記鍋に形成した凹部は、同心円状に配列して設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の炊飯器。
【請求項5】
前記鍋に形成した凹部は、部分的に切断された同心円状に配列して設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の炊飯器。
【請求項6】
前記鍋に形成した凹部は、中心部から放射状に配列して設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の炊飯器。
【請求項7】
前記鍋に形成した凹部は、平行な線状に配列して設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の炊飯器。
【請求項8】
前記鍋に形成した凹部の断面の形状は、矩形、U字形又はV字形のいずれかであることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の炊飯器。
【請求項9】
被炊飯物を入れる鍋と、前記鍋を収容する開口部及び該鍋内の被炊飯物を加熱する加熱手段並びに前記加熱手段を制御して被炊飯物の炊飯及び保温制御を行なう制御手段を有する炊飯器本体と、前記鍋及び前記炊飯器本体の開口部を塞ぐ蓋体と、を備え、炊飯の過程において加圧と減圧を繰り返して炊飯を行なう炊飯器において、
前記鍋の少なくとも内底部分には、前記被炊飯物の粒径よりも小さい幅又は直径を有する複数の凹部を形成していることを特徴とする炊飯器。
【請求項10】
前記鍋に形成した凹部は、溝であることを特徴とする請求項9に記載の炊飯器。
【請求項11】
前記鍋に形成した凹部は、円形、楕円形又は多角形のいずれかの形状からなるくぼみであることを特徴とする請求項9に記載の炊飯器。
【請求項12】
前記鍋に形成した凹部は、同心円状に配列して設けられていることを特徴とする請求項9乃至11のいずれかに記載の炊飯器。
【請求項13】
前記鍋に形成した凹部は、部分的に切断された同心円状に配列して設けられていることを特徴とする請求項9乃至11のいずれかに記載の炊飯器。
【請求項14】
前記鍋に形成した凹部は、中心部から放射状に配列して設けられていることを特徴とする請求項9乃至11のいずれかに記載の炊飯器。
【請求項15】
前記鍋に形成した凹部は、平行な線状に配列して設けられていることを特徴とする請求項9乃至11のいずれかに記載の炊飯器。
【請求項16】
前記鍋に形成した凹部の断面の形状は、矩形、U字形又はV字形のいずれかであることを特徴とする請求項9乃至15のいずれかに記載の炊飯器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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