説明

炊飯器

【課題】保温中の飯への水分滴下を低減させ、保温性能を向上した炊飯器を提供することを目的とする。
【解決手段】本体1内に着脱自在に収納される鍋2と、本体1を開閉自在に覆う蓋5と、鍋2を加熱する鍋加熱手段3と、鍋2に蒸気を供給する蒸気発生手段6と、蓋5の開閉状態を検知する蓋開閉検知手段16とを備え、蒸気発生手段6は貯水部12とこれを加熱する貯水部加熱手段13を有し、この貯水部12は本体1上方に配され、炊飯後、蓋5を開けた場合には、所定時間後に貯水部12内の水を貯水部加熱手段13により殺菌加熱し、蓋5を開けない場合は、貯水部12内の水を貯水部加熱手段13による殺菌加熱をしないことにより、蓋5を開けるまでに貯水部12から蒸発した水分が蒸気経路に結露し、飯に滴下することによる食味低下を低減し、保温性能を向上させるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気を利用した炊飯器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、一般的な家庭用の炊飯器においては、鍋内の飯と水を加熱するために鍋底部に配置した鍋加熱手段による加熱が主であり、蓋内の加熱手段による加熱は鍋内の飯、水の上方の空間を介するため、補助的な加熱であった。
【0003】
結果として、鍋内上層の飯は加熱量が不足し、また、鍋内の飯、水を均一に加熱をすることができなかった。
【0004】
また、本来炊飯においては、鍋内の水がほぼ無くなり、飯の流動性がなくなった炊飯の最終工程である蒸らし工程において、それまでの加熱を継続し、米澱粉の糊化を完成させることが、美味なる飯を炊くために必須である。
【0005】
しかしながら、この工程で加熱を継続すると、鍋底付近の飯が焦げてしまうために、加熱を弱めることが多かった。
【0006】
これを解決し、加熱を弱めることに伴う飯の糊化不足を防止し、炊飯性能を向上させるための手段としては、蓋に高熱源である誘導加熱コイルを設けて鍋開口部の上方から飯を加熱するような炊飯器があった。
【0007】
すなわち、図2に示すように、101は本体ケースで、下面には支持脚102を有する底板103が固着されている。
【0008】
104は耐熱性を有するプラスチックスによって構成された保護枠で、上部周縁部に設けられたつば部105が本体ケース101の上面に固着されている。
【0009】
106は保護枠104の下底部に装着された底面加熱用誘導コイル、107は保護枠104の下方側部に設置された側面加熱用誘導コイルで、保護枠104に収容された磁性金属層をもった鍋108を前記底面加熱用誘導コイル106とによって加熱し、鍋108内の米と水との内容物を加熱調理するものである。
【0010】
109は保護枠104の底面の中心に設けられた貫通孔に装着された温度センサ、110はつまみ111を有する蓋で、保護枠104の上端部のつば部105上に着脱自在に載置されており、耐熱性を有するプラスチックスによって構成された内カバー112は断熱材113を介して固着している。
【0011】
114は内カバー112にピン115によって着脱自在に装着された内蓋で、その周縁部は鍋108のつば部105に載置し、鍋108を覆蓋するものである。
【0012】
116は保護枠104のつば部105の内面に設置された本体側上部誘導コイルで、本体ケース101内の電源部(図示しない)に接続されている。
【0013】
117は本体側上部誘導コイル116によって励磁される蓋側誘導コイルで、蓋110内の本体側誘導コイル116に対向する部分に装着されている。
【0014】
この蓋側誘導コイル117に励起された電流が誘導コイル118に流れ、その磁束により磁性金属板で形成された加熱板119が誘導加熱され、鍋108内の上部よりの炊飯加熱または保温加熱ができるものである(例えば、特許文献1,2参照)。
【0015】
しかしながら、前記従来の構成では、鍋内上層の飯が、誘導コイルの動作による加熱板の対流伝熱(熱伝達)や放射伝熱によって、直接加熱されることになるため、蒸らし工程においては、飯の水分が蒸発して乾燥するという現象が生じる。
【0016】
すなわち、鍋内の飯全体が十分な炊飯性能を確保できる温度まで鍋上方から加熱を継続すると、鍋内上層の飯は乾燥して逆に食味が落ちてしまう。
【0017】
このため、結局は、十分な加熱が行えず、鍋内全体の飯において、食味は完全なものではなかった。
【0018】
また、飯の糊化を促進し、炊飯性能を高めるためには、炊飯量が多いほど加熱量を多くしなければならない。
【0019】
ところが、炊飯量が多くなるほど上層の飯は加熱板に接近し、飯が乾燥しやすくなるので、加熱を弱めなければならないという矛盾を生じるという課題を有していた。
【0020】
そこで、鍋と、鍋を加熱する鍋加熱手段と、鍋の開口部を覆う蓋に加えて、蒸気発生手段と、蒸気加熱手段を備えた炊飯器が見受けられる(例えば、特許文献3参照)。
【0021】
これによって、大気圧における水の沸点(100℃)以上の高温蒸気を飯に供給する。以下では、特に限定しない限り、このような100℃以上の蒸気を、高温蒸気と呼ぶ。
【0022】
高温蒸気は100℃より低い温度の飯に付着すると凝縮し、熱を発生して、飯を加熱する。すなわち、米澱粉の糊化を進行させるのに必要な熱エネルギーを鍋加熱手段と高温蒸気により飯に供給し、糊化を促進するものである。
【0023】
また、高温蒸気は100℃より低温の飯には表面で凝縮して水分となり大きな熱エネルギーを与えるが、100℃以上の飯には与える熱エネルギーが小さいので、飯の乾燥には至らない。
【特許文献1】特開平5−84126号公報
【特許文献2】特開平6−62956号公報
【特許文献3】特開2003−144308号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
しかしながら、前記従来の構成では、蒸気発生手段として貯水部と貯水部加熱手段を有するが、保温時、貯水部内の水に雑菌が繁殖し腐敗することを防ぐために貯水部内の水の殺菌加熱をした際、貯水部から蒸発した水分が蒸気経路に結露しやすく、結露した水がご飯へ滴下すると、飯が粥状にふやけ食味を損ねてしまうという課題を有していた。
【0025】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、飯への水分滴下を低減させ、保温性能を向上した炊飯器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0026】
前記従来の課題を解決するために、本発明の炊飯器は、上面が開口した本体と、前記本体内に着脱自在に収納される鍋と、前記本体を開閉自在に覆う蓋と、前記鍋を加熱する鍋
加熱手段と、前記鍋に蒸気を供給する蒸気発生手段と、前記蓋の開閉状態を検知する蓋開閉検知手段とを備え、前記蒸気発生手段は貯水部とこれを加熱する貯水部加熱手段を有し、前記貯水部は本体上方に配され、炊飯後、前記蓋開閉検知手段が蓋開を検知した場合には、前記貯水部加熱手段により、前記貯水部内の水を殺菌加熱するとしたものである。
【0027】
これによって、炊飯後蓋を開けるまでの貯水部殺菌が不要となり、貯水部から蒸発した水分が蒸気経路に結露し、飯に滴下することによる食味低下を低減し、保温性能を向上させることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明の炊飯器は、炊飯加熱用の蒸気を利用して炊飯が行われるとともに、保温時に蒸気発生手段内の貯水部の状態に合わせて殺菌加熱頻度を低減することにより、貯水部から蒸発した水分が蒸気経路に結露し、飯に滴下することによる食味低下を低減し、保温性能を向上させる効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
第1の発明は、上面が開口した本体と、前記本体内に着脱自在に収納される鍋と、前記本体を開閉自在に覆う蓋と、前記鍋を加熱する鍋加熱手段と、前記鍋に蒸気を供給する蒸気発生手段と前記蓋の開閉状態を検知する蓋開閉検知手段とを備え、前記蒸気発生手段は貯水部とこれを加熱する貯水部加熱手段を有し、前記貯水部は本体上方に配され、炊飯後、前記蓋開閉検知手段が蓋開を検知した場合には、前記貯水部加熱手段により、前記貯水部内の水を殺菌加熱するものである。
【0030】
炊飯中、貯水部内は、貯水部加熱手段により加熱され蒸気を発生している間約100℃を保持しているので、ほとんどの雑菌は殺菌される。また、炊飯中、鍋内も100℃を約20分保持しているため、鍋内においてもまたほとんどの雑菌は殺菌される。
【0031】
したがって、炊飯後、蓋を閉めたままであれば、新たに雑菌が炊飯器の貯水部内に入ることはない。
【0032】
その結果、貯水部内の殺菌加熱をしなくても雑菌の繁殖は少なく腐敗する可能性は低いので、蓋を開けるまでは貯水部内の殺菌加熱をしない。
【0033】
一旦蓋を開けると、空気中に浮遊している菌などが混入するため、その菌の繁殖を防止するために、蓋を開けた場合には貯水部内の水を殺菌加熱する。
【0034】
これにより、炊飯加熱用の蒸気を利用して炊飯が行われるとともに、貯水部から蒸発した水分が蒸気経路に結露し、飯に滴下することによる食味低下を低減し、保温性能を向上させることができる。
【0035】
第2の発明は、前記殺菌加熱は、蓋開閉検知手段が蓋開を検知してから所定の時間が経過した後に行われることにより、炊飯後、蓋開を検知してから雑菌の繁殖が少ない時間まで貯水部内の殺菌加熱をする必要が無くなり、貯水部から蒸発した水分が蒸気経路に結露し、飯に滴下することによる食味低下をより効果的に低減し、保温性能を向上させることができる。
【0036】
第3の発明は、前記殺菌加熱は、蓋開閉検知手段が蓋開を検知してから所定の時間サイクル毎に行われることにより、使用者が長時間保温を行った場合の菌の繁殖を抑えつつ、貯水部から蒸発した水分が蒸気経路に結露し、飯に滴下することによる食味低下を低減し、保温性能を向上させることができる。
【0037】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0038】
(実施の形態1)
図1に示すように、炊飯器本体1は米と水を収納する鍋2と、この鍋2の底部および側部を加熱する鍋加熱手段3と、鍋2の温度を検知する鍋温度検知手段4と、鍋2の上方の開口部を覆う蓋5と、炊飯加熱用の蒸気を発生させる蒸気発生手段6を備えている。
【0039】
蓋5には、鍋2の上方開口部を密閉する内蓋7が設けられており、また、内蓋7を加熱する内蓋加熱手段8が設けられている。
【0040】
鍋2上面の開口部には内部の蒸気を本体1外に排出する蒸気筒9が設けられている。
【0041】
蒸気筒9内に、例えばプラスチック製の球状の蒸気弁10を配設することにより、炊飯中はその蒸気の力で蒸気弁10は上方に動いて、蒸気を本体1外に排出し、保温中は、蒸気弁10は蒸気筒9の下方部に位置してその下側孔11を閉塞するので、本体1外の空気中に浮遊している菌は鍋2内および蒸気発生手段6の貯水部12に一層入りにくくなる。
【0042】
前記蒸気発生手段6は、貯水部12と、貯水部加熱手段13を有し、本体1の上方の鍋2の横方向に設置されている。
【0043】
また、貯水部12から発生した蒸気を炊飯工程において鍋2内の上方に供給するための蒸気経路14が設けられている。
【0044】
この蒸気経路14は貯水部12の上方開口部と鍋2内の上方とを連通接続するものであり、内蓋7を貫通して鍋2内の上方に臨んでいる。
【0045】
制御手段15は、炊飯工程が始まると、所定のプログラムにしたがって鍋加熱手段3、内蓋加熱手段8、および貯水部加熱手段13を加熱制御し、炊飯を行わせる。
【0046】
また、制御手段15は、蓋開閉検知手段16からの出力信号により蓋5の開閉を判定している。
【0047】
なお、鍋加熱手段3、内蓋加熱手段8、および貯水部加熱手段13は、誘導加熱、シーズヒータ、あるいはその他によるものであって、特に、限定されるものではない。
【0048】
上記構成において、以下、動作を説明する。
【0049】
使用者は、米と水を鍋2に、また所定量の水を貯水部12にそれぞれセットし、炊飯器の電源を入れ、炊飯開始ボタン(図示せず)を押すと、炊飯工程が開始される。
【0050】
炊飯工程が始まると、所定のプログラムにしたがって鍋加熱手段3、内蓋加熱手段8、および貯水部加熱手段13が加熱をはじめる。
【0051】
炊飯中、貯水部12内の水は貯水部加熱手段13によって蒸発し、約100℃の蒸気となって蒸気経路14に流入する。この蒸気はさらに内蓋加熱手段8によって100℃を超える蒸気にまで加熱され、ご飯に必要な熱量を鍋2内の上方から与える。
【0052】
炊飯工程が終了すると、自動的に保温工程に移行する。
【0053】
炊飯工程においては、大気圧下、水の沸点(100℃)以上の加熱蒸気を米に供給することにより、蒸らし工程においても飯の乾燥を伴わない。しかも、100℃以下の蒸気供給では米粒表面に水が付着するに留まるが、100℃以上の蒸気であるので、米の糊化を進行させるのに必要なエネルギーをもち、糊化を促進し、炊飯性能を向上させることができるものである。さらに炊飯量に拘わらず、最適な加熱量を設定できるものである。
【0054】
保温工程において、米飯を保温する温度が高いほど、保温臭や米飯が黄色に変色する黄変等の保温において嫌われる現象が顕著に現れる。
【0055】
したがって、保温行程においては、保温に適した約60〜75度の温度範囲で米飯温度を保持する。
【0056】
この温度範囲において米飯の温度は低いほど、前記の保温臭や黄変といった現象を緩和することが可能となる。
【0057】
ここで、炊飯中、貯水部12内は貯水部加熱手段13により水を蒸発させている間約100℃を保持しているので、ほとんどの菌は殺菌される。
【0058】
また、鍋2内も100℃を約20分保持しているため、その内部のほとんどの雑菌もまた殺菌される。
【0059】
したがって、蒸気経路14を通じて鍋2の雑菌が貯水部12内に繁殖するおそれは少ない。
【0060】
また、蓋5が閉まった状態では、本体1外の空気中に浮遊している菌は貯水部12内に入りにくいので、水温が低下しても腐敗するおそれは少ない。
【0061】
しかしながら、一旦、蓋5が開けられると、空気中に浮遊している菌などが混入するため、貯水部12内に菌が繁殖し腐敗する恐れが高くなる。
【0062】
したがって、炊飯工程終了後、磁石17とリードスイッチ18によって構成される蓋開閉検知手段16からの出力信号により蓋5の開放を検知してから所定の時間(例えば6時間)が経過した保温工程時に、貯水部加熱手段13により貯水部12内の水を加熱し、約5分沸騰させることにより殺菌加熱を行う。
【0063】
これにより、炊飯後、蓋5を開けるまでは貯水部12内の水の殺菌加熱をしないため、この間に貯水部から蒸発した水分が蒸気経路に結露し、飯に滴下することによる食味低下を低減し、保温性能を向上させることができるものである。
【0064】
このとき、使用者が蓋5を開けるまでは殺菌加熱が行われないため、殺菌加熱分の省エネルギーが実現されることは言うまでも無い。
【0065】
また、蓋5の開放を検知してすぐに、雑菌が繁殖する恐れは少ないため、所定の時間後に殺菌加熱するとすることにより、蓋5が開けられて以降も、飯に水分が滴下し食味低下することを低減するともに、省エネルギーを実現することができる。
【0066】
なお、ここで殺菌加熱は約5分沸騰としたが、殺菌加熱は貯水部12内の殺菌加熱が行えればこれに限るものではなく、異なる温度、時間において殺菌加熱を実施してもよい。
【0067】
さらに、貯水部12の殺菌加熱を行って以降、所定時間サイクル毎に貯水部12の殺菌加熱を行う。
【0068】
これにより、使用者が、蓋5を開けた後長時間保温を行った場合にも、鍋2から蒸気経路14を通じて貯水部12内に繁殖する雑菌、あるいは貯水部12内に残存し、繁殖する雑菌を継続的に殺菌することができる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
以上のように、本発明にかかる炊飯器は、保温時に蒸気発生手段内の貯水部の状態に合わせて殺菌加熱頻度を低減することにより、貯水部から蒸発した水分が蒸気経路に結露し、飯に滴下することによる食味低下を低減し、保温性能を向上させることができるので、炊飯器のみではなく、一般の保温機能を有し、蒸気を利用した調理器にも有用である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の実施の形態1における炊飯器の断面図
【図2】従来の炊飯器の断面図
【符号の説明】
【0071】
1 本体
2 鍋
3 鍋加熱手段
5 蓋
6 蒸気発生手段
12 貯水部
13 貯水部加熱手段
16 蓋開閉検知手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面が開口した本体と、前記本体内に着脱自在に収納される鍋と、前記本体を開閉自在に覆う蓋と、前記鍋を加熱する鍋加熱手段と、前記鍋に蒸気を供給する蒸気発生手段と、前記蓋の開閉状態を検知する蓋開閉検知手段とを備え、前記蒸気発生手段は、貯水部とこれを加熱する貯水部加熱手段を有し、前記貯水部は本体上方に配され、炊飯後、前記蓋開閉検知手段が蓋開を検知した場合には、前記貯水部加熱手段により前記貯水部内の水を殺菌加熱することを特徴とする炊飯器。
【請求項2】
前記殺菌加熱は、蓋開閉検知手段が蓋開を検知してから所定の時間が経過した後に行われる請求項1に記載の炊飯器。
【請求項3】
前記殺菌加熱は、蓋開閉検知手段が蓋開を検知してから所定の時間サイクル毎に行われる請求項1に記載の炊飯器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate