説明

炊飯器

【課題】炊飯及び保温中の鍋内の蒸気を循環することで炊飯及び保温時のご飯の状態を改善し、蒸気循環手段へおねばの流入なく蒸気循環手段へおねばの流入なく勝手がよく且つ信頼性の高い炊飯器を提供する。
【解決手段】着脱自在な鍋と、上面に有底筒状の鍋収納部を有する本体と、前記鍋を加熱する加熱手段と、前記鍋の開口部を覆う蓋と、炊飯中に発生する蒸気を前記鍋内に循環させる蒸気循環手段を有し、前記蒸気循環手段は蒸気を過熱蒸気に過熱する蒸気過熱手段を有する炊飯器であって、前記蒸気過熱手段は記蓋内に設けた炊飯器とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般家庭、あるいは業務用に使用する炊飯器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の機器の構成は以下のようなものであった。特許文献1によれば、鍋と、前記鍋を加熱する鍋加熱手段と、前記鍋の開口部を覆う蓋と、炊飯中に鍋内から発生する蒸気を吸引する蒸気吸引手段と、前記蒸気吸引手段が吸引した蒸気から過熱蒸気を生成する過熱蒸気生成手段と、前記過熱蒸気を前記鍋上方から前記鍋に導く蒸気循環経路と、前記鍋から蒸気を外部に排出する蒸気筒と、前記鍋の温度を検知する鍋温度検知手段と、前記過熱蒸気の温度を調節する蒸気温度制御手段とを有し、炊き上げ工程の沸騰状態において、前記過熱蒸気生成手段を動作させることを特徴とする炊飯器であって、炊飯中に発生する蒸気を用いて過熱蒸気を生成させ、炊飯中の米に放射させることで、鍋内の米、水の加熱において不足する上方からの加熱を行う。かつ上方の乾燥を防止することで、食味を非常によくし、さらに小型の蒸気炊飯を実現する炊飯器を提供するものである。
【特許文献1】特許第4063303号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら上述のような炊飯器では、炊飯中に鍋内で発生する煮汁成分であるおねばが蒸気吸引手段に流入してしまい、不衛生である。また着脱自在としお手入れできるようにしたとしてもお手入れの手間がかかる。本発明は上記課題を解決するもので、炊飯中に発生する蒸気を用いて過熱蒸気を生成させ、炊飯中の米に放射させることで、鍋内の米、水の加熱において不足する上方からの加熱を効率よく行い、かつ上方の乾燥を防止することで、食味を非常によくし、さらに小型の蒸気炊飯を実現するとともに、蒸気循環手段へおねばの流入なく使い勝手のよい炊飯器を提供する、さらに循環径路に、異物が侵入しにくくまた、侵入した場合でも故障せず信頼性の高い炊飯器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記従来の課題を解決するために、着脱自在な鍋と、上面に有底筒状の鍋収納部を有する本体と、鍋を加熱する加熱手段と、鍋の開口部を覆う蓋と、蓋に設けられた鍋内の蒸気を吸気する吸気口と、吸気口に連接した吸気通路と、鍋内に蒸気を排気する排気口と、排気口に連接した排気通路と、吸気通路と排気通路を連接し給排気を行う蒸気循環装置とを備え、排気通路に前記鍋内の蒸気を加熱する蒸気加熱室を設けた炊飯器である。
【0005】
これにより、蒸気循環装置へおねばの流入なく使い勝手がよく且つ信頼性の高い炊飯器を提供することができる。
【発明の効果】
【0006】
本発明の炊飯器は、蒸気循環装置で鍋内の蒸気を攪拌させて、調理物であるご飯を効率よく加熱することができ、さらに、蒸気循環装置へおねばの流入なく使い勝手のよい炊飯器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
第1の発明の炊飯器は、着脱自在な鍋と、上面に有底筒状の鍋収納部を有する本体と、前記鍋を加熱する加熱手段と、前記鍋の開口部を覆う蓋と、前記蓋に設けられた鍋内の蒸気を吸気する吸気口と、前記吸気口に連接した吸気通路と、前記鍋内に蒸気を排気する排気口と、前記排気口に連接した排気通路と、前記吸気通路と前記排気通路を連接し給排気
を行う蒸気循環装置とを備え、前記排気通路に前記鍋内の蒸気を加熱する蒸気加熱室を設けた炊飯器である。
【0008】
これにより、炊飯中に発生した水蒸気は吸気口により吸引され、吸気通路より蒸気循環装置を経由して排気通路に導かれることになる。排気通路に導かれた蒸気は蒸気加熱室において加熱され蒸気温度が高くなった高温蒸気として排気径路に連接された排気口より鍋内に戻され、鍋内に戻された蒸気は鍋内の調理物であるご飯と熱交換を行い上層部から加熱する。従来、蓋から調理物への加熱は主に放射及び鍋内の雰囲気上昇に依存していた。すなわち、蓋に内装された加熱源は調理物より上方に位置するため自然対流による熱交換ができない。本発明によれば、蒸気循環装置で鍋内の蒸気を攪拌させた強制対流により蒸気加熱板で発生した熱を効率よく、調理物であるご飯に供給することができる。蒸気を媒体とし排気通路内で熱交換させることで、更に蒸気加熱板から、調理物への熱交換が向上する。また、熱交換され温度の低下蒸気を再び吸気口より吸い込むため蒸気循環装置が吸い込む蒸気温度は相対的に低いものとなるため蒸気循環装置の信頼性が向上する。
【0009】
第2の発明は、特に第1の発明の炊飯器において、蒸気循環装置はダイヤフラムポンプなどの気密型のポンプで構成したものである。これにより、ポンプが動作していないときには蒸気の循環径路が閉止している時と同等となり、逆止弁等の校正が不要となり簡略な構成で蒸気循環手段へおねばの流入なく使い勝手のよい炊飯器を提供することができる。
【0010】
第3の発明は、特に第1の発明の炊飯器において、吸気通路を吸気口より広くしたものである。これにより、炊飯中におねば等の異物が吸気口より吸気通路内に入っても吸気通路が吸気口よりも広くなっているため、前記異物は吸気口周辺に付着するのみで前記吸気口に侵入することはない。
【0011】
第4の発明は、特に第1の発明の炊飯器において、蒸気通路は吸気通路と排気通路の一部にバイパス路を設け、吸気通路の入り口が塞がれた時に、排気の一部が吸気通路に流入するものである。これにより、吸気口が異物などで閉止された場合、蒸気循環装置の吸気側に大きな負圧がかかり異常音の発生や循環装置の故障の原因となるが、吸気通路と排気通路にバイパス路を設けることにより、吸気口が異物などで閉止されても吸気通路と排気通路内で蒸気が循環するため、蒸気循環装置に所定量以上の圧力がかかることがないため異音や蒸気循環装置の故障を防止することができる。
【0012】
第5の発明は、特に第4の発明の炊飯器において、バイパス路にボール弁等で構成され所定の負圧が生じた時バイパス路を開放する弁機構を設けたものである。
【0013】
これにより、ボール弁により所定の圧力がかかった時にボール弁が開放することにより吸気口が閉止された時のみ弁が開放するので、蒸気循環装置を保護でき、通常状態ではバイパス路を閉止して吸気通路と排気通路の漏れを防止するため、循環効率の低下なしに蒸気循環装置の保護ができる。
【0014】
第6の発明は、特に第1発明の炊飯器において、排気口を複数個所,吸気口より所定間隔を設け配置したものである。これにより、排気口より排出された高温の蒸気が、調理物であるご飯の表面をより均一且つ広範囲に通過することになり熱交換が更に向上するものである。
【0015】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1における炊飯器について、図1から図3を用いて説明する。図1において、炊飯器本体1は上面を構成する上枠3と側面および底面を構成するボディ4でその外郭が構成されている。上枠3は円筒状の穴部3a有し、穴部より連なる筒状で金属
製の保護枠胴5と皿状の保護枠6により有底筒状の鍋収納部1aを構成し、着脱自在に鍋2を収納する。保護枠6の底部に設けられた底誘導コイル7が鍋加熱手段となり、鍋2を誘導加熱し炊飯・保温を行う。
【0016】
ここで磁性材料にて構成された複数の底フェライト8が底誘導コイル7に対向しかつ底誘導コイル7に直交した配置で鍋2と反対側に設けられている。
【0017】
9は底センサーで、鍋2の底面に当接して、鍋2の温度を検知し、マイコン10へ信号を送る。マイコン10は底センサー9の信号より底誘導コイル7の通電量を変化させ、鍋2の加熱電力送出部12から底誘導コイル7へ供給する高周波電流を可変することで鍋2の温度を炊飯・保温時に適温に制御する。
【0018】
加熱電力送出部12はアルミやアルミダイキャスト等でできたヒートシンク13を有し、ヒートシンク13に外気を送風する底ファンモーター54が取り付けてある。底誘導コイル7の外周には反射枠32が環状に設けてある。
【0019】
本体後方で上枠3の上面にはヒンジ部14が設けられており、蓋体15がヒンジ部14に取り付けたヒンジ軸16にて軸支され、開閉自在に本体上面を覆っている。ヒンジ部14にはヒンジバネ17が蓋体15と本体1双方に係合するように取り付けてあり、蓋体15に対し開放する方向の付勢力を有している。そして、ヒンジ部14の後部はヒンジカバー45がその外郭を覆い、外部よりヒンジ軸16やヒンジバネ17が見えないようにしている。
【0020】
本体前方のフックレバー18はヒンジバネ17の力に対し、蓋が開かないよう蓋体15先端に設けたフック嵌合部15aと嵌合し、閉蓋状態を保つ。フックレバー18を押すと、フック嵌合部15aとフックレバー18の嵌合が外れ、蓋はヒンジバネ17の力で開く。蓋体15のヒンジ部14近傍にはヒンジブレーキ板19が設けてある。また、ヒンジ部14にはヒンジキャップ20が設けてあり、ヒンジブレーキ板19とヒンジキャップ20は蓋開き時のブレーキ機構を構成する。そして、通常若干床面から浮いた本体後方には本体後方脚部1b配設されている。保護枠胴5の外周には側面加熱手段である側面ヒーター20が巻かれている。そして、側面ヒーター20の外周には筒状の側面断熱材21が配設されている。
【0021】
図2に示すように、蓋体15はその表面を外蓋22で構成し、鍋2側は外蓋カバー23で構成されている。外蓋カバー23は筒状に穴部を有し、穴部には非磁性金属かつその厚さが0.5mm以下の薄板でできた蒸気加熱板24が取り付けられている。ここで非磁性金属の代表的なものとしてはオーステナイト系ステンレスなどがある。蒸気加熱板24の上部には蓋コイル支え25に載置された環状の蓋誘導コイル26が設けてある。蓋コイル支え25と蓋コイル26に挟持される形で蓋温度ヒューズ27が設置されている。蓋誘導コイル26の上方には蓋反射板34があり、蓋誘導コイルからの高周波磁界が外部に漏れ出すのを防止している。
【0022】
外蓋カバー23の鍋側には加熱板支え28にカシメ結合で一体に保持され、蓋体15より加熱板支え28と一体となった状態で着脱自在な磁性金属製の加熱板29がある。ここで磁性金属の代表的なものとしては、鉄板やフェライト系ステンレスなどがある。
【0023】
加熱板29と鍋2のフランジ部2aの間は加熱板支え28で加熱板29と一体に結合された鍋パッキン31が加熱板29と鍋2のフランジ部2aを水密にシールしている。また、蒸気加熱板24と加熱板29の間には蒸気加熱板パッキン47がその外周部に設けてあり、加熱板29と蒸気加熱板24の間を水密にシールする。
【0024】
30は蓋センサーで蓋センサーバネ33による押し圧で加熱板29に当接し、加熱板の温度を検知する。また蓋センサー30と蒸気加熱板24の間には蓋センサーパッキン46が設けてある。
【0025】
加熱板29には蒸気吸気口29aがあり、蒸気吸入口29aに臨む位置に吸気経路パッキン48が設けてある。吸入経路パッキン48と蒸気循環手段であるダイヤフラムポンプなどの気密型のポンプ50は吸入経路49で結ばれ、鍋2と気密型のポンプ50が通気可能となっている。そして、蒸気加熱板24には吸気口24aがあり、吸気口24aに臨む位置に排気経路パッキン51が設けてある。
【0026】
また、吸気経路49は吸気口24aよりも広くなっている。排気経路パッキン51と気密型のポンプ50は排気経路52結ばれ、蒸気加熱板24と加熱板29の間の蒸気加熱空間53を排気径路52の一部に形成し気密型のポンプ50の間を通気可能としている。
【0027】
これら吸気経路49から気密型のポンプ50および蒸気加熱板24および加熱板29で構成された蒸気気加熱室53を通過して加熱板29に複数設けられた排気口29bを通して図3の矢印に示すような鍋内へ鍋内雰囲気を再投入する蒸気循環装置を構成する。
【0028】
また蒸気加熱室53の一部は前記蓋誘導コイル26と平面的にオーバーラップされており蓋コイル26を通電すると蒸気加熱室53の温度も上昇させることができる。55は吸気径路49と排気径路52を繋ぐバイパス路で、バイパス路55にボール弁56が設けられている。
【0029】
外蓋22の内部には、操作部15bと表示部15cを構成する操作基板35が基板カバー36に覆われて設置されている。操作基板35上の液晶39は炊飯器の設定状態や動作状態を表示する。外蓋22はその一部を透明な樹脂で構成されており、その表面をフィルム22bで一体に覆われている。そして、部分的にフィルムのみの部分からなるエンボス部22aを有している。エンボス部22aは上下に撓み、エンボス部22aと操作基板35上に設けたキートップ37およびタクトSW38で操作スイッチを構成し、複数の操作スイッチにより操作部15bを構成している。
【0030】
基板カバーパッキン40は基板カバー36の外周部と外蓋22に設けた基板カバーシールリブ22cで挟持され、基板カバー36と外蓋22の間を水密にシールし、万が一、蓋体15内に蒸気が侵入しても基板35が結露しないようにしてある。
【0031】
基板カバー36のおよそ中心部分には蒸気通路部36aが設けてある。蒸気通路部36aは外蓋を貫通して外部へと臨む形の筒状で、蒸気筒41を着脱自在に保持する。蒸気通路部36a外周と外蓋22の間は蒸気通路パッキン42で水密にシールされている。この基板カバーパッキン40と蒸気通路パッキン42によるシールで蓋体15内部に配置した操作基板35は外部からの水や蒸気が直接かからない構成となっている。また蒸気板パッキン45は蒸気通路部36aと蒸気加熱板24および加熱板29を水密にシールする。
【0032】
蒸気筒41はおよそヒンジ軸16の長手方向と直交する方向に動作するマグネット43を有し、マグネット43と蒸気筒41に対向する部分に設けたリードSW44で炊飯時のふきこぼれ検知手段と蓋開閉検知手段を構成する。
【0033】
次に上記構成において動作を説明する。フックレバー18を押し、蓋を開け、炊飯を行う米とその米量に対応する水を鍋2に入れ、鍋収納部1aの所定の状態に内挿する。ここで、ヒンジブレーキ板19がヒンジ部14に設けたヒンジキャップ20を蓋開き時に挟持
し、蓋の開放動作により蓋が完全に開いたときに蓋の開放の勢いで本体がバウンドしないよう、蓋開き時のブレーキ力を発生する。これにより蓋体15はフックレバー18を押すと自動で開放しつつも、蓋の勢いによる本体のバウンド等も発生しない。加えて、蓋開き時に本体の重心が後方に移動するが、その勢いで本体が後方へ倒れないよう、通常若干床面から浮いた本体後方脚部1bが床面に当接し、勢いによる本体後方への倒れも防止する。よって使用者は蓋のバウンド等の心配なく安心感をもって蓋を開けることができる。ところで、蓋体15が開放状態になったとき、マグネット43は重力によってリードSW44から遠ざかり、リードSWの接点が開放となる。これにより蓋の開閉が検知可能となる。
【0034】
引き続き、操作部15bの炊飯開始スイッチ(図示せず。)を使用者が操作すると、マイコン10が炊飯開始スイッチよりの入力を受け、炊飯工程が実施される。このとき液晶39に動作状態が表示され、液晶39上の透明な樹脂を透過して、外部より液晶39の表示を目視可能にすることで表示部15cを構成し、使用者に炊飯器の動作状態を知らせる。
【0035】
底センサー9は鍋2の底面の温度を検知し、マイコン10へと信号を送る。底センサー9よりの信号を受けマイコン10は浸水、炊き上げ、蒸らしの各工程に大分された炊飯工程のそれぞれにおいて鍋2の内部の水と米の状態が適正値として設定された温度に所定時間に維持されるよう、加熱電力送出部12より通電される底誘導コイル7や蓋誘導コイル26や側面ヒーター20の通電量を出力として制御する。
【0036】
誘導加熱方式は、各誘導コイルに通電した高周波電流から発生する高周波磁界が被加熱金属を通過する際に誘導加熱を引き起こし発熱する。ここで、加熱電力送出部12は高周波電流を各誘導コイルへ供給する際、電気抵抗ロスおよび高周波発生時のスイッチングロスで自己発熱する。加熱電力送出部12が自己発熱で加熱電力送出部12が許容温度以上に高温となると、加熱電力送出部12が破壊する場合があるので、加熱電力送出部12はアルミやアルミダイキャスト等でできたヒートシンク13を有し、ヒートシンク13を通じで自己発熱による放熱をする。また、底ファンモーター54でヒートシンク13は冷却され、効率的に加熱電力送出部12は冷却される。
【0037】
底誘導コイル7は加熱電力送出部12より供給される電流で誘導加熱により鍋2の底面を発熱させる。ここで、底フェライト8は磁性材料で構成されており、底誘導コイル7から発生する磁界を効率よく鍋側へ集める。これにより鍋2周辺に高密度の磁界が発生し、鍋はより高効率に高発熱する。また、反射枠32が底誘導コイル7からの高周波磁界が本体1の外部に漏れ出すのを防止し、周囲の機器に影響を及ぼさないような工夫がなされている。
【0038】
蓋誘導コイル26は加熱電力送出部12より供給される電流で誘導加熱により蒸気加熱板24と加熱板29を同時に発熱させる。ここで蒸気加熱板24は前出のとおり非磁性金属かつ0.4mm以下の薄板で構成されるため、蓋誘導コイル26から発生する高周波磁界を透過しつつ誘導加熱で自己発熱する。蒸気加熱板24を透過した高周波磁界は磁性金属でできた加熱板29の誘導加熱を引き起こし、加熱板29を自己発熱させる。これにより、蒸気加熱板24と加熱板29は同時発熱が可能となる。また蒸気加熱板24と加熱板29の発熱比は蓋誘導コイル26からの距離と蒸気加熱板24の材料物性や板圧にて任意に設定が可能である。また蓋誘導コイル26の上方の蓋反射板34が蓋誘導コイルからの高周波磁界が外部に漏れ出すのを防止し、マイコン10や周囲の機器に影響を及ぼさないような工夫がなされている。
【0039】
側面ヒーター20は加熱電力送出部12より供給される電流で自己発熱し、保護枠胴を
加熱する。保護枠胴が熱せられることによる輻射熱および対流熱で鍋2の側面を加熱する。
【0040】
つづいて各工程での炊飯器の動作を説明する。まず、浸水工程では米の糊化が開始しない温度まで米と水の温度が上昇するように底誘導コイル7を通電し鍋2を発熱させる。そして所定の温度で所定時間米を浸水し、米全体に十分な吸水を促す。浸水工程において、鍋2の米全体を目的の温度で均一に維持し、鍋2の米の吸水条件を均一に保つことがおいしいごはんを炊くため重要である。
【0041】
次に炊き上げ工程では、底誘導コイル7で鍋2の底面を発熱させるとともに、蓋誘導コイル26では蒸気加熱板24および加熱板29を発熱させ、側面ヒーター20では鍋側面を加熱し、鍋2全体を包み込むように加熱する。強火の加熱で一気に炊き上げ、米の芯まで熱を伝えることが重要である。誘導加熱方式だと熱板によって鍋を加熱する方式に比べ高火力で鍋を加熱することができ、よりおいしいごはんが炊き上がる。
【0042】
鍋2の水が沸騰することにより発生した蒸気は、加熱板29に設けた加熱板蒸気口(図示せず)から蒸気通路部36aの蒸気筒41へと流れる。ここで、炊飯中に発生する煮汁であるおねばも蒸気筒41へと流れ込むが、大量におねばが流れ込むとふきこぼれる前にマグネット43をおねばが押し上げ、リードSW44を動作させることでふきこぼれを検知可能にする。このことで従来は加水量が多くふきこぼれやすい場合でもふきこぼれないようにあらかじめ火力を引いていたところを、水加減に応じて自動的にふきこぼれ直前まで強火での加熱を可能にし、よりおいしいごはんが炊ける。
【0043】
また、鍋パッキン31と蒸気板パッキン45により蒸気筒41以外から蒸気が外部に流出したり、蓋体15内部に流入したりすることはない。さらには蒸気吸入経路パッキンは弁部を有しているので、おねばが侵入することもない。
【0044】
底センサー9がおよそ130℃を検知すると、鍋内の水はそのほとんどを米に吸収されるもしくは蒸発し、ごはんとして炊きあがった状態となる。そして次の工程であるむらし工程へと移行する。ただし、鍋の水分はすべて蒸発した訳でなく、鍋底の水分が減っただけであり、また鍋内には大量の水分が残っている。
【0045】
最後に、むらし工程では底誘導コイル7が鍋2の底面の飯が乾燥したりこげたりしない程度に鍋2の底面を発熱させる。そして底誘導コイル7の通電量低下に伴い、底ファンモータ54はその回転数を低下させるか停止する。この状態で飯は100℃を保ち、飯から蒸気が発生した状態となるため鍋2内の雰囲気は蒸気で満たされた状態となる。
【0046】
合わせて、気密型のポンプ50が動作し、鍋2内の蒸気を蒸気加熱室53へ送り込む。このとき蓋誘導コイル26が通電され、蒸気加熱板24および加熱板29が高温に加熱されることで、送り込まれた蒸気をおよそ130℃の高温蒸気へと加熱する。加熱された高温蒸気は加熱板29に設けた蒸気投入口29bより鍋内へ送り込まれ、鍋内部を高温・高湿状態とする。さらには、側面ヒーター20が鍋2の側面を加熱し、鍋内部を包み込むように高温状態にする。高温状態になった蒸気は鍋2内の米・水と熱交換し吸気口29aより吸い込まれ循環する。従って吸気した蒸気の温度は、排気した蒸気の温度より相対的に低いため気密型のポンプ50を通過する蒸気の温度も相対的に低くなり気密型のポンプ50信頼性が高くなる。
【0047】
ここで、蓋センサーパッキン46と蒸気加熱板パッキン47により気密型のポンプ50から送り込まれた蒸気は外部や蓋内部に漏れることなく、また蒸気板パッキン45にて蒸気通路部36aへも漏れることなく確実に高温蒸気に加熱され鍋内へと送り込まれる。
【0048】
むらし工程では飯が芯までの糊化するように飯が乾燥したりこげたりしない温度で鍋2全体を高温の状態に保つことが大切であるが、本実施例のように100℃以上の高温蒸気を飯に供給することにより、第1に、蒸気が供給されるがゆえに飯の乾燥を伴わない、しかも、第2に100℃以下の蒸気供給では飯粒表面に水が付着するに留まるが、100℃以上の蒸気であるので、米澱粉の糊化を進行させるのに必要なエネルギーをもち、糊化を促進し、炊飯性能を向上させることができる。さらには蒸気加熱板24と加熱板29の2枚の熱板で蒸気を挟み込むように加熱することで、蒸気の温度を瞬時にかつ効率よく高温蒸気とすることができるのでよりおいしいごはんを炊くことができる。また加熱板29は100℃以上の高温となっているため、炊飯後に加熱板に露付き等が発生することもない。そして、むらし工程直後は鍋内には十分な蒸気が存在し、米澱粉の糊化を促進するに十分な高温蒸気量を確保できるだけでなく、炊飯中の煮汁であるおねばも存在しないため、蒸気吸入経路49や気密型のポンプ50がおねばで汚れる心配もない。また、加熱板29に設けられた吸気口29aより吸気経路49の空間を広くなっているため、米飯の粕等の異物が吸気口29aより浸入しても異物は吸気口29aの近傍に付着するのみで吸気経路49に付着することは無い。さらに、気密型のポンプ50は動作するものの、底ファンモーター54はその回転数を低下させるか停止することができるので、ファンの騒音が大きくなったり、ファンの動作による消費電力量の増加といったこともない。
【0049】
さらに、蒸気通路は吸気通路49と排気通路52の一部にバイパス路55を設け、吸気通路49の入り口が塞がれた時に、バイパス路55にボール弁56は、所定以上の負圧が生じた時に動作し、バイパス路56を開放することで排気の一部が吸気通路49に流入する。これにより、吸気口が異物などで閉止された場合、蒸気循環手段である気密型のポンプ50の吸気側に大きな負圧がかかり異常音の発生や気密型のポンプ50の故障の原因となる。吸気通路49と排気通路52にバイパス路を設けることにより、吸気口が異物などで閉止さても吸気通路と排気通路内で蒸気が循環するため蒸気循環手段に所定量以上の圧力がかかることがないため異音や蒸気循環手段の故障を防止することができる。
【0050】
また、通常状態では吸気通路49内の負圧は小さいためボール弁56は動作することがないため、バイパス路55を閉止され吸気通路49と排気通路52の漏れを防止することができるため循環効率の低下なしに気密型のポンプ50の保護ができる。さらに、加熱板29に排気口29bを複数個所,吸気口29aより所定間隔を設け配置した炊飯器である。これにより、排気口29bより排出された高温の蒸気が、調理物であるご飯の表面をより均一且つ広範囲に通過することになり熱交換が更に向上するものである。
【0051】
上述のような構成の炊飯器において、気密型ポンプ50停止時、吸気経路49は閉空間への通路であるので、炊飯中の煮汁であるおねばが流入するようなことはなく、蒸気吸入経路は特に弁部などを設けなくとも汚れるようなことはない。汚れないのでお手入れの必要性がなく、使い勝手がよいだけでなく、弁部などがないので部品の構成も簡単で済み、低コストで構成可能になる。
【0052】
むらし工程が終了し保温工程に移ると、底誘導コイル7、側面ヒーター20、蓋誘導コイル26の通電を停止する。飯の温度が下がるにともない飯からの水蒸気の発生は無くなり、鍋2の雰囲気は蒸気から、湿度100%の空気に入れ替わる。
【0053】
この状態を続けると炊飯器本体1から放熱し、飯の温度が高くなり炊飯器本体1の表面温度がもっとも低い状態となり、間の部材は炊飯器1の内部から外部に向かい低くなる温度勾配を持った状態になるながら、飯も含め炊飯器全体の温度が下がり始める。
【0054】
この時、鍋2内の雰囲気温度も下がることから、鍋2内の雰囲気に含まれる蒸気が一部
結露し相対的に温度の低い場所にて露が発生する。この時点で気密型のポンプ50を動作させることにより鍋2内の雰囲気は吸気経路49より気密型ポンプ50を通過し蒸気加熱板24および加熱板29で構成された雰囲気加熱室53に達する。前記の説明のとおり鍋2内雰囲気温度より雰囲気加熱室は相対的に温度が低いため、雰囲気内の結露した蒸気は雰囲気加熱室53で凝縮し雰囲気内の余分な水分を取り出した、後鍋2内に還流され、鍋2内への結露を防ぎ前記結露がご飯に付着しべちゃつくことを防止することができる。
【0055】
飯が所定温度まで下がると底誘導コイル7、側面ヒーター20、蓋誘導コイル26の通電を所定量通電することで飯の温度が一定となる制御を行う。蓋誘導コイル26を通電すると蒸気加熱板24と加熱板29が発熱し同時に雰囲気加熱室53の温度が上昇し、凝縮した水滴の一部が気化し蒸気排気経路52より、鍋2内に供給される。さらに飯内で増殖した菌を殺菌するために温度を上げる殺菌工程では、飯の温度が上昇するに伴い鍋2内の雰囲気も上昇し相対湿度が低下する。この場合も、蓋誘導コイル26の通電量を行うことにより、雰囲気加熱室53内に存在する水滴が気化し排気経路52より、鍋2内に供給されるため鍋2の雰囲気の相対湿度が上昇するため飯の乾燥を防止することができる。この時気密型ポンプ50を動作せると雰囲気加熱室53内で発生した蒸気を強制的に鍋2内の雰囲気と混合することができるためさらに効果を増すことができる。
【0056】
上記内容で明らかなように蒸気加熱室53の結露水量のコントロールすることによりが保温中のご飯の調湿が可能となりご飯のべしょつきや乾燥を防ぐことができ保温性能が向上するものである。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、蒸気循環装置で鍋内の蒸気を攪拌させて、調理物であるご飯を効率よく加熱することができ、さらに、蒸気循環装置へおねばの流入なく使い勝手のよい炊飯器を提供することができるので、家庭用のみならず、業務用の炊飯器にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の実施の形態1の炊飯器の断面図
【図2】本発明の実施の形態1の炊飯器の蓋体部面図
【図3】本発明の実施の形態1の炊飯器の要部断面図
【符号の説明】
【0059】
1 炊飯器本体
1a 鍋収納部
2 鍋
7 底誘導コイル(加熱手段)
15 蓋体
24 蒸気加熱板
26 蓋誘導コイル
29 加熱板
29A 吸気口
29B 排気口
49 吸気経路
50 気密型ポンプ
52 排気経路
53 蒸気加熱室
55 バイパス路
56 ボール弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着脱自在な鍋と、上面に有底筒状の鍋収納部を有する本体と、前記鍋を加熱する加熱手段と、前記鍋の開口部を覆う蓋と、前記蓋に設けられた鍋内の蒸気を吸気する吸気口と、前記吸気口に連接した吸気通路と、前記鍋内に蒸気を排気する排気口と、前記排気口に連接した排気通路と、前記吸気通路と前記排気通路を連接し給排気を行う蒸気循環装置とを備え、前記排気通路に前記鍋内の蒸気を加熱する蒸気加熱室を設けた炊飯器。
【請求項2】
蒸気循環装置は気密型のポンプで構成した請求項1記載の炊飯器。
【請求項3】
吸気通路を吸気口より広くした請求項1記載の炊飯器。
【請求項4】
吸気通路と排気通路の一部にバイパス路を設け、吸気通路の入り口が塞がれた時に、排気の一部が吸気通路に流入する請求項1記載の炊飯器。
【請求項5】
バイパス路にボール弁等で構成され所定の負圧が生じた時バイパス路を開放する弁機構を設けた請求項4記載の炊飯器。
【請求項6】
吸気口を1か所、排気口を複数個所,所定間隔を設け配置した請求項1記載の炊飯器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−214035(P2010−214035A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−67418(P2009−67418)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】