説明

炊飯器

【課題】圧力弁の制御によりご飯の粘りを可変できる炊飯器を提供すること。
【解決手段】この炊飯器は、鍋内の内圧を調整する圧力弁と、この圧力弁を制御する圧力弁開放機構と、各種炊飯メニューを表示する表示パネルを有し各種設定を行う操作手段と、圧力弁開放機構を制御および加熱手段を制御して所定の炊飯工程を実行する制御装置とを備えている。制御装置は、操作手段で所定の粘りレベルが設定されたときに、標準粘りレベルSLNにおける沸騰維持工程での前記圧力弁の開閉回数NNおよび沸騰維持工程から蒸らし工程終了までの期間中に該圧力弁が閉成維持される閉成時間tNとして、粘り少なめレベルSLSにおける開閉回数NSおよび前記閉成時間tS、粘り多めレベルSLLにおける開閉回数NL、閉成時間tLとして、条件算出手段は、これらの関係を、
SLS<SLN<SLL、NS<NN>NL、tS<tN<tL
にして、炊飯工程を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炊飯器に係り、特にユーザーのお好みの炊飯ができるこだわり炊飯メニューを備えた炊飯器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
炊飯器は、一般家庭などにおいて必需品となっており、種々のタイプの炊飯器が開発、市販されている。最近の炊飯器は、マイクロコンピュータが搭載されて、このコンピュータによって種々の炊飯プログラムにより、ユーザーのお好みの硬さ、例えばやわらかめ、少しやわらかめ、ふつう、少し硬め、硬めなどにして炊飯できるようになっている。
【0003】
近年は、ユーザーが更に美味しさを要求し、その美味しさに関する好みもこれまでの硬さだけでなく、その他の例えば甘み、粘り、旨み、香り、弾力性、つやなどに多様化してきている。
【0004】
本出願人は、このような要求に応えて、硬さに加え、甘みおよび粘りの程度を複数レベルに細分化し、これらを組み合わせてお好みの炊飯ができる、いわゆるこだわり炊飯メニューを備えた炊飯器を開発し、既に製品化して市場に出している。
【0005】
下記特許文献1の炊飯器は、こだわり炊飯メニューを備えている。なお、この特許文献の炊飯器は本願出願人の出願に係るものである。この炊飯器は、炊飯物を入れる鍋と、この鍋が収容される開口および鍋内の炊飯物を加熱する加熱手段を有する炊飯器本体と、この炊飯器本体の開口を塞ぐ蓋体と、この蓋体に装着されて鍋内の内圧を調整する圧力弁と、この圧力弁を制御する圧力弁開放機構と、こだわり炊飯メニューを含む各種炊飯メニューを表示する表示パネルと、炊飯メニューの設定などを行う操作手段と、所定の炊飯工程を実行する制御装置とを備えている。制御装置は、炊飯物の炊き上がり時におけるユーザー味好みを複数に区分し、この区分された味好みを複数段階にレベル分けして入力できるこだわり炊飯メニュー画面を表示パネルに表示させる表示手段と、このこだわり炊飯メニュー画面において操作手段により設定された区分およびレベルにしたがって前記炊飯工程における炊飯条件を算出する条件算出手段とを備えている。そして、この制御装置は、こだわり炊飯メニューが選定されると、前記条件算出手段により炊飯条件を算出し、この算出結果に基づいてこだわり炊飯メニューを実行するようになっている。
【0006】
この炊飯工程における圧力弁の制御は、沸騰維持工程において、圧力弁の開閉回数および閉成時間との関係で3つの弁開閉パターンA〜Cに分けられたパターンで実行されている。すなわち、弁開閉パターンAは開閉回数6回、閉成時間が沸騰維持工程を経て蒸らし工程の初期まで継続する閉成時間が最も長いパターン、弁開閉パターンBは開閉回数6回、閉成時間が沸騰維持工程まで継続するパターン、弁開閉パターンCは開閉回数6回、以後開成されて閉成時間が最も短いパターンとなっている。また、粘りの調整は、吸水温度および吸水時間の制御に加え、沸騰維持電力制御でも行うようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−325705号公報(図7、特許請求の範囲(請求項1))
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1の炊飯器によれば、炊飯器とユーザーとのヒューマン・マシン・インターフェースが改善されて簡単な操作でお好みの炊飯が可能になる。すなわち、表示パネルには、日常炊飯においてユーザーに馴染みがあってしかも極めて分かり易い区分、例えば炊飯物の甘み、粘り、硬さなどに分け、それぞれの区分毎に段階的にレベル分けして入力できるように表示できるので、ユーザーは、表示パネルに表示された炊飯物の甘み、粘り、硬さなどをそれぞれレベル分けして入力することにより、お好みの炊飯を行うことができる。この炊飯器は、このような利点を有していることから、広く普及し始めている。
【0009】
ところが、この広い普及に伴い、ユーザーから幾つかの改善点および要望が出されている。その一つは硬さと粘りとに関連しており、硬くて粘りがあるご飯が炊き上がり難いことが指摘されている。この指摘に対して原因を探求したところ、その原因の一つは、粘りの度合いの調節を沸騰維持工程において電力制御によって行っていたことに起因していることが判った。すなわち、この電力制御において、例えば電力が低いと、沸騰維持時間が延びて圧力のかかる時間が長くなり、その結果、炊き上がったご飯は、一応粘りのあるものになるが、この粘りの強さと柔らかさが等しくなる。すなわち、粘りが強いものはやわらかくなり、硬いと粘りが少なくなってしまう。なお、上記特許文献1では、この電力制御とともに圧力弁の開閉制御も行っているが、結果は同じになっている。また、他の原因は、沸騰維持工程での圧力弁の開閉回数が6回と多くなっているため、鍋内の加圧時間が短くなり、これによっても粘りが少なくなることにある。なお、圧力弁の開閉は、炊飯中に鍋内の炊飯物を攪拌させるためのものであることから、その回数が少ないと攪拌が不十分となり炊飯ムラ発生の原因となるので、ムラのない、かつ粘りの強い炊飯物を得るには、これらの均衡が必要となる。
【0010】
そこで、本発明者は、これらの原因を踏まえて、電力制御に左右されずに粘りの調整ができないかを検討し、鍋内に突沸現象を発生させて炊飯物を攪拌する圧力弁をそのまま利用して、粘りの可変が可能になることに想到し、本発明を完成させるに至ったものである。
【0011】
本発明は、これまでのこだわり炊飯メニューを備えた炊飯器を改良したもので、本発明の目的は、いわゆるこだわり炊飯におけるご飯の粘りを可変できる炊飯器を提供することである。より詳しくは、鍋内に突沸現象を発生させて炊飯物を攪拌する圧力弁をそのまま利用して、この圧力弁の開閉制御により、ご飯の粘りを簡単に可変できる炊飯器を提供することにある。
【0012】
また、本発明の他の目的は、ご飯の粘りおよび硬さレベルを組合わせて、お好みの炊飯、例えば、硬くて粘りのあるご飯をも炊き上げることができる炊飯器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本願の請求項1に記載の炊飯器は、炊飯物を入れる鍋と、前記鍋が収容される開口および前記炊飯物を加熱する加熱手段を有する炊飯器本体と、前記炊飯器本体の開口を塞ぐ蓋体と、前記蓋体に装着されて前記鍋内の内圧を調整する圧力弁と、前記圧力弁を制御する圧力弁開放機構と、各種炊飯メニューを表示する表示パネルを有し各種設定を行う操作手段と、前記圧力弁開放機構を制御および前記加熱手段を制御して前記鍋内の炊飯物に水分を吸水させる吸水工程、前記鍋内の炊飯物が沸騰するまで昇温加熱する立上加熱工程、前記鍋内の炊飯物を沸騰状態に維持する沸騰維持工程、前記鍋内の炊飯物を蒸らす蒸らし工程を含む炊飯工程を実行する制御装置とを備え、大気圧以上に昇圧して炊飯する炊飯器において、前記制御装置は、ご飯の粘りを標準粘りレベルSLN、前記標準粘りレベルより粘りが少ない粘り少なめレベルSLSおよび粘りが多い粘り多めレベルSLLを前記表示パネルに表示させる表示手段と、前記操作手段で設定された粘りレベルにしたがって前記炊飯条件を算出する条件算出手段とを備え、前記制御装置は、前記操作手段で所定の粘りレベルが設定されたときに、前記標準粘りレベルSLNにおける前記沸騰維持工程での前記圧力弁の開閉回数NNおよび沸騰維持工程から蒸らし工程終了までの期間中に該圧力弁が閉成維持される閉成時間tNとして、前記粘り少なめレベルSLSにおける前記開閉回数NSおよび前記閉成時間tS、前記粘り多めレベルSLLにおける開閉回数NL、前記閉成時間tLとして、前記条件算出手段は、これらの関係を、SLS<SLN<SLL、NS<NN>NL、tS<tN<tL、にして、前記炊飯工程を実行することを特徴とする。
【0014】
また、請求項2に記載の発明において、前記制御装置は、前記表示手段により、前記表示パネルに前記粘りレベルSLN、SLS、SLLの他に、標準硬さレベルFN、前記標準硬さレベルより柔らかい柔らかめレベルFSおよび前記標準硬さレベルより硬い硬めレベルFLを表示させて、予め、これら粘りおよび硬さレベルに対応したそれぞれの吸水温度および吸水時間、沸騰維持電力および蒸らし電力の値を設定しておき、前記制御装置は、前記操作手段で所定の粘りおよび硬さレベルが設定されたときに、前記条件算出手段で前記粘りおよび硬さレベルに対応させて、それぞれ吸水温度および時間、沸騰維持電力および蒸らし電力の値を組み合わせて炊飯条件を算出して、前記炊飯工程の制御を実行することを特徴とする。
【0015】
また、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の炊飯器において、前記吸水温度は、前記吸水温度の高低が、粘りに対して、SLS>SLN>SLL、硬さに対して、FLS>FLN>FLL、前記吸水時間は、前記吸水時間の長短が、粘りに対して、SLS<SLN<SLL、硬さに対して、FLS>FLN>FLL、前記沸騰維持電力は、前記沸騰維持電力の高低が、硬さに対して、FLS<FLN<FLL、前記蒸らし電力は、前記蒸らし電力の高低が、硬さに対して、FLS<FLN<FLL、に設定されていることを特徴とする。
【0016】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の炊飯器において、前記蓋体には、前記圧力弁が複数個配設されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明は上記構成を備えることにより、以下に示すような優れた効果を奏する。すなわち、請求項1の発明によれば、沸騰維持工程における圧力弁の開閉によって、鍋内に激しい突沸現象が発生し、この現象を利用して鍋内の炊飯物を効率よく攪拌しムラのない炊飯ができると同時に、この圧力弁の開閉回数および蒸らし工程を含めた閉成時間の長短の設定によって、ご飯の粘りを所望のレベルに可変できる。すなわち、突沸現象を発生させ炊飯物を攪拌する圧力弁をそのまま利用して、粘りの可変ができるので、粘りのコントロールが簡単になる。なお、従来技術の電力制御に比べても、その制御が簡単になる。
【0018】
また、請求項2、3の発明によれば、硬さと粘りとを関連付けて設定して炊飯できるので、お好みの炊飯、特に、硬くてしかも粘りのあるご飯を炊き上げることができる。
【0019】
また、請求項4の発明によれば、圧力弁を複数個配設したので、圧力弁の開閉回数を、圧力弁が1個のものに比べて少なくすることができる。
なお、圧力弁の開閉は、炊飯中に鍋内の炊飯物を攪拌させるものであることから、その回数が少なすぎると攪拌が不十分となり炊飯ムラ発生の原因となるので、これらの均衡が必要となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は本発明の実施形態に係る炊飯器を示し、図1(a)は正面図、図1(b)は図1(a)の表示部分の拡大図である。
【図2】図2は図1の炊飯器の外ケースなどが省略された縦断面図である。
【図3】図3は図2の圧力弁開放機構を拡大して示す拡大断面図である。
【図4】図4は表示パネルに表示されるこだわり炊飯設定画面の正面図である。
【図5】図5はユーザーの味好みの区分及びレベルを示した図表である。
【図6】図6は本発明の実施形態に係る炊飯器の炊飯工程図である。
【図7】図7は吸水工程における吸水温度を示した図表である。
【図8】図8は粘りおよび硬さと、吸水温度・吸水時間および沸騰維持電力との関係を説明する説明図表である。
【図9】図9は本発明の実施形態に係る炊飯器の炊飯工程を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を説明する。但し、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための炊飯器を例示するものであって、本発明をこれらのものに特定することを意図するものではなく、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のものにも等しく適応し得るものである。 図1〜図3を参照して、本発明の実施形態に係る炊飯器の構造を説明する。なお、図1は本発明の実施形態に係る炊飯器を示し、図1(a)は正面図、図1(b)は図1(a)の表示部分の拡大図、図2は図1の炊飯器の外ケースなどが省略された縦断面図、図3は図2の圧力弁開放機構を拡大して示す拡大断面図である。
【0022】
炊飯器1は、図1、図2に示すように、炊飯物を入れる鍋7と、上方にこの鍋7が収容される開口部および内部にこの鍋7を加熱し炊飯物を加熱する加熱手段5を有する炊飯器本体(以下、本体という)2と、この本体2の一側に枢支されて開口部を覆い閉塞状態に係止する係止機構を有する蓋体10と、この蓋体10に装着されて鍋7内の内圧を調整する圧力弁13と、この圧力弁を制御する圧力弁開放機構18と、各種の炊飯メニューを表示して選択する表示操作部30と、選択された炊飯メニューにより加熱手段5および圧力弁開放機構18を制御して、鍋内の炊飯物を所定温度に加熱し且つ所定時間掛けて所定量の水分を炊飯物に吸水させる吸水工程I、この吸水された炊飯物を沸騰するまで昇温加熱する立上加熱工程II、この炊飯物を沸騰状態に維持する沸騰維持工程III、この沸騰維持工程後に炊飯物を蒸らす蒸らし工程IVを順次実行する制御装置24と、を備えている。制御装置24は、ご飯の粘りを標準粘りレベル、この標準粘りレベルより粘りが少ない粘り少なめレベルおよび粘りが多い粘り多めレベルなどを表示パネルに表示させる表示手段と、設定された粘りレベルなどにしたがって炊飯条件を算出する条件算出手段などを備えている。
【0023】
本体2は、図1、図2に示すように、有底の箱状外部ケース3と、この外部ケースに収容されその中に鍋7が収容される内部ケース4とからなり、外部ケース3と内部ケース4との間に隙間が形成され、この隙間に制御装置24を構成する制御回路基板など(図示省略)が配設されている。内部ケース4は、その底部4aおよび側部4bに加熱手段5、底部4aに鍋底温度を検出するサーミスタなどからなる鍋底温度センサ6が設けられている。加熱手段5は鍋底を加熱する鍋底ヒータ5aと鍋側面から加熱する側面ヒータ5bを有し、鍋底ヒータ5aにはドーナツ状に巻装した電磁誘導コイルが使用されている。なお、加熱手段は、上記加熱手段5だけでなく、蓋体10にも蓋ヒータ(図示省略)が設けられて、この蓋ヒータにより鍋内が加熱されるようになっている。
【0024】
鍋7は、図2に示すように、水および米とからなる所定量の炊飯物が収容される比較的深底の容器からなり、アルミニウムとステンレスとのクラッド材等で形成されている。
【0025】
本体の前面壁3aには、各種の炊飯メニューが表示され、この表示されたメニューから所定のメニューなどを設定する複数個の操作ボタンなどを備えた表示操作部30が設けられている。なお、この表示操作部は、特許請求の範囲では操作手段と表現されている。
【0026】
この表示操作部30は、図1(b)に示すように、各種の炊飯選択メニューおよび時刻などが表示される表示パネル31と、この表示パネル31の左右および下方に複数個のスイッチ操作ボタン32a〜32f、33が配設されている。これらの操作ボタンは、炊飯器を作動させる炊飯スタートボタン32a、炊飯予約をする予約ボタン32b、炊飯などの設定を取消す切ボタン32c、炊飯する米を選択するお米選択ボタン32d、炊飯メニューを選択するメニューボタン32e、コースを選択するコースボタン32f、および表示パネル31に表示されたメニューなどを選択・決定する十字シフトキー33となっている。
【0027】
これらのボタンおよびキーは、押しボタン式のスイッチを構成する操作ボタンなどであって、このボタン或いはキーを押圧することにより、それぞれのスイッチ(図示省略)が作動されるようになっている。
【0028】
これらの操作ボタン32a〜32fのうち、メニューボタン32eは、各種炊飯メニューを表示パネル31に表示させるもので、このボタンを押圧すると、ふつう、かため、やわらか、おかゆ、あっさりがゆ、すしめし、カレー用、もちもち、甘みおよびこだわりなどが表示される。また、お米選択ボタン32dは、使用される米の種類を選定するもので、例えば白米、無洗米、玄米、発芽玄米などの何れかを選択するものである。更に、コースボタン32fは、うまみ保温、おやすみ保温、マルチ調理およびクリーニングなどを選択するものである。
【0029】
また、十字シフトキー33は、表示パネル31に表示された種々のメニューから所定のメニューを選択するもので、表示された炊飯メニュー、例えば、ふつう、かため、やわらか、おかゆ、あっさりがゆ、すしめし、カレー用、もちもち、甘みおよびこだわりなどから十字シフトキー33を操作してカーソル(点滅表示)を上下および左右に移動させて選択するものである。
【0030】
こだわり炊飯メニューが選択されると、表示パネル31に、粘りおよび硬さがそれぞれ5段階にレベル分けして入力できる画面が表示される。図4は、このこだわり炊飯メニュー画面の異なるタイプの画面を示している。図4(a)の画面は、粘りおよび硬さを5段階レベルの数字1〜5に星印をマークして好みの炊飯を設定するものである。
【0031】
この画面を使用して、粘りおよび硬さの設定は、十字シフトキー33の左右上下操作により、こだわり設定にカーソルを合わせ、メニューボタンを押圧する。すると、例えば図4(a)の画面が表れ、この画面をみて粘りおよび硬さ毎にレベルを設定する。この設定は、例えば粘りに1個の星印、硬さに5個の星印マークをそれぞれ設定する。この星印マークは、十字シフトキーの左右方向キーを押圧することにより行われる。また、粘りおよび硬さの変更は、このキーの上下方向キーを押圧することにより変更される。それぞれの星印は、粘り1個、硬さ5個となり、これらの星印の数により、こだわり炊飯の炊飯パターンが設定できる。この表示パネル31によれば、極めて簡単に粘りおよび硬さのレベルを設定できる。図4(b)、図4(c)は、図4(a)と異なるタイプの画面を示し、図4(b)の画面は白枠をマークして入力する画面、図4(c)は数字を入力する画面であって、これらの画面を利用することにより、ユーザーは、極めて簡単に粘りおよび硬さレベルを設定できる。
【0032】
蓋体10は、図2に示すように、鍋7の開口部を閉蓋する内蓋11と、本体2の開口部全体を閉蓋する外蓋12などとで構成されている。この蓋体10は、一端が本体2の一端に枢支され、他端が本体の他端に係止機構により係止されるようになっている。
【0033】
蓋体10には、圧力弁13と、この圧力弁を開放させる圧力弁開放機構18が設けられている。内蓋11には圧力弁13が設けられて、この圧力弁13は、図3に示すように、所定径の弁孔14が形成された弁座15と、この弁孔14を塞ぐように弁座15上に載置される金属製ボール16と、このボール16の移動を規制しボール16を弁座15上に保持するカバー17とで構成されている。また、外蓋12には圧力弁開放機構18が設けられて、この圧力弁開放機構18は、電磁コイルが巻回されたシリンダ19aと、このシリンダ19a内を電磁コイルの励磁により摺動してボール16を移動させるプランジャ19bと、プランジャ19bの先端に装着されたバネおよび作動棹20とで構成されている。
【0034】
圧力弁13の大きさは、炊飯量に対応して決定される。すなわち、炊飯量が多い炊飯器にあっては、この圧力弁の弁孔を大きくした大型の圧力弁、或いは、複数個の圧力弁を併設使用する。この圧力弁の選定により、炊飯中の炊飯物の攪拌と粘り可変との均衡を保った炊飯が可能になる。
【0035】
圧力弁開放機構18は、制御装置24により制御される。すなわち、制御装置24からの指令に基づいて電磁コイルが励磁されると、プランジャ19bがシリンダ19aから飛び出してボール16に衝突し、このボール16を横方向に押し出す。この押し出しにより、ボール16は弁孔14上から移動し、弁孔14は強制的に開放される。また、この開放状態において、電磁コイルへの励磁がストップされると、プランジャ19bがシリンダ19a内にばね力により引き戻され、プランジャ19bがボール16を横方向に押す力がなくなり、ボール16は弁孔14上に戻って、弁孔14がボール16により閉塞される。
【0036】
外蓋12には、内蓋11と外蓋12との間の空間と大気とを連通する蒸気口21が設けられている。また、内蓋11には、鍋内の圧力が所定圧力以上の異常圧力に上昇したときに、鍋内の蒸気を、蒸気口21を介して外部に逃がすための安全弁22が設けられている。また、この内蓋11には、蒸気温度センサ23(図3参照)が取り付けられている。
【0037】
表示パネル31に表示された炊飯メニューは、図6に示す炊飯工程によって実行される。なお、図6は各炊飯工程を鍋底温度対炊飯時間の関係で示した炊飯工程の説明図である。
【0038】
各種の炊飯メニューを実行する炊飯工程は、図6に示すように、所定の吸水温度および時間で米に所定量の水を吸水させる吸水工程Iと、この吸水後に水と米とからなる炊飯物を沸騰温度まで昇温加熱する立上加熱工程IIと、この炊飯物を所定時間沸騰状態に維持する沸騰維持工程IIIと、この沸騰維持終了後に行う蒸らし工程IVとなっている。このうち蒸らし工程IVは、第1蒸らし工程IV1と、この第1蒸らし工程IV1終了後に行う追い炊き工程IV2と、追い炊き工程IV2の後に行う第2蒸らし工程IV3(仕上げを行う蒸らし工程)とに分かれている。
【0039】
こだわり炊飯は、ユーザーの味好みを複数に区分し、この区分された味好みを更に複数段階にレベル分けして、炊飯時にユーザーがこれらの区分およびレベルから所定のものを選定できるようになっている。
【0040】
ユーザーの味好みは、図5に示すように、ご飯の粘りおよび硬さの2つに区分し、これらはそれぞれが5段階のレベルに細分化されている。
【0041】
粘りレベルSLは、レベル5の粘りめ(SL5)、レベル4の少し粘りめ(SL4)、レベル3のふつう(SL3)、レベル2の少しあっさり(SL2)、およびレベル1のあっさり(SL1)にレベル分けされている。このレベル分けは、粘着性(N・mm)値で決められる。この計測には、レオメーターが使用される。また、硬さレベルFLは、レベル5の硬め(FL5)、レベル4の少し硬め(FL4)、レベル3のふつう(FL3)、レベル2の少し柔らかめ(FL2)、およびレベル1の柔らかめ(FL1)にレベル分けされている。このレベル分けは、硬さ(N)の値で決められる。この計測には、同じくレオメーターが使用される。
【0042】
図6に戻って、こだわり炊飯は、炊飯工程における吸水温度、吸水時間、沸騰維持電力、圧力弁の開閉回数および追炊き電力の制御によって行われる。
【0043】
吸水工程Iでは、所定の吸水温度θkkで所定の吸水時間Tkkを掛けて行われる。
【0044】
吸水温度θkkは、図8に示すように、粘りレベルSL1からSL5に対応して、所定の吸水温度αtt(a1〜a5)が設定される。また、硬さレベルFL1からFL5に対しても、同じ吸水温度αts(a1〜a5)が設定される。これらの吸水温度の高低は、a1>a2>a3>a4>a5となっている。これらの吸水温度は、例えばa1は68℃、a2は64℃、a3は60℃、a4は56℃、a5は52℃である。また、粘りSLと硬さFLとの間には、重みWa、Wbがつけられている。これらの重みは、例えばWaは30%、Wbは70%である。この吸水温度θkkは、以下の式により、算出される。
【0045】
θkk=(Wa×αtt)+(Wb×αts) 式(1)
この計算式で吸水温度が設定されると、粘りと硬さとを所定レベルに組み合わせて、所望のこだわり炊飯が可能になる。なお、従来技術では、吸水温度を高くすると、吸水工程Iでは米に水が良く吸水されるが、一方、沸騰維持工程IIIでは鍋内の水が少ししか残らないので、沸騰維持時間が短くなり粘りが少なくなるが、この不都合を上記計算式の吸水温度に設定することにより解消できる。この計算式で算出した値は、図7の表のようになる。この図表から、粘りと硬さとの組合せで、粘りレベル1と硬さレベル1〜5との間では、吸水温度θ15は、a1>a1-1>a1-2>a1-3>a1-4、粘りレベル3とでは、a3+2>a3+1>a3>a3-1>a3-2、また、粘りレベル5とでは、a5+4>a5+3>a5+2>a5+1>a5となる。この図表から、粘りレベルSL3(ふつう)および硬さレベルFL3(ふつう)を標準粘りおよび標準硬さにして対比すると、この標準粘りおよび標準硬さに対して、粘りが少なくしかも硬さが低い(柔らかい)ときには吸水温度が高く(図7の上向き矢印)、一方、粘りが多くしかも硬さが高い(硬め)のときは吸水温度が低くなる(図7の下向き矢印)。吸水時間Tkkについては後述する。
【0046】
立上加熱工程IIでは、鍋内の炊飯物が沸騰するまでフルパワーで加熱されると共に、圧力弁が閉成されて、鍋内の圧力が大気圧以上、例えば、1.2気圧まで上昇される。
【0047】
沸騰維持工程IIIでは、圧力弁13の開放制御が行われる。この圧力弁の開放制御は、立上加熱工程IIで鍋内が沸騰温度に達した後に、圧力弁13の開閉回数および閉成時間により、複数の弁開閉パターンA〜EおよびFに分けて行われる。これらのうち弁開閉パターンA〜Eは、粘りレベルSL1〜SL5に対応している。
【0048】
まず、弁開閉パターンAは、図8に示すように、粘りレベルSL1に対応している。この弁開閉パターンAは、図6に示すように、立上加熱工程IIの終了直後に圧力弁13を所定単位時間(秒単位)および間隔で所定回数n1(例えば2回)の開閉を行った後に開成し、以後この開成状態を継続させ、圧力弁の閉成時間tAが最も短くなっている。また、弁開閉パターンBは、粘りレベルSL2に対応しており、立上加熱工程IIの終了直後から圧力弁13を開閉回数n2(例えば4回)した後に閉成して、この閉成状態を沸騰維持工程IIIが終了するまで継続させ、閉成時間tBがパターンAの閉成時間tAより若干長くなっている。更に、弁開閉パターンCは、粘りSL3に対応し、立上加熱工程II終了直後から圧力弁13を開閉回数n3(例えば4回)行った後に閉成して、この閉成状態を、沸騰維持工程IIIを超えて蒸らし工程IVの第1蒸らし工程IV1まで継続させ、閉成時間tCがパターンBの閉成時間tBより長くなっている。更にまた、弁開閉パターンDは、粘りレベルSL4に対応しており、同様に立上加熱工程II終了直後から圧力弁13を開閉回数n4(例えば4回)行った後に閉成して、この閉成状態を、沸騰維持工程IIIを超えて、蒸らし工程IVの終了まで継続させ、閉成時間tDがパターンCの閉成時間tCより長くなっている。更にまた、弁開閉パターンEは、粘りレベルSL5に対応しており、立上加熱工程II終了直後から圧力弁13を開閉回数n5(例えば2回)行った後に閉成して、この閉成状態を、沸騰維持工程IIIを超えて蒸らし工程IVの終了まで継続させ、閉成時間tEが最も長くなっている。
【0049】
これらの関係を纏めると、粘りレベルのSL1<SL2<SL3<SL4<SL5に対して、開閉回数Nは、n1<n2=n3=n4>n5、および圧力弁13の閉成時間tはtA<tB<tC<tD<tEとなる。
【0050】
この実施形態では弁開閉パターンA〜Eの開閉回数を2回、4回、4回、4回、2回としたが、この回数に限定されるものでない。しかしながら、開閉回数を多くすると、沸騰維持工程IIIにおける鍋内の加圧時間が短くなり、所定レベルの粘りが得られなくなるので、この回数は従来技術(上記特許文献1)より少なくなっている。また、圧力弁13の開閉は、鍋内の炊飯物を攪拌する機能を持っているので、圧力弁の開閉回数が多い程、万遍なく攪拌される。しかし、一方で、圧力弁の開閉回数を多くすると、所定レベルの粘りが得られなくなる問題が発生する。この問題を解決するために、前記したように圧力弁の弁孔を大きくする、或いは、1個の圧力弁でなくその数を2個以上にするとよい。
【0051】
粘りレベルのSL1<SL2<SL3<SL4<SL5に対して、開閉回数Nをn1<n2=n3=n4>n5、および圧力弁の閉成時間tをtA<tB<tC<tD<tEとしたが、レベル3(ふつう)を標準粘りレベルSLN、このレベルより粘りが少ない少なめレベルおよび標準粘りレベルより粘りが多い多めレベルをSLS、SLLで表し、これらのレベルに対応する開閉回数をNN、NS、NL、閉成時間をtN、tS、tLで表すと、これらの関係は、SLS(少なめ)<SLN(標準)<SLL(多め)に対して、NS<NN>NL、tS(短い)<tN(標準)<tL(長い)となる。なお、SLN(標準)はレベルSL3、SLS(少なめ)はレベルSL1、SL2、SLL(多め)はレベルSL4、SL5に対応している。
【0052】
また、弁開閉パターンFは、立上加熱工程IIの終了直後から圧力弁を例えば8回の開閉を行った後に閉成し、この閉成状態を、沸騰維持工程IIIを超えて、第1蒸らし工程IV1の終了まで継続させている。この弁開閉パターンFは、玄米炊飯時のものとなっている。玄米炊飯の場合、玄米には特有の皮があるため、圧力弁の開閉回数を多くして、この皮を擦って皮まで柔らかくなるようにしている。
【0053】
これらの弁開閉パターンA〜Eは、粘り制御の際に選択される(図8参照)。また、これらの弁開閉パターン制御は、制御装置24により圧力弁開放機構18を作動させることにより行われる。
【0054】
次に、図8を参照して、粘りおよび硬さにおける吸水温度、吸水時間、弁の開閉、沸騰維持電力および追い炊き電力などの設定を説明する。なお、追い炊き電力は特許請求の範囲では蒸らし電力と表現されている。
【0055】
図8は粘りおよび硬さにおける吸水温度、吸水時間、沸騰維持電力および追い炊き電力などの関係を説明する説明図表である。粘りおよび硬さの制御は、吸水温度θkk、吸水時間Tkk、圧力弁の開閉(以下、弁の開閉という)Vst、沸騰維持電力Hfおよび追い炊き電力Toitを粘りレベルSLおよび硬さレベルFLの各レベル毎に所定値に設定することによって行われる。
【0056】
吸水温度θkk(℃)は、吸水工程Iにおける吸水温度であって、前述したように、粘りレベルSL1〜SL5に対しては、それぞれ温度a1〜a5が設定され、これらの値は、硬さと関連して重みWaが付けられている。これらの温度a1〜a5は、粘りレベルSL3(ふつう)の温度a3を基準にして、レベルSL1、SL2の温度a1、a2は高く、レベルSL4、SL5の温度a4、a5は低くしてある。また、硬さレベルFL1〜FL5に対しても、同じ温度a1〜a5が設定されて、これらの値は、粘りと関連して重みWbが付けられている。これらの温度a1〜a5は、レベルFL3(ふつう)の温度a3を基準にして、レベルFL1、FL2の温度a1、a2は高く、レベルFL4、FL5の温度a4、a5は低くしてある。これらの粘り重みWa、硬さ重みWbの合計値は100%であり、これらの関係は、Wa<Wbとしてある。
【0057】
この吸水温度θkkは、上記式(1)で算出される。すなわち、
θkk=Wa×αtt+Wb×αts
αtt=(a1、a2、a3、a4、a5)、αts=(a1、a2、a3、a4、a5)、Wa+Wb=100%
なお、粘りレベルSL1〜SL5を、レベルSL3(ふつう)を基準(標準)にして表すと、標準粘りレベルSLNに対して少なめSLSおよび多めレベルSLLの吸水温度の高低は、SLS>SLN>SLLとなる。同様に、硬さレベルFL3(ふつう)を基準(標準)にして表すと、柔らかめレベルFLS、硬めレベルFLLの吸水温度の高低は、FLS>FLN>FLとなる。
【0058】
また、吸水時間Tkkは、粘りレベルSL1〜SL5に対してそれぞれ吸水時間αkt(b1〜b5)が設定され、これらの値は、硬さと関連して重みWcが付けられている。これらの吸水時間αkt(b1〜b5)は、粘りレベルSL3(ふつう)を基準にして、粘りレベルSL1、SL2は短く、粘りレベルSL4、SL5は長くしてある。これらの吸水時間は、例えばb3は15分、b1は5分、b2は10分、b4は20分、b5は25分となっており、Wcは例えば30%である。また、硬さレベルFL1〜FL5に対しては、粘りの吸水時間と順序を逆にして、吸水時間αkh(b5〜b1)が設定されて、この値は、粘りと関連して重みWdが付けられている。これらの時間αkh(b5〜b1)は、レベルSL3(ふつう)を基準にして、レベルSL1、SL2は高く、レベルSL4、SL5は短くしてある。これらの粘り重みWc、硬さ重みWdの合計値は100%であり、これらの関係は、Wc<Wdとしてある。
【0059】
これらの関係を纏めると、粘りレベルSL1<SL2<SL3<SL4<SL5に対して吸水時間Tkkは、b1<b2<b3<b4<b5、硬さレベルFL1<FL2<FL3<FL4<FL5に対して、b5>b4>b3>b2>b1となる。
【0060】
この吸水時間Tkkは、以下の式により算出される。
【0061】
Tkk=(Wc×αkt)+(Wd×αkh) ・・・・式(2)
αkt=(b1、b2、b3、b4、b5)、αkh=(b5、b4、b3、b2、b1)、Wc+Wd=100(%)
なお、粘りレベルSL1〜SL5のレベルSL3(ふつう)を基準(標準)にして、標準粘りレベルSLNに対して少なめSLSおよび多めレベルSLLの吸水時間の長短は、SLS<SLN<SLLとなる。同様に、レベルFL3(ふつう)に対応する標準硬さレベルをFLNに対して、柔らかめレベルFLS、硬いレベルFLLの吸水時間の長短は、FLS>FLN>FLとなる。
【0062】
弁の開閉Vstは、粘りレベルSL1〜SL5に対して前記弁開閉パターンαst(A〜E)となっており、この弁開閉パターンに重みWeがつけられている。なお、Weは100%である。
【0063】
この弁の開閉は、以下の式で算出される。すなわち、
Vst=We×αst ・・・・式(3)
αst=(A、B、C、D、E)
沸騰維持電力Hfは、沸騰維持工程IIIにおいて鍋内の炊飯物を沸騰状態に加熱維持するために供給される電力であって、硬さレベルFL1〜FL5に対しては、それぞれ沸騰維持電力αhh(c1〜c5)が設定されている。これらの沸騰維持電力αhh(c1〜c5)は、レベルFL3(ふつう)を基準にして、レベルFL1、FL2は低く、レベルFL4、FL5は高くしてある。なお、これらの沸騰維持電力c1〜c5は、標準レベルFL3の電力を100%として、この電力に対する所定%となっている。この沸騰維持電力Hfに重みWfがつけられている。なお、Wfは100%である。
【0064】
沸騰維持電力は、以下の式によって算出される。
【0065】
Hf=Wf×αhh ・・・・式(4)
αhh=(c1、c2、c3、c4、c5)、Wf=100%
レベルFL3(ふつう)に対応する標準硬さレベルをFLNに対して、柔らかめレベルFLS、硬いレベルFLLの沸騰維持電力の高低は、FLS<FLN<FLとなる。
【0066】
追い炊き電力Toitは、蒸らし工程における追い炊き時間(秒)であって、硬さレベルFL1〜FL5に対しては、追い炊き電力αod(d1〜d5)が設定されている。これらの追い炊き電力は、レベルFL3(ふつう)を基準にして、レベルFL1、FL2は低く、レベルFL4、FL5は高くしてある。この追い炊き電力に重みWgがつけられている。なお、Wgは100%である。
【0067】
この追い炊き電力は、以下の式で算出される。
【0068】
追い炊き電力Toit=Wg×αod ・・・・式(5)
αod=(d1、d2、d3、d4、d5)、Wg=100%
なお、レベルFL3(ふつう)に対応する標準硬さレベルをFLNに対して、柔らかめレベルFLS、硬いレベルFLLの追い炊き電力の高低は、FLS<FLN<FLとなる。
【0069】
以上のように、粘りおよび硬さの制御は、吸水温度θkk、吸水時間Tkk、弁の開閉Vst、沸騰維持電力Hfおよび追い炊き電力Toitを各レベル毎に所定値に設定することによって行われる。
【0070】
以下に、これらの値に基づいた一つの炊飯パターンの例を説明する。
【0071】
硬くて粘りのある炊飯制御は、粘りレベル5および硬さレベル5の組合せとなるので、この炊飯パターンの炊飯条件、すなわち吸水温度、吸水時間、弁の開閉、沸騰維持電力および追い炊き電力は、上記式(1)〜式(5)に基づいて算出される。
【0072】
上記式(1)から、吸水温度θkkは、θ55=Wa×a5+Wb×a5、吸水温度Tkkは、上記式(2)から、T55=Wc×a5+Wd×a5、弁の開閉Vstは、上記式(3)から、V55=We×E、沸騰維持電力Hfは、上記式(4)から、H55=Wf×c5、追炊き電力Toitは、上記式(5)からToit55=Wg×d5で算出される。
【0073】
次に、主に図6、図8および図9を参照して、白米・標準メニューおよびこだわり炊飯メニューの炊飯を説明する。なお、図9は白米・標準メニューおよびこだわり炊飯メニューの炊飯工程のフローチャート図である。
【0074】
まず、白米・標準メニューを実行する炊飯工程について説明する。炊飯の開始に際し、ユーザーにより所定量の水と白米が投入された鍋7が内部ケース4内に収容され、蓋体10が閉められる(S101)。次いで、表示操作部30により炊飯メニューが選択される(S102)。ここで標準炊飯メニューが選択されると(S103)、吸水工程Iが開始される(S104)。この吸水工程Iが開始されると、吸水タイマ(図示せず)が所定の吸水時間の計時を開始し、次いで鍋底温度センサ6により鍋底温度が計測される。この鍋底温度の計測は所定の温度に達するまで行われ、鍋底温度が所定値、例えば55℃に達したことを確認すると、制御装置24により加熱手段の加熱量を制御して炊飯物を所定温度に保持しつつ、吸水時間の計測が行われる。この吸水工程Iは、予め設定された吸水時間、例えば10分間継続される。設定された吸水時間(10分間)が経過すると、立上加熱工程IIに移行する(S105)。この立上加熱工程IIは、短時間で沸騰状態になるように加熱手段5を全加熱(フルパワー加熱)するとともに、制御装置24により、圧力弁開放機構18を作動させてプランジャ19bを引き戻すことでボール16により圧力弁13を閉鎖させる。つまり、ボール16が自重により弁孔14上に転がって弁孔14を塞ぎ、圧力弁13を閉鎖状態とする。この状態においては、鍋7内の圧力は弁孔14を介してボール16を押し上げ得る圧力に上昇するまで昇圧される。したがって、このときの鍋内の圧力は、ボール16の重さおよび弁孔14の大きさを設定することにより適宜定めることができる。
【0075】
この立上加熱工程IIでは、蒸気温度を蒸気温度センサ23により計測する。そしてこの蒸気温度が所定温度、例えば75℃に達すると、炊飯物が沸騰現象を起こす温度になり、立上加熱工程IIが終了する。このときの鍋内の圧力は、圧力弁13により制御され、大気圧以上の所定圧力、例えば約1.2気圧となる。そして、沸騰維持工程IIIが開始される(S106)。
【0076】
沸騰維持工程IIIに移行すると、鍋7内の圧力が大気圧以上の所定圧力、すなわち約1.2気圧となり、炊飯物はこの加圧された圧力に対応する飽和温度で沸騰するようになる。また、沸騰維持工程IIIに入ると、直ちに制御装置24により圧力弁開放機構18を作動させてボール16を移動させることで圧力弁13の強制的な開動作が行われる。またこの開動作の際には、加熱手段5の加熱を停止して、圧力弁13の強制的開動作を所定時間、例えば4秒間継続する。この強制的開動作により、鍋7内の加圧状態の圧力が大気圧近傍まで低下する。
【0077】
このように沸騰維持工程IIIにおいて、鍋7内の圧力を加圧された所定沸騰圧力(約1.2気圧)から一気に大気圧近傍まで低下させると、鍋7内は激しい突沸状態となる。この突沸状態になると、鍋内に泡が発生し、この泡によって炊飯物が攪拌される。この結果、炊飯物が均一に加熱され、炊き上げられることになる。圧力弁13を強制的に開放する所定時間は、1回目の圧力弁13の強制的開動作により鍋7内の圧力が略大気圧に戻るような程度の時間(すなわち4秒程度)に定められている。圧力弁13の強制的に開放する時間をこのように設定することにより、最大限の攪拌エネルギーを得ることができるようにしている。また、圧力弁13の強制的な開放を上記所定時間(4秒間)行った後、圧力弁開放機構18を作動させて再び圧力弁を閉状態とし、所定時間、例えば28秒間再び加熱する。なお、この加熱時間(28秒間)は、鍋7内の圧力が前述の加圧状態の所定圧力(約1.2気圧)まで回復するのに必要な時間である。また、この時間は、予め実験的に求められる。この圧力弁開放機構による圧力弁13の強制的開放は複数回、例えば4回繰り返される。なお、沸騰維持工程の時間が経過すると、鍋7内の残水量が減少するため、圧力変動幅が小さくなり、突沸現象が弱くなる。このため、圧力弁13の強制的な開放は沸騰維持工程IIIの初期段階に集中させると効果的である。
【0078】
圧力弁13を複数回開放する操作を終えると、圧力弁開放機構18による圧力弁13の強制的開放が停止され、圧力弁13を閉状態とする。そして、加熱手段5による加熱を継続し、所定の鍋底温度を計測する。そして、鍋底温度が所定温度、例えば130℃になると、鍋7内の水が枯れて強制ドライアップが終了したと判断されるので、加熱手段5による加熱作用を停止する。
【0079】
続いて、蒸らし工程IVを開始し、先ず第1蒸らし工程IV1に移行し、所定の蒸らし時間の計時を開始する(S107)。所定の蒸らし時間が所定時間、例えば4分経過すると、圧力弁開放機構18により圧力弁13を強制的に開放し、追い炊き工程IV2に移行する。この追い炊き工程IV2に入ると、加熱手段により再加熱して米の表面に付着した水を蒸発させると共に、追い炊き(再加熱)時間の計測を行う。そして、所定の追い炊き時間、例えば3分が経過すると、加熱手段5による加熱動作を停止し、第2蒸らし工程IV3に移行し、所定の蒸らし時間を計時する。そして、この蒸らし時間が所定時間、例えば5分経つと、保温工程に移行し、標準炊飯工程を終了する(S108)。
【0080】
次に、こだわり炊飯メニューを実行する炊飯工程を説明する。こだわり炊飯は、炊飯工程のステップS101からS103まで、白米・標準メニューと同じ操作を行い、ステップS103でこだわり炊飯を選択し、粘り及び硬さを所望のレベル、例えば硬く粘りのある炊飯パターン「SL5、FL5」に設定する。この炊飯パターンが設定されると、この炊飯パターンの炊飯条件が炊飯条件算出手段(S103−1)により算出される。すなわち、炊飯条件算出手段は、上記式(1)〜式(5)により、吸水温度θkk、吸水時間Tkk、弁の開閉Vst、沸騰維持電力Hfおよび追い炊き電力Toitを算出する。炊飯条件が算出された後は、この条件により、吸水工程I(S104)、立上加熱工程II(S105)、沸騰維持工程III(S106)および蒸らし工程IV(S107)が実行され、標準炊飯工程を終了する(S108)。これらの工程は白米・標準メニューの炊飯工程と同じになっている。
【0081】
以上に述べたように、本発明の炊飯器によれば、ユーザーは、表示パネルに表示された粘り、硬さなどをそれぞれレベル分けして入力することによって、お好みの炊飯を簡単な操作で行うことができるこだわり炊飯を行うことができ、味へのこだわりが強いユーザーにも充分に満足感を与える炊飯ができる炊飯器を提供できるものである。
【符号の説明】
【0082】
1 炊飯器
2 本体
3 箱状外部ケース
3a 前面壁
4 内部ケース
5a、5b 加熱手段
6 鍋底温度センサ
7 鍋
10 蓋体
11 内蓋
12 外蓋
13 圧力弁
14 弁孔
15 弁座
16 ボール
17 カバー
18 圧力弁開放機構
19a シリンダ
19b プランジャ
20 作動棹
21 蒸気口
22 安全弁
24 制御装置
30 表示操作部
31 表示パネル
32a〜32f 操作ボタン
33 十字シフトキー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炊飯物を入れる鍋と、前記鍋が収容される開口および前記炊飯物を加熱する加熱手段を有する炊飯器本体と、前記炊飯器本体の開口を塞ぐ蓋体と、前記蓋体に装着されて前記鍋内の内圧を調整する圧力弁と、前記圧力弁を制御する圧力弁開放機構と、各種炊飯メニューを表示する表示パネルを有し各種設定を行う操作手段と、前記圧力弁開放機構を制御および前記加熱手段を制御して前記鍋内の炊飯物に水分を吸水させる吸水工程、前記鍋内の炊飯物が沸騰するまで昇温加熱する立上加熱工程、前記鍋内の炊飯物を沸騰状態に維持する沸騰維持工程、前記鍋内の炊飯物を蒸らす蒸らし工程を含む炊飯工程を実行する制御装置とを備え、大気圧以上に昇圧して炊飯する炊飯器において、
前記制御装置は、ご飯の粘りを標準粘りレベルSLN、前記標準粘りレベルより粘りが少ない粘り少なめレベルSLSおよび粘りが多い粘り多めレベルSLLを前記表示パネルに表示させる表示手段と、
前記操作手段で設定された粘りレベルにしたがって前記炊飯条件を算出する条件算出手段とを備え、
前記制御装置は、前記操作手段で所定の粘りレベルが設定されたときに、前記標準粘りレベルSLNにおける前記沸騰維持工程での前記圧力弁の開閉回数NNおよび沸騰維持工程から蒸らし工程終了までの期間中に該圧力弁が閉成維持される閉成時間tNとして、前記粘り少なめレベルSLSにおける前記開閉回数NSおよび前記閉成時間tS、前記粘り多めレベルSLLにおける開閉回数NL、前記閉成時間tLとして、前記条件算出手段は、これらの関係を、
SLS<SLN<SLL、NS<NN>NL、tS<tN<tL
にして、前記炊飯工程を実行することを特徴とする炊飯器。
【請求項2】
前記制御装置は、前記表示手段により、前記表示パネルに前記粘りレベルSLN、SLS、SLLの他に、標準硬さレベルFN、前記標準硬さレベルより柔らかい柔らかめレベルFSおよび前記標準硬さレベルより硬い硬めレベルFLを表示させて、
予め、これら粘りおよび硬さレベルに対応したそれぞれの吸水温度および吸水時間、沸騰維持電力および蒸らし電力の値を設定しておき、
前記制御装置は、前記操作手段で所定の粘りおよび硬さレベルが設定されたときに、前記条件算出手段で前記粘りおよび硬さレベルに対応させて、それぞれ吸水温度および時間、沸騰維持電力および蒸らし電力の値を組み合わせて炊飯条件を算出して、前記炊飯工程の制御を実行することを特徴とする炊飯器。
【請求項3】
前記吸水温度は、前記吸水温度の高低が、粘りに対して、SLS>SLN>SLL、硬さに対して、FLS>FLN>FLL、前記吸水時間は、前記吸水時間の長短が、粘りに対して、SLS<SLN<SLL、硬さに対して、FLS>FLN>FLL、前記沸騰維持電力は、前記沸騰維持電力の高低が、硬さに対して、FLS<FLN<FLL
前記蒸らし電力は、前記蒸らし電力の高低が、硬さに対して、FLS<FLN<FLL、に設定されていることを特徴とする請求項2に記載の炊飯器。
【請求項4】
前記蓋体には、前記圧力弁が複数個配設されていることを特徴とする請求項1に記載の炊飯器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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