説明

炊飯器

【課題】省エネルギー化した炊飯器を提供する。
【解決手段】鍋2を収納する鍋収納部1aが形成された略有底筒状の炊飯器本体1と、鍋2を加熱する鍋加熱手段5と、炊飯器本体1の開口部1fを覆う蓋本体3とを備え、蓋本体3には、鍋2の上層部を加熱する蓋加熱手段11と、炊飯時に発生する水蒸気を外部に排気する蒸気経路15と、蒸気経路15内に配置され炊飯時に発生する水蒸気を水に相変化させる熱交換器16と、熱交換器16により凝縮された水を炊飯工程の沸騰時とむらし時に過熱水蒸気にする蒸気発生手段部18と、熱交換器16と蒸気発生手段部18をつなぐ凝縮水経路20とを設け、蒸気発生手段部18に、鍋2内に過熱水蒸気を投入する蒸気投入孔22を、蒸気経路15に、炊飯中の鍋2内の圧力低減をはかるための排気孔17をそれぞれ配設したもので、省エネで、おいしいご飯が炊ける炊飯器を提供できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炊飯器に関するもので、特に、水蒸気を利用した炊飯器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の水蒸気を利用した炊飯器として、炊飯器に水貯水部と、その貯水を蒸気にする蒸気発生手段と、前記蒸気発生手段により得られた水蒸気を加熱し、過熱水蒸気にする蒸気加熱手段を備え、前記過熱水蒸気を炊飯の熱源として利用するようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−321377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記特許文献1に開示されたような従来の炊飯器においては、鍋と、前記鍋を加熱する鍋加熱手段と、前記鍋の開口部を覆う蓋と、蒸気発生手段とを備え、前記蒸気発生手段が前記鍋の開口部から前記鍋内に蒸気を投入する構成である。この種の水の沸点以上の水蒸気を活用した炊飯器では、次述のような課題を解決し炊飯することができる。
【0005】
一般の炊飯器では、炊飯の沸騰やそれ以降の炊飯工程で鍋内の水がほぼ無くなり、米の流動性も無くなる。前記工程では、底と蓋の加熱を継続して、米澱粉の糊化を促進させることが、美味しくご飯を炊くために必要であるが、前記工程で、加熱を継続すると鍋底のご飯が焦げたり、ご飯上層部が乾燥してしまう等の課題がある。
【0006】
しかし、水蒸気を活用した炊飯器では、大気圧下の水の沸点(100℃)以上の過熱水蒸気を、鍋の開口部上方から米に供給することにより、まず、蒸気が供給されるがゆえにご飯の乾燥を伴わない。しかも、100℃以下の水蒸気補給では米粒表面に水が付着して含水率の高い水っぽいご飯になるが、100℃以上の水蒸気なので、米澱粉の糊化を促進させる熱エネルギーがあり、炊飯性能を向上させることができるものである。
【0007】
しかしながら、上記の構成にした場合、蒸気発生手段により、水を常温から100℃に沸騰するために、多大な熱エネルギーが必要になる。そのため、炊飯を行う消費電力が、蒸気発生手段がない炊飯と比べ多大になり、省エネルギー化した炊飯器が顧客に提供できない課題がある。
【0008】
また、炊飯においては、鍋内の水を100℃にし沸騰させて調理を行うために、炊飯中に外気へ放出される水蒸気は約100gにもなり、鍋を加熱する鍋加熱手段で使用する熱エネルギーのロスが発生する、という課題があった。
【0009】
本発明は上記従来の課題を解決するもので、炊飯中に発生する水蒸気を水に相変化させる熱交換器を配設し、炊飯中に発生する水蒸気の熱エネルギーを、炊飯工程の沸騰やむらし時に過熱水蒸気に変換して、熱源活用し、省エネルギー化をはかった炊飯器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記従来の課題を解決するために、本発明の炊飯器は、内部に鍋収納部が形成された略有底筒状の炊飯器本体と、前記鍋収納部に収納される鍋と、前記鍋を加熱する鍋加熱手段と、前記炊飯器本体の開口部を覆う蓋本体とを備え、前記蓋本体には、前記鍋の上層部を加熱する蓋加熱手段と、炊飯時に発生する水蒸気を外部に排気する蒸気経路と、前記蒸気経路内に配置され炊飯時に発生する水蒸気を水に相変化させる熱交換器と、前記熱交換器により凝縮された水を炊飯工程の沸騰時とむらし時に過熱水蒸気にする蒸気発生手段部と、前記熱交換器と前記蒸気発生手段部をつなぐ凝縮水経路とを設け、前記蒸気発生手段部に、前記鍋内に過熱水蒸気を投入する蒸気投入孔を、前記蒸気経路に、炊飯中の前記鍋内の圧力低減をはかるための排気孔をそれぞれ配設したもので、炊飯中に発生する水蒸気の熱エネルギーを、炊飯工程の沸騰やむらし時に過熱水蒸気に変換して、熱源活用し、ご飯の美味しさの向上をはかるとともに、省エネルギー化をはかった炊飯器を提供することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の炊飯器によれば、蓋本体に配設した熱交換器により、炊飯中に発生する水蒸気を凝縮し、水に相変化させる。得られた凝縮水は、蓋本体に配設した蒸気発生手段部により、過熱水蒸気に変換し、炊飯中に発生する水蒸気の熱エネルギーを、炊飯のご飯のおいしさに必要な熱エネルギーとして活用する。よって、炊飯する熱エネルギーは、鍋を加熱する加熱手段と水蒸気による熱エネルギーの総和となり、ご飯の美味しさの向上をはかるとともに、水蒸気の熱エネルギーは、炊飯工程の沸騰及びむらし工程時に蓋加熱手段の動作時に、蒸気発生手段部に蓋加熱手段の熱エネルギーで水から過熱水蒸気にするために、炊飯時に余分な消費電力を使用せずに、炊飯を行うことができる。また、更なる効果として、炊飯中に発生する水蒸気を凝縮し水に相変化させるため、炊飯器から外気に放出する水蒸気の量の低減や完全に無くすことができ、炊飯器収納棚の結露防止や火傷などの危険性を配慮し、安全性の向上ができる炊飯器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態1における炊飯器の縦断面図
【図2】同炊飯器の炊飯工程における鍋の温度変化と加熱装置(鍋加熱手段及び蓋加熱手段)の駆動状態を示す図
【図3】本発明の実施の形態2における炊飯器の縦断面図
【図4】本発明の実施の形態3における炊飯器の縦断面図
【図5】同炊飯器の一部切欠き上面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
第1の発明は、内部に鍋収納部が形成された略有底筒状の炊飯器本体と、前記鍋収納部に収納される鍋と、前記鍋を加熱する鍋加熱手段と、前記炊飯器本体の開口部を覆う蓋本体とを備え、前記蓋本体には、前記鍋の上層部を加熱する蓋加熱手段と、炊飯時に発生する水蒸気を外部に排気する蒸気経路と、前記蒸気経路内に配置され炊飯時に発生する水蒸気を水に相変化させる熱交換器と、前記熱交換器により凝縮された水を炊飯工程の沸騰時とむらし時に過熱水蒸気にする蒸気発生手段部と、前記熱交換器と前記蒸気発生手段部をつなぐ凝縮水経路とを設け、前記蒸気発生手段部に、前記鍋内に過熱水蒸気を投入する蒸気投入孔を、前記蒸気経路に、炊飯中の前記鍋内の圧力低減をはかるための排気孔をそれぞれ配設したもので、炊飯中に発生する水蒸気の熱エネルギーを、炊飯工程の沸騰やむらし時に過熱水蒸気に変換して、熱源活用し、ご飯の美味しさの向上をはかるとともに、省エネルギー化をはかった炊飯器を提供することができる。
【0014】
第2の発明は、特に、第1の発明の熱交換器は、水を貯水するための貯水部を有し、炊飯中に発生する水蒸気を、前記貯水部に投入して水に凝縮し、前記貯水と炊飯中に得られ
た凝縮水を過熱水蒸気にし、前記過熱水蒸気を、炊飯時又は/及び保温時の熱源として活用するもので、第1の発明による効果に加え、炊飯中に発生する水蒸気は、外気に放出される前に、水に変化させるので、蒸気が発生しない。よって、火傷などの危険性を配慮し、安全性の向上ができる炊飯器を提供することができる。
【0015】
第3の発明は、特に、第1の発明の熱交換器は、取り込んだ外気で水蒸気を冷気して水に凝縮し、前記凝縮水を、過熱水蒸気にし、前記過熱水蒸気を炊飯時又は/及び保温時の熱源として活用するもので、第1発明による効果に加え、炊飯中に発生する水蒸気を外気へ放出する量を低減することができるため、炊飯器を収納する収納棚に付着する水滴の量を減らし、腐食の防止を行うことができる炊飯器を提供することができる。
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0017】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における炊飯器の縦断面図、図2は、同炊飯器の炊飯工程における鍋の温度変化と加熱装置(鍋加熱手段及び蓋加熱手段)の駆動状態を示す図である。
【0018】
図1に示すように、本実施の形態にかかる炊飯器は、内部に鍋収納部1aが形成された略有底筒状の炊飯器本体1と、鍋収納部1aに収納される鍋2と、炊飯器本体1の開口部1fを開閉可能に炊飯器本体1に取り付けられた蓋本体3と、蓋本体3の内側(鍋2の開口部2aを覆う側)に着脱自在に取り付けられて、鍋2の開口部2aを密閉可能な略円盤状の内蓋4と、鍋2を加熱(誘導加熱)する鍋加熱手段5とを有している。
【0019】
炊飯器本体1の鍋収納部1aは、炊飯器本体1の上部の開口部1fの内周部に嵌合された略環状の上枠1bと、鍋2の形状に対応して有底円筒形状に形成され、上部開口側端部で上枠1bに一体的に接続されたコイルベース1cとで構成されている。
【0020】
コイルベース1cの外周面には、鍋加熱手段5を構成する底内加熱コイル5aと底外加熱コイル5bとが取り付けられている。底内加熱コイル5aは、コイルベース1cを介して鍋2の底部の中央部周囲に対向するように配置されており、底外加熱コイル5bは、コイルベース1cを介して鍋2の底部のコーナー部に対向するように配置されている。
【0021】
コイルベース1cの底部の中央部分には開口1gが設けられている。当該開口1g部分には、鍋2の温度を測定するための鍋温度検知部の一例である鍋温度センサ6が鍋2の底部に当接可能に配置されている。
【0022】
炊飯器本体1内には、各部及び各装置を駆動制御して炊飯を行う制御部7が設置されている。制御部7は、蓋本体3に設けられた操作部8を使用して行った使用者の指示に応じて、各部及び各装置の駆動制御を行う。
【0023】
炊飯器本体1の前壁上部(図1の左側上部)には、蓋本体3のフック9に係合可能なフック1dが設けられている。フック1dと上枠1bとの間にはバネ1eが設けられている。フック1dは、バネ1eにより前方(図1の左側)に付勢されている。
【0024】
蓋本体3には、内蓋温度検知部の一例である内蓋温度センサ10と、前記鍋2の上層部を加熱する蓋加熱手段11と、ヒンジ軸12とが設けられている。内蓋温度センサ10は、内蓋4に当接可能に設けられ、内蓋4の温度を検知可能に構成されている。
【0025】
蓋加熱手段11は、内蓋4を介して鍋2の上部の開口部2aに対向するように蓋本体3内に配置された加熱コイルで構成され、制御部7の制御により、内蓋4を誘導加熱する。ヒンジ軸12は、蓋本体3の開閉軸であり、炊飯器本体1の上枠1bに両端部を回動自在に支持されている。蓋本体3は、ヒンジ軸12の近傍に設けたねじりコイルバネなどの回動バネ(図示せず)により、炊飯器本体1の開口部1fから離れるように回転する方向に付勢されている。
【0026】
内蓋4の一部は、誘導加熱が可能なフェライト系ステンレスなどの金属で構成されている。内蓋4には、鍋2内で発生した蒸気を鍋2外へと排出するために、複数の穴からなる蒸気口4aが設けられている。内蓋4の外周部の鍋2側の面には、蓋本体3が閉状態にあるときに、鍋2と密接する略環状の鍋パッキン13が取り付けられている。鍋パッキン13は、ゴムなどの弾性体で構成されている。
【0027】
また、蓋本体3には、炊飯メニュー、炊飯時間などの各種情報を表示する液晶ディスプレイなどからなる表示部14と、炊飯メニューの選択、炊飯の開始、取り消し、予約などの実行を指示するための操作部8が設けられている。操作部8は、炊飯開始ボタンなどの複数のボタン(図示せず)で構成されている。使用者は、表示部14の表示内容を参照しつつ、操作部8にて炊飯開始を指示することによって、炊飯を行うことができる。炊飯開始の指示を受けた制御部7は、記憶した炊飯プログラムと鍋温度センサ6及び内蓋温度センサ10の検知温度とに基づいて、鍋加熱手段5及び蓋加熱手段11の駆動を制御(動作又は停止)し、炊飯工程を実行する。
【0028】
また、蓋本体3には、鍋2内の水が沸騰して発生した水蒸気を外気に排気するための蒸気経路15を配設している。前記蒸気経路15には、炊飯中に発生した水蒸気を凝縮し、水に相変化させる熱交換器16を配設している。また、蒸気経路15には、鍋2内の炊飯中の圧力低減をはかる排気孔17と、前記熱交換器16により得られた凝縮水を、蒸気発生手段部18に送るための孔19を配設している。
【0029】
次に、凝縮水を蒸気発生手段部18に送るために、熱交換器16と蒸気発生手段部18をつなぐ凝縮水経路20を配設している。熱交換器16により得られた凝縮水は、蒸気経路15に配設した孔19から凝縮水経路20を自重落下して、蒸気発生手段部18に滴下する構成をしているが、上記構成の場合、蓋本体3の高さが高くなり、製品本体の全高が高くなり、コンパクトな炊飯器の実現困難になる。
【0030】
また、蓋本体3の重量も重くなるため、蓋本体3の開閉構成の複雑化や強度確保が困難になる。
【0031】
更に、蒸気経路15に凝縮された水は、炊飯中に全て蒸気発生手段部18に送り、炊飯終了後には、蒸気経路15に凝縮水は残らない構想をしているが、完全に蒸気発生手段部18に送る保証ができない。よって、蒸気経路15に残った水は、水蒸気からの蒸留水であるため無菌であるが、炊飯終了後から次回炊飯までの長期放置状態を想定すると、蒸留水に菌が発生し腐敗の発生やカビの繁殖の課題をぬぐえない。
【0032】
そのため、本実施の形態では、凝縮水経路20にポンプ21を配設して、蒸気経路15内の凝縮水を確実に蒸気発生手段部18に送ることができ、炊飯終了後には、蒸気経路15内は絶乾しており、凝縮水による菌の発生やカビの繁殖を防止することができる。
【0033】
また、蓋本体3の高さは、ポンプ21を配設しない場合と比較したときに低くすることができる。よって、製品の全高も低くなりコンパクト化をはかることができる。更に、蓋本体3の重量も軽量化をはかることができるため、蓋本体3の開閉機構の簡素化や強度確
保することにつながる。
【0034】
次に、図1、図2を参照しつつ、本実施の形態における炊飯器の動作について説明する。図2は、炊飯工程における鍋の温度変化と加熱装置(鍋加熱手段5及び蓋加熱手段11)の駆動状態を示す図である。
【0035】
まず、使用者により、鍋2内に米と水がセットされ、操作部8にて炊飯メニューが選択された後、炊飯開始が指示されると、制御部7の制御により炊飯工程が開始される。ここで、炊飯工程とは、前炊き工程(浸漬工程ともいう)と、昇温工程(炊き上げ工程ともいう)と、沸騰維持工程と、蒸らし工程の主として4つの工程で構成されるものである。
【0036】
これらの工程の間に米の糊化が進められて米が炊飯される。この炊飯工程は、鍋温度センサ6及び内蓋温度センサ10の検知温度と、炊飯メニューに応じた炊飯プログラムとに従って、制御部7が、鍋加熱手段5及び蓋加熱手段11の加熱動作を制御することにより行われる。
【0037】
本実施の形態1においては、米の種類などに応じて複数の炊飯メニューが用意され、当該それぞれの炊飯メニューに応じた炊飯プログラムが制御部7に記憶されている。炊飯工程が開始されると、まず、前炊き工程が開始される。
【0038】
前炊き工程は、水を一定温度に保って米に水を吸収させる工程である。この前炊き工程において、制御部7は、鍋2内の水の温度が米の糊化が始まる温度(約60℃)以上にならないように、鍋2の温度を、鍋温度センサ6又は内蓋温度センサ10の検知温度に基づいて鍋加熱手段5及び蓋加熱手段11を制御する。これにより、米の吸水が促進される。
【0039】
前炊き工程の開始から予め設定された時間経過すると、昇温工程に移行する。昇温工程は、鍋2を鍋加熱手段5及び蓋加熱手段11により一気に加熱して、鍋2内の水を沸騰状態(約100℃)にする工程である。この昇温工程において、制御部7は、鍋2を急速に加熟して鍋2内の水を沸騰状態にするように、鍋加熱手段5及び蓋加熱手段11の駆動を制御する。
【0040】
前記昇温工程の実施により、鍋温度センサ6による検知温度が約100℃になると、沸騰維持工程に移行する。沸騰維持工程は、米の澱粉を糊化させて、糊化度を約60%程度まで引き上げる工程である。この沸騰維持工程において、制御部7は、鍋2内の水の沸騰状態を維持するように鍋加熱手段5及び蓋加熱手段11を制御する。より具体的には、制御部7は、鍋加熱手段5及び蓋加熱手段11の駆動、駆動停止を一定時間間隔で繰り返すデューティー制御を行い、鍋2を間欠加熱する。
【0041】
この昇温工程においては、連続的に水を沸騰させるため、約100℃の水蒸気が大量に発生する。当該発生した水蒸気で鍋2内が充満されると、余分な水蒸気は、内蓋4の蒸気口4aを通過して蒸気経路15に流入する。蒸気経路15内に流入した水蒸気は、熱交換器16により凝縮して水へと相変化する。
【0042】
この時、熱交換器16の交換率が高いデバイスであれば、炊飯の沸騰維持の工程で、約80gの凝縮水が得られ、凝縮水経路20の経路中にポンプ21を配設しているため、凝縮水全てを蒸気発生手段部18に送り込むことができる。また、蒸気経路15に配設した鍋2内の炊飯中の圧力低減をはかる排気孔17から蒸気が漏れることがないため、蒸気レスの炊飯器の実現にもつながる。しかし、前記熱交換器16の交換率が低いデバイスであれば、炊飯の沸騰維持の工程での凝縮水の量は、約10〜20gであり、残りの約60gの水蒸気は、蒸気経路15に配設した排気孔17から漏れ、蒸気レスの炊飯器の実現が不
可能となる。
【0043】
ここで、過熱水蒸気の発生について説明する。
【0044】
炊飯の沸騰維持の工程及び蒸らしの工程においては、ご飯に対して全面から熱量を与えるのが良く、鍋加熱手段5と蓋加熱手段11により、鍋2と内蓋4を加熱して、ご飯の加熱を維持し続けて、日本古来の竈炊きのような調理方法にすることが、ご飯の糊化を促進させて、甘みのある美味しいご飯に炊き上げることができるわけだが、ご飯の加熱を維持し続けると、鍋2とご飯の接触している部分のご飯は焦げて食べるところが少なくなってしまっていた。
【0045】
しかし、本実施の形態によれば、蓋加熱手段11により、内蓋4と蒸気発生手段部18を加熱し、凝縮水経路20のポンプ21により送り込まれた凝縮水を過熱水蒸気に変化させてから、過熱水蒸気を内蓋4に配設した蒸気投入孔22から鍋2内に炊飯の沸騰維持の工程及び蒸らしの工程時に投入することで、ご飯を焦げさせずにおいしく炊くことができる。
【0046】
上記のような構成にすることで、従来の炊飯の沸騰維持工程及び蒸らし工程時に加熱していた蓋加熱手段11の加熱で、過熱水蒸気の発生ができるため、省エネルギー化をはかる過熱水蒸気利用炊飯器の実現が可能となる。
【0047】
また、過熱水蒸気の原資の水を、顧客で準備する必要もなく、炊飯終了後には、蒸気経路15の内部には、凝縮水も残っていないため、メンテレスでの過熱水蒸気発生が実現できる。
【0048】
ここで、熱交換器16の交換率の高いデバイスであれば、凝縮量を約80g得ることができ、炊飯中に熱源と使用する過熱水蒸気の量を、炊飯各工程で調整ができて、ご飯の炊き上がりを固めにしたりやわらかめにすることができる。また、過熱水蒸気の温度についても、130℃〜300℃でご飯の硬さに応じて、温度調整することができる。
【0049】
(実施の形態2)
図3は、本発明の実施の形態2にかかる炊飯器の縦断面図を示している。なお、上記実施の形態1における炊飯器と同一部分には、同一符号を付してその説明を省略する。
【0050】
本実施の形態の炊飯器の基本構成は、上記実施の形態1における炊飯器のそれと同様なので、その部分の説明は省略する。
【0051】
本実施の形態における炊飯器の蓋本体3は、蓋本体3の上面部に、貯水部23を配設し、前記貯水部23の内部に、水をいれるようにしたものである。貯水部23は、蓋本体3と着脱可能な構成として、炊飯を開始する前に、顧客が、貯水部23に水をいれる構成としている。
【0052】
鍋2内の水が沸騰し、発生した水蒸気は、蒸気経路15と蒸気経路B24まで通過し、次に、蓋本体3の前記貯水部23の収納部に配設した蒸気孔A25と前記貯水部23の底部に配設した蒸気孔B26を通過し、貯水部23の水の中に投入される。
【0053】
蒸気経路B24には、電磁弁27を配設し、炊飯工程の沸騰維持工程が開始するまで、電磁弁27を閉じており、貯水部23に貯めている水を鍋2内へ滴下するのを防止している。
【0054】
そして、炊飯工程の沸騰維持工程が開始すると、前記電磁弁27を開き、水蒸気が貯水部23内に投入される構成としている。しかし、炊飯の量によって、沸騰維持工程において、常に水蒸気が発生していないために、電磁弁27は、水蒸気発生有無のタイミングに合わして、水蒸気が発生している時は、弁を開き、水蒸気が発生していない時は、弁を閉じるといった動作が必要になる。また、そのような構成をとったとしても、鍋2内に滴下する可能性があるが、蒸気経路B24をU字管の経路形状にすることで、鍋2内の滴下を防止することができる。
【0055】
しかし、U字管の経路形状にすると、残水で腐敗の恐れや異臭発生の懸念があるため、前記U字管の経路は、金属製の経路にして、炊飯終了後に加熱をして残水を蒸発させるような処置が必要になる。
【0056】
貯水部23内に投入された水蒸気は、凝縮して水へと相変化し、沸騰維持工程終了後の貯水部23の水の温度が沸点の100℃以下であれば、沸騰維持工程で鍋2内から発生する水蒸気をほほ100%凝縮させることができ約80gの水を得ることができる。
【0057】
このような構成にすることで、貯水部23の上面部に配設した排気孔28から蒸気が漏れることがないため、蒸気レスの炊飯器が実現できる。
【0058】
以上のような現象で、炊飯開始時に貯水部23内に貯められた水は、沸騰維持工程終了時にはお湯に変化している。
【0059】
貯水部23内のお湯は、蓋本体3の上面部に配設した貯水部23収納部の凝縮水排出孔A29と貯水部23の底部に配設した凝縮水排出孔30から凝縮水経路20に排出される。その際、貯水部23のお湯を、凝縮水経路20に排出する量は、ポンプ21により、経路を開放する時間で調整ができる。凝縮水経路20に排出されたお湯は、蒸気発生手段部18に運ばれ、過熱水蒸気を発生し、内蓋4の蒸気投入孔22から鍋2内に投入されることになる。過熱水蒸気の炊飯に対する効果は、実施の形態1と同様であるので説明は省略する。
【0060】
上記のような構成の蓋本体3の構成をとることで、蒸気発生手段部18に運ばれるのはお湯であるため、実施の形態1における炊飯器の構成と比較すると、蒸気発生手段部18で、過熱水蒸気にするために蒸気発生手段部18を加熱する蓋加熱手段11の仕事量は少なくて済み、鍋2内で炊飯中に発生する水蒸気の多大な熱量を、過熱水蒸気にするためのエネルギーに変えることができ、省エネルギー化をはかった過熱水蒸気炊飯器を実現することができる。
【0061】
本実施の形態における炊飯器の過熱水蒸気の量は、凝縮水経路20に配設したポンプ21により調整可能であるのと同時に、炊飯中に発生した多大な水蒸気の熱エネルギーを利用していた、上記実施の形態1における炊飯器の構成と比較し、容易に過熱水蒸気の温度の昇温も可能であり、200℃〜300℃の多大な熱量の過熱水蒸気でご飯を炊き上げることが可能となる。
【0062】
(実施の形態3)
図4は、本発明の実施の形態3にかかる炊飯器の縦断面図、図5は、同炊飯器の一部切欠き上面図である。なお、上記実施の形態における炊飯器と同一部分には、同一符号を付してその説明を省略する。
【0063】
本実施の形態の炊飯器の基本構成は、上記実施の形態1における炊飯器のそれと同様なので、その部分の説明は省略する。
【0064】
本実施の形態における炊飯器の蓋本体3の構成は、熱交換器の1例の構成である。
【0065】
図4、5において、本実施の形態における炊飯器は、蒸気経路15内に、アルミニウム等の金属製のヒートシンク31と、前記ヒートシンク31の近傍に配されヒートシンク31に風を送る送風機32を備え、さらに、送風機32の吸気部で、外気を取り入れる吸気孔33を、蓋本体3の外面部に配設したものである。
【0066】
鍋2内から発生した水蒸気は、内蓋4に配設した蒸気口4aを通過して、蒸気経路15内に充満する。
【0067】
送風機32によって吸気孔33から取込まれた空気(外気)は、日本の四季を考慮しても−5℃〜40℃である。また、前記ヒートシンク31には、熱容量があるため、炊飯で鍋2内から発生した水蒸気は、ヒートシンク31の温度が、蒸気経路15内を通過する水蒸気の温度以下の場合、ヒートシンク31の表面部で凝縮し、水滴となり付着していく。前記ヒートシンク31の温度を、蒸気経路15内を通過する水蒸気温度より常に低くするために、送風機32を配設していることになる。
【0068】
上記のような構成で、蒸気経路15を通過する水蒸気を、ヒートシンク31の熱容量と送風機32により吸気された空気で、水蒸気が凝縮し、蒸留水を生成できることになり、凝縮できなかった水蒸気は、蒸気経路15に配設した排気孔17から外気へ放出されることとなる。蒸気経路15内で生成された凝縮水を、過熱水蒸気に変化させ、ご飯をおいしく炊く機能については、上記実施の形態1と実施の形態2における炊飯器と同様の内容であるので説明は省略する。
【0069】
上記のような蓋本体3の構成にすることで、外気に放出される水蒸気の量は、熱交換器が存在しない構成と比較し、少なくすることができるので、炊飯器を収納する収納棚への結露を防止することができ、腐敗の進行を妨げることができる。
【0070】
また、水蒸気の絶対量の低減と送風機32により、水蒸気の排出温度を低下させ、安全性を配慮した炊飯器の提供もできるものである。なお、熱交換器の技術手段には、実施形態2及び3の例を述べたが、本発明の効果は、炊飯中に発生する水蒸気を、過熱水蒸気に変換し、省エネルギー化及び美味しくご飯を炊くためのものであり、発生水蒸気を凝縮する手段は、上記実施の形態に記載されたものに限られるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0071】
以上のように、本発明にかかる炊飯器は、炊飯中に発生する鍋内の水蒸気を、熱交換器で水に相変化させ、その相変化させた水を加熱水蒸気にして炊飯と保温の熱源活用することにより、少ないエネルギーで、美味しいご飯が炊けるもので、家庭用、業務用の各種炊飯器に適用できるものである。
【符号の説明】
【0072】
1 炊飯器本体
1a 鍋収納部
1f 開口部
2 鍋
3 蓋本体
5 鍋加熱手段
11 蓋加熱手段
15 蒸気経路
16 熱交換器
17 排気孔
18 蒸気発生手段部
20 凝縮水経路
22 蒸気投入孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に鍋収納部が形成された略有底筒状の炊飯器本体と、前記鍋収納部に収納される鍋と、前記鍋を加熱する鍋加熱手段と、前記炊飯器本体の開口部を覆う蓋本体とを備え、前記蓋本体には、前記鍋の上層部を加熱する蓋加熱手段と、炊飯時に発生する水蒸気を外部に排気する蒸気経路と、前記蒸気経路内に配置され炊飯時に発生する水蒸気を水に相変化させる熱交換器と、前記熱交換器により凝縮された水を炊飯の沸騰時とむらし時に過熱水蒸気にする蒸気発生手段部と、前記熱交換器と前記蒸気発生手段部をつなぐ凝縮水経路とを設け、前記蒸気発生手段部に、前記鍋内に過熱水蒸気を投入する蒸気投入孔を、前記蒸気経路に、炊飯中の前記鍋内の圧力低減をはかるための排気孔をそれぞれ配設した炊飯器。
【請求項2】
熱交換器は、水を貯水するための貯水部を有し、炊飯中に発生する水蒸気を、前記貯水部に投入して水に凝縮し、前記貯水と炊飯中に得られた凝縮水を過熱水蒸気にし、前記過熱水蒸気を、炊飯時又は/及び保温時の熱源として活用することを特徴とした請求項1に記載の炊飯器。
【請求項3】
熱交換器は、取り込んだ外気で水蒸気を冷気して水に凝縮し、前記凝縮水を、過熱水蒸気にし、前記過熱水蒸気を炊飯時又は/及び保温時の熱源として活用することを特徴とした請求項1に記載の炊飯器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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