説明

炊飯器

【課題】蒸気温度の安定化と蒸気温度を更に高温にするためにご飯表面が乾燥するという問題があったため、蒸気過熱手段と安全装置を設けることが考えられたが、蒸気過熱手段の温度上昇と安全装置の温度上昇の差が大きく、通常使用や連続使用においては安全装置の温度余裕を十分確保し、異常状態においては安全装置が動作する、という温度設定が困難であった。
【解決手段】蒸気過熱手段15の安全性確保のために温度検知方式の安全装置45a、45bを設け、さらに安全装置と蒸気過熱手段に一定の隙間Lを設けることで、通常使用、連続使用においても安全装置の温度余裕を十分に確保でき、異常状態では安全装置が動作する構成とすることで、蒸気過熱手段の安全性を確保することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は過熱蒸気を用いた炊飯器、特に炊飯性能の向上に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的な家庭用の炊飯器においては、鍋底部に配置した、鍋内の米と水を加熱するための鍋加熱手段が主な加熱手段である。ご飯をおいしく炊くためには、米の澱粉を十分に糊化させることが重要である。特に、追い炊き時に高温で米を加熱することで澱粉の糊化が進み、ご飯の甘み及び香りが増す。しかし、追い炊き時には水がほぼ無くなった状態であるため、鍋加熱手段による追い炊き加熱を継続すると、鍋底付近のご飯が焦げてしまうため、加熱を弱めざるを得なかった。
【0003】
例えば、図8に示すように、鍋加熱手段による加熱に加えて、鍋上方から高温の蒸気を鍋内に噴射し米飯及び水の加熱を行う炊飯器がある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
図8は、特許文献1に記載された従来の炊飯器を示すものである。図8において、51は炊飯器本体、52は炊飯器本体51に着脱自在に内装される鍋、53は鍋52の上面を開閉自在に覆う蓋である。54は鍋を加熱する鍋加熱手段である。55は本体51に内装される蒸気発生手段であり、水タンク56と水タンク加熱手段57とを有する。水タンク56内の水は水タンク加熱手段57によって加熱され、沸騰する。水タンク56で発生した水蒸気は、蒸気管58を通って蒸気孔59から鍋52に供給される。以上のように、上層のご飯を乾燥させることなく、鍋52内に温度の高い蒸気を炊きあげ終了後すぐに供給して糊化を促進させるので、鍋内全体にわたってご飯の食味を向上することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−144308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記従来の炊飯器の構成では、ご飯の糊化を促進させるために、水タンク及び水タンク加熱手段を鍋と別個に設け、水タンクで発生させた蒸気を100℃以上に過熱し鍋内に投入する炊飯器は、蒸気温度の安定化と蒸気温度を更に高温にするために温度を上げ過ぎるとご飯表面が乾燥するという問題があったため、蒸気過熱手段を設けることが考えられる。この蒸気過熱手段の安全性を確保するため、温度検知方式の安全装置を更に設けることが考えられるが、炊飯には多くのメニューがあり、メニューに応じた蒸気温度を設定してあるため、蒸気過熱手段の温度バラツキが大きく、また連続炊飯などをされた場合は蒸気過熱手段の温度が高いまま2回目以降の炊飯を実施される為、蒸気過熱手段の温度と安全装置の温度の差のバラツキが更に大きくなってしまい、通常使用や連続使用においては安全装置の温度余裕を十分確保し、異常状態においては安全装置が動作する、という温度設定が困難であった。
【0007】
本発明は、蒸気加熱手段の安全性確保のために温度検知方式の安全装置を設け、さらに安全装置と蒸気過熱手段に一定の隙間を設けることで、通常使用、連続使用においても安全装置の温度余裕を十分に確保でき、異常状態では安全装置が動作する構成とすることで、蒸気過熱手段の安全性を確保する炊飯器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記従来の課題を解決するために、本発明の炊飯器は、上面が開口した炊飯器本体と、前記炊飯器本体内に着脱自在に収納される鍋と、前記炊飯器本体を開閉自在に覆う蓋と、前記鍋を加熱する加熱手段と、蒸気を発生する蒸気発生手段と、前記蒸気発生手段から発生した蒸気の温度を上昇させる蒸気過熱手段と、前記蒸気過熱手段の異常温度上昇防止用の安全装置を有し、前記安全装置は前記蒸気過熱手段と一定の隙間を設けて設置したものである。
【0009】
これによって、安全装置が蒸気過熱手段の雰囲気温度を検知している為、様々なメニューの通常使用時の蒸気過熱手段温度のバラツキに直接影響されず、バラツキの低減を図れ、通常使用では安全装置は動作せず、異常加熱状態になった時のみ安全装置が動作する温度点を設定することができ、蒸気過熱手段の安全性を確保することが出来る。
【発明の効果】
【0010】
本発明の炊飯器は、蒸気過熱手段と安全装置が一定の距離を確保して設置されているため、通常使用における多くのメニューによる蒸気過熱手段の温度を直接検知せず、蒸気過熱手段の雰囲気温度を検知している為、安全装置の温度を安定化することができると共に、連続で使用された場合でも、蒸気過熱手段の温度よりも雰囲気の温度差の方が小さくなるため、通常使用での安全装置の温度は安定化することができ、安全装置の異常状態での動作温度と通常異常状態での検知温度と差を十分確保することで、異常状態で安全装置の動作精度を高める事ができ、蒸気過熱手段の安全性を確保しつつより温度の高い過熱蒸気を炊飯で使用することができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態1における炊飯器の略断面図
【図2】本発明の実施の形態1における炊飯器の上面図
【図3】本発明の実施の形態1における炊飯器の要部斜視図
【図4】本発明の実施の形態1における炊飯器の要部断面図
【図5】本発明の実施の形態1における炊飯器の要部断面図
【図6】本発明の実施の形態1における炊飯器の要部断面図
【図7】本発明の実施の形態1における炊飯器の特性図
【図8】従来の炊飯器を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
第1の発明は、上面が開口した炊飯器本体と、前記炊飯器本体内に着脱自在に収納される鍋と、前記炊飯器本体を開閉自在に覆う蓋と、前記鍋を加熱する加熱手段と、蒸気を発生する蒸気発生手段と、前記蒸気発生手段から発生した蒸気の温度を上昇させる蒸気過熱手段と、前記蒸気過熱手段の異常温度上昇防止用の安全装置を有し、前記安全装置は前記蒸気過熱手段と一定の隙間を設けて設置することにより、安全装置は蒸気過熱手段の温度を直接検知するのではなく、蒸気過熱手段周囲の雰囲気温度を検知する事となり、通常使用及び連続使用など様々な使用状態によって、安全装置の検知温度のバラツキを低減することが出来るだけでなく、蒸気過熱手段と安全装置の接触バラツキをもなくすことができる。
【0013】
第2の発明は、上面が開口した炊飯器本体と、前記炊飯器本体内に着脱自在に収納される鍋と、前記炊飯器本体を開閉自在に覆う蓋と、前記鍋を加熱する加熱手段と、蒸気を発生する蒸気発生手段と、前記蒸気発生手段から発生した蒸気の温度を上昇させる蒸気過熱手段と、前記蒸気過熱手段を固定する蒸気過熱手段固定台と、前記蒸気過熱手段の異常温度上昇防止用の安全装置を有し、前記安全装置は前記蒸気過熱手段と一定の隙間を設けて前記蒸気過熱手段固定台に設置することにより、蒸気過熱手段と安全装置との間に蒸気過熱手段固定台が存在することになり、通常使用及び連続使用などの様々な使用状態による
安全装置の温度を安定化することで、通常使用と異常常態との区別が容易にできる。
【0014】
第3の発明は、特に第1または第2の発明の安全装置を複数個設置することにより、1つの安全装置が故障しても他の安全装置が代替することとなり、より安全性を確保することができる。
【0015】
第4の発明は、特に第1〜3のいずれか1つの発明の蒸気過熱手段と安全装置を断熱部材で覆ったことにより、蒸気過熱手段の周囲温度が外気温の影響をうけにくくなり、外気温に影響されることなく、安全装置の検知温度を安定化することができる。
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0017】
(実施の形態1)
図1又は図2を用いて、本発明の実施形態にかかる炊飯器の全体構成について説明する。図1は、本発明の実施形態にかかる炊飯器の模式断面図である。図2は、図1の炊飯器の蓋の一部を切り欠いた状態を模式的に示す上面図である。
【0018】
図1に示すように、本実施形態にかかる炊飯器は、内部に鍋収納部1aが形成された略有底筒状の炊飯器本体1と、鍋収納部1aに収納され、米と水が入れられる鍋2とを備えている。炊飯器本体1の上部には、炊飯器本体1の上部開口部を開閉可能な中空構造の蓋3が取り付けられている。蓋3の内側(鍋2の開口部を覆う側)には、鍋2の上部開口部を密閉可能な略円盤状の内蓋(加熱板ともいう)4が着脱可能に取り付けられている。
【0019】
炊飯器本体1の鍋収納部1aは、上枠1bとコイルベース1cとで構成されている。上枠1bは、収納された鍋2の側壁に対して所定の隙間が空くように配置される筒状部分1baと、筒状部分1baの上部から外方に突出し炊飯器本体1の上部開口部の内周部に嵌合するフランジ部1bbとを備えている。また、フランジ部1bbには、水タンク5を収納する水タンク収納部1bcが形成されている。水タンク5は、蒸気を生成するための水を入れる有底筒状の容器である。水タンク収納部1bcの外周面には、水タンク5を加熱(誘導加熱)する水タンク加熱装置の一例である水タンク加熱コイル6が取り付けられている。なお、水タンク加熱コイル6に代えて、ヒータにより水タンク5を加熱するように構成されてもよい。水タンク加熱コイル6が水タンク5を加熱することにより、水タンク5内の水が沸騰して、約100℃の蒸気が生成される。また、水タンク収納部1bcの側部には開口が設けられている。当該開口部分には、水タンク5の温度を測定するための水タンク温度センサ7が、水タンク収納部1bcに収納された水タンク5の側部に当接可能に配置されている。
【0020】
コイルベース1cは、鍋2の下部の形状に対応して有底筒状に形成され、その上部が上枠1bの筒状部分1baの下端部に取り付けられている。コイルベース1cの外周面には、鍋2を加熱(誘導加熱)する鍋加熱装置の一例である鍋底加熱ユニット8が取り付けられている。鍋底加熱ユニット8は、底内加熱コイル8aと底外加熱コイル8bとで構成されている。底内加熱コイル8aは、コイルベース1cを介して鍋2の底部の中央部周囲に対向するように配置されている。底外加熱コイル8bは、コイルベース1cを介して鍋2の底部のコーナー部に対向するように配置されている。
【0021】
コイルベース1cの底部の中央部分には開口が設けられている。当該開口部分には、鍋2の温度を測定するための鍋温度検知部の一例である鍋温度センサ9が、鍋収納部1aに収納された鍋2の底部に当接可能に配置されている。鍋2の温度は鍋2内の被炊飯物の温度と略同じであるので、鍋温度センサ9が鍋2の温度を検知することで、鍋2内の被炊飯
物の温度を知ることができる。
【0022】
蓋3は、蓋3の外郭を構成する上外郭部材3aと下外郭部材3bとを備えている。また、蓋3は、ヒンジ軸3Aを備えている。ヒンジ軸3Aは、蓋3の開閉軸であり、炊飯器本体1の上枠1bに両端部を回動自在に固定されている。蓋3には、その中央部付近を蓋3の厚み方向に貫通するように貫通穴3cが設けられ、当該貫通穴3cに蒸気筒10が着脱可能に取り付けられている。蒸気筒10の上壁及び底壁には、鍋2内の余分な蒸気を炊飯器本体1の外部に排出できるように、蒸気逃がし孔10a,10bが設けられている。蓋3の内蓋4側の貫通穴3cの周囲には、環状のパッキン11が取り付けられている。パッキン11は、内蓋4が蓋3に取り付けられたときに、内蓋4に設けられた蒸気逃がし孔4aの周囲に密着するように設けられている。
【0023】
また、蓋3には、内蓋4の温度を検知する内蓋温度検知部の一例である内蓋温度センサ12が取り付けられている。蓋3の底壁となる下外郭部材3bの内面(蓋内側)には、内蓋4を誘導加熱する内蓋加熱装置の一例である内蓋加熱コイル13が取り付けられている。
【0024】
内蓋4は、誘導加熱が可能なステンレスなどの磁性体金属で構成されている。内蓋4の外周部の鍋2側の面には、環状のパッキン14が取り付けられている。パッキン14は、蓋3が閉状態にあるときに鍋2のフランジ部に密着するように設けられている。
【0025】
また、蓋3の内部には、鍋2内に100℃を超える過熱蒸気を投入するための蒸気加熱手段である過熱蒸気発生装置15が設けられている。過熱蒸気発生装置15の取付構造については、後で詳細に説明する。過熱蒸気発生装置15は、水タンク5で発生した約100℃の蒸気を加熱して過熱蒸気を生成可能に構成されている。過熱蒸気発生装置15には、蒸気供給管16と過熱蒸気投入管17とが接続されている。また、過熱蒸気発生装置15には、過熱蒸気発生装置15で生成された過熱蒸気の温度を検知する過熱蒸気温度検知部の一例である過熱蒸気温度センサ18が当接している。
【0026】
蒸気供給管16は、蓋3が閉状態にあるときに水タンク5内と連通し、水タンク5内で発生した蒸気を過熱蒸気発生装置15へ導くように設けられている。蒸気供給管16の水タンク5側の端部には、環状のパッキン19が取り付けられている。パッキン19は、蓋3が閉状態にあるときに水タンク5のフランジ部に密着するように設けられている。
【0027】
過熱蒸気投入管17は、蓋3が閉状態にあるときに内蓋4に設けられた過熱蒸気投入孔4bを通じて鍋2内と連通し、過熱蒸気発生装置15で生成された過熱蒸気を鍋2内へ投入するように設けられている。過熱蒸気投入管17の鍋2側の端部には、環状のパッキン20が取り付けられている。パッキン20は、蓋3が閉状態にあるときに内蓋4の過熱蒸気供給孔4bの周囲に密着するように設けられている。
【0028】
また、蓋3には、炊飯コース、炊飯時間などの各種情報を表示する液晶ディスプレイなどの表示部21と、白米コースや玄米コース、白米(柔らかめ)コースなどの複数の炊飯コースの中から特定の炊飯コースを選択可能な炊飯コース選択部の一例である操作部22とが設けられている。操作部22は、炊飯コースの選択の他、炊飯の開始、取り消し、予約などの実行を指示できるように、炊飯開始ボタンなどの複数のボタンで構成されている。使用者は、表示部21の表示内容を参照しつつ、操作部22にて特定の炊飯コースを選択し、炊飯開始を指示することができる。
【0029】
炊飯器本体1の内部には、炊飯制御部23が搭載されている。炊飯制御部23は、米を炊飯するための炊飯シーケンスを複数記憶する記憶部を備えている。ここで、「炊飯シー
ケンス」とは、予熱、昇温、沸騰維持、蒸らしの主として4つの工程からなり、各工程を順に行うにあたって、各工程において通電時間、加熱温度、加熱時間、加熱出力等が予め決められている炊飯の手順をいう。各炊飯シーケンスは、複数の炊飯コースのいずれかにそれぞれ対応している。炊飯制御部23は、操作部22にて選択された炊飯コース及び各温度センサ7,9,及び12の検知温度に基づいて、各部及び各装置の駆動を制御し、炊飯工程を実行する。また、炊飯制御部23は、操作部22にて選択された炊飯コース及び過熱蒸気温度センサ18の検知温度に基づいて、過熱蒸気を過熱蒸気発生装置15に生成させる。
【0030】
次に、図3〜図6を参照しつつ、過熱蒸気発生装置15の取付構造及び内部構造について、更に詳細に説明する。図3は、過熱蒸気発生装置15に蒸気供給管16及び過熱蒸気投入管17が取り付けられた状態を示す斜視図であり、図4は、その略断面図である。図5と図6は、過熱蒸気発生装置15に安全装置45a、45bが取り付けられた状態を示す断面図である。
【0031】
図3及び図4に示すように、過熱蒸気発生装置15は、例えばゴムなどの弾性を有する断熱材31,32を介して蒸気供給管16、過熱蒸気投入管17と接続されている。この構成により、過熱蒸気発生装置15内で発生した熱が蒸気供給管16及び過熱蒸気投入管17に伝達されないようになっている。
【0032】
過熱蒸気発生装置15は、円筒形のケース41と、棒状のヒータ42とを備えている。ヒータ42は、ケース41内においてケース41の中心軸A1と同軸に配置されている。過熱蒸気発生装置15は、ケース41内に供給された蒸気をヒータ42により加熱して、過熱蒸気を生成する。
【0033】
ヒータ42は、発熱部42Bの発熱範囲42BBがケース41内に配置されるようにケース41の一方の側壁41aを貫通し、先端部42Aがケース41の他方の側壁41bと接触(嵌合)するように設けられている。ケース41には、蒸気供給管16を通じて供給される蒸気を取り込む蒸気取込口41cと、過熱蒸気を過熱蒸気投入管17へ排出する過熱蒸気排出口41dとが設けられている。蒸気取込口41cと過熱蒸気排出口41dとは、ヒータ42の発熱部42B近傍に配置されている。より具体的には、蒸気取込口41cと過熱蒸気排出口41dとは、ヒータ42の発熱部42Bと対向するように配置されている。また、ヒータ42の発熱部42Bの周囲には、金属板などで構成されるフィン43が螺旋状に設けられている。
【0034】
図3、4、5に示すように、ケース41の外周面には、係合部の一例である係合爪44が形成されている。係合爪44は、蒸気過熱手段固定台である固定部材33に設けられた被係合部の一例である係合孔33aに係合している。固定部材33は、平面視においてケース41の略全体を覆うように形成された金属製(好ましくは無機物)の板状部材である。固定部材33は、蓋3の下外郭部材3bに立設された複数のボス3dにネジなどの締結部材34により固定されている。すなわち、過熱蒸気発生装置15は、上外郭部材3aと下外郭部材3bとに直接接しないように固定部材33を介して蓋3の下外郭部材3bに取り付けられている。また、過熱蒸気発生装置15は、係合爪44でのみ固定部材33と接触し、固定部材33により懸架されている。
【0035】
また過熱蒸気発生装置15には異常温度上昇防止用の安全装置45aを設けている。この安全装置45aはケース41の温度を検知しながら、異常温度上昇を防止しているが、直接ケース41に接触させるのではなく、一定の隙間を確保した状態で設置している。例えば、本構成ではケース41を覆う固定部材33に接するように安全装置45aを設けるが、安全装置45aの設置部の固定部材33はケース41とは隙間Lを設け設置する。
【0036】
また、この安全装置45aは製品異常時の安全性確保のための重要部品である為、万が一故障した場合の製品の安全性確保のために、第2の安全装置45bも設置しているのである。この第2の安全装置45bも第1の安全装置45aと同様に設置部の固定部材33とケース41の間には一定の隙間Lを確保している。
【0037】
また、安全装置45a、45bの温度検知が環境温度に影響されないようにするため、過熱蒸気発生装置15と安全装置45a、45b共に空気よりも熱伝導率が低いシート状(好ましくは無機物性)の断熱部材46、例えばシリカ性断熱部材にて過熱蒸気発生装置用断熱材に覆われた状態にしている。
【0038】
本実施形態によれば、過熱蒸気発生装置15と蒸気供給管16及び前記過熱蒸気発生装置15と過熱蒸気投入管17とが弾性を有する断熱材31,32を介して接続されているので、過熱蒸気発生装置15で発生した熱が蒸気供給管16及び過熱蒸気投入管17の全体に拡散することを抑えることができる。これは、過熱蒸気発生装置15で発生した熱がと蒸気供給管16及び過熱蒸気投入管17へ熱伝達されるのを断熱材31,32で低減している為である。
【0039】
また、過熱蒸気発生装置15が上外郭部材3bと下外郭部材3bとに直接接しないように固定部材33を介して下外郭部材3bに取り付けられているので、過熱蒸気発生装置15で発生した熱の一部を固定部材33で拡散して、下外郭部材3bに伝達される熱量を減少させることができる。従って、蓋3の外郭部材の変形等を抑えて、過熱蒸気の温度を一層高く(例えば200℃以上に)することができる。
【0040】
また、本実施形態によれば、過熱蒸気発生装置15が係合爪44でのみ固定部材33と接触するようにしているので、固定部材33と過熱蒸気発生装置15との接触面積を減らすことができる。また、固定部材33により過熱蒸気発生装置15を懸架するように構成しているので、ケース41の外周面からも熱を拡散させることができる。これにより、固定部材33が過剰に温度上昇することを抑え、蓋3の外郭部材の変形等を一層抑えることができる。
【0041】
また、本実施形態によれば、平面視においてケース41の略全体を覆うように固定部材33を形成しているので、過熱蒸気発生装置15で発生した熱が上外郭部材3aに伝達されるのを抑える遮蔽板として固定部材33を機能させることができる。これにより、炊飯中であっても使用者が触れることができる上外郭部材3aが高温になることを抑えることができる。従って、火傷の危険性を一層抑えることができる。
【0042】
また、本実施形態によれば、100℃の蒸気の生成を過熱蒸気発生装置15とは別の装置で行うようにしているので、ヒータ42の出力を低くすることができ、過熱蒸気発生装置15の小型化を実現することができる。また、過熱蒸気発生装置15のケース41内には、水を供給する必要がないので、ケース41内に水垢が付着して熱効率が低下することも抑えることができる。
【0043】
また、本実施形態によれば、ヒータ42の先端部42Aがケース41の側壁41bと接触するように設けているので、ヒータ42の熱がケース41に直接伝達され、ケース41内の蒸気を、ヒータ42とケース41の内面の両方から効率良く加熱することができる。これにより、過熱蒸気の温度を一層高くするとともに装置の小型化を実現することができる。なお、ヒータ42の先端部42Aとケース41の側壁41bとを接触させた場合、それらを接触させない場合と比べて、例えば70〜80℃程度、ケース41の温度を上昇させることができる。
【0044】
なお、ヒータ42とケース41とは、互いに形状が異なるので、熱が冷えたときの熱応力による膨張又は収縮より、ヒータ42とケース41との接続部分が壊れることが起こり得る。このため、ヒータ42の先端部42Aは、ケース41の側壁41bに一体的に固定するのではなく嵌合又は当接させることが好ましい。これにより、ヒータ42とケース41との接続部分が壊れることを抑えることができる。
【0045】
また、本実施形態によれば、蒸気取込口41cがヒータ42の発熱部42Bの近傍に配置されているので、蒸気取込口41cから取り込まれた蒸気と発熱部42Bとの温度差が大きいことによって効率良く熱交換がなされる。これにより、蒸気の温度を素早く上昇させることができ、蒸気の加熱効率を向上させることができる。また、ヒータ42を小型化することも可能になる。
【0046】
また、本実施形態によれば、ヒータ42の周囲にフィン43を螺旋状に設けているので、フィン43に沿って螺旋状に蒸気を移動させることができ、蒸気の移動経路を長くすることができる。また、蒸気は、ヒータ42の熱が伝達されたフィン43からも加熱されることになるので、蒸気と熱源(ヒータ42及びフィン43)との接触面積が大きくなる。従って、ヒータ42の熱を効率良く蒸気に与えることができ、蒸気の加熱効率を一層向上させることができる。また、ヒータ42を小型化することも可能になる。
【0047】
なお、ケース41とフィン43とが接触するように構成した場合、量産時において、特にケース41とフィン43との接触部分に寸法バラツキが生じやすい。この場合、過熱蒸気排出口41dから排出される過熱蒸気の温度にバラツキが生じる。このため、ケース41とフィン43とは非接触であることが好ましい。但し、ケース41とフィン43との隙間を大きくすると、フィン43に沿って流れずに当該隙間を通じて流れる蒸気の量が多くなり、蒸気の加熱効率が低下する。このため、ケース41とフィン43との隙間は、出来る限り小さく(例えば1.5mm以下に)することが好ましい。
【0048】
また、蒸気に塩化カルシウムや塩化マグネシウムなどの成分が含まれている場合、それらの成分がケース41やフィン43に付着して堆積すると、蒸気が流れ難く(あるいは流れなく)なる。このため、蒸気に触れる部分であるフィン43及びケース41の材質としては、蒸気による酸化、腐蝕、応力腐蝕割れ等が発生しないように、オールステナイト系の高耐食の材質を選定することが好ましい。
【0049】
また、ケース41内で過熱蒸気を生成した場合、ケース41内は高圧(1.02気圧程度)になる。このため、ケース41とヒータ42との接続部分などの各接続部分をシールする部材は、一般に使用されるシリコンやフッ素などのゴム部材ではなく、ニッケル蝋などを用いて蝋付けすることが好ましい。
【0050】
また、安全装置というものは通常使用の場合には動作しない温度で、異常使用になった場合にのみ動作する、という温度に動作温度を設定する必要がある。このため通常使用においては、ある程度の温度余裕を確保し、異常使用時には安全性を確保するために確実に動作する必要があるため、連続炊飯も含めて通常使用時の安全装置45a、45bの最高温度からの温度余裕を確保した動作温度の設定が必要になる。このため通常使用時で安全装置45a、45bの温度バラツキが大きくなると最高温度からの余裕値を確保した状態で動作温度を設定する事になるため、異常使用時に検知が遅れる可能性がある。
【0051】
以上のことより、安全装置45a、45bの温度は通常使用においては検知温度のバラツキが小さいほど、動作温度を低く設定することができ、製品の安全性がより高めることができるのである。
【0052】
本構成は、安全装置45a及び45bはケース41とは一定の隙間Lを設けて設置しているが、これは直接ケース41に接触した状態で設置すると、直接ケース41の温度を検知するため、ケース41の温度勾配が大きい場合、安全装置45a、45bの検知温度の差が大きくなる傾向があり、温度勾配が小さい場合は検知温度が小さくなる。これらによりケース41の温度勾配により、安全装置45a、45bの検知温度がケース41の温度勾配により変化してしまい、検知温度のバラツキが発生してしまう。この温度勾配の差を吸収させる為にも、一定の隙間Lを設け空気層を介して安全装置45a、45bを設置することで、温度勾配の差を吸収している。
【0053】
また、炊飯器は連続使用されることもあり、1回目のケース41温度と2回目以降のケース温度の差も発生する為、直接ケース41の温度を検知してしまうと、安全装置45a、45bの検知温度も差も炊飯回数によって変化が大きくなる。このバラツキも吸収する為に、安全装置45a、45bはケース41との隙間Lを確保しているのである。
【0054】
但し、ケース41と安全装置45a、45bの間に隙間Lを設け、空気層を持つということは、使用される環境温度の影響が発生することになるが、環境温度の影響を軽減させるために、本構成においては、過熱蒸気発生装置15及び安全装置45a、45bとも全体を断熱部材46で覆う構成にしているのである。
【0055】
過熱蒸気発生装置15と安全装置45a、45bすべて断熱部材46で覆う事により、使用環境温度の影響を低減できると共に、ケース41の温度のばらつきも抑える事ができ、より安定した温度検知が可能になるのである。
【0056】
また、この断熱部材46は過熱蒸気発生装置の高温から、上外郭部材3a及び下外郭部材3bを守る働きも行っている。
【0057】
また、過熱蒸気発生装置15は固定部材33に懸架されているので、断熱部材46には過熱蒸気発生装置15の自重がかからない。従って、断熱部材46が過熱蒸気発生装置15の自重により圧縮されて断熱性能が低下するようなことがない。
【0058】
安全装置45a,45bの動作温度を決定する条件は通常使用時においては動作することが無いよう、通常炊飯の安全装置45a,45bの温度から一定の余裕値を確保し、さらに異常動作時において、炊飯器が安全を確保できる状態で動作するよう、動作温度を設定する必要がある。
【0059】
図7においてまず通常炊飯時の過熱蒸気発生装置15の温度を見ると、各炊飯コースのよって過熱蒸気発生装置15の温度は様々であるが、その中でも過熱蒸気発生装置15が最高温度になった場合の安全装置45a,45bの温度から一定の余裕を確保する必要がある。このとき安全装置45a,45bが過熱蒸気発生装置15に接触した状態で設置していると、安全装置45a,45bの温度はA2になり、安全装置45a,45bの動作温度はB2になるが、安全装置45a,45bを過熱蒸気発生装置15に隙間を設けて設置すると、安全装置45a,45bの検知温度はA1となり、動作温度はB1にすることができる。以上より、安全装置45a,45bを過熱蒸気発生装置15から隙間を確保して設置した場合設定温度はB2−B1分低く設定することができる。
【0060】
さらに連続炊飯を実施される場合も考慮に入れると安全装置45a,45bを過熱蒸気発生装置15に直接設置すると検知温度はA4となり、動作温度はB4にする必要があるが、隙間を設けて設置すると検知温度はA3となり、動作温度はB3とすることができる。
【0061】
以上より炊飯器の様々の使われ方を考慮すると、安全装置45a,45bの設定温度はB4あるいはB3に設定する必要がある。
【0062】
次に炊飯器が異常動作をした場合の安全装置45a,45bの温度を見ると動作温度をB4と設定した場合、安全装置の動作温度はT2となり、動作温度をB3とした場合、動作時間はT1となり、安全装置45a,45bはT2−T1分の時間速く動作することができる。異常動作時においては出来る限り速くに安全装置45a,45b動作したほうが、炊飯器の損傷が少なくて済み、安全性が向上する。
【0063】
以上より、安全装置45a,45bは過熱蒸気発生装置15との隙間を設けて設定した方が、安全性が向上するのである。
【0064】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その他種々の態様で実施できる。例えば、前記では、過熱蒸気発生装置15に供給する蒸気を、水タンク5内の水を加熱することにより生成したが、本発明はこれに限定されない。例えば、炊飯中に鍋2内で発生した蒸気を過熱蒸気発生装置15に供給するようにしてもよい。
【0065】
また、前記では、ケース41と下外郭部材3bとの間を空気層としたが、本発明はこれに限定されない。例えば、ケース41と下外郭部材3bとの間に、空気よりも熱伝導率が低いシート状(好ましくは無機物性)の断熱部材、例えばシリカ性断熱部材を設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明にかかる炊飯器は、蓋の外郭部材の変形等を抑えて、過熱蒸気の温度を一層高くすることができるので、家庭用及び業務用炊飯器等として有用である。
【符号の説明】
【0067】
1 炊飯器本体
2 鍋
3 蓋
6 水タンク加熱コイル(蒸気発生装置)
8 鍋底加熱ユニット(加熱手段)
15 過熱蒸気発生装置(蒸気過熱手段)
33 固定部材(蒸気加熱手段固定台)
46 断熱部材







【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面が開口した炊飯器本体と、
前記炊飯器本体内に着脱自在に収納される鍋と、
前記炊飯器本体を開閉自在に覆う蓋と、
前記鍋を加熱する加熱手段と、
蒸気を発生する蒸気発生手段と、
前記蒸気発生手段から発生した蒸気の温度を上昇させる蒸気過熱手段と、
前記蒸気過熱手段の異常温度上昇防止用の安全装置を有し、
前記安全装置は前記蒸気過熱手段と一定の隙間を設けて設置した炊飯器。
【請求項2】
上面が開口した炊飯器本体と、
前記炊飯器本体内に着脱自在に収納される鍋と、
前記炊飯器本体を開閉自在に覆う蓋と、
前記鍋を加熱する加熱手段と、
蒸気を発生する蒸気発生手段と、
前記蒸気発生手段から発生した蒸気の温度を上昇させる蒸気過熱手段と、
前記蒸気過熱手段を固定する蒸気過熱手段固定台と、
前記蒸気過熱手段の異常温度上昇防止用の安全装置を有し、
前記安全装置は前記蒸気過熱手段と一定の隙間を設けて前記蒸気過熱手段固定台に設置した炊飯器。
【請求項3】
安全装置を複数個設置した請求項1または2に記載の炊飯器。
【請求項4】
蒸気過熱手段と安全装置を断熱部材で覆った請求項1〜3のいずれか1項に記載の炊飯器。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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