説明

炊飯器

【課題】内釜からの熱の放散を抑えて高い温度で美味に蒸らし、保温時の加熱も少なく抑えてご飯の乾燥や変色を少なくし、かつ省エネルギーな炊飯器を実現する。
【解決手段】内ケース6aと外ケース6bの間に真空層6hを形成し上部開口部6fと底面6mと底面6mに下部開口部6gとを有する略円筒状の真空容器6を備え、真空容器6を内壁とする本体1を備え、上部開口部6fを介して真空容器6に着脱自在に収納される内釜2を備え、本体1の上面で真空容器6の上端部6dを覆う枠体8を備え、枠体8と真空容器6と本体1を固定する支え具20を備え、支え具20は、枠体8と固定する固定部A20eと、枠体8に真空容器6の底面6mから押さえる支え部20dと、固定部A20eと支え部20dとを連結する支柱部20aと、真空容器6の側面6pを支え支柱部20aを連結する連結部20bと、支え部20dの裏面に本体1を支える固定部B20fとを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内釜から逃げる熱量を抑制し、省エネルギー性を向上させるとともに、ご飯の品質劣化を抑制する炊飯器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の炊飯器では、炊飯時に、ヒータ加熱や誘導加熱によって内釜を加熱して炊飯を行い、保温時に、温度が低下したら再加熱を行って保温を行うのが一般的である。このような炊飯器においては、炊飯時や保温時に内釜の熱が本体外に逃げるのを抑制するために、内釜を真空容器や真空断熱材で覆うものがある。
【0003】
例えば、特許文献1には、鍋と電磁誘導加熱コイルを真空内容器で覆ったIHジャー炊飯器(特許文献1の図1)や、鍋を真空内容器で覆い、その真空内容器の外側に電磁誘導加熱コイルを設けたIHジャー炊飯器(特許文献1の図3)など、外部へ逃げる熱量を少なくして、炊飯時及び保温時における消費電力を効果的に抑制するための構成が開示されている。
【0004】
また、真空内容器の固定方法として、上枠とボディにより組み立て後において挟持された状態で固定する。また、真空内容器とボディはネジなどにより、さらに固定してもより強度が向上することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−224494号公報(特に、図1、図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の炊飯器では、鍋のみならず、加熱コイルも真空内容器に覆われている。加熱コイルは、電力が供給されると自らの電気抵抗によってジュール熱を発するため、加熱コイルの絶縁層の破壊を防ぐために冷却風によって冷却する必要がある。しかし、特許文献1の構成を採った場合には、真空内容器の上端は上枠で、下端はボディに当たって挟まれて保持されるので、真空容器の下部に備える加熱コイルに真空容器の下端から真空容器内の加熱コイルに冷却風を供給できないため、加熱コイルの自己発熱によって、加熱コイルの絶縁層が破壊される虞がある。
【0007】
また、真空内容器の固定方法としてネジを用いてボディに固定する場合、真空内容器にネジ穴を設けることは真空内容器の内部を真空に保つ構造として大変作り難い課題がある。
【0008】
本発明は、以上の課題を鑑みなされたものであって、炊飯時の、内釜からの熱漏洩の抑制、加熱コイルの絶縁破壊の防止、高い加熱効率を実現するとともに、保温時の、内釜からの熱漏洩の抑制、省エネ化、ご飯の品質劣化の抑制を実現できる炊飯器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、請求項1においては、内ケースと外ケースの間に真空層を形成し上部開口部と底面と該底面に下部開口部とを有する略円筒状の真空容器を備え、該真空容器を内壁とする本体を備え、前記上部開口部を介して前記真空容器に着脱自在に収納される内釜を備え、前記本体の上面で前記真空容器の上端部を覆う枠体を備え、該枠体と前記真空容器と前記本体を固定する支え具を備え、該支え具は、該枠体と固定する固定部Aと、前記枠体に前記真空容器の前記底面から押さえる支え部と、前記固定部Aと前記支え部とを連結する支柱部と、前記真空容器の側面を支え前記支柱部を連結する連結部と、前記支え部の裏面に本体を支える固定部Bとを備えたものである。
【0010】
また、請求項2においては、前記連結部はリング状で前記真空容器の外周に適合し、前記連結部に任意の間隔で複数の前記支柱部を備え、前記支柱部に備える支え部は内側を向いて備え、前記支え部の下部で前記支柱部の下端の固定部を備え、前記支柱部の上端の固定部は外側を向いて設け、前記支柱部の下端の前記固定部で、前記真空容器の底面と前記本体の間に間隙を設けたものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、内釜の側面に設けられた真空容器によって内釜の側面からの熱漏洩を抑制できるので、省エネルギーを実現できる。また、真空容器の底面と本体の間に形成された間隙が、真空容器の下部に設けた加熱コイルへの送風路、排気路を構成できる。また、内釜の底面に近接して設けられた加熱コイルによって内釜を効率よく加熱できるので、高火力での炊飯を容易に実現でき、美味なご飯に仕上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】一実施例の炊飯器の断面図である。
【図2】一実施例の支え具を説明する本体を除いた底面からの斜視図である。
【図3】一実施例の真空容器の断面図である。
【図4】一実施例の枠体の(a)外側斜視図、(b)内側斜視図である。
【図5】一実施例の支え具の斜視図である。
【図6】一実施例の本体の内側斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施例について添付図面を用いて詳細に説明する。
【0014】
まず、図3の断面図を用いて、本実施例の炊飯器で用いられる真空容器6について説明する。ここに示すように、略円筒状の真空容器6は、ともにステンレス製の内ケース6aと外ケース6bの間に真空層6hを形成した中空構造の容器であり、上部には上部開口部6fと、底面6mにはそれより直径の小さい下部開口部6gを備える。上部開口部6fは、後述する内釜2を挿入するための開口であり、下部開口部6gは、後述する加熱コイル9に冷却風を供給するための開口である。
【0015】
ここに示すように、内ケース6aと外ケース6bの上端を接合し上端部6dを形成し、下端を接合し下端部6eを形成している。上端部6dは、内釜2から構造的に遠ざけるように外側に向け水平方向に設けられ、下端部6eは、後述する加熱コイル9の設置位置より下方で下側に向けて垂直方向に設けられる。また、真空容器6には、上端部6d近傍の逃部6kと、下方内側の段差部6cの二つの段差が設けられている。なお、段差部6cは、図3のように、内側に突出した凸形状にして設けても良いし、真空容器6の内径を絞り細くしたものであっても良い。また、真空容器6の外側は側面6pを備え、側面6pの上部に段差6nが設けられる。
【0016】
また、真空容器6の側面6pの下部には略水平面で内側に下端部6eに繋がり、下端部6eよりも径が大きく外側の底面6mを備える。尚真空容器6の内側で底面6mの内側に当たる部分で曲面の内側底面6rとその上部の内側面6sを備える。
【0017】
次に、真空容器6が組み込まれた本実施例の炊飯器を、図1の断面図を用いて説明する。本実施例の炊飯器は、本体1の内壁を構成する真空容器6に内釜2が着脱自在に挿入され、その内釜2が外蓋3と内蓋4からなる蓋によって閉鎖される構造となっている。真空容器6の下部には底面容器7が組み込まれ、底面容器7の下面に設けられた加熱コイル9によって、鉄などの強磁性金属を含む内釜2が誘導加熱される。
【0018】
内釜2は上面開口の全周にフランジ部2aを備えている。このフランジ部2aが後述する内釜載置部8aに載置されることで、内釜2が本体1内部に保持される。このとき、内釜2と真空容器6の間には空気層17が形成される。外蓋3は本体1の上部に開閉自在に取り付けられた蓋であって、下面に取り付けられた内蓋4およびパッキン5によって内釜2の上面開口部を封鎖する。底面容器7は、内釜2の誘導加熱に障害とならないように、例えば、PETやPBT等の磁力線が透過する耐熱樹脂で形成される。
【0019】
また、底面容器7の中央には、内釜2の温度を検出する温度センサ16が設けられている。温度センサ16は、底面容器7の中央部に設けられた筒状の保持部7dに保持され、穴7cを介して内釜2に接触する。
【0020】
制御手段である制御回路14は、加熱コイル9に電力を供給するインバータ回路を備えており、温度センサ16が検出した温度情報や制御プロセスに応じて、加熱コイル9へ供給する電力を制御する。
【0021】
本体1内部には、後述の吸気口1b(図6)から取り込んだ外気で加熱コイル9や制御回路14などの発熱部品を冷却する冷却手段として冷却ファン15が設けられている。ここで、図1に示すように、温度センサ16は筒状の保持部7dで囲まれ、保持部7dの下部開口は保護部材18によって塞がれている。従って、冷却ファン15からの冷却風が温度センサ16に直接当たることはなく、冷却風が温度センサ16に与える影響が低減される。保護部材18の設置には、加熱コイル9から本体1の外殻への熱移動を抑制する目的もあり、保護部材18を発泡樹脂、ゴム、グラスウール、スポンジの何れかで構成することでその断熱性能を高めている。なお、図示しないが、保護部材18には、保持部7dに侵入した水を外部へ排出するための通路が設けられており、保護部材18を介して排出された水は本体1の底面に設けられた開口を通して外部に排出される。
【0022】
次に、本体1に真空容器6を固定する構造を説明する。本体1の上面には、真空容器6の上端部6dおよび逃部6kを覆う枠体8が設けられている。枠体8は、凸状の内釜載置部8aを上面の全周に設けるとともに、内釜載置部8aの内周側を下方に伸ばした内側下垂部8bと、真空容器6の外周側で下垂れる外側下垂部8cのそれぞれを全周に設けて構成される。図1では、内側下垂部8bと外側下垂部8cで上端部6dを挟んで真空容器6を固定する。枠体8と真空容器6の上端部6dの間には、全周に渡って断熱部材11が設けられており、真空容器6から枠体8への伝熱を抑制するとともに、真空容器6と枠体8の隙間を封鎖している。なお、本実施例では、内釜載置部8a、内側下垂部8b、外側下垂部8c、断熱部材11を全周に渡って設けた例を示したが、前述した各々の作用を果たす限り、図4(b)に示すように一部でこれらが欠落しても良い。
【0023】
図4(a)は、枠体8の外側斜視図、(b)は内側斜視図である。枠体8は、後述する本体1の内側に嵌る重複部8eを備え、その重複部8eの上端に本体1と当接する鍔部8fを設ける。内側には、後述する支え具20をネジで固定するボス8dを設けている。
【0024】
図5により支え具20について説明する。支え具20は4本の支柱部20aを任意の間隔で配置してリング状の連結部20bとで一体に連結して構成する。連結部20bの内周20cは真空容器6の段差6nの下部にある側面6pの外周に適合し連結部20bで真空容器6の側面6pを外から支える。支柱部20aの上下端には固定部20gを備える。支柱部20aの上端には、外側を向いて設けた固定部A20eを備える。固定部A20eは、前記した枠体8のボス8dにネジで固定する部分である。支柱部20aの下部には、内側を向いて略水平に備え真空容器6の下端部6eよりも外側の平面部である底面6mを下から支える支え部20dを備える。4本の支柱部20aの各支え部20dは、略同一水平面を構成する。また支柱部20aの下端には、前記支え部20dの下部に固定部B20fを備える。固定部B20fは後述する本体1のネジ通し穴1a(図6)にネジを通して本体1と固定部B20fを固定する部分である。そして支柱部20aの下端に備える4箇所の固定部B20fで、本体1と固定することにより、固定部B20fの上側に位置する支え部20dで支えられた真空容器6の底面6mと本体1の間に上下左右奥行き方向にわたって間隙22を形成するものである。
【0025】
図6は、本体1の内側を見た斜視図である。ネジ通し穴1aに前記のようにネジを通して支え具20の固定部B20fに固定する部分である。本体1の後部と底部に渡って冷却ファン15で吸気する吸気口1bを設けている。また加熱コイル9を冷却した風は、本体1の底面の前と左右の3箇所に配置した排気口1cから排気する。
【0026】
本体1の底部1eを支柱部20aの下端に備える固定部B20fに固定することにより、真空容器6の底面6mと本体1の間に形成された間隙22が、真空容器6の下部に設けた加熱コイル9への送風路、排気路を構成しやすくしているものである。
【0027】
図2は、本体1を外した支え具20で真空容器6を支える状態を下側から見た斜視図である。前記のように、支え具20が真空容器6の底面6mと側面6pで支え、支え具20の固定部A20eで枠体8のボス8d(図4(b))に固定している。支柱部20aの下部には本体1を固定する固定部B20fを備える。
【0028】
図1に示すように、枠体8に支え具20を固定することにより、枠体8と真空容器6の上端部6dの間に断熱部材11を介して、枠体8に真空容器6が固定され真空容器6が枠体6との当接部で傾いて横ズレが発生せず、内釜2と真空容器6の空間に溜まる空気が逃げない構造にできる。
【0029】
また、真空容器6の逃部6kは、内側下垂部8bに対応させて真空容器6の内径を大きくしたものであり、これにより、内側下垂部8bと真空容器6の内周面の段差を小さくできる。なお、枠体8は、本体1の一部として構成しても良いし、本体1と別体で構成しても良い。
【0030】
真空容器6の下部には、内釜2の底面を覆う底面容器7が設けられている。底面容器7は、浅い凹状の断面形状をしており、上側には、フランジ状の外周部7aを設け、下面には、真空容器6の下部開口部6gより僅かに大きい外径の円筒状のリブ7bを設けている。底面容器7は、真空容器6の上部開口部6fから挿入され取り付けられる。真空容器6に底面容器7を取り付けると、外周部7aと段差部6cが全周に渡って隙間無く接触するとともに、リブ7bと内側底面6rが全周に渡って略隙間無く接触し、真空容器6と底面容器7の間が密閉し空間部12を形成する。また、内釜2と真空容器6の間に密閉された空気層17が形成される。この結果、図1から明らかなように、真空容器6の内ケース6aは、密閉された空気層17と空間部12に接することになり、冷却ファン15からの冷却風が内ケース6aに吹き付けられるのを避けることができる。
【0031】
なお、以上の構成において、真空容器6の上端部6dを水平方向に設け、固定する断熱部材11と平面で接触させ、下端部6eは垂直方向に設け、その外側に底面6mを水平方向に設け、支え具20の支え部20dと平面で接触させたので、炊飯器の本体1を移動して机や台に置く時に生じる上下方向の衝撃が、上端部6dと下端部6eに与える影響を低減することができる。
【0032】
次に、図1および図2を用いて、底面容器7の下方に設けられた加熱コイル9について説明する。
【0033】
加熱コイル9の下方には、複数のコイル保持部が放射状に設けられている。各コイル保持部10は、フェライト10aと、フェライト10aを覆うように埋設した鍔10bで構成され、加熱コイル9は鍔10bの上面に固定される。また、図1に示すように、鍔10bの外周部は、真空容器6の底面6mの内側底面6rと外周部と底面容器7のリブ7bで挟まれており、それらの位置関係が固定される。
【0034】
真空容器6の下部には、加熱コイル9の磁気が本体1の下側へ漏れないようにする防磁のためのアルミ製のシールド板21を備えている。そのシールド板21には、本体1の後側に向く加熱コイル9の冷却風の入口21aと本体1の前と左右方向に向き、下端部6eの内周に沿って複数設けた出口21bを備える。
【0035】
なお、図1、図2から明らかなように、冷却ファン15からの冷却風は、本体1の底面に沿って流れた後、間隙22からシールド板21の入口21aを経て真空容器6の下部開口部6gを介して加熱コイル9の近傍に供給され、冷却風はシールド板21の出口21bから間隙22へ排気し本体1の排気口1cへ流れる。加熱コイル9の下面は、コイル保持部10と接触する部分以外が露出しているため、冷却ファン15からの冷却風によって効率的に冷却されるので、加熱コイル9の過熱を防止でき、絶縁層の熱破壊を防ぐことができる。
【0036】
ここで、内釜2の加熱効率を高めるため、内釜2と加熱コイル9を近接させることが望ましい。本実施例では、内釜2と加熱コイル9の間に中空構造を設けなかったので、両者を近接させることができ、内釜2の加熱効率を容易に高めることができる。また、真空容器6の下端部6eの内径を加熱コイル9の外径より大きくするとともに、加熱コイル9を下部開口部6gの上方に設けることで、真空容器6と加熱コイル9を遠ざけ、ステンレス製の真空容器6が誘導加熱されるのを抑制し、結果的に内釜2の加熱効率の低下を抑制している。
【0037】
以上で説明した本実施例の構成によれば、真空容器6の高い断熱性能によって、内釜2の熱が外部に漏洩するのを効果的に抑制できる。また、内釜2と真空容器6の間に略密閉空間となる空気層17を形成したので、内釜2の熱が外部に漏洩したり内釜2が冷却ファン15によって冷却されたりするのを抑制できる。さらに、真空容器6の内ケース6aと外ケース6bの接合部となる上端部6dには断熱部材11が設けられているので、高温の内ケース6aから低温の外ケース6bへの伝熱を抑制することができる。また、真空容器6は、加熱コイル9による内釜2の誘導加熱を阻害しないような形状となっているため、真空容器6の存在によって、加熱効率が低減することはない。また、真空容器6の下部開口部6gの周囲で、底面容器7と真空容器6の間に空間部を形成し空間部12を設けたことによって、冷却ファン15による加熱コイル9の冷却の促進と、内ケース6aの冷却の抑制を同時に実現することができる。
【0038】
本実施例の炊飯器は以上の構成よりなるもので、次にその動作について説明する。炊飯器による炊飯は、大きく分けて、「浸し」、「加熱」、「蒸らし」、「保温」の四つの工程から成り立っている。制御回路14は、事前に組み込まれた制御シーケンス、および、温度センサ16で検出された内釜2の温度に基づいて、夫々の工程に応じた加熱制御を行う。以下では、加熱工程と保温工程における動作を中心に説明を行う。
【0039】
まず、使用者は内釜2内に米と適量の水を入れ、本体1内に収納して外蓋3を閉じる。次いで、本体1の操作部(図示無し)で「炊飯」スイッチを操作すると、制御回路14は、所定の浸し工程を経た後、加熱コイル9に電力を供給し加熱を開始する。
【0040】
加熱工程では、制御回路14によって加熱コイル9に電力が供給され、内釜2が誘導加熱され炊飯が進行する。このとき、冷却ファン15を駆動し、発熱部品である制御回路14や加熱コイル9を冷却するが、加熱コイル9に供給する電力が小さい場合には、これらの発熱部品の発熱も小さいため、冷却ファン15を停止することとしても良い。
【0041】
炊飯の進行に伴い、熱源である内釜2の熱が空気層17を介して真空容器6の内ケース6aに伝わり、さらには、外ケース6bにも伝導しようとする。しかし、本実施例の真空容器6を用いると、次の各理由によって、外ケース6bの高温化、すなわち、真空容器6内部からの熱漏洩を効果的に抑制できる。
【0042】
第一の理由として挙げられるのは、内ケース6aと外ケース6bの間に真空層6hが設けられており、真空層6hの断熱性能は非常に高いため、真空層6hを介した内ケース6aから外ケース6bへの熱移動を非常に小さく抑えることができることである。
【0043】
第二の理由として挙げられるのは、水平方向を向いた真空容器6の上端部6dが、枠体8の内側下垂部8bと断熱部材11によって覆われることで、高温の空気層17から隔離されており、空気層17の熱が外ケース6bの上端に直接伝わるのを防いでいることである。
【0044】
第三の理由として挙げられるのは、真空容器6の下端部6eが、真空容器6と底面容器7の間に形成される空間部12によって、高温の空気層17から隔離されており、空気層17の熱が外ケース6bの下端に直接伝わるのを防いでいることである。
【0045】
第四の理由として挙げられるのは、内ケース6a、外ケース6b共に、熱伝導率の悪いステンレス製であり、高温の空気層17に接する内ケース6aの領域から上端部6d、下端部6eへ伝導する熱量が少なく、結果的に、高温の空気層17から外ケース6bへの上端部6d、下端部6eを介した熱伝達を抑制できることである。
【0046】
第五の理由として挙げられるのは、真空容器6の下端部6eが、底面容器7のリブ7bによって高温の空気層17から構造的に遠ざけられ、真空容器6の下部では、第四の理由でも挙げた、ステンレスの熱伝導率の低さがより有効に働くことである。
【0047】
次に、空気層17と空間部12について更に詳細に説明する。
【0048】
まず、空気層17について説明する。図1に示すように、空気層17の上方側では、内釜2のフランジ部2aと枠体8の内釜載置部8aが全周に渡り接触しており、さらに、枠体8と真空容器6の間には全周に渡り断熱部材11が設けられているため、各々の間に空気が漏洩するような隙間は生じない。従って、加熱工程中に高温空気が上方に向けて対流しても、空気層17の上方から高温空気が漏洩することはない。また、例え、一部の高温空気が断熱部材11を抜けて漏洩しても、高温空気は外側下垂部8cの内周側に留まるため、ここから高温空気が漏洩し続けることはない。一方、空気層17の下方側でも、底面容器7の外周部7aと真空容器6の段差部6cは全周に渡り接触しているため、両者の間には空気が漏洩するような隙間はない。従って、空気層17の下方から高温空気が漏洩することはない。また、例え、外周部7aと段差部6cの間の一部に隙間が生じたとしても、空気層17の上方からの空気の漏洩はないため、空気層17内部の空気に動きはなく、当然に下方から冷却風が侵入することもない。
【0049】
次に、空間部12について説明する。図1に示すように、加熱コイル9には下部開口部6gを介して冷却ファン15からの冷却風が供給され、加熱コイル9自身の発熱による絶縁膜の破壊を防止している。加熱コイル9を冷却するための冷却風が真空容器6の内ケース6aに当たり、内ケース6aの温度が低下すると、内ケース6aが空気層17を冷却することになるため、内ケース6aを冷却風から保護する必要がある。そこで、本実施例では、底面容器7の外周部7aと真空容器6の段差部6cが全周に渡って隙間無く接触するとともに、底面容器7のリブ7bと内側底面6rが全周に渡って略隙間無く接触し、微小な空間として空間部12が形成し、内ケース6aを冷却風から保護する構成を採った。なお、リブ7bは冷却風によって冷却されるが、リブ7bの外周側に空間部12が形成されているため、リブ7bが空気層17から奪う熱量を少なく留めることができる。また、例え、リブ7bと内側底面6rの間の一部に隙間が生じたとしても、隙間を介して侵入した冷却風は空間部12に留まるため、更に空気層17に侵入することはなく、空気層17が冷却されることはない。
【0050】
以上で説明したように、加熱工程においては、本実施例の構成を用いることで、真空容器6内部からの熱漏洩を抑制し火力を高めると同等の効果を容易に得ることができるとともに、加熱コイル9に十分な冷却風を供給できるので、自身の発熱によって加熱コイル9が破壊される状況を回避することができる。
【0051】
加熱工程が終了し、蒸らし工程や保温工程に入ると、加熱コイル9への供給電力は小さくなり、また、供給時間も短くなるため、加熱コイル9や制御回路14の発熱も小さくなる。これにより、加熱コイル9や制御回路14の冷却の必要性が小さくなるので、蒸らし工程や保温工程では制御回路14は冷却ファン15を停止する。この結果、底面容器7や加熱コイル9の温度を長時間に渡り維持することができ、真空容器6の内ケース6aや内釜2の熱が、底面容器7や加熱コイル9に奪われるのを抑制することができる。
【0052】
また、蒸らし工程や保温工程においても、真空容器6、空気層17、空間部12等の、上述した作用によって、真空容器6の内部は高温に保たれるため、真空容器6等を有しない構成に比べ、加熱コイル9に供給する電力の総量を小さくしても、同等の蒸らし、或いは、保温効果があり容易に省エネルギーを実現することができる。
【0053】
また、保温工程において、温度センサ16が内釜2の温度低下を検出した場合、加熱コイル9を用いて再加熱を行うが、本実施例の構成では真空容器6等の保温性能が高いため、温度低下までの時間が長くなり、再加熱の回数も少なくすることができる。再加熱によって、ご飯が劣化することが知られているが、本実施例の構成を採ることによって、再加熱の回数を少なくすることができ、ご飯の品質を長時間に渡り良い状態に保つことができる。
【0054】
以上で説明したように、蒸らし工程や保温工程においては、本実施例の構成を用いることで、真空容器6の内部を少ない消費電力で高温に保つことができ、再加熱の回数も抑制できるので、低消費電力化、ご飯の品質劣化の防止を容易に実現することができる。
【0055】
上記した本実施例によれば、内釜からの熱の放散を少なく抑えて、高温で蒸らして美味なご飯に仕上げるとともに、保温時も無駄な加熱しないで済むので、加熱によるご飯の乾燥や劣化を少なくするとともに、加熱に必要とする電力量を少なく抑えて省エネルギー性も向上させることができる。また真空容器の底面と本体の間に形成された間隙が、真空容器の下部に設けた加熱コイルへの送風路、排気路を構成できる。また、真空容器に固定用のネジ穴を必要としないため、真空容器の生産性や信頼性を向上させることができる。さらに、内釜を誘導加熱する加熱コイル9を十分に冷却することができる。さらに、内釜を高い断熱効果で保温しながら内釜を効率よく誘導加熱することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 本体
2 内釜
2a フランジ部
3 外蓋
4 内蓋
6 真空容器
6a 内ケース
6b 外ケース
6c 段差部
6f 上部開口部
6g 下部開口部
6m 底面
6p 側面
7 底面容器
7a 外周部
7b リブ
8 枠体
8a 内釜載置部
8b 内側下垂部
8c 外側下垂部
9 加熱コイル
10 コイル保持部
10b 鍔
11 断熱部材
12 空間部
14 制御回路
15 冷却ファン
16 温度センサ
18 保護部材
20 支え具
20a 支柱部
20b 連結部
20d 支え部
20e 固定部A
20f 固定部B
20g 固定部/

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内ケースと外ケースの間に真空層を形成し上部開口部と底面と該底面に下部開口部とを有する略円筒状の真空容器を備え、該真空容器を内壁とする本体を備え、前記上部開口部を介して前記真空容器に着脱自在に収納される内釜を備え、前記本体の上面で前記真空容器の上端部を覆う枠体を備え、該枠体と前記真空容器と前記本体を固定する支え具を備え、該支え具は、該枠体と固定する固定部Aと、前記枠体に前記真空容器の前記底面から押さえる支え部と、前記固定部Aと前記支え部とを連結する支柱部と、前記真空容器の側面を支え前記支柱部を連結する連結部と、前記支え部の裏面に本体を支える固定部Bとを備えたことを特徴とする炊飯器。
【請求項2】
請求項1に記載の炊飯器において、前記連結部はリング状で前記真空容器の外周に適合し、前記連結部に任意の間隔で複数の前記支柱部を備え、前記支柱部に備える支え部は内側を向いて備え、前記支え部の下部で前記支柱部の下端の固定部を備え、前記支柱部の上端の固定部は外側を向いて設け、前記支柱部の下端の前記固定部で、前記真空容器の底面と前記本体の間に間隙を設けたことを特徴とする炊飯器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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